JP2016191112A - 銅粉およびその製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】平均粒子径が1μm以下の比較的微細なサイズレベルの球状銅粉において、焼結が生じる温度を高めたものを提供する。【解決手段】コラーゲンペプチドで被覆された銅粒子からなる銅粉であって、SEM画像から求まる一次粒子の円相当径による平均粒子径DSEMが0.1〜1.0μmであり、粉体中に占める炭素の含有量が0.10〜0.50質量%である銅粉。この銅粉は、還元反応終了後の液を、粒子の分散が維持される状態で35℃以上沸点以下の温度に保持することにより、銅粒子表面のコラーゲンペプチド被覆層の付着量を増大させる手法で得ることができる。【選択図】図6

Description

本発明は、湿式過程で得られる球状の還元銅粉であって、特に銅粒子の表面が有機物質で被覆されているものに関する。また、その有機物質の付着量を増大させるのに適した湿式での銅粉製造法に関する。
粒子径が数百nm〜数μmの球状銅粉は、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の電極用導電ペーストなどに使用されている。しかし、銅粉のサイズが例えば1μm程度以下と微細になると、焼結が生じる温度が低下し、場合によってはセラミックの焼成温度よりもかなり低温で銅粉が焼結してしまう。セラミックと銅粉の焼結温度に差がありすぎると、積層コンデンサーにおいてデラミネーション(層間剥離)やクラックが発生しやすくなる。平均粒子径が例えば1μm程度以下と小さい銅粉において、その焼結が生じる温度をニーズに応じて適切に上昇させることができる技術の確立が待たれるところである。
なお、ここで言う「焼結が生じる温度」は、粉体を一定の圧力下で加熱昇温した場合に、ある一定の体積収縮率となるときの温度である。その温度はTMA(熱機械的分析;Thermomechanical Analysis)による測定データから一定の体積収縮率(例えば−5%の体積変化)となったときの温度として把握できる。TMAによる「焼結が生じる温度」が高いものは焼結開始温度も高くなる傾向がある。しかし、焼結開始温度にあまり大きな差がなくても、焼結の進行が遅い(焼結しにくい)性質の粉体と、焼結の進行が速い(焼結しやすい)性質の粉体とでは、前者の方が「焼結が生じる温度」は高くなり、また両者の「焼結が生じる温度」の差は焼結開始温度の差よりも大きくなる。
特許文献1には、ヒドラジン還元法を用いて保存安定性に優れた銅ペーストを得るための銅粉製造技術が開示されている。平均粒子径が1μmより小さい銅粉が得られているが、焼結が生じる温度を上昇させるような措置は講じられていない。
特許文献2には、ゼラチン存在下の湿式過程で酸化銅を強アルカリにより液中に一旦溶解させたのち還元して、粒子径がナノメートルサイズ、あるいはサブミクロン領域の微細な銅粉を得ることが記載されている。微細銅粉の焼結が生じる温度を上昇させる手法は開示されていない。
特許文献3には、ゼラチン存在下の湿式過程でヒドラジン還元法により銅粉を得る際、ゼラチンの分子量によって銅粉の粒子径を制御する技術が記載されている。平均粒子径が300nmより小さい銅粉が得られているが、そのような微細銅粉の焼結温度を上昇させる手法は開示されていない。
特許文献4には、銅粉を含窒素複素環化合物または水溶性高分子により表面被覆することにより、焼結開始温度の高い銅粉を得る方法が記載されている。水溶性高分子としてゼラチンを使用した例(実施例3)が挙げられているが、処理対象の原料銅粉は平均粒子径1.5μmの市販品である。この程度の大きい粒子径の銅粉は、平均粒子径1μm以下の微細銅粉に比較すると、元々焼結開始温度が高い。特許文献4には、湿式での銅粉合成プロセスを利用して微細銅粉の焼結が生じる温度を上昇させる技術は開示されていない。
特許第4843783号公報 特許第4496026号公報 特許第5537873号公報 特開2006−117959号公報
本発明は、平均粒子径が1μm以下の比較的微細なサイズレベルの球状銅粉において、焼結が生じる温度を高めたものを提供することを目的とする。また、そのような銅粉を湿式での銅粉合成プロセスを利用して合理的に製造する技術を開示する。
上記目的を達成するために、本発明では、コラーゲンペプチドで被覆された銅粒子からなる銅粉であって、SEM画像から求まる一次粒子の円相当径による平均粒子径DSEMが0.1〜1.0μmであり、粉体中に占める炭素の含有量が0.10〜0.50質量%である銅粉が提供される。
コラーゲンペプチドは、ゼラチンを分解して低分子化したものに相当する。ゼラチンは分子量が数万以上であり冷却するとゲル化するが、コラーゲンペプチドは分子量が数千程度であり冷却してもゲル化しにくいという特徴がある。
粉体の粒子径を定量的に測定する方法としては、レーザー回折・散乱法がよく使われるが、有機物で被覆された微細金属粒子の一次粒子径を精度良く測定することは難しい。種々検討の結果、得られた銅粉をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、その観察像から直接個々の粒子のサイズを計測する手法が、その銅粉の平均一次粒子径を把握するためには最も簡便かつ正確である。具体的には以下のようにして一次粒子の平均粒子径DSEMを求める。このDSEMは銅粒子表面の有機被覆層を含めた粒子径である。
〔一次粒子の平均粒子径DSEMの測定〕
測定対象である粉体をSEMにより観察する。無作為に観察視野を設定する。観察視野内において、粒子の全体像を表す輪郭が把握できる全ての粒子(すなわち粒子の一部が他の粒子に遮られているか視野外にはみ出ているために粒子の輪郭が把握できない粒子を除く全ての粒子)を選択する。この方法で選択した粒子を「選択粒子」と呼ぶ。全ての選択粒子についてそれぞれ、SEM像における粒子の輪郭からその粒子の投影面積Sを求める。投影面積Sは画像処理を利用して測定することができる。その投影面積Sと等しい面積を持つ円の直径Dを、その粒子の円相当径Dとする。測定対象となる選択粒子の総数Nが200個以上となるまで、観察視野の設定および選択粒子の測定を繰り返す。個々の選択粒子の円相当径Dの総和を選択粒子の総数Nで除した値を、当該粉体の一次粒子の平均粒子径DSEMとする。
本発明に従う銅粉は、平均一次粒子径の粒度分布がシャープである。例えば、下記(1)式により定まる変動係数CVが0.3以下である。
CV=σD/DSEM …(1)
ここで、σDはDSEMの測定対象粒子についての一次粒子円相当径の標準偏差である。
上記の銅粉の製造方法として、酸化銅(I)の粒子が分散しており、かつコラーゲンペプチドが溶解している水溶液に還元剤を添加し、粒子の分散を維持しながら85℃以上沸点以下の温度で酸化銅(I)から銅への還元反応を進行させることにより、コラーゲンペプチド被覆層を有する銅粒子を形成する工程(還元工程)、
コラーゲンペプチドで被覆された銅粒子が分散しており、かつコラーゲンペプチドが溶解している前記還元反応終了後の液を、粒子の分散が維持される状態で35℃以上75℃以下の温度範囲に1.5h以上保持することにより、銅粒子表面のコラーゲンペプチド被覆層の付着量を増大させる工程(被覆層増厚工程)、
前記被覆層増厚工程終了後の液を固液分離して銅粉を回収する工程(固液分離工程)、
を有する銅粉製造法が提供される。
酸化銅(I)はCu2O(いわゆる亜酸化銅)である。
上記被覆層増厚工程において液温を35℃以上75℃以下の温度範囲に保持している間のヒートパターン(温度の経時変化)を、下記(2)式に従うZ値が5,000以上となるヒートパターン、より好ましくはZ値が20,000以上となるヒートパターンとすることが効果的である。
ここで、tは反応終了後の降温過程で液温が75℃に到達した時点を基準とする経過時間(h)、f(t)は経過時間tにおける液温(℃)を表す関数、t1は反応終了後の降温過程で液温が35℃に到達する時点および固液分離を開始する時点のうち早い方の時点までの経過時間(h)である。
前記被覆層増厚工程において、銅粉中に占める炭素の含有量が0.10〜0.50質量%、より好ましくは0.15〜0.50質量%となるようにコラーゲンペプチド被覆層の付着量を増大させることができる。
還元剤としてヒドラジンを使用することができる。
本発明によれば、一次粒子の平均粒子径が1μm以下の比較的微細サイズの銅粉において、焼結が生じる温度の高いものが提供可能である。その銅粉は湿式過程で銅粉を合成する際の工程を利用して製造できるので、工業的に量産しやすい。また、被覆層の付着量をコントロールすることにより、粒子サイズが同等である銅粉において、種々の「焼結が生じる温度」に調整することができる。そのため、用途に応じた製品の品揃えをきめ細かく用意できる。本発明は、粒子径の小さい銅粉を電極に使用した積層セラミックコンデンサーの品質・性能向上に寄与しうる。
比較例1で得られた銅粉のSEM写真。 実施例1で得られた銅粉のSEM写真。 実施例2で得られた銅粉のSEM写真。 実施例3で得られた銅粉のSEM写真。 実施例4で得られた銅粉のSEM写真。 各実施例、比較例で得られた銅粉のTMA測定曲線を示すグラフ。 Z値と粉体中の炭素含有量の関係をプロットしたグラフ。
発明者らは、粒子表面に有機物質の被覆層を形成した銅粉において、その有機被覆層の付着量を増大させることにより焼結が生じる温度を上昇させることができることを見いだした。詳細な検討の結果、湿式の合成過程を利用して被覆層を形成させるためには、その有機物質としてコラーゲンペプチドが極めて有効であることがわかった。コラーゲンペプチドは水溶性であり、また冷却してもゲル化しにくいことから、厚い被覆層を形成させやすいものと推測される。
有機被覆層の付着量は、銅粉の全体質量(金属銅コア+有機被覆層)に占める炭素の質量(すなわち炭素含有量)で規定することができる。種々検討の結果、平均粒子径が0.1〜1.0μmであるサイズレベルの銅粉において、コラーゲンペプチドの被覆層を形成した場合、炭素含有量を0.10質量%以上とすることで焼結が生じる温度の上昇作用が顕著に現れる。炭素含有量を0.15質量%以上とすることがより好ましい。炭素含有量が増大するに伴い、焼結が生じる温度は上昇する。ただし、コラーゲンペプチド被覆層の付着量があまり多量になると、電極形成過程などで問題が生じる要因となる。これまでの検討によれば、炭素含有量は0.50質量%以下の範囲で調整することが好ましい。
なお、炭素含有量の測定は、融解−赤外線吸収法(JIS Z2615)により行うことができる。
粒子サイズについては、上述の一次粒子の平均粒子径が0.1〜1.0μmであるものを対象とする。変動係数CVが0.3以下の、シャープな粒度分布を有するものは充填性・流動性が良好であり、特に好適な対象となる。
コラーゲンペプチド被覆層の付着量を増大させた上記の銅粉は、湿式での銅粉合成過程を利用して製造することができる。具体的には、以下の手法を採用することができる。
〔還元工程〕
酸化銅(I)の粒子が分散しており、かつコラーゲンペプチドが溶解している水溶液を用意する。銅塩水溶液を用いて2価の銅から還元を行う湿式還元法(例えば特許文献1に開示のヒドラジン還元法)を利用する場合は、一次還元によって得られる酸化銅(I)が存在する液、またはその一次還元前あるいは途中の段階の液に、コラーゲンペプチドを溶解させる。液中の酸化銅(I)濃度は例えば0.5〜3.0mol/Lの範囲で設定すればよい。コラーゲンペプチドの液中含有量は、当該液中に存在する銅100質量部に対し、1〜40質量部の範囲で設定することが好ましい。
得られる銅粉の一次粒子サイズは、酸化銅(I)の粒子サイズに依存する。銅塩から出発する湿式還元法では、例えば特許文献1の手法の場合、一次還元での錯化剤の混合量、塩基の混合量、ヒドラジン系還元剤の混合量等により酸化銅(I)の粒子径を調整することができる。
酸化銅(I)の粒子が分散しており、かつコラーゲンペプチドが溶解している水溶液に、ヒドラジン等の還元剤を添加し、撹拌により粒子の分散を維持しながら85℃以上沸点以下の温度で酸化銅(I)から銅への還元反応を進行させる。ヒドラジンを使用する場合、その添加量は例えば銅1molに対して1.5〜4.0molとすることができる。酸化銅(I)の全量を還元して金属銅とすることが重要である。温度が85℃未満であっても還元反応は進行するが、反応時間が長くなり、酸化銅(I)の全量を還元するうえで効率的ではない。還流冷却器を使用すれば沸点での還元も可能であるが、通常、95℃以下の範囲で行えばよい。液が接触する気相は窒素雰囲気とすることが望ましい。酸化銅(I)の全量が還元反応に消費し尽くされたかどうかは、液の色が暗褐色となったことにより目視で判定できる。また、液のサンプルを分析すれば確認できる。液中に溶解しているコラーゲンペプチドは還元生成した銅粒子の周囲に取り付いて粒子表面を覆う。従って、還元反応が終了した時点で、コラーゲンペプチド被覆層を有する銅粒子が形成される。
〔被覆層増厚工程〕
この工程は、銅粒子表面のコラーゲンペプチド被覆層の付着量を増大させる工程である。発明者らの調査によれば、上記の還元反応を終えた液を35℃以上の温度範囲で保持することにより、既に形成されているコラーゲンペプチド被覆層の上に、更にコラーゲンペプチドが付着していく。還元反応進行中にはコラーゲンペプチドの付着量はあまり変化しないが、還元反応が終了した後には付着量が増していくのである。その理由は現時点で未解明である。
被覆層増厚工程中は、粒子の分散状態を維持する必要がある。沈降が生じやすい場合は撹拌を継続する。また、液中には十分な量のコラーゲンペプチドが溶解して存在する必要がある。上記還元工程に供する前の段階でのコラーゲンペプチド含有量を上述の好ましい範囲にしておけば、十分である。
この被覆層増厚工程中では、還元反応終了後にその反応温度(85℃以上)で保持し続けてもコラーゲンペプチドの付着量は増大するが、その場合は高温であるためにコラーゲンペプチドの付着速度が大きい。付着量を正確にコントロールするためには、還元反応温度よりも低温での保持が望ましい。種々検討の結果、還元反応終了後の降温過程を利用して、35℃以上75℃以下の温度範囲で1.5h以上保持することが効果的である。35〜50℃といった比較的低温で長時間保持してもよい。35℃未満の温度では付着速度が小さく、生産性が低下する。この工程での保持温度と保持時間を調整することにより、コラーゲンペプチド被覆層の付着量、すなわち銅粉に占める炭素含有量をコントロールすることができる。実際の工業生産現場での保持温度、保持時間については、所望の付着量(炭素含有量)に応じた適正条件を予備実験によりあらかじめ把握しておくことによって比較的容易に設定することができる。
35℃以上75℃以下の温度範囲で保持するときのヒートパターン(温度の経時変化)としては、前述の(2)式に従うZ値が5,000以上となるヒートパターンとすることが好ましい。特に、上記Z値が20,000以上となるヒートパターンは「焼結が生じる温度」の上昇作用(すなわち耐焼結性の向上作用)が大きい炭素含有量0.15以上の銅粉を作り分けるための手法として極めて有効である。Z値は通常200,000以内の範囲とすればよい。
〔固液分離工程〕
前記被覆層増厚工程終了後には、通常の銅粉製造と同様に液を固液分離して銅粉を回収することができる。
《比較例1》
〔銅粒子の合成〕
純水18700gと、濃度50.2質量%の硝酸銅水溶液28200gをN2ガス雰囲気中で撹拌混合した。この液に錯化剤として有機酸であるクエン酸・1水和物を2200g混合した。液温を27℃に調整した状態で、濃度48.69質量%の水酸化ナトリウム水溶液10800gを撹拌しながら5minかけて混合した。これにより銅水酸化物を生成させた。この液をA液と呼ぶ。
80.42%水和ヒドラジン600gに純水13700gを混合した水溶液を用意した。この液をB液と呼ぶ。また、市販のコラーゲンペプチド(新田ゼラチン社製;F800)を用意した。
A液を35℃に昇温したのち撹拌を継続しながら35℃に保持し、35℃到達時点から5min後にB液を約2minかけて混合し、35℃のまま更に5min撹拌した。その後、液温を約27minかけて35℃から50℃まで昇温し、その後、撹拌しながら50℃に120min保持することにより一次還元を行い、酸化銅(I)を生成させた。この液をC液と呼ぶ。
50℃のC液に、上記コラーゲンペプチドを約1minかけて撹拌しながら混合し、溶解させた。コラーゲンペプチドの混合量は、A液中に存在する銅100質量部に対しコラーゲンペプチド7.55質量部とした。80.42%水和ヒドラジン2700gを約5minかけて撹拌しながら混合し、50℃で更に5min撹拌し、その後、液温を約33minかけて50℃から90℃まで昇温し、90℃で90min以上撹拌しながら保持することにより二次還元を行い、金属銅を生成させた。目視により液の色が暗褐色となったことをもって、酸化銅(I)が全て銅に還元されて還元反応が終了したと判断した。この時点の液をD液と呼ぶ。なお、このD液をサンプリングして事後的にろ過し、そのろ液に還元剤として水素化ホウ素ナトリウムの水酸化ナトリウム水溶液を添加した結果、酸化銅(I)の残存時に観察されるガス発生は起こらず、還元反応が終了していたことが確認された。
〔還元終了後の処理〕
D液を90℃から40℃まで1.9hかけてほぼ一定の冷却速度に管理しながら徐冷した。40℃になったのち、液を加圧ろ過により固液分離し、固形分を回収した。なお、ろ過までは撹拌を継続して液(スラリー)中の粒子の分散を維持した(後述各例において同じ)。
この場合、反応終了後の降温過程で液温が75℃に到達した時点(t=0)から、40℃に到達した固液分離開始時点(t=t1)までの経過時間は1.33hであり、その間のヒートパターンは、f(t)=692.2t2−3946.5t+5625で表される。この関数f(t)についてt1=1.33として前記(2)式を適用すると、Z値は4,533と求まる。
その固形分を純水で十分に洗浄したのち、N2気流中で乾燥させ、コラーゲンペプチドで被覆された銅粒子からなる銅粉を得た。これを供試銅粉とした。
上記の供試銅粉を、SEM観察、炭素含有量測定、TMA測定に供した。
〔SEM観察〕
図1に供試銅粉のSEM写真を例示する。上述の方法で求めた一次粒子の円相当径による平均粒子径DSEMは0.33μmであった。また(1)式による分散係数CV値は0.286であった。
〔炭素含有量測定〕
炭素・硫黄分析装置(堀場製作所製;EMIA−220V)を用いてJIS Z2615に規定の金属材料の炭素定量方法における赤外線吸収法にて、供試銅粉の炭素含有量を測定した。その結果、粉体中に占める炭素の含有量が0.07質量%であった。
〔TMA測定〕
供試粉体100gを手動プレス機により成形して寸法φ5mmの圧粉体を得た。これをTMA装置(セイコーインスツルメンツ製;TMA/SS6200)の試料ホルダ(シリンダー)にセットし、大気雰囲気中でシリンダーの上部からピストン状治具により980mNの荷重を付与し、常温から昇温速度10℃/minにて昇温し、ピストン治具の変位を測定した。
図6にTMA曲線を以下の各例とともに示してある。
《実施例1》
比較例1に記載の条件で銅粒子を合成し、上記「還元終了後の処理」において、D液を90℃から40℃まで2.2hかけてほぼ一定の冷却速度に管理しながら徐冷したことを除き、比較例1と同条件で供試銅粉を得た。この場合、反応終了後の降温過程で液温が75℃に到達した時点(t=0)から、40℃に到達した固液分離開始時点(t=t1)までの経過時間は1.54hであり、前記(2)式によるZ値は5,249となる。
図2に供試銅粉のSEM写真を例示する。DSEMは0.33μm、分散係数CV値は0.296、粉体中に占める炭素の含有量が0.11質量%であった。
《実施例2》
比較例1に記載の条件で銅粒子を合成し、上記「還元終了後の処理」において、90℃から40℃まで約600secで冷却し、その後40℃で20h保持したことを除き、比較例1と同条件で供試銅粉を得た。この場合、反応終了後の降温過程で液温が75℃に到達した時点(t=0)から、固液分離開始時点(t=t1)までの経過時間は20.12hであり、前記(2)式によるZ値は32,409となる。
図3に供試銅粉のSEM写真を例示する。DSEMは0.34μm、分散係数CV値は0.290、粉体中に占める炭素の含有量が0.17質量%であった。
《実施例3》
実施例2において、40℃での保持時間を20hから40hと長くしたことを除き、実施例2と同条件で供試銅粉を得た。この場合、反応終了後の降温過程で液温が75℃に到達した時点(t=0)から、固液分離開始時点(t=t1)までの経過時間は40.12hであり、前記(2)式によるZ値は64,409となる。
図4に供試銅粉のSEM写真を例示する。DSEMは0.32μm、分散係数CV値は0.288、粉体中に占める炭素の含有量が0.22質量%であった。
《実施例4》
比較例1に記載の条件で銅粒子を合成し、上記「還元終了後の処理」において、90℃から70℃まで約240secで冷却した後、70℃で20h保持し、その後40℃まで約360secで冷却したことを除き、比較例1と同条件で供試銅粉を得た。この場合、反応終了後の降温過程で液温が75℃に到達した時点(t=0)から、固液分離開始時点(t=t1)までの経過時間は20.12hであり、前記(2)式によるZ値は98,415となる。
図5に供試銅粉のSEM写真を例示する。DSEMは0.31μm、分散係数CV値は0.296、粉体中に占める炭素の含有量が0.33質量%であった。
以上のように、還元終了後の液の保持温度・保持時間の管理によって粉体に占める炭素含有量、すなわち銅粒子表面のコラーゲンペプチド被覆量をコントロールすることができる。図6に示されるように、炭素含有量が多いものほど、加熱時の熱収縮が起こりにくい性質を呈することがわかる。この熱収縮は主として銅粒子同士の焼結が進行したことによるものである。
図7に、上記各例についてZ値と粉体中の炭素含有量の関係をプロットしたグラフを示す。Z値が5,000以上の領域で炭素含有量0.10質量%以上の銅粉が得られ、図6の実施例1と比較例1の対比からわかるように耐焼結性は顕著に向上する。Z値が20,000以上になると炭素含有量0.15質量%以上の銅粉が安定して得られ、図6の実施例2〜4のデータからわかるように耐焼結性は一層顕著に向上する。

Claims (8)

  1. コラーゲンペプチドで被覆された銅粒子からなる銅粉であって、SEM画像から求まる一次粒子の円相当径による平均粒子径DSEMが0.1〜1.0μmであり、粉体中に占める炭素の含有量が0.10〜0.50質量%である銅粉。
  2. 下記(1)式により定まる変動係数CVが0.3以下である請求項1に記載の銅粉。
    CV=σD/DSEM …(1)
    ここで、σDはDSEMの測定対象粒子についての一次粒子円相当径の標準偏差である。
  3. 酸化銅(I)の粒子が分散しており、かつコラーゲンペプチドが溶解している水溶液に還元剤を添加し、粒子の分散を維持しながら85℃以上沸点以下の温度で酸化銅(I)から銅への還元反応を進行させることにより、コラーゲンペプチド被覆層を有する銅粒子を形成する工程(還元工程)、
    コラーゲンペプチドで被覆された銅粒子が分散しており、かつコラーゲンペプチドが溶解している前記還元反応終了後の液を、粒子の分散が維持される状態で35℃以上75℃以下の温度範囲に1.5h以上保持することにより、銅粒子表面のコラーゲンペプチド被覆層の付着量を増大させる工程(被覆層増厚工程)、
    前記被覆層増厚工程終了後の液を固液分離して銅粉を回収する工程(固液分離工程)、
    を有する銅粉製造法。
  4. 酸化銅(I)の粒子が分散しており、かつコラーゲンペプチドが溶解している水溶液に還元剤を添加し、粒子の分散を維持しながら85℃以上沸点以下の温度で酸化銅(I)から銅への還元反応を進行させることにより、コラーゲンペプチド被覆層を有する銅粒子を形成する工程(還元工程)、
    コラーゲンペプチドで被覆された銅粒子が分散しており、かつコラーゲンペプチドが溶解している前記還元反応終了後の液を、粒子の分散が維持される状態で下記(2)式に従うZ値が5,000以上となるヒートパターン(温度の経時変化)にて35℃以上75℃以下の温度範囲に1.5h以上保持することにより、銅粒子表面のコラーゲンペプチド被覆層の付着量を増大させる工程(被覆層増厚工程)、
    前記被覆層増厚工程終了後の液を固液分離して銅粉を回収する工程(固液分離工程)、
    を有する銅粉製造法。
    ここで、tは反応終了後の降温過程で液温が75℃に到達した時点を基準とする経過時間(h)、f(t)は経過時間tにおける液温(℃)を表す関数、t1は反応終了後の降温過程で液温が35℃に到達する時点および固液分離を開始する時点のうち早い方の時点までの経過時間(h)である。
  5. 被覆層増厚工程において、Z値が20,000以上となるヒートパターンを適用する請求項4に記載の銅粉製造法。
  6. 前記被覆層増厚工程において、銅粉中に占める炭素の含有量が0.10〜0.50質量%となるようにコラーゲンペプチド被覆層の付着量を増大させる請求項3または4に記載の銅粉製造法。
  7. 前記被覆層増厚工程において、銅粉中に占める炭素の含有量が0.15〜0.50質量%となるようにコラーゲンペプチド被覆層の付着量を増大させる請求項5に記載の銅粉製造法。
  8. 還元剤としてヒドラジンを使用する請求項3〜7のいずれか1項に記載の銅粉製造法。
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