JP2016015284A - アルカリ形液体燃料電池用隔膜及びそれを備えた膜−電極接合体 - Google Patents

アルカリ形液体燃料電池用隔膜及びそれを備えた膜−電極接合体 Download PDF

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武史 仲野
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Abstract

【課題】アルカリ形液体燃料電池の特性の向上に寄与できるアルカリ形液体燃料電池用隔膜を提供する。
【解決手段】メタノール保液率が20%以上の多孔膜である、アルカリ形液体燃料電池用隔膜である。ここで、メタノール保液率とは、予め長辺50mm短辺10mmの矩形に切り出し、23℃相対湿度50%の雰囲気下に12時間以上静置した隔膜を試験片とし、23℃相対湿度50%の雰囲気下でメタノールの液面に対して矩形の長辺が垂直になるとともに試験片の底部から5mmの部分がメタノール中に浸漬する状態でメタノールに対して試験片を保持し、この状態を1分間維持した後の液面からの吸液高さの長辺に対する比率である。
【選択図】図1

Description

本発明は、アルカリ形液体燃料電池用隔膜及びそれを備えた膜−電極接合体に関する。
高分子電解質型燃料電池(PEFC)は、燃料電池としては低い温度での動作が可能であるとともに、出力密度が高い等の利点を有し、将来の普及に期待が寄せられている。PEFCは、アノードとカソードとの間に隔膜を備えており、隔膜としてはイオン伝導性を有する高分子電解質膜が用いられる。この隔膜としては、カチオン交換膜が用いられてきた。近年では、白金を触媒に用いることなく発電が可能なアニオン交換膜を用いたPEFCが報告されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
一方、水素よりも取り扱いが容易なメタノール等の液体を燃料として用いた燃料電池(液体燃料電池)が検討されている。
特開2000−331693号公報 特表2010−516853号公報
アニオンの移動を利用した液体燃料電池(以下、アルカリ形液体燃料電池)においては、アノード側には燃料が、カソード側には空気等の酸化剤が供給される。また、気体を燃料とする燃料電池と同様、液体燃料電池にも、隔膜と触媒層とが一体化した膜−電極接合体(MEA)が備えられる。
アルカリ形液体燃料電池においては、カソードでの酸素還元反応に水が必要である。この水を供給するために、一般に加湿器等の補機類を用いて、電池の外部から酸化剤を加湿する手段がとられている。しかし、燃料電池の単位容積当たりの発電容量の向上、燃料電池システムの小型化及び軽量化、燃料電池システムの製造コストの低減の観点から、補機類は可能な限り省略されることが望ましい。補機類を省略するためには、アノード側からカソード側へと隔膜を透過した水を使用することが考えられる。この場合、良好に水を透過できる隔膜を使用することが考えられる。
本発明は、アルカリ形液体燃料電池の特性の向上に寄与できるアルカリ形液体燃料電池用隔膜を提供することを目的とする。
本発明は、
メタノール保液率が20%以上の多孔膜である、
アルカリ形液体燃料電池用隔膜、を提供する。
ここで、メタノール保液率とは、予め長辺50mm短辺10mmの矩形に切り出し、23℃相対湿度50%の雰囲気下に12時間以上静置した隔膜を試験片とし、23℃相対湿度50%の雰囲気下でメタノールの液面に対して前記矩形の前記長辺が垂直になるとともに前記試験片の底部から5mmの部分が前記メタノール中に浸漬する状態で前記メタノールに対して前記試験片を保持し、前記状態を1分間維持した後の前記液面からの吸液高さの前記長辺に対する比率である。
別の側面において、本発明は、
本発明の隔膜を備えた膜−電極接合体(MEA)、を提供する。
本発明によれば、燃料の保持率が良好であり、アルカリ形液体燃料電池の特性の向上に寄与できるアルカリ形液体燃料電池用隔膜を提供することができる。本発明によれば、この隔膜の特性を活かした膜−電極接合体(MEA)を得ることができる。
本発明のMEAの一例を模式的に示す断面図である。 耐圧性試験に用いる評価用セルを模式的に示す分解斜視図である。 図2のIII−III面における模式的な評価用セルの縦断面図である。 耐圧性試験に用いる評価用セルを模式的に示す正面図である。
本発明の一実施形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下において、アルカリ形液体燃料電池又はこの燃料電池に用いられるMEAもしくは隔膜を例として述べる。
本実施形態のMEAは、アルカリ形液体燃料電池内における使用に適している。この液体燃料電池は、MEA以外の部分に特に限定はなく、公知の部材を適用できる。
以下で述べる液体燃料電池は、本実施形態のMEAを備えたアルカリ形液体燃料電池であり、アノード側には燃料液が、カソード側には酸化剤が供給される。酸化剤は、例えば空気である。
燃料液は、具体的には、燃料を水に溶解した燃料水溶液であり、電解質を溶解している。燃料は、水に溶解可能であれば特に限定はなく、例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、ヒドラジン(水和物)、アンモニア等のアミン類、水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。燃料としては、反応性が高く、発電原理上CO2を発生しないことから、ヒドラジン(水和物)が好ましい。
燃料の供給量は、燃料液中の燃料の濃度や供給速度(流量)によって制御することが可能である。必要な燃料の量は、取り出す電流量に応じて変化する。従って、取り出す電流量に応じてアノード側に供給する燃料の供給量を制御することが好ましい。取り出す電流量に対して過剰の燃料を供給すると、隔膜を透過する燃料が増加することがある。
電解質は、燃料液に溶解でき、燃料電池反応においてイオン伝導体として機能する電解質であれば特に限定されない。例えば、アルカリ形液体燃料電池においてはアニオンがイオン伝導体として働くため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物イオン(OH-イオン)の解離が可能な電解質を用いることが好ましい。二酸化炭素との反応物である炭酸カリウムが水に溶解しやすく、析出しにくいことから、電解質としては水酸化カリウムが特に好ましい。ただし、水に溶解可能であって水に溶解したときにイオンを供給できるその他の無機塩、イオン液体等を電解質として用いることもできる。
燃料液中の電解質の濃度は、燃料液に溶解できれば特に限定されないが、例えば重量基準で0.5〜40%、特に1〜20%である。
本実施形態のMEAが設置された液体燃料電池において、電解質がイオン伝導性を担う点に本実施形態の特徴があり、この点が一般に用いられる液体燃料電池との相違点である。一般に用いられる液体燃料電池では、隔膜にアニオン交換膜を用いており、このアニオン交換膜の有するアニオン交換基がイオン伝導性を担う。従って、アニオン交換基が劣化すると、液体燃料電池の性能が低下する。これに対し、アニオン交換基を有しない本実施形態のMEAでは、アニオン交換基の劣化は考慮する必要が無い。
以下、MEAについて詳細を述べる。
本実施形態のMEAは、本発明の隔膜と、隔膜の表面に配置された触媒層とを備えている。
本実施形態のMEAでは、隔膜の表面に触媒層が配置されている。隔膜と触媒層とは、典型的には触媒インクのスプレー塗布などの加工工程を経て一体化されている。通常、触媒層は、アノード触媒層とカソード触媒層とを含んでいる。図1に、本実施形態のMEAの一例を示す。図1に示すMEAは、隔膜2とアノード触媒層3とカソード触媒層4とを備え、アノード触媒層3が隔膜の一方の主面に、カソード触媒層4が隔膜2の他方の主面にそれぞれ配置されている。
触媒層は、アルカリ形液体燃料電池に使用する公知のMEAが備える触媒層を用いることができる。触媒は、酸形燃料電池とは異なり、必ずしも白金のような貴金属である必要はなく、例えば、ニッケル、コバルト、鉄等の卑金属を使用可能である。含まれる具体的な触媒等、触媒層の構成は、MEAのアノード側(アノード触媒層)とカソード側(カソード触媒層)とで異なっていても同一であってもよい。
本実施形態のMEAは、本実施形態の効果を阻害しない限り、隔膜及び触媒層以外の任意の部材を有することができる。
以下、MEAに備えられている隔膜について詳細を述べる。
本実施形態の隔膜は、メタノール保液率が20%以上の多孔膜である。ここで、隔膜のメタノール保液率とは、予め長辺50mm短辺10mmの矩形に切り出し、23℃相対湿度50%の雰囲気下に12時間以上静置した隔膜を試験片とし、23℃相対湿度50%の雰囲気下でメタノールの液面に対して矩形の長辺が垂直になるとともに試験片の底部から5mmの部分がメタノール中に浸漬する状態でメタノールに対して試験片を保持し、この状態を1分間維持した後の液面からの吸液高さの長辺に対する比率である。
本発明では、隔膜の有する燃料液の保液率を評価するために、隔膜のメタノールの保持率(メタノール保液率)を測定している。メタノールは、水に溶解させて燃料溶液として液体燃料電池に供給することができる。さらに、メタノールは、燃料溶液に用いる水と、その構造及び分子量が相対的に類似している。従って、メタノール保液率を測定することによって、隔膜の有する燃料液の保持率を評価する妥当な結果が得られると考えられる。
燃料液を保液できる隔膜は、燃料液に溶解された電解質を燃料液とともに保持することができる。この電解質が燃料電池におけるイオン伝導性を担うため、メタノール保液率の良好な隔膜を用いるとイオン伝導性が良好になり、発電時の燃料電池における電気抵抗を抑制することができる。隔膜に含まれる電解質の量が少なすぎると、発電できない場合があり、発電できた場合でも発電時の燃料電池における電気抵抗が大きくなることがある。上記の範囲のメタノール保液率を有する隔膜は、燃料液に含まれる水を良好に保持することができる。この水がカソード側に透過するため、メタノール保液率の良好な隔膜を用いるとカソード触媒に水を良好に供給できると考えられる。従って、本実施形態の隔膜を用いるとカソード触媒へ水を供給するための加湿器等の補機類は必須でない。一方、隔膜のメタノール保液率が低すぎると、隔膜の有する細孔に充分に燃料液が補填されない。このような隔膜は、カソード側に供給される酸化剤の圧力を保てず、酸化剤が隔膜を通じてアノード側へリークすることがある。このように本実施形態の隔膜は、カソードにおける酸素還元反応の効率の向上に寄与でき、電池の発電効率の向上に寄与し得る。
多孔膜としては、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知の多孔膜を用いることができる。例えば、無機基材からなる多孔膜、高分子基材からなる多孔膜が挙げられる。
本実施形態の隔膜は、第一主面に水を供給しながら、第一主面と反対側の第二主面に空気を供給して、空気の圧力を上昇させて測定した主面間耐圧(隔膜の主面間耐圧)が60kPa以上であることが好ましく、80kPa以上であることがより好ましく、100kPa以上であることがさらに好ましい。隔膜の主面間耐圧とは、隔膜が維持できる主面間の圧力の最大値であり、具体的には後述する試験によって測定することができる。主面間耐圧が大きい隔膜を用いることによって、燃料電池のカソード側に供給される酸化剤の圧力を保つことができ、酸化剤の燃料極(アノード)側へのリークが生じにくくなる。
隔膜の主面間耐圧は、具体的には、図2〜4に示す評価用セル100を用いて以下の方法により測定することができる。
第一主面及び第一主面と反対側の第二主面を有する隔膜2を準備し、一辺の長さが2cmの正方形の開口部11a、21aを有する、一対のガスケット11、21で隔膜2を挟持する。ガスケット11、21の外側に、サーペンタイン構造の流路12a、22a付きの一対のセパレータ12、22、一対の集電板13、23、一対のエンドプレート14、24をこの順に配置して隔膜2を挟持する。部材の各接触面から空気、水が漏洩しないように、ボルト等の固定部品(図示せず)を用いて各部材を締結し、評価用セル100を形成する。
評価用セル100は、流路18、19、28、29を有する。流路18、19はそれぞれ水の供給、吐出用の流路であり、流路28、29はそれぞれ乾燥空気の供給、吐出用の流路である。各流路18、19、28、29はエンドプレートに開口を有する。流路18、19はエンドプレート14、集電板13及びセパレータ12を貫通し、流路12aと連結する。
隔膜2の第一主面及び第二主面が鉛直方向に沿うように評価用セル100を設置し、この状態の評価用セル100に水及び乾燥空気の供給を開始する。第一主面へは毎分2mlの水を流路18に接続した配管38を介して供給し、第二主面へは毎分500mlの乾燥空気を流路28に接続した配管48を介して供給する。上記のように水を供給し続けることによって、セル100の第一主面側の内部は供給された水で満たされ、隔膜2の第一主面は常に水と接触する。この際、エンドプレート14、24に設けたラバーヒーター15、25を用いて評価用セル100の温度が80℃になるように評価用セル100を加熱する。
次に、水及び乾燥空気を上記のように供給し続け、評価用セル100の温度を80℃に維持しながら、流路29に接続した配管49に設けた圧力調整装置43(例えば、バルブ)の開度を調整し、隔膜2の第二主面への乾燥空気の圧力が20kPaになるように、第二主面への乾燥空気の圧力を昇圧する。乾燥空気の圧力は配管49に設けた圧力計42で測定する。その後、水及び乾燥空気を上記のように供給し続け、評価用セル100の温度を80℃に維持しながら、第二主面への乾燥空気の圧力を20kPaに維持できるように圧力調整装置43の開度を調整する。上記の水及び乾燥空気の供給速度、評価用セル100の温度、圧力調整装置43の開度を維持した状態で、第二主面への乾燥空気の圧力を10分間測定する。20kPaを10分間維持できなかった場合には、隔膜の主面間耐圧は0kPaと評価する。20kPaを10分間維持できた場合には、第二主面への乾燥空気の圧力を昇圧し、40kPa、60kPa、80kPa、100kPaの順に同様の測定を行う。第二主面への乾燥空気の圧力を100kPaに昇圧後10分間維持できた場合には、隔膜の主面間耐圧は100kPaとする。ここで、圧力を維持できた場合とは、第二主面への乾燥空気の圧力の変化が、10分間において1kPa以下であることをいう。
本実施形態の隔膜は、アニオン交換能を有する官能基(アニオン交換基)を実質的に有していなくてもよい。実質的に有しないとは、隔膜の重量に対するアニオン交換能を有する官能基の量が0.1mmol/g以下であることを言い、好ましくは0.05mmol/g以下であることを言う。アニオン交換能を有する官能基とは、例えば4級アンモニウム塩基、4級ホスホニウム塩基等が挙げられる。
本実施形態の隔膜は、親水性官能基を備えることが好ましい。親水性官能基は、親水性を有すれば特に限定されないが、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられ、特にカルボキシル基である。親水性官能基は、イオン伝導性を促進できる観点から、イオン伝導性を有する官能基であってもよい。親水性官能基を備えることによって、メタノール保液性がより良好になり得る。
以下、高分子基材からなる多孔膜を例として取り上げつつ、詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。親水性官能基等の共通する部分は無機基材からなる多孔膜においても同様である。
多孔膜は、例えば親水性官能基を有する重合性単量体を重合することによって形成できる。多孔膜が親水性官能基を備えていない場合には、親水化処理を実施して多孔膜の表面に親水性官能基を導入してもよい。
好ましい実施形態では、親水性官能基は、親水化処理を実施して多孔膜の表面に導入される。本発明の効果を阻害しない限り、親水化処理の種類は特に限定されず、例えばグラフト重合処理、コロナ処理、プラズマ処理、高分子材料又は無機材料を用いたスパッタ処理、スルホン化処理、界面活性剤又は親水性ポリマーを用いた処理、親水性無機粒子を用いたコーティング処理等の親水化処理を挙げることができる。
例えば、親水性ポリマーを用いた処理においては、親水性ポリマーを含む溶液を高分子基材に塗工し、高分子基材の表面及び細孔壁に親水性ポリマー膜を形成することによって、多孔膜の表面に親水性官能基を付加してもよい。この方法では、親水性ポリマーを塗布して形成された膜の厚みによって、親水性官能基の量を調整することができ、また膜の厚みによって被膜中の隔膜の孔径の調整が可能となる。
親水化処理は、均一系で処理できる観点から、グラフト重合処理を用いて実施することが好ましい。グラフト重合処理では、高分子基材にグラフト鎖を形成するモノマー(以下、「グラフトモノマー(M)」)を導入する。すなわち、液体燃料電池用の隔膜は、高分子基材からなる多孔膜(高分子多孔膜)と、高分子多孔膜に導入されたグラフト鎖とを備え、グラフト鎖は親水性官能基を含むことが好ましい。
グラフトモノマー(M)は、親水性官能基を有していてもよく、親水性官能基を導入し得る部位を有していてもよい。すなわち、親水性官能基は、グラフトモノマー(M)が有していてもよく、グラフト重合後にグラフト鎖に導入されてもよい。
好ましい一形態において、グラフトモノマー(M)は炭素−炭素不飽和結合と親水性官能基とを有する。グラフトモノマー(M)は、特に限定されないが、例えばアクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、2−ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸の誘導体モノマー、酢酸ビニル等の酢酸ビニル系モノマー、アリルアミン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン等の窒素含有モノマー、スチレンスルホン酸ナトリウム等のスチレン誘導体モノマーが挙げられる。これらの中でもアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及びスチレン誘導体モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1つが含まれることが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1つが含まれることが好ましい。
グラフトモノマー(M)は、グラフトモノマー(M)単独で重合に供してもよく、グラフトモノマー(M)を溶媒に溶解させた溶液(グラフトモノマー(M)溶液)として準備してもよい。
グラフトモノマー(M)を溶解させる溶媒に特に限定はないが、グラフトモノマー(M)は溶解するが、高分子基材は溶解しない溶媒を用いると、グラフトモノマー(M)と高分子基材との分離が容易である。また、副生成物であるグラフトモノマー(M)のみから形成されたポリマーの溶解が可能である溶媒を用いると、重合液を均一に保つことができる。なお、グラフトモノマー(M)、グラフトモノマー(M)のみから形成されたポリマー及び高分子基材の溶媒への溶解性は、グラフトモノマー(M)、グラフトモノマー(M)のみから形成されたポリマー及び高分子基材の構造又は極性等によって異なることがあるため、これらの化合物の溶解性に応じて適宜溶媒を選択してもよい。また、2種以上の化合物を混合して溶媒として用いてもよい。
グラフトモノマー(M)溶液に含まれる溶媒は具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、フェノール、クレゾール等のフェノール類等の芳香族化合物を挙げることができる。このような溶媒を用いることによって、グラフト率の高い隔膜を得ることができる。また、芳香族化合物は、副生成物であるグラフトモノマー(M)のみからなるポリマーを溶解するため、重合液を均一に保つことができる。
グラフトモノマー(M)溶液中のグラフトモノマー(M)の濃度は、グラフトモノマー(M)の重合性や目標とするグラフト率に応じて定めればよいが、例えばグラフトモノマー(M)溶液全体の重量に対して20重量%以上のグラフトモノマー(M)を含ませることが好ましい。グラフトモノマー(M)の濃度が20重量%以上の溶液を用いることによって、グラフト反応が充分に進行しない事態を回避しやすくする。
酸素の存在によってグラフト重合反応が阻害されることを防ぐため、グラフトモノマー(M)又はグラフトモノマー(M)溶液中の酸素は、凍結脱気や窒素ガス等を用いたバブリング等の公知の方法を用いて除去することが好ましい。
グラフト重合では、均一系で処理できる観点から、放射線グラフト重合処理を用いることが好ましい。具体的には、高分子基材に放射線を照射し、放射線照射後の高分子基材とグラフトモノマー(M)又はグラフトモノマー(M)溶液とを接触させてグラフト重合反応をさせることによって形成されることが好ましい。
高分子基材に照射される放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等の電離放射線があり、特にγ線又は電子線が好ましい。照射線量は、好ましくは1kGy〜400kGyの範囲にあり、より好ましくは10kGy〜300kGyの範囲にある。グラフト率は、放射線の照射量によって制御することができる。照射線量が低すぎるとグラフト率が低くなることがある。照射線量が多くなりすぎると、高分子基材の劣化や過剰な重合反応によって隔膜の機械的強度の低下が生じることがある。
放射線照射後の高分子基材は、低温(例えば−30℃以下)で保持してもよい。
酸素の存在によってグラフト重合反応が阻害されることを防ぐため、グラフト重合は、酸素濃度ができる限り低い雰囲気下で行うことが好ましく、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で実施することがより好ましい。
グラフト重合を実施する温度は、例えば0℃〜100℃であり、特に40〜80℃である。グラフト重合を実施する反応時間は、例えば2分〜12時間程度である。グラフト率は、これらの反応温度、反応時間によって制御することが可能である。
グラフト率は、例えば5〜200%の範囲にあり、15%〜100%の範囲にあることが好ましい。このようなグラフト率を有することにより、保液率の良好な多孔膜を得ることが可能となる。なお、グラフト率とは、グラフト重合前の膜(高分子基材)の重量に対する、グラフト重合後の膜(グラフト膜)の重量とグラフト重合前の膜の重量の重量差の比率を示す。
グラフト重合反応の一例として、固液二相系における反応例を述べる。まず、グラフトモノマー(M)と溶媒とを含むグラフトモノマー(M)溶液をガラスやステンレス等の容器に入れる。次に、グラフト反応を阻害する溶存酸素を除去するために、グラフトモノマー(M)溶液中の減圧脱気及び不活性ガス(窒素ガス等)によるバブリングを行う。その後、放射線照射後の高分子基材をグラフトモノマー(M)溶液に投入してグラフト重合を行う。グラフト重合によって高分子基材を構成するポリマーにグラフト鎖が導入される。次に、得られた膜を反応溶液から取り出して濾別する。さらに、溶媒、未反応のグラフトモノマー(M)、及びグラフトモノマー(M)のみからなるポリマーを除去するために、得られた膜を適量の溶剤で3〜6回洗浄した後、乾燥させる。溶剤としては、グラフトモノマー(M)及びグラフトモノマー(M)のみからなるポリマーが容易に溶解し、グラフト膜が溶解しない溶剤を用いればよい。例えば、溶剤として、水、トルエンやアセトン等を用いることも可能である。
本実施形態において用いる高分子基材の材質は特に限定されず、発明の効果を阻害しない範囲内で公知の樹脂を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン系樹脂、ビスフェノールA型エポキシポリマー等のエポキシ樹脂;ポリフェニレンサルファイド等のポリサルファイド系樹脂;ポリエーテルケトン等のポリエーテル系樹脂;ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、ポリテトラフフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂の中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ビスフェノールA型エポキシポリマー、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン及びポリテトラフフルオロエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種が含まれることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド及びポリエーテルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種が含まれることがさらに好ましい。耐汚染性、耐腐食性、高分子基材の製造価格等の観点から、ポリエチレンが好ましく、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンがより好ましい。高分子基材の強度及び、耐熱性向上の観点から、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンが特に好ましい。なかでも、高強度の高分子基材を得る観点から、重量平均分子量50万以上、特に100万以上の超高分子量ポリエチレンが好ましい。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
これらの樹脂は、架橋されていてもよい。架橋方法は、特に限定されず、樹脂に電子線等を照射する方法、シラン化合物、有機過酸化物等の架橋剤を加える方法等、公知の方法を用いることができる。架橋された樹脂を用いると、高分子基材の強度が向上し、電極の短絡の防止効果が向上することがある。
これらの高分子基材の多孔化方法は特に限定されず、乾式成膜法、湿式成膜法等の公知の方法を用いることができる。これらの方法には熱誘起相分離又は非溶媒誘起相分離を利用することができる。
例えば、無機系発泡剤、有機系発泡剤又は超臨界流体を用いて発泡処理を実施する方法、相溶性の低い高分子基材と相分離化剤とを混合後相分離させ、相分離化剤を溶媒(例えば超臨界二酸化炭素)によって抽出又は加熱して抽出する処理方法、成膜後に抽出可能な成分を含有する成形体を形成し相分離後、切削して膜を形成し、この膜から抽出可能な成分を除去する処理方法が挙げられる。
また、金型(例えば円筒状)に充填した粉末状の高分子基材を、水蒸気を用いて加熱し、焼結して成形体を形成し、この形成された成形体(例えば円筒状のブロック体)を所定の厚みに切削することによって、多孔膜を得てもよい。樹脂及び溶媒を含む組成物を溶融混練し、押出し後冷却してシート状成形物とした後、脱溶媒処理してもよく、又は押出後のシート状成形物を圧延若しくは一軸延伸した後、溶媒を除去することにより多孔膜を得てもよい。
高分子多孔膜の空孔率は、燃料電池の運転条件又は使用条件等に応じて適宜選択することができる。例えば空孔率が5〜95%の範囲にあることが好ましく、10〜70%の範囲にあることがより好ましく、10%〜50%の範囲にあることがさらに好ましい。空孔率が大きくなりすぎると、燃料の透過が多くなることがある。また、隔膜の耐圧性が低下し、酸化剤の圧力を保てないことがある。
高分子多孔膜の平均孔径は1nm〜1000nmの範囲にあることが好ましく、2nm〜500nmの範囲にあることがより好ましく、5nm〜300nmの範囲にあることがさらに好ましい。平均孔径が大きくなりすぎると、電極間の短絡が生じることがある。また隔膜の耐圧性が低下し、隔膜が酸化剤の圧力に耐えることが困難になることがある。また、燃料の透過量が多くなることがある。親水化処理によって、隔膜全体の平均孔径は変動することがあるので、その変動を想定して多孔膜の平均孔径を調整することが好ましい。
別の実施形態において、グラフトモノマー(M)は、炭素−炭素不飽和結合と親水性官能基を導入しえる部位とを有する。親水性官能基を導入しえる部位とは、例えばハロゲン化メチル基、ハロゲン化エチル基、ハロゲン化プロピル基、及びハロゲン化ブチル基等のハロゲン化アルキル基、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸又はアクリルホスホン酸等のアルキルエステル等が挙げられる。グラフトモノマー(M)は、スチレン、クロロメチルスチレン、ブロモブチルスチレン等のスチレン誘導体が挙げられる。これらのモノマー(M)は単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
さらに別の実施形態において、本発明の特性を有する隔膜は、親水性ゲル、親水性官能基を有する高分子基材からなる無孔膜、又は親水性官能基を有する高分子材料が細孔に充填された多孔膜である。必要に応じて、親水性官能基を有する高分子材料は、架橋構造を有していてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における物性は以下の方法を用いて測定した。
(A)フィルム厚
1/10000直読ダイヤル式膜厚測定器により測定した。
(B)空孔率
1/10000直読ダイヤル式膜厚測定器により測定した厚みを用い、フィルムの単位面積Sあたりの重量W、平均厚みt、密度dから下式により算出した値を使用した。
空孔率(%)=(1−(104×W/S/t/d))×100
(C)メタノール保液率
予め長辺50mm短辺10mmの矩形に切り出し、23℃相対湿度50%の雰囲気下に12時間以上静置した隔膜を試験片とした。23℃相対湿度50%の雰囲気下でメタノールの液面に対して矩形の長辺が垂直になるとともに試験片の底部から5mmの部分がメタノール中に浸漬する状態でメタノールに対して試験片を保持した。メタノール保液率は、この状態を1分間維持した後のメタノールの液面からの吸液高さの長辺に対する比率である。なお、吸液前の試験片は不透明であり、メタノールを吸液した試験片は半透明となる。半透明となった試験片の長さを測定し、吸液高さとした。
(D)耐圧性試験
図2〜4に示す燃料電池用評価セルを評価用セルとして用いて耐圧性試験を行い、隔膜の主面間耐圧を評価した。
主面が一辺4cmの正方形である隔膜2を準備した。一辺の長さが2cmの正方形の開口部11a、21aを有する、一対のガスケット11、21で隔膜2を挟持した。ガスケット11、21の外側に、サーペンタイン構造の流路12a、22a付きの一対のセパレータ12、22、一対の集電板13、23、一対のエンドプレート14、24をこの順に配置して挟持した。部材の各接触面から空気、水が漏洩しないように、ボルト等の固定部品(図示せず)を用いて各部材を締結し、評価用セル100を形成した。
評価用セル100は、流路18、19、28、29を有する。流路18、19はそれぞれ水の供給、吐出用の流路であり、流路28、29はそれぞれ乾燥空気の供給、吐出用の流路である。各流路18、19、28、29はエンドプレートに開口を有する。流路18、19はエンドプレート14、集電板13及びセパレータ12を貫通し、流路12aと連結する。流路28、29も同様である。
隔膜2の主面が鉛直方向に沿うように評価用セル100を設置した。この状態の評価用セル100に水及び乾燥空気の供給を開始した。アノード側の主面(第一主面)へは毎分2mlの水を流路18に接続した配管38を介して供給し、カソード側の主面(第二主面)へは毎分500mlの乾燥空気を流路28に接続した配管48を介して供給した。この際、エンドプレート14、24に設けたラバーヒーター15、25を用いて評価用セル100の温度が80℃になるように評価用セル100を加熱した。評価用セル100の温度は、セパレータ22に設置した熱電対41を用いて測定した。水及び乾燥空気を上記のように供給し続け、評価用セル100の温度を80℃に1時間維持した。
上記状態を1時間維持した後、上記のように水、乾燥空気の供給を続け、かつ評価用セル100の温度を80℃に維持しながら、流路29に接続した配管49に設けた圧力調整装置43の開度を調整し、隔膜2の第二主面への乾燥空気の圧力が20kPaになるように、第二主面への乾燥空気の圧力を昇圧した。乾燥空気の圧力は配管49に設けた圧力計42で測定した。その後、水及び乾燥空気を上記のように供給し続け、評価用セル100の温度を80℃に維持しながら、第二主面への乾燥空気の圧力を20kPaに維持できるように圧力調整装置43の開度を調整した。上記の水及び乾燥空気の供給速度、評価用セル100の温度、圧力調整装置43の開度を維持した状態で、第二主面への乾燥空気の圧力を10分間測定した。20kPaを10分間維持できなかった場合には、隔膜の主面間耐圧は0kPaと評価した。20kPaを10分間維持できた場合、上記のように水及び乾燥空気を供給し続け、評価用セル100の温度を80℃に維持しながら、圧力調整装置43の開度を調整し、第二主面への乾燥空気の圧力が40kPaになるように、第二主面への乾燥空気の圧力を昇圧した。その後、水及び乾燥空気を上記のように供給し続け、評価用セル100の温度を80℃に維持しながら、第二主面への乾燥空気の圧力を40kPaに維持できるように圧力調整装置43の開度を調整した。上記の水及び乾燥空気の供給速度、評価用セル100の温度、圧力調整装置43の開度を維持した状態で、第二主面への乾燥空気の圧力を10分間測定した。40kPaを10分間維持できなかった場合には、隔膜の主面間耐圧は20kPaと評価した。40kPaを10分間維持できた場合には、第二主面への乾燥空気の圧力を昇圧し、60kPa、80kPa、100kPaの順に同様の測定を行った。第二主面への乾燥空気の圧力を100kPaに昇圧後、100kPaを10分間維持できた場合には、隔膜の主面間耐圧は100kPaと評価した。
(E)発電試験
白金担持カーボンを使用した電極を20mmの正方形状に切り出し、エチレンジアミンとエタノールとの混合溶液(重量比でエチレンジアミン/エタノール=3/7)に室温雰囲気下で12時間以上浸漬させた。この電極を風乾後、40mmの正方形状に切り出した隔膜とガスケットと共に、燃料電池用評価セルを組み立てた。
組み立てた燃料電池用評価セルを用いて、電解質を含む燃料液としてヒドラジン水和物を10重量%と水酸化カリウムを1mol/L含む水溶液を、酸化剤として乾燥空気を用いて、40℃雰囲気下において発電試験を実施した。アノード側へは毎分2mlの燃料液を供給し、カソード側へは毎分200mlの乾燥空気を供給した。この試験において、電流掃引の可否、限界電流密度、最大出力密度発現時のセル抵抗(電流遮断法を用いて測定。瞬間的に電流を遮断する際の電圧変化からセルの内部抵抗を測定した。)、及び最大出力密度を比較した。
(実施例1)
実施例1では、高分子基材として、膜厚20μm、空孔率40%、透気度(ガーレー値)173sec/100ml・inch2の超高分子量ポリエチレン多孔膜を用いた。この超高分子量ポリエチレン多孔膜に、45kGyの電子線を照射することで、フリーラジカルを生成させた。電子線照射後の超高分子量ポリエチレン多孔膜を、−70℃に冷却し、次の工程を実施するまでの間保管した。次に、グラフトモノマー(M)であるメタクリル酸250gと、メタノール250gとを混合してグラフトモノマー(M)溶液を調製した。温度を25℃に保ったまま窒素ガスによるバブリングを1時間行うことで、グラフトモノマー(M)溶液に残存していた酸素を除去した。このグラフトモノマー(M)溶液に、上記の電子線を照射した超高分子量ポリエチレン多孔膜を投入し、液温を55℃まで昇温させた。55℃に維持したグラフトモノマー(M)溶液に、多孔膜を6分間浸漬することによってグラフト重合を行い、超高分子量ポリエチレン多孔膜にメタクリル酸をグラフト重合させた。その後、グラフト多孔膜を引き上げて、水洗して余分なモノマーを洗い流した後、表面部分の水分を除き、隔膜を得た。得られたグラフト多孔膜のグラフト率は40%であった。この隔膜の各物性を測定した。この膜は透気度(ガーレー値)491sec/100ml・inch2であった。この隔膜を用いて発電試験を行った。
(実施例2)
グラフト重合時間を4分にした以外は、実施例1と同様に実施し、グラフト率30%の親水性隔膜を得た。この隔膜の各物性を測定した。この膜は透気度(ガーレー値)366sec/100ml・inch2であった。また、この隔膜を用いて発電試験を行った。
(比較例1)
実施例1で用いた超高分子量ポリエチレン多孔膜を、未処理のまま隔膜として使用した。この隔膜の各物性を測定した。この膜は透気度(ガーレー値)173sec/100ml・inch2であった。この隔膜を用いて発電試験を行った。
(比較例2)
高分子基材として、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体(ETFE、膜厚50μm)の無孔膜を用いた。このETFE膜に、片面30kGyずつ(計60kGy)の電子線を室温真空下において照射し、フリーラジカルを生成させた。電子線照射後のETFE膜を、−70℃に冷却し、次の工程を実施するまでの間保管した。次に、4−(クロロメチル)スチレン28gとキシレン12gとを混合してモノマー溶液を調製した。次に、このモノマー溶液を窒素ガスでバブリングすることによって、モノマー溶液内の酸素を除去した。このモノマー溶液に、上記の電子線を照射したETFE膜を投入し、液温を70℃まで昇温させた。70℃に維持したモノマー溶液に、膜を2時間浸漬することによってグラフト重合を行い、ETFE膜にクロロメチルスチレンをグラフト重合させた。得られた膜のグラフト率は43.5%であった。次いで、トリメチルアミン水溶液に、得られた膜を室温で24時間浸漬し、クロロメチル基の部分の4級化処理を行った。4級化処理後のグラフト膜をエタノールで30分間洗浄した後、1規定の塩酸を含むエタノール溶液で30分間洗浄し、さらに純水で洗浄した。このようにして、高分子基材がETFEフィルムであり、塩素イオン型の4級アンモニウム塩基を有する膜を得た。この隔膜の各物性を測定した。また、この隔膜を用いて発電試験を行った。
含水率、メタノール保液率、隔膜の主面間耐圧の結果を表1にまとめて示す。表1において、PEは超高分子量ポリエチレン、CMSはクロロメチルスチレン、TMAはトリメチルアミンを示す。また、実施例1〜2、比較例1〜2で得られた隔膜を用いて、電池試験を行った。結果を表2にまとめて示す。
Figure 2016015284
Figure 2016015284
比較例1で得られた隔膜(ポリエチレン多孔膜、グラフト鎖無し)は、メタノール保液率が17%と低かった。比較例1で得られた隔膜を用いて耐圧性試験を行ったところ、第二主面への乾燥空気の圧力80kPaを維持できなかった。ただし、耐圧性試験後の隔膜は、隔膜の外観には変化は見られなかった。この隔膜を用いて発電試験を行ったところ、電流が掃引されなかった。これに対し、メタノール保液率が20%を超えている実施例1及び2で得られた隔膜を用いると主面間耐圧が向上した。この隔膜をそれぞれ用いて発電試験を行ったところ電池の特性が向上した。
一方、比較例2で得られた隔膜(ETFE無孔膜、グラフト率43.5%)は、アニオン交換基を有する隔膜である。隔膜の有するアニオン交換基がイオン伝導性を有するため、隔膜のメタノール保液率が0%であっても、電流は掃引されたが、セル抵抗が高く、限界電流密度が低かった。これに対し、実施例1で得られた隔膜(ポリエチレン多孔膜、グラフト率40%)を用いたところ、比較例2よりも低い抵抗で電流が掃引された。
1 膜−電極接合体(MEA)
2 隔膜
3 アノード触媒層
4 カソード触媒層
11、21 ガスケット
11a、21a 開口部
12、22 セパレータ
12a、22a 流路
13、23 集電板
14、24 エンドプレート
18、19 流路
28、29 流路
15、25 ラバーヒーター
38、39 配管
41 熱電対
42 圧力計
43 圧力調整装置
48、49 配管
100 評価用セル

Claims (6)

  1. メタノール保液率が20%以上の多孔膜である、
    アルカリ形液体燃料電池用隔膜。
    ここで、メタノール保液率とは、予め長辺50mm短辺10mmの矩形に切り出し、23℃相対湿度50%の雰囲気下に12時間以上静置した隔膜を試験片とし、23℃相対湿度50%の雰囲気下でメタノールの液面に対して前記矩形の前記長辺が垂直になるとともに前記試験片の底部から5mmの部分が前記メタノール中に浸漬する状態で前記メタノールに対して前記試験片を保持し、前記状態を1分間維持した後の前記液面からの吸液高さの前記長辺に対する比率である。
  2. 第一主面に水を供給しながら、前記第一主面と反対側の第二主面に空気を供給して、前記空気の圧力を上昇させて測定した主面間耐圧が60kPa以上である、
    請求項1に記載のアルカリ形液体燃料電池用隔膜。
  3. アニオン交換能を有する官能基を実質的に有しない、
    請求項1又は2に記載のアルカリ形液体燃料電池用隔膜。
  4. 親水性官能基を備える、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルカリ形液体燃料電池用隔膜。
  5. 前記親水性官能基が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基及びリン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つである、
    請求項4に記載のアルカリ形液体燃料電池用隔膜。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の隔膜を備えた膜−電極接合体。
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