JP2010250069A - 反射防止膜、及びこれを有する光学素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板上に、順に第1層〜第8層を積層してなる反射防止膜であって、波長400〜680 nmにおいて、基板の屈折率が1.43〜2.11であり、第1、3、5、7層が屈折率1.9〜2.6の高屈折率材料膜からなり、第2、4、6層が屈折率1.37〜1.47の低屈折率材料膜からなり、第8層が屈折率1.20〜1.30の超低屈折率材料膜からなり、第1層の光学膜厚が10〜160 nm、第2層の光学膜厚が2〜70 nm、第3層の光学膜厚が60〜140 nm、第4層の光学膜厚が2〜30 nm、第5層の光学膜厚が135〜180 nm、第6層の光学膜厚が30〜40 nm、第7層の光学膜厚が40〜60 nm、第8層の光学膜厚が120〜150 nmであることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
前記基板の屈折率が1.43〜2.11であり、
前記第1層が光学膜厚10〜160 nm、屈折率1.9〜2.6の高屈折率材料膜からなり、
前記第2層が光学膜厚2〜70 nm、屈折率1.37〜1.47の低屈折率材料膜からなり、
前記第3層が光学膜厚60〜140 nm、屈折率1.9〜2.6の高屈折率材料膜からなり、
前記第4層が光学膜厚2〜30 nm、屈折率1.37〜1.47の低屈折率材料膜からなり、
前記第5層が光学膜厚135〜180 nm、屈折率1.9〜2.6の高屈折率材料膜からなり、
前記第6層が光学膜厚30〜40 nm、屈折率1.37〜1.47の低屈折率材料膜からなり、
前記第7層が光学膜厚40〜60 nm、屈折率1.9〜2.6の高屈折率材料膜からなり、
前記第8層が光学膜厚120〜150 nm、屈折率1.20〜1.30の超低屈折率材料膜からなることを特徴とする。
前記低屈折率材料膜はMgF2及び/又はSiO2を含有してなり、
前記超低屈折率材料膜はMgF2、SiO2及びAl2O3からなる群から選ばれた少なくとも一材料を含有してなるナノ多孔質膜又はナノ粒子膜であるのが好ましい。
(1)構成
本発明の反射防止膜は、図1に示すように、所定の屈折率を有する第1層から第8層までの薄膜を基板3の表面に積層してなる。すなわち本発明の反射防止膜は、波長400〜680 nmにおいて、屈折率が1.43〜2.11の基板上に、
光学膜厚10〜160 nm、屈折率1.9〜2.6の高屈折率材料膜からなる第1層と、
光学膜厚2〜70 nm、屈折率1.37〜1.47の低屈折率材料膜からなる第2層と、
光学膜厚60〜140 nm、屈折率1.9〜2.6の高屈折率材料膜からなる第3層と、
光学膜厚2〜30 nm、屈折率1.37〜1.47の低屈折率材料膜からなる第4層と、
光学膜厚135〜180 nm、屈折率1.9〜2.6の高屈折率材料膜からなる第5層と、
光学膜厚30〜40 nm、屈折率1.37〜1.47の低屈折率材料膜からなる第6層と、
光学膜厚40〜60 nm、屈折率1.9〜2.6の高屈折率材料膜からなる第7層と、
光学膜厚120〜150 nm、屈折率1.20〜1.30の超低屈折率材料膜からなる第8層とをこの順に積層してなる。なお、光学膜厚とは、薄膜の屈折率(n)と物理膜厚(d)の積(n×d)である。
各層を構成する材料としては、例えば、Al2O3、TiO2、ZrO2、Ta2O5、Nb2O5、CeO2、Yb2O3、HfO2、Nd2O3、Pr6O11、La2O3、Er2O3、CdO、Eu2O3、NiO、Cr2O3、SnO2、Sb2O3、ZnO、ZnS、Sb2S3、CdS、AlN、SiO2、MgF2、AlF3、BaF2、CaF2、LiF、NaF、SrF2、In2O3、Y2O3、MgO、CeF3、YF3、DyF3及びフッ素樹脂が挙げられる。
基板3は、波長領域400〜680 nmの光の屈折率が1.43〜2.11であり、好ましくは1.435〜2.105である。屈折率がこのような値の基板3を用いて反射防止膜を形成することにより、前記波長領域において光学性能を良好に改善することができ、かつ環境の湿度依存性を小さくすることができる。
(1) 第1層〜第7層の形成方法
反射防止膜の第1層〜第7層は、物理成膜法で形成するのが好ましい。物理成膜法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。中でも特に製造コスト、加工精度の面において真空蒸着法が好ましい。
第8層のナノ多孔質膜又はナノ粒子膜は特許文献2〜8及び非特許文献1に記載の方法により得ることができる。シリカを主成分とする多孔質層は、湿式法により形成するのが好ましく、特にゾル-ゲル法が好ましい。すなわち、アルコキシシラン等のシリカ骨格形成化合物からなる湿潤ゲルを、必要に応じて有機修飾し、バインダーとして紫外線硬化性の樹脂を混合し、得られた塗工液を塗布、乾燥及び焼成することにより形成する。シリカを主成分とする多孔質層は、特許文献4〜8及び非特許文献1に記載の方法により形成することができる。以下に、非特許文献1に記載のアルカリ及び酸を用いた2段階反応によるナノポーラスシリカ膜の形成方法について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(a) アルコキシシラン
第一のゾルを生成するためのアルコキシシランはテトラアルコキシシランのモノマー又はオリゴマー(縮重合物)が好ましい。4官能のアルコキシシランを用いた場合、比較的大きな粒径を有するコロイド状シリカ粒子のゾルを得ることができる。テトラアルコキシシランは、Si(OR)4[Rは炭素数1〜5のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、又は炭素数1〜4のアシル基(アセチル等)]により表されるものが好ましい。テトラアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジエトキシジメトキシシラン等が挙げられる。中でもテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランが好ましい。本発明の効果を阻害しない範囲で、テトラアルコキシシランに少量の3官能以下のアルコキシシランを配合しても良い。
アルコキシシランに有機溶媒、塩基性触媒及び水を添加することにより、加水分解及び縮重合が進行する。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、ブタノール等のアルコールが好ましく、メタノール又はエタノールがより好ましい。塩基性触媒としては、アンモニア、アミン、NaOH又はKOHが好ましい。好ましいアミンは、アルコールアミン又はアルキルアミン(メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、n-ブチルアミン、n-プロピルアミン等)である。
得られたアルカリ性ゾルに酸性触媒、並びに必要に応じて水及び有機溶媒を添加し、pHを約1まで下げ、酸性状態で加水分解及び縮重合をさらに進行させる。酸性触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、酢酸等が挙げられる。有機溶媒は上記と同じものを使用できる。有機溶媒/アルコキシシランのモル比及び水/アルコキシシランのモル比は上記と同じで良い。酸性触媒を含有するゾルは10〜90℃で約15分〜24時間静置又はゆっくり撹拌して熟成するのが好ましい。熟成により加水分解及び縮重合が進行し、第一のゾルが生成する。
(a) アルコキシシラン
第一のゾルにアルコキシシラン及び水の混合物を添加し、加水分解及び縮重合をさらに進行させ、第二のゾルを調製する。アルコキシシランとしてはSi(OR1)x(R2)4-x[xは2〜4の整数である。]により表される2〜4官能のものを用いるのが好ましい。R1は炭素数1〜5のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、又は炭素数1〜4のアシル基(アセチル等)が好ましい。R2は炭素数1〜10の有機基が好ましく、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、デシル、フェニル、ビニル、アリル等の炭化水素基、及びγ-クロロプロピル、CF3CH2-、CF3CH2CH2-、C2F5CH2CH2-、C3F7CH2CH2CH2-、CF3OCH2CH2CH2-、C2F5OCH2CH2CH2-、C3F7OCH2CH2CH2-、(CF3)2CHOCH2CH2CH2-、C4F9CH2OCH2CH2CH2-、3-(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピル、H(CF2)4CH2OCH2CH2CH2-、H(CF2)4CH2CH2CH2-、γ-グリシドキシプロピル、γ-メルカプトプロピル、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル、γ-メタクリロイルオキシプロピル等の置換炭化水素基が挙げられる。
(a) 塗布
第二のゾルを基材の表面に塗布する方法としては、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、印刷法等が挙げられる。レンズのような三次元構造物に塗布する場合、ディッピング法が好ましい。ディッピング法における引き上げ速度は約0.1〜3 mm/秒であるのが好ましい。
塗布膜の乾燥条件は基材の耐熱性に応じて適宜選択する。縮重合反応を促進するために、水の沸点未満の温度で15分〜24時間熱処理した後、100〜200℃の温度で15分〜24時間熱処理しても良い。熱処理することによりナノポーラスシリカ膜は高い耐擦傷性を発揮する。
ナノポーラスシリカ膜をアルカリで処理することにより耐擦傷性がいっそう向上する。アルカリ処理は、アルカリ溶液を塗布、又はアンモニア雰囲気中に放置することにより行うのが好ましい。アルカリ溶液の溶媒はアルカリに応じて適宜選択でき、水、アルコール等が好ましい。アルカリ溶液の濃度は、1×10-4〜20 Nが好ましく、1×10-3〜15 Nがより好ましい。
アルカリ処理後のナノポーラスシリカ膜は、必要に応じて洗浄してもよい。洗浄は、水及び/又はアルコールに浸漬する方法、シャワーする方法、又はこれらの組み合わせにより行うのが好ましい。浸漬しながら超音波処理してもよい。洗浄の温度は1〜40℃が好ましく、時間は0.2〜15分が好ましい。ナノポーラスシリカ膜1 cm2当たり0.01〜1,000 mLの水及び/又はアルコールで洗浄するのが好ましい。洗浄後のナノポーラスシリカ膜は、100〜200℃の温度で15分〜24時間乾燥するのが好ましい。アルコールとしてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。
上述したように、基板に本発明の反射防止膜を形成することにより優れた低反射率特性及び小さな湿度依存性が得られる。具体的には、第8層の超低屈折率材料膜の屈折率が約3%増加しても、反射防止膜1の0°入射光の波長領域400〜680 nmにおける反射率は約0.13%以下であり、湿度が変化した場合でも高い反射防止性能を有する。
本発明の反射防止膜を前述の基板に施すことにより、400〜680 nmの可視光帯域において、反射率が約0.1%以下の反射防止効果を有する光学部品が得られる。本発明の光学部品は、テレビカメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、車載カメラ、顕微鏡、望遠鏡等の光学機器に搭載されるレンズ、プリズム、回折素子等に好適である。特にカメラの交換レンズに好適である。
テトラエトキシシラン1質量部とエタノール40質量部とを混合した後、アンモニア水(1 N)3質量部を加えて室温(25℃)で10時間撹拌し、アルカリ性ゾルを調製した。このアルカリ性ゾル40質量部に、エタノール4質量部と塩酸(12 N)4質量部とを添加してpHを約1にして室温で30分撹拌し、第一のゾルを調製した。この第一のゾル100質量部に、テトラエトキシシランと水とをモル比で1:3に混合した液を1質量部加え、室温(25℃)で15日間静置し、第二のゾルを調製した。
基板S-FPL53(オハラ製nd=1.439)上に、高屈折率材料膜及び低屈折率材料膜としてそれぞれTa2O5(nd=2.042)及びMgF2(nd=1.388)を電子ビーム式の蒸着源を有する装置を用いた真空蒸着法により表2に示す構成で形成し、その上に超低屈折率材料膜として参考例と同様にしてナノ多孔質膜(nd=1.23)を形成し、光学素子を作製した。蒸着は初期真空度1.2×10-5 Torr 及び基板温度230℃の条件で行った。
基板をBAC4(HOYA製nd=1.569)、LAC9(HOYA製nd=1.691)、TAF1(HOYA製nd=1.773)、TAFD30(HOYA製nd=1.883)、S-NPH2(オハラ製nd=1.923)、ルミセラ(村田製作所製nd=2.095)に変更し、第1層〜第8層の光学膜厚を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、それぞれ実施例2〜7の光学素子を作製した。
光学膜厚を表3に示すように変更した以外は実施例1〜7と同様にして光学素子を作製した。
101・・・第1層
102・・・第2層
103・・・第3層
104・・・第4層
105・・・第5層
106・・・第6層
107・・・第7層
108・・・第8層
3・・・基板
30・・・電子ビーム式真空蒸着装置
31・・・真空チャンバ
32・・・回転ラック
33・・・蒸着源
34・・・回転軸
35・・・真空ポンプ接続口
36・・・ルツボ
37・・・蒸着材
38・・・電子ビーム照射器
39・・・ヒーター
40・・・真空ポンプ
100・・・基板
Claims (5)
- 基板上に、前記基板側から順に第1層〜第8層を積層してなる反射防止膜であって、波長400〜680 nmにおいて、
前記基板の屈折率が1.43〜2.11であり、
前記第1層が光学膜厚10〜160 nm、屈折率1.9〜2.6の高屈折率材料膜からなり、
前記第2層が光学膜厚2〜70 nm、屈折率1.37〜1.47の低屈折率材料膜からなり、
前記第3層が光学膜厚60〜140 nm、屈折率1.9〜2.6の高屈折率材料膜からなり、
前記第4層が光学膜厚2〜30 nm、屈折率1.37〜1.47の低屈折率材料膜からなり、
前記第5層が光学膜厚135〜180 nm、屈折率1.9〜2.6の高屈折率材料膜からなり、
前記第6層が光学膜厚30〜40 nm、屈折率1.37〜1.47の低屈折率材料膜からなり、
前記第7層が光学膜厚40〜60 nm、屈折率1.9〜2.6の高屈折率材料膜からなり、
前記第8層が光学膜厚120〜150 nm、屈折率1.20〜1.30の超低屈折率材料膜からなることを特徴とする反射防止膜。 - 請求項1に記載の反射防止膜において、
前記高屈折率材料膜がTiO2、Nb2O5、Ta2O5、ZrO2、HfO2、CeO2、SnO2、In2O3、ZnO、ZnS、La2O3及びSb2O3からなる群から選ばれた少なくとも一材料を含有してなり、
前記低屈折率材料膜がMgF2及び/又はSiO2を含有してなり、
前記超低屈折率材料膜がMgF2、SiO2及びAl2O3からなる群から選ばれた少なくとも一材料を含有してなるナノ多孔質膜又はナノ粒子膜であることを特徴とする反射防止膜。 - 請求項1又は2に記載の反射防止膜において、前記第1層〜第7層が物理成膜法により形成された層であり、前記第8層が湿式法により形成された層であることを特徴とする反射防止膜。
- 請求項3に記載の反射防止膜において、前記物理成膜法が真空蒸着法であり、前記湿式法がゾル-ゲル法であることを特徴とする反射防止膜。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止膜を有する光学素子。
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