JP2016199456A - 誘電体セラミック材料、その製造方法及び複合誘電体材料 - Google Patents

誘電体セラミック材料、その製造方法及び複合誘電体材料 Download PDF

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Abstract

【解決課題】高誘電率であり、樹脂中への充填性及び分散性に優れた無機充填材となる誘電体セラミック材料を提供すること。【解決手段】ペロブスカイト(ABO3)型複合酸化物粒子からなり、レーザー回折散乱法による体積頻度粒度分布測定における累積値が10%となる粒子径をD10、50%となる粒子径をD50、90%となる粒子径をD90としたときに、((D90−D10)/D50)の値が1.2以下であり、平均粒子径D50が3〜15μmであり、平均粒子径D50より算出される理論比表面積(m2/g)とBET法により測定されるBET比表面積(m2/g)との関係が、0.5≦((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)≦9.0であること、を特徴とする誘電体セラミック材料。【選択図】図1

Description

本発明は、複合誘電体の無機充填材として有用な誘電体セラミック材料、その製造方法及びそれを用いた複合誘電体材料に関するものである。
電子機器の小型化、薄型化及び高密度化のため、多層プリント配線板が多く使用されるようになってきた。この多層プリント配線板は、高誘電率材料からなる層を内層又は表層に設けて実装密度を向上させることにより、電子機器の更なる小型化、薄型化及び高密度化に対応可能となる。
従来、高誘電率材料としては、セラミック粉末を成形した後、これを焼成して得られるセラミック焼結体を用いていたため、その寸法や形状は成形法により制約を受けた。また、焼結体は高硬度で脆性であるため、自由な加工が困難であり、任意の形状や複雑な形状を得るには困難を極めていた。
このため、樹脂中に高誘電率の無機充填材を分散させた複合誘電体が、加工性に優れるため注目されている。例えば、特許文献1では、無機充填材として、粒子径が比較的大きな多孔質のペロブスカイト型複合酸化物粒子を用いている。
特許文献1では、ハンドリング性に問題が生じることはないが、樹脂中に充填できる量がせいぜい30体積%程度であり、得られる複合誘電体の誘電率が低いという問題があった。
そこで、加工性に優れつつ、無機充填材を樹脂中に高充填するために、特許文献2では、無機フィラーの表面積が、同一体積の真球に対し1.05倍以上1.3倍以下である無機フィラー、さらにはこの無機フィラーの粒子形状は六面体の立方体であることが提案されている。また、特許文献3では、粒子の球状度が0.82〜1であり、かつ粉末の10%径と90%径の比が30以下である球状の誘電体粉末が提案されている。さらに特許文献4では、粉砕法による不定形粒子であって、比表面積が9m/cm以下、格子歪が0.2以下である誘電体セラミックス粉末が提案されている。
特開平5−94717号公報 特開2006−134869号公報 特開2003−151352号公報 特開2005−174711号公報
上記特許文献2〜4により、樹脂中への高誘電率の無機充填材の分散及び充填が改良されるものの、更に、充填性及び分散性に優れた高誘電率の無機充填材が求められている。
従って、本発明の目的は、高誘電率であり、樹脂中への充填性及び分散性に優れた無機充填材となる誘電体セラミック材料を提供することにある。
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定の形状及び粒度分布を有するペロブスカイト型複合酸化物粒子が、樹脂への分散性及び充填性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明(1)は、ペロブスカイト(ABO)型複合酸化物粒子からなり、
レーザー回折散乱法による体積頻度粒度分布測定における累積値が10%となる粒子径をD10、50%となる粒子径をD50、90%となる粒子径をD90としたときに、((D90−D10)/D50)の値が1.2以下であり、
平均粒子径D50が3〜15μmであり、
平均粒子径D50より算出される理論比表面積(m/g)とBET法により測定されるBET比表面積(m/g)との関係が、0.5≦((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)≦9.0であること、
を特徴とする誘電体セラミック材料を提供するものである。
また、本発明(2)は、(1)の誘電体セラミック材料と、レーザー回折散乱法による体積頻度粒度分布測定における平均粒子径D50が3μm未満であるペロブスカイト(ABO)型複合酸化物粒子からなる誘電体セラミック材料と、を混合して得られる混合誘電体セラミック材料を提供するものである。
また、本発明(3)は、シュウ酸と、Ba化合物、Ca化合物、Mg化合物及びSr化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(A元素化合物)と、を混合して得られる液(A液)に、Tiの塩化物及びZrの塩化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩化物を含有する液(B液)を添加して反応を行い、Ba、Ca、Mg及びSrからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Ti及びZrからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、を有するシュウ酸塩を得る第一工程と、
該シュウ酸塩を焼成温度1050〜1400℃で焼成して、焼成体を得る第二工程と、
該焼成体を解砕して、レーザー回折散乱法による体積頻度粒度分布測定における累積値が10%となる粒子径をD10、50%となる粒子径をD50、90%となる粒子径をD90としたときに、((D90−D10)/D50)の値が1.2以下であり、平均粒子径D50が3〜15μmであり、平均粒子径D50より算出される理論比表面積(m/g)とBET法により測定されるBET比表面積(m/g)との関係が、0.5≦((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)≦9.0であるペロブスカイト(ABO)型複合酸化物粒子からなる誘電体セラミック材料を得る第三工程と、
を有することを特徴とする誘電体セラミック材料の製造方法を提供するものである。
また、本発明(4)は、(1)の誘電体セラミック材料と、高分子材料と、を含むことを特徴とする複合誘電体材料を提供するものである。
また、本発明(5)は、(2)の混合誘電体セラミック材料と、高分子材料と、を含むことを特徴とする複合誘電体材料を提供するものである。
本発明によれば、高誘電率であり、樹脂中への充填性及び分散性に優れた無機充填材となる誘電体セラミック材料を提供することができる。
実施例2で得られたチタン酸バリウム粒子のSEM写真である。 実施例2で得られたチタン酸バリウム粒子の粒度分布である。 実施例4で得られたチタン酸ストロンチウム粒子のSEM写真である。 実施例4で得られたチタン酸ストロンチウム粒子の粒度分布である。
本発明の誘電体セラミック材料は、ペロブスカイト(ABO)型複合酸化物粒子からなり、
レーザー回折散乱法による体積頻度粒度分布における累積値が10%となる粒子径をD10、50%となる粒子径をD50、90%となる粒子径をD90としたときに、((D90−D10)/D50)の値が1.2以下であり、
平均粒子径D50が3〜15μmであり、
平均粒子径D50より算出される理論比表面積(m/g)とBET法により測定されるBET比表面積(m/g)との関係が、0.5≦((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)≦9.0であること、
を特徴とする誘電体セラミック材料である。
本発明の誘電体セラミック材料は、ペロブスカイト型の複合酸化物粒子からなる、すなわち、ペロブスカイト型の複合酸化物(ABO型複合酸化物)の粒子である。ペロブスカイト型の複合酸化物を構成するA元素(Aサイト元素)は、1種であっても2種以上であってもよく、また、ペロブスカイト型の複合酸化物を構成するB元素(Bサイト元素)は、1種であっても2種以上であってもよい。本発明の誘電体セラミック材料に係るペロブスカイト型複合酸化物としては、BaTiO、CaTiO、SrTiO、BaCa1−xTiO(式中、xは0<x<1)、BaSr1−xZrO(式中、xは0<x<1)、BaTiZr1−x(式中、xは0<x<1)、BaCa1−xTiZr1−y(式中、xは0<x<1、yは0<y<1)、Ba1−x−yCaMgTiZr1-z(式中、xは0<x<1、yは0<y<1、zは0<z<1、0<x+y<1)等が挙げられる。本発明の誘電体セラミック材料であるペロブスカイト型複合酸化物粒子は、ABO型の複合酸化物であれば、特に制限されないが、Aサイト元素がBa、Ca、Mg及びSrからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、且つ、Bサイト元素がTi及びZrからなる群から選ばれる少なくとも1種であるABO型複合酸化物粒子が好ましい。
本発明の誘電体セラミック材料は、レーザー回折散乱法による体積頻度粒度分布測定において、体積累積値が10%となる粒子径をD10、体積累積値が50%となる粒子径をD50(平均粒子径)、体積累積値が90%となる粒子径をD90としたとき、((D90−D10)/D50)の値が1.2以下、好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.30〜0.95である。((D90−D10)/D50)の値が上記範囲にあることにより、個々の粒子が類似した大きさを有することとなり、樹脂への分散安定性及び充填安定性が高くなるため、得られる複合誘電体の誘電特性が優れたものとなる。一方、((D90−D10)/D50)の値が上記範囲を超えると樹脂への分散安定性が悪くなり、充填性が低くなるため、得られる複合誘電体の誘電特性に悪影響を及ぼす。
本発明のセラミック材料の平均粒子径D50は、3〜15μm、好ましくは4〜12μmである。平均粒子径が上記範囲にあることにより、例えば100μm以下程度の厚みを持つ素子への対応が可能となり、樹脂への分散性及び充填性が高くなり、得られる複合誘電体の誘電特性が優れたものとなる。平均粒子径が、上記範囲未満だと製造上のハンドリングが困難なものとなり、また、上記範囲を超えると対応可能な素子サイズに大きな制約が生じる。
本発明の誘電体セラミック材料の平均粒子径D50より算出される理論比表面積(m/g)とBET法により測定されるBET比表面積(m/g)との関係が、0.5≦((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)≦9.0、好ましくは0.6≦((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)≦8.0である。なお、本発明において、理論比表面積Sは、以下の式において算出される値である。
S=6/(ρD)
S(m/g):理論比表面積
ρ(g/cm):真比重
D(μm):平均粒子径D50
本発明の誘電体セラミック材料の形状は、表面がでこぼこした形状である。表面がでこぼこした形状の粒子は、樹脂の消費量が多くなるため、同量の樹脂を用いた場合には、表面がでこぼこした形状の粒子は、表面にでこぼこが少ない滑らかな粒子に比べ、粒子の表面に付着していない樹脂の量を少なくすることができる。そのため、樹脂中の粒子間距離を近づけることができ、充填性を高くすることができる。このため、樹脂複合体として発現する比誘電率等の電気特性に対し、誘電体セラミック材料の特性をより強く反映させることが可能となる。つまり、本発明の誘電体セラミック材料の形状が、表面がでこぼこした形状であることにより、樹脂への分散性及び充填性が高くなることから、樹脂複合体としての電気特性向上や改質に効率よく寄与することができる。そして、表面がでこぼこしている度合が大きくなるほど、形状が真球から離れていくので、((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)の値が大きくなるほど、粒子表面のでこぼこ度合が大きくなる。よって、本発明の誘電体セラミック材料の((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)の値は、粒子表面のでこぼこ度合を示し、0.5≦((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)≦9.0、好ましくは0.6≦((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)≦8.0であるとは、粒子表面のでこぼこの度合いが特定の範囲に規定されているということを指す。
本発明の誘電体セラミック材料のBET比表面積は、好ましくは0.1〜1.1m/g、特に好ましくは0.12〜0.98m/gである。BET比表面積が上記範囲にあることにより、樹脂への分散性及び充填性が高くなる。
本発明の誘電体セラミック材料の塩素含有量は、50質量ppm以下、好ましくは40質量ppm以下であり、下限は0質量ppmに近いことが好ましい。塩素含有量が上記範囲にあることにより、得られる複合誘電体の絶縁特性や寿命特性が優れたものとなる。なお、塩素含有量は、誘電体セラミック材料を純水で煮沸して溶出してくる塩素イオンを、イオンクロマトグラフにより測定し定量した値である。
本発明の誘電体セラミック材料の製造方法は、シュウ酸と、Ba化合物、Ca化合物、Mg化合物及びSr化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(A元素化合物)と、を混合して得られる液(A液)に、Tiの塩化物及びZrの塩化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩化物を含有する液(B液)を添加して反応を行い、Ba、Ca、Mg及びSrからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Ti及びZrからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、を有するシュウ酸塩を得る第一工程と、
該シュウ酸塩を焼成温度1050〜1400℃で焼成して、焼成体を得る第二工程と、
該焼成体を解砕して、レーザー回折散乱法による体積頻度粒度分布測定における累積値が10%となる粒子径をD10、50%となる粒子径をD50、90%となる粒子径をD90としたときに、((D90−D10)/D50)の値が1.2以下であり、平均粒子径D50が3〜15μmであり、平均粒子径D50より算出される理論比表面積(m/g)とBET法により測定されるBET比表面積(m/g)との関係が、0.5≦((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)≦9.0であるペロブスカイト(ABO)型複合酸化物粒子からなる誘電体セラミック材料を得る第三工程と、
を有することを特徴とする誘電体セラミック材料の製造方法である。
本発明の誘電体セラミック材料の製造方法に係る第一工程は、シュウ酸と、Ba化合物、Ca化合物、Mg化合物及びSr化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(A元素化合物)とを混合して得られる液(A液)に、塩化物を含有する液(B液)を添加して反応を行い、A元素及びB元素の複合シュウ酸塩を得る工程である。
第一工程に係るA液は、シュウ酸(H)と、Ba化合物、Ca化合物、Mg化合物及びSr化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の化合物(A元素化合物)と、を混合して得られるスラリー状の液である。なお、本発明では、Ba原子、Ca原子、Mg原子及びSr原子を総称してA原子と、また、Ti原子及びZr原子を総称してB原子と呼ぶ。また、Ba元素、Ca元素、Mg元素及びSr元素を総称してA元素と、また、Ti元素及びZr元素を総称してB元素と呼ぶ。
A液中のシュウ酸の濃度は、シュウ酸(H)換算で、好ましくは0.5〜6.5モル/L、より好ましくは0.7〜6.0モル/L、特に好ましくは1.0〜4.5モル/Lである。また、A液中のA元素の原子換算の合計濃度(Ba元素、Ca元素、Mg元素及びSr元素の原子換算の合計の濃度)は、好ましくは0.4〜4.0モル/L、特に好ましくは0.7〜3.5モル/Lである。また、A液中のA元素の原子換算の総モル数に対するシュウ酸の比(シュウ酸換算のモル数/A元素の原子換算の総モル数)は、好ましくは1.5〜2.5、特に好ましくは1.8〜2.2である。
A液を調製する方法としては、特に制限されず、シュウ酸とA元素化合物とを水溶媒中で接触させることにより調製する方法、それぞれの水溶液を先に調製し、次いで、調製した水溶液を混合する方法等が挙げられる。これらのうち、シュウ酸とA元素化合物とを水溶媒中で接触させることにより調製する方法が、後述するB液との反応性が高くなる点で好ましい。
A元素化合物とは、A元素を有する化合物のことであり、A元素化合物としては、塩化物、水酸化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩等が挙げられる。これらのうち、経済性に優れ、不純成分が残存しにくく反応性が高い点で、A元素化合物は、塩化物、水酸化物又は炭酸塩が好ましい。
第一工程に係るB液は、Tiの塩化物及びZrの塩化物からなる群から選ばれる少なくとも1種又は2種の塩化物を含有する液である。
B液中のB元素の原子換算の合計濃度(Ti元素及びZr元素の原子換算の合計の濃度)は、好ましくは0.1〜2.0モル/L、特に好ましくは0.3〜1.7モル/Lである。
B液を調製する方法としては、特に制限されず、水溶媒にB元素の塩化物を添加して溶解させる方法が挙げられる。
そして、第一工程では、A液にB液を添加して反応を行い、Ba、Ca、Mg及びSrからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素(A元素)と、Ti及びZrからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素(B元素)と、を有するシュウ酸塩(A元素及びB元素の複合シュウ酸塩)を得る。
B液中のB元素の原子換算の総モル数に対するA液中のA元素の原子換算の総モル数の比(A液中のA元素の原子換算の総モル数/B液中のB元素の原子換算の総モル数)は、製造するペロブスカイト型複合酸化物の組成により適宜選択され、好ましくは0.95〜1.30、さらに好ましくは0.98〜1.25、特に好ましくは1.02〜1.20である。B液中のB元素の原子換算の総モル数に対するA液中のA元素の原子換算の総モル数の比が上記範囲にあることにより、化学量論近傍の組成を有する複合シュウ酸塩を再現良く合成することが可能となる。
A液にB液を添加して反応させるときは、添加時間を、好ましくは5〜240分間、特に好ましくは10〜210分間として、上記したB液中のB元素の原子換算の総モル数に対するA液中のA元素の原子換算の総モル数の比(A液中のA元素の原子換算の総モル数/B液中のB元素の原子換算の総モル数)が、0.95〜1.30、さらに好ましくは0.98〜1.25、特に好ましくは1.02〜1.20となるように、A液にB液を添加する。添加時間がこの範囲にあることにより、複合シュウ酸塩の核発生の制御が容易なものとなり、微細かつシャープな粒度分布を有する粒子を得ることができる。
A液にB液を添加して反応を行うときには、A液を撹拌しながらB液をA液に添加して反応を行う。A液とB液を反応させるときの反応温度は、好ましくは60℃以下、特に好ましくは25〜58℃である。反応温度が上記範囲にあることにより、生成される複合シュウ酸塩成分の溶媒への溶出を抑制し、高い反応収率で微細な複合シュウ酸塩のモル比の変化を抑制することができるので、A原子/B原子モル比がより1に近いものが得られ易くなる。
また、A液にB液を添加して反応させるときは、撹拌下にA液にB液を添加する。このときの撹拌速度は、反応容器の大きさ、撹拌羽の径、反応液の量等により適宜選択される。
A液にB液を添加し終わった後は、必要に応じて、反応温度を保ったまま反応溶液の撹拌を続ける熟成を行うことができる。熟成時間は、好ましくは0.1時間以上、特に好ましくは0.1〜2時間である。
反応及び必要に応じて熟成を行った後は、反応溶液中に生成したシュウ酸塩(A元素及びB元素の複合シュウ酸塩)を、ろ過、遠心分離等により固液分離し、水洗し、次いで、必要に応じて、乾燥及び粉砕を行い、シュウ酸塩(A元素及びB元素の複合シュウ酸塩)を得る。
第一工程を行い得られるシュウ酸塩は、A元素及びB元素の複合シュウ酸塩である。第一工程を行い得られる複合シュウ酸塩中のB元素の原子換算の総モル数に対するA元素の原子換算の総モル数の比(A元素の原子換算の総モル数/B元素の原子換算の総モル数)は、製造するペロブスカイト型複合酸化物の組成により適宜選択され、好ましくは0.995〜1.005、さらに好ましくは0.998〜1.002、特に好ましくは0.999〜1.001である。
本発明の誘電体セラミック材料の製造方法に係る第二工程は、第一工程を行い得られたシュウ酸塩(A元素及びB元素の複合シュウ酸塩)を焼成して、焼成体を得る工程である。
第二工程での焼成の際の焼成温度は、1050〜1400℃、好ましくは1060〜1380℃である。焼成温度が上記範囲にあることにより、第三工程を行って得られる誘電体セラミック材料の((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)の値を、0.5≦((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)≦9.0、好ましくは0.6≦((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)≦8.0とすることができ、且つ、塩素含有量を50質量ppm以下、好ましくは40質量ppm以下とすることができる。一方、焼成温度が上記範囲未満だと、塩素含有量が高くなり、また、((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)の値が上限値を超え、でこぼこな形状とはなるが、結晶性が上がらず誘電特性に影響を及ぼす。また、焼成温度が上記範囲を超えると、((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)の値が下限値を下回り、でこぼこな形状とはならず、粒径のバラツキも大きくなるため、樹脂への分散が困難なものとなるか、反応が進みすぎて粒子自体が得られなくなる。なお、塩素含有量は、誘電体セラミック材料を純水で煮沸して溶出してくる塩素イオンを、イオンクロマトグラフにより測定した値である。
第二工程での焼成の際の焼成時間は、好ましくは2〜30時間、特に好ましくは5〜20時間である。また、第二工程での焼成の際の焼成雰囲気は、酸素ガス雰囲気、大気雰囲気等の酸化性雰囲気である。
本発明の誘電体セラミック材料の製造方法に係る第三工程は、第二工程を行い得られた焼成体を解砕して、所定の物性を有するペロブスカイト(ABO)型複合酸化物粒子、すなわち、本発明の誘電体セラミック材料を得る工程である。
第三工程において、焼成体を解砕する方法としては、特に制限されず、所定の物性を有するペロブスカイト(ABO)型複合酸化物粒子が得られる解砕方法であればよい。解砕に用いる解砕装置としては、例えば、乳鉢、ハンマーミル、ジェットミル、パルペライザー、インペラーミル等が挙げられる。解砕条件は、所定の粒子形状及び粒径分布になるようにペロブスカイト(ABO)型複合酸化物粒子を解砕することができる条件であればよく、適宜選択される。また、必要により、解砕したペロブスカイト(ABO)型複合酸化物粒子を篩分けしたり分級等を行ってもよい。
第三工程を行い得られるペロブスカイト(ABO)型複合酸化物粒子(誘電体セラミック材料)は、レーザー回折散乱法による体積頻度粒度分布測定における累積値が10%となる粒子径をD10、50%となる粒子径をD50、90%となる粒子径をD90としたときに、((D90−D10)/D50)の値が1.2以下、好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.30〜0.95である。また、第三工程を行い得られるペロブスカイト(ABO)型複合酸化物粒子(誘電体セラミック材料)の平均粒子径D50は、3〜15μm、好ましくは4〜12μmである。また、第三工程を行い得られるペロブスカイト(ABO)型複合酸化物粒子(誘電体セラミック材料)の平均粒子径D50より算出される理論比表面積(m/g)とBET法により測定されるBET比表面積(m/g)との関係は、0.5≦((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)≦9.0、好ましくは0.6≦((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)≦8.0である。また、第三工程を行い得られるペロブスカイト(ABO)型複合酸化物粒子(誘電体セラミック材料)のBET比表面積は、好ましくは0.1〜1.1m/g、特に好ましくは0.12〜0.98m/gである。また、第三工程を行い得られるペロブスカイト(ABO)型複合酸化物粒子(誘電体セラミック材料)の塩素含有量は、50質量ppm以下、好ましくは40質量ppm以下である。
本発明の誘電体セラミック材料の製造方法において、本発明の誘電体セラミック材料が生成する過程を説明する。第二工程では、第一工程を行い得られたA元素及びB元素の複合シュウ酸塩が焼成されることにより、その昇温過程において、先ず、A元素及びB元素の複合シュウ酸塩の粒子から、シュウ酸の熱分解により生ずる炭酸ガスが放出され、多数の孔を有するペロブスカイト型複合酸化物が得られる。次いで、この多数の孔を有するペロブスカイト型複合酸化物が、更に、1050℃以上、好ましく1060℃以上の高温で続いて焼成されることにより、複数の一次粒子の焼結体が多数凝集した状態の二次粒子になる。次いで、そのような二次粒子が解砕されることにより、複数の一次粒子が焼結し且つシュウ酸が消失してできた孔が表面に形成されているペロブスカイト型複合酸化物粒子が得られる。本発明の誘電体セラミック材料の製造方法では、このような生成過程を経るので、表面がでこぼこした形状の粒子、すなわち、0.5≦((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)≦9.0、好ましくは0.6≦((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)≦8.0であり、且つ、((D90−D10)/D50)の値が1.2以下、好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.30〜0.95であり、且つ、平均粒子径D50は、3〜15μm、好ましくは4〜12μmであるという粒子形状及び粒径分布を有するペロブスカイト型複合酸化物粒子が得られる。
本発明の誘電体セラミック材料は、単独で樹脂へ充填される無機充填材として用いられてもよいし、あるいは、レーザー回折散乱法による体積頻度粒度分布測定における平均粒子径D50が3μm未満であるペロブスカイト(ABO)型複合酸化物微粒子からなる微粒子誘電体セラミック材料と、混合させて、混合誘電体セラミック材料として用いられてもよい。つまり、本発明の混合誘電体セラミック材料は、本発明の誘電体セラミック材料と、レーザー回折散乱法による体積頻度粒度分布測定における平均粒子径D50が3μm未満であるペロブスカイト(ABO)型複合酸化物微粒子からなる微粒子誘電体セラミック材料と、を混合して得られる混合誘電体セラミック材料である。本発明の混合誘電体セラミック材料において、本発明の誘電体セラミック材料の混合量:微粒子誘電体セラミック材料の混合量の比は、質量比で、好ましくは3:7〜8:2、特に好ましくは4:6〜7:3である。
本発明の誘電体セラミック材料又は本発明の混合誘電体セラミック材料を、樹脂中に分散させて、複合誘電体を得ることができる。つまり、本発明の誘電体セラミック材料又は本発明の混合誘電体セラミック材料は、樹脂に分散させて用いられる、複合誘電体の無機充填材用のセラミック材料である。
本発明の第一の形態の複合誘電体材料は、本発明の誘電体セラミック材料と、高分子材料と、を含むことを特徴とする複合誘電体材料である。また、本発明の第二の形態の複合誘電体材料は、本発明の混合誘電体セラミック材料と、高分子材料と、を含むことを特徴とする複合誘電体材料である。
本発明の第一の形態の複合誘電体材料及び本発明の第二の形態の複合誘電体材料に用いられる樹脂としては、複合誘電体用の樹脂として用いられるものであれば、特に制限されず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又は光感光性樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、シアネート樹脂類、ビスマレイミド類、ビスマレイミド類とジアミンとの付加重合物、多官能性シアン酸エステル樹脂、二重結合付加ポリフェニレンオキサイド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルベンジルエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、フマレート樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ノボラック樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。光感光性樹脂としては、例えば、エチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体(感光性オリゴマー)と光重合性化合物(感光性モノマー)と光重合開始剤を含むもの、エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤とを含むもの等が挙げられる。感光性オリゴマーとしては、エポキシ樹脂にアクリル酸を付加したもの、それをさらに酸無水物と反応させたものやグリシジル基を有する(メタ)アクリルモノマーを含む共重合体に(メタ)アクリル酸を反応させたもの、さらにそれに酸無水物を反応したもの、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーを含む共重合体に(メタ)アクリル酸グリシジルを反応させたもの、さらにそれに酸無水物を反応したもの、無水マレイン酸を含む共重合体に水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーあるいはグリシジル基を有する(メタ)アクリルモノマーを反応させたもの等が挙げられる。これらは、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
本発明の誘電体セラミック材料は、上記の粒子形状及び粒径分布を有するので、また、本発明の混合誘電体セラミック材料は、上記の粒子形状及び粒径分布を有する本発明の誘電体セラミック材料を含んでいるので、樹脂への充填性及び分散性が高くなる。つまり、本発明の第一の形態の複合誘電体材料及び本発明の第二の形態の複合誘電体材料は、複合誘電体の無機充填材として、本発明の誘電体セラミック材料又は本発明の混合誘電体セラミック材料を用いることにより、誘電体セラミック材料の充填率及び分散性が高い複合誘電体を得ることができる。
本発明の誘電体セラミック材料又は本発明の混合誘電体セラミック材料は、複合誘電体の無機充填材として使用されることにより、静電容量増加、電磁波吸収や電界緩和、誘電損失や温度特性の改質等の効果が得られるため、例えば、基板材料、内蔵コンデンサ素子、フィルムコンデンサ、電磁波吸収体、半導体回路封止材、伝送ケーブル等の絶縁被覆材等に用いられる。つまり、本発明の第一の形態の複合誘電体材料及び本発明の第二の形態の複合誘電体材料は、静電容量増加、電磁波吸収や電界緩和、誘電損失や温度特性の改質等の効果が得られるため、例えば、基板材料、内蔵コンデンサ素子、フィルムコンデンサ、電磁波吸収体、半導体回路封止材、伝送ケーブル等の絶縁被覆材等に用いられる。
以下に実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)平均粒子径
レーザー回折散乱法により測定される、体積頻度粒度分布測定により求められる積算90%(D90)、50%(D50)、10%(D10)の粒径を求めた。
(2)比表面積
BET比表面積はBET法により求めた。また、理論比表面積は、下記式より算出した。
S=6/(ρD)
S(m/g):理論比表面積
ρ(g/cm):真比重
D(μm):平均粒子径D50
(3)c/a軸比
X線回折法によって測定し、スペクトル解析から格子定数c及びaを算出した。
(4)塩素含有量
試料を純水で煮沸し、上澄み液をイオンクロマトグラフにより測定した。
(実施例1)
<シュウ酸バリウムチタニルの製造>
塩化バリウム2水塩130gと、シュウ酸2水塩130gに、純水720gを加えて、温度55℃にて、0.5時間撹拌して得られた懸濁液をA液とした。
また、TiO換算で15.3質量%の四塩化チタン水溶液256gに純水560gを加えて希釈したものをB液とした。
次いで、撹拌しながら反応温度55℃で30分間かけてB液をA液に添加し、添加後は撹拌を続けながら0.5時間の熟成を行った。熟成終了後、ろ過してシュウ酸バリウムチタニルを回収した。
次いで、回収したシュウ酸バリウムチタニルを純水でリパルプし、80℃で24時間静置乾燥してシュウ酸バリウムチタニルの粉末を得た。
<チタン酸バリウムの製造>
得られたシュウ酸バリウムチタニルの粉末をアルミナ坩堝に20g仕込み、5時間かけて昇温して、1075℃で20時間焼成を行い、チタン酸バリウムを得た。得られたチタン酸バリウムを乳鉢で解砕してチタン酸バリウム粒子を得た。得られたチタン酸バリウム粒子の諸物性を表1に示す。
(実施例2)
<シュウ酸バリウムチタニルの製造>
実施例1と同じ方法でシュウ酸バリウムチタニルの粉末を得た。
<チタン酸バリウムの製造>
焼成温度を1200℃としたこと以外は、実施例1と同じ方法で行いチタン酸バリウム粒子を得た。得られたチタン酸バリウム粒子の諸物性を表1に示す。また、得られたチタン酸バリウム粒子のSEM写真を図1に、粒度分布を図2に示す。
(実施例3)
<シュウ酸バリウムチタニルの製造>
実施例1と同じ方法でシュウ酸バリウムチタニルの粉末を得た。
<チタン酸バリウムの製造>
焼成温度を1250℃としたこと以外は、実施例1と同じ方法で行いチタン酸バリウム粒子を得た。得られたチタン酸バリウム粒子の諸物性を表1に示す。
(実施例4)
<シュウ酸ストロンチウムチタニルの製造>
水酸化ストロンチウム8水塩325gと、シュウ酸2水塩300gに、純水550gを加えて、温度55℃にて、0.5時間撹拌して得られた懸濁液をA液とした。
また、TiO換算で15.3質量%の四塩化チタン水溶液590gに純水430gを加えて希釈したものをB液とした。
次いで、撹拌しながら反応温度55℃で180分間かけてB液をA液に添加し、添加後は撹拌を続けながら0.5時間の熟成を行った。熟成終了後、ろ過してシュウ酸ストロンチウムチタニルを回収した。
次いで、回収したシュウ酸ストロンチウムタニルを純水でリパルプし、80℃で24時間静置乾燥してシュウ酸ストロンチウムチタニルの粉末を得た。
<チタン酸ストロンチウムの製造>
得られたシュウ酸ストロンチウムチタニルの粉末をアルミナ坩堝に20g仕込み、5時間かけて昇温して、1375℃で15時間焼成を行い、チタン酸ストロンチウムを得た。得られたチタン酸ストロンチウムを乳鉢で解砕してチタン酸ストロンチウム粒子を得た。得られたチタン酸ストロンチウム粒子の諸物性を表1に示す。また、得られたチタン酸ストロンチウム粒子のSEM写真を図3に、粒度分布を図4に示す。
(比較例1)
<シュウ酸バリウムチタニルの製造>
実施例1と同じ方法でシュウ酸バリウムチタニルの粉末を得た。
<チタン酸バリウムの製造>
焼成温度を1450℃としたこと以外は、実施例1と同じ方法で行った。しかし、生成したチタン酸バリウムが強固に焼結し、焼成容器への固着が生じてしまったため、チタン酸バリウム粒子を得ることができなかった。
(比較例2)
<シュウ酸バリウムチタニルの製造>
実施例1と同じ方法でシュウ酸バリウムチタニルの粉末を得た。
<チタン酸バリウムの製造>
焼成温度を1000℃としたこと以外は、実施例1と同じ方法で行いチタン酸バリウム粒子を得た。得られたチタン酸バリウム粒子の諸物性を表1に示す。
1)a値:(D90−D10)/D50
2)b値:(BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積
(実施例5〜7及び比較例3)
実施例1〜3及び比較例2で得られたチタン酸バリウム粒子と、充填補助材としてのチタン酸バリウム微粒子(日本化学工業社製、パルセラムBT−4M、平均粒子径0.7μm、BET比表面積2.0m/g)を、表2に示す質量割合で市販のミキサーで混合し、実施例5〜7及び比較例3の混合誘電体セラミック材料を得た。
次いで、表2に示す配合割合で、実施例5〜7及び比較例3の混合誘電体セラミック材料と、エポキシ樹脂とを混練し、エポキシ樹脂組成物を調製した。表2中、混練が問題なく行え、均一なエポキシ樹脂組成物が得られたものを○と評価し、混練は行えるが、エポキシ樹脂組成物の増粘により泡が生じたり、流動性が著しく悪化したものを△と評価し、混練が困難であったものを×と評価した。
なお、ここで使用したエポキシ樹脂は、99質量%の熱硬化性エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名:JER(登録商標)828EL、分子量約370、比重1.17、25℃での公称粘度120〜150P)と、1重量%のイミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業株式会社製、商品名:2E4MZ)とからなるものである。
(実施例8)
実施例4で得られたチタン酸ストロンチウム粒子と、充填補助材としてのチタン酸ストロンチウム微粒子(日本化学工業社製、パルセラムSTG、平均粒子径0.8μm、BET比表面積2.1m/g)を、表2に示す質量割合で市販のミキサーで混合し、実施例8の混合誘電体セラミック材料を得た。
次いで、表2に示す配合割合で、実施例8の混合誘電体セラミック材料と、上記実施例5〜7と同じエポキシ樹脂とを混練し、エポキシ樹脂組成物を調製した。表2中、混練が問題なく行え、均一なエポキシ樹脂組成物が得られたものを○と評価し、混練は行えるが、エポキシ樹脂組成物の増粘により泡が生じたり、流動性が著しく悪化したものを△と評価し、混練が困難であったものを×と評価した。
表2の結果より、実施例5〜8の誘電体セラミック材料を使用したエポキシ樹脂組成物では、いずれも40体積%以上充填することができた。これに対して、比較例3では、誘電体セラミック材料の充填率40体積%で、流動性が悪化してしまい、充填は困難なものとなった。
次いで、上記混練の評価で○が得られた誘電体セラミック材料充填率が40〜60体積%のエポキシ樹脂組成物について誘電特性を評価した。
先ず、エポキシ樹脂組成物を140℃、5時間で硬化させて複合誘電体試料を作製した。次いで、得られた複合誘電体試料の両面に、蒸着法にて厚さ30nmの白金膜を電極として形成した後、インピーダンスアナライザー(ソーラートロン社製1255B)、インターフェース(ソーラートロン社製1296)にて、周波数1kHz、印加電圧1Vにおける誘電率及び誘電損失の測定を行った。結果を表3に示す。
表3の結果より、充填率が高くなっても実用上問題のない誘電特性が得られていることが判った。

Claims (16)

  1. ペロブスカイト(ABO)型複合酸化物粒子からなり、
    レーザー回折散乱法による体積頻度粒度分布測定における累積値が10%となる粒子径をD10、50%となる粒子径をD50、90%となる粒子径をD90としたときに、((D90−D10)/D50)の値が1.2以下であり、
    平均粒子径D50が3〜15μmであり、
    平均粒子径D50より算出される理論比表面積(m/g)とBET法により測定されるBET比表面積(m/g)との関係が、0.5≦((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)≦9.0であること、
    を特徴とする誘電体セラミック材料。
  2. 前記ペロブスカイト型複合酸化物粒子のBET比表面積が0.1〜1.1m/gであることを特徴とする請求項1記載の誘電体セラミック材料。
  3. 前記ペロブスカイト型複合酸化物粒子が、ABO型のAサイト元素がBa、Ca、Mg及びSrからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、且つ、Bサイト元素がTi及びZrからなる群から選ばれる少なくとも1種であるペロブスカイト型複合酸化物粒子であることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載の誘電体セラミック材料。
  4. 前記ペロブスカイト型複合酸化物粒子がシュウ酸塩法により得られたものであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の誘電体セラミック材料。
  5. 前記ペロブスカイト型複合酸化物粒子の塩素含有量が、50質量ppm以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の誘電体セラミック材料。
  6. 前記ペロブスカイト型複合酸化物粒子の形状が無定形であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の誘電体セラミック材料。
  7. 請求項1〜6いずれか1項記載の誘電体セラミック材料と、レーザー回折散乱法による体積頻度粒度分布測定における平均粒子径D50が3μm未満であるペロブスカイト(ABO)型複合酸化物微粒子からなる誘電体セラミック材料と、を混合して得られる混合誘電体セラミック材料。
  8. 複合誘電体の無機充填材用であることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の誘電体セラミック材料。
  9. 複合誘電体の無機充填材用であることを特徴とする請求項7記載の混合誘電体セラミック材料。
  10. シュウ酸と、Ba化合物、Ca化合物、Mg化合物及びSr化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(A元素化合物)と、を混合して得られる液(A液)に、Tiの塩化物及びZrの塩化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩化物を含有する液(B液)を添加して反応を行い、Ba、Ca、Mg及びSrからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、Ti及びZrからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、を有するシュウ酸塩を得る第一工程と、
    該シュウ酸塩を焼成温度1050〜1400℃で焼成して、焼成体を得る第二工程と、
    該焼成体を解砕して、レーザー回折散乱法による体積頻度粒度分布測定における累積値が10%となる粒子径をD10、50%となる粒子径をD50、90%となる粒子径をD90としたときに、((D90−D10)/D50)の値が1.2以下であり、平均粒子径D50が3〜15μmであり、平均粒子径D50より算出される理論比表面積(m/g)とBET法により測定されるBET比表面積(m/g)との関係が、0.5≦((BET比表面積−理論比表面積)/理論比表面積)≦9.0であるペロブスカイト(ABO)型複合酸化物粒子からなる誘電体セラミック材料を得る第三工程と、
    を有することを特徴とする誘電体セラミック材料の製造方法。
  11. 前記A液は、前記シュウ酸と前記Ba化合物、Ca化合物、Mg化合物及びSr化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(A元素化合物)とを水溶媒中で接触させることにより得られたものであることを特徴とする請求項10記載の誘電体セラミック材料の製造方法。
  12. 前記A元素化合物が、塩化物、水酸化物又は炭酸塩であることを特徴とする請求項10又は11いずれか1項記載の誘電体セラミック材料の製造方法。
  13. 前記第一工程での反応温度が60℃以下であることを特徴とする請求項10〜12いずれか1項記載の誘電体セラミック材料の製造方法。
  14. 前記B液の添加時間を5〜240分間として、前記B液中のTi元素及びZr元素の原子換算の総モル数に対する前記A液中のBa元素、Ca元素、Mg元素及びSr元素の原子換算の総モル数の比を0.95〜1.30とすることを特徴とする請求項10〜13いずれか1項記載の誘電体セラミック材料の製造方法。
  15. 請求項1〜6いずれか1項記載の誘電体セラミック材料と、高分子材料と、を含むことを特徴とする複合誘電体材料。
  16. 請求項7記載の混合誘電体セラミック材料と、高分子材料と、を含むことを特徴とする複合誘電体材料。
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