JP2016198952A - 耐熱性積層シート - Google Patents
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Abstract
Description
このような用途において、アルミ箔に積層されるシリコーン樹脂層は、電子レンジ加熱に際してのマイクロ波の反射による火花の発生を防止したり、或いは加熱された食品のアルミ箔への焦げ付きなどの付着を防止するという機能を有するものであるが、同時に、加熱に際して、変形せず、溶融してアルミ箔から脱落しないある程度の耐熱性も有している。このような特性を有するシリコーン樹脂は、種々のメーカーから耐熱性シリコーン樹脂として市販されている。
このような電磁調理器は、炎を使わずに加熱調理できるため、安全性が高く、さらに汚れの払拭が容易であり、清潔性に優れ、さらに経済性の面でも従来の加熱調理器よりも優れている。
このような観点から、前述した特許文献1〜3で開示されているようなシリコーン樹脂の層を、発熱体である金属箔の一方の面に設けることが考えられるが、そのシリコーン樹脂の層は、例えば加熱調理する食材などの被加熱物と接触する側に設けられるものであり、食材などが付着しないことや電子レンジ加熱に際してマイクロ波の反射を防止できるなどの特性が要求されるものである。また、特許文献1〜3で開示されているシリコーン樹脂の層は、その用途からシリコーン樹脂を薄く塗布して形成されており、その膜厚は薄い。従って、IH調理器による加熱調理に際して、発熱体として使用される金属箔の一方の面(食材とは接触ない側の面)に設け、より高い耐熱性が求められる誘電体層とは要求特性が全く異なり、これをそのままIH調理器用発熱シートとして使用することはできない。
本発明の他の目的は、前記シリコーン樹脂の層と導電シートとの密着性に優れた耐熱性積層シートを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、前記導電シートに渦電流制御用のカットラインを設けることが可能な耐熱性積層シートを提供することにある。
(1)前記シリコーン樹脂層は、該層の表面側に比して、前記導電シート側の炭素原子の割合が多いこと、
(2)前記シリコーン樹脂層は、ケイ素原子と酸素原子と炭素原子との3元素基準で表して、下記式:
CD=C1/C2
式中、
C1は、前記シリコーン樹脂層の導電シート側の表面からの深さが100〜300nmの領域での炭素原子の元素組成比(%)を表し、
C2は、前記シリコーン樹脂層の表面からの深さが100nm以上の領域での炭素原子の元素組成比(%)を表す、
で表される炭素元素比CDが1より大きいこと、
(3)前記シリコーン樹脂層は、50〜200μmの厚みを有すること、
(4)IH調理器用の発熱シートとして使用されること、
(5)前記導電シートに、該シートを厚み方向に貫通する渦電流制御用カットラインが設けられていること、
(6)前記シリコーン樹脂層が、シリコーンシートとシリコーン塗料層からなり、該シリコーン塗料層が前記導電シート側に形成されていること、
(7)前記シリコーン樹脂層に、シリコーン塗料層を介して紙材が接着されていること、
が好適である。
さらに、本発明の耐熱性積層シートによれば、前述したシリコーン樹脂層が厚く形成されているため、導電シートに渦電流制御用カットラインを設ける際に、導電シートを完全に切断し、シリコーン樹脂層は完全に切断しないように容易にカットラインを設けることができる。
例えば、シリコーン樹脂層5の厚みが、前記厚みよりも薄いと、シリコーン樹脂層5の耐熱性によりもたらされる効果が低減してしまう。また、シリコーン樹脂層5の厚みが厚くなると、格別の効果が生じることはなく、コストの点で不利となるばかりか、シリコーン樹脂層5を間に介在させたIH調理器による食材などの被加熱物の温度調節を、効果的に行うことが困難となってしまう。
尚、図9及び10における測定結果においては、シリコーン樹脂層5の表面及びその近傍領域では不純物の付着の影響が考えられることから、いずれもシリコーン樹脂層5の表面からの深さが100nm以上の元素組成比について着目した。
即ち、前記結果によると、接着性の良好なシリコーン樹脂層5では、導電シート3側に近い領域で炭素原子の割合が多く、その反対側では、炭素原子の割合は少なく、一定である。
CD=C1/C2
式中、
C1は、シリコーン樹脂層5の導電シート側の表面からの深さが100〜300nmの領域での炭素原子の元素組成比(%)を表し、
C2は、シリコーン樹脂層5の表面からの深さが100nm以上の領域での炭素原子の元素組成比(%)を表す、
で表される炭素元素比CDが1よりも大きいことが、導電シート3に対して良好な接着性を確保する上で、特に好適である。
即ち、前記した炭素元素比CDが大きいほど、シリコーン樹脂層5の表面側よりも導電シート3側の炭素原子の割合が多いことを意味する。
尚、前記の炭素分布指数CDを算出するに当たっては、シリコーン樹脂層5の表面からの深さが0〜100nmの領域での炭素原子の元素組成比を計算外としているが、前述したように、シリコーン樹脂層5の表面及びその近傍領域では、不純物の付着の影響が大きく、元素組成比の測定値にバラつきを生じ易いからである。
このようなシリコーンシートは、導電シート側シリコーン樹脂に比して有機成分含量が低く設定されているため、架橋構造(枝分かれ構造)を多く含んでいるものである限りにおいて、任意の方法で製造されたものであってよいが、導電シート側シリコーン樹脂との一体化という観点から、前記のシリコーン塗料と同様、ポリアルケニルシロキサン及びSiH基を含むポリアルキル水素シロキサンとの反応により形成されたものであることが望ましい。
即ち、このシリコーンシートを、前述したシリコーン塗料の層に押圧、積層した状態で加熱して架橋させると、両者の界面で、シリコーン塗料層中のアルケニル基やSiH基が、シリコーンシート中に残存しているSiH基やアルケニル基と反応し、これにより、界面側シリコーン樹脂とシリコーンシートとを強固に一体化させることができる。
一方、シリコーンシートは、高分子量のポリアルケニルシロキサンやポリアルキル水素シロキサンを使用することにより、有機成分(炭素原子)含量を少なくすることができる。
従って、用いるシロキサンポリマーの分子量を適宜選択することにより、形成されるシリコーン樹脂層5の炭素分布指数CDを所定の範囲に設定することができる。
勿論、この耐熱性積層シート1においては、シリコーン樹脂層5が導電シート3に良好に接着固定されているため、カットラインXを形成せず、そのままの形態で或いは袋状の容器に成形して、各種の食材を、該食材がシリコーン樹脂層5と接触するように包装し、加熱オーブンや電子レンジなどでの加熱調理を行うことも可能であり、食材がアルミ箔等の導電シートに付着しないなどの利点を有する。
このような第1のカットライン7は、特に制限されないが、一般に、2本以上、好ましくは3本〜40本で、容器の形状に折り込んで加熱する際に、その容器サイズに応じて誘導加熱により生成する過電流の誘起を低減、或いは遮断できる本数を適宜選択すればよい。また、図3、図4の例では、第1のカットライン7は、放射状に延びているが、過電流の誘起を低減或いは遮断できる限りにおいて、曲線状、或いは他の形状に形成されていてもよい。
また、図3及び図4から理解されるように、前述した第1のカットライン7は、この第2のカットライン15の最大径のカットラインの位置まで延びていることが好適である。これにより、底部10に誘起される渦電流の側壁部13への通電を防止することができ、側壁部13の過度な発熱を確実に防止することができる。
このような第3のカットライン17は、誘起される渦電流を低減、或いは遮断する方向、即ち、無端状の第2のカットライン15の位置まで延びていればよく、例えば、図3では、弧状に形成されているが、所謂クロスカットのように、直線状に形成されていてもよく、さらに、その本数も制限されない。
かかる補強リング20の厚みや幅は、折り込みにより形成される容器が安定的に形態を保持し得るように適宜の範囲に設定すればよい。
尚、これらの図において、発熱シート1の折り込みにより形成された容器は、Aで示されている。
即ち、図6(a)を参照して、発熱シート1の折り込みにより形成された容器Aは、環状壁31の内部に挿入されるが、空の状態では、前記の周状段差部35で容器Aの底部10の周縁部近傍が引っ掛かり、下方まで落下せずに係止される。従って、この状態では、容器Aを保持している保持部材30がIH調理器の誘導加熱部に置かれた場合にも、発熱シート1から成る容器Aの底部10がIH調理器から遠いため発熱を生じることが無く、所謂空焚きが防止される。
そして、この蓋材40は、被加熱材料50の加熱調理時は鍋蓋として使用されるが、加熱調理後は裏返しにして鍋敷きとして使用することができる。このように蓋材40を鍋敷きとして使用することにより、保持部材30の内方フランジ33内に露出する容器Aの底部10(発熱シート1)の加熱調理後の熱さを封鎖することができる。また、その際、保持部材30の内方フランジ33内に、蓋材40が装着可能な構成を適宜採用することにより、加熱調理後の被加熱材料が投入された容器A、保持部材30を安定した状態で載置、或いは蓋材40を持って安定した状態で持ち運ぶことができる。例えば、図8に示す蓋材40においては、裏返しにして下方に突出する中央部41を、保持部材30の内方フランジ33内に装着して鍋敷きとして使用される。
尚、図7及び図8では、容器A内に投入された被加熱材料50は省略されている。
また、容器Aの底部10の周縁部には、補強リング20が形成されているため、煮炊き用の水等の被加熱材料50を容器A内に投入したとき、被加熱材料50の重量によって容器Aが窄んでしまうなどの不都合は有効に回避され、容器Aの形態が安定的に保持される。
また、発熱シート1の保持部材30への折り込みによる容器Aの形成に変えて、発熱シート1に折り込み線を形成して容器Aを形成し、この容器Aを保持部材30の環状壁31の内部に収容してもよく、この場合、折り込み線を形成した発熱シート1、或いは折り込まれた容器Aの形態で多数枚毎を、コンパクトに積み重ねた状態で販売、購入される。
尚、接着は前記形態に限定されず、例えば、導電シート3に形成したシリコーン塗料層9に、耐熱紙8に積層したシリコーンシートを押圧、積層した状態で加熱して架橋し、シリコーン塗料により形成されるシリコーン樹脂とシリコーンシートとを一体化して、シリコーン樹脂層5を導電シート3に接着した耐熱性積層シート1′とすることもでき、その接着の形態は特に限定されない。
尚、耐熱紙8に形成されるシリコーン塗料層9は、シリコーン樹脂層5側のみ形成しても良い。
尚、以下の実験例において、アルミ箔上に形成されたシリコーン樹脂層についての元素の組成分析及び炭素分布指数CDの算出は、以下の方法により行った。
図12に示すように、アルミ箔上にシリコーン樹脂層が積層された試料の耐熱性積層シート(発熱シート)(図12(a))から、酸によりアルミ箔を溶解除去した(12(b))。得られたシリコーン樹脂層のアルミ箔側、及び反対側の表面のそれぞれについて、XPS装置により、下記条件で深さ方向の元素の組成分析を行い、横軸に表面からの深さ、縦軸にケイ素原子(Si)、酸素原子(O)及び炭素原子(C)の3元素についての元素組成比を示した。
XPS装置: サーモフィッシャーサイエンティフィックス社製K−Alpha
線源: Alモノクロメーター
測定範囲: 0.2mmφ
スパッタリング: アルゴンモノマー
スパッタ条件: 2kV、Highモード
スパッタレート 8.2nm/min(SiO2換算)
Time per level 20秒
Number of levels 30回
前記組成分析において、 XPS装置により、シリコーン樹脂層のアルミ箔側の表面からの深さが0〜600nmの領域と、シリコーン樹脂層の表面からの深さが0〜700nmの領域のそれぞれの炭素原子の元素組成比に測定を行った。
次いで、これらの炭素原子の元素組成比において、不純物の付着の影響が大きい100nm以下の深さの領域を除く、シリコーン樹脂層の導電シート側の表面からの深さが100〜300nmの領域での炭素原子の元素組成比C1と、シリコーン樹脂層の表面からの深さが100nm以上の領域での炭素原子の元素組成比C2を求めた。
前記の結果から、炭素元素比CD(C1/C2)を算出した。
ポリアルケニルシロキサンとポリアルキル水素シロキサンとの混合物(触媒含有)をトルエンに溶解させた固形分濃度が30質量%の塗料。
アルミ箔(厚み10μm)の上に、前記のシリコーン塗料を塗布し、乾燥して0.3μmの厚みのシリコーン膜を形成した。
次いで、この上に、シリコーン塗料で用いたものよりも高分子量のポリアルケニルシロキサンとポリアルキル水素シロキサンとから形成された厚みが150μmのシリコーンシートを、ラミネートロールで押圧、積層した状態で加熱して架橋し、次いで、積層体から酸によりアルミ箔を溶解除去し、この積層体のシリコーン樹脂層について、前述した方法により、XPS装置によって組成分析を行い、シリコーン樹脂層のアルミ箔側からの分析結果を図9に示し、シリコーン樹脂層の表面側からの分析結果を図10に示した。この分析結果から算出した炭素元素比CDは1.5であった。
また、この積層体では、シリコーン樹脂層は、アルミ箔にしっかりと接着されていた。
シリコーン塗料層を形成せず、シリコーンシートのみを用いて実験1と同様にして厚みが150μmのシリコーン樹脂層を形成した。
このシリコーン樹脂層(シリコーンシート)を、アルミ箔(厚み10μm)の上にラミネートロールで押圧して積層したところ剥離した。
3:導電シート
5:シリコーン樹脂層
8:耐熱紙
9:シリコーン塗料層
10:底部
13:周状側壁部
15:無端状カットライン
17:遮断カットライン
20:補強リング
30:保持部材
31:環状壁
33:内方フランジ
35:周状段差部
A:容器
本発明によればまた、導電シートと該導電シートの一方の面に形成された厚みが20μm以上のシリコーン樹脂層とからなり、前記シリコーン樹脂層に、シリコーン塗料層を介して紙材が接着されていることを特徴とする耐熱性積層シートが提供される。
前記紙材が接着されていることを特徴とする耐熱性積層シートにおいては、IH調理器用の発熱シートとして使用されることが好適である。
(1)前記シリコーン樹脂層は、該層の表面側に比して、前記導電シート側の炭素原子の割合が多いこと、
(2)前記シリコーン樹脂層は、ケイ素原子と酸素原子と炭素原子との3元素基準で表して、下記式:
CD=C1/C2
式中、
C1は、前記シリコーン樹脂層の導電シート側の表面からの深さが100〜300
nmの領域での炭素原子の元素組成比(%)を表し、
C2は、前記シリコーン樹脂層の表面からの深さが100nm以上の領域での炭素
原子の元素組成比(%)を表す、
で表される炭素原子比CDが1より大きいこと、
(3)前記シリコーン樹脂層は、50〜200μmの厚みを有すること、
(4)前記シリコーン樹脂層が、シリコーンシートとシリコーン塗料層からなり、該シリコーン塗料層が前記導電シート側に形成されていること、
が好適である。
また、本発明の耐熱性積層シートがIH調理器用の発熱シートとして使用される態様においては、
(5)前記耐熱性積層シートの導電シートに、該シートを厚み方向に貫通する渦電流制御用カットラインが設けられていること、
が好ましい。
本発明によればまた、導電シートと該導電シートの一方の面に形成された厚みが20μm以上のシリコーン樹脂層とを有する耐熱性積層シートであって、前記シリコーン樹脂層が、シリコーンシートとシリコーン塗料層からなり、該シリコーン塗料層が前記導電シート側に形成されており、前記シリコーン樹脂層のシリコーンシートに、シリコーン塗料層を介して紙材が接着されていることを特徴とする耐熱性積層シートが提供される。
前記紙材が接着されていることを特徴とする耐熱性積層シートにおいては、IH調理器用の発熱シートとして使用されることが好適である。
(1)前記シリコーン樹脂層は、該層の表面側に比して、前記導電シート側の炭素原子の割合が多いこと、
(2)前記シリコーン樹脂層は、ケイ素原子と酸素原子と炭素原子との3元素基準で表して、下記式:
CD=C1/C2
式中、
C1は、前記シリコーン樹脂層の導電シート側の表面からの深さが100〜300
nmの領域での炭素原子の元素組成比(%)を表し、
C2は、前記シリコーン樹脂層の表面からの深さが100nm以上の領域での炭素
原子の元素組成比(%)を表す、
で表される炭素原子比CDが1より大きいこと、
(3)前記シリコーン樹脂層は、50〜200μmの厚みを有すること、
が好適である。
また、本発明の耐熱性積層シートがIH調理器用の発熱シートとして使用される態様においては、
(4)前記耐熱性積層シートの導電シートに、該シートを厚み方向に貫通する渦電流制御用カットラインが設けられていること、
が好ましい。
Claims (8)
- 導電シートと該導電シートの一方の面に形成された厚みが20μm以上のシリコーン樹脂層とからなることを特徴とする耐熱性積層シート。
- 前記シリコーン樹脂層は、該層の表面側に比して、前記導電シート側の炭素原子の割合が多い請求項1に記載の耐熱性積層シート。
- 前記シリコーン樹脂層は、ケイ素原子と酸素原子と炭素原子との3元素基準で表して、下記式:
CD=C1/C2
式中、
C1は、前記シリコーン樹脂層の導電シート側の表面からの深さが100〜300nmの領域での炭素原子の元素組成比(%)を表し、
C2は、前記シリコーン樹脂層の表面からの深さが100nm以上の領域での炭素原子の元素組成比(%)を表す、
で表される炭素原子比CDが1より大きい請求項2に記載の耐熱性積層シート。 - 前記シリコーン樹脂層は、50〜200μmの厚みを有する請求項1〜3の何れかに記載の耐熱性積層シート。
- IH調理器用の発熱シートとして使用される請求項1〜4の何れかに記載の耐熱性積層シート。
- 前記導電シートに、該シートを厚み方向に貫通する渦電流制御用カットラインが設けられている請求項5に記載の耐熱性積層シート。
- 前記シリコーン樹脂層が、シリコーンシートとシリコーン塗料層からなり、該シリコーン塗料層が前記導電シート側に形成されている請求項1〜6の何れかに記載の耐熱性積層シート。
- 前記シリコーン樹脂層に、シリコーン塗料層を介して紙材が接着されている請求項1〜7の何れかに記載の耐熱性積層シート。
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