JP6630208B2 - 金属粉ペーストの製造方法、金属粉ペーストのスクリーン印刷方法、電極の製造方法、チップ積層セラミックコンデンサーの製造方法および金属粉ペースト - Google Patents

金属粉ペーストの製造方法、金属粉ペーストのスクリーン印刷方法、電極の製造方法、チップ積層セラミックコンデンサーの製造方法および金属粉ペースト Download PDF

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Description

本発明は、各種基板の表面や内部或いは外部に設けられる導電回路や電極の形成に用いられる金属粉ペーストの製造方法、金属粉ペーストのスクリーン印刷方法、電極の製造方法、チップ積層セラミックコンデンサーの製造方法および金属粉ペーストに関する。
金属粉ペーストとは、一般には有機系バインダーおよび溶剤からなるビークル中に、金属粉を分散させた流体を指す。金属粉ペーストは、例えば、チップ積層セラミックコンデンサーの製造に用いられる。チップ積層セラミックコンデンサーは、セラミック誘電体と内部電極を層状に積み重ねて一体化した構造を有しており、積層された各層がそれぞれコンデンサー素子を構成し、外部電極によってこれらの素子を電気的に並列となるように接続して、小型で大容量のコンデンサーとなっている。
チップ積層セラミックコンデンサーの製造においては、誘電体のシートが、次のように製造される。まず、BaTiO等の誘電体原料粉末に分散剤や成型助剤としての有機系バインダーおよび溶剤を加え、粉砕、混合、脱泡工程を経て、スラリーを得る。その後、ダイコータ等の塗布工法により、スラリーをPETフィルム等のキャリアフィルム上に薄く延ばして塗布する。それを乾燥して薄い誘電体シート(グリーンシート)を得る。
一方、チップ積層セラミックコンデンサーの内部電極の原料である金属粉は、誘電体原料粉末の場合と同様に、分散剤や成型助剤としての有機系バインダーおよび溶剤との混合、脱泡工程を経て、金属粉ペーストにされる。これを主にスクリーン印刷法によりグリーンシート(誘電体シート)上に印刷して内部電極とし、乾燥した後に、印刷済のグリーンシートをキャリアフィルムから剥離して、このようなグリーンシートを、多数積層させる。
積層させたグリーンシートに数10〜数100MPaのプレス圧力を加えて一体化させた後、個々のチップに切断する。その後、焼成炉で内部電極層、誘電体層を1000℃前後の高温で焼結させ、チップ積層セラミックコンデンサーが製造される。
チップ積層セラミックコンデンサーの内部電極には、コストの観点、環境規制の観点から、種々の金属が使用されるようになってきている。また、コンデンサーの小型化に伴い、内部電極は薄層化する傾向にあり、内部電極用の金属粉の粒子サイズはさらに小さいものが望まれている。
ところが、金属粉の小径化は融点を低下させ、焼結時により低い温度で溶融が始まり、電極層自体にクラックの発生を誘発する。また、降温後に電極層が急激に収縮するので、誘電体層と電極層の剥離(デラミネーション)が起こる可能性があり、内部電極用金属粉には誘電体と同等の熱収縮特性が求められる。これを表す指標として焼結開始温度がある。
このような要望に対して、金属粉ペーストに誘電体粒子またはガラスフリットを添加して、金属粉同士の接点を減らす、または、チップ積層セラミックコンデンサーの内部電極に適した金属粉を得るために、金属粉に表面処理を行う方法が提案されてきた。
金属粉ペーストに誘電体粒子、またはガラスフリットを添加する技術では、金属粉よりも小さくないと焼結後の導体層でこれらが抵抗となり、電極としての機能が低下する。このため、誘電体粒子やガラスフリットは金属粉よりも小さくなければならない。金属粉自体が0.1μmである場合、誘電体粒子やガラスフリットは数十nmの大きさである必要がある。このため、ハンドリングが困難となる上に、ペーストの原料コストが高くなってしまう。
一方、金属粉に表面処理を行う技術として、銅粉表面で加水分解したアルコキシシランをアンモニア触媒で縮合重合させて、SiOゲルコーティング膜を形成させる技術(例えば、特許文献1参照)、特定の官能基を有するシリコーンオイルで銅粉を被覆させる技術(例えば、特許文献2参照)、アミノ基を有するシランカップリング剤でニッケル錯イオンを介してニッケル粉を覆い、さらに熱処理をしてシリカ層を形成させる技術(例えば、特許文献3参照)、アミノ基を有するシランカップリング剤で銅粉を表面処理する技術(例えば、特許文献4〜7参照)が開示されている。
特許第3646259号公報 特許第4164009号公報 特許第4588688号公報 特開2013−171745号公報 国際公開第2013/125659号 特開2015−36445号公報 特開2015−36439号公報
上記の特許文献によれば、金属粉を表面処理することにより、耐酸化性を向上できるとともに、焼結開始温度を所望の範囲とすることができる。このような金属粉を有機系バインダーとともに溶剤中に分散して金属粉ペーストとし、グリーンシート上に塗布して焼結する際、有機系バインダー等の分解生成物である炭素質成分が残留し、金属粉の焼結性が損なわれることがある。この問題を解消するために、不活性ガス雰囲気中に酸素を混入して有機系バインダー等由来の炭素質成分を燃焼除去する脱バインダー工程を設けたり、脱バインダー工程後に酸化した金属粉を還元性ガス雰囲気中で還元する還元工程を設けているが、工程が長くなるとともに、金属粉の酸化、還元により、最終製品に好ましくない影響が出る可能性が指摘されている。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、チップ積層セラミックコンデンサーの内部電極等の製造に好適に使用可能であり、蒸発性、分解性に優れるため脱バインダー工程を設ける必要がなく、塗工性に優れ、かつ焼結遅延性を備えた、金属粉ペーストの製造方法、金属粉ペーストのスクリーン印刷方法、電極の製造方法、チップ積層セラミックコンデンサーの製造方法および金属粉ペーストを提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、表面処理により所定量の元素を吸着した金属粉を、所定の動粘度を有する炭化水素化合物に分散させて金属粉ペーストとすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明にかかる金属粉ペーストの製造方法は、金属粉(A)1gに対して、Si、Ti、Al、Zr、Ce、Snのうちいずれか1種以上の金属を100〜2000μg、およびNを吸着させた金属粉(A1)を得る表面処理工程と、前記金属粉(A1)を、40℃の動粘度が500〜30000mm/sである炭化水素化合物(B)に分散してペーストを調製するペースト調製工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明にかかる金属粉ペーストの製造方法は、上記発明において、前記表面処理工程は、前記金属粉(A1)に対してNが0.02質量%以上となるよう吸着させることを特徴とする。
また、本発明にかかる金属粉ペーストの製造方法は、上記発明において、前記炭化水素化合物(B)の40℃の動粘度は、500〜10000mm/sであることを特徴とする。
また、本発明にかかる金属粉ペーストの製造方法は、上記発明において、前記炭化水素化合物(B)は、ポリブテン(B1)を含むことを特徴とする。
また、本発明にかかる金属粉ペーストのスクリーン印刷方法は、上記のいずれか一つに記載の金属粉ペーストの製造方法によって製造された前記金属粉ペーストを、フィルターでろ過するろ過工程と、前記ろ過工程でろ過した前記金属粉ペーストを、グリーンシート上にスクリーン印刷する印刷工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明にかかる電極の製造方法は、上記のいずれか一つに記載の金属粉ペーストの製造方法によって製造された前記金属粉ペーストを、基材に塗布する塗布工程と、前記塗布工程で前記基材に塗布された前記金属粉ペーストを加熱焼結して電極を形成する焼結工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明にかかる電極の製造方法は、上記発明において、前記焼結工程は、前記金属粉ペーストを加熱焼結して金属光沢を有する電極を形成することを特徴とする。
また、本発明にかかるチップ積層セラミックコンデンサーの製造方法は、上記のいずれか一つに記載の金属粉ペーストの製造方法によって製造された前記金属粉ペーストを、基材に塗布する塗布工程と、前記金属粉ペーストが塗布された前記基材を積層し、圧力を加えて一体化させた後、チップに個片化する個片化工程と、前記チップを加熱焼結する焼結工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明にかかる金属粉ペーストは、金属粉(A)1gに対してSi、Ti、Al、Zr、Ce、Snのうちいずれか1種以上の金属が100〜2000μg、およびNが吸着するとともに、D50が0.5μm以下、Dmaxが1.0μm以下である表面処理された金属粉(A1)を、40℃の動粘度が500〜30000mm/sである炭化水素化合物(B)に分散してなり、前記金属粉(A1)にはNが0.02質量%以上吸着していることを特徴とする。
また、本発明にかかる金属粉ペーストは、前記金属粉(A1)の焼結開始温度は、350℃以上であることを特徴とする。
本発明にかかる金属粉ペーストは、有機系バインダーの添加なしでも塗工性に優れ、金属粉ペーストの塗膜を平坦化することができる。また、有機系バインダーを配合しないため、脱バインダー工程およびその後の還元工程を行う必要がない。さらに、使用する炭化水素化合物の蒸発性、分解性および化学的安定性が高く、金属粉ペーストの焼結遅延性や、金属粉の分散性にも優れるため、チップ積層セラミックコンデンサー用電極等の製造において、加工性および生産性に優れ、電極剥離などの製造上の問題を回避して、薄層化するチップ積層セラミックコンデンサー用電極等の製造を有利に行うことができる。
図1は、実施例2にかかる焼結体のSEM画像を示す図である。 図2は、比較例1にかかる焼結体のSEM画像を示す図である。
本発明にかかる金属粉ペーストの製造方法、金属粉ペーストのスクリーン印刷方法、電極の製造方法、チップ積層セラミックコンデンサーの製造方法および金属粉ペーストの好適な実施形態について、更に詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明にかかる金属粉ペーストは、金属粉(A)1gに対してSi、Ti、Al、Zr、Ce、Snのうちいずれか1種以上の金属が100〜2000μg、およびNが吸着するとともに、D50が0.5μm以下、Dmaxが1.0μm以下である表面処理された金属粉(A1)を、40℃の動粘度が500〜30000mm/sである炭化水素化合物(B)に分散してなることを特徴とする。
<金属粉(A)>
まず、金属粉(A)について説明する。本発明で使用する金属粉(A)の金属としては、例えば、Ag、Pd、Pt、Ni、およびCuから選択された金属を使用することができ、好ましくは、Ag、Ni、およびCuから選択された金属を使用することができる。金属粉(A)として、銅粉、銀粉、およびニッケル粉が好ましい。
金属粉(A)は、公知の方法によって製造された金属粉(A)を使用することができる。好適な実施の態様において、例えば、湿式法によって製造された金属粉(A)、乾式法によって製造された金属粉(A)を使用することができる。好適な実施の態様において、湿式法によって製造された銅粉、例えば、不均化法、化学還元法等によって製造された銅粉を使用することができる。湿式法によって製造された銅粉は、本発明にかかる表面処理まであわせて一貫して湿式プロセスになる点で好適である。
<湿式法による銅粉の製造>
好適な実施の態様において、湿式法による銅粉の製造方法として、アラビアゴムの添加剤を含む水性溶媒中に亜酸化銅を添加してスラリーを作製する工程、スラリーに希硫酸を5秒以内に一度に添加して不均化反応を行う工程、を含む方法によって製造される銅粉を使用することができる。好適な実施の態様において、上記スラリーは、室温(20〜25℃)以下に保持するとともに、同様に室温以下に保持した希硫酸を添加して、不均化反応を行うことができる。好適な実施の態様において、上記スラリーは、7℃以下に保持するとともに、同様に7℃以下に保持した希硫酸を添加して、不均化反応を行うことができる。好適な実施の態様において、希硫酸の添加は、pH2.5以下、好ましくはpH2.0以下、さらに好ましくはpH1.5以下となるように、添加することができる。好適な実施の態様において、スラリーへの希硫酸の添加は、5分以内、好ましくは1分以内、さらに好ましくは30秒以内、さらに好ましくは10秒以内、さらに好ましくは5秒以内となるように、添加することができる。好適な実施の態様において、上記不均化反応は10分間で終了するものとすることができる。好適な実施の態様において、上記スラリー中のアラビアゴムの濃度は、0.229〜1.143g/Lとすることができる。上記亜酸化銅としては、公知の方法で使用された亜酸化銅、好ましくは亜酸化銅粒子を使用することができ、この亜酸化銅粒子の粒径等は不均化反応によって生成する銅粉の粒子の粒径等とは直接に関係がないので、粗粒の亜酸化銅粒子を使用することができる。この不均化反応の原理は次のようなものである。
CuO+HSO → Cu↓+CuSO+H
この不均化によって得られた銅粉は、所望により、洗浄、防錆、ろ過、乾燥、解砕、分級を行って、その後にアミノ基を有するカップリング剤の水溶液と混合することもできるが、好ましい実施の態様において、洗浄、防錆、ろ過を行った後に、乾燥を行うことなく、そのままアミノ基を有するカップリング剤の水溶液と混合することができる。
上記不均化反応によって得られる銅粉は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した平均粒径(D50)が0.25μm以下である。好適な実施の態様において、上記不均化反応によって得られる銅粉は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定したD10、D90、Dmaxが、下記式を満たし、かつ粒径の分布が単一のピークを有する。
[Dmax≦D50×3、D90≦D50×2、D10≧D50×0.5]
好適な実施の態様において、上記不均化反応によって得られる銅粉は、レーザー回折式粒度分布測定装置による測定で、粒度分布が一山である(単一のピークを有する)。好適な実施の態様において、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した値が、[D50≦1.5μm]であり、好ましくは[D50≦1.0μm]であり、さらに好ましくは[D50≦0.5μm、Dmax≦1.0μm]である。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、島津製作所製SALD−2100を使用することができる。
<銀粉>
金属粉(A)として銀粉を使用する場合、特開2007−291513に従って、銀粉を製造することができる。たとえば、0.8Lの純水に硝酸銀12.6gを溶解させ、25%アンモニア水を24mL、さらに硝酸アンモニウムを40g添加し、銀アンミン錯塩水溶液を調製する。これに1g/Lの割合でゼラチンを添加し、これを電解液とし、陽極、陰極ともにDSE極板を使用し、電流密度200A/m2、溶液温度20℃で電解し、電析した銀粒子を極板から掻き落としながら1時間電解した。こうして得られた銀粉をヌッチェでろ過し、純水、アルコールの順に洗浄すればよい。得られる銀粉は、次のような特性のものである。測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製SALD−2100)を使用した。
D50:0.10μm、Dmax:0.50μm、分布:一山
<ニッケル粉>
金属粉(A)としてニッケル粉を使用する場合、特開2010−59467に従い、ニッケル粉を製造することができる。たとえば、6Lの純水にゼラチンを溶解させた後、濃度が0.02g/Lとなるようにヒドラジンを混合し、パラジウムと微量の銀の混合溶液を滴下してコロイド溶液とし、水酸化ナトリウムを加えることによりpHを10以上とした後、さらにヒドラジン濃度が26g/Lとなるまでヒドラジンを加える。
一方、ニッケル濃度が100g/Lの塩化ニッケル水溶液に塩化クロム、および塩化マグネシウムを、それぞれニッケルに対するクロム、マグネシウムの濃度が0.03質量%となるように添加する。これに前記ヒドラジン溶液を0.5L滴下して、ニッケルの還元析出を行い、ニッケル粉末を得る。得られたニッケル粉は、次のような特性のものである。測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製SALD−2100)を使用した。
D50:0.17μm、Dmax:0.51μm、分布:一山
<金属粉(A)に吸着する元素>
金属粉(A)の表面には、Al、Si、Ti、Zr、Ce、およびSnからなる群から選択された1種以上の元素が、表面処理によって吸着されて、表面処理層となっている。好適な実施の態様において、このように表面処理によって吸着される元素は、Al、Si、Ti、Zr、Ce、およびSnからなる群から選択された1種の元素、好ましくはAl、Si、およびTiからなる群から選択された1種の元素、さらに好ましくはSi又はTiとすることができる。また、金属粉(A)には、上記元素に加え、Nが吸着する。
<表面処理層を形成するアミノ基を有するカップリング剤(C)>
本発明において表面処理された金属粉(A1)は、Al、Si、Ti、Zr、Ce、およびSnからなる群から選択された1種以上の元素、およびNを含む表面処理層を有するものであり、これらの元素はアミノ基を有するカップリング剤(C)に由来する。好適な実施の態様において、アミノ基を有するカップリング剤(C)としては、アミノシラン、アミノ含有チタネート、アミノ含有アルミネートからなる群から選択された1種以上のカップリング剤を例示することができる。好適な実施の態様において、アミノ基を有するカップリング剤(C)は、中心原子であるAl、Ti、又はSiに配位する分子鎖の末端にアミノ基を有する構造となっている。本発明者は、この末端にアミノ基が位置することが、好適な表面処理をもたらすものとなっていると考えている。
<アミノシラン>
本発明の好適な実施の態様において、アミノ基を有するカップリング剤(C)として、次の式I:
N−R−Si(OR(R) (式I)
(ただし、上記式Iにおいて、Rは、直鎖状又は分枝を有する、飽和又は不飽和の、置換又は非置換の、環式又は非環式の、複素環を有する又は複素環を有しない、C1〜C12の炭化水素の二価基であり、Rは、C1〜C5のアルキル基であり、Rは、C1〜C5のアルキル基、又はC1〜C5のアルコキシ基である。)
で表されるアミノシランを使用することができる。
上記式Iにおいて、Rは、直鎖状又は分枝を有する、飽和又は不飽和の、置換又は非置換の、環式又は非環式の、複素環を有する又は複素環を有しない、C1〜C12の炭化水素の二価基であり、好ましくは、Rは、置換又は非置換の、C1〜C12の直鎖状飽和炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の分枝状飽和炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の直鎖状不飽和炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の分枝状不飽和炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の環式炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の複素環式炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の芳香族炭化水素の二価基、からなる群から選択された基とすることができる。好ましい実施の態様において、Rは、C1〜C12の、飽和又は不飽和の鎖状炭化水素の二価基であり、さらに好ましくは、鎖状構造の両末端の原子が遊離原子価を有する二価基である。好ましい実施の態様において、二価基の炭素数は、例えばC1〜C12、好ましくはC1〜C8、好ましくはC1〜C6、好ましくはC1〜C3とすることができる。
好ましい実施の態様において、Rは、−(CH−、−(CH−(CH=CH)−(CH−、−(CH−(C≡C)−(CH−、−(CHm+1−NH−(CHj+1−、−(CH−NH−(CHt+1−NH−(CH−、−(CH−(CH)NH−(CHj+1−、−(CH−(CH)NH−(CH−NH−(CH−、−CO−NH−(CH−、−CO−NH−(CHm+1−NH−(CHj+1−からなる群から選択された基である(ただし、nは1以上12以下の整数、m、jは1以上の整数であって、かつm+j≦10、s、t、uは、1以上の整数であって、s+t+u≦11である。また、上記(CH=CH)は、CとCの二重結合を表し、上記(C≡C)は、CとCの三重結合を表す)。好ましい実施の態様において、Rは、−(CH−、又は−(CHm+1−NH−(CHj+1−とすることができる。好ましい実施の態様において、上記の二価基であるRの水素は、アミノ基で置換されていてもよく、例えば1〜3個の水素、例えば1〜2個の水素、例えば1個の水素が、アミノ基によって置換されていてもよい。
好ましい実施の態様において、nは、好ましくは1以上6以下の整数、さらに好ましくは1以上4以下の整数とすることができ、例えば、1、2、3、4から選択された整数とすることができ、例えば、1、2又は3とすることができる。また、m、jは1以上の整数であって、好ましくは、m+j≦8、さらに好ましくは、m+j≦6である。s、t、uは、1以上の整数であって、好ましくは、s+t+u≦8、さらに好ましくは、s+t+u≦6である。
上記式Iにおいて、Rは、C1〜C5のアルキル基、好ましくはC1〜C3のアルキル基、さらに好ましくはC1〜C2のアルキル基とすることができ、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、又はプロピル基とすることができ、さらに好ましくは、メチル基又はエチル基とすることができる。
上記式Iにおいて、Rは、C1〜C5のアルキル基、好ましくはC1〜C3のアルキル基、さらに好ましくはC1〜C2のアルキル基とすることができ、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、又はプロピル基とすることでき、さらに好ましくは、メチル基又はエチル基とすることができる。また、Rは、アルコキシ基として、C1〜C5のアルコキシ基、好ましくはC1〜C3のアルコキシ基、さらに好ましくはC1〜C2のアルコキシ基とすることができ、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、又はプロポキシ基とすることでき、さらに好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基とすることができる。
<アミノ基含有チタネート>
好適な実施の態様において、アミノ基を有するカップリング剤として、次の式II:
(HN−R−O)Ti(OR (式II)
(ただし、上記式IIにおいて、
は、直鎖状又は分枝を有する、飽和又は不飽和の、置換又は非置換の、環式又は非環式の、複素環を有する又は複素環を有しない、C1〜C12の炭化水素の二価基であり、
は、直鎖状又は分枝を有する、C1〜C5のアルキル基であり、
pおよびqは、1〜3の整数であり、p+q=4である。)
で表されるアミノ基含有チタネートを使用することができる。
好適な実施の態様において、上記式IIのRとしては、上記式IのRとして挙げた基を好適に使用することができる。上記式IIのRとして、例えば、−(CH−、−(CH−(CH=CH)−(CH−、−(CH−(C≡C)−(CH−、−(CHm+1−NH−(CHj+1−、−(CH−NH−(CHt+1−NH−(CH−、−(CH−(CH)NH−(CHj+1−、−(CH−(CH)NH−(CH−NH−(CH−、−CO−NH−(CH−、−CO−NH−(CHm+1−NH−(CHj+1−からなる群から選択された基である(ただし、nは1以上12以下の整数、m、jは1以上の整数であって、かつm+j≦10、s、t、uは、1以上の整数であって、s+t+u≦11である。また、上記(CH=CH)は、CとCの二重結合を表し、上記(C≡C)は、CとCの三重結合を表す)。特に好適なRとして、−(CHm+1−NH−(CHj+1−を挙げることができる(ただし、m+j=4、特に好ましくはm=j=2)。
上記式IIにおいて、Rは、上記式IのRとして挙げた基を好適に使用することができる。好適な実施の態様において、C3のアルキル基を挙げることができ、特に好ましくは、プロピル基、およびイソプロピル基を挙げることができる。
上記式IIにおいて、pおよびqは、1〜3の整数、かつp+q=4であり、好ましくはp=q=2の組み合わせ、p=3、q=1の組み合わせを挙げることができる。このように官能基が配置されたアミノ基含有チタネートとして、プレインアクトKR44(味の素ファインテクノ(株)製)を挙げることができる。
<表面処理層の形成>
金属粉(A)を、アミノ基を有するカップリング剤(C)の水溶液と混合して、金属粉分散液を調製する。好適な実施の態様において、金属粉分散液は、金属粉(A)1gに対して、アミノ基を有するカップリング剤(C)を0.005g以上、0.025g以上、好ましくは0.050g以上、さらに好ましくは0.075g以上、さらに好ましくは0.10g以上含むものとすることができる。金属粉(A)に対するSi、Ti、Al、Zr、CeおよびSnからなる群から選択された1種以上の元素の吸着量を調製する観点から、金属粉(A)1gに対して、アミノ基を有するカップリング剤(C)を、0.005g以上0.500g以下、好ましくは0.025g以上0.250g以下、さらに好ましくは0.025g以上0.100g以下の範囲となるよう混合すればよい。金属粉(A)と、アミノ基を有するカップリング剤(C)の水溶液とは、公知の方法によって混合することができる。この混合にあたっては、適宜、公知の方法によって撹拌を行うことができる。好適な実施の態様において、混合は、例えば、常温で行うことができ、例えば、5〜80℃、10〜40℃、20〜30℃の範囲の温度で行うことができる。
好適な実施の態様において、金属粉分散液を調製する工程の後に、金属粉分散液を撹拌する工程を行うことができる。また、好適な実施の態様において、金属粉分散液を調製する工程の後に、金属粉分散液を超音波処理する工程を行うことができる。この撹拌と超音波処理は、いずれか一方のみを行うことができるが、両方を同時にあるいは前後して行うこともできる。超音波処理は、金属粉分散液100mlあたり、好ましくは50W〜600W、さらに好ましくは100W〜600Wの出力で行うことができる。好ましい実施の態様において、超音波処理は、好ましくは10MHz〜1MHz、さらに好ましくは20MHz〜1MHz、さらに好ましくは50MHz〜1MHzの周波数で行うことができる。超音波処理の処理時間は、金属粉分散液の状態に応じて選択するが、好ましくは1分〜180分、さらに好ましくは3分〜150分、さらに好ましくは10分〜120分、さらに好ましくは20分〜80分とすることができる。
金属粉分散液は、混合、撹拌および/又は超音波処理によって、金属粉分散液中の金属粉(A)がカップリング剤(C)と十分に接触した後に、金属粉分散液から金属粉(A’)を、残渣として回収する工程、残渣として回収された金属粉(A’)を、水性溶媒によって洗浄する工程を、行う。残渣としての回収は、公知の手段で行うことができ、例えば、ろ過、デカンテーション、遠心分離等を使用することができ、好ましくはろ過を使用することができる。水性溶媒による洗浄は、水性溶媒を用いて公知の手段で行うことができる。例えば、残渣に水性溶媒を添加して撹拌した後に、再び残渣として回収することによって行うことができ、あるいは例えば、ろ過フィルターに載置された残渣に対して水性溶媒を連続的に添加することによっても行うことができる。
好適な実施の態様において、水性溶媒による洗浄は、洗浄後の金属粉(A’)の乾燥質量に対して5倍の質量の水性溶媒を添加した後に得たろ過液の中に、ICP分析によって検出されるSi、Ti、Al、Zr、CeおよびSnからなる群から選択された1種以上の元素が、50ppm以下の濃度、好ましくは30ppm以下の濃度となるまで、残渣として回収された金属粉(A’)を水性溶媒によって洗浄することによって、行うことができる。上記濃度の下限には特に制限はないが、例えば1ppm以上、例えば5ppm以上とすることができる。
洗浄に使用される水性溶媒としては、純水、又は水溶液を使用することができる。水溶液としては、例えば、無機酸、無機酸の塩、有機酸、有機酸の塩、水溶性のアルコール、および水溶性のエステルから選択された1種以上の溶質又は溶媒が、溶解又は分散した水溶液を使用することができる。無機酸およびその塩としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、および炭酸、およびそれらの塩を挙げることができる。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、およびカルシウム塩を挙げることができる。有機酸およびその塩としては、例えば、1〜3価でC1〜C7のカルボン酸およびその塩を挙げることができ、例えば、ギ酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、安息香酸、およびフタル酸、およびそれらの塩を挙げることができる。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、およびカルシウム塩を挙げることができる。水溶性のアルコールとしては、例えば、1〜3価でC1〜C6のアルコールを挙げることができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、およびフェノールを挙げることができる。水溶性のエステルとしては、例えば、C1〜C12のエステルを挙げることができ、例えば、上述した酸とアルコールによるエステルを挙げることができる。水性溶媒のpHは、好ましくはpH7〜14、さらに好ましくはpH8〜12の範囲とすることができる。純水としては、高度に精製された高純度の水を使用することができるが、工業的に使用される純度の水であって意図的な化合物の添加が行われていない水であれば、使用することができる。水溶液に溶解させる上記溶質の含有量は、溶質が溶解可能な範囲の含有量であって、上述したICP分析によって検出される元素の濃度を上述の範囲とすることができるような含有量であれば使用することができる。このような条件を満たす範囲で、上記溶質を、例えば、水溶液の質量に対して、0.0001質量%〜20質量%、0.001質量%〜10質量%の範囲で含有させることができる。
洗浄された金属粉(A’)は、水性溶媒から分離して、所望により乾燥されないまま次の工程に進むこともできるが、所望により乾燥させて、表面処理された金属粉(A1)として得ることもできる。この乾燥には、公知の手段を使用することができる。好適な実施の態様において、この乾燥は、酸素雰囲気又は不活性雰囲気下で行うことができる。乾燥は、例えば、加熱による乾燥を行うことができ、例えば、50〜90℃、60〜80℃の温度で、例えば、30〜120分間、45〜90分間の加熱処理によって、行うことができる。加熱乾燥に続けて、表面処理された金属粉(A1)に対して、所望により、さらに粉砕処理を行ってもよい。
好適な実施の態様において、回収された表面処理された金属粉(A1)に対して、後処理としてさらなる表面処理を行ってもよい。防錆、あるいは、ペースト中での分散性を向上させること等を目的として、表面処理された金属粉(A1)の表面にさらに有機物等を吸着させてもよい。このような表面処理として、例えば、ベンゾトリアゾール、イミダゾール等の有機防錆剤による防錆処理をあげることができ、このような通常の処理によっても、アミノ基を有するカップリング剤(C)による表面処理層が脱離等することはない。優れた焼結遅延性を失わない限度内で、当業者はそのような公知の表面処理を、所望により行うことができる。表面処理された金属粉(A1)の表面に、優れた焼結遅延性を失わない限度内で、さらに表面処理を行って得られた金属粉(A2)、すなわち、金属粉(A)1gに対して、Si、Ti、Al、Zr、Ce、Snのうちいずれか1種以上の金属が100〜2000μg、およびNが吸着する金属粉(A2)は、本発明の範囲内である。
<金属粉(A1)の焼結開始温度>
表面処理された金属粉(A1)は、後述する炭化水素化合物(B)に分散して導電性の金属粉ペーストとし、これを焼結することによって電極を製造することができる。本発明にかかる表面処理された金属粉(A1)は、優れた焼結遅延性を有する。焼結遅延性の指標として、焼結開始温度がある。これは金属粉(A1)から成る圧粉体を還元性雰囲気中で昇温し、ある一定の体積変化(収縮)が起こったときの温度のことである。本発明では1%の体積収縮が起こるときの温度を焼結開始温度とする。金属粉(A1)の焼結開始温度が高いほど、金属粉ペーストが焼結遅延性に優れていることを意味する。
金属粉(A1)の焼結開始温度は、表面処理された金属粉(A1)について、サンプルを作製して、TMA(Thermomechanical Analyzer)を使用して測定することができる。例えば、金属粉(A1)に所定量のステアリン酸亜鉛を添加して混合し、この混合物を直径7mmの筒体に装填し、上部からポンチを押し込んで1Ton/cmで3秒保持して、高さ約5mm相当の円柱状の成形体サンプルを作成する。この成形体サンプルを、軸を鉛直方向にして且つ軸方向に98.0mNの荷重を付与した条件で、昇温炉に装填し、2vol%H−N(300cc/分)流量中で昇温速度5℃/分、測定範囲:50〜1000℃に連続的に昇温していき、成形体の高さ変化(膨張・収縮の変化)を自動記録する。成形体サンプルの高さ変化(収縮)が始まり、その収縮率が1%に達したところの温度を「焼結開始温度」とする。
好適な実施の態様において、本発明にかかる表面処理された金属粉(A1)の焼結開始温度は、450℃以上、好ましくは500℃以上、さらに好ましくは600℃以上、さらに好ましくは700℃以上、さらに好ましくは780℃以上、さらに好ましくは800℃以上、さらに好ましくは810℃以上、さらに好ましくは840℃以上、さらに好ましくは900℃以上、さらに好ましくは920℃以上、さらに好ましくは950℃以上とすることができる。特に、従来、高い焼結開始温度が求められる場合に使用されてきたNi超微粉(平均粒径0.2μm〜0.4μm)の焼結開始温度が、500℃〜600℃の範囲にあることと比較すると、本発明にかかる表面処理された銅粉は、Niよりも安価で入手容易なCuを使用して、微細な粒子でありながら、同等以上の優れた焼結遅延性を有している。また、本発明にかかる表面処理を行ったニッケル粉も、従来より優れた焼結遅延性を有している。
<金属粉(A1)の表面処理層の厚み>
本発明における好適な実施の態様において、Al、Si、Ti、Zr、Ce、およびSnからなる群から選択された1種以上の元素が吸着されてなる表面処理層の厚みx(nm)は、STEM(Scanning Transmission Electron Microscope:走査型透過電子顕微鏡)で得られる表面近傍のEDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:エネルギー分散型X線分析)の濃度profileによって求めることができる。この表面処理層の厚み、例えば、元素としてSiを含む場合、Si含有層の厚み(Si厚み)は、表面処理された金属粉の表面の断面において、EDSによる測定を行って、全原子に対するSi原子の存在比が最大となる深さでのSi原子の存在量を100%としたときに、Si原子の存在量が10%以上である範囲であると、規定したものである。表面処理された金属粉(A1)の表面の断面は、試料切片において観察した少なくとも100個以上の金属粉(A1)粒子のなかから、5個選択して、それぞれその最も明瞭な境界を、表面処理された金属粉(A1)の表面に垂直な断面であると扱って、測定および集計を行うことができる。表面処理層の厚みは、Ti含有層の厚み(Ti厚み)、Al含有層の厚み(Al厚み)等の場合でも、Si含有層の厚み(Si厚み)と同様に、求めることができる。
好適な実施の態様において、表面処理された金属粉(A1)は、上記方法で測定したAl、Si、Ti、Zr、Ce、およびSnからなる群から選択された1種以上の元素を含む表面処理層の厚みx(nm)と、金属粉(A1)の焼結開始温度y(℃)とが、次の式を満たすことが好ましい。
0.5≦x≦10、25x+620≦y
表面処理層の厚みxが0.5nmより小さいと、金属粉(A1)の焼結遅延効果が小さくなり、10nmより大きいと金属粉(A1)の凝集が起こりやすくなる。
<金属粉(A1)に吸着する元素量>
表面処理された金属粉(A1)には、金属粉(A)1gに対してAl、Si、Ti、Zr、Ce、およびSnからなる群から選択された1種以上の元素が、100〜2000μg吸着している。金属粉(A)1gに対する上記元素の吸着量を上記の範囲とすることにより、焼結遅延性および分散性に優れる金属粉ペーストを得ることができる。金属粉(A)1gに対する上記元素の吸着量は、好ましくは100〜600μgである。元素の吸着量は、表面処理された金属粉(A1)を酸で溶解し、ICP−AAS(Inductively Coupled Plasma−Atomic Absorption Spectrometry:誘導結合プラズマ原子発光分析法)で定量して、表面処理された金属粉(A1)の単位質量(g)に対する、吸着した元素の質量(μg)から求めることができる。
好適な実施の態様において、表面処理された金属粉(A1)は、Al、Si、Ti、Zr、CeおよびSnからなる群から選択された1種の元素の金属粉1gに対する吸着量をz(μg)、焼結開始温度をy(℃)としたとき、次の式を満たすことが好ましい。
100≦z≦2000、y≧0.2z+600
上記元素の吸着量zが100μgより小さいと、金属粉(A1)の焼結遅延効果が小さくなり、2000μgより大きいと金属粉(A1)の凝集が起こりやすくなる。
金属粉(A1)には、表面処理層を形成する際に使用するアミノ基を有するカップリング剤(C)末端のアミノ基に由来するN(窒素)が含まれている。好適な実施の態様において、表面処理された金属粉(A1)に対するN(窒素)の割合は、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上とすることができ、上限は、好ましくは0.50質量%、より好ましくは0.20質量%、さらに好ましくは0.15質量%である。金属粉(A1)に吸着するN量を上記範囲とすることにより、金属粉(A1)の凝集がなく、作業性に優れる金属粉ペーストを得ることができる。表面処理された金属粉(A1)に吸着するN(窒素)の質量%は、金属粉(A1)を高温で溶融させ、発生したNOから算出することができる。
<金属粉(A1)の粒径>
表面処理された金属粉(A1)は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した平均粒径D50が、0.05〜1μm、好ましくは0.05〜0.5μmの範囲とすることができ、最大粒子径Dmaxが1.0μm以下で二次粒子が存在しないものとすることができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、島津製作所製SALD−2100を使用することができる。本発明において、二次粒子とは、上記方法で粒度分布を測定したときに、極大値が複数ある場合の、大きい極大値側近傍の粒子のことを指す。上記方法で粒度分布の極大値が一つのみの場合、二次粒子が存在しないという。
<金属粉ペーストの製造>
表面処理された金属粉(A1)を、40℃の動粘度が500〜30000mm/sである炭化水素化合物(B)に分散して金属粉ペーストを製造する。
<炭化水素化合物(B)>
炭化水素化合物(B)は、40℃の動粘度が500〜30000mm/sであれば、特に限定されるものではない。炭化水素化合物(B)は、単独の化合物であってもよいが、通常は複数の炭化水素の混合物であって、混合物の40℃の動粘度が500〜30000mm/sであれば好適に使用可能である。炭化水素化合物(B)の40℃の動粘度が500mm/sより小さいと、金属粉ペーストを基材に塗布した際に、塗膜切れ等が生じる恐れがある。また、炭化水素化合物(B)の40℃の動粘度が30000mm/sより大きいと、金属粉ペーストの粘度が大きくなりすぎるため、狭ピッチの配線パターンの印刷が難しく、小型化するのが困難となる。炭化水素化合物(B)の40℃の動粘度は、500〜20000mm/sが好ましく、500〜10000mm/sがさらに好ましい。
炭化水素化合物(B)の40℃における動粘度は、JIS K2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準拠し測定した。
炭化水素化合物(B)は、ポリブテン(B1)を含むことが好ましい。ポリブテンとは、主にイソブテンの繰り返し単位からなる重合体であり、イソブテンの繰り返し単位のみからなる重合体に加え、イソブテンの繰り返し単位以外に、ブテン−1等のイソブテン以外のブテンの異性体、および/またはブタジエンの繰り返し単位を含む重合体も含みうる。
ポリブテン(B1)のイソブテンの繰り返し単位の割合は、60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。
また、好適な実施の態様において、炭化水素化合物(B)中に含まれるポリブテン(B1)の割合は、80〜100質量%の範囲であることが好ましい。
好適な実施の態様において、ポリブテン(B1)の数平均分子量は、500〜1500の範囲であってよい。
ポリブテン(B1)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
ポリブテン(B1)の塩素含有量は、金属粉ペーストの安定性の観点から、塩素濃度が低いものが好ましい。塩素濃度は、100ppm以下であることが好ましく、10ppm以下とすることが特に好ましい。
ポリブテン(B1)の塩素の測定は、燃焼イオンクロマトグラフにより測定することができる。
<溶剤(D)>
本発明の好適な実施の態様において、金属粉ペーストは、金属粉(A1)および40℃の動粘度が500〜30000mm/sの炭化水素化合物(B)以外に、電子材料のスクリーン印刷用ペーストに使用される溶剤(D)を含んでいてもよい。溶剤(D)としては、電子材料のスクリーン印刷用ペーストに使用される溶剤を使用することができ、このような溶剤として、例えば、アルコール溶剤、グリコールエーテル溶剤、アセテート溶剤、およびケトン溶剤を挙げることができる。アルコール溶剤としては、例えば、テルピネオール、イソプロピルアルコール、ブチルカルビトールを挙げることができる。テルピネオールとしては、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオールを挙げることができ、特にα−テルピネオールが好ましい。グリコールエーテル溶剤としては、例えば、ブチルカルビトールを挙げることができる。アセテート溶剤としては、例えば、ブチルカルビトールアセテートを挙げることができる。ケトン溶剤としては、例えば、メチルエチルケトンを挙げることができる。なお、金属粉ペーストを基材に塗布した際の塗膜性能を保持する観点から、40℃の動粘度が500〜30000mm/sの炭化水素化合物(B)に溶剤(D)を添加した混合物の、40℃の動粘度が500mm/sより小さくならない範囲で添加することが好ましい。
<金属粉ペーストの調製>
表面処理された金属粉(A1)を、40℃の動粘度が500〜30000mm/sの炭化水素化合物(B)、あるいは溶剤(D)を使用する場合は炭化水素化合物(B)と溶剤(D)の混合物、に分散して金属粉ペーストを調製する操作は、公知の分散手段によって行うことができ、所望により、撹拌、混練、超音波処理を行ってもよい。
<金属粉ペーストのフィルターろ過>
本発明の好ましい実施の態様において、金属粉ペーストを調製した後に、調製された金属粉ペーストを、フィルターでろ過する工程を、行うことが好ましい。このようなフィルターによるろ過は、金属粉ペーストによって、微細な配線や、極薄の導電層(電極)を形成するために行われる。好適な実施の態様において、例えば、1〜8μm、好ましくは1〜5μmのポアサイズを有するフィルターを使用することができる。好適な実施の態様において、フィルターによるろ過は、減圧ろ過又は加圧ろ過によって行われる。減圧ろ過を行う場合の圧力は、例えば、0.1〜1.0atm、好ましくは0.2〜0.6atmの範囲とすることができる。加圧ろ過を行う場合の圧力は、例えば、1.0〜2.0atm、好ましくは1.0〜1.6atmの範囲の圧力とすることができる。
好適な実施の態様において、ポアサイズ5μm、有効面積9.0cmのフィルターにより0.3atmの減圧ろ過を行って、投入金属粉ペーストに対する透過した金属粉ペーストの割合(透過率)が、例えば、30秒後に、35質量%以上、好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、また、8分後に、例えば、55質量%以上、好ましくは60質量%以上とすることができる。
<金属粉ペースト中の金属粉(A1)の分散状態>
微細な配線や極薄の導電層(電極)を形成するためには、含有される金属粉(A1)のうち粒径の過大なものや凝集したものが除去されていることが好ましい。本発明によれば、ろ過前の金属粉ペーストが、ろ過容易な状態、すなわち含有される金属粉(A1)の粒径が十分に小さく且つ凝集が十分に低減されており、ろ過の操作が容易であって、十分に高い透過率を達成できるような、金属粉(A1)の分散状態となっている点で優れている。また、本発明に係る金属粉ペーストは、所望により、ろ過することなく使用することができるほどに、金属粉(A1)の分散状態が優れたものとなっている。
<金属粉ペーストによる塗膜の平坦性>
金属粉ペーストによる塗膜の平坦性は、塗膜の最大山高さRzを、接触式表面粗さ計(小坂研究所製、SE−3400)によりJIS−BO601に準拠して、n=3で測定し、平均値を求めることで評価することができる。金属粉ペーストは、表面処理された金属粉の低い凝集性と高い分散性を反映して、その塗膜は、Rzが小さく、高い平坦性を発揮できるペーストとなっている。
<金属粉ペーストによる電極>
好適な実施の態様において、本発明にかかる金属粉ペーストを基材に塗布した後に焼結して、電極を製造することができる。焼結して製造される焼結体(電極)は、平坦な薄層電極として好適である。したがって、特に、チップ積層セラミックコンデンサーの内部電極として好適に使用可能である。このチップ積層セラミックコンデンサーは、小型高密度の実装が可能であることから、多層基板の内層あるいは最外層に好適に実装して使用することができ、電子部品に搭載して好適に使用することができる。
本発明の好適な実施の態様によれば、焼結して製造される電極(焼結体)は、その断面において、好ましくは、直径が10nm以上の、SiO、TiO、又はAlのいずれかが存在しているものとすることができる。好適な実施の態様において、この焼結体は、断面に、最大径0.5μm以上のSiO、TiO、又はAlのいずれかが0.5個/μm以下で存在しているものとすることができ、あるいは、例えば0.1〜0.5個/μmの範囲で、存在しているものとすることができる。この最大径とは、SiO、TiO、又はAlの粒子の最小外接円の直径をいう。本発明の好適な実施の態様において、SiO、TiO、又はAlの粒子の析出はこのように制御されており、極薄電極の形成を可能にすると同時に、電極の信頼性(品質)を低下させることがない。
以上のように、表面処理された金属粉(A1)を使用して、金属粉ペースト(導電性ペースト)を製造することができる。表面処理された金属粉(A1)は、炭化水素化合物(B)に分散させて金属粉ペーストを製造する場合においても、ペースト中で凝集することなく、容易に分散する。そして、得られた導電性ペーストは、金属粉(A1)粒子の凝集が低減されていることから、薄層電極に求められる平坦な塗膜を、容易に形成できるものであり、平坦な薄層電極の形成に好適である。このように、表面処理された金属粉(A1)、およびこれを使用した導電性ペーストは、作業性、生産性および焼結遅延性に優れるとともに、金属粉(A1)の分散媒として使用する炭化水素化合物(B)は、蒸発性、分解性に優れるため、金属粉(A1)の焼結に影響を及ぼすことなく、導電性に優れる電極を得ることができる。
<金属粉(A)の製造>
金属粉として、銅粉、ニッケル粉、銀粉を用意した。
(銅粉)
表面処理に供される銅粉20gを、不均化法による湿式法によって製造した。これは具体的には以下の手順で行った。
(1)アラビアゴム0.2g + 純水350mLに、亜酸化銅50gを添加。
(2)希硫酸(25wt%)50mLを一時に添加。
(3)回転羽で攪拌後(300rpm×10分)、60分放置。
(4)生成した沈殿を洗浄。
得られた銅粉は、次のような特性であった。測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製SALD−2100)を使用した。
D50:0.12μm、Dmax:0.28μm、分布:一山
(ニッケル粉)
ニッケル粉は東邦チタニウム製のNF32(D50 0.3μm)を用いた。
(銀粉)
特開2007−291513に従って製粉した。すなわち、0.8Lの純水に硝酸銀12.6gを溶解させ、25%アンモニア水を24mL、さらに硝酸アンモニウムを40g添加し、銀アンミン錯塩水溶液を調整した。これに1g/Lの割合でゼラチンを添加し、これを電解液とし、陽極、陰極ともにDSE極板を使用し、電流密度200A/m2、溶液温度20℃で電解し、電析した銀粒子を極板から掻き落としながら1時間電解した。こうして得られた銀粉をヌッチェでろ過し、純水、アルコールの順に洗浄を行い、70℃で12時間、大気雰囲気下で乾燥させた。この銀粉を乾式分級し、最終的にD50 0.1μm、Dmax 0.4μmの銀粉を得た。
<カップリング剤水溶液>
アミノ基を有するカップリング剤(C)として下記のシランを使用し、2vol%のカップリング剤水溶液を50mL調製した。
シラン:ジアミノシランA−1120(MOMENTIVE社製)
アミノシランA−1110(MOMENTIVE社製)
エポキシシランZ−6040(東レダウコーニング社製)
使用したジアミノシランの構造式は、以下のとおりである。
ジアミノシランA−1120:HN−C−NH−C−Si(OCH
アミノシランA−1110:H2N−C36−Si(OCH33
エポキシシランZ−6040:
[実施例1〜12、比較例1〜9]
<表面処理された金属粉(A1)の調製>
上記湿式法で得られた銅粉スラリーから上澄み液を除去し、銅粉20gを乾燥させることなく調製したカップリング剤水溶液50mL中に投入し、カップリング剤水溶液と銅粉とを60分間、下記条件下で撹拌および超音波処理を行いながら混合した。
撹拌条件:回転羽(300rpm)
超音波処理:出力100W、周波数100kHz(超音波洗浄器3周波タイプ/W−113、(株)テックジャム製)
次に銅粉が分散したカップリング剤水溶液をアスピレーターで吸引ろ過したのち、分離した銅粉に純水を加え、さらにろ過した。ろ過による洗浄は、洗浄後に銅粉の乾燥質量の5倍の純水を加えてろ過して得られたろ液をICP分析した場合に、カップリング剤に由来するSi、Ti、Al、Zr、Ce又はSnの元素が50ppm以下の濃度となるまで行った。上記の場合、洗浄のための純水は約350mLを要した。そこで、ICP分析は、最後の約350mLをろ過後に約100mLを更にろ過し、この約100mLのろ液に対して行った。得られた銅粉を窒素雰囲気下で70℃で1時間乾燥し、乳鉢で粉砕して表面処理された銅粉を得た。
ニッケル粉、銀粉は、各20gを調製したカップリング剤水溶液50mL中にそれぞれ投入し、上記の銅粉と同様にして表面処理されたニッケル粉、銀粉を得た。
実施例1〜12および比較例1〜9の金属粉(A1)について、使用した金属粉の種類とカップリング剤を表1に示す。
<表面処理された金属粉(A1)の評価>
上述の操作によって得られた、表面処理された銅粉、ニッケル粉、銀粉に対して、以下の方法によって評価を行った。
<金属粉(A1)のサイズ>
金属粉の大きさについて、レーザー回折式粒度分布測定(島津製作所SALD−2100)で測定を行った。表面処理後の銅粉は、D50:0.12μm、Dmax:0.29μm、分布:一山であった。
<金属粉(A1)の熱機械的特性>
表面処理された金属粉について、サンプルを作製して、TMA(Thermomechanical Analyzer)を使用して、焼結開始温度を測定した。サンプル作製および熱機械的特性の条件は以下のとおりである。
サンプル作製条件
圧粉体サイズ:7mmφ×5mm高さ
成型圧力:1Ton/cm(1000kg重/cm
(潤滑剤として0.5質量%のステアリン酸亜鉛を添加)
測定条件
装置:島津製作所TMA−50
昇温:5℃/分
雰囲気:2vol%H−N(300cc/分)
荷重:98.0mN
上記のように、金属粉に0.5質量%のステアリン酸亜鉛を添加して混合し、この混合物を直径7mmの筒体に装填し、上部からポンチを押し込んで1Ton/cmで3秒保持して、高さ約5mm相当の円柱状に成形した。この成形体を、軸を鉛直方向にして且つ軸方向に98.0mNの荷重を付与した条件で、昇温炉に装填し、2vol%H−N(300cc/分)流量中で昇温速度5℃/分、測定範囲:50〜1000℃に連続的に昇温していき、成形体の高さ変化(膨張・収縮の変化)を自動記録した。成形体の高さ変化(収縮)が始まり、その収縮率が1%に達したところの温度を「焼結開始温度」とした。
実施例1〜12および比較例1〜9の金属粉(A1)の焼結開始温度を表1に示す。
ジアミノシランA−1120およびアミノシランA−1110で表面処理された金属粉の焼結開始温度は、いずれも600℃以上であった。これに対して、エポキシシランZ−6040dで表面処理された金属粉の焼結開始温度は、いずれも450℃を超えなかった。
<表面処理層中の元素量>
表面処理された金属粉の表面に吸着したSi、NおよびCを次の条件で分析した。
Si吸着量・・・表面処理された金属粉を酸で溶解し、ICP(誘導結合プラズマ原子発光分析法)で定量して、表面処理された金属粉の単位質量(g)に対するSiの質量(μg)を算出した。
N、C吸着量・・・表面処理された銅粉を高温で溶融させ、発生したNO、COの量からN、Cの吸着量を算出して、銅粉の全表面に付いたN、Cの量を測定することで、表面処理された銅粉に対する、N、Cの質量%を求めた。
実施1〜12および比較例1〜9の金属粉(A1)のSi吸着量とN吸着量を表1に示す。
ジアミノシランA−1120およびアミノシランA−1110で表面処理されたいずれの金属粉も、金属粉1gに対して、カップリング剤の中心元素であるSiが100μg以上、かつNが金属粉に対して0.02質量%以上吸着した。一方、エポキシシランZ−6040dで表面処理されたいずれの金属粉も、金属粉1gに対して、カップリング剤の中心元素であるSiが100μg以上吸着したが、Nの金属粉に対する吸着量は0質量%であった。
<金属粉ペーストの製造>
アミノシランまたはジアミノシランで表面処理された金属粉を、分散媒として2種類のポリブテン(HV300:数平均分子量Mn=1400、動粘度(40℃)=26,000mm/s、HV15:Mn=630、動粘度(40℃)=655mm/s、いずれもJXエネルギー(株)製)にそれぞれ混合し、ミキサーで混練を行い、実施例1〜12にかかる金属粉ペーストを製造した。このときの金属粉:ポリブテンの質量比は、76:24とした。また、比較例として、表面処理された金属粉を、分散媒として脂肪酸(オレイン酸;C18、二重結合1個)およびバインダー(エチルセルロース)を溶解した溶剤(α−テルピネオール:TPO)に分散させて、金属粉ペーストを製造した。比較例1、2、4、5、7および8の金属粉:溶剤:バインダー:脂肪酸の質量比は、60:37:2:1とした。さらに、エポキシシランで表面処理された金属粉を、ポリブテン(HV300:数平均分子量Mn=1400、動粘度(40℃)=26,000mm/s、JXエネルギー(株)製)に混合し、ミキサーで混練を行い、比較例3、6、および9にかかる金属粉ペーストを製造した。
<金属粉ペーストの塗膜>
上述の手順で得られた金属粉ペーストをスクリーン印刷でアルミナ基板上に塗工した。実施例1〜12、ならびに比較例1、2、4、5、7および8の金属粉ペーストにより作製した塗膜は、いずれも塗膜切れがみられず、塗工性は良好であった。一方、比較例3、6および9の金属粉ペーストにより作製した塗膜に関しては、塗工性が不良であった。
<塗膜の焼結、および焼結体の評価>
実施例1〜12、および比較例1〜9の金属粉ペーストにより作製した塗膜を、120℃で10分、大気雰囲気下で乾燥させた。その後焼成炉にて、窒素雰囲気下で、850℃で30分焼成をおこない、焼結体を得た。焼結体について、目視による外観ならびにSEM観察を実施した。結果について表1に記載する。また、実施例2および比較例1のSEM画像を図1および図2にそれぞれ示す。
図1および2、並びに表1に示すように、比較例1、2、4、5、7および8の金属粉ペーストから作製した焼結体は、SEM観察において金属粉形状が観察されたが、実施例1〜12および比較例の金属粉ペーストから作製した焼結体は、同一焼成条件で金属粉の形状が観察されず、焼結性に優れることが確認できる。
また、比較例3、6および9の金属粉ペーストから作成した焼結体は、外観(目視)で下地が露出していた。
本発明の金属粉ペーストは、蒸発性、分解性および塗工性に優れるとともに、化学的安定性が高く、かつ焼結遅延性を備える。したがって、たとえば、チップ積層セラミックコンデンサーの内部電極等の製造に好適に使用できる。

Claims (13)

  1. 金属粉(A)1gに対して、Si、Ti、Al、Zr、Ce、Snのうちいずれか1種以上の金属を100〜2000μg、およびNを吸着させた金属粉(A1)を得る表面処理工程と、
    前記金属粉(A1)を、40℃の動粘度が500〜30000mm/sである炭化水素化合物(B)に分散してペーストを調製するペースト調製工程と、を含むことを特徴とする金属粉ペーストの製造方法。
  2. 前記調製工程は、前記金属粉(A1)を、有機系バインダーを含まない、40℃の動粘度が500〜30000mm /sである炭化水素化合物(B)に分散してペーストを調製することを特徴とする請求項1に記載の金属粉ペーストの製造方法。
  3. 前記表面処理工程は、前記金属粉(A1)に対してNが0.02質量%以上となるよう吸着させることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属粉ペーストの製造方法。
  4. 前記炭化水素化合物(B)の40℃の動粘度は、500〜10000mm/sであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の金属粉ペーストの製造方法。
  5. 前記炭化水素化合物(B)は、ポリブテン(B1)を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の金属粉ペーストの製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれか一つに記載の金属粉ペーストの製造方法によって製造された前記金属粉ペーストを、フィルターでろ過するろ過工程と、
    前記ろ過工程でろ過した前記金属粉ペーストを、グリーンシート上にスクリーン印刷する印刷工程と、
    を含むことを特徴とする金属粉ペーストのスクリーン印刷方法。
  7. 請求項1〜のいずれか一つに記載の金属粉ペーストの製造方法によって製造された前記金属粉ペーストを、基材に塗布する塗布工程と、
    前記塗布工程で前記基材に塗布された前記金属粉ペーストを加熱焼結して電極を形成する焼結工程と、
    を含むことを特徴とする電極の製造方法。
  8. 前記焼結工程は、前記金属粉ペーストを加熱焼結して金属光沢を有する電極を形成することを特徴とする、請求項に記載の電極の製造方法。
  9. 請求項1〜のいずれか一つに記載の金属粉ペーストの製造方法によって製造された前記金属粉ペーストを、基材に塗布する塗布工程と、
    前記金属粉ペーストが塗布された前記基材を積層し、圧力を加えて一体化させた後、チップに個片化する個片化工程と、
    前記チップを加熱焼結する焼結工程と、
    を含むことを特徴とするチップ積層セラミックコンデンサーの製造方法。
  10. 金属粉(A)1gに対してSi、Ti、Al、Zr、Ce、Snのうちいずれか1種以上の金属が100〜2000μg、およびNが吸着するとともに、D50が0.5μm以下、Dmaxが1.0μm以下である表面処理された金属粉(A1)、40℃の動粘度が500〜30000mm/sである炭化水素化合物(B)に分散され、前記金属粉(A1)にはNが0.02質量%以上吸着していることを特徴とする金属粉ペースト。
  11. 前記金属粉(A1)は、有機系バインダーを含まない、40℃の動粘度が500〜30000mm /sである炭化水素化合物(B)に分散されていることを特徴とする請求項10に記載の金属粉ペースト。
  12. 前記炭化水素化合物(B)は、ポリブテン(B1)を含むことを特徴とする請求項10または11に記載の金属粉ペースト。
  13. 前記金属粉(A1)の焼結開始温度は、350℃以上であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一つに記載の金属粉ペースト。
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