JP2016112883A - 多層構造体 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、この多層構造体をレトルト処理のように長時間、熱水処理すると、処理直後のガスバリア性が低下したり、白化したり、形態を保持できないという欠点がある。
しかしながら、特許文献1に記載の発明において、環状オレフィン系樹脂層とEVOH樹脂層の接着樹脂として用いられる無水マレイン酸で変性したポリプロピレンは、両層に対する接着性が乏しく、改善の余地があった。
よって、ガスバリア層として、EVOH樹脂層を有し、内外層に環状オレフィン系樹脂層を有する多層構造体であって、レトルト処理時の突き刺しによる破袋を抑制できる多層構造体が望まれる。
これは、特定のガラス転移点を有する環状オレフィン系樹脂層(γ)/酸変性オレフィン系エラストマー層(β)と、特定量のアルカリ金属を含有するEVOH樹脂層(α)/酸変性オレフィン系エラストマー層(β)の界面における両接着性のバランスが優れることから、耐突き刺し性が向上したものであると考えられる。
<EVOH樹脂層(α)>
本発明に用いられるEVOH樹脂は、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体(エチレン−ビニルエステル共重合体)をケン化させることにより得られる樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。重合法も公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合を用いて行うことができるが、一般的にはメタノールを溶媒とする溶液重合が用いられる。得られたエチレン−ビニルエステル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
このようにして製造されるEVOH樹脂は、エチレン由来の構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、ケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を含む。
かかる1,2−ジオールを側鎖に有するEVOH樹脂は、側鎖に1,2−ジオール構造単位を含むものである。かかる1,2−ジオール構造単位とは、具体的には下記構造単位(1)で示される構造単位である。
R1〜R3は通常炭素数1〜30、特には炭素数1〜15、さらには炭素数1〜4の飽和炭化水素基または水素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。R4〜R6は通常炭素数1〜30、特には炭素数1〜15、さらには炭素数1〜4のアルキル基または水素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。特に、R1〜R6がすべて水素であるものが最も好ましい。
なお、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよい。かかる結合鎖としては特に限定されないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素鎖(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、−O−、−(CH2O)m−、−(OCH2)m−、−(CH2O)mCH2−等のエーテル結合部位を含む構造、−CO−、−COCO−、−CO(CH2)mCO−、−CO(C6H4)CO−等のカルボニル基を含む構造、−S−、−CS−、−SO−、−SO2−等の硫黄原子を含む構造、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−等の窒素原子を含む構造、−HPO4−等のリン原子を含む構造などのヘテロ原子を含む構造、−Si(OR)2−、−OSi(OR)2−、−OSi(OR)2O−等の珪素原子を含む構造、−Ti(OR)2−、−OTi(OR)2−、−OTi(OR)2O−等のチタン原子を含む構造、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等のアルミニウム原子を含む構造などの金属原子を含む構造等が挙げられる。なお、Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、また、mは自然数であり、通常1〜30、好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10である。その中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で−CH2OCH2−、および炭素数1〜10の炭化水素鎖が好ましく、さらには炭素数1〜6の炭化水素鎖、特には炭素数1であることが好ましい。
[アルカリ金属]
本発明で用いるアルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。中でも、融成形時の熱安定性等の各種物性の観点から、ナトリウムが好ましい。
ここで、上記アルカリ金属を含有する添加剤としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸類のアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)などの塩;または、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸類のアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)などが挙げられる。
本発明の効果をより顕著に得るためには、添加剤の分散性に優れるi)、ii)の方法が好ましく、特に添加剤の溶解性の点から、i)方法が好ましい。
本発明に用いられるEVOH樹脂は、ベース樹脂がEVOH樹脂の組成物であってもよい。
よって、かかるEVOH樹脂組成物には、EVOH樹脂以外に、他の熱可塑性樹脂を、EVOH樹脂に対して、通常30重量%以下にて含有してもよい。
また、本発明のEVOH樹脂には、上記成分のほか、必要に応じて、本発明の効果を損なわない限り(例えば、樹脂組成物全体の5重量%未満にて)、エチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコール等の可塑剤;飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン)等の滑剤;熱安定剤;アンチブロッキング剤;酸化防止剤;着色剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;抗菌剤;不溶性無機塩(例えば、ハイドロタルサイト等);充填材(例えば無機フィラー等);結晶核剤(例えばタルク、カオリン等);界面活性剤、ワックス;分散剤(例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸モノグリセリド等);共役ポリエン化合物、アルデヒド化合物(例えばクロトンアルデヒドなどの不飽和アルデヒド類等)などの公知の添加剤を適宜配合することができる。
<環状オレフィン系樹脂層(γ)>
本発明におけるガラス転移点が85〜130℃の環状オレフィン系樹脂層とは、ガラス転移点が85〜130℃の環状オレフィンを主体としたものである。
本発明の多層構造体に使用される環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィン構造を主鎖および/または側鎖に有する重合体であり、例えば特開2003−103718号公報、特開平5−177776号公報、特表2003−504523号公報に記載されるような公知の樹脂である。かかる環状オレフィン系樹脂は非晶性の樹脂である。
また、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン誘導体としては、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン、2−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン、5−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセンが挙げられる。
トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-ウンデセン誘導体としては、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-ウンデセン、10−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]-3-ウンデセンが挙げられる。
オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ドコセン誘導体としては、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ドコセン、15−メチル−オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ドコセンが挙げられる。
ヘプタシクロ-5-エイコセン誘導体としては、ヘプタシクロ-[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]-エイコセン、ヘプタシクロ-5-ヘンエイコセン誘導体としては、ヘプタシクロ-[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]-ヘンエイコセンが挙げられる。
ペンタシクロ−4,10−ペンタデカジエン誘導体としては、ペンタシクロ[6,5,1,13,6 ,02,7 ,09,13]ペンタデカ−4,10−ジエンが挙げられる。
これらの環状オレフィン系モノマーを2種類以上組合わせて使用する場合、全環状オレフィン系モノマーに対する、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン(ノルボルネン)誘導体の含有量を、10重量%以上とすることが耐候性の観点から好ましい。
例えば、非環状オレフィンが挙げられ、具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20のα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン等が挙げられる。
これらの共重合可能なモノマーは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
中でも、反応性や汎用性の点から好ましくは炭素数2〜20のα−オレフィンであり、より好ましくは炭素数2〜4のα−オレフィンであり、特に好ましくはエチレンである。
すなわち、他の共重合可能なモノマーの含有量は通常1〜99モル%であり、好ましくは10〜90モル%であり、特に好ましくは30〜70モル%である。
本発明で使用される環状オレフィン系樹脂を水素添加して用いる場合は、上記のようにして得られた重合体を、常法に従って水素添加触媒の存在下に水素により水素化する方法により得ることができる。
その水素添加率は、耐候性および防湿性の観点から、通常95%以上、98%以上がより好ましく、99%以上がさらにより好ましい。ここで水素添加率とは、水素添加前の炭素−炭素二重結合の全モル数に対する、水素添加されたもののモル数の割合で表される。
ガラス転移温度が低すぎる場合、熱水処理時に樹脂が融着する傾向がある。一方、高すぎる場合、熱水処理時に浸入した水蒸気がガスバリア層から放出され難く、酸素透過度が悪くなる傾向がある。
本発明においては、特定のガラス転移点を有する環状オレフィン系樹脂を主成分として用いることを最大の特徴とする。
上記樹脂は、例えばポリプラスチック社製の「TOPAS(登録商標)」、三井化学(株)製の「アペル(登録商標)」等として市販されている。
ガラス転移点(Tg)が85〜130℃である環状オレフィン系樹脂のみからなることが、最も好ましい。
混合方法としては、溶融混合法や溶液混合法が挙げられる。共重合法としては、上記不飽和カルボン酸またはその誘導体を公知の方法にて環状オレフィン系樹脂に共重合する方法が一般的である。また、上記グラフト変性する方法としては、例えば、環状オレフィン系樹脂と不飽和カルボン酸またはその誘導体を有機溶剤に分散あるいは溶解し、加熱撹拌して反応させる方法や、溶剤を使用せずに環状オレフィン系樹脂と不飽和カルボン酸またはその誘導体を押出機で溶融混練して反応させる方法がある。後者のほうが簡便であり経済的に有利である。
また、上記の不飽和カルボン酸の誘導体としては、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸イミドおよび不飽和カルボン酸のエステル化合物を挙げることができる。具体的な例としては、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートを挙げることができる。これらの不飽和カルボン酸またはその誘導体は、単独で使用することもできるし、また複数を組み合わせて使用することもできる。
中でも、不飽和カルボン酸またはその誘導体の炭素数は、取り扱い性の点から通常3〜20、好ましくは3〜15、特に好ましくは3〜10である。さらに、不飽和カルボン酸またはその誘導体の融点は、取り扱い性の点から通常0〜200℃であり、好ましくは30〜100℃であり、特に好ましくは40〜80℃である。
各種の配合剤としては、通常用いられる配合剤、例えば、老化防止剤、安定剤、難燃剤、可塑剤、結晶核剤、塩酸吸収剤、帯電防止剤、無機フィラー、滑剤、ブロッキング防止剤等が挙げられる。
また、着色剤、紫外線吸収剤(例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリレート系、サリチレート系等)等を配合することにより、遮光性を持たせるようにしてもよい。
<酸変性オレフィン系エラストマー層(β)>
本発明で用いられる酸変性オレフィン系エラストマーとは、ハードセグメント(硬質相)としてポリオレフィン成分(A)、ソフトセグメント(軟質相)として脂肪族系ゴム成分(B)から構成された熱可塑性を示すオレフィン系エラストマー樹脂であって、かつ成分(A)及び成分(B)の少なくとも一方が、不飽和カルボン酸またはその無水物で変性されたものを含有する組成物である。
(1)混合型のオレフィン系エラストマーの具体例としては、例えば、サーモラン(三菱化学(株)製)、ミラストマー(三井化学(株)製)、エスポレックスTPE(住友化学(株)製)等が挙げられる。
ここで、動的に熱処理するとは、ミキシングロール、ニーダーバンバリーミキサー、ブラベンダーブラストグラフ、一軸または二軸押出機等の混錬装置を用いて、成分(A)、成分(B)および有機過酸化物を溶融状態として混錬することであり、混錬条件としては、通常、100℃〜350℃、好ましくは120℃〜280℃で、0.2分〜30分、好ましくは0.5分〜20分の間行われる。またここでの有機過酸化物としては、前記で例示した具体的化合物(ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、t−ブチルベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルバーオキシド)のうちのいずれか1種または2種以上が使用される。
(2)動的架橋型のオレフィン系エラストマーの具体例としては、例えば、サントプレーン(エクソンモービルケミカル社製)、サーリンク(東洋紡(株)製)等が挙げられる。
(3)重合型のオレフィン系エラストマーの具体例としては、例えば、ニューコン(日本ポリプロ(株)製)、ゼラス(三菱化学(株)製)、プライムTPO(三井化学(株)製)等が挙げられる。
例えば、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン−3、1,4−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシフェニルアセテート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシ−sec−オクトエート、t−ブチルペルオキシピバレート、クミルペルオキシピバレートなどのジアルキルペルオキシド、有機ペルオキシエステル、ジアシルペルオキシド等が用いられる。
なお、この不飽和カルボン酸等の含有量は、検量線法を用いる赤外吸収スペクトル分析法により測定することができる。
なお、本発明における融点は、DSC(示差走査熱量計)による昇温速度10℃/minでの融解温度値(JIS K7121準拠)を示す。
なお、ここでの融解熱量は、DSC(示差走査熱量計)による昇温速度10℃/minでの融解熱量値(JIS K7122準拠)を示す。
続いて、本発明の多層構造体について説明する。
これらの中でも、コストや環境の観点から考慮して共押出しする方法が好ましい。
本発明の多層構造体には、上記積層ユニットの上面又は下面に、他の層が少なくとも1層以上積層されていてもよい。
(1)他の基材樹脂層(δ)
EVOH樹脂層(α)/酸変性オレフィン系エラストマー層(β)/環状オレフィン系樹脂層(γ)の積層ユニットに、さらに他の基材層(δ)と積層することで、さらに強度を上げたり、他の機能を付与することができる。
さらにまた、他の基材樹脂層(δ)やリサクリル層(R)との接着性が不十分な場合には、層間に、適宜接着剤層を介在させてもよい。
上記のような多層構造体のうち、EVOH樹脂層(α)/酸変性オレフィン系エラストマー層(β)/環状オレフィン系樹脂層(γ)のユニットに他の基材(δ)を積層した構造(δ1/α/β/γ、δ1/接着性樹脂層/α/β/γ、δ2/δ1/接着性樹脂層/α/β/γ、δ2/接着性樹脂層/δ1/接着性樹脂層/α/β/γ)が、強度を上げたり、他の機能を付与する点から好ましい。また、耐水性、接着性の点から、δ1/接着性樹脂層/α/β/γ、δ2/接着性樹脂層/δ1/接着性樹脂層/α/β/γが好ましい。
かかる環状オレフィン系樹脂は、上記環状オレフィン系樹脂層(γ)に用いた環状オレフィン系樹脂と同様のものを用いることができる。
他の基材樹脂層を設ける場合、適宜、接着性樹脂層を介在させてもよい。
接着剤樹脂としては、公知のものを使用でき、他の基材樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択すればよい。代表的には不飽和カルボン酸またはその無水物をポリオレフィン系樹脂に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性ポリオレフィン系重合体を挙げることができる。例えば、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリ環状オレフィン系樹脂、無水マレイン酸グラフト変性ポリオレフィン系樹脂等であり、これらから選ばれた1種または2種以上の混合物を用いることができる。
本発明の多層構造体が、他の層として、上記のような他の基材樹脂層(δ)、リサイクル層(R)及び接着性樹脂層の少なくとも1種を含む場合、通常、以下のように製造することができる。
また、EVOH樹脂層(α)厚みと環状オレフィン系樹脂層(γ)厚みの比α/γは、α/γ=0.5〜10が好ましい。α/γが小さすぎる場合、熱水処理により悪化したEVOH樹脂のガスバリア性の回復速度が低下する傾向にある。一方で、α/γが大きすぎる場合、熱水処理時に積層体中に多量の水が浸入し、ガスバリア性や接着強度の著しい低下を引き起こす。
本発明の多層構造体は、一般的な食品の他、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、飲料、化粧品、医薬品等の各種の包装材料容器、包装用フィルム等の包装材料のガスバリア層として好適に用いることができる。
特に、本発明の多層構造体は、熱水処理後のガスバリア性が優れるため、熱水処理を行なう食品の包装材料として特に有用である。
尚、例中「部」とあるのは、重量基準を意味する。
<アルカリ金属含有EVOH樹脂ペレットの製造>
EVOH樹脂[エチレン含有量29モル%、融点188℃](A)の水/メタノール(水/メタノール=40/60混合重量比)混合溶液(60℃、EVOH樹脂濃度45%)を5℃に維持された水槽にストランド状に押し出して凝固させた後、カッターで切断してEVOH樹脂ペレット(直径4mm、長さ4mm)を得た。次いで、得られたペレットを水で洗浄した後、0.1%の酢酸ナトリウムを含有する水溶液に投入し、35℃で約4時間攪拌して、更に回分式塔型流動層乾燥器により75℃で3時間および回分式通気流箱型乾燥器により125℃で18時間乾燥を行って、酢酸ナトリウムをナトリウム換算で110ppm含有した、MFR8.0g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH樹脂ペレットを得た。
5種7層型フィードブロック、多層フィルム成形用ダイおよび引取機を有する共押出多層フィルム成形装置を用いて、下記条件で共押出を実施し、冷却水の循環するチルロールにより冷却して5種7層の多層構造体(環状オレフィン系樹脂/酸変性オレフィン系エラストマー/EVOH樹脂/酸変性オレフィン系エラストマー/環状オレフィン系樹脂/接着性樹脂/ポリプロピレン、厚さ(μm):10/5/10/5/10/20/40)を製膜した。
(材料条件)
・EVOH樹脂として、上記で得られたエチレン構造単位含有率29モル%、ケン化度99.7 モル%、MFR8.0g/10分(210℃、荷重2160g)、Na含有量110ppmのエチ レン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物を用いた。
・環状オレフィン系樹脂として、Tg110℃のエチレン環状オレフィン共重合体(ポリプラス チックス社製“TOPAS 7010F−600”)を用いた。
・EVOH層/環状オレフィン系樹脂層に介する酸変性オレフィン系エラストマー(接着樹脂)として、オレフィン系熱可塑性エラストマー(三菱化学社製“ZELAS MC721APR5” )を用いた。
・シーラント層として、ポリプロピレン(日本ポリプロ社製“EA7AD”)を用いた。
・環状オレフィン系樹脂層/シーラント層に介する接着樹脂として、接着性ポリオレフィン(三 井化学社製“Admer QF551”)を用いた。
(押出成形条件)
・環状オレフィン系樹脂層:40mmφ単軸押出機(バレル温度:220℃)
・EVOH樹脂層:40mmφ単軸押出機(バレル温度:230℃)
・酸変性オレフィン系エラストマー層:32mmφ単軸押出機(バレル温度:220℃)
・接着性樹脂層:50mmφ単軸押出機(バレル温度:220℃)
・シーラント層:40mmφ単軸押出機(バレル温度:220℃)
・ダイ:5種7層型フィードブロックダイ(ダイ温度:230℃)
・冷却ロール温度:50℃
上記で得られた多層構造体を、高温高圧調理殺菌装置(日阪製作所製“Flavor Ace RCS−40RTGN”)を用いて、123℃で33分間レトルト処理を行った。
上記で得られた多層構造体について、レトルト処理前後の多層構造体を試験片とし、卓上形精密万能試験機(島津製作所製、『AGS−H』)を用いて、ASTM F1306−90に記載の方法に基づき、破断点試験力を以下のように評価した。
直径35mmの円形の試験片に対して、直径3.2mmの半球型プローブを、環状オレフィン系樹脂層側から、毎分50±5mmの速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大試験力を測定し、破断点試験力とした。
実施例1において、得られたペレットを水で洗浄した後、0.1%の酢酸ナトリウムを含有する水溶液に投入し、35℃で約4時間攪拌する代わりに、0.5%の酢酸水で洗浄した後、水中に投入し、35℃で約4時間攪拌する以外は、実施例1と同様にEVOH樹脂ペレットを製造し、同様に評価した。なお、得られたEVOH樹脂ペレットは、酢酸ナトリウムをナトリウム換算で1ppm含有し、MFR9.0g/10分(210℃、荷重2160g)であった。
Claims (2)
- エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物層(α)の少なくとも一方の面に、酸変性オレフィン系エラストマー層(β)を介して、ガラス転移点が85℃〜130℃の環状オレフィン系樹脂層(γ)を設けた多層構造体において、該エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物が、5〜1000ppmのアルカリ金属を含有することを特徴とする多層構造体。
- 共押出しにより製造された請求項1記載の多層構造体。
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