JP7166118B2 - アルカリ水電解用隔膜 - Google Patents

アルカリ水電解用隔膜 Download PDF

Info

Publication number
JP7166118B2
JP7166118B2 JP2018181066A JP2018181066A JP7166118B2 JP 7166118 B2 JP7166118 B2 JP 7166118B2 JP 2018181066 A JP2018181066 A JP 2018181066A JP 2018181066 A JP2018181066 A JP 2018181066A JP 7166118 B2 JP7166118 B2 JP 7166118B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
diaphragm
alkaline water
water electrolysis
resin
mass
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018181066A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020050908A (ja
Inventor
信也 中山
寛信 芥川
和樹 古性
弘子 原田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Shokubai Co Ltd filed Critical Nippon Shokubai Co Ltd
Priority to JP2018181066A priority Critical patent/JP7166118B2/ja
Publication of JP2020050908A publication Critical patent/JP2020050908A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7166118B2 publication Critical patent/JP7166118B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/36Hydrogen production from non-carbon containing sources, e.g. by water electrolysis
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P20/00Technologies relating to chemical industry
    • Y02P20/10Process efficiency
    • Y02P20/133Renewable energy sources, e.g. sunlight

Description

本発明は、アルカリ水電解用隔膜に関する。
従来、低炭素社会の実現に向けて、太陽光、風力、地熱等の自然エネルギーを利用した再生可能エネルギーの導入が進められている。再生可能エネルギーのうち風力発電や太陽光発電等は気象条件によって発電量が変動するため、電力の需給バランスが取れず、余剰電力が生まれてしまう。そのような余剰電力をエネルギーの形で貯蔵・利用するためのPower to Gasという技術が近年注目されている。上記技術は、具体的には、余剰電力を水の電気分解を利用して水素やメタン等の気体燃料に変換し、貯蔵・利用する技術である。
水の電気分解は、水素の工業的な製造方法の一つとして知られており、一般的に、導電性を高めるために水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等を電解質として添加した水に、直流電流を印加することにより行われている。そのような水の電気分解には、陽極室と陰極室を有し、これらが隔膜により仕切られた電解槽が使用される。
水の電気分解は、電子(又はイオン)の移動により行われる。そのため、電気分解を効率よく行うためには、隔膜には高いイオン透過性が必要とされる。また、陽極室で発生した酸素と、陰極室で発生した水素とを遮断し得るガスバリア性が必要とされる。水の電気分解では、30%程度の高濃度のアルカリ性水溶液が使用され、80~90℃程度で行われるので、隔膜には耐高温や耐アルカリ性も必要とされる。
水の電気分解に使用されるアルカリ水電解用隔膜としては、これまでに種々提案されている。
例えば、特許文献1および特許文献2では、シート状の多孔性支持体と、有機高分子樹脂を含む微多孔膜と、を備え、前記多孔性支持体の片面又は両面に前記微多孔膜が積層されたアルカリ水電解用隔膜が提案されている。これらの隔膜では、樹脂のみからなる表面ならびに内部の孔径を特定している。
アルカリ水電解用隔膜としては、イオン伝導性を確保しつつより高いガスバリア性を発現する隔膜が求められていた。
特開2013-204146号公報 特開2014-129563号公報
本発明の課題は、イオン伝導性を確保しつつより高いガスバリア性を発現するアルカリ水電解用隔膜を提供することにある。
本発明者らは、アルカリ水電解用隔膜の表面における細孔径を制御することにより、イオン伝導性を確保しつつより高いガスバリア性を発現するアルカリ水電解用隔膜を提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明のアルカリ水電解用隔膜は、有機ポリマーと無機粒子とを含み、バブルポイント法による細孔径分布解析において、最大径が0.1μm未満であり、かつ0.04μm未満の孔の面積が30%以下である。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、イオン伝導性を確保しつつより高いガスバリア性を発現し、アルカリ水の電気分解に好適に用いることができる。
本発明のアルカリ水電解用隔膜の一形態を模式的に示す図である。 実施例のアルカリ水電解用隔膜の支持体層側表面のFE-SEM写真である。 実施例および比較例のアルカリ水電解用隔膜の、バブルポイント法による細孔径分布を示すグラフである。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
1.アルカリ水電解用隔膜
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、有機ポリマーと無機粒子とを含み、バブルポイント法による細孔径分布解析において、最大径が0.1μm未満であり、かつ0.04μm未満の孔の面積が30%以下である。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、イオン伝導性を確保しつつより高いガスバリア性を発現する隔膜である。
1-1 有機ポリマー
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、有機ポリマーを含む。有機ポリマーは無機粒子を保持する。有機ポリマーは無機粒子を保持する隔壁として機能し、後述する無機粒子の親水性表面の減少を最小限なものとしながら、アルカリ溶液中で隔膜から無機粒子が脱落するのを抑制することができる。
上記有機ポリマーとしては、無機粒子の粒子表面を保持することができ、本発明の効果を発揮できる樹脂(R)であれば特に限定されない。上記樹脂(R)としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;又は、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド等の芳香族炭化水素系樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、更に耐熱性、耐アルカリ性に優れたアルカリ水電解用隔膜とすることができる点で、芳香族炭化水素系樹脂が好ましい。
上記芳香族炭化水素系樹脂としては、より具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド等が挙げられる。なかでも、より一層優れた耐アルカリ性を付与することができる点で、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、及びポリフェニルスルホンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、製造上の観点で、ポリスルホンがより好ましい。
ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、及びポリフェニルスルホンからなる群より選択される少なくとも1種を用いることで、得られるアルカリ水電解用隔膜の抵抗値が更に低くなり、また、耐アルカリ性が更に高くなることで、アルカリ溶液中で長時間使用した場合の寸法や質量、抵抗値の安定性や空孔の発生抑制効果により優れたものとなる。
上記樹脂(R)の含有量は、好ましくはアルカリ水電解用隔膜100質量%中3~40質量%である。上記樹脂(R)の含有量が上述の範囲であると、アルカリ溶液中でのアルカリ水電解用隔膜のイオン伝導性と靱性が良好でありながら、無機成分の溶出が抑制され、イオン透過性、ガスバリア性、耐熱性及び耐アルカリ性にも優れたアルカリ水電解用隔膜となり得る。上記樹脂(R)の含有量は、アルカリ水電解用隔膜100質量%中、より好ましくは5~35質量%であり、更に好ましくは7~30質量%である。
上記樹脂(R)の含有量は、本発明のアルカリ水電解用隔膜が後述する多孔性支持体を含まない場合は、アルカリ水電解用隔膜100質量%中5~40質量%であることが好ましく、より好ましくは10~35質量%、更に好ましくは15~30質量%である。本発明のアルカリ水電解用隔膜が有機ポリマーとして後述する多孔性支持体を含む場合は、上記樹脂(R)の含有量は、好ましくはアルカリ水電解用隔膜100質量%中3~20質量%、より好ましくは5~18質量%、更に好ましくは7~15質量%である。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、後述する無機粒子100質量部に対して上記樹脂(R)を10~40質量部含むことが好ましく、12~38質量部含むことがより好ましく、15~33質量部含むことが更に好ましい。無機粒子と樹脂(R)の含有割合が上述した範囲であると、アルカリ溶液中でのアルカリ水電解用隔膜からの無機成分の溶出が抑制され、イオン透過性、ガスバリア性、柔軟性、耐熱性及び耐アルカリ性にも優れたアルカリ水電解用隔膜となり得る。
1-1-1 多孔性支持体
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、上述した有機ポリマーと後述する無機粒子を含む膜からなるものであるが、有機ポリマーとして多孔性支持体を含んでいてもよい。上記多孔性支持体は、多孔質の有機ポリマーであり、イオン透過性を有し、アルカリ水電解用隔膜の支持体となり得る部材である。上記多孔性支持体は、シート状の部材であることが好ましい。
図1に、本発明のアルカリ水電解用隔膜の一形態を模式的に示す。1はアルカリ水電解用隔膜、2は単膜層、3は支持体層である。単膜層2は、上記樹脂(R)と無機粒子とを含む層であり、支持体層3は、上記樹脂(R)と無機粒子と多孔性支持体とを含む層である。
上記多孔性支持体の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素系樹脂等の樹脂材料が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、優れた耐熱性及び耐アルカリ性を発揮できる点で、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリフェニレンサルファイドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂材料を含むことが好ましく、ポリプロピレン、及びポリフェニレンサルファイドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂材料を含むことがより好ましい。
上記多孔性支持体の形態としては、例えば、不織布、織布、織物(メッシュ)、多孔質膜、フェルト又は不織布と織布の混合布等が挙げられるが、好ましくは、不繊布、織布、フェルト又は織物(メッシュ)が挙げられ、より好ましくは、不織布、織物(メッシュ)が挙げられる。
本発明において使用する多孔性支持体としては、なかでも、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリフェニレンサルファイドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、不織布、織布、又はメッシュが好ましい。更に、多孔性支持体としては、ポリフェニレンサルファイドを含む、不織布、又はメッシュが好ましい。上記多孔性支持体中のポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリフェニレンサルファイドの含有量は、合計で50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
上記多孔性支持体がシート状である場合、上記多孔性支持体の厚みは、本発明のアルカリ水電解用隔膜が本発明の効果を発揮できる限り特に限定されないが、例えば、好ましくは30~300μm、より好ましくは50~250μm、更に好ましくは100~200μmである。
本発明のアルカリ水電解用隔膜において、上述した単膜層2は、上記支持体層3の一方の面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。
また、本発明のアルカリ水電解用隔膜は、上述した単膜層2は無くても良く、無機粒子と上記樹脂(R)と上記多孔性支持体とが一体化した支持体層3としての複合体であってもよい。上記複合体とすることにより、アルカリ水電解用隔膜の強度と靭性を向上させることができる。
1-2 無機粒子
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、更に無機粒子を含む。本発明のアルカリ水電解用隔膜は、無機粒子と有機ポリマーとの空隙部分に電解液が満たされてイオン透過性を発揮することができる。また、無機粒子を含むことにより、アルカリ水電解用隔膜が親水化し、水の電気分解において発生する酸素ガスや水素ガスが隔膜に付着して電気分解の妨げになることを抑制することができる。
本発明において使用する無機粒子としては、例えば、マグネシウム、ジルコニウム、チタン、亜鉛、アルミニウム、タンタル等の水酸化物又は酸化物、カルシウム、バリウム、鉛、ストロンチウム等の硫酸塩等が挙げられる。なかでも、無機粒子の分散性がより一層優れる点で、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウムが好ましく、水酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウムがより好ましい。上記無機粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
無機粒子としては、天然物であっても合成物であってもよい。また、表面が未処理のものであってもよく、シランカップリング剤、ステアリン酸、オレイン酸、リン酸エステル等により表面処理したものであってもよい。上記無機粒子の形状は、粒子状であれば特に限定されず、不定形、粒状、顆粒状、板状等のいずれの形状であってもよいが、溶媒に分散しやすく、樹脂組成物を調製しやすい点で、粒状、板状であることが好ましい。
上記無機粒子の平均粒子径は、細孔径分布を適切なものとするために、0.05μm超5.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2.0μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上1.0μm以下であることが更に好ましい。なお、上記平均粒子径は、レーザー回折法による粒度分布測定から求められる体積平均粒子径(D50)である。
上記無機粒子の含有量は、好ましくは、アルカリ水電解用隔膜100質量%中30~95質量%である。上記無機粒子の含有量が上述の範囲であると、アルカリ溶液中での無機成分の溶出が抑制され、イオン透過性、ガスバリア性、耐熱性及び耐アルカリ性に優れた隔膜とすることができる。上記無機粒子の含有量は、アルカリ水電解用隔膜100質量%中、より好ましくは32~92質量%、更に好ましくは35~90質量%である。
上記無機粒子の含有量は、本発明のアルカリ水電解用隔膜が上記多孔性支持体を含まない場合は、アルカリ水電解用隔膜100質量%中60~95質量%であることが好ましく、より好ましくは65~90質量%、更に好ましくは70~85質量%である。
本発明のアルカリ水電解用隔膜が上記多孔性支持体を含む場合は、上記無機粒子の含有量は、好ましくはアルカリ水電解用隔膜100質量%中30~50質量%、より好ましくは32~48質量%、更に好ましくは35~45質量%である。
1-2-1 水酸化マグネシウム
下記に、上記無機粒子として好ましく使用できる水酸化マグネシウムの様態を示す。
上記水酸化マグネシウムの形状は、特に限定されず、不定形;粒状;顆粒状;薄片状、六角板状等の板状;繊維状等のいずれの形状であっても良いが、中でも、溶液に分散させ塗布液を調整しやすい点で、粒状、板状、繊維状であることが好ましく、樹脂との密着性とイオン透過性の観点から、粒状、板状であることがより好ましく、板状であることが更に好ましく、薄片状であることが特に好ましい。
上記水酸化マグネシウムは、アスペクト比が2.0~8.0であることが好ましい.アスペクト比が上述の範囲であると、イオン透過性がより一層優れ、均一性に優れた隔膜とすることができる。上記アスペクト比は、2.5~7.0であることがより好ましく、3.0~6.0であることが更に好ましい。
本明細書中、アスペクト比とは.最長径aと最短径bとの比(a/b)を意味し、水酸化マグネシウムをSEMで観察し、得られた画像の任意の10粒子において、解析ソフト等を使用して、各粒子の最長径aと最短径bとの比(a/b)を測定し、それらの比の単純平均値をその粒子のアスペクト比として求めることができる。
上記最長径aとしては、例えば、粒子の形状が薄片状や六角板状等の板状の場合、粒子の板面の長径を採用し、繊維状である場合は、繊維の長さを採用する。また、最長径aの中点を通って最長径と直行する径のうちの最も短い径を最短径bとする。上記最短径bとしては、例えば、粒子の形状が薄片状や六角板状等の板状の場合は、粒子の厚みを採用し、繊維状である場合は、繊維の太さを採用する。粒子の厚み及び繊維の太さとしては、最長径aの中点における厚み、太さをそれぞれ採用する。
上記アスペクト比は、より具体的には、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
上記水酸化マグネシウムの平均粒子径は、好ましくは0.05μm超5.0μm以下である。上記水酸化マグネシウムの平均粒子径が上述の範囲であると、イオン透過性、ガスバリア性により優れた隔膜とすることができる。上記水酸化マグネシウムの平均粒子径は、0.1μm以上であることがより好ましく、2.0μm以下であることが更に好ましく、1.0μm以下であることが特に好ましい。
上記水酸化マグネシウムの平均粒子径は、より好ましくは0.1μm以上2.0μm以下、更に好ましくは0.1μm以上1.0μm以下である。なお、上記平均粒子径は、レーザー回折法による粒度分布測定から求められる体積平均粒子径(D50)である。
上記水酸化マグネシウムは、X線回折により測定される(110)面に垂直な方向の結晶子径が35nm以上であることが好ましい。上記(110)面に垂直な方向の結晶子径が上述の範囲であると、隔膜のイオン透過性や隔膜の均一性がより一層優れる。
上記(110)面に垂直な方向の結晶子径は、40nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、60nm以上であることが更に好ましく、65nm以上であることが特に好ましい。
上記(110)面に垂直な方向の結晶子径は、その上限値は特に限定されないが、通常は例えば400nm以下であり、好ましくは350nm以下、より好ましくは300nm以下である。
上記水酸化マグネシウムは、X線回折により測定される(001)面に垂直な方向の結晶子径が15nm以上であることが好ましい。
上記(001)面に垂直な方向の結晶子径は、18nm以上であることがより好ましく、21nm以上であることが更に好ましく、24nm以上であることが特に好ましい。
上記(001)面に垂直な方向の結晶子径は、その上限値は特に限定されないが、通常は例えば300nm以下であり、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下である。
上記結晶子径は、粉末X線回折法により水酸化マグネシウムのX線回折パターンを測定し、対象の格子面に帰属される回折線の広がり(半値幅)から、Scherrerの式を用いて結晶子径(上記絡子面に垂直方向の結晶子径)を算出して求めることができる。より具体的には、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
上述した特定の結晶子径範囲の水酸化マグネシウムを得るための方法は、例えば、以下の通りである。
マグネシウム塩(塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム等)の水溶液、又は、従来公知の方法で得られた酸化マグネシウムの水分散液を原料とし、アルカリ性物性(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水等)の添加により、水和反応を行うことで水酸化マグネシウムを調製する。この際に、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、硝酸、硫酸等の多塩基酸、又は、これらの混合物の添加により、生成した水酸化マグネシウムの溶解度を調整したり、水熱反応の温度(例えば150℃から270℃)や時間(例えば30分~10時間)を適宜調整したりすることにより、結晶子径の異なる粒子を調製できる。酸の添加量が多い方が結晶成長は進み、結晶子径が大きくなる。また、水熱反応の温度は高い方が、時間は長い方が、結晶成長が進み、結晶子径は大きくなる。
本発明においては、水酸化マグネシウムとして、一般的な市販品を使用することもできる。本発明において使用することができる水酸化マグネシウムの市販品としては、例えば、協和化学工業社製の200-06H、宇部マテリアル社製UP650-1、タテホ化学工業社製MAGSTAR#20、神島化学工業社製#200等が挙げられる。
1-3 細孔径分布
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、バブルポイント法による細孔径分布解析において、最大径(最大孔径)が0.1μm未満であり、かつ0.04μm未満の孔の面積(面積比率)が30%以下である。上記最大径が上述の範囲であると、隔膜のガス透過性をより一層抑制することができる。また、上記最大径が上述の範囲であると、隔膜の表面にガスが付着するのをより一層抑制することができる。上記最大径は、0.09μm以下であることが好ましく、0.08μm以下であることがより好ましく、0.07μm以下であることがさらに好ましい。また、0.04μm未満の孔の面積は、26%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
バブルポイント法による細孔径分布解析における細孔径分布ならびに最大径、0.04μm未満の孔の面積(比率)は、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。細孔径分布解析用試料は、例えば、アルカリ水電解用隔膜の左右上下の端部から、各幅a,bに対して0.4a及び0.4b以上離れた中央部の範囲から採取することが好ましい。
1-4 バブルポイント値
本発明のアルカリ水電解用隔膜のバブルポイントは、リキッドポロシメーター(Porous Materials社製)を用いて測定できる。具体的には、実施例に記載の方法で算出できる。本発明のアルカリ水電解用隔膜のバブルポイントは、300kPa以上であることが好ましく、500kPa以上であることがより好ましく、600kPa以上であることがさらに好ましく、700kPa以上であることが特に好ましい。このようにした場合に、アルカリ水電解用隔膜のガスバリア性を高くすることができる。
1-5 膜抵抗値
本発明のアルカリ水電解用隔膜の膜抵抗値は、1.0Ωcm以下であることが好ましく、0.5Ωcm以下であることがより好ましい。このようにした場合に、アルカリ水電解用隔膜のイオン伝導性を高くすることができる。膜抵抗値は、具体的には、実施例に記載の方法で算出できる。
1-6 厚み
本発明のアルカリ水電解用隔膜の厚みは、特に限定されず、使用する設備の大きさや取り扱い性等に応じて適宜選択すればよいが、膜のガスバリア性やイオン透過性、強度の観点から、50~1000μmが好ましく、100~500μmがより好ましく、200~400μmが更に好ましい。
また、上述した多孔性支持体を含む場合、本発明のアルカリ水電解用隔膜の厚みは、好ましくは50~1000μm、より好ましくは100~500μm、更に好ましくは200~400μmである。
2.アルカリ水電解用隔膜の製造方法
上記アルカリ水電解用隔膜を製造する方法について説明する。
上記アルカリ水電解用隔膜を製造する方法としては、特に限定されず、公知の方法を適用することができるが、イオン透過性、ガスバリア性に優れたアルカリ水電解用隔膜を効率良く製造できる点で、非溶媒誘起相分離法が好ましい。
上記アルカリ水電解隔膜を製造する方法としては、具体的には下記の工程(1)~(3)を含むことが好ましい。
(1)無機粒子及び溶媒を含む分散液を調製する工程、
(2)上記分散液と上記有機ポリマーとしての上記樹脂(R)を混合して樹脂混合液を調製する工程、及び、
(3)上記樹脂混合液を用いて膜を形成する工程
以下に、各工程について説明する。
(1)無機粒子及び溶媒を含む分散液を調製する工程
上記製造方法では、無機粒子を上記樹脂(R)と混合する場合、無機粒子を固形のまま混合してもよく、溶媒に分散させた分散液(スラリー)を調製してから、混合してもよいが、溶媒に分散させた分散液を調製してから、混合することが好ましい。無機粒子の分散液を調製してから上記樹脂(R)と混合することで、無機粒子と上記樹脂(R)とをより均一に混合することができ、これにより、無機粒子が上記樹脂(R)によって充分に保持され、無機成分の溶出がより充分に抑制されたアルカリ水電解用隔膜を得ることができる。
上記分散液中の無機粒子の含有量は、20~70質量%であることが好ましく、より好ましくは30~60質量%、更に好ましくは40~60質量%である。
無機粒子を分散させるための溶媒としては、後に混合する上記樹脂(R)を溶解し得る性質を有するものであれば特に限定されず、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。なかでも、無機粒子の分散性が良好となる点で、N-メチル-2-ピロリドンが好ましい。
無機粒子を溶媒に分散させる方法としては、特に限定されず、ミキサー、ボールミル、ジェットミル、ディスパー、サンドミル、ロールミル、ポットミル、ペイントシェーカー等を用いる方法等、公知の混合分散の手段を適用することができる。
(2)上記分散液と上記有機ポリマーとしての上記樹脂(R)とを混合して樹脂混合液を調製する工程
工程(1)で調製された分散液に上記有機ポリマーとしての上記樹脂(R)を混合する方法としては、上記分散液と上記樹脂(R)を充分に混合することができる方法であれば特に限定されず、上記分散液に上記樹脂(R)をそのまま混合してもよいし、予め上記樹脂(R)を溶媒に溶解させた樹脂溶液を調製して、上記樹脂溶液と上記分散液とを混合してもよい。なかでも、上記無機粒子と上記樹脂(R)をより均一に分散・混合できる点で、上記樹脂溶液を調製して、上記樹脂溶液と上記分散液とを混合する方法が好ましい。
上記樹脂溶液を調製する場合に使用する溶媒としては、上記樹脂(R)を溶解する性質を有するものであれば特に限定されず、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン等が挙げられる。なかでも、上記無機粒子と上記樹脂(R)がより均一に分散・混合できる点で、上記分散液の調製に使用した溶媒と同じ溶媒が好ましい。
上記樹脂溶液中の上記樹脂(R)の含有量は、10~50質量%であることが好ましく、15~40質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることが更に好ましい。
上記混合する方法としては、工程(1)で記載した混合分散の手段と同様の手段が挙げられる。
上記分散液と上記樹脂(R)とは、好ましくは、無機粒子100質量部に対して、上記樹脂(R)が20~40質量部、より好ましくは22~38質量部、更に好ましくは25~35質量部になるように混合することが好ましい。
上記無機粒子の分散液と上記樹脂(R)の溶液とを混合する場合、無機粒子の分散液中の溶媒と上記樹脂(R)の溶液中の溶媒との合計含有量は、無機粒子の分散液と上記樹脂(R)の溶液の合計質量100質量%に対して、45~75質量%であることが好ましい。より好ましくは、50~70質量%であり、更に好ましくは、55~65質量%である。アルカリ水電解用隔膜の気孔率を好ましい範囲に調整するためにはこのような割合で溶媒を用いることが好ましい。
(3)上記樹脂混合液を用いて膜を形成する工程
工程(2)で得られた樹脂混合液を用いて膜を形成する。
上記膜を形成する方法としては、イオン伝導性とガスバリア性に優れたアルカリ水電解用隔膜を容易に製造することができる点で、下記の工程(3-a)~(3-c)を含むことが好ましい。
(3-a)上記樹脂混合液の塗膜を形成する工程、
(3-b)上記塗膜を非溶媒と接触させることにより上記塗膜を凝固させる工程、及び、
(3-c)上記凝固した塗膜を乾燥させることにより多孔膜を得る工程
(3-a)樹脂混合液の塗膜を形成する工程
上記樹脂混合液の塗膜を形成する方法としては、例えば、上記で得られた樹脂混合液を基材上に塗布する方法や、上記樹脂混合液中に基材を浸漬させ、上記樹脂混合液が含浸した基材を得る方法等が挙げられる。なかでも、簡便に塗膜を形成できる点で、上記樹脂混合液を基材上に塗布する方法が好ましい。
上記樹脂混合液を基材上に塗布する方法としては、特に限定されず、ダイコーティング、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、ディップコーティング、スプレー、アプリケーター、コーター等を用いる方法等の公知の塗布手段を適用することができる。
上記基材としては、上記樹脂混合液を塗布して塗膜を形成することができるものであれば、特に限定されず、例えば、ポリテトラエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等の樹脂からなるフィルム又はシート、ガラス板等が挙げられる。なかでも、原料コストが低減できる点で、ポリテトラエチレンテレフタレートが好ましい。
また、上述した多孔性支持体を含むアルカリ水電解用隔膜を製造する場合は、上記基材として上記多孔性支持体を使用してもよい。
また、無機粒子と上記樹脂(R)を含む膜と多孔性支持体とが一体化した複合体であるアルカリ水電解用隔膜を製造する場合は、上記基材上に、上記樹脂混合液を塗布し、その塗液上に上記多孔性支持体を置いて塗液を上記多孔性支持体に含浸させてもよい。
上記樹脂混合液の塗布量としては、特に限定されず、上記隔膜が、上述した効果が発揮できる厚みを有するよう適宜設定すればよい。
(3-b)上記塗膜を非溶媒と接触させることにより上記塗膜を凝固させる工程
上記塗膜を非溶媒と接触させることにより、上記塗膜中に非溶媒が拡散し、非溶媒に溶解しない上記樹脂(R)が凝固する。一方、非溶媒に溶解しうる塗膜中の溶媒は、塗膜から溶出する。このように相分離が生じることにより、上記樹脂(R)(及び無機粒子)が凝固し、孔を有する膜が形成される。
上記塗膜と非溶媒とを接触させる方法としては、上記塗膜を上記非溶媒中に浸漬させる方法(凝固浴)等が挙げられる。
上記非溶媒としては、上記樹脂(R)を実質的に溶解しない性質を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、イオン交換水;メタノール、エタノール、プロピルアルコール等の低級アルコール;又はこれらの混合溶媒等が挙げられ、これらを複数組み合わせた混合非溶媒でもよい。なかでも経済性と排液処理の観点からイオン交換水が好ましい。また上記非溶媒は、上述した成分以外に、塗膜中に含まれる溶媒と同様の溶媒を含んでいてもよい。
上記非溶媒の使用量は、塗膜の質量100質量%、すなわち、塗膜の形成に用いられる樹脂混合液の固形分100質量%に対して、50~10000質量%であることが好ましい。より好ましくは、100~5000質量%であり、更に好ましくは、200~1000質量%である。得られる多孔膜の気孔率を好ましい範囲に調整するためには、非溶媒をこのような割合で使用することが好ましい。
(3-c)上記凝固した塗膜を乾燥させることにより多孔膜を得る工程
前記工程で凝固した塗膜を乾燥させて、非溶媒を除去することにより、多孔膜を得ることができる。
上記塗膜の乾燥温度としては、60~80℃が好ましい。
乾燥時間としては、2~120分が好ましく、5~60分がより好ましく、10~30分が更に好ましい。
このように、上述した工程(1)~(3)により、本発明のアルカリ水電解用隔膜を簡便に製造することができる。
3.用途
本発明のアルカリ水電解用隔膜では、イオン伝導性を確保しつつより高いガスバリア性を発現する。そのため、本発明のアルカリ水電解用隔膜は、アルカリ性水溶液を電解液とした水の電気分解用の隔膜として好適に使用することができる。また、上述したアルカリ水電解用隔膜の他、アルカリ形燃料電池用セパレータ、1次電池用セパレータ、2次電池用セパレータ等の電池用セパレータ、食塩電解用セパレータ等の用途に用いることができる。
4.アルカリ水電解装置
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、アルカリ水電解装置の部材として用いられる。上記アルカリ水電解装置としては、例えば、陽極、陰極、及び、陽極と陰極の間に配置された上記アルカリ水電解用隔膜を含むものが挙げられる。より具体的には、上記アルカリ水電解装置は、上記アルカリ水電解用隔膜によって隔てられた、陽極が存在する陽極室と、陰極が存在する陰極室とを有する。
陽極、及び陰極としては、ニッケル又はニッケル合金等を含む導電性基体を含む、公知の電極が挙げられる。
5.電解方法
本発明のアルカリ水電解用隔膜を備えたアルカリ水電解装置を用いて行う水の電気分解の方法は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、上述した本発明のアルカリ水電解用隔膜を備えたアルカリ水電解装置に、電解液を充填し、電解液中で電流を印加することにより行うことができる。
上記電解液としては、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム等の電解質を溶解したアルカリ性水溶液が用いられる。上記電解液における電解質の濃度は、特に限定されないが、電解効率がより一層向上し得る点で、20~40質量%であることが好ましい。
また、電気分解を行う場合の温度としては、電解液のイオン伝導性がより向上し、電解効率がより一層向上し得る点で、50~120℃が好ましく、80~90℃がより好ましい。電流の印加条件は、公知の条件・方法で行うことができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<実施例1>
(1.水酸化マグネシウム分散液の調製)
水酸化マグネシウム(平均粒子径0.54μm)とN-メチル-2-ピロリドン(富士フイルム和光純薬工業社製)を質量比1:1となるよう混合し、ジルコニアメディアボールを入れたポットミルにて、室温で6時間分散処理を行うことにより水酸化マグネシウム分散液を調製した。
(2.ポリスルホン樹脂溶解液の調製)
ポリスルホン樹脂(BASF社製、品番ウルトラゾーンS3010)を30質量%の濃度で80~100℃にてN-メチル-2-ピロリドン(富士フイルム和光純薬工業社製)に熱溶解させることによりポリスルホン樹脂溶解液を調製した。
(3.塗液の調製)
上記で得られた水酸化マグネシウム分散液とポリスルホン樹脂溶解液とを、水酸化マグネシウム100質量部に対してポリスルホン樹脂(PSU)が33質量部になるように計量し、自転公転ミキサー(シンキー社製、品番あわとり練太郎ARE-500)にて室温で1000rpmで約10分間混合した。得られた混合液を、SUSの200メッシュで濾過することで塗液を得た。
(4.塗膜の形成)
PETフィルム上に、アプリケーターにて塗液を、乾燥後の隔膜の厚みが全体で250μmになるように塗布し、その上にポリプロピレン不織布(日本バイリーン社製、品番OA16728F、厚み160μm)を接触させることで、不織布に塗液を完全に含浸させた。その後、塗液を含浸させた不織布を、室温にて10分間水浴させ、塗液を凝固させて膜を形成し、水中でPETフィルムから不織布ごと膜を剥離した。水浴後、得られた膜を、乾燥機にて80℃で、30分間乾燥し、不織布と水酸化マグネシウム及びポリスルホン樹脂を含む膜との複合体からなるアルカリ水電解用隔膜を得た。
得られたアルカリ水電解用隔膜の、支持体層(不織布)側の表面のFE-SEM測定による画像を図2に示す。不織布側の表面では、ポリスルホンに微細な穴がみられた。
(5.最大孔径、細孔径分布の測定、算出方法)
リキッドポロシメーター(Porous Materials社製)を用いて最大孔径、および細孔径分布を測定した。具体的には、2.5cmφの隔膜をイソプロピルアルコール(IPA)(富士フィルム和光純薬社製)溶剤に室温で10分浸漬させて十分に湿潤させた後、フッ素系溶剤であるGalwick(Porous Materials社製)を隔膜上に満たした。隔膜に印加するガス(圧縮空気)圧を6psi/minで昇圧させていき、膜中のIPA液膜が破壊されてから、ガス流量に対して、膜を透過するGalwickのウェット流量を測定した。ウェット流量は電子天秤で測定したGalwickの透過溶剤重量より求めた。ガス圧に対してウェット流量をプロットした際、原点を通る直線挙動を示した後に測定終了とした。
最大孔径、および細孔径分布の算出については、下記式に従い、具体的に次の手順で行った。まず、IPAの液膜が破れるバブルポイント圧において、試料の表面張力より、最大孔径を算出した。上記隔膜の最大孔径は0.067μmであった。次にウェット流量とガス流量から累積フィルターフロー率を算出し、測定点とその直前の測定点間の累積フィルターフロー率の差分よりフィルターフロー率を算出し、そのフィルターフロー率の差分を2点の孔径の差で割ったものを細孔径分布として算出した。この細孔径分布を2点間の平均細孔径に対してプロットし、平均細孔径が0.04μm未満の面積比率を算出した。上記隔膜の0.04μm未満の面積比率は1.3%であった。
*孔径(Dia/μm):
Dia=0.415×τ/P
ここで、τとPは以下の通りである。
τ:試料の表面張力。IPAとGalwickの液液表面張力は4.6dynes/cm
P:印加ガス圧(psi)
*最大孔径(MD/μm)
MD=0.415×τ/BP
ここで、τとBPは以下の通りである。
τ :試料の表面張力。IPAとGalwickの液液表面張力は4.6dynes/cm
BP:バブルポイント圧(psi)。IPAの液膜が破れてGalwickが膜を透過して天秤でその重量を観測した時点のガス圧。
*累積フィルターフロー率(CFFP/%)
CFFP=(QW/QD)×100
ここで、QWとQDは以下の通りである。
QW:ウェット流量(μL/min)。膜を透過するGalwickとIPAの流量。
QD:ドライ流量(μL/min)。印加するガス流量。
*フィルターフロー率(FFP/%)
FFP=CFFP-直前のCFFP
ここで、CFFPは、上記累積フィルターフロー率である。
*細孔径分布(PSD/μm-1
PSD=(FFP-直前のFFP)/(直前のDia-Dia)
ここで、FFPは上記フィルターフロー率であり、Diaは孔径である。
*平均細孔径(AD/μm)
AD=(Dia+直前のDia)/2
ここで、Diaは孔径である。
(6.バブルポイント値の測定)
上記で得られた隔膜について、リキッドポロシメーター(Porous Materials社製)を用いてバブルポイント値を測定した。具体的には、2.5cmφの隔膜をイオン交換水中に室温で1時間浸漬させて十分に湿潤させた後、フッ素系溶剤であるGalwick(Porous Materials社製)を隔膜上に満たした。隔膜に対するガス圧を昇圧させていき、水の液膜が破壊されて、Galwickが膜を透過して天秤でその重量を観測した時点のガス圧をバブルポイント値とした。上記隔膜のバブルポイント値は680kPaであった。
(7.膜抵抗値の測定)
アルカリ水電解用隔膜を3cm角に切り出し、これを試験片とした。この試験片を、フッ素樹脂容器(PFA製)に入れ、30gの30%KOH水溶液に、室温にて20時間浸漬させた。浸漬後、試験片を取り出し、Ni電極を用いてバッテリハイテスタ3555(日置電機社製)により膜抵抗測定を行った。膜抵抗値は0.35Ωcmであった。
<実施例2>
水酸化マグネシウムとして平均粒子径を0.2μmのものを使用した以外は、実施例1と同様の方法でアルカリ水電解用隔膜を得た。最大孔径は0.061μmであり、細孔径分布における0.04μm未満の面積比率は10.9%であった。バブルポイント値は900kPa、膜抵抗値は0.20Ωcmであった。
<実施例3>
多孔性基材としてポリプロピレン不織布の代わりに、ポリフェニレンサルファイド不織布(東レ社製、品番トルコン#100、厚み210μm)を使用した以外は、実施例2と同様の方法でアルカリ水電解用隔膜を得た。最大孔径は0.062μmであり、細孔径分布における0.04μm未満の面積比率は25.1%であった。バブルポイント値は720kPa、膜抵抗値は0.22Ωcmであった。
<比較例1>
水酸化マグネシウムの代わりに、ジルコニア(平均粒子径0.05μm)を使用し、多孔性基材としてポリフェニレンサルファイドメッシュ(くればぁ社製、50メッシュ、繊径150μm)を使用した以外は実施例1と同様の方法でアルカリ水電解用隔膜を得た。最大孔径は0.062μmであり、細孔径分布における0.04μm未満の面積比率は31.5%であった。バブルポイント値は480kPa、膜抵抗値は0.28Ωcmであった。実施例1と比較例1との細孔径分布を比較したグラフを図3に示す。
図2~3に示すように、実施例の隔膜では、表面が緻密でありながら、平均細孔径は比較的大きいところに2つのピークを有していた。そして、バブルポイント値が高く、高いガスバリア性を有しながら、且つ膜の抵抗値は小さく、高いイオン伝導性を確保していた。これに対し、比較例の膜では、バブルポイント法による細孔径分布において0.04μm未満の面積比率が高く、膜としては、より平滑になり濡れにくく、ポリスルホンの疎水表面積がより増大するために、ガスが付着しやすい状態であった。
1 アルカリ水電解用隔膜
2 単膜層
3 支持体層

Claims (1)

  1. 有機ポリマーと無機粒子とを含み、
    前記有機ポリマーは、フッ素系樹脂、オレフィン系樹脂および芳香族炭化水素系樹脂から選択される少なくとも1種であり、
    前記無機粒子は、マグネシウム、ジルコニウム、チタン、亜鉛、アルミニウムおよびタンタルの水酸化物、マグネシウム、ジルコニウム、チタン、亜鉛、アルミニウムおよびタンタルの酸化物、ならびにカルシウム、バリウム、鉛およびストロンチウムの硫酸塩から選択される少なくとも1種であり、
    イソプロピルアルコールを用いたバブルポイント法による細孔径分布解析において、最大径が0.1μm未満であり、かつ孔の全面積を100%としたときの0.04μm未満の孔の面積が30%以下である、アルカリ水電解用隔膜。
JP2018181066A 2018-09-26 2018-09-26 アルカリ水電解用隔膜 Active JP7166118B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018181066A JP7166118B2 (ja) 2018-09-26 2018-09-26 アルカリ水電解用隔膜

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018181066A JP7166118B2 (ja) 2018-09-26 2018-09-26 アルカリ水電解用隔膜

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020050908A JP2020050908A (ja) 2020-04-02
JP7166118B2 true JP7166118B2 (ja) 2022-11-07

Family

ID=69996080

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018181066A Active JP7166118B2 (ja) 2018-09-26 2018-09-26 アルカリ水電解用隔膜

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7166118B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
TW202342558A (zh) 2021-12-28 2023-11-01 日商信越化學工業股份有限公司 含有無機/有機混成化合物之組合物

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017002389A (ja) 2015-06-16 2017-01-05 川崎重工業株式会社 アルカリ水電解用隔膜及びその製造方法
JP2017066184A (ja) 2015-09-28 2017-04-06 旭化成株式会社 ポリフェニレン共重合体を含む微多孔膜、及びその製造方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5819689B2 (ja) * 1975-06-18 1983-04-19 旭化成株式会社 タコウマク
GB8412673D0 (en) * 1984-05-18 1984-06-27 Raychem Ltd Polymer membrane

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017002389A (ja) 2015-06-16 2017-01-05 川崎重工業株式会社 アルカリ水電解用隔膜及びその製造方法
JP2017066184A (ja) 2015-09-28 2017-04-06 旭化成株式会社 ポリフェニレン共重合体を含む微多孔膜、及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020050908A (ja) 2020-04-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6752974B2 (ja) アルカリ水電解用隔膜、その製造方法、及び無機有機複合膜の製造方法
CN110023542B (zh) 碱水电解用复极式电解槽以及氢制造方法
JP7114726B2 (ja) アルカリ水電解用隔膜
CN110869538B (zh) 用于碱解的强化隔膜
WO2020158719A1 (ja) 電極付きアルカリ水電解用隔膜、その製造方法、及び水電解装置
CN102104159A (zh) 一种用于燃料电池的新型气体扩散层及制备和应用
CN115997046A (zh) 用于碱性水电解的隔膜
JP7166118B2 (ja) アルカリ水電解用隔膜
Bekisch et al. Hydrophobic, Carbon Free Gas Diffusion Electrode for Alkaline Applications
JP7284015B2 (ja) アルカリ水電解用隔膜ならびに該隔膜の製造方法
JP7273650B2 (ja) アルカリ水電解用隔膜ならびに該隔膜の製造方法
JP7284001B2 (ja) アルカリ水電解用隔膜ならびに該隔膜の製造方法
JP7232110B2 (ja) アルカリ水電解用隔膜ならびに該隔膜の製造方法
JP7129903B2 (ja) アルカリ水電解用隔膜
JP2022176792A (ja) アルカリ水電解用隔膜、及びその製造方法
JP2021090909A (ja) アルカリ水電解用隔膜の製造方法
WO2024048235A1 (ja) アルカリ水電解用隔膜、アルカリ水電解セル、及び、アルカリ水電解方法
JP7260298B2 (ja) アルカリ水電解用隔膜
JP6985159B2 (ja) 無機有機複合膜の製造方法
Yanagishita et al. Preparation of size-controlled LiCoPO 4 particles by membrane emulsification using anodic porous alumina and their application as cathode active materials for Li-ion secondary batteries
JP2022063055A (ja) アルカリ水電解用隔膜、及び、その製造方法
CN115029732B (zh) 碱性水电解用隔膜及其制备方法与应用
JP2022082168A (ja) アルカリ水電解用隔膜
CN116695175A (zh) 电解水制氢用隔膜及其制作方法、水电解装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210607

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220525

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220607

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220715

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220830

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220926

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20221018

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20221025

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7166118

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150