JP2007177361A - 磁性ワイア、及び該磁性ワイアを含む印刷用紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】検知ゲートで検知できる程度の磁気信号を発生することができ、更に、印刷用紙容易に漉き込むことを可能な磁性ワイア、及び該磁性ワイアを漉き込んでなり、該磁性ワイアが外部から視認し難く、更に、検知ゲートで検知できる程度の磁気信号を発生し、印刷用紙の持ち出しを抑止することを可能とする印刷用紙を提供すること。
【解決手段】断面形状における短辺をa、長辺をbとした際に、下記の(1)〜(3)の条件を全て満たすことを特徴とする磁性ワイア、及び該磁性ワイアが漉き込まれてなる印刷用紙。
(1)10μm≦a≦60μm
(2)b≦150μm
(3)(a+b)/2≧80μm
【選択図】図2

Description

本発明は、セキュリティー用途の印刷用紙、及び該印刷用紙に含まれる磁性ワイアに関するものである。
従来のセキュリティー用途の用紙としては、磁性粉を繊維状物表面に固着してなる磁性繊維を漉き込んだものが知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
このような磁性繊維を含む用紙は、用紙に密接した磁気センサーにて磁化パターンを検出するため、当該用紙は偽造防止用途には使えても、用紙の持ち出しを抑止することはできなかった。
一方、例えば、特許文献3には、万引き防止用の磁性ワイアを紙層間に漉き込んだ用紙の構成が開示されている。
特開平11−107161号公報 特開2004−131888号公報 特開2002−317398号公報
しかしながら、万引き防止用の磁性ワイアは、直径が0.1mmから0.3mmあり、0.1mm前後の紙厚を有する、通常、オフィスで使用されるような印刷用紙に適用することができなかった。
この問題を解決するためには、磁性ワイアの直径を小さくすればよいが、本発明者らが、磁性ワイアの小径化を検討したところ、磁性ワイアから発生する磁気信号は、その断面積にほぼべき乗に比例して減少することが判明した。つまり、磁性ワイアを小径化すると、所望の磁性信号が得られないという問題を有していた。
また、印刷用紙中の磁性ワイアは、その径や形状によっては、用紙の外部から存在が視認されてしまうことがある。この場合、情報のセキュリティーを確保するための用紙であることが一見して判別できることになるために、セキュリティーの向上を図ることができず、機密情報の漏洩や改竄を招く恐れがあった。
そこで、本発明は、前記従来における問題を解決することを課題とする。
即ち、本発明は、検知ゲートで検知できる程度の磁気信号を発生することができ、更に、印刷用紙に漉き込むことが可能な磁性ワイアを提供することを第1の課題とする。
また、前記磁性ワイアを漉き込んでなり、該磁性ワイアが外部から視認し難く、更に、検知ゲートで検知できる程度の磁気信号を発生し、印刷用紙の持ち出しを抑止することを可能とする印刷用紙を提供することを第2の課題とする。
上記課題は以下の本発明により達成される。
即ち、本発明は、
<1> 断面形状における短辺をa、長辺をbとした際に、下記の(1)〜(3)の条件を全て満たすことを特徴とする磁性ワイアである。
(1)10μm≦a≦60μm
(2)b≦150μm
(3)(a+b)/2≧80μm
<2> 大バルクハウゼン信号を発生するアモルファス磁性体からなることを特徴とする<1>に記載の磁性ワイアである。
<3> <1>又は<2>に記載の磁性ワイアが漉き込まれてなることを特徴とする印刷用紙である。
以上に説明したように、本発明によれば、検知ゲートで検知できる程度の磁気信号を発生することができ、更に、印刷用紙に漉き込むことが可能な磁性ワイアを提供することができる。
また、本発明の磁性ワイアを層中央部に漉き込んでなり、該磁性ワイアが外部から視認し難く、更に、検知ゲートで検知できる程度の磁気信号を発生し、印刷用紙の持ち出しを抑止することを可能とする印刷用紙を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明するにあたり、まず、本発明の磁性ワイアについて詳述し、その後、本発明の印刷用紙について述べる。
<磁性ワイア>
本発明の磁性ワイアは、断面形状における短辺をa、長辺をbとした際に、下記の(1)〜(3)の条件を全て満たすことを特徴とする。
(1)10μm≦a≦60μm
(2)b≦150μm
(3)(a+b)/2≧80μm
ここで、断面形状における「短辺a」及び「長辺b」とは、下記のようにして決定される。
即ち、磁性ワイアの断面形状の外周上にあり、且つ、同一直線上の2点P1、P2を選んだとき、P1とP2との長さ(距離)が最大になる場合の線分P1−P2を長軸とし、この長軸の長さを「長辺b」とする。また、断面形状の外周上の2点Q1、Q2を端点とする線分Q1−Q2の中で、前記長軸を示す線分P1−P2に直交し、且つ、線分Q1−Q2が最大になるものを短軸とし、この短軸の長さを「短辺a」とする。
以下、図1(a)〜(d)を参照して、本発明の磁性ワイアの断面形状における「短辺a」及び「長辺b」について、具体的に説明する。
ここで、図1は、本発明の磁性ワイアの断面形状を示した図である。
図1(a)〜(d)のように、本発明の磁性ワイアの断面形状の外周上の2点P1、P2を結んだ最大長さが「長辺b」となり、「長辺b」と直交する線分Q1−Q2のうちで最も長いものの長さが「短辺a」となる。
ここで、このような磁性ワイアの断面形状は、断面研磨サンプルの走査電子顕微鏡観察(SEM観察)により確認され、「短辺a」及び「長辺b」は、SEM像の寸法計測により求められる。
なお、前記(1)〜(3)の条件を満たしていれば、本発明の磁性ワイアとなるが、その断面形状は、図1(a)〜(c)に示されるように、上下左右対称な形状であってもよいし、また、図1(d)に示されるように、不定形であってもよい。
次に、本発明における前記(1)〜(3)の条件について、順次説明する。
本発明では、(1)断面形状における短辺aが10〜60μmであることを要する。また、短辺aは15〜45μmの範囲であることが好ましく、20〜40μmであることがより好ましい。
短辺aが10μmより小さいと、磁気信号の検知が困難になったり、ワイアの製造安定性が図られないことがある。
また、短辺aが60μmより大きいと、通常のオフィス使用の印刷用紙へに漉き込むことや、漉き込んだ印刷用紙上への印刷が困難になる。
なお、本発明において、磁気信号とは、磁性ワイアに交番磁界を印加するときに、磁性ワイアの磁化反転により発生する磁気信号をいう。この磁気信号は、磁性ワイアから距離を保って配置される検知コイルに発生する電気的なパルスとして検出される。
また、本発明では、(2)断面形状における長辺bが150μm以下であることを要する。また、長辺bは、100〜130の範囲であることが好ましく、100〜120の範囲がより好ましい。
長辺bが150μmを超えると、印刷用紙に漉き込んだ場合に、外部から磁性ワイアが容易に視認されてしまい、美観を損ねたり、セキュリティーの向上が図れないことがある。特に、一般の製図用ソフトで印字される細線幅が0.15mm程度であることを考慮すると、それ以下に抑えることが必要となる。
更に、本発明では、(3)断面形状における短辺aと長辺bとの平均[(a+b)/2]が80μm以上であることを要する。
(a+b)/2が80μmより小さいと、磁性ワイアを漉き込むために使用する抄紙機において、漉き網部のワイアの開孔部に磁性ワイアが入り込んでしまい、印刷用紙に磁性ワイアを漉き込みが困難となる。
また、(a+b)/2が105μmより大きいと、印刷用紙に漉き込んだ場合に、外部から磁性ワイアが容易に視認されてしまう可能性がある。
前記(1)〜(3)の条件を全て満たす範囲について、図2に示す。ここで、図2は、本発明における(1)〜(3)の条件を全て満たす範囲を示すグラフである。
図2において、ハッチング領域が、本発明の磁性ワイアとなる。
図2のハッチング領域により、前記(1)〜(3)の関係から、長辺bは100〜150μmの範囲をとることになり、また、(a+b)/2は80〜105μmの範囲をとることになる。
また、本発明の磁性ワイアは、検知ゲートで検知できる磁気信号をより確実に発生させる点から、その断面積が、1000〜9000μmであることが好ましく、2000〜7500μmであることがより好ましく、3000〜6000μmであることが更に好ましい。
続いて、本発明における磁性ワイアを構成する材料について説明する。
本発明の磁性ワイアは、上述の断面形状を有する磁性ワイアを構成しうる磁性材料であれば、制限なく用いることができるが、中でも、低磁界(100A/cm以下)で大バルクハウゼン効果を起こす特性を有する磁性材料からなることが好ましい。また、このような磁性材料から構成されていれば、その磁気的物性や組成、ワイアの長さ等は特に限定されるものではない。
ここで、大バルクハウゼン信号の検知に関しては、特開平6−84029号公報の段落番号[0009]〜[0010]に記載の方法が用いられる。
本発明の磁性ワイアにおける磁気的物性としては、ヒステリシスループがほぼ長方形で、保持力(Hc)が比較的小さいことが好ましい。
また、その組成としては、例えば、磁性元素のCo、Fe、Ni、遷移金属類及びガラス形成元素のSi,B,C,Pからなる合金が挙げられ、その構成元素の組成比率や製造方法を選択することにより様々な磁気特性をもつものが利用できる。具体的には、例えば、Fe−B−Siや、Co−Fe−B−Si等が挙げられる。
本発明の磁性ワイアの長さとしては、大バルクハウゼン効果を起こすのに適した長さであれば特に限定されないが、通常、5〜50mmの範囲であることが好ましく、10〜40mmの範囲であることがより好ましく、10〜30mmの範囲であることが更に好ましい。
本発明の磁性ワイアは、印刷用紙にそのままの状態で、つまり、磁性材料が露出した状態で漉き込むこともできるが、絶縁性を有する層(以下、単に絶縁層と称する。)により被覆した状態で印刷用紙に漉き込むことが好ましい。
これは、磁性材料が直接印刷用紙内に入り込むことにより、印刷用紙の体積抵抗値の低下させてしまい、PPC用途への適用が困難となる場合や、大バルクハウゼン効果の発揮が阻害されてしまう場合があるためである。
この絶縁層を構成する材料としては、公知の絶縁性材料であれば特に限定されず、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、アルミナ、ガラス等の無機材料や、ポリイミド等の有機材料が用いられる。
このように絶縁層に被覆されることにより、被覆厚みがワイア径に加わり、ワイア外径を増加させることになるが、本発明の磁性ワイアは、前述のように(1)〜(3)の条件を全て満たすような断面形状を有するため、印刷用紙への漉き込みが容易である。
絶縁層の形成方法としては、特に限定されず、絶縁性材料に応じてスパッタリングやCVD、真空蒸着等の気相成膜法や、浸漬塗布、ローラー塗布、スプレー塗布、ゾルゲル法を利用したコーティング等の液相成膜法のような公知の薄膜形成方法を適宜選択することができる。中でも、均一で、且つ、より膜厚の薄い絶縁層を形成する上では、気相成膜法の方が好ましい。
このような絶縁層は、その被覆効果を発現するため、ワイアの製造上の工程管理のために、1〜10μmの厚さを有することが好ましく、2〜8μmの厚さを有することがより好ましい。
本発明の磁性ワイアについて、PPCの用途への適用を考慮した場合、トナーの定着のために、定着用のヒータ等を高熱部位を通過する場合がある。そのため、定着温度を考慮すると、本発明の磁性ワイアのキュリー温度は200℃以上であることが好ましく、300℃以上あることがより好ましい。
本発明において、キュリー温度は、飽和磁化Msの温度依存性曲線を測定し、Ms=0となる温度を求めることで、導出することができる。
本発明の磁性ワイアは、磁性材料を溶融し、それを所望の断面形状に対応した形状の吐出口を通過させた後、冷却することにより得られる。具体的には、例えば、水中回転紡糸法などを用いることができる。
また、磁性体ワイア及び絶縁層をほぼ同時に製造することもできる。例えば、溶融状態の磁性材料を、所望の断面形状を有するワイア状に加工した直後に、磁性体ワイアの冷却も兼ねてCVD等の気相成膜法により絶縁層を形成する方法を適用することができる。
また、米国特許3,256,584号明細書に記載される製造方法(Taylor-Ulitovsky法)によって、ガラス(絶縁層)で被覆された磁性ワイアを製造することもできる。即ち、ガラス管内に金属合金をチャージして、ガラス管の先端を誘導コイルで過熱して融解し、金属融解物質の周囲を融解したガラスで被覆した状態を作り出し、それを冷却媒体で急冷する。これによりアモルファス磁性線をガラスで被覆した磁性ワイアを得る方法である。なお、ガラス管の先端を所望の断面形状に対応させることで、本発明の磁性ワイアを得ることができる。
本発明の磁性ワイアは、前記(1)〜(3)の条件を全て満たすことで、印刷用紙に漉き込むことが可能な程度に扁平で、且つ、抄紙機におけるメッシュ開口部への入り込みを防止可能な断面形状を有したおり、また、検知ゲートで検知できる程度の磁気信号を発生することが可能な断面積を有することが分かる。
これにより、本発明の磁性ワイアは、通常のオフィス使用の印刷用紙に対して容易に漉き込むことが可能となる。また、本発明の磁性ワイアを印刷用紙に漉き込むことで、検知ゲートで検知できる程度の磁気信号を発生させることが可能である。
<印刷用紙>
本発明の印刷用紙は、前述の本発明の磁性ワイアを漉き込んでなることを特徴とする。
本発明の印刷用紙は、図3に示されるような構成を有することが好ましい。ここで、図3は、本発明の印刷用紙の一実施態様を示す概略図であり、(a)は上面図であり、(b)はA−A’線断面の拡大図である。
図3に示すように、印刷用紙100には、磁性ワイア10が層中央部に含まれることが分かる。
このような構成を有することから、本発明の印刷用紙は、検知ゲートで検知できる程度の磁気信号を発生し、印刷用紙の持ち出しを抑止することが可能となる。
また、本発明の印刷用紙中の磁性ワイア(本発明の磁性ワイア)は比較的に断面積が広いことから、小径で引張り強度が低い磁性ワイアを用いた場合に頻発に発生する、該磁性ワイアを所定の長さに切断する際のワイア縺れや切断不良といった問題が解決される。
本発明の印刷用紙は、本発明の磁性ワイアを漉き込むことにより得られれば、その紙層の構成は限定されず、例えば、単層であってもよいし、2層以上の多層構成であってもよく、中でも、2層又は3層であることが好ましい。
また、本発明の印刷用紙は、前述の本発明の磁性ワイアを用いているため、抄紙機におけるメッシュ開口部(通常、一辺が80〜100μmの正方形)に磁性ワイアが入り込んだり、また、絡んだりせず、容易に製造することができる。
本発明において、特に、磁性ワイアを印刷用紙の層中央部に内在させるために、2層の場合は、紙層と紙層との界面部分に磁性ワイアを狭時させる方法が用いられる。また、3層の場合は、磁性ワイアを分散させた紙層の両面を、磁性ワイアを含まない紙層によりサンドイッチする構成とすることが好ましい。磁性ワイアの分散性を考慮すると、紙層を3層構成にして、その中央層に磁性ワイアを漉き込むことが好ましい。
また、紙層が単層の場合は、層の表面近傍にも磁性ワイアが存在する場合があるため、紙層の表面に存在する磁性ワイアが露出しないように、また、外部から視認し難くなるようにコート層を設けることが好ましい。
本発明の印刷用紙の製造方法としては、紙層が単層である場合、磁性ワイアを含むパルプスラリーを、公知の抄紙法に供する方法が適用できる。
本発明の印刷用紙の製造方法として、紙層が2層構成である場合には、予め形成された1枚の紙層の片面に磁性ワイアを配置した後、この上からもう1枚の紙層を接着剤等を用いて貼り合わせる方法が用いられる。
なお、本発明の印刷用紙の製造方法には、紙層を作製する過程で、紙層と紙層との界面に磁性ワイアを配置する手段を適用することもできる。具体的には、抄紙工程を経て得られた潤湿状態のパルプシート(湿紙)の片面に磁性ワイアを配置した後、この上からもう1枚の潤湿状態のパルプシートを積層し、その後、乾燥させる方法である。
上記抄紙工程には、公知の抄紙機を用いることができる。
本発明の印刷用紙の製造方法として、紙層が3層構成である場合には、多層抄紙法を用いることが好ましい。多層抄紙法では、3層中に中間層を抄紙する際に用いられるパルプスラリーにのみ、磁性ワイアを添加しておくことで、中間層のみに磁性ワイアを含む本発明の印刷用紙を得ることができる。
なお、小径で軽量の磁性ワイアを多層抄紙工程に適用した場合には、磁性ワイアが浮遊し、紙厚方向において、必ずしも紙層中央に収まらずに、表面露出する問題が生じる場合があったが、本発明の印刷用紙は、前述の本発明の磁性ワイアを用いているため、この問題の発生を防止することができる。その結果、印刷用紙のコストを大幅に向上させてしまう虞がない。
また、磁性ワイアが含まれる紙層の両面に、磁性体を含まない2枚の紙層を張り合わせる方法も用いることができる。
本発明において、上記多層抄紙法としては、例えば、石黒三郎著の「最新抄紙技術−理論と実際」(製紙化学研究所,1984)に詳しく記載されている方法を適用することができる。記載されている方法いずれを用いても構わないし、更には、これらの方法に限定されず、多層を抄紙することができればよい。
また、本発明の記録用紙におけるコート層としては、その機能や材料は特に限定されないが、例えば、電子写真法により画像を形成する場合に、画像表面のトナーに起因する凹凸を低減して画像表面を平滑化し、光沢感のある画像や、銀塩写真ライクな画像を得るために設けられるような受像層などを設けることができる。
また、紙層が単層構成である場合には、紙層の表面に存在する磁性ワイアが露出しないために、コート層を設けてもよい。更に、紙層が単層構成である場合、紙層の表面に存在する磁性ワイアが外部から視認し難くなる機能を有するコート層を設けてもよい。このようなコート層が、他の機能、例えば、上述したような受像層の機能を兼ねるものであってもよい。
なお、このコート層は、サイズプレス処理の他、シムサイズ、ゲートロール、ロールコータ、バーコータ、エアナイフコータ、ロッドブレードコータ、ブレードコータ等の公知の塗工方法を利用して、コート層を構成する材料を含む塗工液を、紙材上に塗工することにより形成することができる。
以下、上述の紙層を構成する成分について説明する。
本発明に用いられる紙層は、少なくともパルプ繊維を主原料とするものであり、以下に説明する基材であってもよく、この基材表面に顔料やバインダーなどを処理した普通紙であってもよい。
基材は、パルプ繊維を含むものであるが、パルプ繊維としては公知のものを用いることができ、具体的には、化学パルプ、具体的には広葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、広葉樹未晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ、針葉樹未晒亜硫酸パルプ等、木材及び綿、麻、じん皮等の繊維原料を化学的に処理して作製されたパルプ等を使用できる。
また、木材やチップを機械的にパルプ化したグランドウッドパルプ、木材やチップに薬液を染み込ませた後に機械的にパルプ化したケミメカニカルパルプ、及び、チップをやや軟らかくなるまで蒸解した後にリファイナーでパルプ化したサーモメカニカルパルプ等も使用できる。これらはバージンパルプのみで使用してもよいし、必要に応じて古紙パルプを加えてもよい。
特に、バージンで使用するパルプは、塩素ガスを使用せず二酸化塩素を使用する漂白方法(Elementally Chlorine Free;ECF)や塩素化合物を一切使用せずにオゾン/過酸化水素等を主に使用して漂白する方法(Total Chlorine Free;TCF)で漂白処理されたものであることが好ましい。
また、古紙パルプの原料として、製本、印刷工場、断裁所等において発生する裁落、損紙、幅落しした上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙;印刷やコピーが施された上質紙、上質コート紙などの上質印刷古紙;水性インク、油性インク、鉛筆などで筆記された古紙;印刷された上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙等のチラシを含む新聞古紙;中質紙、中質コート紙、更紙等の古紙;を配合することができる。
本発明に用いられる基材に使用される古紙パルプとしては、古紙原料を、オゾン漂白処理又は過酸化水素漂白処理の少なくとも一方で処理して得られたものが望ましい。また、より白色度の高い基材を得るためには、上記漂白処理によって得られた古紙パルプの配合率を50質量%以上100質量%以下とすることが望ましい。更に資源の再利用という観点からは、古紙パルプの配合率を70質量%以上100質量%以下とすることがより望ましい。
オゾン処理は、上質紙に通常含まれている蛍光染料等を分解する作用があり、過酸化水素処理は脱墨処理時に使用されるアルカリによる黄変を防ぐ作用がある。特にこの二つを組み合わせた処理によって古紙の脱墨を容易にするだけでなく、パルプの白色度も向上することが知られている。また、パルプ中の残留塩素化合物を分解・除去する作用もあるため、塩素漂白されたパルプを使用した古紙の有機ハロゲン化合物含有量低減において多大な効果を持つ。
また、本発明に用いられる基材には、不透明度、白さ及び表面性を調整するため、填料を添加することが好ましい。特に、印刷用紙中のハロゲン量を低減したい場合には、ハロゲンを含まない填料を使用することが好ましい。
使用できる填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク、カオリン、焼成クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、セリサイト、ホワイトカーボン、サポナイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、ベントナイト等の白色無機顔料、及びアクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、尿素樹脂、等の有機顔料を挙げることができる。また、古紙を配合する場合には、古紙原料に含まれる灰分を予め推定して添加量を調整する必要がある。
更に、本発明に用いられる基材には、内添サイズ剤を添加することが好ましい。内添サイズ剤としては、中性抄紙に用いられる、中性ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸(ASA)、アルキルケテンダイマー(AKD)、石油樹脂系サイズ剤が使用できる。
また、基材の表面をカチオン性に調整する場合には、カチオン性物質としては、例えば、親水性のカチオン樹脂等を表面に処理することができるが、このカチオン性樹脂の内部への浸透を抑制するためには、このカチオン性樹脂を塗布する前の用紙サイズ度は10秒以上60秒未満であることが好ましい。
また、基材には、必要に応じて紙力増強剤を内添或いは外添することができる。紙力増強剤としては、でんぷん、変性でんぷん、植物ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ジアルデヒドでんぷん、ポリエチレンイミン、エポキシ化ポリアミド、ポリアミド・エピクロルヒドリン系樹脂、メチロール化ポリアミド、キトサン誘導体等が挙げられ、これらの材料を単独或いは混合して使用することができる。
また、この他にも、染料、pH調整剤等、通常の紙媒体に配合される各種助剤が適宜使用される。
得られた基材に対し、必要に応じて表面サイズ液を表面処理したり、コート層を設けたりして普通紙を得ることができる。
表面処理は、表面サイズ液を、サイズプレス、シムサイズ、ゲートロール、ロールコータ、バーコータ、エアナイフコータ、ロッドブレードコータ、ブレードコータ等の通常使用されている塗布手段によって、基材に塗布することにより行うことができる。
普通紙を得るためのコート層に用いられる顔料としては、通常の一般塗被紙に用いられる顔料、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネーテッドクレー、アルミノ珪酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト等の鉱物質顔料や、ポリスチレン樹脂微粒子、尿素ホルムアルデヒド樹脂微粒子、微小中空粒子及びその他の有機系顔料等を単独或いは複数組み合わせて使用することができる。
普通紙を得るためのコート層に用いられる接着剤としては、合成接着剤や天然系の接着剤が利用できる。
合成接着剤としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合及びポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等が挙げられる。これらの合成接着剤の中で目的に応じて、1種類以上を使用することができる。これらの接着剤は顔料100質量%当たり5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%程度の範囲で使用されることが好ましい。
また、天然系接着剤として、酸化デンプン、エステル化デンプン、酵素変性デンプンやそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性デンプン、カゼイン、大豆たんぱく等の一般に知られた接着剤が挙げられる。これらの接着剤も顔料100質量%当たり0.1〜50質量%、より好ましくは2〜30質量%程度の範囲で使用される。
また必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤等、通常の塗被紙用顔料に配合される各種助剤が適宜使用される。
上述したような成分を含むコート層組成物は、一般の塗被紙製造に使用される塗被装置、例えば、ブレードコータ、エアナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、バーコータ、カーテンコータ、ダイスロットコータ、グラビアコータ等を用いオンマシン或いはオフマシンによって、基材上に一層或いは多層に分けて塗被することができる。
なお、コート層は、一般的には、乾燥重量で片面に5〜15g/m2程度となるように塗被されることが好ましい。
また、上記のような塗被後の平滑化処理は、通常用いられる平滑化装置、例えば、スーパーカレンダー、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー等が用いられ、白紙光沢が30%以上になるように仕上げられることが好ましい。
本発明の印刷用紙の紙厚は、一般的な印刷用紙として用いられる場合には、70〜150μmの範囲内が好ましく、PPC用途に適用される場合には、80〜110μmの範囲内であることがより好ましい。
本発明の印刷用紙の表面電気抵抗は、1.0×10Ω〜1.0×1011Ωの範囲が好ましく、PPC用途に適用される場合には、1.0×1010Ω〜5.0×1010Ωの範囲内であることがより好ましい。
また、本発明の記録用紙の磁気信号の検出には、磁性ワイアに磁化反転を生じさせる磁界(通常10−100A/m)以上の磁界を印加するための励磁コイル、磁性ワイアからの磁化反転信号を検知するための検知コイル、検知コイルに発生した信号を信号処理する電気回路、及び励磁コイル制御用電気回路が用いられる。
以下に、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(磁性ワイアの作製)
Co:56.5%、Fe:6.5%、Ni:10%、B:16%、Si:11%のコバルト合金の金属ロッドを、Pylexガラス管内に配置し、先端部を誘導加熱により溶解し吐出口より吐出後、冷媒により急速冷却する、Taylor−Ulitovsky方式の磁性ワイア製造装置において、吐出口の形状を変えることで、下記の値の短辺a及び長辺bを有する磁性ワイア1〜3を作製した。
磁性ワイア1(実施例1):短辺a=40μm、長辺b=130μm、(a+b)/2=105μm
磁性ワイア2(比較例1):短辺a=長辺b=60μm、(a+b)/2=60μm
磁性ワイア3(比較例2):短辺a=30μm、長辺b=200μm、(a+b)/2=115μm
(印刷用紙の作製)
下記の方法で、紙厚100μmの印刷用紙を作製した。なお、印刷用紙の作製方法は、上記の各種磁性ワイア1〜3に関し、共通である。
まず、酸素晒で多段漂白して高白色化したLBKPをろ水度470mlC.S.F.まで叩解したパルプ100質量部を原料とし、軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製、TP121)を18質量部となるように添加し、内添サイズ剤としてアルケニル無水コハク酸(ナショナルスターチ・アンド・ケミカル社製、ファイブラン81)を対パルプ当たり0.08質量部配合し、カチオン化澱粉(ナショナルスターチ・アンド・ケミカル社製、Cato Size)を対パルプ当たり0.5質量部配合した。この紙料に、抄紙後のハンター白色度が85%となるように、少量の蛍光染料を配合し、総坪量90g/mで、3層式円網抄紙機で抄紙した。
なお、1層目及び3層目の抄紙において、前記紙料を用いて坪量40g/mの第1紙層及び第3紙層を形成した。また、2層目の抄紙において、前記紙料を適切な濃度に調整した紙料に、25mm長の磁性ワイアを相当数分散させた溶液を用いて、第2磁性ワイア混入層を形成した。ここで、総坪量が90g/mとなるように調整を行った。
前記実施例1の磁性ワイア1を上記の方法に適用して印刷用紙を作製した。
印刷用紙の作製にあたり、抄紙工程中に抄紙機のメッシュ開口部に磁性ワイア1が入り込む問題も生ぜず、製造上の問題はなかった。
得られた印刷用紙を断面SEM観察法により観察したところ、第2磁性ワイア混入層にのみ、5本程度の磁性ワイア1が漉き込まれた印刷用紙を得ることができた。
また、得られた印刷用紙は、検知ゲート(ユニパルス社製、物品監視システムSAS)で検知できる磁気信号を発生することが確認された。
更に、得られた印刷用紙中の磁性ワイア1は外部より視認できず、これにより、美観が損なわれず、且つ、セキュリティー上の問題も少ないことが分かる。
前記比較例1の磁性ワイア2を上記の方法に適用して印刷用紙を作製した。
印刷用紙の作製にあたり、抄紙工程中に抄紙機のメッシュ開口部に磁性ワイア2が入り込む製造上の問題が見られ、また、用紙に穴が開くなどの問題点も見られた。
また、得られた印刷用紙は、検知ゲート(ユニパルス社製、物品監視システムSAS)で検知できる磁気信号を発生することが確認された。
更に、得られた印刷用紙中の磁性ワイア2は外部より視認できず、これにより、美観が損なわれず、且つ、セキュリティー上の問題も少ないことが分かる。
前記比較例2の磁性ワイア3を上記の方法に適用して印刷用紙を作製した。
印刷用紙の作製にあたり、抄紙工程中に抄紙機のメッシュ開口部に磁性ワイア3が入り込む問題も生ぜず、製造上の問題はなかった。
得られた印刷用紙を断面SEM観察法により観察したところ、第2磁性ワイア混入層にのみ、5本程度の磁性ワイア3が漉き込まれた印刷用紙を得ることができた。
また、得られた印刷用紙は、検知ゲート(ユニパルス社製、物品監視システムSAS)で検知できる磁気信号を発生することが確認された。
更に、得られた印刷用紙中の磁性ワイア3は外部より視認しやすく、これにより、美観が損なわれ、且つ、セキュリティー上の問題が生じた。
本発明の磁性ワイアの断面形状を示した図である。 本発明における(1)〜(3)の条件を全て満たす範囲を示すグラフである。 本発明の印刷用紙の一実施態様を示す概略図であり、(a)は上面図であり、(b)はA−A’線断面の拡大図である。
符号の説明
10 磁性ワイア
100 印刷用紙

Claims (3)

  1. 断面形状における短辺をa、長辺をbとした際に、下記の(1)〜(3)の条件を全て満たすことを特徴とする磁性ワイア。
    (1)10μm≦a≦60μm
    (2)b≦150μm
    (3)(a+b)/2≧80μm
  2. 大バルクハウゼン信号を発生するアモルファス磁性体からなることを特徴とする請求項1に記載の磁性ワイア。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の磁性ワイアが漉き込まれてなることを特徴とする印刷用紙。
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