こうした排気装置では、排気ガスが個々のマフラーに分配されることで、効果的に消音が実現され、排気抜けが向上する一方で、2つのマフラーが並列に延びることから、排気装置の大型化は避けられない。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、小型化を図りながら消音効果を高めることができる内燃機関の排気装置を提供することを目的とする。
本発明の第1側面に係る排気装置は、互いに隔てられる第1膨張室および第2膨張室を少なくとも区画し、前記第1膨張室に内燃機関から延びる複数の排気管を接続するマフラー本体と、前記第1膨張室および前記第2膨張室に接続され、前記複数の排気管から排気ガスを合流させて前記第2膨張室に導入する連通管とを備える。
本発明の第2側面では、第1側面の構成に加え、前記マフラー本体は、前記第1膨張室および前記第2膨張室の間に第3膨張室を仕切ればよく、前記第3膨張室には、前記第2膨張室に連通する第2の連通管と、前記第2膨張室を貫通して排出口を形成する出口管とが接続されればよい。
本発明の第3側面では、第1側面または第2側面の構成に加え、排気装置は、前記第1膨張室内に配置されて、前記排気管ごとに前記第1膨張室を仕切って個別空間を区画し、前記連通管の流入口に端面で向き合わせられる仕切り板を備えることができる。
本発明の第4側面では、第3側面の構成に加えて、前記第1膨張室には、前記内燃機関の複数の気筒から相違するタイミングで排気ガスが流入すればよい。
本発明の第5側面では、第4側面の構成に加えて、前記排気管は、一本化されて触媒装置を通過し、前記触媒装置の下流で複数に分岐すればよい。
本発明の第6側面では、第3側面ないし第5側面のいずれか1の構成に加えて、前記仕切り板は、前記連通管の軸心に平行に広がって前記連通管の流入口を二分する位置に配置されればよい。
本発明の第7側面では、第3側面ないし第6側面のいずれか1の構成に加えて、前記仕切り板は、湾曲する板材から形成されればよい。
本発明の第8側面では、第3側面ないし第7側面のいずれか1の構成に加えて、前記マフラー本体は、鞍乗り型車両に取り付けられる際に特定される後輪の占有空間で前記第1膨張室に向かって窪む逃げ凹部を備えてもよく、前記仕切り板は一端で前記逃げ凹部の内壁面に溶接されればよい。
本発明の第1側面によれば、内燃機関の排気ガスは複数の排気管から単一の第1膨張室に導入される。排気ガスは第1膨張室内で合流し、共通の連通管で第2膨張室に導かれる。したがって、複数の排気管個々にマフラーが構成される場合に比べて、排気装置は小型化されることができる。また、排気ガスの合流後には複数の排気管の間で排気装置の構造は共通化されることから、部品点数の削減に寄与することができる。
本発明の第2側面によれば、第3膨張室が配置されることから、第1膨張室および第2膨張室の相互接続にあたって連通管は第3膨張室を貫通する。その結果、連通管の長さは確保される。消音効果は高められる。しかも、出口管の働きで排気ガスの流通経路の長さはさらに確保される。消音効果はさらに高められる。連通管および出口管は第3膨張室および第2膨張室を貫通することから、排気装置の小型化は維持される。
本発明の第3側面によれば、排気ガスは個々の個別空間に流入し、個別空間から個別に連通管に流れ込む。したがって、排気管相互の間で共鳴は抑制され、共鳴に基づく騒音の低減を図ることができ、排気音の音色を良好に保持することができる。
本発明の第4側面によれば、共鳴が生じやすい多気筒の内燃機関に対しても、排気管相互の間で共鳴を抑制し、共鳴に基づく騒音の低減を図ることができる。
本発明の第5側面によれば、下流側排気管から逆流脈動は防止され、触媒装置内を通過する排気ガスの整流効果は高まる。その結果、排気ガスの浄化性能は向上し、内燃機関の出力は向上し、騒音は低減され、排気音の音色は向上する。
本発明の第6側面によれば、連通管には複数の排気管から等しく排気ガスが流入する。排気性能は向上する。
本発明の第7側面によれば、仕切り板の振動は抑制される。振動に伴う鳴り騒音は防止される。
本発明の第8側面によれば、逃げ凹部で第1膨張室は狭まる。したがって、仕切り板の広がりは縮小される。仕切り板は小型化されることができる。鳴り騒音はさらに抑制されることができる。
図1は鞍乗り型車両の一具体例として自動二輪車BKを示す。自動二輪車BKの車体フレームFは、フロントフォーク11を操向可能に支持するヘッドパイプ12と、ヘッドパイプ12から後下がりに延びる左右1対のメインフレーム13と、それらのメインフレーム13よりも急傾斜で後下がりに延びる左右1対のダウンフレーム14と、両ダウンフレーム14の下端から後方に延びる左右のロアフレーム15と、メインフレーム13の後端から下方に延びてロアフレーム15の後端に結合される左右1対のセンターフレーム16と、メインフレーム13の後端から後上がりに延びる左右1対のシートレール17と、
センターフレーム16の下部およびシートレール17の後部間を結ぶ左右1対のリアサブフレーム18とを備える。フロントフォーク11には水平軸線回りで回転自在に前輪WFが支持される。
車体フレームFにはパワーユニットPが支持される。パワーユニットPは、メインフレーム13、ダウンフレーム14、ロアフレーム15およびセンターフレーム16で囲まれる領域に配置される。パワーユニットPは複数気筒の内燃機関E(例えば4サイクル並列2気筒の内燃機関)と変速機Mとを備える。変速機Mは、内燃機関Eに設けられる変速機ケースとしてのクランクケース19に収容される。
センターフレーム16の下部には支軸21回りで上下揺動自在にスイングアーム22の前端が連結される。スイングアーム22の後端には、支軸21の軸心に平行な水平軸回りで回転自在に後輪WRが支持される。後輪WRはパワーユニットPから伝達される動力で駆動される。
内燃機関Eの上方でメインフレーム13には燃料タンク23が搭載される。燃料タンク23の後方にはライダーシート24が配置され、ライダーシート24の後方にピリオンシート25が配置される。ライダーシート24およびピリオンシート25はシートレール17で支持される。
内燃機関Eはクランクケース19、シリンダーブロック26、シリンダーヘッド27およびヘッドカバー28を備える。クランクケース19は、車幅方向に延びる軸線を有するクランクシャフト31を回転自在に支持する。シリンダーブロック26は、前傾したシリンダー軸線CCを有してクランクケース19の前部上端に結合される。シリンダーブロック26には、クランクシャフト31の軸線に沿って並列に2つのシリンダーが形成される。クランク角は例えば270度に設定される。シリンダーブロック26の上端にシリンダーヘッド27は結合される。シリンダーヘッド27の上端にはヘッドカバー28が結合される。クランクケース19の下部にはオイルパン32が結合される。
内燃機関Eには排気装置35が接続される。排気装置35はシリンダーヘッド27に接続される排気管38を備える。排気管38は、シリンダーヘッド27から延びて、内燃機関Eの下方空間を通って車両後方に向かう。排気管38の後端にはマフラー39が取り付けられる。排気管38およびマフラー39はリアサブフレーム18に連結される。こうして排気装置35は車体フレームFに結合され固定される。
図2に示されるように、排気管38は、気筒ごとにシリンダーヘッド27の前部側壁に接続される(2本の)上流管41と、上流管41の下流端に接続されて、2つの上流管41を一本化する共通管42と、共通管42の下流端に接続されて、複数に(ここでは2本に)分岐する分岐管43a、43bとを備える。上流管41には、内燃機関Eの2つの気筒から相違するタイミングで排気ガスが流入する。共通管42には触媒装置44が組み込まれる。触媒装置44は2つの気筒に共通に排気ガスを浄化する。こうして排気管38は、一本化されて触媒装置44を通過し、触媒装置44の下流で2つに分岐する。
図3に示されるように、マフラー39は、互いに隔てられる第1膨張室46および第2膨張室47を区画するマフラー本体48を備える。マフラー本体48は、外筒48aと、外筒48aに同軸に外筒48a内に収容される内筒48bとで形成される。外筒48aと内筒48bとの間には吸音材としてのガラスウールが挟まれる。
第1膨張室46は、前方空間としてマフラー本体48内に第1隔壁49で仕切られる。第2膨張室47は、後方空間としてマフラー本体48内に第2隔壁51で仕切られる。第1隔壁49および第2隔壁51は、マフラー本体48内で第1膨張室46および第2膨張室47の間に第3膨張室52を仕切る。第3膨張室52は、第1隔壁49および第2隔壁51でそれぞれ第1膨張室46および第2膨張室47から隔てられる。こうしてマフラー本体48内の空間は前後方向に3つに分割される。第1隔壁49および第2隔壁51は例えば内筒48bの内面に溶接されればよい。
排気管38の分岐管43a、43bは第1膨張室46に接続される。分岐管43aは、第1膨張室46の上方空間に進入し、第1膨張室46内で開口する。分岐管43bは、第1膨張室46の下方空間に進入し、第1膨張室46内で開口する。分岐管43a、43bの流出端はそれぞれ円筒形に形成され、分岐管43a、43bの軸心は相互に並列に延びればよい。
マフラー39は、第1膨張室46および第2膨張室47に接続される第1連通管54を備える。第1連通管54は第3膨張室52を貫通する。第1連通管54は第1隔壁49および第2隔壁51でマフラー本体48内に支持される。第1連通管54は、第1膨張室46で開口する流入端54aと、第2膨張室47で開口する流出端54bとを有する。第1連通管54は円筒形に形成され、第1連通管54の軸心は分岐管43a、43bの軸心に並列に設置されればよい。第1連通管54は、分岐管43a、43bからの排気ガスを合流させて第2膨張室47に導入する。
マフラー39は、第2膨張室47に連通しつつ第3膨張室52に接続される第2連通管55を備える。第2連通管55は第2隔壁51を貫通する。第2連通管55は第2隔壁51でマフラー本体48内に支持されればよい。第2連通管55は、第2膨張室47に進入して第2膨張室47内で開口する流入端55aと、第3膨張室52に進入して第3膨張室52内で開口する流出端55bとを有する。第2連通管55は円筒形に形成され、第2連通管55の軸心は第1連通管54の軸心に並列に設置されればよい。こうして第2膨張室47内の排気ガスは第3膨張室52に導入されることができる。
マフラー39は、第3膨張室52に接続され、マフラー本体48の外側で第1排出口56を形成する第1出口管57を備える。第1出口管57は、第3膨張室52に進入して第3膨張室52内で開口する流入端から、第2膨張室47を貫通して第1排出口56に向かって延びる。ここでは、第1出口管57の流入端は第2連通管55の流出端55bよりも後方に配置される。第1出口管57は、第2隔壁51およびマフラー本体48の後端壁で支持されればよい。第2膨張室47に導入された排気ガスは、第2連通管55で第3膨張室52に流入し、第3膨張室52から第1出口管57を通じてマフラー本体48の外側に排出されることができる。図4に示されるように、第3膨張室52内では第1連通管54、第2連通管55および第1出口管57は相互に干渉せずにずれて配置される。ここでは、第1連通管54および第2連通管55の径は第1出口管57の径よりも大きい。
マフラー39は、第2膨張室47に接続され、マフラー本体48の外側で第2排出口58を形成する第2出口管59を備える。第2出口管59は、第2膨張室47に進入して第2膨張室47内で開口する流入端から、マフラー本体48の後端壁を貫通して第2排出口58に向かって延びる。ここでは、第2出口管59の流入端は第1連通管54の流出端54bよりも前方に配置される。第2出口管59は、マフラー本体48の後端壁で支持されればよい。第2膨張室47に導入された排気ガスは第2膨張室47から第2出口管59を通じてマフラー本体48の外側に排出されることができる。図5に示されるように、第2膨張室47内では第1連通管54、第1出口管57および第2出口管59は相互に干渉せずにずれて配置される。ここでは、第1連通管54の径は第1出口管57および第2出口管59の径よりも大きい。図4から明らかなように、第1連通管54の径は第2連通管55の径以上であることから、第2連通管55の径は第2出口管59の径よりも大きい。
第1膨張室46内には仕切り板62が配置される。仕切り板62は分岐管43a、43bごとに第1膨張室46を仕切り個別空間(上方空間46aおよび下方空間46b)を区画する。仕切り板62は、第1連通管54の軸心に並列に(例えば平行に)広がる。ここでは、仕切り板62の端面62aの一部は第1連通管54の流入端54aから所定の距離をおいて当該流入端54aに向き合わせられる。したがって、流入端54aと仕切り板62との間には上方空間46aおよび下方空間46bを相互に連通する切り欠き63が形成される。切り欠き63を区画する端面62aは分岐管43a、43bの流出端よりも後方に配置される。
図6に示されるように、仕切り板62は第1連通管54の流入口(流入端54a)を二分する位置に配置される。配置にあたって仕切り板62の外周はマフラー本体48の内筒48bの内面に溶接されればよい。仕切り板62は例えば湾曲した板材から形成される。湾曲面の母線は例えば第1連通管54の軸心に平行に設置されればよい。
いま、内燃機関Eが動作すると、内燃機関Eの複数の気筒から相違するタイミングで排気ガスが排出される。排気ガスは排気管38からマフラー39に導入される。排気管38は、一本化されて触媒装置44を通過し、触媒装置44の下流で複数の分岐管43a、43bに分岐することから、下流側排気管から逆流脈動は防止され、触媒装置44内を通過する排気ガスの整流効果は高まる。その結果、排気ガスの浄化性能は向上し、内燃機関Eの出力は向上し、騒音は低減され、排気音の音色は向上する。
排気ガスは分岐管43a、43bから単一の第1膨張室46に導入される。排気ガスは第1膨張室46内で合流し、共通の第1連通管54で第2膨張室47に導かれる。したがって、分岐管43a、43b個々にマフラーが構成される場合に比べて、排気装置35は小型化されることができる。また、排気ガスの合流後には複数の分岐管43a、43bの間で第2連通管55、第3膨張室52、第1出口管57および第2出口管59といった構造は共通化されることから、部品点数の削減に寄与することができる。
合流にあたって、排気ガスは分岐管43a、43bから個々の個別空間(上方空間46aおよび下方空間46b)に流入し、上方空間46aおよび下方空間46bから個別に第1連通管54に流れ込む。したがって、分岐管43a、43b相互の間で共鳴は抑制され、共鳴に基づく騒音の低減を図ることができ、排気音の音色を良好に保持することができる。
第2膨張室47では第1連通管54の流出端54bは第2出口管59の流入端よりも後方に位置することから、排気ガスは第1連通管54から直接に第2出口管59に流れ込むことなく、マフラー本体48の後端壁に向かって噴き出す。第2連通管55の径は第2出口管59のそれよりも大きいこともあって、排気ガスは第2連通管55に流れ込みやすい。こうして排気ガスは第2膨張室47から第3膨張室52に導入される。排気ガスは第3膨張室52から第1出口管57を経て外部に排出される。
マフラー本体48では第1膨張室46および第2膨張室47の相互接続にあたって第1連通管54は第3膨張室52を貫通する。その結果、第1連通管54の長さは十分に確保される。消音効果は高められる。しかも、第1出口管57の働きで排気ガスの流通経路の長さはさらに確保される。消音効果はさらに高められる。さらに、第1連通管54および第1出口管57は第3膨張室52および第2膨張室47をそれぞれ貫通することから、排気装置35の小型化は維持される。
前述のように、第1膨張室46には、内燃機関Eの複数の気筒から相違するタイミングで排気ガスが流入する。共鳴が生じやすい多気筒の内燃機関Eに対しても、排気管相互の間で共鳴を抑制し、共鳴に基づく騒音の低減を図ることができる。
マフラー39では第1膨張室46に仕切り板62が配置される。第1連通管54には分岐管43a、43bから等しく排気ガスが流入する。その結果、排気性能は向上する。しかも、仕切り板62は、湾曲する板材から形成され、仕切り板62の振動は抑制される。振動に伴う鳴り騒音は防止される。
図7に示されるように、第1連通管54の流入端54aと仕切り板62の端面62aとの距離Dは第1連通管54の内径aの2分の1以下に設定される。こうした構成によれば、上方空間46aを流通する排気ガスと、下方空間46bを流通する排気ガスとの間で相互干渉が防止されることができる。
図7に示されるように、マフラー本体48には、自動二輪車BKに取り付けられる際に特定される後輪WRの占有空間で第1膨張室46に向かって窪む逃げ凹部64が形成される。逃げ凹部64は車幅方向に第1膨張室46を狭める。仕切り板62の一端が逃げ凹部64の内側でマフラー本体48の内筒48bに溶接され固定されれば、仕切り板62の広がりは縮小される。仕切り板62は小型化されることができる。鳴り騒音はさらに抑制されることができる。