JP2016211105A - 多層紙及び多層紙の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)3層以上の抄き合わせにより得られる多層紙であって、表層と裏層を除く層のマイクロ波分子配向度測定で決定される繊維配向比をM、表層及び裏層のマイクロ波分子配向度測定で決定される繊維配向比をそれぞれA及びBとするとき、
M−A及びM−Bがそれぞれ0.2以上であり、かつ
A及びBがそれぞれ1.3以下である、多層紙。
(2)紙層全体の坪量に対する表層及び裏層の坪量の割合が、それぞれ5〜20質量%である(1)に記載の多層紙。
(3)前記(1)に記載の多層紙の製造方法であって、
ワイヤーパート上に紙料を吐出することを含み、かつ
前記M−A及びM−Bがそれぞれ0.2以上、A及びBがそれぞれ1.3以下となるように各層における吐出速度Jとワイヤー速度Wとの比J/Wを調整することを含む、
製造方法。
以下、本発明の多層紙を詳細に説明する。本発明において「〜」はその両端の値を含む。すなわち「X〜Y」との記載はXとYを含むことを意味する。
本発明の多層紙は、パルプを主原料とした3層以上の多層構造からなり、抄き合せて製造される。本発明の多層紙は、複数のヘッドボックスを備える抄紙機による抄き合わせ、あるいは単一のヘッドボックスのみを備える抄紙機による多層抄きで製造されることが好ましい。積層数は3以上であれば限定されないが、例えば3層の場合は表層/中層/裏層、4層の場合は表層/表下層/裏下層/裏層、5層の場合は表層/表下層/中層/裏下層/裏層からそれぞれ構成される。表層及び裏層以外の層とは、3層の場合は中層を、4層の場合は表下層/裏下層/裏層を、5層の場合は表下層/中層/裏下層/裏層を意味する。
繊維配向比とは、繊維の配向(配列)の度合を示す尺度であり、数値が大きいほど配列の度合が強いことを示す。特に断りの無い限り、本発明における繊維配向比はMD方向への繊維の配向の度合を意味する。本発明において繊維配向比は層のマイクロ波透過強度から求められ、具体的にはマイクロ波分子配向度測定装置(王子計測器(株)製)により決定される。
本発明の多層紙は、必要に応じて機械パルプ(MP)、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)等、抄紙原料として一般的に使用されているものの1種類又は2種類以上と再生パルプとを混合して使用することができる。機械パルプとしては、砕木パルプ(GP)、リファイナー砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)等が挙げられる。環境の観点からは、再生パルプの使用量が多いことが望ましい。再生パルプと他のパルプを混合して使用する場合、各層における両者の比率は任意に設定することができ、特に限定されない。
本発明の多層紙の坪量は100〜300g/m2であることが望ましい。抄き合わせにおける各層の坪量範囲は、所定の範囲内で調整できるが、本紙層全体の坪量に対する表層及び裏層の坪量割合は、それぞれ5〜20質量%が好ましく、10〜15質量%がより好ましい。表層及び裏層の坪量割合が低すぎると、CD方向の曲げこわさが低くなり、高すぎると破裂強度が低くなる傾向がある。
本発明の多層紙は填料を含んでいてもよい。填料の種類は特に制限されないが、例えば、重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、炭酸カルシウム−シリカ複合物、酸化チタン、クレー、シリカ、タルク、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化チタン、ベントナイト等の無機填料;尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等の有機填料;を単独又は適宜2種類以上を組み合わせて使用できる。また、製紙スラッジや脱墨フロス等を原料とした再生填料も使用することができる。酸性抄紙の場合は、前記填料から酸溶解性のものを除いた填料が使用され、その単独又は適宜2種類以上を組み合わせて使用できる。
本発明の多層紙には、必要に応じて各種の製紙用薬品を添加できる。具体的には、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン性澱粉、両性澱粉、各種変性澱粉、尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂等の内添紙力増強剤;ロジン系サイズ剤、AKD系サイズ剤、ASA系サイズ剤、石油系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤等の内添サイズ剤;等を挙げることができる。また、歩留剤、濾水性向上剤、凝結剤、硫酸バンド、ベントナイト、シリカ、染料、消泡剤、紫外線防止剤、退色防止剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等を用いることができる。
本発明の多層紙には、必要に応じて、片面又は両面に表面処理剤を塗布することができる。表面処理剤の種類や組成は特に限定されないが、表面強度の向上を目的とした水溶性高分子物質として、生澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、酵素変性澱粉、アルデヒド化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉等の澱粉;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール等の変性アルコール;スチレンブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド等を単独又は併用して用いることができる。
本発明の多層紙は、印刷用紙、情報用紙、新聞用紙、はがき用紙、包装用紙、ライナーや白板紙等の板紙等に使用することができる。坪量等の諸物性や製造方法等は、各用途に応じて適宜設定してよい。
本発明の多層紙は、各層の紙料をそれぞれ調製し、長網型湿式抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、ヤンキー抄紙機、円網抄紙機、円網短網コンビネーション抄紙機等、公知の多層抄紙が可能な抄紙機を適宜選択して製造することができる。本発明では長網型湿式抄紙機が好ましい。
(1)各層毎に吐出速度(「ジェットの速度」ともいう)Jとワイヤー速度Wとの比J/Wを複数変更して抄造テストを行い、各層毎にJ/W比と繊維配向比すなわちA、B、及びMとの関係を詳細に把握する。この際、J/W比(%)に関して、100%を中心として105〜95%の間を1%程度の間隔にて順次変更して実施することが望ましい。ワイヤー速度Wより吐出速度Jが遅い状態を「引きの状態」(J/W比<100%)、吐出速度Jが速い状態を「押しの状態」(J/W比>100%)という。
(3)製造された各層を抄き合わせして多層紙を製造する。
(4)さらに必要により、各層の繊維配向比の測定結果をJ/W比にフィードバックして調整した後に、各層を抄き合わせる。
[繊維配向比]
マイクロ波を使用したマイクロ波分子配向度測定装置(王子計測器(株)製)により測定した。
[破裂強度]
JIS 8131:2009による板紙−破裂強さ試験方法により測定した。
[CD方向の曲げこわさ]
ISO 2493により測定した。
(1)各層の原料
表層のパルプとして針葉樹見晒クラフトパルプ(NUKP)10質量%、未使用段ボールの古紙パルプ(FRPD)90質量%、中層と裏層のパルプとして段ボール古紙パルプ(RPD)100質量%を使用した。表層には、硫酸バンド2.5質量%、ロジン系サイズ剤0.45質量%を添加した。また、中層には、紙力増強剤として両性澱粉0.8質量%、硫酸バンド2.0質量%、ロジン系サイズ剤0.12質量%を添加した。裏層には、紙力増強剤として両性澱粉0.25質量%、硫酸バンド2.0質量%、ロジン系サイズ剤0.22質量%添加した。
事前に各層に関してJ/W比を複数変更して抄造テストを行いJ/W比と繊維配向比の関係を把握した。この関係から表層、中層、裏層の繊維配向比がそれぞれ1.2、1.5、1.2となるようにJ/W比を設定した。
(3)抄き合わせ
抄紙速度を750m/分、各層の米坪をそれぞれ、25g/m2、115g/m2、30g/m2とした計3層で抄き合わせ、170g/m2のライナー原紙を得た。
表層、中層、裏層の繊維配向比がそれぞれ1.3、1.5、1.2となるJ/W比に設定し抄造した以外は、実施例1と同様にしてライナー原紙を得た。
表層、中層、裏層の繊維配向比がそれぞれ1.5、1.3、1.7となるJ/W比に設定し抄造した以外は、実施例1と同様にしてライナー原紙を得た。
[比較例2]
表層、中層、裏層の繊維配向比がそれぞれ1.2、1.2、1.3となるJ/W比に設定し抄造した以外は、実施例1と同様にしてライナー原紙を得た。
表層、中層、裏層の繊維配向比がそれぞれ1.2、1.1、1.3となるJ/W比に設定し抄造した以外は、実施例1と同様にしてライナー原紙を得た。
[比較例4]
表層、中層、裏層の繊維配向比がそれぞれ1.7、1.5、1.7となるJ/W比に設定し抄造した以外は、実施例1と同様にしてライナー原紙を得た。
[比較例5]
表層、中層、裏層の繊維配向比がそれぞれ1.5、1.7、1.4となるJ/W比に設定し抄造した以外は、実施例1と同様にしてライナー原紙を得た。
結果を表1に示す。
Claims (3)
- 3層以上の抄き合わせにより得られる多層紙であって、表層と裏層を除く層のマイクロ波分子配向度測定で決定される繊維配向比をM、表層及び裏層のマイクロ波分子配向度測定で決定される繊維配向比をそれぞれA及びBとするとき、
M−A及びM−Bがそれぞれ0.2以上であり、かつ
A及びBがそれぞれ1.3以下である、多層紙。 - 紙層全体の坪量に対する表層及び裏層の坪量の割合が、それぞれ5〜20質量%である請求項1に記載の多層紙。
- 請求項1に記載の多層紙の製造方法であって、
ワイヤーパート上に紙料を吐出することを含み、かつ
前記M−A及びM−Bがそれぞれ0.2以上、A及びBがそれぞれ1.3以下となるように各層における吐出速度Jとワイヤー速度Wとの比J/Wを調整することを含む、
製造方法。
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