JP2016015286A - 液体燃料電池用隔膜及びそれを備えた膜−電極接合体 - Google Patents

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康壮 松田
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Hiroyuki Nishii
弘行 西井
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Abstract

【課題】面積膨潤率が小さく、化学的な耐久性が良好である液体燃料電池用隔膜を提供する。【解決手段】液体燃料電池用隔膜であって、高分子多孔膜と、高分子多孔膜に導入されたグラフト鎖と、を備え、グラフト鎖は親水性官能基を含む、液体燃料電池用隔膜とする。親水性官能基は、好ましくは水酸基、カルボキシル基、アミノ基等である。【選択図】図1

Description

本発明は、液体燃料電池用隔膜及びそれを備えた膜−電極接合体に関する。
高分子電解質型燃料電池(PEFC)は、燃料電池としては低い温度での動作が可能であるとともに、出力密度が高い等の利点を有し、将来の普及に期待が寄せられている。PEFCは、アノードとカソードとの間に隔膜を備えており、隔膜としてはイオン伝導性を有する高分子電解質膜が用いられる。この隔膜としては、カチオン交換膜が用いられてきた。近年では、白金を触媒に用いることなく発電が可能なアニオン交換膜を用いたPEFCが報告されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
一方、水素よりも取り扱いが容易なメタノール等の液体を燃料として用いた燃料電池(液体燃料電池)が検討されている。
特開2000−331693号公報 特表2010−516853号公報
液体燃料電池用隔膜は、隔膜中に水溶液を含浸させて使用する。従って、液体燃料電池用隔膜には、水溶液を含浸させた場合の変形を防ぐために、水溶液の含侵前後において面積の膨張が小さいことが求められる。
一方、液体燃料電池の運転時に、隔膜に含まれる水溶液のpHは酸性又はアルカリ性となる。例えば、カソードにおける酸化還元反応により生じたアニオン(OH-)の移動を利用した液体燃料電池(以下、アルカリ形液体燃料電池)においては、水溶液のpHはアルカリ性になる。従って、隔膜には水溶液のpHに対する良好な化学的耐久性が求められる。
本発明は、液体燃料電池用隔膜に関し、面積膨潤率が小さく、化学的耐久性が良好である液体燃料電池用隔膜を提供することを目的とする。
一般に、燃料電池用の隔膜としてはイオン交換膜が用いられ、これらの膜は無孔膜である。本発明者等の鋭意研究の結果、驚くべきことに、親水性官能基を有する高分子多孔膜を用いることによって、面積膨潤率が小さく、化学的な耐久性が良好である液体燃料電池用隔膜を得られることが分かった。
すなわち本発明は、
液体燃料電池用隔膜であって、
高分子多孔膜と、
前記高分子多孔膜に導入されたグラフト鎖と、
を備え、
前記グラフト鎖は親水性官能基を含む、
液体燃料電池用隔膜、を提供する。
別の側面において、本発明は、
本発明の液体燃料電池用隔膜を備えた膜−電極接合体、を提供する。
本発明によれば、面積膨潤率が小さく、化学的な耐久性が高い液体燃料電池用隔膜を提供することができる。本発明によれば、この隔膜の特性を活かした膜−電極接合体(MEA)を得ることができる。
本発明のMEAの一例を模式的に示す断面図である。 耐圧性試験に用いる評価用セルを模式的に示す分解斜視図である。 図2のIII−III面における模式的な評価用セルの縦断面図である。 耐圧性試験に用いる評価用セルを模式的に示す正面図である。
本発明の一実施形態を説明する。以下において、アルカリ形液体燃料電池又はこの液体燃料電池に用いられるMEAもしくは隔膜を例として述べるが、本発明の液体燃料電池用隔膜はこれに限らず、酸形液体燃料電池にも用いることができる。
本実施形態のMEAは、液体燃料電池に設置して用いることができる。この液体燃料電池は、MEA以外の部分に特に限定はなく、公知の部材を適用できる。
以下で述べる液体燃料電池は、本実施形態のMEAを備えたアルカリ形液体燃料電池であり、アノード側には液体燃料が、カソード側には酸化剤が供給される。酸化剤は、例えば空気である。
液体燃料は水に溶解された燃料であり、電解質を溶解している。燃料は、水に溶解可能であれば特に限定はなく、例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、ヒドラジン(水和物)、アンモニア等のアミン類、水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられ、反応性が高く、発電原理上CO2を発生しないことから、ヒドラジン(水和物)が好ましい。
燃料の供給量は、液体燃料中の燃料の濃度や供給速度(流量)によって制御することが可能である。必要な燃料の量は、取り出す電流量に応じて変化する。従って、取り出す電流量に応じてアノード側に供給する燃料の供給量を制御することが好ましい。取り出す電流量に対して過剰の燃料を供給すると、燃料の透過量が増加することがある。透過した燃料がカソード、より具体的にはカソード触媒上に存在すると、カソード触媒上で酸化剤と燃料とが直接反応して副反応が生じることがあり、燃料電池の発電効率が低下する。これを防止するために、液体燃料の供給量の制御が可能な燃料提供システムを用いてもよい。
電解質は、水又は液体燃料に溶解でき、液体燃料電池反応においてイオン伝導体として機能する電解質であれば特に限定されない。例えば、アルカリ形液体燃料電池においてはアニオンがイオン伝導体として機能するため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物イオン(OH-イオン)の解離が可能な電解質を用いることが好ましい。二酸化炭素との反応物である炭酸カリウムが水に溶解しやすく、析出しにくいことから、電解質としては水酸化カリウムが特に好ましい。ただし、水に溶解可能であって水に溶解したときにイオンを供給できるその他の無機塩、イオン液体等を電解質として用いることもできる。
液体燃料中の電解質の濃度は、特に限定されないが、例えば重量基準で0.5〜40%、特に1〜20%である。
本実施形態のMEAが設置された液体燃料電池において、電解質がイオン伝導性を担う点に本実施形態の特徴があり、この点が一般的に用いられる液体燃料電池との相違点である。一般的に用いられる液体燃料電池では、隔膜にアニオン交換膜を用いており、このアニオン交換膜の有するアニオン交換基がイオン伝導性を担う。従って、アニオン交換基が劣化すると、液体燃料電池の性能が低下する。これに対し、アニオン交換基を有しない本実施形態のMEAでは、アニオン交換基の劣化は考慮する必要が無い。
また、アルカリ形液体燃料電池では、カソード触媒における反応に水が必要である。この水は通常、加湿器等の補機類を用いて電池外部から加湿している。一方、本実施形態のMEAは親水性基を有し、隔膜中に水を保持できる。本実施形態のMEAにはアノード側から液体燃料が供給されるため、この液体燃料に含まれる水はカソード側へ隔膜を透過し、カソード触媒における反応に利用される。従って、本実施形態のMEAを用いると、加湿のための補機類の省略が可能となり、液体燃料電池の小型化や単位容積当たりの発電容量の向上を図る上で有利である。
上記の液体燃料電池は、アノード側からカソード側へと隔膜を透過した燃料やカソード触媒上でこの燃料と酸化剤とが直接反応して生じた副生成物の排出を抑制する観点から、カソード側の出口から排出されるガスを処理する補機類を備えていてもよい。
以下、膜−電極接合体(MEA)について詳細を述べる。
本実施形態のMEAは、本発明の隔膜と、隔膜の表面に配置された触媒層とを備えている。
本実施形態のMEAでは、隔膜の表面に触媒層が配置されている。隔膜と触媒層とは、典型的には触媒インクのスプレー塗布等の加工工程を経て一体化されている。通常、触媒層は、アノード触媒層とカソード触媒層とを含んでいる。図1に、本実施形態のMEAの一例を示す。図1に示すMEAは、隔膜2とアノード触媒層3とカソード触媒層4とを備え、アノード触媒層3が隔膜の一方の主面に、カソード触媒層4が隔膜2の他方の主面にそれぞれ配置されている。
触媒層は、アルカリ形液体燃料電池に使用する公知のMEAが備える触媒層を用いることができる。触媒は、酸形燃料電池とは異なり、必ずしも白金のような貴金属である必要はなく、例えば、ニッケル、コバルト、鉄等の卑金属を使用可能である。含まれる具体的な触媒等、触媒層の構成は、MEAのアノード側(アノード触媒層)とカソード側(カソード触媒層)とで異なっていても同一であってもよい。特にカソード触媒層は、透過した燃料との反応を抑制して発電効率の低下を防ぎ、副反応による部材劣化を防ぐ観点から、酸化還元反応を選択的に促進する触媒を選択することが望ましい。
本実施形態のMEAは、本実施形態の効果を阻害しない限り、隔膜及び触媒層以外の任意の部材を有することができる。
以下、MEAに備えられている隔膜について詳細を述べる。
本実施形態において、液体燃料電池用隔膜は、高分子多孔膜と、高分子多孔膜に導入されたグラフト鎖とを備え、グラフト鎖は親水性官能基を含む。
本実施形態において、液体燃料電池用隔膜は、膜厚が5μm〜130μmの範囲にあることが好ましく、10μm〜70μmの範囲にあることがより好ましい。膜厚が薄くなりすぎると、膜強度が低下することがあり、膜の破損やピンホール等の欠陥が生じることがあり、酸化剤の圧力を保てないことがある。また、燃料の透過量及び水の透過量(透水量)が多くなることがある。膜厚が厚くなりすぎると、隔膜内での膜としての抵抗(膜抵抗)が高くなることがあり、透水量が少なくなることがある。透水量が少なくなると、カソード触媒における反応に必要な水が不足し、発電効率が低下することがある。アノード側からカソード側へ隔膜を透過した燃料の量が増え、カソード触媒上に燃料が存在すると、燃料と酸化剤とが直接反応する副反応が生じることがある。その結果、電池の発電効率が低下し、副反応によってカソード触媒等が劣化することがある。従って、適切な燃料の透過量を有する隔膜を得るために、隔膜の膜厚を選択することが好ましい。
本実施形態の隔膜の含水率は、乾燥時の隔膜の重量に対し30%以上であることが好ましく、40%〜100%であることが好ましく、50%〜80%であることがより好ましい。本実施形態の隔膜においては、隔膜の有する親水性官能基が水を保有することによって、多孔膜の孔が補填される。このような含水率を有することによって、本実施形態の隔膜は多孔膜を有しているにもかかわらず、液体燃料電池用隔膜として使用でき、電極間の短絡を防止することが可能となり、空気等の酸化剤の圧力に耐えることが可能となる。また、隔膜に保有された水がカソード側へ透過するため、カソード触媒へ効率よく水を供給でき、電池の発電効率の向上に寄与できる。含水率が小さすぎると、多孔膜の孔は充分に補填されず、空気等の酸化剤の圧力に耐えることができないことがある。含水率が多くなりすぎると、空気等の気体に対する隔膜の耐圧性が低下し、酸化剤の圧力を保てないことがある。なお、含水率は、具体的には後述する方法により測定することができる。
本実施形態の隔膜の第一主面に水を供給しながら、第一主面と反対側の第二主面に空気を供給して、空気の圧力を上昇させて測定した主面間耐圧(隔膜の主面間耐圧)は、60kPa以上であることが好ましく、80kPa以上であることがより好ましく、100kPa以上であることがさらに好ましい。隔膜の主面間耐圧とは、隔膜が維持できる主面間の圧力の最大値であり、具体的には後述する試験によって測定することができる。隔膜の主面間耐圧が低すぎると、酸化剤が燃料極(アノード)へリークする等の課題が生じることがある。
本実施形態の隔膜は、面積膨潤率が低く、寸法安定性が高い。面積膨潤率は15%以下であることが好ましく、0%〜10%であることがより好ましく、0%〜5%であることがさらに好ましい。面積膨潤率が大きくなりすぎると、隔膜の変形が生じることがあり、隔膜の劣化につながる。また、本実施形態の隔膜を備えた液体燃料電池において、隔膜と燃料電池作動時の電極との接合性が劣ることがある。なお、面積膨潤率は、具体的には後述する方法により測定することができる。
本実施形態の隔膜の透気度(ガーレー値)は、100〜2000sec/100ml・inch2の範囲にあることが好ましく、200〜1000sec/100ml・inch2の範囲にあることがより好ましい。透気度が大きくなりすぎると、透水量、透水速度が低下することがある。その結果、カソード触媒における反応に必要な水が不足し、カソード触媒での反応効率が低下することがある。
隔膜の重量は、高分子多孔膜の重量の1.05〜3.0倍(グラフト率5〜200%)の範囲にあることが好ましく、1.15〜2.0倍(グラフト率15%〜100%)の範囲にあることがより好ましい。グラフト率が低すぎると、充分な親水性を隔膜に付与できず、また含水時の多孔膜の耐圧性が得られないことがある。グラフト率が高くなりすぎると、隔膜の面積膨潤率が増加し、含水しすぎることで隔膜の物理的耐久性が低下する懸念がある。また、隔膜が膨張することによって孔が閉塞され、液体燃料に溶解された電解質による高効率イオン伝導性が得られないことがある。
本実施形態の隔膜に含まれる高分子多孔膜の材質は特に限定されず、発明の効果を阻害しない範囲内で公知の樹脂を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビスフェノールA型エポキシポリマー等のエポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド等のポリサルファイド系樹脂、ポリエーテルケトン等のポリエーテル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、ポリテトラフフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂の中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ビスフェノールA型エポキシポリマー、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン及びポリテトラフフルオロエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種が含まれることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド及びポリエーテルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種が含まれることがさらに好ましい。耐汚染性、耐腐食性、高分子多孔膜の製造価格等の観点から、ポリエチレンが好ましく、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンがより好ましい。高分子多孔膜の強度及び、耐熱性向上の観点から、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンが特に好ましい。なかでも、高強度の高分子多孔膜を得る観点から、重量平均分子量50万以上、特に100万以上の超高分子量ポリエチレンが好ましい。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
高分子多孔膜の平均孔径は1nm〜1000nmの範囲にあることが好ましく、2nm〜500nmの範囲にあることがより好ましく、5nm〜300nmの範囲にあることがさらに好ましい。平均孔径が大きくなりすぎると、電極間の短絡が生じることがある。また隔膜の耐圧性が低下し、酸化剤の圧力に耐えることが困難になることがある。また、燃料の透過量が多くなることがある。平均孔径が小さくなりすぎると、透水量が低くなることがある。透水量が少なくなりすぎると、カソード触媒における反応に必要な水が不足し、発電効率が低下することがある。後程実施するグラフト重合によって、隔膜全体の平均孔径は変動するので、その変動を想定して多孔膜の平均孔径を調整することが好ましい。
高分子多孔膜は、空孔率が5〜95%の範囲にあることが好ましく、10〜70%の範囲にあることがより好ましく、10%〜50%の範囲にあることがさらに好ましい。空孔率が大きくなりすぎると、燃料の透過が多くなることがある。また、隔膜の耐圧性が低下し、酸化剤の圧力を保てないことがある。空孔率が小さくなりすぎると、透水量が小さくなりすぎることがあり、含水率が低くなることがある。後程実施するグラフト重合によって、隔膜全体の空孔率は変動するので、その変動を想定して多孔膜の空孔率を調整することが好ましい。
グラフト鎖の付加によって膜厚が厚くなる傾向を考慮に入れつつ、高分子多孔膜の膜厚は、5μm〜100μmの範囲にあることが好ましく、10μm〜50μmの範囲にあることがより好ましい。膜厚が薄くなりすぎると、膜強度が低下することがあり、膜の破損やピンホール等の欠陥が生じることがある。また、燃料の透過量及び透水量が多くなることがある。燃料の透過量が多くなると、燃料と酸化剤が直接反応する副反応が生じ、発電効率が悪くなることがあり、またこの副反応によってカソード触媒等の劣化が生じることがある。膜厚が厚くなりすぎると、隔膜内での膜としての抵抗(膜抵抗)が高くなることがあり、透水量が少なくなりすぎることがある。透水量が少なくなりすぎると、カソード触媒における反応に必要な水が不足し、発電効率が低下することがある。
燃料の透過量が増え、カソード触媒上に燃料が存在すると、燃料と酸化剤とが直接反応する副反応が生じることがあり、電池の発電効率が低下し、副反応によってカソード触媒等が劣化することがある。従って、適切な燃料の透過量を有する隔膜を得るために、高分子多孔膜の膜厚、グラフト率、平均孔径、空孔率、又は透気度(ガーレー値)を選択することが好ましい。
高分子多孔膜の作製方法は特に限定されず、熱誘起相分離又は非溶媒誘起相分離を利用した乾式成膜法、湿式成膜法等公知の方法を用いることができる。例えば、樹脂及び溶媒を含む組成物を溶融混練し、押出し後冷却してシート状成形物とした後、脱溶媒処理を行ってもよい。又は、前記シート状成形物を圧延又は一軸延伸した後、積層し、溶媒を抽出除去することにより積層型の高分子多孔膜を得ることができる。また、積層した後、延伸してもよい。抽出後すぐに貼り合わせて積層することも可能であり、その場合には抽出工程が短時間ですむため生産性を向上できる。
高分子多孔膜の作製に用いる溶媒は、高分子多孔膜に含まれる樹脂の溶解が可能な溶媒であれば特に限定されないが、凝固点が−10℃以下の溶媒が好ましく用いられる。このような溶媒の好ましい具体例として、例えばデカン、デカリン、流動パラフィン等の脂肪族又は脂環式炭化水素、沸点がこれらに対応する鉱油留分等が挙げられる。
樹脂及び溶媒を含む組成物中の樹脂と溶媒との混合割合は、一概に決定できないが、組成物中の樹脂の濃度が5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。樹脂の濃度が高くなりすぎると、混練不足になりポリマー鎖の充分な絡み合いを得にくくなる。樹脂の濃度が低くなりすぎると、高分子多孔膜の充分な強度が得られないことがある。
樹脂及び溶媒を含む組成物中には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、耐電防止剤、造核等の添加物を、本発明の目的を損なわない範囲でさらに添加することができる。
本実施形態において、グラフト鎖に含まれる親水性官能基とは、親水性を有する官能基であれば特に限定されないが、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、リン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、特にカルボキシル基である。
グラフト鎖は、アニオン交換能を有する官能基を実質的に有していなくてもよい。実質的に有しないとは、隔膜の重量に対するアニオン交換能を有する官能基の量が0.1mmol/g以下であることを言い、好ましくは0.05mmol/g以下であることを言う。アニオン交換能を有する官能基とは、例えば4級アンモニウム塩基、4級ホスホニウム塩基等が挙げられる。
親水性官能基は、グラフト鎖を形成するモノマー(以下、「グラフトモノマー(M)」という場合がある)が有していてもよく、グラフト重合後にグラフト鎖に導入されてもよい。すなわち、グラフトモノマー(M)は、親水性官能基を有していてもよく、親水性官能基を導入し得る部位を有していてもよい。
好ましい一形態において、グラフトモノマー(M)は炭素−炭素不飽和結合と親水性官能基とを有する。グラフトモノマー(M)は、特に限定されないが、例えばアクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、2−ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸の誘導体モノマー、酢酸ビニル等の酢酸ビニル系モノマー、アリルアミン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン等の窒素含有モノマー、スチレンスルホン酸ナトリウム等のスチレン誘導体モノマーが挙げられる。これらの中でもアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及びスチレン誘導体モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1つが含まれることが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1つが含まれることが好ましい。
本実施形態のグラフトモノマー(M)は、アニオン交換能を有する官能基を実質的に有しないことが好ましい。実質的に有しないとは、隔膜の重量に対するアニオン交換能を有する官能基の量が0.1mmol/g以下であることを言い、好ましくは0.05mmol/g以下であることを言う。アニオン交換能を有する官能基とは、例えば4級アンモニウム塩基、4級ホスホニウム塩基等が挙げられる。
グラフトモノマー(M)は、グラフトモノマー(M)単独で重合に供してもよく、グラフトモノマー(M)を溶媒に溶解させた溶液(グラフトモノマー(M)溶液)として準備してもよい。
グラフトモノマー(M)溶液に含まれる溶媒に特に限定はないが、グラフトモノマー(M)は溶解するが、高分子多孔膜は溶解しない溶媒を用いると、グラフトモノマー(M)と高分子多孔膜との分離が容易である。また、副生成物であるグラフトモノマー(M)のみから形成されたポリマーの溶解が可能である溶媒を用いると、重合液を均一に保つことができる。なお、グラフトモノマー(M)、グラフトモノマー(M)のみから形成されたポリマー及び高分子多孔膜の溶媒への溶解性は、グラフトモノマー(M)、グラフトモノマー(M)のみから形成されたポリマー及び高分子多孔膜の構造又は極性等によって異なることがあるため、これらの化合物の溶解性に応じて適宜溶媒を選択してもよい。また、2種以上の化合物を混合して溶媒として用いてもよい。
このような溶媒としては、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、フェノール、クレゾール等のフェノール類等の芳香族化合物を挙げることができる。このような溶媒を用いることによって、グラフト率の高い隔膜を得ることができる。また、芳香族化合物は、副生成物であるグラフトモノマー(M)のみからなるポリマーを溶解するため、重合液を均一に保つことができる。
このグラフトモノマー(M)溶液中のグラフトモノマー(M)の濃度は、グラフトモノマー(M)の重合性や目標とするグラフト率に応じて定めればよいが、例えばグラフトモノマー(M)溶液全体の重量に対して20重量%以上のグラフトモノマー(M)を含ませることが好ましい。グラフトモノマー(M)の濃度が20重量%以上の溶液を用いることによって、グラフト反応が充分に進行しない事態を回避しやすくする。
酸素の存在によってグラフト重合反応が阻害されることを防ぐため、グラフトモノマー(M)又はグラフトモノマー(M)溶液中の酸素は、凍結脱気や窒素ガス等を用いたバブリング等の公知の方法を用いて除去することが好ましい。
グラフト鎖は、グラフト重合処理によって高分子多孔膜に導入される。このグラフト鎖は、高分子多孔膜に結合している。グラフト鎖は、均一系で処理できる観点から、放射線グラフト重合処理によって形成されることが好ましい。具体的には、高分子多孔膜に放射線を照射し、放射線照射後の高分子多孔膜とグラフトモノマー(M)又はグラフトモノマー(M)溶液とを接触させてグラフト重合反応をさせることによって形成されることが好ましい。
高分子多孔膜に照射される放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等の電離放射線があり、特にγ線又は電子線が好ましい。照射線量は、好ましくは1kGy〜400kGyの範囲にあり、より好ましくは10kGy〜300kGyの範囲にある。グラフト率は、放射線の照射量によって制御することができる。照射線量が低すぎるとグラフト率が低くなることがある。照射線量が多くなりすぎると、高分子多孔膜の劣化や過剰な重合反応によって隔膜の機械的強度の低下が生じることがある。
放射線照射後の高分子多孔膜は、低温(例えば−30℃以下)で保持してもよい。
酸素の存在によってグラフト重合反応が阻害されることを防ぐため、グラフト重合は、酸素濃度ができる限り低い雰囲気下で行うことが好ましく、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で実施することがより好ましい。
グラフト重合を実施する温度は、例えば0℃〜100℃であり、特に40〜80℃である。グラフト重合を実施する反応時間は、例えば2分〜12時間程度である。グラフト率は、これらの反応温度、反応時間によって制御することが可能である。
グラフト重合反応の一例として、固液二相系における反応例を述べる。まず、グラフトモノマー(M)と溶媒とを含むグラフトモノマー(M)溶液をガラスやステンレス等の容器に入れる。次に、グラフト反応を阻害する溶存酸素を除去するために、グラフトモノマー(M)溶液中の減圧脱気及び不活性ガス(窒素ガス等)によるバブリングを行う。その後、放射線照射後の高分子多孔膜をグラフトモノマー(M)溶液に投入してグラフト重合を行う。グラフト重合によって高分子多孔膜を構成するポリマーにグラフト鎖が導入される。次に、得られた膜を反応溶液から取り出して濾別する。さらに、溶媒、未反応のグラフトモノマー(M)、及びグラフトモノマー(M)のみからなるポリマーを除去するために、得られた膜を適量の溶剤で3〜6回洗浄した後、乾燥させる。溶剤としては、グラフトモノマー(M)及びグラフトモノマー(M)のみからなるポリマーが容易に溶解し、グラフト膜が溶解しない溶剤を用いればよい。例えば、溶剤として、水、トルエンやアセトン等を用いることも可能である。
別の実施形態において、グラフトモノマー(M)は、炭素−炭素不飽和結合と親水性官能基を導入しえる部位とを有する。親水性官能基を導入しえる部位とは、例えばハロゲン化メチル基、ハロゲン化エチル基、ハロゲン化プロピル基、及びハロゲン化ブチル基等のハロゲン化アルキル基、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸又はアクリルホスホン酸等のアルキルエステル等が挙げられる。グラフトモノマー(M)は、スチレン、クロロメチルスチレン、ブロモブチルスチレン等のスチレン誘導体が挙げられる。これらのモノマー(M)は単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
本実施形態において、グラフトモノマー(M)はアニオン交換能を有する官能基を有しないことが好ましい。
別の実施形態において、液体燃料電池用隔膜は、高分子多孔膜を準備する工程と、その高分子多孔膜に親水化処理を実施する工程と、を経ることによって形成することができる。本発明の効果を阻害しない限り、親水化処理の種類は特に限定されず、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理、スルホン化処理、界面活性剤又は親水性ポリマーを用いた処理等を用いてもよい。
例えば、親水性ポリマーを用いた処理においては、親水性ポリマーを含む溶液を高分子多孔膜に塗工し、高分子多孔膜の表面及び細孔壁に親水性ポリマー膜を形成することによって、多孔膜の表面に親水性官能基を付加してもよい。この方法では、親水性ポリマーを塗布して形成された膜の厚みによって、親水性官能基の量を調整することができ、また膜の厚みによって被膜中の隔膜の平均孔径の調整が可能となる。
別の実施形態において、本実施形態の隔膜又はMEAを酸形の液体燃料電池に用いる場合には、隔膜の有するグラフト鎖はカチオン伝導能を有する官能基を実質的に有しないことが好ましい。本実施形態の隔膜の有する親水性官能基は、例えばスルホン酸基である。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における物性は以下の方法を用いて測定した。
(A)フィルム厚
1/10000直読ダイヤル式膜厚測定器により測定した。
(B)空孔率
1/10000直読ダイヤル式膜厚測定器により測定した厚みを用い、フィルムの単位面積Sあたりの重量W、平均厚みt、密度dから下式により算出した値を使用した。
空孔率(%)=(1−(104×W/S/t/d))×100
(C)含水率
縦30mm横20mmの矩形に切り出したサンプルを23℃、相対湿度50%雰囲気下に24時間以上放置して、寸法変化が生じなくなった状態のサンプル重量を測定した(含水前の重量)。その後、30℃の純水中に2時間浸漬し、その後の重量を測定した。含水後の重量は、サンプル表面に付着した余剰な水を濾紙等で拭き取ってから測定した。
含水率(%)=((含水後の重量)−(含水前の重量))×100/(含水前の重量)
(D)面積膨潤率
縦30mm横20mmの矩形に切り出したサンプルを、23℃相対湿度50%の雰囲気下に24時間以上放置して、寸法変化が生じなくなった状態のサンプルの面積を測定した(含水前の面積)。その後、このサンプルを30℃の純水中に2時間浸漬した後の面積を測定した(含水後の面積)。面積膨潤率は、以下の式に基づいて計算した比率である。
面積膨潤率(%)=((含水後の面積)−(含水前の面積))×100/(含水前の面積)
(E)重量維持率(耐アルカリ性)
実施例及び比較例で得られた隔膜について、以下の方法で高温のアルカリ水溶液中における重量維持率(耐アルカリ性)を評価した。まず、隔膜を縦約3cm横約4cmの矩形に裁断して測定用のサンプルを作製した。このサンプルを、乾燥機中において60℃雰囲気下に2時間以上乾燥させ、試験片の重量変化が生じなくなった状態の重量(KOH処理前の重量)を測定した。このサンプルを、1規定の水酸化カリウム(KOH)水溶液(80℃)に、210時間浸漬した。この浸漬処理後、KOH水溶液からサンプルを取り出し、純水で複数回洗浄し、大気中にて1晩放置した。次に、乾燥機中において60℃雰囲気下で乾燥し、乾燥後のサンプルの重量(KOH処理後の重量)を測定した。そして、重量維持率を、測定値を用いて以下の式から求め、アルカリ性溶液への耐性の基準とした。
重量維持率(%)=(KOH処理後の重量)×100/(KOH処理前の重量)
(F)耐圧性試験
図2〜4に示す燃料電池用評価セルを評価用セルとして用いて耐圧性試験を行い、隔膜の主面間耐圧を評価した。
主面が一辺4cmの正方形である隔膜2を準備した。一辺の長さが2cmの正方形の開口部11a、21aを有する、一対のガスケット11、21で隔膜2を挟持した。ガスケット11、21の外側に、サーペンタイン構造の流路12a、22a付きの一対のセパレータ12、22、一対の集電板13、23、一対のエンドプレート14、24をこの順に配置して挟持した。部材の各接触面から空気、水が漏洩しないように、ボルト等の固定部品(図示せず)を用いて各部材を締結し、評価用セル100を形成した。
評価用セル100は、流路18、19、28、29を有する。流路18、19はそれぞれ水の供給、吐出用の流路であり、流路28、29はそれぞれ乾燥空気の供給、吐出用の流路である。各流路18、19、28、29はエンドプレートに開口を有する。流路18、19はエンドプレート14、集電板13及びセパレータ12を貫通し、流路12aと連結する。流路28、29も同様である。
隔膜2の主面が鉛直方向に沿うように評価用セル100を設置した。この状態の評価用セル100に水及び乾燥空気の供給を開始した。アノード側の主面(第一主面)へは毎分2mlの水を流路18に接続した配管38を介して供給し、カソード側の主面(第二主面)へは毎分500mlの乾燥空気を流路28に接続した配管48を介して供給した。上記のように水を供給し続けることによって、セル100の第一主面側の内部は供給された水で満たされ、隔膜2の第一主面は常に水と接触した。この際、エンドプレート14、24に設けたラバーヒーター15、25を用いて評価用セル100の温度が80℃になるように評価用セル100を加熱した。評価用セル100の温度は、セパレータ22に設置した熱電対41を用いて測定した。水及び乾燥空気を上記のように供給し続け、評価用セル100の温度を80℃に1時間維持した。
上記状態を1時間維持した後、上記のように水、乾燥空気の供給を続け、かつ評価用セル100の温度を80℃に維持しながら、流路29に接続した配管49に設けた圧力調整装置(バルブ)43の開度を調整し、隔膜2の第二主面への乾燥空気の圧力が20kPaになるように、第二主面への乾燥空気の圧力を昇圧した。乾燥空気の圧力は配管49に設けた圧力計42で測定した。その後、水及び乾燥空気を上記のように供給し続け、評価用セル100の温度を80℃に維持しながら、第二主面への乾燥空気の圧力を20kPaに維持できるように圧力調整装置43の開度を調整した。上記の水及び乾燥空気の供給速度、評価用セル100の温度、圧力調整装置43の開度を維持した状態で、第二主面への乾燥空気の圧力を10分間測定した。20kPaを10分間維持できなかった場合には、隔膜の主面間耐圧は0kPaと評価した。20kPaを10分間維持できた場合、上記のように水及び乾燥空気を供給し続け、評価用セル100の温度を80℃に維持しながら、圧力調整装置43の開度を調整し、第二主面への乾燥空気の圧力が40kPaになるように、第二主面への乾燥空気の圧力を昇圧した。その後、水及び乾燥空気を上記のように供給し続け、評価用セル100の温度を80℃に維持しながら、第二主面への乾燥空気の圧力を40kPaに維持できるように圧力調整装置43の開度を調整した。上記の水及び乾燥空気の供給速度、評価用セル100の温度、圧力調整装置43の開度を維持した状態で、第二主面への乾燥空気の圧力を10分間測定した。40kPaを10分間維持できなかった場合には、隔膜の主面間耐圧は20kPaと評価した。40kPaを10分間維持できた場合には、第二主面への乾燥空気の圧力を昇圧し、60kPa、80kPa、100kPaの順に同様の測定を行った。第二主面への乾燥空気の圧力を100kPaに昇圧後、100kPaを10分間維持できた場合には、隔膜の主面間耐圧は100kPaと評価した。ここで、圧力を維持できた場合とは、第二主面への乾燥空気の圧力の変化が、10分間において1kPa以下であることをいう。
(G)透気度
日本工業規格(JIS)P8117で規定された方法に準拠して、透気度(ガーレー値)を測定した。
(H)発電試験
白金担持カーボンを使用した電極を20mmの正方形状に切り出し、エチレンジアミンとエタノールとの混合溶液(重量比でエチレンジアミン/エタノール=3/7)に室温雰囲気下12時間以上浸漬させた。この電極を風乾後、40mmの正方形状に切り出した隔膜とガスケットと共に、燃料電池用評価セルを組み立てた。
上記の燃料電池用評価セルを用いて、電解質を含む液体燃料としてヒドラジン水和物を10重量%と水酸化カリウムを1mol/L含む水溶液を、酸化剤として乾燥空気を用いて、40℃雰囲気下において発電試験を実施した。アノード側へは毎分2mlの液体燃料を供給し、カソード側へは毎分200mlの乾燥空気を供給した。この試験において、電流掃引の可否、限界電流密度、最大出力密度発現時のセル抵抗(電流遮断法を用いて測定。瞬間的に電流を遮断する際の電圧変化からセルの内部抵抗を測定した。)、及び最大出力密度を比較した。
(実施例1)
実施例1では、高分子基材として、膜厚20μm、空孔率40%、透気度(ガーレー値)173sec/100ml・inch2の超高分子量ポリエチレン多孔膜を用いた。この超高分子量ポリエチレン多孔膜に、45kGyの電子線を照射することで、フリーラジカルを生成させた。電子線照射後の超高分子量ポリエチレン多孔膜を、−70℃に冷却し、次の工程を実施するまでの間保管した。次に、グラフトモノマー(M)であるメタクリル酸250gと、メタノール250gとを混合してグラフトモノマー(M)溶液を調製し、温度を25℃に保ったまま窒素ガスによるバブリングを1時間行うことで、グラフトモノマー(M)溶液に残存していた酸素を除去した。このグラフトモノマー(M)溶液に、上記の電子線を照射した超高分子量ポリエチレン多孔膜を投入し、液温を55℃まで昇温させた。液温を55℃に維持させながら、6分間重合処理を行い、超高分子量ポリエチレン多孔膜にメタクリル酸をグラフト重合させた。その後、得られたグラフト多孔膜を引き上げて、水洗して余分なモノマーを洗い流した後、表面部分の水分を除き、親水性を有する親水性隔膜を得た。得られたグラフト多孔膜のグラフト率は40%であった。この隔膜の各物性を測定した。この膜は透気度(ガーレー値)491sec/100ml・inch2であった。この隔膜を用いて発電試験を行った。
(実施例2)
グラフト重合時間を4分にした以外は、実施例1と同様に実施し、グラフト率30%の親水性隔膜を得た。この隔膜の各物性を測定した。この膜は透気度(ガーレー値)366sec/100ml・inch2であった。また、この隔膜を用いて発電試験を行った。
(比較例1)
実施例1で用いた超高分子量ポリエチレン多孔膜を、未処理のまま隔膜として使用した。この隔膜の各物性を測定した。この膜は透気度(ガーレー値)173sec/100ml・inch2であった。また、この隔膜を用いて発電試験を行った。
(比較例2)
高分子基材として、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE、膜厚50μm)の無孔膜を用いた。このETFE膜に、片面30kGyずつ(計60kGy)の電子線を室温真空下において照射することで、フリーラジカルを生成させた。電子線照射後のETFE膜を、−70℃に冷却し、次の工程を実施するまでの間保管した。次に、4−(クロロメチル)スチレン28gとキシレン12gとを混合してモノマー溶液を調製した。次に、このモノマー溶液を窒素ガスでバブリングすることによって、モノマー溶液内の酸素を除去した。そして、モノマー溶液に、上記の電子線を照射したETFE膜を投入し、液温を70℃まで昇温させた。液温を70℃に維持させながら、2時間浸漬することによってグラフト重合を行い、ETFE膜にクロロメチルスチレンをグラフト重合させた。得られた膜のグラフト率は43.5%であった。次いで、トリメチルアミン水溶液に、上記グラフト膜を室温で24時間浸漬し、これによって、クロロメチル基の部分の4級化処理を行った。4級化処理後のグラフト膜をエタノールで30分間洗浄した後、1規定の塩酸を含むエタノール溶液で30分間洗浄し、さらに純水で洗浄した。このようにして、高分子基材がETFEフィルムであり、塩素イオン型の4級アンモニウム塩基を有する膜を得た。この隔膜の各物性を測定した。また、この隔膜を用いて発電試験を行った。
含水性、面積膨潤率、重量維持率、隔膜の主面間耐圧の結果を表1にまとめて示す。また、実施例1〜2、比較例1〜2の隔膜を用いて、電池試験を行った。結果を表2にまとめて示す。表1において、PEは超高分子量ポリエチレン、CMSはクロロメチルスチレン、TMAはトリメチルアミンを示す。
Figure 2016015286
比較例1で得られた隔膜を用いて耐圧性試験を行ったところ、第二主面への乾燥空気の圧力80kPaを維持できなかった。ただし、耐圧性試験後の隔膜は、隔膜の外観には変化は見られなかった。
Figure 2016015286
比較例1(親水性官能基を有しないポリエチレン多孔膜)では、電流を取り出せなかったため、他の発電試験を実施できなかった。比較例2(ETFE無孔膜)では、電流は流れたが、セルの内部抵抗が高く限界電流密度が低かった。これに対し実施例1〜2(ポリエチレン多孔膜)では、電流を取り出すことができた。すなわち、実施例1〜2ではイオン伝導が可能であった。また、限界電流密度は比較例2と比べて高く、最大出力密度発現時のセル抵抗が比較例2よりも低くなった。
1 膜−電極接合体(MEA)
2 隔膜
3 アノード触媒層
4 カソード触媒層
11、21 ガスケット
11a、21a 開口部
12、22 セパレータ
12a、22a 流路
13、23 集電板
14、24 エンドプレート
18、19 流路
28、29 流路
15、25 ラバーヒーター
38、39 配管
41 熱電対
42 圧力計
43 圧力調整装置
48、49 配管
100 評価用セル

Claims (7)

  1. 液体燃料電池用隔膜であって、
    高分子多孔膜と、
    前記高分子多孔膜に導入されたグラフト鎖と、
    を備え、
    前記グラフト鎖は親水性官能基を含む、
    液体燃料電池用隔膜。
  2. 前記親水性官能基が、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基及びリン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つである、
    請求項1に記載の液体燃料電池用隔膜。
  3. 前記液体燃料電池がアルカリ形である、
    請求項1又は2に記載の液体燃料電池用隔膜。
  4. 前記グラフト鎖はアニオン交換能を有する官能基を実質的に有しない、
    請求項3に記載の液体燃料電池用隔膜。
  5. 前記高分子多孔膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体燃料電池用隔膜。
  6. 前記グラフト鎖が、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及びスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1つのモノマーを重合して得られた、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体燃料電池用隔膜。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体燃料電池用隔膜を備えた膜−電極接合体。
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