JP4799860B2 - 電磁調理器用容器の評価方法 - Google Patents
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また、このような原理を応用して、電磁誘導炊飯器(IH炊飯器)も多数市販されている。そして、このような原理を利用して電磁調理器によって加熱を可能とする即席食品用容器として、ラーメン、そば、うどん、焼きそばといったカップ麺の容器を、そのまま電磁調理器で加熱可能な即席食品容器(特許文献1)、或いは電磁調理器による加熱を可能にしたアルミ箔材料製食品容器(特許文献2)といった電磁調理器用容器が提案されている。
また、使用後の分別処理、焼却、発熱体の磁性体のリサイクルを考慮した電磁調理器、電子レンジ共用容器(特許文献3)、アルミ箔を発熱させる電磁調理器用加熱容器(特許文献4)も提案されている。
特許文献1に記載の即席食品容器においては、鋼板からなる内層容器と、断熱素材からなる外層容器からなり、内層容器の底面が外層容器の底面から5mm以内の位置にあること、鋼板の厚さを0.05乃至0.5mmとすること、耐食性の付与の観点から鋼鈑の片面、または両面にめっき、化成処理、樹脂フィルムの積層、塗装のいずれか1以上の処理を施すことが提案されているが、このような構成では、即席食品用途としては材料コストや加工コストがかさみ経済性に欠け、また、電磁調理器が加熱可能か判断する鍋確認周波数において、前記発熱体の厚みや形態、加熱コイルからの距離等を調整するのが困難であり、発熱特性を適正かつ容易に設定するのが難しい。
ここで、鍋確認周波数とは電磁調理器が加熱可能かどうか判断するときの周波数で、実際に加熱する時の周波数とは異なる。電磁調理器が加熱可能かどうか判断する方法はメーカーによって異なるため、鍋確認周波数もまた、メーカーによって異なる。
非導電性材料からなる容器の少なくとも底部に導電性材料からなる導電層を有する容器の評価方法であって、
電磁調理器の加熱コイルから発振される鍋確認周波数により誘起される前記導電層の高周波抵抗分変化率(R−R0)/R0及びインダクタンス変化率(L−L0)/L0を測定することを特徴とする。
但し、Rは加熱コイル側からみた前記高周波抵抗分( Ω )、
R0は無負荷時の加熱コイル側からみた高周波抵抗分( Ω )、
Lは加熱コイル側からみた前記インダクタンス( μH)、
L0は無負荷時の加熱コイル側からみたインダクタンス( μH )を表す。
請求項2に記載の電磁調理器用容器の評価方法は、請求項1において、前記導電層の導電性材料が金属箔であることを特徴とする。
請求項3に記載の電磁調理器用容器の評価方法は、請求項1において、前記導電層の導電性材料が金属粉末を含有するコーティング材であることを特徴とする。
請求項4に記載の電磁調理器用容器の評価方法は、請求項1乃至3の何れかにおいて、前記導電層を底部の内面に形成したことを特徴とする。
請求項5に記載の電磁調理器用容器の評価方法は、請求項4において、前記導電層を導電性材料及び非導電性材料のラミネート材とし、前記導電性材料を底部側としたことを特徴とする。
請求項6に記載の電磁調理器用容器の評価方法は、請求項5において、前記ラミネート材の非導電性材料を容器の側壁に沿って上部に湾曲させ、容器の側壁の内面下部に接着したことを特徴とする。
請求項7に記載の電磁調理器用容器の評価方法は、請求項5又は6において、前記ラミネート材の非導電性材料に内容液対流用孔を形成したことを特徴とする。
請求項8に記載の電磁調理器用容器の評価方法は、請求項1乃至7の何れかにおいて、前記導電層がドーナツ状であることを特徴とする。
請求項9に記載の電磁調理器用容器の評価方法は、請求項1乃至8の何れかにおいて、前記導電層の導電性材料を凹凸状とし、表面積を大きくしたことを特徴とする。
請求項10に記載の電磁調理器用容器の評価方法は、請求項7乃至9の何れかにおいて、前記導電層を上下動可能としたことを特徴とする。
請求項11に記載の電磁調理器用容器の評価方法は、請求項1乃至10の何れかにおいて、前記導電性材料を積層としたことを特徴とする。
請求項12に記載の電磁調理器用容器の評価方法は、請求項11において、前記導電性材料の端部が重ならないように積層したことを特徴とする。
また、その流通性、使用形態、廃棄性、調理の手軽さ等に優れた電磁調理器用容器の評価をすることができる。
但し、Rは加熱コイル側からみた前記高周波抵抗分( Ω )、R0は無負荷時の加熱コイル側からみた高周波抵抗分( Ω )、Lは加熱コイル側からみた前記インダクタンス( μH)、L0は無負荷時の加熱コイル側からみたインダクタンス( μH )を表すものである。
本発明において、導電層の特性を高周波抵抗分変化率やインダクタンス変化率で特定した理由は、電磁調理器が1種類であれば、RとLの変化量で求められるが、メーカー毎、機種毎によって加熱コイルが異なり、R0、L0が異なるため、R及びLの変化率として算出したのである。
そして、本願の発明者は、各メーカーの電磁調理器を用いて実験を重ねた結果、各メーカーの電磁調理器の発振条件(メーカー特有の鍋確認周波数)に対する高周波抵抗分変化率(R−R0)/R0を5.3以上、インダクタンス変化率(L−L0)/L0を−0.20以下とした導電層、即ち、容器の底部の導電層を構成する導電性材料が前記変化率を満たす容器とすれば、各メーカーの電磁調理器に対応して加熱が可能であることを見出した。また、各メーカーの加熱可能な鍋の最小径は120mmであるが、前記変化率を満たすよう導電層を調整すれば容器の最小径を更に小さくすることも可能である。
図1に示すように、インピーダンスアナライザを用いて、導電層として容器の底部に装着される各種の導電性材料を各メーカーの電磁調理器の天板に置き、鍋確認周波数における加熱コイル側からみた高周波抵抗分R、インダクタンスLを測定した。次に、高周波抵抗分変化率を(R−R0)/R0として定義し、インダクタンス変化率を(L−L0)/L0として定義した。ここで、R0は、天板に何も置かないときの加熱コイル側からみた高周波抵抗分(Ω)、L0は、天板に何も置かないときの加熱コイル側からみたインダクタンス(μH)を表す。
図2は、上記のようにして各種の導電性材料を各メーカーの電磁調理器の天板に置き、鍋確認周波数において、各導電性材料の加熱の可否を確認した結果を、そのときの高周波抵抗分変化率とインダクタンス変化率の結果と併せて示したものである。
図2では白抜きの符号で示すものが加熱可能な導電材料である。図2に示す通り、各メーカーの電磁調理器に係わらず加熱可能な範囲があることが判り、前述した高周波抵抗分変化率(R−R0)/R0が5.3以上、インダクタンス変化率(L−L0)/L0が−0.20以下であれば、各メーカーの電磁調理器で加熱可能であるということが分かった。
一般に導電層の箔の厚みが厚くなるとLが小さくなり、Rも小さくなる傾向にあり、(L−L0)/L0は負方向に大きくなり、(R−R0)/R0は小さくなる。
尚、導電層の導電性材料の厚み、大きさ、形態、材料等の形成は、前記変化率の範囲内(高周波抵抗分変化率が5.3以上、インダクタンス変化率が−0.20以下)で決定すればよい。
次に、前記変化率内の導電層の材料と必要な厚みの関係を図3に示す。図3は、例示的に松下電器産業(株)電磁調理器(KZ-PH1)で加熱可能な導電性材料の最小径φ85mmとした時の導電性材料のバルク比抵抗と、加熱に必要な銀箔、アルミ箔、及び錫箔のそれぞれから成る金属箔の箔厚との関係を実験で求めた結果である。
この結果、導電性材料は、バルク比抵抗が小さければ薄くてよく、大きければ厚くする必要があることが判る。なお、バルク比抵抗とは材料固有の抵抗率であり、体積抵抗率のことをいう。
また、紙材、或いは前記樹脂との多層材料も用いることができる。
さらに、容器の形態としては、カップ、トレイ、或いはスタンディングパウチ等を挙げることができるが、その形態はこれらの形態に限定されるものではない。
尚、前記導電性材料において、金属箔として金箔、銀箔、白金箔を用いた場合は、食品に溶出しにくい点から必ずしもラミネート材とする必要はない。
また、導電層は、導電性塗料等の導電性材料の金属粉末を含有するコーティング材を容器の底部、好ましくは容器の底部内面にコーティングして形成するのが、高周波抵抗分を増す点で好ましく、この際、金属箔を実装して、なおかつ前記導電性材料から成るコーティング材を、紙、樹脂シート等の非導電性材料にコーティングして容器の底部に実装する。
また、前記非導電性材料に内容液対流用孔を形成するより、電磁調理器による加熱時に、容器内の液体の対流を効果的に生じさせることができ、前記導電層をドーナツ状にすることにより、電磁調理器による加熱効率を高めることが可能で、導電層が異常加熱した場合は、導電層を破断し加熱を停止させることができる。
さらに、前記導電層の導電性材料を凹凸状として表面積を大きくすることにより、加熱効率をより一層向上させることができる。
また、前記導電性材料が、高周波電流の浸透深さよりも十分に薄ければ、多層構造とし、その積層枚数により高周波抵抗分及びインダクタンスを適正範囲に調整することが可能となり、加熱効率が向上すると共に、容器の寸法を小径としてコンパクトな容器を提供することが可能となる。この場合、前記導電性材料の端部は重ならないように積層することが過熱による容器の破壊を防止する点で好ましい。
図4及び図5は、本発明の電磁調理器用容器の実施の形態1を示し、図4は容器の平面図であり、図5は図4のA−A断面図である。容器1の素材はポリプロピレン(非導電性材料)から成り、側壁部2及び底部3を有し、底部3の内面に、複数枚のアルミ箔の導電性材料5とポリプロピレンから成る非導電性材料6とのラミネート材から成る導電層4を形成したもので、前記導電性材料5が容器1の底部3側に位置するように、前記導電層4の非導電性材料6の端部を容器1の側壁2に沿って上部に湾曲させ、前記側壁2の内面下部にヒートシールして前記導電層4を装着している。
また、前記導電層4は、導電性材料5と非導電性材料6の中心部に孔8を形成してその中心部を除去したドーナツ状であり、このような構成とすることにより、電磁調理器による加熱効率を高めることが可能となり、導電層4が異常加熱した場合でも、導電層4の破断による過剰加熱を防止することができる。
図6及び図7に示すように、容器1には、上端部を側壁2上部にヒートシールし、側壁には等間隔に内方に突出する内カップ固定部材9が形成され、この固定部材9で内カップ(導電材料5)を容易に容器1内に装着して固定することができる。すなわち、前記導電層4を容器1の底部3に接近させると共に、固定部9を導電層4の側壁5aに形成されたひだ状の凹部5b(図9参照)に挿入することで、容器1内に内カップが収納される。
このような構成とすることにより、容器内の内容物を容易に蒸すことが可能となる。
そして、この場合、前記導電性材料5の端部は重ならないように積層することが過熱による容器の破壊を防止する点で好ましい。
また、前記導電性材料が、浸透深さよりも十分に薄ければ、多層構造とし、その積層枚数により高周波抵抗分及びインダクタンスを適正範囲に調整することもできる。
図1に示すように、横河・ヒューレット・パッカード(株)製LF・インピーダンスアナライザー(4192A)を用い、作成した電磁調理器用容器の導電層の鍋確認周波数における高周波抵抗分R(Ω)、インダクタンスL(μH)を測定した。
R0は、天板に何も置かないときの加熱コイル側からみた高周波抵抗分(Ω)、L0は、天板に何も置かないときの加熱コイル側からみたインダクタンス(μH)を表す。高周波抵抗分変化率は(R−R0)/R0として算出し、インダクタンス変化率は(L−L0)/L0として算出した。
作成した電磁調理器用容器に400ccの水を充填し、各メーカーの電磁調理器、IH炊飯器によって加熱を行い、各メーカー全てにおいて加熱可能かどうかを確認した。加熱可能な電磁調理器については、30℃から80℃までの昇温時間の測定を行った。
厚み2.5mmのポリプロピレン製シートを用い、内径175mm、高さ120mm、内容積1200ccの容器本体を作成した。
一方、導電性材料を、厚み7μm、外径φ150mmのアルミ箔2枚の積層とし、この導電性材料の両面にポリプロピレンをラミネート加工して導電層を作成した。
そして、前記容器本体内に、導電性材料のアルミ箔が容器本体の底部側に位置するように、ポリプロピレン端部を、容器本体の側壁の内面下部にヒートシールして電磁調理器用容器とした。
電磁調理器は、松下電器産業(株)製KZ−PH1、日立ホーム&ライフソリューション(株)製MH−B1、三洋電機(株)製IC−SF10、及び東芝コンシューママーケッティング(株)製MR−A25LHの4種を用いて加熱を行い、評価した。
実施例1において、導電層の中心部に60mmの孔を開け、前記導電層をドーナツ状とした以外は、実施例1と同様に加熱を行い、評価した。
厚み0.5mmのポリプロピレン製シートを用い、内径110mm、高さ50mm、内容積600ccの容器本体を作成した。
一方、導電性材料を、厚み7μm、外径110mm、105mm、100mmのアルミ箔3枚の積層とし、この導電性材料の両面にポリプロピレンをラミネート加工し、中心部に60mmの孔を開けて導電層を作成した。
そして、前記容器本体内に、導電層の導電性材料が容器本体の底部側に位置するように、ポリプロピレン端部を、容器本体の側壁の内面下部にヒートシールして電磁調理器用容器とし、加熱を行い、評価した。
実施例1の電磁調理器用容器について、IH炊飯器を用いて炊飯可能か否かを確認した。
IH炊飯器は、松下電器産業(株)製SR−XG10、三洋電機(株)製ECJ−FZ10、東芝コンシューママーケッティング(株)製RC−10KW、日立ホーム&ライフソリューション(株)製RZ−CG10J、タイガー魔法瓶(株)製JKA−G100TG、三菱電機(株)製NJ−GZ10−S、及び象印マホウビン(株)製NHC−C10の7種の炊飯器を用い、各炊飯器の炊飯機能で炊飯を行い、炊飯可能か確認した結果、いずれも炊飯可能であった。
尚、前記炊飯器の鍋確認周波数(kHz)は、松下電器産業(株)製SR−XG10、東芝コンシューママーケッティング(株)製RC−10KW、日立ホーム&ライフソリューション(株)製RZ−CG10Jが約35kHz、三洋電機(株)製ECJ−FZ10が約30kHz、三菱電機(株)製NJ−GZ10−S、象印マホウビン(株)製NHC−C10が約40kHz、タイガー魔法瓶(株)製JKA−G100TGは発振していなかった。
実施例1において、導電性材料を外径φ145mmのアルミ箔1枚とした以外は、実施例1と同様に加熱を行い、評価した。
実施例1において、導電性材料を外径φ150mmのアルミ箔1枚とした以外は、実施例1と同様に加熱を行い、評価した。
また、各実施例及び比較例の電磁調理器用容器の導電層における導電性材料の形態、評価結果を表2に示す。
2 側壁
3 底部
4 導電層
5 導電性材料
6 非導電性材料
7 内容液対流用孔
Claims (12)
- 非導電性材料からなる容器の少なくとも底部に導電性材料からなる導電層を有する容器の評価方法であって、
電磁調理器の加熱コイルから発振される鍋確認周波数により誘起される前記導電層の高周波抵抗分変化率(R−R0)/R0及びインダクタンス変化率(L−L0)/L0を測定することを特徴とする電磁調理器用容器の評価方法。
但し、Rは加熱コイル側からみた前記高周波抵抗分( Ω )、
R0は無負荷時の加熱コイル側からみた高周波抵抗分( Ω )、
Lは加熱コイル側からみた前記インダクタンス( μH)、
L0は無負荷時の加熱コイル側からみたインダクタンス( μH )を表す。 - 前記導電層の導電性材料が金属箔である請求項1に記載の電磁調理器用容器の評価方法。
- 前記導電層の導電性材料が金属粉末を含有するコーティング材である請求項1に記載の電磁調理器用容器の評価方法。
- 前記導電層を底部の内面に形成した請求項1乃至3の何れかに記載の電磁調理器用容器の評価方法。
- 前記導電層を導電性材料及び非導電性材料のラミネート材とし、前記導電性材料を底部側とした請求項4に記載の電磁調理器用容器の評価方法。
- 前記ラミネート材の非導電性材料を容器の側壁に沿って上部に湾曲させ、容器の側壁の内面下部に接着した請求項5に記載の電磁調理器用容器の評価方法。
- 前記ラミネート材の非導電性材料に内容液対流用孔を形成した請求項5又は6に記載の電磁調理器用容器の評価方法。
- 前記導電層がドーナツ状である請求項1乃至7の何れかに記載の電磁調理器用容器の評価方法。
- 前記導電層の導電性材料を凹凸状とし、表面積を大きくした請求項1乃至8の何れかに記載の電磁調理器用容器の評価方法。
- 前記導電層を上下動可能とした請求項7乃至9の何れかに記載の電磁調理器用容器の評価方法。
- 前記導電性材料を積層とした請求項1乃至10の何れかに記載の電磁調理器用容器の評価方法。
- 前記導電性材料の端部が重ならないように積層した請求項11に記載の電磁調理器用容器の評価方法。
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