JP2004323344A - チタン酸カルシウムおよびその製造方法 - Google Patents

チタン酸カルシウムおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 電子機器の小型化を可能とする小型のコンデンサに必要な薄膜の誘電体磁器を形成可能な、超微粒子や凝集粒が少なく、粒度分布がシャープで、分散性に優れるとともに、特に、結晶性が高く、電気特性に優れたチタン酸カルシウムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 ペロブスカイト結晶構造を有し、正方柱または正方柱類似の形状を有するチタン酸カルシウム粉末であり、塩基性化合物の存在するアルカリ性溶液中で、飽和溶解度以上のカルシウム塩と酸化チタンゾルを混合、反応させることにより製造することができる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、誘電材料、圧電材料、焦電材料、積層セラミックコンデンサ等の電子材料等に用いられるチタン酸カルシウムおよびその製造方法に関する。
詳しくは、単結晶で粒径が小さく、分散性に優れ、電気特性に優れたチタン酸カルシウム粉末およびその製造方法に関する。
ペロブスカイト型結晶構造のチタン系複合酸化物は、誘電性、焦電性、圧電性などの優れた電気特性を示すため、電子材料として広く用いられている。近年、電子部品の高性能化、小型化、軽量化が進んでいることから、チタン系複合酸化物の、高分散化、高結晶化、微粒子化が望まれている。
ここで、ペロブスカイト結晶構造のチタン酸カルシウムは、チタン系複合酸化物の一つとして、温度補償用磁器コンデンサ材料として多く用いられている。また、チタン酸バリウム系高誘電率コンデンサのキュリー点での急激な誘電率の変化を抑制する添加剤としても用いられている。
そのため、他のチタン系複合酸化物と同様に、粒径が小さく、分散性に優れ、結晶性の高い、電気特性に優れたチタン酸カルシウムの開発が望まれている
電子材料に用いられるチタン系複合酸化物粒子を製造する方法としては、固相法、蓚酸法、水熱合成法、アルコシド法などが一般に知られており、これらの合成法の改良が盛んに行われている。
しかし固相法は製造コストが低い反面、生成したチタン系複合酸化物粒子の粒径が大きいために、粉砕を行う必要が生じる。粉砕を行うと、粒度分布が広くなる上、結晶構造に歪みが生じて、電気特性が低下するという問題が生じる。
一方、蓚酸塩法は固相法よりも小さな粒子が得られるという利点がある反面、蓚酸に由来する炭酸が残り、電気的特性が低下する。
また、水熱合成法は高温高圧条件下で粒子の合成を行うため、専用設備が必要となり、コストが高くなるという問題がある。
アルコキシド法では、水熱合成法よりも微粒子のチタン系複合酸化物が得られるが、粒子内部に取り込まれた水に起因する水酸基が残留してしまうために結晶の欠陥が多く、電気的特性に優れたチタン系複合酸化物が得られにくい。また、アルコシキド法は炭酸基が残留するという欠点がある。
例えば、特許文献1あるいは特許文献2において開示された技術を使用すれば、比較的安価に、サブミクロン粒子が少ない微粒子が得られる。しかしながら、超微粒子(0.01μm以下)や凝集粒がさらに少なく、分散性に優れ、結晶性が高く、電気特性に優れた粒子を提供し、電子部品の小型化、軽量化および高性能化に対応することが望まれる。
特許文献3および特許文献4において、球形のチタン酸カルシウムを製造する方法が開示されている。しかし、さらに結晶性が高く、優れた電気特性を有するチタン酸カルシウムを提供することが望まれる。
国際公開00/35811号パンフレット 国際公開03/004416号パンフレット 特開昭59−45927号公報 特開平5−178617号公報
本発明の課題は、超微粒子や凝集粒が少なく、粒度分布がシャープで、分散性に優れるとともに、特に、結晶性が高く、電気特性に優れたチタン酸カルシウムおよびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前述の課題を鋭意検討した結果、塩基性化合物の存在するアルカリ性溶液中で、飽和溶解度以上のカルシウム塩と酸化チタンゾルを混合、反応することにより、結晶性が高く、優れた特性を有するチタン酸カルシウム粉末が得られることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の構成からなる。
[1]ペロブスカイト結晶構造を有し、正方柱または正方柱類似の形状を有するチタン酸カルシウム粉末。
[2]単結晶である前記1に記載のチタン酸カルシウム粉末。
[3]チタン酸カルシウム結晶の長辺と短辺の比が1.1〜6である前記1または前記2に記載のチタン酸カルシウム粉末。
[4]長辺が単位格子(010)面に伸びている前記1乃至3のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末。
[5]一次粒子の平均粒径をD1、二次粒子の平均粒径をD2としたときのD2/D1値が1以上3以下である前記1乃至4のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末。
[6]二次粒子の粒度分布において、最小粒径から10%の粒径をD3としたときに、D3/D2値が0.1以上0.9以下である前記1乃至5のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末。
[7]二次粒子の粒度分布において、最小粒径から90%の粒径をD4としたときに、D4/D2値が1.1以上10以下である前記1乃至6のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末。
[8]炭酸カルシウムの含有量が、3質量%以下である前記1乃至7のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末。
[9]比表面積が1〜10m2/gである前記1乃至8のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末。
[10]900℃から1200℃の範囲のいずれかの温度で焼成した場合に、比表面積の減少量が8m2/g以下となる前記1乃至9のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末。
[11]塩基性化合物の存在するアルカリ性水溶液中に、酸化チタンゾルと飽和溶解度以上のカルシウム塩を投入して反応させる前記1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末の製造方法。
[12]塩基性化合物の存在するアルカリ性溶液飽和溶解度に対して、10質量倍以上10000質量倍以下の重量のカルシウム塩を投入して反応させる前記11に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
[13]カルシウム塩が水酸化物である前記11または12に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
[14]反応液中の炭酸基のCO2換算濃度を500ppm以下に制御して反応させる工程を含む前記11乃至13のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
[15]100℃以上に煮沸する工程を4時間以上含む前記11乃至14に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
[16]室温〜焼成温度の温度範囲で、大気圧下または減圧下で、不純物を蒸発、及び/または熱分解により気体として除去する工程を含む前記11乃至15のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
[17]酸化チタンゾルがチタン化合物を酸性溶液中で加水分解して得たものである前記11乃至16のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
[18]酸化チタンゾルがブルーカイト型結晶を含有するものである前記11乃至17のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
[19]塩基性化合物が、大気圧下または減圧下で、蒸発、昇華、及び/または熱分解により気体となる物質である前記11乃至18のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
[20]塩基性化合物が、有機塩基である前記11乃至19のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
[21]塩基性化合物が、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドである前記11乃至20のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
[22]前記1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末を含む誘電材料。
[23]前記1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末を含むペースト。
[24]前記1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末を含むスラリー。
[25]前記1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末を含む薄膜状形成物。
[26]前記1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末を含む誘電体磁器。
[27]前記1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末を含む焦電体磁器。
[28]前記1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末を含む圧電体磁器。
[29]請求26に記載の誘電体磁器を含むコンデンサ。
[30]前記25乃至29に記載の薄膜状形成物、磁器およびコンデンサから成る群から選ばれる少なくとも1種を含む電子機器。
[31]前記25乃至28に記載の薄膜状形成物または磁器を1種または2種以上含むセンサー。
[32]前記1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末を用いた誘電体フィルム。
[33]前記32に記載の誘電体フィルムを用いたコンデンサ。
本発明のチタン酸カルシウム粒子は、結晶性が高く、微粉で、凝集が少ない。よって、これから得られる誘電体磁器、焦電体磁器、圧電体磁器などは優れた特性を有する電子材料となり、さらに、これらを電子機器に用いることにより、電子機器の小型化、軽量化および高性能化が可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のチタン酸カルシウムは、ペロブスカイト結晶構造を有し、正方柱または正方柱に似た形状を有し、単結晶であり、超微粒子や凝集粒が少なく、粒度分布がシャープで、分散性に優れているという特徴を有する。
本発明のチタン酸カルシウムは、一般式ABO3で表されるペロブスカイト結晶構造を有する化合物であり、AをCaが、BをTiがともに占めたCaTiO3をいう。結晶構造は、X線回折測定により知ることができる。
本発明のチタン酸カルシウムの形状は、走査型電子顕微鏡による拡大観察によって知ることができる。本発明の、ペロブスカイト結晶構造を有し、正方柱または正方柱類似の形状であるチタン酸カルシウム粉末は、柱状の6面体形状であり、その底面は正方形に近い形状で、その側面は長方形に近い形状を有している。それぞれの面はほぼ直角に交わっているが、少なくとも1つの角が若干縁取り丸みを帯びている場合や、欠けている場合もある。それぞれの面が直角に交わっている粒子の個数は、粉末全体の80%以上であり、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。角が若干縁取り、丸みをおびている場合の曲率半径は10μm以上である。
走査型電子顕微鏡で観察した本発明のチタン酸カルシウム粒子は、短辺の長さが0.2μm〜0.6μm、長辺の長さが0.2μm〜1.2μmの粒子がほとんどであったが、そのような粒子の比率は80%以上であり、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。
また、チタン酸カルシウム粒子ごとの最大の長辺および最小の短辺を測定することにより長辺と短辺の比が求まるが、本発明のチタン酸カルシウム製造方法では、長辺と短辺の比が1.1〜6の正方柱状ものが安定に製造できる。チタン酸カルシウム結晶の長辺と短辺の比が大きいほど、電気特性を発現するペロブスカイト構造の長手方向に成長していることであり好ましい。
本発明のチタン酸カルシウムが、単結晶であり、さらにその長辺が単位格子(010)面に伸びた単結晶であることは、透過型電子顕微鏡による電子線回折像の解析によって知ることができる。
単結晶であることは、結晶性が極めて高いことを意味する。長辺が単位格子(010)面の方向に伸びているのは、電気特性を発現するペロブスカイト構造の長手方向に成長していることである。そのため、誘電性、圧電性、焦電性などの電気特性が非常に優れている。
本発明のチタン酸カルシウムの比表面積は、1〜10m2/g、好ましくは1〜8m2/g、より好ましくは1〜6m2/gの範囲にある。比表面積は、BET法により測定される。電子材料の小型化のためには、比表面積が1m2/g以上の粒子とする必要があるが、比表面積が100m2/gを超えると粒子同士が凝集しやすくなる上、該粉体の取り扱いが難しくなる。
本発明のチタン酸カルシウムは、微粒子かつ粒度分布がシャープで、凝集の少ない分散性に優れた粒子である。
ここで一次粒子の平均粒径D1は、BET法で求めた比表面積を、粒子を球形と換算して(I)式より求めることができる。
D1=6/ρS (I)
(式中、ρは粒子の真比重、Sは粒子の比表面積である。)
凝集した粒子の二次粒子径は、チタン酸カルシウムを溶媒中に分散し、粒度分布計にて測定する。一般に、粒度分布計は、測定する粒度分布範囲に適したものが選定される。本発明のチタン酸カルシウムの二次粒子径は、遠心沈降法やマイクロトラック法などで精度よく測定できる。この方法により、重量基準で二次粒子の粒度分布を測定し、平均粒径D2、最小から10%の粒径D3、90%の粒径D4を求める。ここで求まる粒径は球形換算径である。
一次粒子の平均粒径D1と二次粒子の平均粒径D2のD2/D1比は、測定した粒子がともに球形であれば、理論上は1が最小になる。D2/D1比が大きくなればなるほど、一次粒子が凝集し、分散性が悪くなっていることを示している。本発明のチタン酸カルシウムのD2/D1比は、1〜3であり、好ましくは1〜2.7、より好ましくは1〜2.5である。
本発明のチタン酸カルシウムの粒径分布D3/D2比およびD4/D2比より、二次粒子の粒径分布を知ることができる。それぞれの値が1に近づくほど、二次粒子の粒径分布がシャープになり好ましい。
本発明におけるD3/D2値は、0.1以上0.9以下であり、好ましくは0.15以上0.7以下、より好ましくは0.2以上0.5以下である。またD4/D2値は、1.1以上10以下、好ましくは1.2以上8以下、より好ましくは1.4以上5以下である。
本発明のチタン酸カルシウムに含まれる炭酸カルシウムは、0〜3質量%であり、好ましくは0〜2質量%、より好ましくは0〜1質量%である。チタン酸カルシウムに含まれる炭酸カルシウム量は、赤外吸収スペクトルを測定し知ることができる。具体的には、880cm-1付近の標準炭酸カルシウムのピーク面積強度と本発明のチタン酸カルシウムのピーク面積強度を比較して求めることができる。
また、本発明のチタン酸カルシウムは、焼成工程において粒成長しづらく、比表面積が低下しにくいという特徴を有している。一般に微粒子のチタン系複合酸化物は、焼成工程において粒成長し易いため、比表面積が著しく低下する傾向にあるが、本発明のチタン酸カルシウムにはそのような傾向がみられない。例えば、本発明のチタン酸カルシウム粉末を、900〜1200℃で焼成した場合、比表面積の減少量は8m2/g以下であり、好ましくは5m2/g以下、より好ましくは2m2/g以下である。
次に、本発明の製造方法について説明する。本発明のチタン酸カルシウムを製造する方法は、塩基性化合物の存在するアルカリ性溶液中に、酸化チタンゾルと飽和溶解度以上のカルシウム塩を投入して反応させ、チタン酸カルシウムを製造する。
反応は、加熱、撹拌して行うことができ、これが最も工業的である。反応液中の炭酸基(炭酸種として、CO2、H2CO3、HCO3 -、及びCO3 2-を含む)は、水酸化カルシウムと反応して安定な炭酸カルシウムを生成する。炭酸カルシウムは、酸化チタンと反応せずに、チタン酸カルシウム中に、不純物として残存してしまう。したがって、反応溶液中の炭酸基の濃度(CO2換算値。以下、特に断りのない限り同様である。)を制御することにより、純度の高いチタン酸カルシウムを安定に製造する。
反応溶液中の炭酸基のCO2換算濃度は500質量ppm以下であり、好ましくは0〜200質量ppm、より好ましくは0〜100質量ppmである。
反応液中の炭酸基の濃度を減少させるために、塩基性化合物を溶解する前の水を、溶解直前に加熱処理して脱炭酸するのが好ましい。また、反応溶液は、アルカリ性のため、空気中の二酸化炭素を吸収しやすい。そのため、反応液が空気と接触しないように、密封もしくは不活性ガスなどを吹き込みながら、反応を行うのが好ましい。
結晶性を高めるには、反応温度をできるだけ高くするのが好ましい。反応温度を高くする場合、100℃〜溶液の臨界温度までの水熱反応が可能であるが、このためには、オートクレーブ等の安全に配慮した高圧設備を必要とする。従って、常圧で100℃以上に煮沸し、温度を保持して行うのが好ましい。また機械的に撹拌すると、原料同士が混合され好適である。反応時間は、3時間以上であり、好ましくは4時間以上、より好ましくは6時間以上である。
一般的に、不純物が残存することは、チタン酸カルシウムの結晶性を低下させるばかりでなく、磁器とした際に誘電材料、圧電材料等の特性を低下させる等、電子材料として使用した際にさまざまな電気特性に悪影響を与える。
ここで不純物としては、チタン酸カルシウム以外の全ての化合物を言い、微量の金属イオンや陰イオンなどの成分も含まれる。
不純物イオンを除去するために、反応終了後のスラリーを電気透析、イオン交換、水洗、酸洗したり、浸透膜で処理するなど種々の方法がある。しかしながら、これらの方法では、不純物イオンと同時にチタン酸カルシウムに含まれるカルシウムもイオン化してスラリー中に一部溶解する場合があるため、所望の組成比とすることが難しくなるだけでなく、結晶に欠陥が生じたりして、結晶性が低下する。
したがって、不純物の少ない原料の選定、反応、焼成における不純物の混入防止が必要とされる。それに加えて、室温〜焼成温度の温度範囲で、大気圧下または減圧下で、不純物を蒸発、昇華、及び/または熱分解により気体として除去することが好ましい。
焼成は、一般にチタン系複合酸化物の結晶性を向上させるために行われるが、一方では、不純物を、蒸発、昇華、及び/または熱分解により気体として除去することができる。この方法により除去できる不純物としては、カーボン数の低い有機アミン、アンモニア塩の水酸化物などの有機塩基、及び原料中に含まれる不純物としての微量の有機物、炭酸塩などが挙げられる。通常、焼成は350〜1200℃で行われる。焼成雰囲気は特に制限はなく、通常、大気中もしくは減圧中で行われる。
尚、スラリーの固液分離を行ってから焼成を行うのが、焼成での熱エネルギーの低減や結晶性の向上の観点から好ましい。固液分離には、粒子の沈降、濃縮、ろ過、及び/または乾燥、解砕の工程が含まれる。沈降、濃縮、ろ過により液中に溶解する不純物が除去できる。ここで、沈降速度、あるいはろ過速度を変えるために凝集剤や分散剤を用いてもよい。該凝集剤あるいは分散剤は、蒸発、昇華、及び/または熱分解により気体として除去可能なものが好ましい。
乾燥工程は水分を蒸発する工程であるが、塩基性化合物あるいは不純物の種類によっては、一部もしくは全量の不純物を、蒸発、昇華、及び/または熱分解によって除去可能である。乾燥には、減圧乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥等の方法が用いられる。乾燥は通常、室温〜350℃で、1〜24時間行われる。乾燥の雰囲気は特に制限はないが、通常大気中または不活性ガス中または減圧中で行われる。その後、適当な方法で解砕してもよい。
本発明は、カルシウム塩を、少なくとも塩基性化合物の存在するアルカリ性溶液に、飽和溶解度以上に投入しなければならない。反応機構は明確ではないが、反応初期において、溶解したカルシウム塩が酸化チタンゾルと反応し超微粒のチタン酸カルシウムが生成し、その後、少しずつ未溶解だったカルシウム塩が溶解して酸化チタンゾルと反応して新たなチタン酸カルシウムが生成しながら、初期に生成したチタン酸カルシウム上に成長していくと考えられる。
そのため、超微細な粒子が少ないだけでなく、粒度分布が狭く、電子部品の小型化に適した粒径になると考えられる。また、カルシウム塩の溶解度は非常に小さいため、新たに生成されるチタン酸カルシウムの粒子は非常にゆっくりと非常に小さい粒径になり、成長前に安定な形に変化して、正方柱に似た形状の単結晶粒子が得られると考えられる。
カルシウム塩の投入量は、飽和溶解度以上であれば特に制限はないが、アルカリ性水溶液への投入量が少ないと超微粒のチタン酸カルシウムが混在しやすくなり、粒度分布のシャープなチタン酸カルシウムが得られない。よって、カルシウム塩の濃度を高くするほうが好ましいが、アルカリ性水溶液への投入量が多すぎると、カルシウム塩をアルカリ性水溶液中に均一混合できない状態や溶液粘度の高い状態になる。
したがって、アルカリ性水溶液の飽和溶解度に対して10倍以上10000倍以下の重量のカルシウム塩を投入するのが好ましい。
本発明に用いられるカルシウム塩は、アルカリ性水溶液に難溶であれば特に制限はなく、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、さらに、カルボン酸、アルコールなどの有機物との塩も使用できる。また、これらは1種類単独で用いてもよく、2種類以上の化合物を任意の比率で混合して用いることも可能である。
中でも、カルシウム塩としては水酸化物が好ましい。水酸化カルシウムは水に対して難溶であり、アルカリ性水溶液にはさらに難溶だからである。また、水酸化カルシウム中の陰イオンは気体として容易に除去しやすいという利点も有しているからである。
なお、エチレンジアミン四酢酸のようにカルシウムと安定なキレート塩を形成するものは、飽和溶解度が高くなってしまい、チタン酸カルシウムを製造することができなくなるので、好ましくない。
本発明のチタン酸カルシウムの製造には、塩基性化合物の存在するアルカリ性溶液を必要とする。アルカリ性が高いほど、カルシウム塩の難溶性が高くなり好ましい。溶液のpHは、好ましくは13以上、特に好ましくは14以上である。塩基性化合物の投入量の上限は、その塩基性化合物の水に対する飽和溶解度となる。
本発明に用いられる塩基性化合物は、特に制限はないが、大気圧下または減圧下で、蒸発、昇華、及び/または熱分解により気体となる物質が好ましい。例えば、アンモニア、水に対する溶解度の高いカーボン数の低い有機アミン、アンモニウム塩の水酸化物などの有機塩基が使用可能である。
中でもアンモニウム塩の水酸化物は、水に溶解すると乖離度が高く強い塩基として作用すると共に、反応時に揮発することがないため好適である。
アンモニウム塩の水酸化物としては、工業的には、コリン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)などが知られており、安価に入手できる。特に、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドは、電子工業用に使用されており、不純物として金属イオン等が少ない物が入手できるだけでなく、135℃から140℃で熱分解するために気体として除去できるので好適である。
また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機化合物を用いても本発明のチタン酸カルシウムは製造可能である。
これらは1種類単独で用いてもよく、2種類以上の化合物を任意の比率で混合して用いることも可能である。
本発明のチタン酸カルシウムと未反応のカルシウム塩と酸化チタンゾルを、反応後に分別、除去するのは困難である。そこで、反応を完結た時にチタン酸カルシウムのカルシウムとチタンの比率が所定比となるように、酸化チタンゾルを配合する。
本発明に用いられる酸化チタンゾルとしては、特に制限はないが、ブルーカイト型結晶を含有する酸化チタンゾルが好ましい。もしくは、チタン塩を酸性溶液中で加水分解して得られた酸化チタンゾルが好ましい。
ブルーカイト型結晶を含有するものであればブルーカイト型の酸化チタン単独、またはルチル型やアナターゼ型の酸化チタンを含んでもよい。ルチル型やアナターゼ型の酸化チタンを含む場合、酸化チタン中のブルーカイト型酸化チタンの割合は特に制限はないが、通常、1〜100質量%であり、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%である。不定形粒子よりも結晶性粒子の方が単粒化しやすいので、溶媒中における酸化チタン粒子の分散性が向上するからである。
特にブルーカイト型酸化チタンは溶媒中での分散性に優れている。この理由は明らかではないが、ブルーカイト型のpH2におけるゼータ電位が、ルチル型およびアナターゼ型のゼータ電位よりも高いことに起因すると推測される。
ブルーカイト型結晶を含有する酸化チタン粒子の製造方法は、アナターゼ型酸化チタン粒子を熱処理してブルーカイト型結晶を含む酸化チタン粒子を得る製造方法や、四塩化チタン、三塩化チタン、チタンアルコキシド、硫酸チタン等のチタン化合物の溶液を中和し、または加水分解することによって、酸化チタン粒子が分散した酸化チタンゾルとして得る液相での製造方法等がある。
ブルーカイト型結晶を含有する酸化チタン粒子を製造する方法としては、その粒子の粒径が小さく分散性に優れていることから、チタン塩を酸性溶液中で加水分解して酸化チタンゾルとして得る方法が好ましい。例えば、75〜100℃の熱水に四塩化チタンを加え、75℃以上であって溶液の沸点以下の温度で、塩素イオン濃度をコントロールしながら四塩化チタンを加水分解して、酸化チタンゾルとしてブルーカイト型結晶を含有する酸化チタン粒子を得る方法(特開平11−43327号公報)や、75〜100℃の熱水に四塩化チタンを加え、硝酸イオン、燐酸イオンのいずれか一方または双方の存在下に、75℃以上であって溶液の沸点以下の温度で、塩素イオン、硝酸イオンおよび燐酸イオンの合計の濃度をコントロールしながら四塩化チタンを加水分解して、酸化チタンゾルとしてブルーカイト型結晶を含有する酸化チタン粒子を得る方法(国際公開99/58451号パンフレット)が好ましい。
チタン塩を酸性溶液中で加水分解して得られた酸化チタンゾルを用いる場合は、酸化チタンの結晶型に制限はなく、ブルーカイト型に限定されるものではない。四塩化チタンや硫酸チタン等のチタン塩を酸性溶液中で加水分解すると、中性やアルカリ性の溶液中で行うよりも反応速度が抑制されるので粒径が単粒化し、分散性に優れた酸化チタンゾルが得られる。また、塩素イオン、硫酸イオン等の陰イオンが、生成した酸化チタン粒子の内部に取り込まれにくいので、チタン酸カルシウム粒子を製造した際にその粒子への陰イオン混入を低減することができる。
一方、中性やアルカリ性の溶液中で加水分解すると、反応速度が大きくなり、初期に多くの核発生が起こる。そのため、粒径は小さいが分散性が悪い酸化チタンゾルとなり、粒子が鬘状に凝集してしまう。このような酸化チタンゾルを原料として、チタン酸カルシウム粒子を製造した場合、得られた粒子は、粒径が小さくても、分散性が悪いものとなる。また、陰イオンが酸化チタン粒子の内部に混入しやすくなり、その後の工程でこれらの陰イオンを除去することが難しくなる。
チタン塩を酸性溶液中で加水分解して酸化チタンゾルを得る方法は、溶液が酸性に保持される方法であれは特に制限はないが、四塩化チタンを原料として還流冷却器を取り付けた反応器内で加水分解し、その際発生する塩素の逸出を抑制し、溶液を酸性に保持する方法(特開平11−43327号公報)が好ましい。
また、チタン塩の酸性溶液中の濃度は、0.01〜5mol/Lであることが好ましい。これは、濃度が5mol/Lを越えると、加水分解の反応速度が大きくなり、粒径が大きく分散性の悪い酸化チタンゾルが得られるためであり、0.01mol/L未満では、得られる酸化チタン濃度が少なくなり生産性が悪くなるためである。
酸化チタンゾルの投入方法に特に制限はないが、酸化チタンゾルの凝集を抑制し分散性に優れたチタン酸カルシウムを得るために、塩基性化合物の存在するアルカリ性溶液に飽和溶解度以上のカルシウム塩を投入し加熱、撹拌した反応液に、少量ずつ投入するのが好ましい。酸化チタンゾルを少量ずつ投入する方法としては、ポンプ等を用いて滴下する方法や、液中に注入する方法などがあげられる。
このようにして製造されるチタン酸カルシウムは、粒径の小さい、分散性に優れた、結晶性の高い、電気特性に優れたものであり、誘電体磁器、焦電体磁器、圧電体磁器に成形される。
これらの磁器、薄膜状形成物は、コンデンサーの材料、センサーなどに用いられる。
また、本発明のチタン酸カルシウム粉末は、単品、あるいはその他の誘電材料(例えばチタン酸バリウム等のチタン系複合酸化物)等と混合して、水、既存の無機系バインダー、既存の有機系バインダーからなる群より選ばれた1種以上の溶剤でスラリー化あるいはペースト化して用いることも可能である。
本発明のチタン酸カルシウム粉末の電気特性は、粒子に焼結助剤等の各種添加剤を加えてディスク状に成形したもの、あるいはこの粉末を含むスラリー、ぺースト等に各種添加剤を加えて薄膜状に成形したもの等を、適当な条件で焼成した後、インピーダンスアナライザー等を使用して評価可能である。
本発明のチタン酸カルシウム粉末を含む充填材を、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種以上に分散させることにより高誘電率のフィルムを得ることが出来る。
本発明のチタン酸カルシウム粉末以外の充填材を含ませる場合には、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化タンタルなどからなる群より1種以上を選択して使用することが可能である。
熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂は特に制限されず、通常使用されている樹脂を使用することが可能であるが、熱硬化性樹脂としては例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ビストリアジン樹脂等が好適である。熱可塑性樹脂としては例えばポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド等が好適である。
本発明のチタン酸カルシウム粉末を含む充填材を熱硬化性樹脂または/及び熱可塑性樹脂の少なくとも一種以上に均一に分散させるために、予め充填材を溶剤または上記樹脂組成物と溶剤の混合物に分散させスラリーを得るのが望ましい。
充填材を溶剤または上記樹脂組成物と溶剤の混合物に分散させスラリーを得る方法は特に限定されないが、湿式解砕の工程を含むのが望ましい。
溶剤としては特に制限されず、通常使用されるカップリング剤であれば何でも使用可能であるが、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、メチルセルソルブ、を単独で或いは二種以上を混合して用いることが出来る。
充填材を溶剤または上記樹脂組成物と溶剤の混合物に分散させたスラリーを得るためにカップリング剤を配合することが望ましい。カップリング剤としては特に制限されるものではなく、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤が挙げられる。カップリング剤の親水基が、本発明のチタン酸カルシウム粉末を含む充填材表面の活性水素と反応し表面に被覆されるため、溶剤への分散性が良好になる。カップリング剤の疎水基は、その選択により樹脂への相溶性を高めることができる。例えば、樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合には、モノアミノ、ジアミノ、カチオニックスチリル、エポキシ、メルカプト、アニリノ、ウレイドなどのいずれかを官能基の一つに有するシランカップリング剤や、ホスファイト、アミノ、ジアミノ、エポキシ、メルカプトなどのいずれかを官能基の一つに有するチタネート系カップリング剤が好適である。樹脂としてポリイミド樹脂を用いる場合には、モノアミノ、ジアミノ、アニリノなどのいずれかを官能基の一つに有するシランカップリング剤や、モノアミノ、ジアミノなどのいずれかを官能基の一つに有するチタネート系カップリング剤が好適である。これらのうち一種を単独で用いたり、二種以上を混合して用いたりすることができる。
カップリング材の配合量は、特に限定されず、本発明のチタン酸カルシウム粉末の一部または全部が被覆されていれば良いが、多いと未反応のまま残り悪影響を与える場合があり、少なすぎるとカップリング効果が低くなる場合もある。したがって、本発明のチタン酸カルシウム粉末を含む充填材の粒径及び比表面積、カップリング剤の種類によって、充填材が均一に分散できる配合量を選択することが好ましいが、本発明のチタン酸カルシウム粉末を含む充填材の0.05〜20重量%程度の配合量が望ましい。
カップリング剤の親水基と本発明のチタン酸カルシウム粉末を含む充填材表面の活性水素との反応を完結させるため、スラリーにしてから加熱処理する工程を含むのが望ましい。加熱温度と時間に特に制限はないが、100〜150℃で1時間から3時間加熱処理することが好ましい。また、溶剤の沸点が100℃以下のときは、加熱温度は溶剤の沸点以下とし、加熱時間をそれに応じて長くするとよい。
以下、本発明を実施例および比較例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
実施例1:
四塩化チタン(住友チタニウム(株)製:純度99.9%)濃度が0.25mol/Lの水溶液を還流冷却器つきの反応器に投入し、塩素イオンの逸出を抑制し、酸性に保ちながら沸点付近まで加熱した。その温度で60分間保持して四塩化チタンを加水分解し、酸化チタンゾル得た。得られた酸化チタンゾルを110℃で乾燥し理学電機(株)製X線回折装置(RAD−B ローターフレックス)で結晶型を調べた結果ブルーカイト型酸化チタンであることがわかった。
水酸化カルシウム(和光純薬(株)製:純度99.9%)29.6gと前記ゾルを電気透析装置により塩素を500ppmになるまで除去した後、沈降濃縮して得た酸化チタン濃度15質量%のゾル213gに、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド20質量%水溶液(セイケム昭和(株)製、炭酸基の濃度60ppm以下)を456g加え、還流冷却管付き反応器で、少量の窒素を流して、撹拌しながら煮沸するまで加熱した。撹拌しながら煮沸を6時間維持した。撹拌しながら加熱を停止し、50℃以下に空冷した後、真空ろ過して得られたケーキを300℃で5時間乾燥して、乾燥粉末を得た。反応に用いた酸化チタン量と水酸化カルシウム量から算出される理論収量に対する実収量の割合は99.9質量%であった。
この粉体のX線回折を理学電機(株)製X線回折装置(RAD−B ローターフレックス)で調べた結果、得られた粉体はぺロブスカイトのチタン酸カルシウムであることがわかった。そのときのX線回折スペクトルを図1に示す。得られた粒子のBET法で求めた比表面積は、4.7m2/gであった。また、得られた粉体は、走査型電子顕微鏡写真を図2に示すように、正方柱に似た形状を有するものであった。
透過型電子顕微鏡により観察したところ、得られたチタン酸カルシウム粒子は単結晶であった。さらに電子線の撮像結果を解析したところ、正方柱状粒子の長辺は(010)方向に伸びていることがわかった。
(I)式より算出された一次粒子の平均粒径D1は、0.32μmであった。
分散剤としてポイズ532A(花王株式会社製)0.03%を溶解した水中に、この粉体を分散させた。島津遠心式沈降装置粒度分布測定装置(SA−CP4L型)を用い、最大30μm、最小0.03μmの範囲の粒径分布を重量基準で測定できるように条件を設定し、この粉体の二次粒子の粒度分布を測定した。
平均粒径D2が0.71μm、最小粒径から10%の分布の粒径D3が0.34μm、最小粒径から90%の粒径D4が1.10μmであり、D2/D1=2.2、D3/D2=0.48、D4/D2=1.55であった。
この粉体約6mgとKBr約900mgを粉砕、混合した後に約800mgを錠剤型にプレスした。また、同様に標準炭酸カルシウム(和光純薬(株)製、純度99.99%)を錠剤型にプレスした。赤外吸収スペクトルを、Bio―Rad社製FTS6000で測定した。880cm-1付近の標準炭酸カルシウムのピーク強度と本発明のチタン酸カルシウムのピーク面積強度を比較した。この粉体に含まれる炭酸カルシウム量は、0.5質量%であった。
実施例2:
実施例1と同様にしてぺロブスカイトのチタン酸カルシウム粉体を得た。この粉体を950℃で2時間保持して焼成した。
実施例1と同様にして調べたところ得られた粉体は、比表面積は3.6m2/gで、ぺロブスカイトのチタン酸カルシウムであることがわかった。X線回折スペクトルを図3に示す。焼成による比表面積の減少量は1.1m2/gであった。また、得られた粉体は、走査型電子顕微鏡写真を図4に示すように、正方柱に似た形状を有するものであった。さらに、得られた粉体を透過型電子顕微鏡(日立製作所社製、H−9000UHR)で観察し、加速電圧300kVの条件下制限視野電子線回折を行った。結果を図5に示す。得られた粒子は単結晶であり、解析の結果、長辺方向が(010)面、短辺方向が(101)面であることがわかった。
実施例1と同様にして粒度分布を測定したところ、D1が0.42μm、D2が1.12μm、D3が0.28μm、D4が5.56μmであり、D2/D1=2.7、D3/D2=0.25、D4/D2=4.96であった。
実施例3:
テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド20質量%水溶液(セイケム昭和(株)製)45、6gを純水410.4gを加えて希釈した以外は実施例1と同様の操作でチタン酸カルシウムを合成した。理論収量に対する実収量の割合は99.7質量%であった。
実施例1と同様にして調べたところ得られた粉体は、比表面積は、5.7m2/gで、ぺロブスカイトのチタン酸カルシウムであることがわかった。形状は、正方柱状に似た形状であることがわかった。また、単結晶であり、正方柱状粒子の長辺は(010)方向に伸びていることがわかった。
実施例1と同様にして、粒度分布を測定したところ、D1が0.26μm、D2が0.72μm、D3が0.30μm、D4が1.75μmであり、D2/D1=2.8、D3/D2=0.42、D4/D2=2.43であった。
実施例4:
実施例1で合成したブルーカイト型酸化チタンゾルの代わりに市販のアナターゼ型酸化チタンゾル(石原産業(株)製ST−02)を用いた以外は実施例1と同様の操作でチタン酸カルシウムを合成した。理論収量に対する実収量の割合は99.9質量%であった。
実施例1と同様にして調べたところ得られた粉体は、比表面積は、3.9m2/gで、ぺロブスカイトのチタン酸カルシウムであることがわかった。形状は、正方柱状に似た形状であることがわかった。また、単結晶であり、正方柱状粒子の長辺は(010)方向に伸びていることがわかった。
実施例1と同様にして、粒度分布を測定したところ、D1が0.38μm、D2が0.69μm、D3が0.17μm、D4が1.08μmであり、D2/D1=1.8、D3/D2=0.25、D4/D2=1.57であった。
実施例5:
水酸化カルシウムを0.296gとした以外は、実施例1と同様の操作でチタン酸カルシウムを合成した。理論収量に対する実収量の割合は99.9質量%であった。実施例1と同様にして調べたところ得られた粉体はぺロブスカイトのチタン酸カルシウムであることがわかった。
実施例1と同様にして調べたところ得られた粉体は、比表面積は、4.8m2/gで、ぺロブスカイトのチタン酸カルシウムであることがわかった。形状は、正方柱状に似た形状であることがわかった。また、単結晶であり、正方柱状粒子の長辺は(010)方向に伸びていることがわかった。
実施例1と同様にして、粒度分布を測定したところ、D1が0.31μm、D2が0.65μm、D3が0.23μm、D4が1.21μmであり、D2/D1=2.1、D3/D2=0.35、D4/D2=1.86であった。
実施例6:
水酸化カルシウムの代わりに塩化カルシウム二水和物(和光純薬(株)製:純度99.9%)58.8gを用いた以外は実施例1と同様の操作でチタン酸カルシウムを合成した。真空ろ過して得られたケーキの水洗、ろ過を繰り返し、Cl濃度を100ppmとした。その後、真空ろ過して得られたケーキを300℃で5時間乾燥して、乾燥粉末を得た。反応に用いた酸化チタン量と水酸化カルシウム量から算出される理論収量に対する実収量の割合は99.9質量%であった。
実施例1と同様にして調べたところ得られた粉体は、比表面積は、4.6m2/gで、ぺロブスカイトのチタン酸カルシウムであることがわかった。形状は、正方柱状に似た形状であることがわかった。また、単結晶であり、正方柱状粒子の長辺は(010)方向に伸びていることがわかった。
実施例1と同様にして、粒度分布を測定したところ、D1が0.33μm、D2が0.75μm、D3が0.22μm、D4が1.36μmであり、D2/D1=2.3、D3/D2=0.29、D4/D2=1.81であった。
実施例7:
TMAHの代わりにKOH(和光純薬(株)製特級)を用いた以外は実施例1と同様の操作でチタン酸カルシウムを合成した。真空ろ過して得られたケーキの水洗、ろ過を繰り返し、K濃度を100ppmとした。その後、真空ろ過して得られたケーキを300℃で5時間乾燥して、乾燥粉末を得た。反応に用いた酸化チタン量と水酸化カルシウム量から算出される理論収量に対する実収量の割合は99.3質量%であった。
実施例1と同様にして調べたところ得られた粉体は、比表面積は、4.4m2/gで、ぺロブスカイトのチタン酸カルシウムであることがわかった。形状は、正方柱状に似た形状であることがわかった。また、単結晶であり、正方柱状粒子の長辺は(010)方向に伸びていることがわかった。
実施例1と同様にして、粒度分布を測定したところ、D1が0.34μm、D2が0.74μm、D3が0.23μm、D4が1.30μmであり、D2/D1=2.2、D3/D2=0.31、D4/D2=1.76であった。
比較例1:
テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド20質量%水溶液(セイケム昭和製、炭酸根の濃度60ppm以下)を大気中に放置して炭酸基の濃度を6000ppmにした以外は、実施例1と同様の操作でチタン酸カルシウムを合成した。理論収量に対する実収量の割合は99.9質量%であった。
実施例1と同様にして調べたところ得られた粉体には、6質量%の炭酸カルシウムが混在することがわかった。BET比表面積は7.2m2/gであった。
実施例1と同様にして、粒度分布を測定したところ、D1が0.20μm、D2が0.80μm、D3が0.20μm、D4が2.10μmであり、D2/D1=4.0、D3/D2=0.25、D4/D2=2.63であった。
比較例2:
水酸化カルシウムを0.0185gとした以外は、実施例1と同様の操作でチタン酸カルシウムを合成した。理論収量に対する実収量の割合は99.9質量%であった。
実施例1と同様にして調べたところ得られた粉体はぺロブスカイトのチタン酸カルシウムであることがわかった。得られた粒子の比表面積は、23m2/gで、大部分が球状の微粒子であることがわかった。
実施例1と同様にして、粒度分布を測定したところ、D1が0.065μm、D2が0.6μm、D3が0.04μm、D4が11.0μmであり、D2/D1=9.2、D3/D2=0.06、D4/D2=18.3であった。
比較例3:
TMAHを添加しないかわりに純水368gを用いて実施例1と同様の操作でチタン酸カルシウムを合成した。このときのpHは7.1であった。理論収量に対する実収量の割合は99.6質量%であった。実施例1と同様にして調べたところ得られた粉体は、ぺロブスカイトのチタン酸カルシウムに、大量の原料である水酸化カルシウムと酸化チタンが混在することがわかった。
比較例4:
エチレンジアミン四酢酸73gを加え、水酸化カルシウムを溶解させて反応させた以外は同じにして実施例1と同様の操作でチタン酸カルシウムを合成した。得られた乾燥粉体を900℃で2時間保持してエチレンジアミン四酢酸を分解した。実施例1と同様にして調べたところ得られた粉体はぺロブスカイトのチタン酸カルシウムはほとんど得られていなかった。
比較例5:
反応時間を1時間とした以外は、実施例1と同様の操作でチタン酸カルシウムを合成した。理論収量に対する実収量の割合は99.5質量%であった。得られた粉体のBET比表面積は、27.1m2/gであった。X線回折スペクトル図には、ほんのわずかに原料の酸化チタンと水酸化カルシウムのピークがみられるものの、大部分がペロブスカイト型のチタン酸カルシウムであることがわかった。
走査型電子顕微鏡で観察した粒子形状は、大部分が球状の微粒子であり、正方中状の微粒子はわずかであった。
実施例1と同様にして、粒度分布を測定したところ、D1が0.06μm、D2が0.64μm、D3が0.05μm、D4が11.5μmであり、D2/D1=10.6、D3/D2=0.08、D4/D2=18.0であった。
実施例1で得られたチタン酸カルシウム粉体のX線回折スペクトル図。 実施例1で得られたチタン酸カルシウム粉体の走査型電子顕微鏡写真。 実施例2で得られたチタン酸カルシウム粉体のX線回折スペクトル図。 実施例2で得られたチタン酸カルシウム粉体の走査型電子顕微鏡写真。 実施例2で得られたチタン酸カルシウム粉体の透過型電子顕微鏡写真と電子回析図。

Claims (33)

  1. ペロブスカイト結晶構造を有し、正方柱または正方柱類似の形状を有するチタン酸カルシウム粉末。
  2. 単結晶である請求項1に記載のチタン酸カルシウム粉末。
  3. チタン酸カルシウム結晶の長辺と短辺の比が1.1〜6である請求項1または請求項2に記載のチタン酸カルシウム粉末。
  4. 長辺が単位格子(010)面に伸びている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末。
  5. 一次粒子の平均粒径をD1、二次粒子の平均粒径をD2としたときのD2/D1値が1以上3以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末。
  6. 二次粒子の粒度分布において、最小粒径から10%の粒径をD3としたときに、D3/D2値が0.1以上0.9以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末。
  7. 二次粒子の粒度分布において、最小粒径から90%の粒径をD4としたときに、D4/D2値が1.1以上10以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末。
  8. 炭酸カルシウムの含有量が、3質量%以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末。
  9. 比表面積が1〜10m2/gである請求項1乃至8のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末。
  10. 900℃から1200℃の範囲のいずれかの温度で焼成した場合に、比表面積の減少量が8m2/g以下となる請求項1乃至9のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末。
  11. 塩基性化合物の存在するアルカリ性水溶液中に、酸化チタンゾルと飽和溶解度以上のカルシウム塩を投入して反応させる請求項1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末の製造方法。
  12. 塩基性化合物の存在するアルカリ性溶液飽和溶解度に対して、10質量倍以上10000質量倍以下の重量のカルシウム塩を投入して反応させる請求項11に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
  13. カルシウム塩が水酸化物である請求項11または12に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
  14. 反応液中の炭酸基のCO2換算濃度を500ppm以下に制御して反応させる工程を含む請求項11乃至13のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
  15. 100℃以上に煮沸する工程を4時間以上含む請求項11乃至14に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
  16. 室温〜焼成温度の温度範囲で、大気圧下または減圧下で、不純物を蒸発、及び/または熱分解により気体として除去する工程を含む請求項11乃至15のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
  17. 酸化チタンゾルがチタン化合物を酸性溶液中で加水分解して得たものである請求項11乃至16のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
  18. 酸化チタンゾルがブルーカイト型結晶を含有するものである請求項11乃至17のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
  19. 塩基性化合物が、大気圧下または減圧下で、蒸発、昇華、及び/または熱分解により気体となる物質である請求項11乃至18のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
  20. 塩基性化合物が、有機塩基である請求項11乃至19のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
  21. 塩基性化合物が、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドである請求項11乃至20のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウムの製造方法。
  22. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末を含む誘電材料。
  23. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末を含むペースト。
  24. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末を含むスラリー。
  25. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末を含む薄膜状形成物。
  26. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末を含む誘電体磁器。
  27. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末を含む焦電体磁器。
  28. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末を含む圧電体磁器。
  29. 請求26に記載の誘電体磁器を含むコンデンサ。
  30. 請求項25乃至29に記載の薄膜状形成物、磁器およびコンデンサから成る群から選ばれる少なくとも1種を含む電子機器。
  31. 請求項25乃至28に記載の薄膜状形成物または磁器を1種または2種以上含むセンサー。
  32. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載のチタン酸カルシウム粉末を用いた誘電体フィルム。
  33. 請求項32に記載の誘電体フィルムを用いたコンデンサ。
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