JP2017045058A - トナー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】結着樹脂、及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、(i)該トナー粒子の内部ではワックスがドメインを形成して存在しており、(ii)最も長径が大きいドメインと該トナー粒子の表面との最短距離が50nm未満であるトナー粒子の割合が特定の範囲であり、(iii)該最も長径が大きいドメインと該トナー粒子の表面との最短距離が50nm以上500nm以下であるトナー粒子の割合が特定の範囲であり、(iv)該最も長径が大きいドメインの長径をdとし、該トナーの個数平均粒径をDとしたとき、該dと該Dとが特定の関係を満たし、(v)該最も長径が大きいドメインの長径と短径の比が特定の範囲であることを特徴とするトナー。
【選択図】なし
Description
まず、複写機、又はプリンターの高速化は、現像システムが高速化することを意味する。現像システムは、静電荷潜像をトナーによって顕在化する画像形成方法である。この動作は、いずれもトナーとトナー、又はトナーと部材との接触を伴うものであり、このような接触の度にトナーは負荷を繰り返し受ける。このような負荷によりトナーが劣化してしまい、現像剤として求められる流動性及び摩擦帯電性が次第に低下してくる。そして、このような状態のトナーは帯電量の低下や帯電分布の不均一になり画像上の不具合が発生することが分かってきている。
そこで、特許文献2では、水系媒体を用いてトナー製造を行う溶解懸濁法においてワックス分散剤を用いてワックスをトナー中に分散させる方法が提案されている。確かにワックスがトナー粒子中に分散し、トナー表面近傍にもワックスが存在する。その結果、定着時に結着樹脂とワックスが相溶しやすくなるため低温定着性に効果がある。しかし、結着樹脂とワックスが相溶するとワックスとしての作用効果が失われるため紙の分離性には有効ではない。
本発明は、上述した従来の問題点を解決したトナーを提供するものである。即ち、本発明は、高速現像システムにおいて耐久使用を通して安定した現像性を有し、さらに、先端余白の少ない画像を形成しても、定着ローラに紙が巻き付かずに、分離できるトナーを提供することを目的とする。
該トナー粒子の内部構造を3次元解析したとき、
(i)該トナー粒子の内部ではワックスがドメインを形成して存在しており、
(ii)該ワックスのドメインのうち最も長径が大きいドメインと該トナー粒子の表面との最短距離が50nm未満であるトナー粒子の割合が10.0個数%以下であり、
(iii)該最も長径が大きいドメインと該トナー粒子の表面との最短距離が50nm以上500nm以下であるトナー粒子の割合が60.0個数%以上であり、
(iv)該最も長径が大きいドメインの長径をdとし、該トナーの個数平均粒径(D1)をDとしたとき、該dと該Dとが下記式(1)の関係を満たし、
0.25D<d<0.50D (1)
(v)該最も長径が大きいドメインの長径と短径の比(長径/短径)が1.0以上2.5以下であることを特徴とするトナー。
本発明において、上記条件を満たすトナーにすることで、高速現像システムにおいて耐久使用を通して安定した現像性を有し、先端余白の少ない画像を形成しても、定着ローラに紙が巻き付かずに分離できるトナーを得ることができる。
上記条件を満たす方法により本発明が得られることについての詳細な理由は明確でないが、本発明者らは次のように考えている。
つまり、高速現像システムに対応するためには、トナー表面へのワックス露出が極力ないことが好ましい。しかし、定着時の紙分離性を考えると、トナー表面近傍に多くのワックスが必要となってくる。また、ワックスがトナー中に細かく分散している場合、定着時の熱で結着樹脂と相溶するため、ワックスとしての効果が低減してしまう。そのため、トナー表面にワックスの露出が極力ない状態で、ある程度の大きさをしたワックスのドメインがトナー表面近傍に存在することが好ましい。
つまり、高速現像システムに対応し、先端余白の少ない画像でも定着ローラに巻き付かずに紙を分離するためには、トナー中のワックスの大きさと形状、そして位置を制御することで、ワックスの効果を十分に活かすことが可能だと言える。
本発明者らは、以下詳細に説明する構造及び物性にすることで、前述の課題を解決するトナーが得られることを見出した。
そのような観点から、本発明のトナーは、(i)トナー粒子の内部ではワックスがドメ
インを形成して存在しており、(ii)ワックスのドメインのうち最も長径が大きいドメインとトナー粒子の表面との最短距離が50nm未満であるトナー粒子の割合が10.0個数%以下であることが必須である。これはトナー表面におけるワックスの露出が極めて少ないことを示している。
トナー粒子の表面との最短距離が50nm未満であるトナー粒子の割合は、0.0個数%以上7.0個数%以下が好ましく、0.0個数%以上4.0個数%以下がより好ましい。トナー粒子の表面との最短距離が50nm未満であるトナー粒子の割合は、ワックスの組成、含有量、さらには、2種類のワックスを用いる場合、その比率により制御することが可能である。
本発明は、(iii)最も長径が大きいドメインとトナー粒子の表面との最短距離が50nm以上500nm以下であるトナー粒子の割合が60.0個数%以上であり、(iv)最も長径が大きいドメインの長径をdとし、トナーの個数平均粒径(D1)をDとしたとき、dとDとが下記式(1)の関係を満たすことが必須である。
0.25D<d<0.50D (1)
しかし、最も長径が大きいドメインとトナー粒子の表面との最短距離が50nm以上500nm以下であるトナー粒子の割合が60.0個数%未満である場合には、定着時にトナー表面へワックスが染み出しにくくなるため、定着ローラへ紙の巻き付きが発生する傾向がある。また、0.25D≧dの場合、ワックスのドメインの大きさが小さいため、定着時にワックスがトナー表面に染み出す前に結着樹脂と相溶してしまい、離型効果が少ない。つまり、紙の分離性が低いため定着ローラへ紙が巻き付きやすい傾向がある。一方、d≧0.50Dの場合、ワックスのドメインの大きさが大きいため、高速現像システムにおいてトナーへ負荷を受けたときにトナーの割れや欠け発生してしまう傾向がある。
また、前記式(1)において、最も長径が大きいドメインの長径dは、0.30D以上0.45D以下が好ましく、0.35D以上0.40D以下がより好ましい。なお、最も長径が大きいドメインの長径dは、ワックスの組成、含有量、さらには、2種類のワックスを用いる場合、その比率により制御することが可能である。
繰り返しの負荷を受けることにより、ワックスのドメインを界面としたトナー粒子の割れや欠けが発生してしまうことも分かってきた。そこで、本発明のトナーは、(v)最も長径が大きいドメインの長径と短径の比(長径/短径)が1.0以上2.5以下であることが必須である。
これは、ワックスのドメインの形状を示している。ワックスのドメインが球に近い方が、トナーへの繰り返しの負荷による力が均一に分散されるためトナーの割れや欠けが抑制される。しかし、最も長径が大きいドメインの長径と短径の比(長径/短径)が2.5より大きい場合には、ワックスの形状が不定形になることにより、トナーに対する繰り返しの負荷による力が偏るため、ワックスドメインの界面でトナー粒子の割れや欠けが発生しやすい。
また、最も長径が大きいドメインの長径と短径の比(長径/短径)は、1.0以上2.0以下が好ましく、1.0以上1.5以下がより好ましい。最も長径が大きいドメインの長径と短径の比(長径/短径)は、ワックスの組成、含有量、さらには、2種類のワックスを用いる場合、その比率により制御することが可能である。
ワックスは2種類のワックスA及びワックスBを含有し、ワックスAは炭化水素ワックスであり、ワックスBはエステルワックスであることが好ましい。より好ましくは、ワックスBは、6価のアルコールと脂肪族酸のエステル、又は6価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステルである。また、6価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル、又は6価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールとのエステルであることがさらに好ましい。2種類の組成の異なるワックスが存在することにより、ワックスの離型効果とワックスドメインの存在位置を制御することが可能となると考えている。
ワックスAの炭化水素ワックスを含有する場合、離型性が強くなる。また、ワックスBのエステルワックスを含有する場合には、ワックスAと一部又は全部が共晶する。特に水系媒体中では、共晶したワックスのドメインが極性の高いワックスBの影響でトナー表面近傍に存在する傾向がある。
また、ワックスBが、6価のアルコールと脂肪族酸のエステル、又は6価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステルであると、分子鎖の分岐性が強いことにより、ワックスAと一部又は全部が共晶することでワックスのドメインが球状になる傾向がある。これにより、トナーの耐割れ性や耐欠け性がより向上する。また、本発明において、6価のアルコールと脂肪族酸のエステル、又は6価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステルの中でも、ジペンタエリスリトールと脂肪族モノカルボン酸のエステルが最も良好な効果が発現される。
合、まず、式(2)で示されるサリチル酸構造の部位を側鎖末端に有する重合体の構造中のカルボキシ基や水酸基が、ワックスBのエステルワックスのカルボキシ基に配位する。この状態になると、式(2)で示される部位を側鎖末端に有する重合体がエステルワックスを引き寄せる。
特に、水系媒体中において式(2)で示される部位を側鎖末端に有する重合体は極性が高いためトナーの表面に存在しやすい。そこに配位しているエステルワックスを含むワックスのドメインは、トナー表面近傍に存在する傾向が強くなる。結果としてワックスのドメインの存在位置をトナー表面近傍に制御することで、定着時にワックスがトナー表面へ染み出しやすくなり、定着ローラへの紙の巻き付きを抑制することができると考えている。
さらに、本発明のトナーに含有されるトナー粒子は、重合性単量体、ワックス、及び必要に応じて樹脂Aや着色剤などの添加剤を含有する重合性単量体組成物の粒子を水系媒体中で形成し、重合性単量体組成物の粒子に含まれる重合性単量体を重合させることにより得られたトナー粒子であることが好ましい。
SPb−SPa>0.3 (3)
ここで上記式(3)を満たす場合には、ワックスのドメインの存在位置をトナー表面近傍により制御することが可能となる。特に、水系媒体中でトナーを作る場合、SP値の大きいワックスBの影響を受けて、共晶しているワックスAとワックスBのドメインをトナー表面近傍に存在させることが可能となると考えている。
SPb−SPaは、0.5以上が好ましい。上限は特に制限されないが、通常3.0以下、好ましくは1.0以下である。また、ワックスのSP値は、用いる原料により制御することができる。
(結着樹脂)
本発明のトナーは、結着樹脂としてベンゼン環及びエステル結合を有する樹脂を用いることが好ましい。ベンゼン環及びエステル結合を有する樹脂としては、スチレンアクリル樹脂、スチレンメタクリル樹脂や、ジオール成分としてビスフェノール誘導体、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸、テレフタル酸を構成成分として少なくとも有するポリエステル樹脂が例示される。
中でも本発明のトナーは、結着樹脂がスチレンアクリル樹脂であることが好ましい。スチレンアクリル樹脂の全モノマーユニットを基準として、スチレンモノマーユニットを60.0質量%以上100.0質量%以下含有することで、本発明の効果がより好適に発揮される。なお、「モノマーユニット」とは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。
使用可能な重合性単量体としては具体的には次に例示される通りである。スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン,p−n−ブチルスチレン、p−tert
−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体が例示される。
無機系としては、過硫酸塩、過酸化水素などが挙げられる。具体的には、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネートなどのパーオキシエステル;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキサンなどのパーオキシケタール;ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド;その他としてt−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート等が挙げられる。
また、使用できるアゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が例示される。
なお、必要に応じてこれら重合開始剤を2種以上同時に用いることもできる。この際使用される重合開始剤の使用量は、重合性単量体100.0質量部に対し0.1質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
8以下のアルコキシル基を示す。nは0以上3以下の整数を示し、*は重合体における結合部位である。)
式(2)で示される部位は、下記式(2−1)で示される部位であることがより好ましい。
式(2)で表される部位を含有する重合体は、式(2)を有する重合性単量体を用い、公知の方法により製造可能である。使用可能なサリチル酸構造を有する重合性単量体の具体例としては、以下のものを挙げることができる。3−ビニルサリチル酸、4−ビニルサリチル酸、5−ビニルサリチル酸、6−ビニルサリチル酸、3−ビニル−5−イソプロプピルサリチル酸、3−ビニル−5−t−ブチルサリチル酸、4−ビニル−6−t−ブチルサリチル酸が例示される。
また、式(2−1)で示される部位を含有する重合体は、例えば、式(2−1)で示される構造の*にビニル基などの重合性官能基を有する化合物をモノマーとして用いることで合成することができる。その場合、式(2−1)で示される部位は以下の式(2−2)で表される。
レン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン,p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体が例示される。
本発明のトナーにおける樹脂Aの重量平均分子量(Mw)は、低温定着性及び保存安定性を満足すれば問題なく、4000以上100000以下であることが好ましい。重量平均分子量は、開始剤量、反応温度、反応溶媒など公知の方法により制御可能である。
本発明のトナーにおける式(2)で示される部位を含有する重合体の重量平均分子量(Mw)は、低温定着性及び保存安定性を満足すれば問題なく、4000以上100000以下であることが好ましい。重量平均分子量は、開始剤量、反応温度、反応溶媒など公知の方法により制御可能である。
トナーに含有される式(2)で示される部位の含有量が上記範囲である場合、トナー中における式(2)で示される部位を有する重合体が多官能エステルワックスのトナー中での分散剤として機能が十分に発現し、本発明の効果がより好的に発揮されると考えている。
トナーに含有される式(2)で示される部位の含有量は、樹脂Aにおける式(2)で示される部位の含有量から、トナー製造時における添加量を調整することで制御可能である。樹脂A中に含有される式(2)で示される部位の含有量は、後述の樹脂の酸価測定から定量することができる。
また、トナー中の樹脂Aの含有量は、結着樹脂100.0質量部に対し、0.5質量部以上10.0質量部以下が好ましい。
本発明のトナーは、磁性トナーとして用いることも可能であり、その場合には、以下に挙げられる磁性体が用いられる。マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような酸化鉄、又は他の金属酸化物を含む酸化鉄;Fe、Co、Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Ca、Mn、Se、Tiのような金属との合金、及びこれらの混合物。四三酸化鉄(Fe3O4)、三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、酸化鉄亜鉛(ZnFe2O4)、酸化鉄銅(CuFe2O4)、酸化鉄ネオジウム(NdFe2O3)、酸化鉄バリウム(BaFe12O19)、酸化
鉄マグネシウム(MgFe2O4)、酸化鉄マンガン(MnFe2O4)。上述した磁性材料を単独で又は2種類以上を組合せて使用する。特に好適な磁性材料は、四三酸化鉄又はγ−三二酸化鉄の微粉末である。
結着樹脂100.0質量部に対して、磁性体を、好ましくは10.0質量部以上200.0質量部以下、より好ましくは20.0質量部以上150.0質量部以下使用する。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、チタンブラック及び下記に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用できる。
顔料系のイエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.Pigment Yellow3、7、10、12、13、14、15、17、23、24、60、62、74、75、83、93、94、95、99、100、101、104、108、109、110、111、117、123、128、129、138、139、147、148、150、155、166、168、169、177、179、180、181、183、185、191:1、191、192、193、199が挙げられる。染料系のイエロー着色剤としては、C.I.solvent Yellow33、56、79、82、93、112、162、163、C.I.disperse Yellow42、64、201、211が挙げられる。
シアン着色剤としては、フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明において、着色剤は、色相角、彩度、明度、耐侯性、OHT透明性、トナー中への分散性の点から選択される。着色剤の添加量は、結着樹脂100.0質量部に対し1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
本発明のワックスは、炭化水素ワックスのワックスAとエステルワックスのワックスBを含有することが好ましい。
ワックスAとしては、炭化水素系ワックスであれば特に制限はなく公知のものが利用できる。例えば、以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレ
ン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸のようなビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類などが挙げられる。
ワックスA、ワックスBはそれぞれ結着樹脂100.0質量部に対して0.5質量部以上15.0質量部以下使用するのが好ましい。ワックスAとワックスBの含有比率としては、(ワックスA/ワックスB)が1/2以上4/1以下が好ましい。本発明に用いられるワックスA、ワックスBの融点は30℃以上130℃以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは60℃以上100℃以下の範囲である。上記のような熱特性を呈するワックスを用いることにより、得られるトナーの良好な定着性はもとより、ワックスによる離型効果が効率良く発現される。
本発明のトナーには、その他のエステルワックス、又はその他のワックスを含有させてもよい。
本発明のトナー粒子は、荷電制御剤を使用してもよい。中でも、トナー粒子を負荷電性
に制御する荷電制御剤を用いることが好ましい。荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。
有機金属化合物、キレート化合物、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、ノンメタルカルボン酸系化合物及びその誘導体が挙げられる。また、スルホン酸基、スルホン酸塩基、又は、スルホン酸エステル基を有するスルホン酸樹脂を好ましく用いることができる。荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100.00質量部に対して0.01質量部以上20.00質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.50質量部以上10.00質量部以下である。
本発明のトナーには極性樹脂を添加することもできる。極性樹脂としては、ポリエステル樹脂が好ましい。さらにポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂に用いる全モノマーユニットを基準として、イソソルビドに由来するユニット(イソソルビドユニット)を0.10mol%以上20.00mol%以下含有することがより好ましい。イソソルビドユニットを含有することで、ポリエステル樹脂の極性が強まり、懸濁重合法や溶解懸濁法によって水系媒体中でトナーを製造する場合には、より強固なシェルを作ることができる。その結果、表面近傍にワックスが存在する状態でも、ワックスの表面露出を抑制できる傾向が強くなる。
イソソルビドユニットを有するポリエステル樹脂は、アルコール成分としてイソソルビドを用いるが、それ以外のアルコール成分としては下記のものも併用することができる。
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びピロメリット酸のような芳香族多価カルボン酸;フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸のような炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸の脂肪族多価カルボン酸;それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜8)エステル。
それらの中でも特に、ビスフェノール誘導体をアルコール成分とし、二価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルを酸成分として、これらを縮重合して得られるポリエステル樹脂を好ましく用いることができる。
本発明において、ポリエステル樹脂と共に、従来公知のポリエステル樹脂を併用してもよい。
特に、水系媒体中で造粒することにより添加したポリエステル樹脂がトナー粒子表面にシェルを形成する。ポリエステル樹脂の酸価を上記範囲とすることにより本発明の作用効果がより発現し易くなり好ましい。
極性樹脂の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下が好ましい。
次に、本発明のトナーの製造方法について説明する。
本発明のトナーを製造する方法としては、粉砕法、懸濁重合法、分散重合法、有機溶剤中に原材料を溶解・分散させたものを水系媒体中において造粒を行いトナー化する懸濁造粒法といったトナーを得る方法が挙げられる。特に、製造工程が単純であり、容易に目的のトナーを得られることから、懸濁重合法によるトナーの製造が好ましい。また、粉砕法と比較した場合、ワックスのトナー表面への露出が抑制されるため、画像品質に優れたトナーが得られるため好ましい。
こうして得られた重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含有する分散媒体(好ましくは水系媒体)中に添加し、撹拌装置として高速撹拌機又は超音波分散機のような高速分散機を使用してトナー粒子径まで微分散させ、重合性単量体組成物の粒子を形成する(造粒工程)。そして、造粒工程において微分散された重合性単量体組成物の粒子に含まれる重合性単量体を光や熱により重合反応させ(重合工程)、トナー粒子を得ることができる。なお、重合開始剤は、造粒工程の後に添加してもよい。
懸濁重合法において好適に用いることができる重合性単量体としては、前述の結着樹脂に用いる重合性単量体を同様に用いることができる。
ルコール類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類が挙げられる。その他にも水溶性のものとして、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;エチルエーテル等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の酸類等から選ばれるが、水又はアルコール類であることが特に好ましい。またこれらの溶媒を2種類以上混合して用いることもできる。分散媒体に対する重合性単量体組成物の濃度は、分散媒体に対して1.0質量%以上80.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10.0質量%以上65.0質量%以下である。
懸濁重合法を用いた本発明のトナーに用いる重合開始剤としては、上述の重合開始剤を同様に用いることができる。
また、懸濁重合法によりトナーを製造する場合、公知の架橋剤を添加してもよい。
本発明のトナーは、トナー粒子の表面に無機微粉体を有することが好ましい。無機微粉体は、トナーの流動性改良及び帯電均一化のためにトナー粒子に添加、混合され、添加された無機微粉体はトナー粒子の表面に均一に付着した状態で存在する。
本発明における無機微粉体は、一次粒子の個数平均粒径(D1)が4nm以上500nm以下であることが好ましい。
本発明で用いられる無機微粉体としては、シリカ、アルミナ、チタニアから選ばれる無機微粉体又はその複合酸化物などが使用できる。複合酸化物としては、例えば、シリカアルミニウム微粉体やチタン酸ストロンチウム微粉体等が挙げられる。これら無機微粉体は、表面を疎水化処理して用いることが好ましい。
無機微粉体や添加剤の添加量は、トナー粒子100.0質量部に対して、0.01質量部以上8.00質量部以下が好ましく、より好ましくは0.10質量部以上4.00質量部以下である。
<透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察>
トナーの透過型電子顕微鏡(TEM)による内部構造観察は以下のようにして実施することができる。
まず、カバーガラス(松波硝子社、角カバーグラス 正方形 No.1)上にトナーを一層となるように散布し、オスミウム・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)及びナフタレン膜(20nm)を形成する。次に、PTFE製の中空チューブ(Φ3mm×3mm)に光硬化性樹脂D800(日本電子社)を充填し、チューブの上にカバーガラスをトナーが光硬化性樹脂D800に接するような向きで静かに置く。この状態で光を照射して樹脂を硬化させた後、カバーガラスとチューブを取り除くことで、最表面にトナーが包埋された円柱型のサンプルを形成する。
超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度0.6mm/sで、円柱型のサンプルの最表面から100nmずつ、トナー表面が現れるまで切削を繰り返す。トナー表面が現れた後、厚さ100nmのサンプルの切り出しを繰り返し、複数の薄片サンプルを形成する。この際、切り出した順序で薄片サンプルに順番をつけておく。
得られた薄片サンプルを、真空電子染色装置(filgen社、VSC4R1H)を用いて、RuO4ガス500Pa雰囲気で15分間染色し、透過型電子顕微鏡TEM(JEOL社、JEM2800)を用いて番号順にTEM観察を行う。
TEMの加速電圧は200kV、プローブサイズは1nm、画像サイズは1024×1024pixelにて、撮像する。また、撮像においては、明視野像のDetector
ControlパネルのContrastを1620、Brightnessを2785、Image ControlパネルのContrastを0.0、Brightnessを0.5、Gammaを1.00に調整した。
トナーにおけるワックスのドメインの大きさ、形状及び位置の測定は、TEM観察によって得られた画像(明視野像)を、3D可視化ソフト「Avizo ver.7.1」(VSG社)にて、3次元解析が可能な像に処理したうえで行う。
まず、薄片サンプル順にTEM画像を取り込み、明るさ(階調255)の閾値を160に設定して2値化する。このとき、トナーのワックスと光硬化性樹脂D800が明部になり、トナーのワックス以外が暗部となる。トナーの輪郭は、トナーと光硬化性樹脂D800の明暗で区別ができる。これらの2値化した各画像をトナーのTEM画像に対して垂直方向に繋げることで3次元解析が可能な画像が得られる。得られた3次元の画像から最も長径が大きいワックスのドメインを選択し、ドメインの長径と短径を測定して長径と短径の比を測定する。さらに、トナー表面からのドメインの最短距離を測定する。
本発明では、測定するトナー粒子の長径がトナー粒子の個数平均粒径(D1)の0.8倍以上1.2倍以下のトナー粒子100個に対して3次元の解析を行い、100個のデータよりワックスのドメインとトナー粒子表面との最短距離の分布を求める。また、ドメインの形状は、100個のデータの相加平均の値とする。
トナーの個数平均粒径Dは、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。専用ソフトの「
標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに電解水溶液200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに電解水溶液30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2mL添加する。(4)上記(2)のビーカーを該超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)上記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー10mgを少量ずつ該電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した該(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した上記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の専用ソフトにて解析を行い、個数平均粒径Dを算出する。なお、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径Dである。
本明細書においてSP値(cal/cm3)1/2とは、Fedorの方法により算出することができる。具体的には例えば、ポリマーエンジニアリングアンドサイエンス(Polymer engineering and science)第14巻、147〜154頁に詳しく記載されており、下記式によりSP値を算出することができる。
式:SP値=√(Ev/v)=√(ΣΔei/ΣΔvi)
(式中、Ev:蒸発エネルギー(cal/mol)、v:モル体積(cm3/mol)、Δei:各々の原子又は原子団の蒸発エネルギー、Δvi:各々の原子又は原子団のモル体積)
樹脂A、ワックスA、ワックスBの組成分析は、核磁気共鳴装置(1H−NMR、13C−NMR)及びFT−IRスペクトルを用いて行うことができる。以下に用いる装置について記す。
各樹脂サンプルはトナー中から分取することで採取し、分析してもよい。
(i)1H−NMR、13C−NMR
測定装置:FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数:64回
(ii)FT−IRスペクトル
Thermo Fisher Scientific Inc.製 AVATAR360FT−IR
樹脂A、及び極性樹脂の酸価はJIS K1557−1970に準じて測定される。具体的な測定方法を以下に示す。
試料の粉砕品2gを精秤する(W(g))。200mLの三角フラスコに試料を入れ、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間溶解する。指示薬としてフェノールフタレイン溶液を加える。0.1モル/L規定のKOHもアルコール溶液を用いて上記溶液を、ビュレットを用いて滴定する。この時のKOH溶液の量をS(mL)とする。ブランクテストをし、この時のKOH溶液の量をB(mL)とする。
次式により酸価を計算する。なお、式中の“f”は、KOH溶液のファクターである。
酸価(mgKOH/g)=〔(S−B)×f×5.61〕/W
樹脂A,及び極性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で、各種樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:LF−604の2連[昭和電工(株)製]
溶離液:THF
流速:0.6mL/min
オーブン温度:40℃
試料注入量 :0.020mL
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
ワックスの融点Tm(℃)は示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、測定サンプル2mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲0℃から120℃の間で、昇温速度10℃/分の速度で昇温する。100℃で15分ホールドし、その後100℃から0℃の間で、降温速度10℃/分の速度で冷却する。0℃で10分ホールドし、そ
の後0℃から100℃の間で、昇温速度10℃/分の速度で測定を行う。この2回目の昇温過程における吸熱曲線におけるピーク値を融点Tm(℃)とする。
ワックスAとして、フィッシャートロプシュワックス(融点:78℃、SPa:8.30)を用意した。
ワックスBとして、以下の表1のものを用意した。
<重合性単量体A1の製造例>
2,4−ジヒドロキシ安息香酸18gをメタノール150mLに溶解させた。この溶解液に炭酸カリウム36.9gを加えて65℃に加熱した。4−(クロロメチル)スチレン18.7gとメタノール100mLに混合溶解させた溶解液を作製し、これをサリチル酸中間体が入った溶解液に滴下し、65℃にて3時間反応させた。得られた反応液を冷却してから、濾過し、濾液中のメタノールを減圧留去して析出物を得た。析出物をpH=2の水1.50Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、水洗してから、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去することにより析出物を得た。析出物をヘキサン洗浄してから、トルエン/酢酸エチルにて再結晶し、下記式(5)で示される構造を有する重合性単量体A1を20.1g得た。
重合性単量体A1(12.0部)とスチレン(88.0部)をDMF40.0mLに溶解させ、1時間撹拌した後110℃まで加熱した。この反応液に、tert−ブチルパーオキシイソプピルモノカルボネート(日本油脂株式会社製、商品名パーブチルI)3.40部をトルエン40.0mLに仕込んだ溶液を1時間撹拌して得られた溶解液を滴下した。窒素導入下、更に110℃にて4時間反応した。その後、冷却しメタノール1.00Lに滴下し、析出物を得た。得られた析出物をTHF120.0mLに溶解後、メタノール1.80Lに滴下し、白色析出物を析出させ、濾過し、減圧下90℃にて乾燥させることで、重合性単量体A1とスチレンとから得られた樹脂A1を得た。得られた樹脂A1の組
成分析は前述の1H−NMRに行い、重合性単量体A1が重合されていることを確認した。また、樹脂A1の酸価は24.9mgKOH/gであり、酸価から重合性単量体A1に由来する式(2)で示される部位を44.4μmol/g含有していることを確認した。樹脂A1の仕込み量と物性を表2に示す。
撹拌機、温度計、窒素導入管、脱水管、及び、減圧装置を備えた反応容器に、無水トリメリット酸以外の原材料モノマーを表3に示したmol比率で混合した混合物100.0部を添加して撹拌しながら温度130℃まで加熱した。その後、エステル化触媒としてジ(2−エチルヘキサン酸)錫0.52部を加え、温度200℃に昇温し6時間かけて縮重合する。さらに、表3に示すmol比率で無水トリメリット酸を添加し、窒素導入ライン、脱水ライン、攪拌機を装備した重合タンクに入れ、40kPaの減圧下にて所望の分子量になるまで縮合反応を行い、極性樹脂B1を得た。
表3の原材料モノマー仕込み量及び重縮合反応の温度条件にて、極性樹脂B1と同様の操作を行い、極性樹脂B2、B3を製造した。
(分散媒)
反応容器中のイオン交換水1000.0質量部に、リン酸ナトリウム14.0質量部及び10.0%塩酸を4.5質量部投入し、N2パージしながら65℃で60分保温した。T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0質量部に8.0質量部の塩化カルシウムを溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。調製された水系媒体のpHは5.5であった。
(重合性単量体組成物)
・スチレン 60.0質量部
・ピグメントブルー15:3 6.0質量部
・帯電制御剤ボントロンE−88(オリエント化学社製) 1.0質量部
上記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5時間分散させて、重合性単量体組成物を得た。
上記重合性単量体組成物に
・スチレン 15.0質量部
・n−ブチルアクリレート 25.0質量部
・ワックスA 5.0質量部
・ワックスB1 5.0質量部
・樹脂A1 1.0質量部
・極性樹脂B1 4.0質量部
を加えた。
別容器中で上記材料を65℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmにて均一に溶解、分散した。これに、重合開始剤t−ヘキシルパーオキシピバレート(日本油脂社製、商品名「パーヘキシルPV」、分子量:202、10時間半減期温度:53.2℃) 11.0質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
反応容器中の上記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、65℃、N2パージ下において、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)にて10000rpmで5分間攪拌し、pH5.5で造粒した。その後、パドル攪拌翼で攪拌しつつ65℃で6時間、さらに90℃に昇温し、6時間反応させた。
重合反応終了後、反応容器を冷却し、10.0%塩酸を加えpH=2とした状態で2時間攪拌しながら分散安定剤を溶解させる。そのエマルションを加圧濾過しさらに2000質量部以上のイオン交換水で洗浄する。得られたケーキを再び、1000.0質量部のイオン交換水に戻し、10.0%塩酸を加えpH=1以下とした状態で2時間攪拌しながら、再洗浄する。上記と同様にそのエマルションを加圧濾過しさらに2000.0質量部以上のイオン交換水で洗浄し、十分通気をした後、乾燥して風力分級し、トナー粒子1を得た。
上記トナー粒子1を100.0質量部に対して、外添剤として、処理前シリカ微粉体を基準として20.0質量%のジメチルシリコーンオイルで処理された疎水性シリカ微粉体(1次粒子径:7nm、BET比表面積:130m2/g)1.5質量部、及びイソブチルトリメトキシシラン15.0質量%で表面処理した疎水性酸化チタン微粉体(1次粒子径:50nm)0.3質量部を添加した。これらを三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)で撹拌速度3000rpm、15分間混合して、トナー1を得た。得られたトナー1は、個数平均粒径6.5μmであった。
トナー製造例1のC.I.ピグメントブルー15:3をC.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントレッド269、カーボンブラックに変更する以外は同様の方法により、それぞれトナー2〜4を得た。
表4に示すように、ワックスの種類と含有量、樹脂Aの含有量、及び極性樹脂Bの種類と含有量を変更すること以外はトナー1の製造方法と同様にしてトナー5〜19を得た。
<トナーにおけるワックスのドメインの形状及び位置の測定>
得られた各トナー粒子を用いて、前述の方法に従ってトナーの個数平均粒径、ワックスのドメインの長径と短径、ワックスのドメインとトナー粒子の表面との最短距離を測定した。トナー1〜19の結果を表5に示す。
[評価(1) 定着分離性評価]
定着ユニットを外したカラーレーザープリンター(HP LaserJet Pro 400 Color M451dn(HP製))を用意し、シアンカートリッジからトナーを取り出して、代わりに評価するトナーを充填した。記録媒体としては、CS520用紙(キヤノン製、52g/m2)を使用した。
次いで、充填したトナーを用いて、トナー載り量0.90mg/cm2となるように縦5.0cm、横20.0cmの未定着画像を、上記記録媒体上に形成した。この際、通紙方向における上端部の余白部分の範囲を変更しつつ、画像形成を行った。
次いで、取り外した定着ユニットを定着温度とプロセススピードを調節できるように改造し、これを用いて未定着画像の定着試験を行った。
まず、常温常湿環境下(23℃、60%RH)、プロセススピードを230mm/s、定着線圧27.4kgf(242N)に設定し、設定温度を200℃として上記未定着画像の定着を行った。紙が定着ローラに巻きつかない最小の余白を以下の基準に沿って評価した。
評価結果を表6に示す。
(評価基準)
A:上端部からの余白が、1mm未満。
B:上端部からの余白が、1mm以上3mm未満。
C:上端部からの余白が、3mm以上5mm未満。
D:上端部からの余白が、5mm以上。
<耐久試験>
画像形成装置としてHP LaserJet Pro 400 Color M451dn(HP製)の改造機を用いて評価を行った。なお、HP LaserJet Pro
400 Color M451dnは以下の点を改造した。
評価機本体のギア及びソフトウエアを変更することにより、プロセススピードが150mm/secとなるようにした。
評価に用いるカートリッジはシアンカートリッジを用いた。すなわち、市販のシアンカ
ートリッジから製品トナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、評価するトナーを50g充填した。なお、マゼンタ、イエロー、ブラックの各ステーションにはそれぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたマゼンタ、イエロー、及びブラックカートリッジを挿入した。
評価結果を表6に示す。
(評価基準)
A:現像ローラ上とハーフトーン部の画像上に、現像スジと見られる排紙方向の縦スジは見られない。
B:現像ローラ上に、細いスジが1〜4本あるものの、ハーフトーン部の画像上に現像スジと見られる排紙方向の縦スジは見られない。
C:現像ローラ上に、細いスジが5〜9本あるものの、ハーフトーン部の画像上に現像スジと見られる排紙方向の縦スジは見られない。
D:現像ローラ上に、スジが10本以上ある、或いはハーフトーン部の画像上に目視可能な現像スジが見られる。
低温低湿下(15℃、10%RH)、受像紙として、キヤノン製オフィスプランナー(64g/m2)を用いて画出しした。画像形成装置は、上記評価(2)と同じHP LaserJet Pro 400 Color M451dn(HP製)の改造機を用いた。
この条件で、印字率0.0%での耐久評価を実施し、割れトナーや欠けトナーに起因して生じる帯電不良に基づくトナー漏れの発生の有無を観察し、その発生枚数に応じて下記基準に従い評価した。尚、割れトナーや欠けトナーに起因して帯電不良が発生し、トナー漏れが生じるメカニズムは以下の通りである。トナーの割れや欠けが発生すると、トナー層厚規制部材とトナー担持体の当接部において、トナーの融着が起こり、融着した部分において、トナーを十分に帯電することが困難となる。帯電不良となったトナーは、トナー担持体表面での保持性が低下し、トナー担持体の回転により生じる遠心力により飛散し、カートリッジの隙間から漏れ出てしまい、“トナー漏れ”となる。
評価結果を表6に示す。
A:発生枚数が13000枚以上
B:発生枚数が10000枚以上13000枚未満
C:発生枚数が5000枚以上10000枚未満
D:発生枚数が5000枚未満
Claims (5)
- 結着樹脂、及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該トナー粒子の内部構造を3次元解析したとき、
(i)該トナー粒子の内部ではワックスがドメインを形成して存在しており、
(ii)該ワックスのドメインのうち最も長径が大きいドメインと該トナー粒子の表面との最短距離が50nm未満であるトナー粒子の割合が10.0個数%以下であり、
(iii)該最も長径が大きいドメインと該トナー粒子の表面との最短距離が50nm以上500nm以下であるトナー粒子の割合が60.0個数%以上であり、
(iv)該最も長径が大きいドメインの長径をdとし、該トナーの個数平均粒径(D1)をDとしたとき、該dと該Dとが下記式(1)の関係を満たし、
0.25D<d<0.50D (1)
(v)該最も長径が大きいドメインの長径と短径の比(長径/短径)が1.0以上2.5以下であることを特徴とするトナー。 - 前記ワックスは、ワックスA及びワックスBを含有し、
前記ワックスAは炭化水素ワックスであり、前記ワックスBはエステルワックスである請求項1に記載のトナー。 - 前記ワックスBは、6価のアルコールと脂肪族酸のエステル、又は6価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステルである請求項2に記載のトナー。
- 前記ワックスAのSP値をSPa、前記ワックスBのSP値をSPbとしたときに、下記の関係を満たす請求項2または3に記載のトナー。
SPb−SPa>0.3
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