JP2017000023A - 収穫後にイチゴの果実品質を向上させる方法 - Google Patents

収穫後にイチゴの果実品質を向上させる方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、加熱を伴う加工後のイチゴ果実の品質を保持するための、収穫後のイチゴ果実に対する処理方法を提供する。
【解決手段】収穫後のイチゴ果実の加熱工程を伴う加工後に、イチゴ果実の軟化と退色のいずれも抑制するイチゴ果実の処理方法であって、収穫後のイチゴ果実に(a)酢酸製剤処理とカルシウム製剤処理を独立に連続して行うか、又は同時に行い、その後、(b)油脂によるイチゴ果実表面の被覆処理を行うことを特徴とする処理方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、収穫後のイチゴ果実の処理方法に関する。
生鮮イチゴは収穫後に急速な品質低下が生じる。まして加熱工程を含む加工を行えば、その品質は著しく損なわれ、特に物性(硬さ)と色(赤み)の低下は顕著である。
イチゴに対して加工前の貯蔵性を向上させる方法に、酸素透過性の小さい容器に果物を入れたのち低温冷却する方法(特許文献1)、天然蝋などの被覆用合成物(特許文献2)、多糖重合体などの被覆用組成物(特許文献3)、植物性タンパク質と脂肪酸を含有する食品のコーティング剤(特許文献4)、及び米ヌカ油などを主成分とする変質防止剤(特許文献5)があるが、いずれも加工後の品質保持については記載がない。加工後の品質保持に関して、イチゴの下部を砂糖や水溶性有機酸で処理する方法(特許文献6)や果樹果実に対してカルシウム及びアスコルビン酸イオンを含む溶液で処理する方法(特許文献7)があるが、両者とも加熱を伴わない簡便な加工に関するもので、後者の対象にイチゴは含まれない。加熱工程を含む加工において色の保持がなされる先行技術に、色素類を用いてイチゴを染色する方法(特許文献8)、果実をpH7.0以下の高温染料と可食性カルシウム塩が含まれる溶液で処理する方法(特許文献9)、アントシアニン含有果実をカルシウム塩で処理する方法(特許文献10)、及び植物性タンパク質被膜が形成されている真空凍結した果実食品(特許文献11)があるが、いずれも物性保持を同時に行うものではない。また、特許文献9は対象がイチゴではなく、特許文献11は凍結乾燥品に関するものである。加熱工程を含む加工において物性の保持がなされるものに、イチゴを含む酸性食品を酸とラクトンの混合物に入れて加熱する方法(特許文献12)、野菜や果実を予備加熱する方法(特許文献13)、及び果実や野菜の細断組織中に多糖類や塩類及びアルカリ金属塩が含まれる水溶液を浸透させる方法(特許文献14)があるが、特許文献12は必ずしも色の保持を同時に達成するものではなく、特許文献13及び特許文献14は色の保持を伴わない処理方法である。
特開昭54-86649号公報 特表2004-521648号公報 特表平06-506116号公報 特開平04-79846号公報 特開昭57-65172号公報 特開昭55-99153号公報 特表2001-513329号公報 特開平04-99467号公報 特開昭59-132869号公報 特表2005-502373号公報 特開平06-284875号公報 特開昭63-112943号公報 特開昭54-107542号公報 特開昭59-210863号公報
食品市場において、原料本来の食感及び色を有したイチゴ果実が使用された加工食品は皆無で、ジャムやジュース、フレーバーがある程度である。日本ではイチゴは、秋から春にかけて良好な品質のものが着果する一季成り性品種栽培が主流で、それゆえ生鮮イチゴが市場に流通する期間は12月から5月程度と限定される。これに対し、一般的に暑くなる夏場(6月から9月)にかけて生鮮及び加工品(ゼリーやカットフルーツなど)を含めたフルーツの需要は増大し、とりわけ各種の消費者アンケートで常に人気上位の果物に挙げられるイチゴであればなおさらである。
イチゴを収穫したのちに、加工直前に簡便な処理を行うだけで、その果実を用いた加熱を伴う加工食品の果実品質(物性及び色)が高いまま保持されれば、フルーツ消費需要の高まる夏場に消費期限の長いイチゴ加工食品を上市できる。以上より、イチゴに対し加熱工程を含む加工処理を行っても、本来の物性(硬さ)と色(赤み)を共に保つことのできる処理方法が強く望まれた。
イチゴはほかの多くの果実と異なり、花が育つ部位である花托と呼ばれる部位が可食部位で、ペクチン質に富んでいる。生鮮果実でも収穫後は物性(硬さ)と色(赤み)の品質劣化がほかの果実と比べても著しいが、これは加工するとさらに顕著である。例えば長期保管を前提とした商業的な加熱殺菌工程を伴う加工では大きく品質が低下し、商品性が担保できないことから市場にはイチゴの原型を留めた加工品は見当たらない。
加熱を伴う加工後の品質保持を目的として、イチゴを対象に収穫後に行う処理方法が先行特許技術として幾つか報告されているが、加工後の果実品質面で物性と色の両方の保持両立を達成するものはない。本発明者らは、イチゴ果実に対して物性を保持しつつ色も保つことのできる加工助剤処理を行ったのちに、加工後果実の食味に影響しない程度の被覆処理を行うことを着想した。
これらを鑑みて鋭意検討した結果、酢酸製剤処理とカルシウム製剤処理を行ったのちに、油脂による果実表面の被覆処理を連続して行うことで、商業的な加熱殺菌工程を伴う加工を行った後も果実の物性と色をともに保持した果実を得ることができることを見出した。なお、各処理の単独若しくは2つの組合わせでは、効果は限定的であった。本発明者らは、酢酸製剤処理、カルシウム製剤処理、及び油脂による被覆処理の諸条件や使用できる剤を検証、特定したことで本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 収穫後のイチゴ果実の加熱工程を伴う加工後に、イチゴ果実の軟化と退色のいずれも抑制するイチゴ果実の処理方法であって、収穫後のイチゴ果実に(a)酢酸製剤処理とカルシウム製剤処理を独立にかつ連続して行うか、又は同時に行い、その後、(b)油脂によるイチゴ果実表面の被覆処理を行うことを特徴とする処理方法。
[2] 酢酸製剤処理を行った後に、カルシウム製剤処理を行い、さらにその後に油脂によるイチゴ果実表面の被覆処理を行う[1]の処理方法。
[3] 酢酸製剤の主要構成成分が、醸造酢であり、pHが3.0〜5.0である[1]又は[2]の処理方法。
[4] カルシウム製剤が酢酸カルシウム製剤である、[1]〜[3]のいずれかの処理方法。
[5] 油脂が、飽和脂肪酸の含有率が50%以上の油脂である[1]〜[4]のいずれかの処理方法。
[6] 油脂がカカオバターである、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の処理方法。
[7] 収穫後のイチゴ果実の加熱工程を伴う加工が、60℃以上での加熱である、[1]〜[6]のいずれかの処理方法。
[8] 退色がイチゴ果実の赤色の退色である、[1]〜[7]のいずれかの処理方法。
[9] [1]〜[8]のいずれかの方法により調製された、加熱工程を伴う加工後に、イチゴ果実の軟化と退色のいずれもが抑制される、イチゴ果実。
[10] [9]のイチゴ果実を用い、加熱工程を伴う工程により調製した加工食品。
[11] ゼリー食品である、[10]の加工食品。
本発明によって、生鮮果実では品質保持期間の短いイチゴを、その品質低下を最小限に抑えて消費期限の長い加工食品にでき、これまでにない高品質のイチゴ加工品を提供できる。日本の食品市場では1年のうち6月から11月の半年間ほどは、果実本来の品質を保持したままのイチゴ加工食品はおろか、生鮮イチゴすらほとんど出回らない。本発明を利用してイチゴを用いた消費期限の長い加工食品を製造、上市が可能となることで、従来イチゴを食べる機会の少なかった夏から秋にかけてフレッシュなイチゴを提供できる。これによって、これまでは生食かケーキ装飾といった製菓用途の非加熱の簡便加工、若しくは原料の原型をほとんど留めないジャムなどの加工度の高い食品にしか用途がなかったイチゴにおいて、その加工用途及び食シーンが拡がることが期待される。加工食品の形態としては、缶詰やカップゼリーのほか、カットフルーツやシラップカップ、あるいは凍結品といったものが挙げられる。これら加工食品は、より広域流通に適しており、従来にない高付加価値商品を市場に投入できる可能性がある。こうした消費者側及び製造側のメリットのほか、果実生産側(イチゴ栽培農家や農業関係機関、地方自治体など)にとっても生産拡大や加工用途に適した品種の作出など、いわゆる6次産業的効果も期待される。
比較例1におけるイチゴ果実の落下果汁滲出割合を示す図である。n=8の平均値+標準偏差で表記、**は生鮮果実非処理区に対してp<0.01(t検定)で有意差があることを示す。 比較例1におけるイチゴ果実の圧縮応力積算値を示す図である。n=8の平均値±標準偏差で表記、**は生鮮果実非処理区に対してp<0.01(t検定)で有意差があることを示す。 比較例1におけるイチゴ果実外観に占める赤系色及び非赤系色の割合を示す図である。n=8の平均値±標準偏差で表記、生鮮果実非処理区の赤系色及び非赤系色に対して*はp<0.05、**はp<0.01(t検定)でそれぞれ有意差があることを示す。 比較例2におけるイチゴ果実の落下果汁滲出割合を示す図である。n=8の平均値+標準偏差で表記した。 比較例2におけるイチゴ果実の圧縮応力積算値を示す図である。n=8の平均値±標準偏差で表記した。 比較例2におけるイチゴ果実外観に占める赤系色及び非赤系色の割合を示す図である。n=8の平均値±標準偏差で表記した。 実施例1におけるイチゴ果実の落下果汁滲出割合を示す図である。n=8の平均値+標準偏差で表記した。 実施例1におけるイチゴ果実の圧縮応力積算値を示す図である。n=8の平均値±標準偏差で表記、ゼリー果実非処理区に対して*はp<0.05(Dunnett-test)で有意差があることを示す。 実施例1におけるイチゴ果実外観に占める赤系色及び非赤系色の割合を示す図である。n=8の平均値±標準偏差で表記、ゼリー果実非処理区に対して*はp<0.05、**はp<0.01(Dunnett-test)で有意差があることを示す。 実施例2におけるイチゴ果実の落下果汁滲出割合を示す図である。n=8の平均値+標準偏差で表記した。 実施例2におけるイチゴ果実の落下果汁滲出割合を示す図である。n=8の平均値+標準偏差で表記、**はゼリー果実非処理区に対してp<0.01(t検定)で有意差があることを示す。 実施例2におけるイチゴ果実の圧縮応力積算値を示す図である。n=8の平均値±標準偏差で表記した。 実施例2におけるイチゴ果実の圧縮応力積算値を示す。n=8の平均値±標準偏差で表記、*はゼリー果実非処理区に対してp<0.05(t検定)で有意差があることを示す。 実施例2におけるイチゴ果実外観に占める赤系色及び非赤系色の割合を示す図である。n=8の平均値±標準偏差で表記した。 実施例2におけるイチゴ果実外観に占める赤系色及び非赤系色の割合を示す図である。n=8の平均値±標準偏差で表記、ゼリー果実非処理区に対して*はp<0.05(Dunnett-test)で有意差があることを示す。 実施例2におけるゼリーイチゴ果実「とちおとめ」の外観を示す写真である。
本発明は、イチゴ果実を対象として、収穫後に行う加熱を伴う加工後も果実の品質を保持させるための、収穫後の処理方法である。本発明の方法により、果実の軟化と退色を抑制することができるので、本発明の方法は、イチゴ果実の軟化と退色のいずれも抑制する方法でもある。本発明において、加熱を伴う加工とは、一般的に果実の主要構成成分であるペクチン質が変性する程度の加熱処理を伴う加工をいう。例えば、果実を調味するために調味液等に浸漬して行う60℃以上の加熱工程や、商業的な殺菌を施すために80℃以上で加熱する工程等が挙げられる。例えば、イチゴ果実入りのゼリー製品を製造するときに、ゼリーカップにゼリー調製液とイチゴ果実を充填し、85℃の湯に30分浸漬して加熱殺菌処理工程を行う。この際、ゼリー調製液として、pH4.0未満の液を用いるが、本発明の方法によれば、このような低pHに晒した場合でも、収穫後の加熱を伴う加工後もイチゴ果実の品質を保持し得る。また、果実の品質とは、食用に供される程度に成熟した収穫時の生鮮イチゴ果実が本来有する物性と色をいう。イチゴ果実の物性と色の中でも本発明の方法で加温処理したイチゴ果実は、収穫時の生鮮イチゴ果実の硬さが保持され、かつ収穫時の生鮮イチゴ果実の赤色が保持される。従って、本発明の方法を、イチゴ果実の軟化と退色のいずれをも抑制する方法であると言うことができる。
イチゴの食用として供されている部分は正確には花托(花床)といい、花托の表面に粒状の多数の果実が存在する。一般的には、食用に供される、果実のついた花托の部分を果実と呼んでいるので、本発明においては、一般的な呼称に従い、食用に供されている部分をイチゴ果実と称する。
対象のイチゴとしては、オランダイチゴ属(Fragaria)に属する植物が挙げられ、品種は限定されない。日本産として、とよのか、女峰、あまおう、とちおとめ、スカイベリー、アイベリー、美人姫、章姫、さちのか、久能早生、宝交早生、やよいひめ、紅ほっぺ、いばらキッス、ロイヤルクイーン、ダイアモンドベリー、ゆめのか、ひのしずく、もういっこ、とよひめ、さがほのか、あかねっ娘、さくらももいちご、おぜあかりん、あかしゃのみつこ、あすかルビー、あまおとめ、あまみつ、おいCベリー、かおり野、かなみひめ、きらぴ香、クイーンレッド、こいのか、古都華、さぬきひめ、濃姫、まりひめ、ゆふおとめ、レディア、麗紅、京紅、レッドパール、おおきみ、尾瀬はるか、ふさの香、越後姫、おとめ心、カレンベリー、けんたろう、さつまおとめ、サンエンジェル、サンチーゴ、とちひめ、はるみ、ひたち姫、福羽、みのむすめ、めぐみ、夢甘香、桃薫、初恋の香り、あその小雪、淡雪などの一季成り性品種、ペチカ、エラン、すずあかね、サマーベリー、サマープリンセス、サマールビー、サマーティアラ、サマーキャンディ、サマーアミーゴ、サマーフェアリー、ペチカサンタ、ペチカピュア、大石四季成、ミタニ、夏芳、みよし、円雷、エバーベリー、雷峰、セリーヌ、フレール、純ベリー、セレナータ、池光、ミューア、ケイトリン、アービン、シースケープ、キャピトラ、スマイルルビー、スマイルハート、黒石、スイートチャーミー、クワンシエ、ミランシェ、エッチエス-138、夏んこ、峰クイーン、とちひとみ、なつあかり、夏姫、桃娘、紅茜、デコルージュ、白鳥1号、白鳥2号、なつみ、ほほえみ家族などの四季成り性品種、海外産として、ダナーやアルビオンなどに代表されるアメリカ産、韓国産、メキシコ産、オランダ産、トルコ産、中国産、スペイン産、及びエジプト産等が挙げられる。海外産のイチゴは、現地の種苗会社が独自に品種開発をしている場合が多く、交配の詳細などは明らかにされないことが多い。
本発明のイチゴ果実の品質を保持する方法においては、収穫後のイチゴ果実に、酢酸製剤処理及びカルシウム製剤処理を行い、さらに、その後油脂による果実表面の被覆処理を行う。
収穫後のイチゴは、果実表面がオセ傷などで痛まない程度の状態で本発明の処理を行う。例えば栽培時に成熟したのち収穫されたイチゴ果実では、収穫後速やかに5℃以下の低温下で貯蔵し、3日以内に処理を行うことが望ましい。また、成熟に至らない未熟状態で収穫されたイチゴ果実に対して処理を行ってもよい。
酢酸製剤処理は、市販の食品添加物用の酢酸製剤を用いることができ、主な構成酢として醸造酢、穀物酢、きび酢、米酢、米黒酢、粕酢、大麦黒酢、及び果実酢などが挙げられるが、醸造酢が主要な構成成分であり、pH3.0〜5.0(pH3.0以上5.0未満)の酢酸製剤が望ましい。例えばスパイラルビネガー(株式会社ナプロス)を用いることができるが、これには限定されない。酢酸製剤によるイチゴ果実の処理方法は、酢酸製剤を溶解した水溶液を果実へ万遍なく散布する方法、当該酢酸製剤水溶液へ果実を浸漬する方法などが挙げられる。酢酸製剤中の酢酸濃度は、1〜20%、好ましくは1〜10%である。好ましくは、酢酸製剤原液を水に添加後の水溶液のpHが3.0〜5.0になるように濃度調整された酢酸製剤水溶液にイチゴ果実を浸漬し、1℃〜20℃、好ましくは5℃〜18℃、より好ましくは5℃〜15℃で、5分間〜30分間、好ましくは10分間〜20分間、より好ましくは15分間静置することが望ましい。
カルシウム製剤処理には、カルシウムが含まれる剤を使用する。本発明において、カルシウムを含有する剤をカルシウム製剤という。すなわち本発明の方法においてはカルシウム製剤を使用する。カルシウム製剤中のカルシウム濃度は、480〜5000 ppm、好ましくは1200〜3700 ppm、より好ましくは2000〜3000 ppmである。カルシウム製剤は市販の食品添加物用の製剤を用いることができ、例えば炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウムなどを用いることができる。好ましくは、酢酸カルシウムを含有した製剤が望ましい。例えばカルフレッシュ(大東化学株式会社)を用いうるが、この限りではない。イチゴ果実へのカルシウム処理は、カルシウム製剤原液を0.2質量%〜2.0質量%、好ましくは0.5質量%〜1.5質量%、より好ましくは0.8質量%〜1.2質量%で水に溶解させた水溶液を30℃〜50℃、好ましくは35℃〜45℃、より好ましくは38℃〜42℃に加温したのちに果実に万遍なく散布する方法、当該カルシウム製剤水溶液へ果実を浸漬する方法などが挙げられる。好ましくは、1.0質量%濃度のカルシウム製剤水溶液にイチゴ果実を浸漬し、40℃で10分間〜40分間、好ましくは15分間〜30分間、より好ましくは20分間静置することが望ましい。
油脂による果実表面の被覆処理には、加熱工程を伴う加工後も果実の表層を被覆し続けうるという観点から、融点が高い油脂が適している。融点の高い油脂は飽和脂肪酸の含有量が高く、例えばパーム油、カカオバター、ココナッツ油、ヤシ油、ババスオイル、バター、ラード、牛脂、ショートニング、マーガリンなどを用いることができる。好ましくは、飽和脂肪酸の含有率が50%以上の油脂で、食味の観点も踏まえてカカオバターが特に望ましい。イチゴ果実への油脂被覆処理は、果実表面の水気をよく除いたイチゴを液状の油脂に浸漬する方法、当該イチゴに油脂を噴霧し被着させる方法などが挙げられる。好ましくは、スプレー剤による油脂の噴霧処理が適する。例えばカカオバタースプレー(ツキオカフィルム製薬株式会社)が用いられるが、これに限定されるものではない。油脂による被覆を行った果実は、1℃〜20℃、好ましくは3℃〜15℃、より好ましくは4℃〜10℃の低温下で10分間〜120分間、好ましくは15分間〜60分間、より好ましくは20分間〜40分間静置し、油脂をイチゴ果実表面に固着させる処理を行うのが望ましい。
酢酸製剤処理、カルシウム製剤処理、及び油脂による被覆処理の順序は、油脂による被覆処理を最後に行えばよい。はじめに酢酸製剤処理を行い、次いでカルシウム製剤処理を行ってもよく、はじめにカルシウム製剤処理を行い次いで酢酸製剤処理を行ってもよい。さらに、はじめに酢酸製剤とカルシウム製剤を混合した水溶液で酢酸製剤処理とカルシウム製剤処理を同時に行っても良い。望ましくは、酢酸製剤処理を行ったのちに、カルシウム製剤処理を行い、最後に油脂による被覆処理を行うのがよい。
本発明の処理方法により、収穫後の加熱を伴う加工後も加工前の品質が保持される。品質は、イチゴ果実の物性と色をいうが、これらの品質は果実の軟化度、外観の色、食感、甘さ、風味、外観で評価することができる。イチゴ果実は軟化すると、落下したときに果汁が滲出しやすくなるので、軟化度は落下果実滲出量割合により評価することができる。落下果実滲出量割合とは、イチゴを適当な高さから横向きでろ紙上に落下命中させ、ろ紙に滲出したか重量を測定し、もとの果実重量に対する割合で表すことができる。また、イチゴ果実の応力測定により軟化度を評価することもできる。応力測定は、例えば、テクスチャーアナライザーTA-XT21(英国・Stable Micro Systems社)を用いて、円盤型プランジャーを使用した果実全体を均等に押しつぶす圧縮応力の積算値(荷重(kg)×時間(秒))を測定することにより行うことができる。圧縮応力積算値が高いほど果実が硬く、食感が保持されていると評価することができる。さらに、外観の色はイチゴをデジタルカメラで撮影し、得られた画像について画像解析ソフトで色の解析を行えばよい。色の解析は果実全体における赤系色の割合を算出することに行えばよい。具体的には、例えば、市販画像解析ソフトである「Feelimage Analyzer」(ビバコンピュータ株式会社)を用いて、果実全体に対して色相が赤に分類される「赤系色」と赤以外に分類される「非赤系色」を抽出しそれらの色系の割合を解析すればよい。食感、甘さ、風味及び外観については、複数の訓練を積んだパネルを用いた官能評価により評価することができる。この際、収穫時の生鮮イチゴ果実の食感、甘さ、風味及び外観のスコアを10又は5として処理イチゴ果実のスコアを算出すればよい。食感、甘さ及び風味のいずれか、又はすべてが加工前のイチゴ果実と同等である場合、イチゴ果実の食味が保持されているという。
本発明の方法で収穫後であって加工前に処理したイチゴ果実は、加工前の食感、甘さ、風味及び外観の少なくとも1つの官能評価におけるスコアが保持され、加工しなかったイチゴ果実に対して、食感、甘さ、風味及び外観の少なくとも1つの官能評価におけるスコアが向上する。また、外観の色についても、本発明の方法で収穫後であって加工前に処理したイチゴ果実は、加工前のイチゴ果実の赤系色が保持され、加工しなかったイチゴ果実に対して、赤系色が増加している。さらに、本発明の方法で収穫後であって加工前に処理したイチゴ果実は、加工前の硬さが保持され、加工しなかったイチゴ果実に対して硬さが向上する。すなわち、本発明の方法で収穫後であって加工前に処理したイチゴ果実は、加工前のイチゴ果実に対して、軟化及び退色が抑制される。
本発明は、収穫後であって加工前に処理を行った生鮮イチゴ果実であって、加工前のイチゴ果実の品質が保持されている生鮮イチゴ果実を包含する。該イチゴ果実は、加工前のイチゴ果実に対して、果実の軟化が抑制され、果実の退色が抑制され、赤色が保持されている。
本発明は、収穫後であって加工前に処理を行った生鮮イチゴ果実であって、加工前のイチゴ果実の品質が保持されている生鮮イチゴ果実を含む加工食品を包含する。該加工食品は、加熱工程を伴う工程により得られた加工食品であり、ゼリー食品、缶詰、果肉固形物を多く配合したジャムやトッピング用途の食品形態等が挙げられる。
(比較例1)イチゴの加工後品質低下の検証
(a)試料
原料果実としてアメリカ産イチゴを用いた。
(b)方法
流水下で洗浄し、ヘタを除いたイチゴ4個(60 g程度)を250 g容積のゼリーカップに入れた。ゲル化剤を砂糖等とともに水に混ぜ、加温して溶解させ、そこへ果汁や香料などを添加しゼリー調製液(pH3.70±0.10)とした。このゼリー調製液をイチゴ果実の入ったゼリーカップへ満注充填(190 g程度)した。アイロンシールで密封したゼリーカップを、85℃のお湯に30分間浸漬する加熱殺菌処理を行った。
カップを5℃にて冷却後、カップ内部のゼリーが固まったことを確認して遮光したのち35℃下で保存した。
7日後にカップゼリーからイチゴを取り出し、5℃で1時間以上冷却後、果実の官能評価、物性評価(落下果汁滲出割合、応力測定)を行い、さらに外観の色について画像解析を行った。一般的に賞味期限が6か月程度の常温流通の果実入りカップゼリーは、調製後3週間程度でゼリー内部果実の品質変化が生じ、周囲のゲル部分と果実成分等の置換が完了し、以降は果実品質は比較的安定する。保存試験を行う上で常温の3倍の加速試験を行える35℃で、7日間の保存試験を行うことで、常温流通において特に変化の大きな初発3週間の果実品質について、迅速に評価できる。
官能評価は、十分に訓練を積んだパネル4名によって、果実の食感、甘さ、風味、外観の4項目について生鮮イチゴ果実をスコア10としたときの評価を行い、中央値を算出した。物性評価における落下果汁滲出量割合の測定は、果実表面の水気をよく除いたイチゴを60 cmの高さから横向きで90 mmろ紙(アドバンテックNo.2)に落下命中させ、ろ紙に滲出した果汁重量を測定し、もとの果実重量に対する割合で算出した。値が大きいほど、果実が軟化し果汁が滲出しやすいものと考えられた。応力測定は、テクスチャーアナライザーTA-XT21(英国・Stable Micro Systems社)を用いて、円盤型プランジャーを使用した果実全体を均等に押しつぶす圧縮応力の積算値(荷重(kg)×時間(秒))を一定の条件で測定した。圧縮応力積算値が高いほど果実が硬く、食感が保持されているものと考えられた。画像解析は、果実表面の水気をよく除いたイチゴを一定条件下でデジタルカメラを用いて撮影したのち、撮影画像のイチゴ果実部位のみをトリミングし、市販画像解析ソフト「Feelimage Analyzer」(ビバコンピュータ株式会社)を用いてトリミングされた果実全体に対して色相が赤に分類される「赤系色」と、赤以外に分類される「非赤系色」の割合を解析した。「赤系色」割合が高く「非赤系色」割合が低いほど、イチゴ果実本来の赤みが保持されおり、退色が抑制されているものと考えられた。
(c)結果
官能評価の結果、食感、甘さ、風味、外観の4項目いずれにおいても、生鮮イチゴ果実と比較して、ゼリー加工後の果実は品質が低下していた(表1)。特に、噛んだ際の硬さである「食感」と、見た目の色合いや張りである「外観」が損なわれていた(表1)。物性評価の結果、生鮮果実と比較してゼリー果実では有意に果汁滲出割合が高く(図1)、圧縮応力積算値が低い(図2)ことから、果実が軟化していることが示された。これは官能評価における「食感」の結果を裏付けた。画像解析の結果、生鮮果実と比較してゼリー果実では、有意な赤系色の減少及び非赤系色の増加が認められ、イチゴ果実本来の持つ赤みが失われていることが示された(図3)。これは官能評価における「外観」の結果を裏付けるものだった。
(比較例2)
(a)試料
原料果実としてアメリカ産イチゴ、酢酸製剤としてスパイラルビネガー(株式会社ナプロス)、ペクチンメチルエステラーゼ(PME)酵素製剤としてラピダーゼFPスーパー(ディー・エス・エムジャパン株式会社)、カルシウム製剤として食品添加用途の乳酸カルシウム(純正化学株式会社)、pH調製用途としてともに食品添加用途のクエン酸及びクエン酸三ナトリウム(いずれも純正化学株式会社)を用いた。
(b)方法
イチゴ果実を流水下で洗浄しヘタを除いたのち、加工前処理を行った。酢酸製剤処理は、イチゴ果実約800 gを5℃のスパイラルビネガー1.0質量%水溶液3.0 Lに浸漬し、液温が15℃以下を保つように15分間静置した。浸漬後は果実を水溶液から取り出し、果実表面の水気をよく除いた。PMEとカルシウム製剤の併用処理は、イチゴ果実約800 gをクエン酸とクエン酸三ナトリウムを用いてpH4.5に調製した40℃のラピダーゼFPスーパー0.1質量%及び乳酸カルシウム0.3質量%の混合水溶液3.0 Lに浸漬し、40℃で20分間反応させた。反応後は果実を水溶液から取り出し、果実表面の水気をよく除いた。
非処理又は加工前処理を行ったイチゴを、250 g容積のゼリーカップにそれぞれ4個(60 g程度)ずつ入れた。ゼリー調製は比較例1記載の方法で行った。加熱殺菌処理後のカップゼリーを5℃にて冷却後、カップ内部のゼリーが固まったことを確認して遮光したのち35℃下で保存した。7日後にカップゼリーからイチゴを取り出し、比較例1記載の方法に準じて果実の官能評価、物性評価を行い、さらに外観の色について画像解析を行った。
(c)結果
官能評価の結果、食感、甘さ、風味、外観の4項目いずれにおいても、非処理のままゼリー加工を行ったイチゴ果実(ゼリー非処理)と比較して、加工前処理として酢酸製剤処理を行ったイチゴ果実(ゼリー酢酸製剤)及びペクチンメチルエステラーゼとカルシウム製剤の併用処理を行ったイチゴ果実(ゼリーPME+Ca)はいずれも同等の品質であり、生鮮果実の品質の保持は見られなかった(表2)。物性評価では、落下果汁滲出割合(図4)と圧縮応力積算値(図5)のいずれにおいても、ゼリー非処理の果実と加工前処理を行った2試験区(ゼリー酢酸製剤、ゼリーPME+Ca)はそれぞれ有意な差はなく、果実の軟化抑制は認められなかった。これは官能評価における「食感」の結果を裏付けた。画像解析においても果実外観の赤系色と非赤系色について、ゼリー非処理の果実と加工前処理を行った2試験区はそれぞれ有意な差はなく、イチゴ果実本来の持つ赤みの保持は見られなかった(図6)。これは官能評価における「外観」の結果を裏付けるものだった。
この結果から、イチゴに対してカップゼリーのような商業的な加熱殺菌工程を伴う加工後に経時的な保存を行った場合、酢酸製剤単独処理やペクチンメチルエステラーゼとカルシウム製剤の併用処理といった加工前処理は、生鮮果実が有する物性及び色の保持に寄与しないことが示された。
(実施例1)
(a)試料
原料果実としてアメリカ産イチゴ、酢酸製剤としてスパイラルビネガー(株式会社ナプロス)、カルシウム製剤としてカルフレッシュ(大東化学株式会社)、油脂被覆剤としてカカオバタースプレー(ツキオカフィルム製薬株式会社)を用いた。
(b)方法
イチゴ果実を流水下で洗浄しヘタを除いたのち、加工前処理を行った。酢酸製剤処理は、イチゴ果実約800 gを5℃のスパイラルビネガー1.0質量%水溶液3.0 Lに浸漬し、液温が15℃以下を保つように15分間静置した。浸漬後は果実を水溶液から取り出し、果実表面の水気をよく除いた。カルシウム製剤処理は、イチゴ果実約800 gを40℃のカルフレッシュ1.0質量%水溶液3.0 Lに浸漬し、40℃で20分間静置した。浸漬後は果実を水溶液から取り出し、果実表面の水気をよく除いた。油脂被覆処理は、イチゴ果実をヘタ側を下にして逆さまにバットに並べたのち、カカオバタースプレーを果実表面に万遍なく噴霧し5分間室温で静置後、同様の処理を2回繰り返したのち5℃で30分間以上冷却した。酢酸製剤と油脂被覆の併用処理は、酢酸製剤処理後に油脂被覆処理を上記に準じて連続して行った。
非処理又は加工前処理を行ったイチゴを、250 g容積のゼリーカップにそれぞれ4個(60 g程度)ずつ入れた。ゼリー調製は比較例1記載の方法で行った。加熱殺菌処理後のカップゼリーを5℃にて冷却後、カップ内部のゼリーが固まったことを確認して遮光したのち35℃下で保存した。7日後にカップゼリーからイチゴを取り出し、比較例1記載の方法に準じて果実の官能評価、物性評価を行い、さらに外観の色について画像解析を行った。
(c)結果
官能評価の結果、非処理のままゼリー加工を行ったイチゴ果実(ゼリー非処理)と比較して、加工前処理としてカルシウム製剤処理を行ったイチゴ果実(ゼリーカルシウム)では外観の赤みが強く、食感(硬さ)が保持されていて甘さと風味が残る傾向だった(表3)。また、酢酸製剤と油脂被覆の併用処理を行ったイチゴ果実(ゼリー酢酸製剤+油脂被覆)では外観の赤みが保持されており甘さと風味が残る傾向だった(表3)。一方で、油脂被覆処理単独のイチゴ果実(ゼリー油脂被覆)ではゼリー非処理区と同等で、品質の保持は見られなかった(表3)。なお、カカオバターによる食味への影響はほぼ感じられなかった。物性評価において、落下果汁滲出割合(図7)では、ゼリー非処理区と比較して加工前処理を行った3試験区でそれぞれ有意な差は見られなかったが、圧縮応力積算値ではゼリー非処理区と比較して、ゼリーカルシウム区が有意に高い値を示した(図8)。これは官能評価における「食感」の結果を裏付けるものと考えられた。画像解析においては、ゼリー非処理区に対してゼリーカルシウム区、及びゼリー酢酸製剤+油脂被覆区で有意な赤系色の保持及び非赤系色の増加抑制が認められ、イチゴ果実本来の持つ赤みを有していることが示された(図9)。これは官能評価における「外観」の結果を裏付けるものだった。
この結果から、イチゴに対してカップゼリーのような商業的な加熱殺菌工程を伴う加工後に経時的な保存を行った場合、油脂被覆単独処理では品質の保持に寄与しないが、カルシウム製剤処理や、酢酸製剤と油脂被覆の併用処理では果実の色や物性の保持に寄与することが示された。
(実施例2)
(a)試料
原料果実として日本産イチゴの「とちおとめ」、酢酸製剤としてスパイラルビネガー(株式会社ナプロス)、カルシウム製剤としてカルフレッシュ(大東化学株式会社)、油脂被覆剤としてカカオバタースプレー(ツキオカフィルム製薬株式会社)を用いた。
(b)方法
イチゴ果実を流水下で洗浄しヘタを除いたのち、加工前処理を行った。酢酸製剤処理は、イチゴ果実約800 gを5℃のスパイラルビネガー1.0質量%水溶液3.0 Lに浸漬し、液温が15℃以下を保つように15分間静置した。浸漬後は果実を水溶液から取り出し、果実表面の水気をよく除いた。カルシウム製剤処理は、イチゴ果実約800 gを40℃のカルフレッシュ1.0質量%水溶液3.0 Lに浸漬し、40℃で20分間静置した。浸漬後は果実を水溶液から取り出し、果実表面の水気をよく除いた。油脂被覆処理は、イチゴ果実をヘタ側を下にして逆さまにバットに並べたのち、カカオバタースプレーを果実表面に万遍なく噴霧し5分間室温で静置後、同様の処理を2回繰り返したのち5℃で30分間以上冷却した。カルシウム製剤と油脂被覆の併用処理は、カルシウム製剤処理後に油脂被覆処理を上記に準じて連続して行い、酢酸製剤とカルシウム製剤、及び油脂被覆の併用処理は、酢酸製剤処理後にカルシウム製剤処理を行い、最後に油脂被覆処理を上記に準じて連続して行った。
非処理又は加工前処理を行ったイチゴを、250 g容積のゼリーカップにそれぞれ4個(60 g程度)ずつ入れた。ゼリー調製は比較例1記載の方法で行った。加熱殺菌処理後のカップゼリーを5℃にて冷却後、カップ内部のゼリーが固まったことを確認して遮光したのち35℃下で保存した。7日後にカップゼリーからイチゴを取り出し、比較例1記載の方法に準じて果実の官能評価、物性評価を行い、さらに外観の色について画像解析を行った。
(c)結果
官能評価の結果、非処理のままゼリー加工を行ったイチゴ果実(ゼリー非処理)と比較して、加工前処理として酢酸製剤、カルシウム製剤、及び油脂被覆処理の3つを併用して行ったイチゴ果実(ゼリー酢酸製剤+カルシウム+油脂被覆)では外観の赤みが強く、食感(硬さ)が保持されており、甘さや風味といった食味が良好に保たれていた(表4)。一方で、カルシウム製剤と油脂被覆の併用処理を行ったイチゴ果実(ゼリーカルシウム+油脂被覆)では色や物性をはじめとした品質が保持されていなかった(表4)。物性評価において、落下果汁滲出割合ではゼリー非処理区と比較してゼリーカルシウム+油脂被覆区は有意な差は認められなかったが(図10)、3つの処理を併用したゼリー酢酸製剤+カルシウム+油脂被覆区では有意に果汁滲出が抑制されていた(図11)。圧縮応力積算値においても、ゼリー非処理区と比較してゼリーカルシウム+油脂被覆区は有意な差は認められなかったが(図12)、3つの処理を併用したゼリー酢酸製剤+カルシウム+油脂被覆区では有意に高い値を示した(図13)。これらは官能評価における「食感」の結果を裏付けるものと考えられ、ゼリー酢酸製剤+カルシウム+油脂被覆区のイチゴは、果実表面の硬さ(落下果汁滲出割合)と果実内部の硬さ(圧縮応力積算値)のいずれも保持されているものと考えられた。
画像解析においては、果実外観の赤系色と非赤系色について、ゼリー非処理区に対してゼリーカルシウム+油脂被覆区では有意な差は見られなかった(図14)。一方で、ゼリー酢酸製剤+カルシウム+油脂被覆区では有意な赤系色の保持及び非赤系色の増加抑制が認められ、イチゴ果実本来の持つ赤みを有していることが示された(図15)。これは官能評価における「外観」の結果を裏付けるものだった(図16)。図16は、加工前処理として酢酸製剤、カルシウム製剤、及び油脂被膜処理の3つを併用して行ったゼリー加工後のイチゴ果実が、非処理のゼリー加工後のイチゴ果実より外観が赤いことを示している。
この結果から、収穫後のイチゴに対して酢酸製剤、カルシウム製剤、及び油脂被覆処理を併用する加工前処理を行うことで、加熱殺菌工程を伴う加工後も経時的に生鮮果実の有する色と物性をともに保持できることが示された。

Claims (11)

  1. 収穫後のイチゴ果実の加熱工程を伴う加工後に、イチゴ果実の軟化と退色のいずれも抑制するイチゴ果実の処理方法であって、収穫後のイチゴ果実に(a)酢酸製剤処理とカルシウム製剤処理を独立にかつ連続して行うか、又は同時に行い、その後、(b)油脂によるイチゴ果実表面の被覆処理を行うことを特徴とする処理方法。
  2. 酢酸製剤処理を行った後に、カルシウム製剤処理を行い、さらにその後に油脂によるイチゴ果実表面の被覆処理を行う請求項1記載の処理方法。
  3. 酢酸製剤の主要構成成分が、醸造酢であり、pHが3.0〜5.0である請求項1又は2に記載の処理方法。
  4. カルシウム製剤が酢酸カルシウム製剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の処理方法。
  5. 油脂が、飽和脂肪酸の含有率が50%以上の油脂である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の処理方法。
  6. 油脂がカカオバターである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の処理方法。
  7. 収穫後のイチゴ果実の加熱工程を伴う加工が、60℃以上での加熱である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の処理方法。
  8. 退色がイチゴ果実の赤色の退色である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の処理方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法により調製された、加熱工程を伴う加工後に、イチゴ果実の軟化と退色のいずれもが抑制される、イチゴ果実。
  10. 請求項9記載のイチゴ果実を用い、加熱工程を伴う工程により調製した加工食品。
  11. ゼリー食品である、請求項10記載の加工食品。
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