JP2016133090A - 燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】A/D変換器の数をインジェクタのグループ数と同じにしつつ、何れかのA/D変換器が故障した際のエンジン運転性能の低下を抑制する。
【解決手段】インジェクタIJ1〜IJ4のグループ毎に電流検出回路53,54とADC(A/D変換器)61,62があり、ADC制御部81は、MUX(マルチプレクサ)63,64を、各ADC61,62に電流検出回路53,54からの信号So1,So2をそれぞれ入力させる第1状態と、各ADC61,62にコンデンサC0の電圧Vcを表す電圧Vcmを入力させる第2状態とに、切り替える。駆動制御部82は、インジェクタを駆動する場合に、MUX63,64が第1状態の場合のA/D変換結果AD1,AD2を用いて、コンデンサC0からの放電電流の制御及び定電流制御を行い、電圧制御部83は、MUX63,64が第2状態の場合のA/D変換結果AD1,AD2の一方を用いて昇圧回路55の制御を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料噴射制御装置に関する。
車両に搭載されたエンジンの各気筒に燃料を噴射供給するインジェクタ(燃料噴射弁)としては、例えば、開弁用のアクチュエータとしてコイルを有する電磁式のものがある。そして、このようなインジェクタを駆動して燃料噴射を制御する燃料噴射制御装置は、コイルへの通電開始タイミング及び通電時間を制御することにより、燃料の噴射タイミング及び噴射量を制御している(例えば、特許文献1参照)。また、例えば特許文献1には、燃料噴射制御装置に関して、下記《1》〜《4》の内容が記載されている。
《1》燃料噴射制御装置は、電源電圧を昇圧してコンデンサを充電する昇圧回路と、気筒毎のインジェクタの各コイルに、コンデンサの充電電圧と電源電圧とのそれぞれを電源として電流を流すためのインジェクタ駆動回路と、制御回路と、を備える。
《2》制御回路は、コンデンサの充電電圧を検出し、その充電電圧が目標電圧となるように昇圧回路を制御する。
《3》制御回路は、複数のインジェクタの何れかを駆動して開弁させる場合には、駆動対象インジェクタのコイル(以下、通電対象コイルという)に流す電流を制御するための通電制御として、放電電流制御と定電流制御とを行う。駆動対象インジェクタとは、駆動対象のインジェクタのことである。放電電流制御は、駆動対象インジェクタの駆動期間の開始時から、通電対象コイルに流れる電流が目標ピーク値になったことを検知するまで、インジェクタ駆動回路にコンデンサから通電対象コイルへの放電を実施させる制御である。この放電電流制御は、インジェクタを速やかに開弁させるために実施される。定電流制御は、上記放電の終了時から駆動期間が終了するまで、通電対象コイルに一定の電流が流れるように、インジェクタ駆動回路に電源電圧を電源とした通電対象コイルへの通電を実施させる制御である。
《4》各気筒のインジェクタを、同時に駆動されることがないインジェクタ同士の複数のグループに分ける。そして、そのグループ毎に、各グループのインジェクタのコイルに流れる電流を検出するための手段として、電流検出用抵抗を設ける。電流検出用抵抗は、コイルに流れる電流に応じた電圧の検出信号を発生する。そして、制御回路は、何れかのインジェクタを駆動する場合、駆動対象インジェクタのグループに対応した電流検出用抵抗からの検出信号を用いて放電電流制御及び定電流制御を行う。
特開2007−113547号公報
燃料噴射制御装置において、制御回路は、コンデンサの充電電圧と、上記グループ毎の電流検出用抵抗からの各検出信号とを、取得する必要がある。
このため、インジェクタのグループ数がN(Nは2以上の整数)であるとすると、制御回路には、コンデンサの充電電圧と、N個の電流検出用抵抗からの各検出信号とを、それぞれA/D変換して入力させることとなる。そして、この場合、「N+1」個のA/D変換器を設けることが考えられる。つまり、「N+1」個のA/D変換器のうち、1つのA/D変換器は、コンデンサの充電電圧を検出するためのA/D変換器(以下、電圧検出用A/D変換器という)である。そして、他のA/D変換器のそれぞれは、各グループのインジェクタのコイルに流れる電流をそれぞれ検出するためのA/D変換器(以下、電流検出用A/D変換器という)である。
ここで、「N+1」個のA/D変換器のうち、電流検出用A/D変換器の何れかが故障した場合には、その故障した電流検出用A/D変換器に対応するグループのインジェクタを駆動することができなくなる。しかし、他の電流検出用A/D変換器に対応するグループのインジェクタは正常に駆動することができるため、車両を退避走行させることが可能なエンジンの運転を実現することができる。
一方、「N+1」個のA/D変換器のうち、電圧検出用A/D変換器が故障した場合には、コンデンサの充電電圧を検出することができないため、昇圧回路の制御を停止せざるを得ず、コンデンサの充電ができなくなる。よって、インジェクタを駆動する際には、コンデンサからコイルへの放電ができず、コイルには電源電圧を電源とした定電流制御だけで電流を流すこととなる。このため、インジェクタを開弁することができなくなるか、開弁させることができても、インジェクタの開弁タイミング(即ち燃料噴射タイミング)が、最適なタイミングから大きく遅れてしまい、例えばエンジンの出力低下や騒音増加やエミッションの悪化を招くこととなる。
このように、グループ数より多い「N+1」個のA/D変換器を設けたとしても、1つのA/D変換器が故障しただけで、コンデンサの充電が不能になる可能性があり、その結果、エンジンの運転性能が著しく低下して、車両の退避走行性能の悪化を招いてしまう。
そこで、本発明は、燃料噴射制御装置において、A/D変換器の数をインジェクタのグループ数と同じにしつつ、何れかのA/D変換器が故障した場合におけるエンジンの運転性能の低下を最低限に抑えることができるようにすること、を目的としている。
第1発明の燃料噴射制御装置は、昇圧回路と、駆動回路と、電圧制御手段と、駆動制御手段と、を備える。
昇圧回路は、電源電圧を昇圧してコンデンサを充電する回路である。
駆動回路は、エンジンに燃料を噴射する複数のインジェクタの各アクチュエータに、少なくともコンデンサの充電電圧を電源として、電流を流すための回路である。
電圧制御手段は、コンデンサの充電電圧が目標電圧となるように、昇圧回路を制御する手段である。
駆動制御手段は、複数のインジェクタの何れかを駆動して開弁させる場合には、駆動対象のインジェクタである駆動対象インジェクタのアクチュエータに対する通電制御を、駆動回路を用いて実施する手段である。
複数のインジェクタは、複数のグループに分けられている。そして、この燃料噴射制御装置は、インジェクタのグループ毎に、電流検出手段とA/D変換器とを備える。
グループ毎の各電流検出手段は、自身に対応するグループのインジェクタのアクチュエータに流れる電流を表す電圧の電流検出信号を、それぞれ出力する。グループ毎の各A/D変換器には、自身に対応するグループの電流検出手段からの電流検出信号と、コンデンサの充電電圧を表すモニタ用電圧とが、マルチプレクサによって切り替えて入力される。
更に、この燃料噴射制御装置は、切替制御手段を備える。切替制御手段は、マルチプレクサを、各A/D変換器に各電流検出手段からの各電流検出信号をそれぞれ入力させる第1状態と、各A/D変換器にモニタ用電圧を入力させる第2状態とに、切り替える。
マルチプレクサが第1状態に制御された場合、各A/D変換器は、自身に対応するグループの電流検出手段からの電流検出信号をA/D変換することとなる。また、マルチプレクサが第2状態に制御された場合、各A/D変換器は、同じモニタ用電圧をA/D変換することとなる。
そして、駆動制御手段は、マルチプレクサが第1状態に制御されている場合の、各A/D変換器によるA/D変換結果(即ち、各電流検出信号のA/D変換結果)を用いて、その各A/D変換器にそれぞれ対応するグループのインジェクタを駆動するための通電制御を行う。また、電圧制御手段は、マルチプレクサが第2状態に制御されている場合の、A/D変換器の何れかによるA/D変換結果(即ち、モニタ用電圧のA/D変換結果)を用いて、昇圧回路の制御を行う。
このような燃料噴射制御装置によれば、インジェクタのグループ毎に設けられた複数のA/D変換器のうち、何れかが故障しても、電圧制御手段による昇圧回路の制御が可能となり、コンデンサの充電電圧を目標電圧にすることができる。電圧制御手段は、複数のA/D変換器のうち、正常なA/D変換器によるモニタ用電圧のA/D変換結果を用いて、昇圧回路の制御を行うことができるからである。そして、故障したA/D変換器に対応するグループのインジェクタについては、駆動することができなくなるが、他の正常なA/D変換器に対応するグループのインジェクタについては正常に駆動することができる。よって、A/D変換器の数をインジェクタのグループ数と同じにしつつ、何れかのA/D変換器が故障した場合におけるエンジンの運転性能の低下を最低限に抑えることができる。このため、燃料噴射制御装置の小型化と信頼性とを両立させることができる。
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
実施形態の電子制御装置(ECU)の構成を表す構成図である。 ADC制御部が行う切替制御処理の内容を表すフローチャートである。 切替制御処理の内容を説明する説明図である。 ADC制御部が行う異常判定処理の内容を表すフローチャートである。 異常判定処理の内容を説明する説明図である。
本発明が適用された実施形態の燃料噴射制御装置としての電子制御装置について説明する。以下では、電子制御装置のことを、ECUという。ECUは、「Electronic Control Unit」の略である。
図1に示す本実施形態のECU100は、車両に搭載された多気筒(この例では4気筒)エンジンの各気筒#1〜#4(図示省略)に燃料を噴射する4個のインジェクタIJ1,IJ2,IJ3,IJ4の駆動を制御する。詳しくは、ECU100は、各インジェクタIJ1〜IJ4のコイルL1,L2,L3,L4への通電開始タイミング及び通電時間を制御することにより、各気筒#1〜#4への燃料噴射時期及び燃料噴射量を制御する。尚、インジェクタIJ1〜IJ4は、常閉式の電磁弁により構成されており、各コイルL1〜L4に通電されると開弁して燃料噴射を行う。また、インジェクタIJ1〜IJ4は、コイルL1〜L4への通電が遮断されると閉弁して燃料噴射を停止する。この例では、コイルL1〜L4が開弁用のアクチュエータに相当する。
本実施形態では、複数のインジェクタIJ1〜IJ4を複数のグループに分けている。具体的には、気筒#1のインジェクタIJ1と気筒#3のインジェクタIJ3を、第1グループとし、気筒#2のインジェクタIJ2と気筒#4のインジェクタIJ4を、第2グループとしている。各グループは、同時に駆動されることがないインジェクタ同士で構成している。また、以下の説明では、インジェクタIJ1,IJ3のコイルL1,L3のことを、第1グループのコイルL1,L3とも言う。同様に、インジェクタIJ2,IJ4のコイルL2,L4のことを、第2グループのコイルL2,L4とも言う。
そして、インジェクタIJ1,IJ3のコイルL1,L3の上流側の一端が、ECU100の共通端子CM1に接続され、インジェクタIJ2,IJ4のコイルL2,L4の上流側の一端が、ECU100の共通端子CM2に接続されている。
ECU100は、インジェクタIJ1〜IJ4の何れを駆動するかを選択するためのスイッチとして、トランジスタT1,T2,T3,T4を備えている。そして、インジェクタIJ1〜IJ4の各コイルL1〜L4の下流側の端部は、ECU100の端子Tm1,Tm2,Tm3,Tm4を介して、トランジスタT1,T2,T3,T4の一方の出力端子にそれぞれ接続されている。尚、この例において、ECU100内にスイッチとして設けられているトランジスタは、全てMOSFETであるが、バイポーラトランジスタやIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の他種類のトランジスタでも良い。
ECU100において、トランジスタT1,T3の他方の出力端子は、電流検出抵抗R10を介してグランドラインに接続されており、トランジスタT2,T4の他方の出力端子は、電流検出抵抗R20を介してグランドラインに接続されている。
このため、トランジスタT1を介してインジェクタIJ1のコイルL1に流れる電流i1と、トランジスタT3を介してインジェクタIJ3のコイルL3に流れる電流i3との、それぞれは、電流検出抵抗R10の両端の電圧差として検出される。同様に、トランジスタT2を介してインジェクタIJ2のコイルL2に流れる電流i2と、トランジスタT4を介してインジェクタIJ4のコイルL4に流れる電流i4との、それぞれは、電流検出抵抗R20の両端の電圧差として検出される。
そして、ECU100は、電流検出抵抗R10の両端の電圧差を増幅して出力する増幅回路51と、電流検出抵抗R20の両端の電圧差を増幅して出力する増幅回路52と、を備える。増幅回路51からは、電流i1,i3のうちの一方に比例した電圧が、電流i1,i3のうちの一方を表す電流検出信号So1として出力される。同様に、増幅回路52からは、電流i2,i4のうちの一方に比例した電圧が、電流i2,i4のうちの一方を表す電流検出信号So2として出力される。
本実施形態では、電流検出抵抗R10と増幅回路51とにより、第1グループに対応する電流検出回路53が構成されており、電流検出抵抗R20と増幅回路52とにより、第2グループに対応する電流検出回路54が構成されている。つまり、電流検出回路53は、第1グループのコイルL1,L3に流れる電流i1,i3を表す電圧の電流検出信号So1を出力する。同様に、電流検出回路54は、第2グループのコイルL2,L4に流れる電流i2,i4を表す電圧の電流検出信号So2を出力する。
更に、ECU100は、昇圧回路55と、トランジスタT11,T12,T21,T22と、ダイオードD11,D12,D21,D22と、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)57と、上記各トランジスタ及び昇圧回路55を制御するデジタル回路59と、2つのA/D変換器(ADC)61,62と、2つのマルチプレクサ(MUX)63,64と、を備える。
昇圧回路55は、昇圧型のDC/DCコンバータであり、コンデンサC0と、インダクタL0と、トランジスタT0と、ダイオードD0と、を備える。
インダクタL0の一端は、電源電圧としてのバッテリ電圧VBが供給される電源ライン65に接続され、インダクタL0の他端は、トランジスタT0の一方の出力端子に接続されている。トランジスタT0の他方の出力端子は、グランドラインに導通している。尚、バッテリ電圧VBは、車両のバッテリ67の電圧である。
そして、インダクタL0とトランジスタT0との接続点に、ダイオードD0のアノードが接続されており、ダイオードD0のカソードに、コンデンサC0の正極側端子が接続されている。また、コンデンサC0の負極側端子はグランドラインに導通している。
この昇圧回路55では、デジタル回路59によってトランジスタT0がオン/オフされると、インダクタL0とトランジスタT0との接続点に、バッテリ電圧VBよりも高いフライバック電圧(逆起電圧)が発生する。そして、そのフライバック電圧により、コンデンサC0がダイオードD0を通じて充電される。このため、コンデンサC0は、バッテリ電圧VBよりも高い電圧に充電される。
ECU100では、コンデンサC0の正極側端子の電圧(コンデンサC0の充電電圧であり、以下、コンデンサ電圧という)Vcが、2つの抵抗71,72によって分圧される。そして、抵抗71,72の接続点に生じる分圧電圧がが、コンデンサ電圧Vcを表すモニタ用電圧Vcmとして、デジタル回路59に、A/D変換器61,62を介して取り込まれる。
そして、デジタル回路59は、モニタ用電圧Vcmに基づいて、コンデンサ電圧Vcがバッテリ電圧VBよりも高い目標電圧Vt(例えば60V)となるように、トランジスタT0を制御する。尚、図1において、符号「B0」を付した回路は、デジタル回路59からのトランジスタT0に対する駆動信号に従ってトランジスタT0をオン/オフさせるプリドライブ回路である。
また、ECU100において、トランジスタT12は、コンデンサC0から第1グループのコイルL1,L3へ放電させるための放電用スイッチとして設けられている。トランジスタT12がオンすると、コンデンサC0の正極側端子が共通端子CM1を介してコイルL1,L3の上流側に接続される。このため、デジタル回路59によってトランジスタT1,T3の何れかと、トランジスタT12とがオンされると、トランジスタT1,T3のうちでオンされている方に接続されているコイル(L1又はL3)に、コンデンサC0から放電される。
同様に、トランジスタT22は、コンデンサC0から第2グループのコイルL2,L4へ放電させるための放電用スイッチとして設けられている。トランジスタT22がオンすると、コンデンサC0の正極側端子が共通端子CM2を介してコイルL2,L4の上流側に接続される。このため、デジタル回路59によってトランジスタT2,T4の何れかと、トランジスタT22とがオンされると、トランジスタT2,T4のうちでオンされている方に接続されているコイル(L2又はL4)に、コンデンサC0から放電される。
また、ECU100において、トランジスタT11は、バッテリ電圧VBを電源として第1グループのコイルL1,L3に一定の電流を流すための定電流用スイッチとして設けられている。トランジスタT1,T3の何れかがオンされている状態で、トランジスタT11がオンされると、トランジスタT1,T3のうちでオンされている方に接続されているコイル(L1又はL3)に、電源ライン65からダイオードD11を介して電流が流れる。そして、トランジスタT1,T3の何れかがオンされている状態で、トランジスタT11がオンからオフされると、トランジスタT1,T3のうちでオンされている方に接続されているコイル(L1又はL3)に、ダイオードD12を介して電流が還流する。
同様に、トランジスタT21は、バッテリ電圧VBを電源として第2グループのコイルL2,L4に一定の電流を流すための定電流用スイッチとして設けられている。トランジスタT2,T4の何れかがオンされている状態で、トランジスタT21がオンされると、トランジスタT2,T4のうちでオンされている方に接続されているコイル(L2又はL4)に、電源ライン65からダイオードD21を介して電流が流れる。そして、トランジスタT2,T4の何れかがオンされている状態で、トランジスタT21がオンからオフされると、トランジスタT2,T4のうちでオンされている方に接続されているコイル(L2又はL4)に、ダイオードD22を介して電流が還流する。
尚、図1において、符号「B1」〜「B4」を付した各回路は、デジタル回路59からのトランジスタT1,T2,T3,T4に対する駆動信号SV1〜SV4に従って、トランジスタT1,T2,T3,T4をオン/オフさせるプリドライブ回路である。また、符号「B12」,「B22」を付した各回路は、デジタル回路59からのトランジスタT12,T22に対する駆動信号DCG1,DCG2に従って、トランジスタT12,T22をオン/オフさせるプリドライブ回路である。また、符号「B11」,「B21」を付した各回路は、デジタル回路59からのトランジスタT11,T21に対する駆動信号CC1,CC2に従って、トランジスタT11,T21をオン/オフさせるプリドライブ回路である。各駆動信号SV1〜SV4,DCG1,DCG2,CC1,CC2は、例えばハイがアクティブの信号である。
本実施形態では、トランジスタT1〜T4,T11,T12,T21,T22と、ダイオードD11,D12,D21,D22と、プリドライブ回路B1〜B4,B11,B12,B21,B22とにより、インジェクタIJ1〜IJ4の駆動回路75が構成されている。その駆動回路75は、インジェクタIJ1〜IJ4の各コイルL1〜L4に、コンデンサ電圧Vcとバッテリ電圧VBとを電源として、電流を流すための回路である。
マイコン57は、例えばエンジン回転数、アクセル開度、エンジン水温など、エンジンの制御に関する各種情報に基づいて、インジェクタIJ1〜IJ4毎の駆動指令信号S#1〜S#4を生成してデジタル回路59に出力する。駆動指令信号S#1はインジェクタIJ1に対応し、駆動指令信号S#2はインジェクタIJ2に対応し、駆動指令信号S#3はインジェクタIJ3に対応し、駆動指令信号S#4はインジェクタIJ4に対応する。駆動指令信号S#n(符号中のnは1〜4の何れかであり、以下も同様)は、その信号のレベルがハイの間だけインジェクタIJnを駆動する(つまり、インジェクタIJnのコイルLnに通電する)、という意味を持っている。よって、駆動指令信号S#nがハイの期間は、インジェクタIJnの駆動期間に相当する。
そして、デジタル回路59は、マイコン57からの駆動指令信号S#1〜S#4に応じて、トランジスタT1〜T4,T11,T12,T21,T22のオン/オフを制御することにより、インジェクタIJ1〜IJ4を駆動する。
また、ECU100において、マルチプレクサ63には、増幅回路51からの電流検出信号So1と、モニタ用電圧Vcmとが入力され、マルチプレクサ64には、増幅回路52からの電流検出信号So2と、モニタ用電圧Vcmとが入力される。
そして、マルチプレクサ63は、電流検出信号So1とモニタ用電圧Vcmとの何れか一方を、デジタル回路59からの選択信号SELに従い選択して、第1グループに対応するA/D変換器61に、A/D変換対象のアナログ信号として入力させる。同様に、マルチプレクサ64は、電流検出信号So2とモニタ用電圧Vcmとの何れか一方を、上記選択信号SELに従い選択して、第2グループに対応するA/D変換器62に、A/D変換対象のアナログ信号として入力させる。
本実施形態において、マルチプレクサ63,64は、選択信号SELがハイの場合に、電流検出信号So1をA/D変換器61に入力させると共に、電流検出信号So2をA/D変換器62に入力させる第1状態となる。そして、マルチプレクサ63,64は、選択信号SELがローの場合には、モニタ用電圧VcmをA/D変換器61,62の両方に入力させる第2状態となる。また、マルチプレクサ63,64は、上記第1状態と第2状態との切り替えを実現する1つのマルチプレクサと見なすこともできる。
A/D変換器61,62は、マルチプレクサ63,64から入力されるアナログ信号を、一定の時間間隔でA/D変換する。以下では、その一定の時間間隔を、A/D変換間隔という。そして、A/D変換器61によるA/D変換結果AD1と、A/D変換器62によるA/D変換結果AD2は、デジタル回路59に入力される。
次に、デジタル回路59の詳細について説明する。
デジタル回路59は、A/D変換器61,62に関する制御を行うADC制御部81と、トランジスタT1〜T4,T11,T12,T21,T22を制御する駆動制御部82と、昇圧回路55を制御する電圧制御部83と、を備える。
ADC制御部81は、マルチプレクサ63,64への選択信号SELをハイとローとに切り替える切替制御処理と、A/D変換器61,62の異常の有無を判定するための異常判定処理とを行う。ADC制御部81の動作内容については、後で説明する。
駆動制御部82の動作内容について、第1グループのインジェクタIJ1を駆動する場合を例に挙げて説明する。
駆動制御部82は、インジェクタIJ1を駆動する場合には、下記《a》〜《f》の動作を行う。
《a》駆動制御部82は、マイコン57からの駆動指令信号S#1がハイになると、その駆動指令信号S#1がハイになっている間、インジェクタIJ1に対応するトランジスタT1をオンする。
《b》駆動制御部82は、駆動指令信号S#1がハイになると、第1グループに対応する放電用のトランジスタT12をオンすると共に、定電流用のトランジスタT11もオンする。トランジスタT12がオンすることで、コンデンサC0からインジェクタIJ1のコイルL1に放電される。尚、コンデンサ電圧Vcはバッテリ電圧VBよりも高いため、トランジスタT12のオン中は、トランジスタT11がオンしても、コイルL1には、コンデンサ電圧Vcを電源として電流が流れることとなる。
《c》駆動制御部82は、トランジスタT12をオンした後、ADC制御部81からマルチプレクサ63,64への選択信号SELがハイの場合のA/D変換器61によるA/D変換結果AD1を読み込む。選択信号SELがハイの場合のA/D変換結果AD1は、電流検出信号So1のA/D変換結果であり、コイルL1に流れる電流i1を表すデジタルデータである。そして、駆動制御部82は、選択信号SELがハイの場合のA/D変換結果AD1と、放電電流の目標ピーク値に相当する閾値NIpとを比較し、「AD1≧NIp」になったと判定したなら、電流i1が目標ピーク値になったと判定して、トランジスタT12をオフする。すると、コンデンサC0からコイルL1への放電が終了する。尚、電流i1が目標ピーク値になったと判定することは、電流i1が目標ピーク値になったことを検知したことに相当する。
《d》駆動制御部82は、トランジスタT12をオフした後は、駆動指令信号S#1がローになるまで、コイルL1に上記目標ピーク値よりも小さい一定の電流が流れるように、トランジスタT11をオン/オフさせる。具体的には、駆動制御部82は、選択信号SELがハイの場合のA/D変換結果AD1を読み込み、読み込んだA/D変換結果AD1と、コイルL1に流す一定の電流に相当する閾値NIcとを比較する。そして、「AD1>NIc」になったらトランジスタT11をオフし、「AD1<NIc」になったらトランジスタT11をオンする、という動作を繰り返す。尚、トランジスタT11をオフするための閾値と、トランジスタT11をオンするための閾値は、異なる値であっても良い。
《e》駆動制御部82は、駆動指令信号S#1がローになると、トランジスタT1をオフすると共に、トランジスタT11もオフのままにする。
《f》駆動制御部82は、選択信号SELがローの場合には、選択信号SELがローになる直前の、トランジスタT11に対する制御状態を維持する。つまり、選択信号SELがローになる直前にトランジスタT11をオンしていれば、トランジスタT11のオンを継続し、選択信号SELがローになる直前にトランジスタT11をオフしていれば、トランジスタT11のオフを継続する。選択信号SELがローの場合のA/D変換結果AD1は、モニタ用電圧VcmのA/D変換結果であるため、トランジスタT11のオン/オフを切り替えるためには用いないようになっている。
尚、後述するように、ADC制御部81からの選択信号SELは、トランジスタT12,T22の何れかをオンしている放電期間中は、ハイのままになる。このため、放電用のトランジスタT12,T22の制御に関して、選択信号SELがローの場合のA/D変換結果AD1,AD2が用いられることはない。
また、駆動制御部82の動作のうち、上記《a》でトランジスタT1をオンする動作と、上記《b》でトランジスタT12をオンする動作と、上記《c》の動作とが、放電電流制御を実施する動作に相当する。そして、駆動制御部82の動作のうち、上記《a》でトランジスタT1をオンする動作と、上記《b》でトランジスタT11をオンする動作と、上記《d》の動作とが、定電流制御を実施する動作に相当する。また、この例では、放電電流制御と定電流制御が通電制御に相当する。尚、トランジスタT11は、トランジスタT12をオフした後、例えば、選択信号SELがハイの場合のA/D変換結果AD1が閾値NIcを下回ったと最初に判定したタイミングで、オンするようになっていても良い。
一方、インジェクタIJ1と同じグループのインジェクタIJ3を駆動する場合には、インジェクタIJ1を駆動する場合と比較すると、トランジスタT1の代わりにトランジスタT3がオンされることとなる。また、第2グループのインジェクタIJ2を駆動する場合には、インジェクタIJ1を駆動する場合と比較すると、トランジスタT1の代わりにトランジスタT2がオンされ、トランジスタT12の代わりにトランジスタT22がオンされ、トランジスタT11の代わりにトランジスタT21がオンされる。同様に、インジェクタIJ4を駆動する場合には、インジェクタIJ1を駆動する場合と比較すると、トランジスタT1の代わりにトランジスタT4がオンされ、トランジスタT12の代わりにトランジスタT22がオンされ、トランジスタT11の代わりにトランジスタT21がオンされる。
また、駆動制御部82は、前述の駆動信号SV1〜SV4をハイにすることで、トランジスタT1〜T4をオンする。同様に、駆動制御部82は、前述の駆動信号DCG1,DCG2をハイにすることで、放電用のトランジスタT12,T22をオンし、前述の駆動信号CC1,CC2をハイにすることで、定電流用のトランジスタT11,T21をオンする。
電圧制御部83は、下記《A》〜《C》の動作を行う。
《A》電圧制御部83は、選択信号SELがローである場合のA/D変換結果AD1,AD2のうちの一方(例えばAD1)を読み込み、読み込んだ最新のA/D変換結果AD1と、コンデンサ電圧Vcの目標電圧Vtに相当する閾値NVtとを比較する。そして、電圧制御部83は、「AD1<NVt」であれば、昇圧回路55のトランジスタT0をオン/オフして、昇圧回路55を動作させる。つまり、コンデンサC0を充電する。また、電圧制御部83は、「AD1>NVt」であれば、トランジスタT0をオフして、昇圧回路55の動作を停止させる。
《B》電圧制御部83は、駆動制御部82がトランジスタT12,T22の何れかをオンしている場合には、昇圧回路55のトランジスタT0をオフしたままにする。つまり、コンデンサC0からコイルL1〜L4の何れかに放電している最中は、昇圧回路55を動作させないようになっている。
《C》電圧制御部83は、トランジスタT12,T22の両方がオフで、且つ、選択信号SELがハイの場合には、選択信号SELがハイになる直前の、トランジスタT0に対する制御状態を維持する。つまり、選択信号SELがハイになる直前にトランジスタT0のオン/オフを実施していれば、トランジスタT0のオン/オフを実施し、選択信号SELがハイになる直前にトランジスタT0のオン/オフを実施していなければ、トランジスタT0のオフを継続する。選択信号SELがハイの場合のA/D変換結果AD1は、電流検出信号So1のA/D変換結果であるため、昇圧回路55の動作/非動作を切り替えるためには用いないようになっている。
次に、ADC制御部81の動作内容について説明する。
ADC制御部81は、図2に示す切替制御処理を例えば一定時間毎に行うことにより、マルチプレクサ63,64への選択信号SELを切り替える。
図2に示すように、ADC制御部81は、切替制御処理を開始すると、S110にて、マイコン57からの駆動指令信号S#1〜S#4の何れかがハイであるか否かを判定する。つまり、インジェクタIJ1〜IJ4の何れかの駆動期間中であるか否かを判定する。
ADC制御部81は、駆動指令信号S#1〜S#4の何れかがハイであると判定した場合には(S110:YES)、S120にて、駆動制御部82からの駆動信号DCG1,DCG2の何れかがハイであるか否かを判定する。つまり、駆動制御部82によりトランジスタT12,T22の何れかがオンされているか否かであって、コンデンサC0からコイルLnへの放電の実施中であるか否かを判定する。
そして、ADC制御部81は、駆動信号DCG1,DCG2の何れかがハイであると判定した場合には(S120:YES)、S140に進み、マルチプレクサ63,64への選択信号SELをハイに固定し、その後、当該切替制御処理を終了する。
また、ADC制御部81は、上記S120にて、駆動信号DCG1,DCG2の両方がローであると判定した場合には(S120:NO)、S130にて、コンデンサ電圧Vcが目標電圧Vt以上であるか否かを判定する。尚、ADC制御部81は、電圧制御部83と同様に、選択信号SELがローである場合のA/D変換結果AD1,AD2のうちの一方(例えばAD1)を読み込み、その読み込んだ最新のA/D変換結果AD1に基づいて、コンデンサ電圧Vcが目標電圧Vt以上か否かを判定する。また例えば、ADC制御部81は、S130に進んだ際に、選択信号SELをハイにしていた場合には、選択信号SELをハイからローにして、A/D変換結果AD1,AD2のうちの一方を読み込み、その後、選択信号SELをハイに戻せば良い。
そして、ADC制御部81は、コンデンサ電圧Vcが目標電圧Vt以上であると判定した場合にも(S130:YES)、S140に進み、選択信号SELをハイに固定した後、当該切替制御処理を終了する。
また、ADC制御部81は、上記S110にて、駆動指令信号S#1〜S#4が全てローであると判定した場合(S110:NO)、あるいは、上記S130にて、コンデンサ電圧Vcが目標電圧Vt以上ではないと判定した場合には(S130:NO)、S150に進む。そして、ADC制御部81は、S150にて、選択信号SELをハイとローとに所定時間毎に切り替える動作を開始し、その後、当該切替制御処理を終了する。
尚、選択信号SELをハイとローとに所定時間毎に切り替える場合、選択信号SELがハイの期間とローの期間とのそれぞれにおいて、A/D変換器61,62によるA/D変換が少なくとも1回は実施されるようになっている。このため、選択信号SELのハイ時間とロー時間との和である1周期は、例えばA/D変換間隔の2倍に設定されている。また、選択信号SELのハイ時間とロー時間は、同じであっても、同じでなくても、どちらでも良い。例えば、選択信号SELがハイの期間中に、A/D変換器61,62によるA/D変換が複数回実施され、選択信号SELがローの期間中に、A/D変換器61,62によるA/D変換が1回実施される、といった設定でも良い。
つまり、ADC制御部81は、インジェクタIJ1〜IJ4の何れかの駆動期間中で、且つ、コンデンサC0からコイルLnへの放電の実施中である第1の場合(S120:YES)には、選択信号SELを連続的にハイにしている(S140)。また、ADC制御部81は、インジェクタIJ1〜IJ4の何れかの駆動期間中で、且つ、コンデンサC0からの放電の実施中ではなく、且つ、コンデンサ電圧Vcが目標電圧Vt以上になっている第2の場合(S130:YES)にも、選択信号SELを連続的にハイにしている(S140)。そして、ADC制御部81は、上記第1の場合と上記第2の場合との何れでもない場合(S110:NOまたはS130:NO)には、選択信号SELをハイとローとに所定時間毎に交互に切り替える(S150)。
例えば、図3において、時刻t1〜t2の期間と、時刻t4〜t5の期間は、コンデンサC0からコイルLnへの放電が実施されている期間であり、上記第1の場合に相当する。このため、時刻t1〜t2の期間と、時刻t4〜t5の期間において、選択信号SELはハイに固定される。尚、図3の「SEL」の段において、「H」はハイを意味し、「L」はローを意味している。
コンデンサC0からコイルLnへの放電中は、コイルLnの電流inの変化速度(即ち時間に対する変化の割合)が大きいため、電流inのサンプリング間隔が大きいと、下記の不具合が生じ易い。尚、電流inのサンプリング間隔とは、電流検出信号So1,So2をA/D変換する間隔である。
即ち、電流inのサンプリング間隔が大きいと、電流inが実際に目標ピーク値に到達してから、駆動制御部82がA/D変換結果AD1,AD2の何れかに基づいて電流inが目標ピーク値になったと判定するまでの、遅れ時間が大きくなり易い。そして、コンデンサC0からコイルLnへの放電中における電流in(即ち、コンデンサC0からの放電電流)の変化速度は大きいため、上記遅れ時間が大きくなると、電流inの目標ピーク値からのオーバーシュートが大きくなってしまう。
そこで、上記第1の場合には、選択信号SELをハイに固定して、A/D変換器61,62が電流検出信号So1,So2をA/D変換する状態を継続させ、A/D変換間隔が電流inのサンプリング間隔となるようにしている。つまり、コイルLnの電流inを制御するためにA/D変換器61,62を占有するようにしている。このため、上記遅れ時間が大きくなってしまうことを防止して、コンデンサC0からの放電によってコイルLnに流す電流inの目標ピーク値からのオーバーシュートを抑制することができる。
また、図3において、時刻t3〜t4の期間と、時刻t7〜t8の期間は、インジェクタIJ1〜IJ4の何れかの駆動期間中であるが、コンデンサC0からの放電の実施中ではなく、定電流制御期間の一部である。尚、定電流制御期間とは、駆動制御部82がコイルLnに一定の電流が流れるようにトランジスタT11,T21の何れかをオン/オフさせる定電流制御の実施期間である。そして、時刻t3〜t4の期間と、時刻t7〜t8の期間では、コンデンサ電圧Vcが目標電圧Vt以上になっている。このため、時刻t3〜t4の期間と、時刻t7〜t8の期間は、上記第2の場合に相当する。よって、時刻t3〜t4の期間と、時刻t7〜t8の期間においても、選択信号はハイに固定される。
上記第2の場合には、コンデンサ電圧Vcをモニタしなくても良く、定電流制御のためにだけ(換言すれば、電流inをモニタするためにだけ)A/D変換器61,62を使用すれば良いため、選択信号SELをハイに固定している。
また、図3において、時刻t2〜t3の期間と、時刻t5〜t7の期間も、定電流制御期間の一部であるが、それらの期間では、コンデンサ電圧Vcが目標電圧Vt未満である。よって、時刻t2〜t3の期間と、時刻t5〜t7の期間において、選択信号SELはハイとローとに所定時間毎に切り替えられる。
定電流制御期間で、且つ、コンデンサ電圧Vcが目標電圧Vt未満である場合には、定電流制御だけでなく、コンデンサ電圧Vcに基づく昇圧回路55の制御も、行う必要がある。このため、選択信号SELをハイとローとに交互に切り替えることにより、定電流制御と昇圧回路55の制御との、両方を行うことができるようにしている。
また、図3において、時刻t1より前の期間と、時刻t8より後の期間は、インジェクタIJ1〜IJ4の駆動期間ではない。よって、時刻t1より前の期間と、時刻t8より後の期間においても、選択信号SELはハイとローとに所定時間毎に切り替えられる。
インジェクタIJ1〜IJ4の駆動期間でない場合には、昇圧回路55を制御するためにモニタ用電圧VcmのA/D変換を行う必要があるが、電流検出信号So1,So2を、コイルLnの電流inを制御する目的でA/D変換する必要はない。しかし、A/D変換器61,62が正常か否かを判定するために、例えば、0Vであるはずの電流検出信号So1,So2をA/D変換器61,62にA/D変換させてみて、A/D変換結果AD1,AD2が0Vに相当する値になるか否かを確認することが考えられる。このため、インジェクタIJ1〜IJ4の駆動期間でない場合にも、選択信号SELをハイとローとに交互に切り替えることにより、昇圧回路55の制御だけでなく、A/D変換器61,62の異常判定も行うことができるようにしている。
次に、ADC制御部81が行う異常判定処理について説明する。
ADC制御部81は、図4に示す異常判定処理を例えば一定時間毎に行うことにより、A/D変換器61,62についての異常判定手段として機能する。
図4に示すように、ADC制御部81は、異常判定処理を開始すると、S200にて、選択信号SELをハイにしているか否かを判定し、選択信号SELをハイにしていなければ(つまり、ローにしていれば)、そのまま当該異常判定処理を終了する。
また、ADC制御部81は、上記S200にて、選択信号SELをハイにしていると判定した場合には、S210にて、第1グループに対応する駆動指令信号S#1,S#3が両方ともローであるか否かを判定する。
ADC制御部81は、駆動指令信号S#1,S#3が両方ともローであれば、S220にて、選択信号SELがハイの場合のA/D変換器61によるA/D変換結果AD1を取得し、そのA/D変換結果AD1が、0相当値であるか否かを判定する。0相当値は、コイルL1,L3に流れる電流i1,i3が0であることを示す値であり、詳しくは、電流i1,i3が0である場合の電流検出信号So1のA/D変換結果AD1として、正しいと考えられる値である。0相当値としては、1つの値(例えば0)でも良いが、誤判定を避けるために、ある範囲を有した値であっても良い。0相当値が範囲を有した値である場合、ADC制御部81は、S220では、A/D変換結果AD1が、その範囲の値であれば、0相当値であると判定することとなる。
ADC制御部81は、上記S220にて、A/D変換結果AD1が0相当値ではないと判定した場合には、A/D変換器61が異常であると判断して、S230に進む。電流i1,i3が0であるはずなのに、電流検出信号So1のA/D変換結果AD1が0相当値でないということは、A/D変換器61が異常であると考えられるからである。
そして、ADC制御部81は、S230にて、A/D変換器61が異常であることを示すダイアグノシス信号DIG1を出力し、その後、当該異常判定処理を終了する。尚、この例において、ダイアグノシス信号DIG1は、ハイアクティブであるため、ADC制御部81は、S230では、ダイアグノシス信号DIG1をハイにする。
また、ADC制御部81は、上記S220にて、A/D変換結果AD1が0相当値であると判定した場合には、S240に進む。この場合、A/D変換器61は正常であると考えられる。また、ADC制御部81は、上記S210にて、駆動指令信号S#1,S#3の少なくとも一方がハイであると判定した場合(S210:NO)にも、S240に進む。
そして、ADC制御部81は、S240では、第2グループに対応する駆動指令信号S#2,S#4が両方ともローであるか否かを判定する。
ADC制御部81は、駆動指令信号S#2,S#4が両方ともローであれば、S250にて、選択信号SELがハイの場合のA/D変換器62によるA/D変換結果AD2を取得し、そのA/D変換結果AD2が、0相当値であるか否かを判定する。尚、S250で用いる0相当値も、前述のS220で用いる0相当値と同様の値であり、コイルL2,L4に流れる電流i2,i4が0であることを示す値である。
ADC制御部81は、上記S250にて、A/D変換結果AD2が0相当値ではないと判定した場合には、A/D変換器62が異常であると判断して、S260に進む。電流i2,i4が0であるはずなのに、電流検出信号So2のA/D変換結果AD2が0相当値でないということは、A/D変換器62が異常であると考えられるからである。
そして、ADC制御部81は、S260にて、A/D変換器62が異常であることを示すダイアグノシス信号DIG2を出力し、その後、当該異常判定処理を終了する。尚、この例において、ダイアグノシス信号DIG2も、ハイアクティブであるため、ADC制御部81は、S260では、ダイアグノシス信号DIG2をハイにする。
また、ADC制御部81は、上記S250にて、A/D変換結果AD2が0相当値であると判定した場合には、そのまま当該異常判定処理を終了する。この場合、A/D変換器62は正常であると考えられる。また、ADC制御部81は、上記S240にて、駆動指令信号S#2,S#4の少なくとも一方がハイであると判定した場合(S240:NO)にも、そのまま当該異常判定処理を終了する。
つまり、異常判定処理のうち、S210〜S230の処理では、第1グループに対応するA/D変換器61を、異常有無の判定対象としている。そして、図5において、第1グループに対応する駆動指令信号S#1,S#3が両方ともローである期間であって、電流検出信号So1が0Vになるはずの期間(即ち、コイルL1,L3に電流が流されていない場合)において、S220の判定を実施している。そして、S220では、選択信号SELがハイのときのA/D変換結果AD1が0相当値であるか否かを判定し、0相当値でなければ、A/D変換器61が異常であると判定している。同様に、S240〜S260の処理では、第2グループに対応するA/D変換器62を、異常有無の判定対象としている。そして、図5において、第2グループに対応する駆動指令信号S#2,S#4が両方ともローである期間であって、電流検出信号So2が0Vになるはずの期間(即ち、コイルL2,L4に電流が流されていない場合)において、S250の判定を実施している。そして、S250では、選択信号SELがハイのときのA/D変換結果AD2が0相当値であるか否かを判定し、0相当値でなければ、A/D変換器62が異常であると判定している。
このような異常判定処理によれば、A/D変換器61,62に、異常を判定するための専用のリファレンス電圧を入力することなく、A/D変換器61,62の異常を検出することができる。
また、図1に示すように、ADC制御部81から出力されるダイアグノシス信号DIG1,DIG2は、デジタル回路59内の駆動制御部82と電圧制御部83に入力されると共に、マイコン57にも入力される。
電圧制御部83は、正常時には、昇圧回路55を制御するためにA/D変換器61を用いている。詳しくは、A/D変換器61によるモニタ用電圧VcmのA/D変換結果AD1を使用している。このため、電圧制御部83は、A/D変換器61に対応するダイアグノシス信号DIG1がハイになった場合には、他の正常な方のA/D変換器62によるモニタ用電圧VcmのA/D変換結果AD2を用いて、昇圧回路55の制御を行う。よって、A/D変換器61,62のうちの何れかが故障しても、昇圧回路55の制御が可能となり、コンデンサ電圧Vcを目標電圧Vtに制御することができる。
駆動制御部82は、ダイアグノシス信号DIG1がハイになった場合には、A/D変換器61に対応する第1グループのインジェクタIJ1,IJ3の駆動を強制的に禁止する。具体的には、駆動回路75を構成するトランジスタのうち、第1グループのコイルL1,L3に電流を流すためのトランジスタT1,T3,T11,T12の駆動を禁止する。そして、この場合には、第2グループのインジェクタIJ2,IJ4が放電電流制御と定電流制御とにより正常に駆動されることで、エンジンの運転が維持される。
同様に、駆動制御部82は、ダイアグノシス信号DIG2がハイになった場合には、A/D変換器62に対応する第2グループのインジェクタIJ2,IJ4の駆動を強制的に禁止する。具体的には、駆動回路75を構成するトランジスタのうち、第2グループのコイルL2,L4に電流を流すためのトランジスタT2,T4,T21,T22の駆動を禁止する。そして、この場合には、第1グループのインジェクタIJ1,IJ3が放電電流制御と定電流制御とにより正常に駆動されることで、エンジンの運転が維持される。
また、マイコン57は、ダイアグノシス信号DIG1,DIG2の何れか1つがハイになった場合には、退避走行制御モードへ移行する。マイコン57は、退避走行制御モードでは、例えば、駆動が禁止されていないグループのインジェクタIJnに対応する駆動指令信号S#nについて、出力タイミングを早める補正を行ったり、ハイ時間を長くする補正を行ったりする。
以上のようなECU100によれば、インジェクタIJnのグループ毎に設けられたA/D変換器61,62のうち、何れかが故障しても、電圧制御部83による昇圧回路55の制御が可能となり、コンデンサ電圧Vcを目標電圧Vtにすることができる。そして、他の正常なA/D変換器(61または62)に対応するグループのインジェクタ(IJ1とIJ3、または、IJ2とIJ4)については、放電電流制御と定電流制御との両方により正常に駆動することができる。よって、A/D変換器61,62の数をインジェクタIJnのグループ数と同じにしつつ、A/D変換器61,62の何れかが故障した場合におけるエンジンの運転性能の低下を最低限に抑えることができる。このため、ECU100の小型化と信頼性とを両立させることができる。
また、ADC制御部81は、図2の切替制御処理により、前述した第1の場合と第2の場合との両方においては、選択信号SELをハイに固定して、マルチプレクサ63,64を連続的に、電流検出信号So1,So2を選択する方の第1状態にしている。そして、第1の場合と第2の場合との何れでもない場合には、選択信号SELをハイとローとに所定時間毎に切り替えることにより、マルチプレクサ63,64を、第1状態と、モニタ用電圧Vcmを選択する方の第2状態とに、所定時間毎に切り替えている。
このため、前述したように、コンデンサC0からの放電によってコイルLnに流す電流inの目標ピーク値からのオーバーシュートを抑制することができると共に、放電電流制御以外の、定電流制御、昇圧回路55の制御、及びA/D変換器61,62の異常判定も、要求精度を満足させながら実施することができる。
また、ADC制御部81は、図4の異常判定処理では、各A/D変換器61,62について、それに対応するグループのコイルLnに電流が流されていない場合に、選択信号SELがハイのときのA/D変換結果(AD1またはADD2)が0相当値でなければ、異常と判定している。このため、前述したように、異常を判定するための専用のリファレンス電圧をA/D変換器61,62に入力させることなく、A/D変換器61,62の異常を検出することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得る。また、前述の数値も一例であり他の値でも良い。
例えば、インジェクタのグループ数及びA/D変換器の数は3以上であっても良い。また、各コイルL1〜L4の上流側を個別にECU100に接続し、ECU100には、各コイルL1〜L4について、コンデンサC0から放電させる回路とバッテリ電圧VBにより一定の電流を流すための回路とを、それぞれ設けても良い。また、インジェクタを駆動させるためのアクチュエータはピエゾでも良い。つまり、本発明は、インジェクタが、開弁用のアクチュエータとしてピエゾ素子からなるピエゾアクチュエータを有するもの(いわゆるピエゾインジェクタ)であっても、同様に適用することができる。また、上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言によって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。また、上述したECUの他、当該ECUを構成要素とするシステム、当該ECUとしてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した媒体など、種々の形態で本発明を実現することもできる。
53,54…電流検出回路、55…昇圧回路、61,62…A/D変換器、63,64…マルチプレクサ75…駆動回路、81…ADC制御部、82…駆動制御部、83…電圧制御部、100…ECU(燃料噴射制御装置としての電子制御装置)、C0…コンデンサ、IJ1〜IJ4…インジェクタ、L1〜L4…コイル、VB…バッテリ電圧、Vc…コンデンサ電圧(コンデンサの充電電圧)、Vcm…モニタ用電圧、So1,So2…電流検出信号

Claims (3)

  1. 電源電圧(VB)を昇圧してコンデンサ(C0)を充電する昇圧回路(55)と、
    エンジンに燃料を噴射する複数のインジェクタ(IJ1〜IJ4)の各アクチュエータ(L1〜L4)に、少なくとも前記コンデンサの充電電圧(Vc)を電源として、電流を流すための駆動回路(75)と、
    前記コンデンサの充電電圧が目標電圧となるように、前記昇圧回路を制御する電圧制御手段(83)と、
    前記複数のインジェクタの何れかを駆動して開弁させる場合には、駆動対象のインジェクタである駆動対象インジェクタの前記アクチュエータに対する通電制御を、前記駆動回路を用いて実施する駆動制御手段(82)と、
    を備えた燃料噴射制御装置(100)において、
    前記複数のインジェクタは複数のグループに分けられており、
    前記グループ毎に設けられた電流検出手段であって、自身に対応するグループの前記インジェクタのアクチュエータに流れる電流を表す電圧の電流検出信号(So1,So2)を、それぞれ出力する複数の電流検出手段(53,54)と、
    前記グループ毎に設けられた複数のA/D変換器であって、自身に対応するグループの前記電流検出手段からの前記電流検出信号と、前記コンデンサの充電電圧を表すモニタ用電圧(Vcm)とが、マルチプレクサ(63,64)によって切り替えて入力される複数のA/D変換器(61,62)と、
    前記マルチプレクサを、前記各A/D変換器に前記各電流検出手段からの前記各電流検出信号をそれぞれ入力させる第1状態と、前記各A/D変換器に前記モニタ用電圧を入力させる第2状態とに、切り替える切替制御手段(81,S110〜S150)と、を備え、
    前記駆動制御手段は、前記マルチプレクサが前記第1状態に制御されている場合の、前記各A/D変換器によるA/D変換結果を用いて、その各A/D変換器にそれぞれ対応するグループのインジェクタを駆動するための前記通電制御を行い、
    前記電圧制御手段は、前記マルチプレクサが前記第2状態に制御されている場合の、前記A/D変換器の何れかによるA/D変換結果を用いて、前記昇圧回路の制御を行うこと、
    を特徴とする燃料噴射制御装置。
  2. 請求項1に記載の燃料噴射制御装置において、
    前記切替制御手段は、
    前記複数のインジェクタの何れかの駆動期間中で、且つ、前記コンデンサから前記アクチュエータへの放電の実施中である第1の場合と、前記複数のインジェクタの何れかの駆動期間中で、且つ、前記放電の実施中ではなく、且つ、前記コンデンサの充電電圧が前記目標電圧以上になっている第2の場合との、両方においては、前記マルチプレクサを連続的に前記第1状態にし(S140)、前記第1の場合と前記第2の場合との何れでもない場合には、前記マルチプレクサを前記第1状態と前記第2状態とに所定時間毎に切り替えること(S150)、
    を特徴とする燃料噴射制御装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の燃料噴射制御装置において、
    前記各A/D変換器を異常有無の判定対象とする異常判定手段であって、判定対象のA/D変換器に対応するグループの前記インジェクタのアクチュエータに電流が流されていない場合において、前記マルチプレクサが前記第1状態になっているときの当該判定対象のA/D変換器によるA/D変換結果が、前記アクチュエータに流れる電流が0であることを示す0相当値であるか否かを判定し、前記A/D変換結果が前記0相当値でなければ、前記判定対象のA/D変換器が異常であると判定する異常判定手段(81,S200〜S260)、
    を備えること、を特徴とする燃料噴射制御装置。
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