JP2017058429A - 反射防止膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐擦傷性に優れた低屈折率のシリカエアロゲル膜を有する反射防止膜を、高温での熱処理を行わないで、簡便に製造する方法、並びにこの方法により形成された反射防止膜及びこの反射防止膜を有する光学素子を提供する。【解決手段】シリカエアロゲル膜を少なくとも一層有する反射防止膜の製造方法であって、シリカエアロゲル膜を、アルコキシシランを塩基性触媒下で加水分解及び縮重合して調製したアルカリ性ゾルに、酸性溶液を添加して得られたメジアン径100 nm以下の第一の酸性ゾル、及びアルコキシシランを酸性触媒下で加水分解及び縮重合して得られたメジアン径10 nm以下の第二の酸性ゾルを混合してなる混合ゾルを、基材上に塗布し、混合ゾルが乾燥する前にアルカリ処理を行い、35℃以上100℃未満、70%RH以上の環境に保存して形成することを特徴とする方法、並びにこの方法により得られる反射防止膜及び光学素子。【選択図】図1

Description

本発明は、ナノサイズの微細孔を有し、低屈折率及び優れた耐擦傷性を有するシリカエアロゲル膜を有する反射防止膜の製造方法に関する。
反射防止膜は真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理蒸着法や、ゾルゲル法等の液相法により成膜される。反射防止膜は基材より小さな屈折率を有する必要があり、例えばガラスやプラスチック(屈折率:約1.5〜1.9)を基材として用いた場合、反射防止膜にとって理想の屈折率は1.2〜1.25である。物理蒸着法で反射防止膜を形成する場合、最も小さな屈折率を有する材料(MgF2)を用いても屈折率は1.38と比較的大きく、可視光領域(波長:400〜700 nm)における反射率は1%以上となってしまう。
ゾルゲル法により得られるシリカエアロゲル膜は、物理蒸着法で得られるMgF2より小さな屈折率を有する。反射防止膜に使用できるエアロゲルを製造する方法として、米国特許5,948,482号(特許文献1)は、SiO2を含むゾルを熟成してゲルにした後、表面を有機基で修飾して得られる反応物を用いてシリカエアロゲル膜を製造する方法を記載している。この製造方法によって形成されるシリカエアロゲル膜は、99%以上の気孔率を有し低い屈折率を示す。しかしながら、このシリカエアロゲル膜は機械的強度が著しく低く、耐擦傷性に欠けるという問題がある。
「ジャーナル・オブ・ゾルゲル・サイエンス・アンド・テクノロジー(Journal of Sol-Gel Science and Technology)」,2000年,第18巻,219〜224頁(非特許文献1)は、耐擦傷性に優れたナノポーラスシリカ膜を作製する方法を提案している。このナノポーラスシリカ膜は、テトラエトキシシランをエタノール/水混合溶媒中でアンモニアにより80℃で2〜20時間加水分解及び縮重合してアルカリ性ゾルを調製し、これにテトラエトキシシラン、水及び塩酸を加えて60℃で15日間熟成し、得られたゾルを基板上に塗布し、80℃で30分間乾燥した後、アンモニア・水蒸気混合ガス中又は大気中で熱処理(400℃で30分間)することにより形成する。しかしながら、この方法は熟成に15日間もの時間を要するため生産効率が低いのみならず、得られるナノポーラスシリカ膜は特にカメラのレンズ等の光学素子用の反射防止膜として使用するには耐擦傷性が不十分である。さらに、このような多孔質膜は製造後の時間の経過により屈折率が変動し、所望の反射防止性能が得られなくなるといった問題がある。
特開2009-258711号(特許文献2)は、順次塩基性触媒及び酸性触媒の存在下でアルコキシシランを加水分解・重合した第一の酸性ゾルと、酸性触媒の存在下でアルコキシシランを加水分解・重合した第二の酸性ゾルとを混合し、得られた混合ゾルを基材に塗布し、得られたシリカエアロゲル膜をアルカリで処理すると、比較的短い時間で、低屈折率及び優れた耐擦傷性を有するシリカエアロゲル膜を形成することができると記載している。しかしながら、引用文献2の実施例に記載の方法は成膜工程において100℃以上の乾燥工程を含むため、耐熱性の低い樹脂基板を使用することができないという問題があり、またこの成膜工程は2.5時間程度の熱処理を含んでおり生産性が悪い。従って、低屈折率で耐擦傷性に優れた反射防止膜をより簡便に製造する方法の開発が望まれている。
米国特許5,948,482号公報 特開2009-258711号公報
「ジャーナル・オブ・ゾルゲル・サイエンス・アンド・テクノロジー(Journal of Sol-Gel Science and Technology)」,2000年,第18巻,219〜224頁
従って、本発明の目的は、耐擦傷性に優れた低屈折率のシリカエアロゲル膜を有する反射防止膜を、高温での熱処理を行わないで簡便に製造する方法、並びにこの方法により形成された反射防止膜及びこの反射防止膜を有する光学素子を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者等は、アルコキシシランを塩基性触媒下で加水分解及び縮重合して調製したアルカリ性ゾルに、さらに酸性溶液を添加して得られた第一の酸性ゾル、及びアルコキシシランを酸性触媒下で加水分解及び縮重合して得られた第二の酸性ゾルを混合してなる混合ゾルを、基材上に塗布した後、前記混合ゾルの塗布物が乾燥する前にアルカリ処理を行い、その後35℃以上100℃未満及び相対湿度70%以上の高湿度条件に保存することにより、100℃以上の高温での加熱処理を行わなくても、優れた機械的強度を有する低屈折率のシリカエアロゲル膜が得られることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、シリカエアロゲル膜を少なくとも一層有する反射防止膜を製造する本発明の方法は、前記シリカエアロゲル膜を、アルコキシシランを塩基性触媒下で加水分解及び縮重合して調製したアルカリ性ゾルに、さらに酸性溶液を添加して得られたメジアン径100 nm以下の第一の酸性ゾル、及びアルコキシシランを酸性触媒下で加水分解及び縮重合して得られたメジアン径10 nm以下の第二の酸性ゾルを混合してなる混合ゾルを、基材上に塗布し、前記混合ゾルが乾燥する前に、アルカリ処理を行い、35℃以上100℃未満及び相対湿度70%以上の環境に保存する湿度処理を施して形成することを特徴とする。
前記湿度処理の保存時間は30分以上48時間以下であるのが好ましい。
前記アルカリ処理後に、40〜60℃で乾燥を行うのが好ましい。
前記アルカリ処理は、アルカリ溶液を塗布することにより行うのが好ましい。前記アルカリ溶液は、アルカリ金属アルコキシドのアルコール溶液であるのが好ましい。
本発明の方法は、100℃未満の低温で成膜する工程からなるので、樹脂レンズやHBレンズにも耐擦傷性に優れた低屈折率のシリカエアロゲル膜を含む反射防止膜を形成することができる。その結果、従来の蒸着法により形成される反射防止膜よりも優れた反射防止性能を有する反射防止膜を樹脂レンズやHBレンズに適用することができる。
本発明の方法は、従来シリカエアロゲル膜に耐擦傷性を付与するために必要であった高温熱処理工程を省略することができるので、成膜工程を大幅に簡略化することができ、サイクルタイムの削減、生産性向上及びコストダウンに寄与する。
本発明の方法によって得られる反射防止膜は、優れた耐擦傷性を有するとともに、高い反射防止効果を有するので、広い分野の光学素子に好適である。
実施例1及び比較例2の分光反射率を示すグラフである。
[1] 反射防止膜の製造方法
本発明は、シリカエアロゲル膜を少なくとも一層有する反射防止膜を製造する方法であり、(1)アルコキシシランを塩基性触媒下で加水分解及び縮重合して調製したアルカリ性ゾルに、さらに酸性溶液を添加してメジアン径100 nm以下の第一の酸性ゾルを得る工程、(2)アルコキシシランを酸性触媒下で加水分解及び縮重合してメジアン径10 nm以下の第二の酸性ゾルを得る工程、(3)前記第一及び第二の酸性ゾルを混合する工程、(4)得られた混合ゾルを基材上に塗布する工程、(5)アルカリ処理工程、及び(6)湿度処理工程を含む。前記シリカエアロゲル膜は、前記(1)〜(6)の工程によって形成されるが、さらに必要に応じて前記湿度処理工程の後に、(7)洗浄工程を追加してもよい。
反射防止膜は、基材上に前記シリカエアロゲル膜のみを有する構成でも良いが、前記基材と前記シリカエアロゲル膜との間に、少なくとも一層の緻密膜を有する多層反射防止膜としても良い。多層反射防止膜とすることにより、より広い波長範囲において高い反射防止効果を得ることができる。
(A) シリカエアロゲル膜の形成
(1) 第一の酸性ゾルを調製する工程
(a) アルコキシシラン
第一の酸性ゾル用のアルコキシシランはテトラアルコキシシランのモノマー又はオリゴマー(縮重合物)が好ましい。4官能のアルコキシシランを用いた場合、比較的大きな粒径を有するコロイド状シリカ粒子のゾルを得るのにことができる。テトラアルコキシシランは、Si(OR)4[Rは炭素数1〜5のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、又は炭素数1〜4のアシル基(アセチル等)]により表されるものが好ましい。テトラアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジエトキシジメトキシシラン等が挙げられる。中でもテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランが好ましい。本発明の効果を阻害しない範囲で、テトラアルコキシシランに少量の3官能以下のアルコキシシランを配合しても良い。
(b) 塩基性触媒の存在下での加水分解及び縮重合
アルコキシシランに有機溶媒、塩基性触媒及び水を添加することにより、加水分解及び縮重合が進行する。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、ブタノール等のアルコールが好ましく、メタノール又はエタノールがより好ましい。塩基性触媒としては、アンモニア、アミン、NaOH又はKOHが好ましい。好ましいアミンは、アルコールアミン又はアルキルアミン(メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、n-ブチルアミン、n-プロピルアミン等)である。
有機溶媒とアルコキシシランとの量比は、アルコキシシランの濃度がSiO2換算で0.1〜10質量%(シリカ濃度)となるように設定するのが好ましい。シリカ濃度が10質量%超であると、得られるゾル中のシリカ粒子の粒径は大きくなり過ぎる。一方シリカ濃度が0.1未満であると、得られるゾル中のシリカ粒子の粒径は小さくなり過ぎる。なお有機溶媒/アルコキシシランのモル比としては5×102〜5×104の範囲が好ましい。
塩基性触媒/アルコキシシランのモル比は1×10-4〜1にするのが好ましく、1×10-4〜0.8にするのがより好ましく、3×10-4〜0.5にするのが特に好ましい。塩基性触媒/アルコキシシランのモル比が1×10-4未満であると、アルコキシシランの加水分解反応が十分に起こらない。一方モル比が1を超えて塩基を添加しても触媒効果は飽和する。
水/アルコキシシランのモル比は1〜30が好ましい。水/アルコキシシランのモル比が30超であると、加水分解反応が速く進行し過ぎるため反応の制御が難しく、均一なシリカエアロゲル膜が得られにくくなる。一方1未満であると、アルコキシシランの加水分解が十分に起こらない。
塩基性触媒及び水を含有するアルコキシシランの溶液は、10〜90℃で約10〜60時間静置又はゆっくり撹拌することにより熟成するのが好ましい。熟成により加水分解及び縮重合が進行し、シリカゾルが生成する。シリカゾルは、コロイド状シリカ粒子の分散液の他、コロイド状シリカ粒子がクラスター状に凝集した分散液も含む。
(c) 酸性触媒の存在下での加水分解及び縮重合
得られたアルカリ性ゾルに酸性触媒、並びに必要に応じて水及び有機溶媒を添加し、酸性状態で加水分解及び縮重合をさらに進行させる。酸性触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、酢酸等が挙げられる。有機溶媒は上記と同じものを使用できる。第一の酸性ゾルにおいて酸性触媒/塩基性触媒のモル比は1.1〜10が好ましく、1.5〜5がより好ましく、2〜4が最も好ましい。酸性触媒/塩基性触媒のモル比が1.1未満であると、酸性触媒による重合が十分に進行しない。一方10を超えると触媒効果は飽和する。有機溶媒/アルコキシシランのモル比及び水/アルコキシシランのモル比は上記と同じで良い。酸性触媒を含有するゾルは10〜90℃で約15分〜24時間静置又はゆっくり撹拌して熟成するのが好ましい。熟成により加水分解及び縮重合が進行し、第一の酸性ゾルが生成する。
第一の酸性ゾル中のシリカ粒子のメジアン径は100 nm以下であり、好ましくは10〜50 nmである。メジアン径は動的光散乱法により測定する。
(2) 第二の酸性ゾルを調製する工程
(a) アルコキシシラン
第二の酸性ゾル用のアルコキシシランはSi(OR1)x(R2)4-x[xは2〜4の整数である。]により表される2〜4官能のものでよい。R1は炭素数1〜5のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、又は炭素数1〜4のアシル基(アセチル等)が好ましい。R2は炭素数1〜10の有機基が好ましく、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、デシル、フェニル、ビニル、アリル等の炭化水素基、及びγ-クロロプロピル、CF3CH2-、CF3CH2CH2-、C2F5CH2CH2-、C3F7CH2CH2CH2-、CF3OCH2CH2CH2-、C2F5OCH2CH2CH2-、C3F7OCH2CH2CH2-、(CF3)2CHOCH2CH2CH2-、C4F9CH2OCH2CH2CH2-、3-(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピル、H(CF2)4CH2OCH2CH2CH2-、H(CF2)4CH2CH2CH2-、γ-グリシドキシプロピル、γ-メルカプトプロピル、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル、γ-メタクリロイルオキシプロピル等の置換炭化水素基が挙げられる。
2官能のアルコキシシランの具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジメチルジアルコキシシランが挙げられる。3官能のアルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のメチルトリアルコキシシラン、及びフェニルトリエトキシシラン等のフェニルトリアルコキシシランが挙げられる。4官能のアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジエトキシジメトキシシラン等が挙げられる。アルコキシシランは3官能以上が好ましく、メチルトリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランがより好ましい。
(b) 酸性触媒の存在下での加水分解及び縮重合
アルコキシシランのモノマー又はオリゴマー(縮重合物)に有機溶媒、酸性触媒及び水を添加することにより、加水分解及び縮重合が進行する。有機溶媒及び酸性触媒は第一の酸性ゾルを調製する工程で説明したものと同じものを使用できる。酸性触媒/アルコキシシランのモル比は、1×10-4〜1が好ましく、1×10-4〜3×10-2がより好ましく、3×10-4〜1×10-2が最も好ましい。有機溶媒/アルコキシシランのモル比及び水/アルコキシシランのモル比は、第一の酸性ゾルを調製する工程で説明した比と同じで良い。
酸性触媒及び水を含有するアルコキシシランの溶液は、10〜90℃で約30分〜60時間静置又はゆっくり撹拌することにより熟成するのが好ましい。熟成により加水分解及び縮重合が進行し、第二の酸性ゾルが生成する。熟成時間が60時間を超えると、ゾル中のシリカ粒子のメジアン径が大きくなり過ぎる。
得られる第二の酸性ゾル中のコロイド状シリカ粒子は、第一の酸性ゾルに比べて小さなメジアン径を有する。第二の酸性ゾル中のコロイド状シリカ粒子のメジアン径は10 nm以下であり、好ましくは1〜5 nmである。第一の酸性ゾル中のシリカ粒子と第二の酸性ゾル中のシリカ粒子とのメジアン径比は5〜50であるのが好ましく、5〜35であるのがより好ましい。メジアン径比が5未満又は50超であると、シリカエアロゲル膜の耐擦傷性が低い。
(3) 混合ゾルを調製する工程
第一の酸性ゾル及び第二の酸性ゾルを混合し、1〜30℃で約1分〜6時間ゆっくり撹拌するのが好ましい。必要に応じて混合物を80℃以下で加熱しても良い。第一の酸性ゾルと第二の酸性ゾルとの固形分質量比は5〜90であるのが好ましく、5〜80であるのがより好ましい。固形分質量比が5未満又は90超であると、シリカエアロゲル膜の耐擦傷性が低い。
(4) 塗布工程
混合ゾルを基材の表面に塗布する方法としては、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、印刷法等が挙げられる。レンズのような三次元構造物に塗布する場合、ディッピング法が好ましい。ディッピング法における引き上げ速度は約0.1〜3.0 mm/秒であるのが好ましい。
混合ゾルの濃度及び流動性を調整し塗布適性を高めるため、分散媒として前記有機溶媒を加えても良い。塗布時の混合ゾル中のシリカの濃度は0.1〜20質量%が好ましい。必要に応じて、混合ゾルを超音波処理しても良い。超音波処理によってコロイド粒子の凝集を防止できる。超音波の周波数は10〜30 kHzが好ましく、出力は300〜900 Wが好ましく、処理時間は5〜120分間が好ましい。
(5)アルカリ処理工程
塗布後の混合ゾルにアルカリ処理を施すことにより耐擦傷性が向上する。アルカリ処理は、アルカリ溶液を塗布する方法、又はアンモニア雰囲気中に保存する方法により行うことが可能であるが、アルカリ溶液を塗布する方法で行うのが好ましい。アルカリ処理は、前記塗布した混合ゾルを乾燥させる前に行う。塗布終了からアルカリ処理開始までの間に、塗布した混合ゾルが乾燥しない様にするのが好ましい。そのような目的から、塗布直後の塗布物の置かれる環境を混合ゾルに使用した溶媒の蒸気で満たすのが好ましい。塗布終了からアルカリ処理開始までの時間は、0〜60分であるのが好ましい。
前記アルカリとしては、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ土類金属のアルコキシド、アルミニウムアルコキシド等の金属アルコキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機アルカリ;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等の無機アルカリ塩;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、n-アミルアミン、n-ヘキシルアミン、ラウリルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アニリン、メチルアニリン、エチルアニリン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、ピリジン、イミダゾール、グアニジン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、コリン等の有機アルカリ;蟻酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、蟻酸モノメチルアミン、酢酸ジメチルアミン、酢酸アニリン、乳酸ピリジン、グアニジノ酢酸等の有機酸アルカリ塩等を用いることができる。
中でも、前記アルカリとして、ナトリウムメトキシド、リチウムイソプロポキシド、マグネシウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド等のアルカリ金属アルコキシドを用いるのが特に好ましい。このようなアルカリ金属のアルコキシドを用いた場合、後段の湿度処理工程において前記アルカリ金属アルコキシドが加水分解されてアルカリが放出されるので、シリカエアロゲル膜の硬質化が促進され、成膜工程の迅速化に寄与するとともに、強アルカリ等を使用した場合に比べて硬質化が均一に進行するため、アルカリ溶液の塗布ムラが発生しにくくなる。
前記アルカリ溶液の溶媒は、前記アルカリに応じて適宜選択でき、水、アルコール等が好ましい。アルカリ溶液の濃度は、1×10-4〜20 Nが好ましく、1×10-3〜15 Nがより好ましい。
アルカリ溶液の塗布によりアルカリ処理する場合、シリカエアロゲル膜1cm2当たり10〜200 mL塗布するのが好ましい。塗布はシリカエアロゲル膜を塗布する場合と同様の方法ででき、スピンコート法が好ましい。スピンコート法における基材回転速度は、1,000〜15,000 rpm程度にするのが好ましい。アルカリ溶液を塗布後の膜は、好ましくは1〜40℃、より好ましくは10〜30℃で保存する。保存時間は、0.1〜10時間が好ましく、0.2〜1時間がより好ましい。
アンモニア雰囲気中に保存してアルカリ処理する場合、1×10-1〜1×105 Paのアンモニアガス分圧中で処理するのが好ましい。処理温度は、1〜40℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。処理時間は、1〜170時間が好ましく、5〜80時間がより好ましい。
アルカリ処理したシリカエアロゲル膜は、必要に応じて乾燥する。90℃を越える高温で乾燥させた場合、マイクロクラックが発生する場合があるので、90℃以下で乾燥するのが好ましい。さらに好ましい乾燥温度は40〜60℃である。乾燥時間は、5分〜24時間、さらに好ましくは5〜15分である。
(6)湿度処理工程
アルカリ処理後の塗布膜は、高湿度条件下で湿度処理を施す。湿度処理により、未反応のアルコキシシランの加水分解、及びシラノール基の縮重合反応が進行すると考えられ、シリカエアロゲル膜の機械的強度が向上するとともに、成膜後の時間経過による屈折率の変動が抑制される。
湿度処理は、35℃以上100℃未満及び相対湿度70%以上の環境に保存することにより行う。処理の湿度が70%RH未満では前記の効果が十分に得られない。湿度は75%RH以上であるのが好ましく、80%RH以上であるのがさらに好ましく、90%RH以上であるのが最も好ましい。処理温度は、35〜90℃であるのが好ましく、40〜80℃であるのがさらに好ましく、50〜80℃であるのが最も好ましい。処理温度が35℃未満の場合、前記の効果が十分に得られず、100℃以上にしても効果は飽和してしまう。処理時間は、温度条件及び湿度条件にもよるが、30分以上行うことにより前記効果が得られる。処理時間は、好ましくは0.5〜48時間である。処理時間が48時間超では効果は飽和する。
(7)洗浄工程
湿度処理後のシリカエアロゲル膜は、必要に応じて洗浄してもよい。洗浄は、水及び/又はアルコールに浸漬する方法、シャワーする方法、又はこれらの組合せにより行うのが好ましい。浸漬しながら超音波処理してもよい。洗浄の温度は1〜40℃が好ましく、時間は0.2〜15分が好ましい。シリカエアロゲル膜1 cm2当たり0.01〜1,000 mLの水及び/又はアルコールで洗浄するのが好ましい。洗浄後のシリカエアロゲル膜は、100〜200℃の温度で15分〜24時間乾燥するのが好ましい。アルコールとしてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。
(B) 緻密膜の形成
基材上にシリカエアロゲル膜のみを塗布して単層の反射防止膜を形成しても良いが、予め形成した少なくとも一層の緻密膜の上にシリカエアロゲル膜を塗布し多層反射防止膜を形成しても良い。多層反射防止膜を形成することにより、より広い波長範囲において高い反射防止効果を得ることができる。緻密膜は、金属酸化物等の無機材料からなる層(「無機層」と言う)、無機微粒子とバインダからなる複合層(「無機微粒子−バインダ複合層」又は単に「複合層」と言う)、樹脂からなる層等で形成する。緻密膜の屈折率は、基材の屈折率より小さく、シリカエアロゲル膜の屈折率より大きな値に設定する。
前記無機層に使用可能な無機材料の例としては、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、クライオライト、チオライト、酸化チタン、酸化セリウム、窒化珪素及びこれらの混合物が挙げられる。
前記複合層に使用可能な無機微粒子の例としては、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化セリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、クライオライト、チオライト、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ハフニウム及び酸化亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも一種の無機物の微粒子が挙げられる。酸化珪素は好ましくはコロイダルシリカであり、コロイダルシリカはシランカップリング剤等により表面処理しても良い。無機微粒子−バインダ複合層の屈折率は、無機微粒子の組成や含有率の他、バインダの組成に依存する。
前記樹脂層の例としては、フッ素樹脂層、エポキシ樹脂層、アクリル樹脂層、シリコーン樹脂層及びウレタン樹脂層が挙げられる。フッ素樹脂には、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、パーフルオロエチレンプロピレン共重合体、パーフルオロアルコキシ樹脂、ポリビニリデンフルオライド、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン等の結晶性フッ素樹脂と、非結晶性フッ素樹脂とがあるが、非結晶性フッ素樹脂の方が優れた透明度を有するので好ましい。非結晶性のフッ素樹脂の具体例としては、フルオロオレフィン系の共重合体、含フッ素脂肪族環構造を有する重合体、フッ素化アクリレート系の共重合体が挙げられる。フルオロオレフィン系の共重合体の例としては、37〜48質量%のテトラフルオロエチレンと、15〜35質量%のビニリデンフルオライドと、26〜44質量%のヘキサフルオロプロピレンとが共重合したものが挙げられる。含フッ素脂肪族環構造を有する重合体には、含フッ素脂肪族環構造を有するモノマーが重合したものや、少なくとも二つの重合性二重結合を有する含フッ素モノマーを環化重合したものがある。
緻密膜は複数の層を積層したものであってもよい。複数の緻密膜は、上記無機層、複合層及び樹脂層のいずれかにより形成することができる。無機層を積層することにより複数の緻密膜を形成する場合、例えばフッ化マグネシウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化セリウム、窒化珪素等を材料として用いることができる。
無機材料のみからなる層は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、熱CVD、プラズマCVD、光CVD等の化学蒸着法等により形成することができるが、真空蒸着法が好ましい。無機微粒子−バインダ複合層はディップコート法、スピンコート法、スプレー法、ロールコティング法、スクリーン印刷法等の湿式の方法で形成することができるが、ディップコート法が好ましい。樹脂層は化学蒸着法や湿式法で形成可能である。これらの方法のうち、蒸着法により無機層を作製する方法、及びディップコート法により無機微粒子−バインダ複合層及びフッ素樹脂層を作製する方法が、例えば特開2006-215542号に記載されている。
[2] 反射防止膜
反射防止膜は、シリカエアロゲル膜のみからなるか、シリカエアロゲル膜と一層又は複数の緻密膜との多層膜からなる。シリカエアロゲル膜の物理膜厚は15〜500 nmが好ましく、70〜170 nmがより好ましい。シリカエアロゲル膜の物理膜厚は混合ゾルの濃度や、塗布の回数等によって適宜調製できる。
シリカエアロゲル膜はSi-O結合を有する骨格からなり、ナノサイズの均一な微細孔を有し、高い透明性を有する多孔質膜である。シリカエアロゲル膜の屈折率は空隙率が大きくなるにつれて小さくなる。シリカエアロゲル膜の空隙率は30〜90%であるのが好ましい。30〜90%の空隙率を有するシリカエアロゲル膜は1.05〜1.35の屈折率を有する。例えば空隙率78%のシリカエアロゲル膜の屈折率は約1.1である。空隙率が90%超であるとシリカエアロゲル膜の耐擦傷性が低下する。空隙率が30%未満であると、屈折率が大きすぎる。
本発明の方法により形成されるシリカエアロゲル膜は、機械的強度に優れ、低い屈折率を有する。さらに第一の酸性ゾルから生成する比較的大きなシリカ粒子の隙間に、第二の酸性ゾルから生成する比較的小さなシリカ粒子が入り込んだ構造を有するので、低屈折率でありながら優れた耐擦傷性を有するとともに、湿度処理により屈折率の時間変動が小さくなる。
反射防止膜が、シリカエアロゲル膜と一層の緻密膜との二層膜からなる場合、基材側から緻密膜、シリカエアロゲル膜及び入射媒質の順に屈折率が小さくなっているのが好ましい。緻密膜及びシリカエアロゲル膜の光学膜厚d1及びd2は設計波長λdに対してλd/5〜λd/3の範囲であるのが好ましい。光学膜厚は膜の屈折率と物理膜厚との積である。また薄膜の構成を決定する際に用いる設計波長λdは、光学素子に使用する波長に応じて適宜設定し得るが、例えば可視域[CIE(国際照明委員会)の定義による380〜780 nmの波長域]のほぼ中心波長であるのが好ましい。
前記二層膜からなる反射防止膜において、緻密膜及びシリカエアロゲル膜の光学膜厚を設計波長λdに対してλd/5〜λd/3の範囲にすると、反射防止膜の光学膜厚(光学膜厚d1及びd2の合計)は2λd/5〜2λd/3の範囲となり、基材から入射媒質にかけての光学膜厚に対する屈折率の変化は、滑らかな階段状となる。反射防止膜の光学膜厚が2λd/5〜2λd/3の範囲であると、反射防止膜表面での反射光と、反射防止膜と基材の境界での反射光との光路差が設計波長λdのほぼ1/2となるので、これらの光線が干渉により打ち消し合う。基材から入射媒質にかけての光学膜厚に対する屈折率の変化を滑らかな階段状にすると、各層の境界において起こる入射光の反射を広い波長域で低減できる。さらに各層の界面で生じる反射光は、各層に入射する光線と干渉することによって相殺し合う。従って、反射防止膜は広い波長域及び広い入射角範囲の光線に対して優れた反射防止効果を示す。緻密膜及びシリカエアロゲル膜の光学膜厚がλd/5〜λd/3の範囲でないと、基材から入射媒質にかけての光学膜厚に対する屈折率の変化が滑らかでなくなるため、各膜の界面における反射率が大きくなってしまう。前記光学膜厚d1及びd2は設計波長λdに対して各々λd/4.5〜λd/3.5であるのがより好ましい。
基材と緻密膜との間、緻密膜とシリカエアロゲル膜との間、及びシリカエアロゲル膜と入射媒質との間の屈折率差R1,R2及びR3はそれぞれ0.02〜0.4であるのが好ましい。これにより光学膜厚に対する屈折率の変化を直線に近似できる程度に滑らにでき、反射防止効果がいっそう向上する。
反射防止膜が、シリカエアロゲル膜と複数の緻密膜との多層膜からなる場合、複数の緻密膜は、各層の界面で生じた反射光と、各層に入射する光線とが干渉によって相殺し合うように、屈折率の異なる複数の膜を適宜組合せて設計するのが好ましい。このような設計により、反射防止効率をより高めることができる。
[3] 光学素子
光学素子は、光学基材の表面に本発明の方法により反射防止膜を形成してなる。光学基材の材料は、ガラス、結晶性材料及びプラスチックのいずれでも良い。光学基材の材料の具体例として、BK7、LASF01、LASF016、LaFK55、LAK14、SF5等の光学ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英、青板ガラス、白板ガラス、PMMA樹脂、PC樹脂、鎖状又は環状のオレフィンを主成分とするポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。特に本発明の方法は100℃を超える熱処理(乾燥処理)を含まないので、耐熱性の低い低融点の樹脂にも好適である。これらの基材の屈折率は1.35〜2.00の範囲内であるのが好ましい。光学基材の形状としては、平板状、レンズ状、プリズム状、ライトガイド状、フィルム状、回折素子状等が挙げられる。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
(1) 混合ゾルの調製
テトラエトキシシラン17.05 gとメタノール69.13 gとを混合した後、アンモニア水溶液(3 N)3.88 gを加えて室温で15時間撹拌し、アルカリ性ゾルを調製した。このアルカリ性ゾル40.01 gに、メタノール2.50 gと塩酸(12 N)1.71 gとを添加して室温で30分間撹拌し、第一の酸性ゾル(固形分:4.94質量%)を44.22 g調製した。
室温でテトラエトキシシラン30 mlと、エタノール30 mlと、水2.4 mlとを混合した後、塩酸(1 N)0.1 mlを加え、60℃で90分間撹拌し、第二の酸性ゾル(固形分:14.8質量%)を調製した。
第一の酸性ゾルの全量(44.22 g)に、第二の酸性ゾル0.22 gを添加(第一の酸性ゾル/第二の酸性ゾルの固形分質量比:67.1)し、室温で5分間攪拌して混合ゾルを調製した。
メジアン径の測定
第一の酸性ゾル及び第二の酸性ゾルのシリカ粒子のメジアン径は、それぞれ16.0 nm、1.8 nmであり、第一の酸性ゾルのシリカ粒子と第二の酸性ゾルのシリカ粒子とのメジアン径比は8.9であった。なお、メジアン径は動的光散乱式粒径分布測定装置LB-550(株式会社堀場製作所製)を使用して測定した。
第一の酸性ゾル、第二の酸性ゾル及び混合ゾルの調製条件及びメジアン径を表1にまとめた。
Figure 2017058429
注:(1) TEOSはテトラエトキシシランを表す。
(2) 第一の酸性ゾルと第二の酸性ゾルとの固形分質量比。
(3) 第一の酸性ゾル中のシリカ粒子と第二の酸性ゾル中のシリカ粒子とのメジアン径比。
(2)反射防止膜の形成
(a)5層緻密膜の形成
BK7ガラス平板(直径30 mmの円板状、屈折率nD=1.5168)に、表2に示す構成になるように、電子ビーム式の蒸着源を有する装置を用いて真空蒸着法により、基材側から順に第1層〜第5層の緻密膜を形成した。なお物理膜厚及び屈折率の測定には、レンズ反射率測定機(型番:USPM-RU、オリンパス株式会社製)を使用した。
(b) シリカエアロゲル膜の形成
真空蒸着法により形成した5層緻密膜の上に、得られた混合ゾルをスピンコート法により塗布し、その直後に0.03 Mナトリウムメトキシドのメタノール溶液を0.01〜0.02 mL/cm2となるようにスピンコート法により塗布(アルカリ処理)し、60℃で15分間乾燥し、その後60℃90%RHの恒温恒湿下に30分間静置(湿度処理)した。前記湿度処理後の試料は、室温で15分間放置した後、水及びイソプロピルアルコールで順次洗浄し、80℃で30分間乾燥し、前記5層緻密膜の上にシリカエアロゲル膜が形成された反射防止膜を得た。
Figure 2017058429
注(1):シリカエアロゲル膜(第6層)の屈折率は、反射防止膜の反射率からシミュレーションにより求めた。
(3)評価
得られた反射防止膜について、分光反射率の測定、及び耐擦傷性の評価を以下のようにして行った。結果を図1及び表4に示す。なお前記分光反射率から求めた400〜700 nmにおける平均反射率を表4に記載した。
(a)分光反射率の測定
分光反射率は、レンズ反射率測定機(型番:USPM-RU、オリンパス株式会社製)を使用して、380〜780 nmの波長域について入射角0°で測定した。
(b)耐傷性の評価
反射防止膜の最表面のシリカエアロゲル膜を、1 Kg/cm2の圧力をかけながら3600 mm/分の速度で20 mm×20 mmの不織布(商品名「スピックレンズワイパー」、小津産業株式会社製)で10回擦り、表面の傷を目視で確認し以下の基準で評価した。
<判定基準>
シリカエアロ膜に全く傷が付かなかった・・・○
シリカエアロ膜に傷は付いたが剥離しなかった・・・△
シリカエアロ膜が剥離した・・・×
比較例1
アルカリ処理後の乾燥(60℃)時間を45分間に延ばし、その後の湿度処理を省略した以外は実施例1と同様にして反射防止膜を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。なお、分光反射率は実質的に実施例1の反射防止膜と同等であったので省略する。
比較例2
BK7ガラス平板(直径30 mmの円板状、屈折率nD=1.5168)に、表3に示す構成になるように、電子ビーム式の蒸着源を有する装置を用いて真空蒸着法により、基材側から順に第1層〜第6層の緻密膜を形成し、反射防止膜を作製した。この反射防止膜について、実施例1と同様の評価を行った。結果を図1及び表4に示す。
Figure 2017058429
Figure 2017058429
図1及び表4から明らかなように、本発明の方法によって作製した実施例1の反射防止膜は、蒸着膜のみからなる比較例2の6層構成の反射防止膜よりも優れた反射防止性能を有するとともに、湿度処理を行わなかった比較例1の反射防止膜(シリカエアロゲル膜あり)に比べて優れた耐擦傷性を有していることが分かる。

Claims (5)

  1. シリカエアロゲル膜を少なくとも一層有する反射防止膜の製造方法であって、前記シリカエアロゲル膜を、アルコキシシランを塩基性触媒下で加水分解及び縮重合して調製したアルカリ性ゾルに、さらに酸性溶液を添加して得られたメジアン径100 nm以下の第一の酸性ゾル、及びアルコキシシランを酸性触媒下で加水分解及び縮重合して得られたメジアン径10 nm以下の第二の酸性ゾルを混合してなる混合ゾルを、基材上に塗布し、前記混合ゾルが乾燥する前に、アルカリ処理を行い、35℃以上100℃未満及び相対湿度70%以上の環境に保存する湿度処理を施して形成することを特徴とする反射防止膜の製造方法。
  2. 請求項1に記載の方法において、前記湿度処理の保存時間が30分以上48時間以下であることを特徴とする反射防止膜の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の方法において、前記アルカリ処理後に、40〜60℃で乾燥を行うことを特徴とする反射防止膜の製造方法。
  4. 請求項3に記載の方法において、前記アルカリ処理は、アルカリ溶液を塗布することにより行うことを特徴とする反射防止膜の製造方法。
  5. 請求項4に記載の方法において、前記アルカリ溶液が、アルカリ金属アルコキシドのアルコール溶液であることを特徴とする反射防止膜の製造方法。
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