JP2020100720A - 接着性樹脂組成物および積層体 - Google Patents

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孝史 山▲崎▼
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真也 大政
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Yoshiyuki Ogawa
慶之 小川
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Abstract

【課題】スチレン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物等の樹脂との接着力を両立させるとともに、高温下での接着力を改善することができる接着性樹脂組成物および該接着性樹脂組成物を含む層を有する積層体を提供すること。【解決手段】本発明の接着性樹脂組成物は、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された変性エチレン・α−オレフィン共重合体(A)10〜35質量%、スチレン由来の構成単位の含有量が50〜90モル%のスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(B)23〜38質量%、および、密度が0.910〜0.940g/cm3であるポリエチレン(C)27〜67質量%を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、接着性樹脂組成物および積層体に関し、詳しくは、スチレン系樹脂に対して室温だけでなく高温下においても高い接着性を有する接着性樹脂組成物、および該接着性樹脂組成物を含む層を有する積層体に関する。
スチレン系樹脂(PS)は耐水性に優れているが、極性基を有しないため、機械的強度等に優れたエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)などの樹脂と積層させることが難しいという問題がある。そのため、PSとEVOH等とを接着剤を用いて積層させることが行われている。
例えば、特許文献1には、メタロセンポリエチレンと線形低密度ポリエチレン(LLDPE)との混合物に不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれるグラフト化モノマーが共グラフト化されたポリマー(A)10〜35質量%、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)ブロックコポリマー(B)40〜60質量%、ポリエチレン(C)20〜35質量%の混合物からなる共押出用バインダーを用いて、ポリスチレン層(E)と、ポリアミド、脂肪族ポリケトン、EVOH、ポリエチレン、ポリエステルおよびポリスチレンから選ばれるポリマー層とを積層する方法が開示されている。
特許第3965499号公報
しかしながら、特許文献1の共押出用バインダーは、PS層に対する接着力は高いが、EVOH等の層に対する接着力は必ずしも十分とはいえなかった。また、特許文献1では、接着性に関する評価は25℃で実施されており、近年求められている高温下(例えば70℃程度)での接着性については開示されておらず、本発明者らが確認したところ、PS層とEVOH等の層との間で剥離が生じやすいことが判明した。
本発明は、このような従来技術の課題に鑑み、スチレン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物等の樹脂との接着力を両立させるとともに、高温下での接着力を改善することができる接着性樹脂組成物および該接着性樹脂組成物を含む層を有する積層体を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様の例を以下に示す。
[1] 不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された変性エチレン・α−オレフィン共重合体(A)10〜35質量%、
スチレン由来の構成単位の含有量が50〜90モル%のスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(B)23〜38質量%、および
密度が0.910〜0.940g/cm3であるポリエチレン(C)27〜67質量%
を含む(ただし、成分(A)〜(C)の合計を100質量%とする。)接着性樹脂組成物。
[2] 前記変性エチレン・α−オレフィン共重合体(A)が、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であって、密度が0.860〜0.960g/cm3の範囲にある未変性エチレン・α−オレフィン共重合体を不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性して得られ、そのグラフト量が0.01〜5質量%である項[1]に記載の接着性樹脂組成物。
[3] 前記不飽和カルボン酸又はその誘導体が、無水マレイン酸である項[1]または[2]に記載の接着性樹脂組成物。
[4] 項[1]〜[3]のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物を含む層(I)と、ポリスチレン単独重合体またはポリスチレン共重合体を含む層(II)と有し、かつ、前記層(II)が前記層(I)の一方の面に直接積層されている積層体。
[5] ポリアミド、脂肪族ポリケトン、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリエチレン、ポリエステルおよびポリスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーを含む層(III)をさらに有し、かつ、前記層(III)が前記層(I)の他方の面に直接積層されている項[4]に記載の積層体。
[6] 前記層(III)として、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物を含む層を少なくとも1層有する項[5]に記載の積層体。
本発明の接着性樹脂組成物は、スチレン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物等の樹脂との接着力を両立させるとともに、高温下での接着力を改善することができる。そのため、本発明の接着性樹脂組成物を含む層を有する積層体を、例えば、食品用のカップなどに適用した場合、高温の内容物を入れても、積層体の各層間で剥離が生じ難いという効果を奏する。
以下、本発明について詳細に説明する。
[接着性樹脂組成物]
本発明の接着性樹脂組成物は、
不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された変性エチレン・α−オレフィン共重合体(A)10〜35質量%、
スチレン由来の構成単位の含有量が50〜90モル%のスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(B)23〜38質量%、および
密度が0.910〜0.940g/cm3であるポリエチレン(C)27〜67質量%
を含む(ただし、成分(A)〜(C)の合計を100質量%とする。)ことを特徴とする。
<変性エチレン・α−オレフィン共重合体(A)>
本発明で用いられる変性エチレン・α−オレフィン共重合体(A)(以下「グラフト共重合体(A)」ともいう。)は、未変性のエチレン・α−オレフィン共重合体を不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性して得られるものである。
≪未変性エチレン・α−オレフィン共重合体≫
前記未変性エチレン・α−オレフィン共重合体(以下「未変性共重合体」ともいう。)としては、特に限定されないが、好ましくはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体、より好ましくはエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体、さらに好ましくはエチレンと炭素数2〜8のα−オレフィンとの共重合体である。前記α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられ、これらは1種単独で使用しても2種以上を使用してもよい。また、前記未変性共重合体についても、1種単独で使用しても2種以上を使用してもよい。
前記未変性共重合体の密度は、好ましくは0.860〜0.960g/cm3、より好ましくは0.865〜0.955g/cm3、更に好ましくは0.870〜0.950g/cm3である。また、前記未変共重合体における、ASTM D1238による190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.01〜100g/10分、より好ましくは0.05〜50g/10分、さらに好ましくは0.1〜10g/10分である。前記未変性共重合体の密度およびMFRがこの範囲にあれば、グラフト共重合体(A)の密度、MFRも同程度となることからハンドリングしやすい。
前記未変性共重合体は、従来から公知のいずれの方法によっても製造することができ、例えば、高圧法あるいはチタン系触媒、バナジウム系触媒、メタロセン触媒などを用いた低圧法によって製造することができる。また、未変性共重合体は、樹脂およびエラストマーのいずれの形態でもよく、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造の両者ともに使用可能であり、立体規則性についても特段の制限はない。市販の樹脂をそのまま利用することも可能である。
≪不飽和カルボン酸又はその誘導体≫
グラフト変性に用いられる不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物、無水カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物およびその誘導体を挙げることができ、不飽和化合物が有する不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基などを挙げることができる。具体的な化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸、またはこれらの酸無水物あるいはこれらの誘導体(例えば酸ハライド、アミド、イミド、エステルなど)が挙げられる。具体的な化合物の例としては、塩化マレニル、マレニルイミド、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸ジメチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸アミノエチルおよびメタクリル酸アミノプロピルなどを挙げることができる。また、不飽和カルボン酸又はその誘導体は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。これらの中では、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、メタクリル酸アミノプロピルが好ましく、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物などのジカルボン酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
不飽和カルボン酸又はその誘導体を未変性共重合体に導入する方法としては、周知の方法を採用することが可能であり、例えば、未変性共重合体の主鎖に不飽和カルボン酸又はその誘導体をグラフト共重合する方法や、オレフィンと不飽和カルボン酸又はその誘導体をラジカル共重合する方法等を例示することができる。
≪グラフト重合方法≫
前記グラフト共重合体(A)をグラフト共重合により得る場合には、グラフト主鎖となる未変性共重合体に、不飽和カルボン酸又はその誘導体、更に必要に応じてその他のエチレン性不飽和単量体等を、ラジカル開始剤の存在下、グラフト共重合する。
不飽和カルボン酸又はその誘導体を未変性共重合体の主鎖にグラフトさせる方法については特に限定されず、溶液法、溶融混練法等、従来公知のグラフト重合法を採用することができる。例えば、未変性共重合体を有機溶媒に溶解し、次いで得られた溶液に不飽和カルボン酸またはその誘導体及び必要に応じて有機過酸化物などのラジカル開始剤を加え、通常、60〜350℃、好ましくは80〜190℃の温度で、0.5〜15時間、好ましくは1〜10時間反応させる方法、あるいは、押出機などを使用して、無溶媒で、未変性共重合体と、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体及び必要に応じて有機過酸化物などのラジカル開始剤を加え、通常、未変性共重合体の融点以上、好ましくは120〜350℃、0.5〜10分間反応させる方法を採り得る。
≪グラフト共重合体(A)の特性≫
前期グラフト共重合体(A)中における不飽和カルボン酸又はその誘導体の含有量(グラフト量)は、好ましくは0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜3.0質量%、さらに好ましくは0.1〜2.0質量%である。不飽和カルボン酸又はその誘導体の含有量が上記範囲を超えると経済的でなくなり、一方で、グラフト共重合体(A)中の不飽和カルボン酸又はその誘導体の含有量が前記範囲より少ないと、接着力は小さいという傾向にある。
前記グラフト共重合体(A)のASTM D1238による荷重2.16kg、190℃におけるメルトフローレート(MFR)は、通常0.01〜500g/10分、好ましくは0.05〜100g/10分である。グラフト共重合体(A)のMFRが前記範囲にあると、成形性が良く、接着力にも優れる。熱プレス成形で厚み100ミクロンの接着剤層を基材にはさんで、剥離試験を行い、接着力を測定する方法では、低いMFRで、分子鎖が長いほど接着力が高い傾向にある。キャスト成形で成形したフィルムにおいて、厚み30〜50ミクロンの接着剤層の場合は、逆の傾向にある。キャスト成形フィルム剥離試験を行い、接着力を測定する方法では、高いMFRで、分子鎖が短いほど接着力が高い傾向にある。高いMFRで、分子鎖が短いほど、界面での流れ性が良いからであると考えられる。
前記グラフト共重合体(A)の密度は、好ましくは0.860〜0.960g/cm3、より好ましくは0.865〜0.955g/cm3、更に好ましくは0.870〜0.950g/cm3である。
<スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(B)>
本発明で用いられるスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(B)(以下「SBSブロック共重合体(B)」ともいう。)は、スチレン由来の構成単位の含有量が50〜90モル%、好ましくは55〜85モル%、より好ましくは60〜80モル%であれば、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。SBSブロック共重合体(B)は1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記SBSブロック共重合体(B)の密度は、好ましくは0.94〜1.08g/cm3、より好ましくは0.98〜1.04g/cm3である。また、前記SBSブロック共重合体(B)のMFR(荷重5kg、200℃)は、好ましくは0.5〜50g/10分、より好ましくは1.0〜20g/10分である。
<ポリエチレン(C)>
本発明で用いられるポリエチレン(C)は、密度が0.910〜0.940g/cm3、好ましくは0.910〜0.935g/cm3、より好ましくは0.915〜930g/cm3あれば特に限定されないが、例えば、直鎖状低密度ポリエチレンやメタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレン(以下「メタロセンポリエチレン」ともいう。)などを用いることができる。ポリエチレン(C)は1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記直鎖状低密度ポリエチレンは、公知のチーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒を用いて、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン・α- オレフィン共重合体(樹脂)である。
炭素原子数が3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、エチル-1-ペンテン、1-オクテン、メチル-1-ペンテン、ジメチル-1-ヘキセン、トリメチル-1-ペンテン、エチル-1-ヘキセン、メチルエチル-1-ペンテン、ジエチル-1-ブテン、プロピル-1-ペンテン、1-デセン、メチル-1-ノネン、ジメチル-1-オクテン、トリメチル-1-ヘプテン、エチル-1-オクテン、メチルエチル-1-ヘプテン、ジエチル-1-ヘキセン、1-ドデセン、1-ヘキサドデセンなどが挙げられる。中でも、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1- ペンテン、1-オクテンなどの炭素原子数3〜10のα-オレフィンが好ましい。これらのα−オレフィンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明で好ましく用いられる直鎖状低密度ポリエチレンとしては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・4-メチル-1- ペンテン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体などが挙げられる。
直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンから導かれる構成単位含量(エチレン含量)が好ましくは1〜10モル%、より好ましくは2〜8モル%、さらに好ましくは3〜8モル%である。エチレン・α−オレフィン共重合体の組成は、通常10mmφの試料管中で約200mgのエチレン・α−オレフィン共重合体を1mlのヘキサクロロブタジエンに均一に溶解させた試料の13C−NMRスペクトルを、測定温度120℃、測定周波数25.05MHz、スペクトル幅1500Hz、パルス繰返し時間4.2sec.、パルス幅6μsec.の条件下で測定して決定される。
直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレート(ASTM D 1238,荷重2.16kg、190℃)は、好ましくは0.2〜30g/10分、より好ましくは0.5〜20g/10分、さらに好ましくは2〜20g/10分の範囲内にある。このメルトフローレートが上記範囲内にあると、既存の成形機でも成形性に優れる組成物が得られる。
前記メタロセンポリエチレンとしては、例えば、メタロセン触媒の存在下でエチレンとα−オレフィンとを共重合して得られるポリマー(前記直鎖状低密度ポリエチレンを除く。)などが挙げられる。前記α−オレフィンとしては、前述直鎖状低密度ポリエチレンに用いられるα−オレフィンと同様のものが挙げられる。メタロセン触媒としては、密度が0.910〜0.940g/cm3であるポリエチレンを製造することができれば特に限定されないが、例えばジルコニウム、チタン、ハフニウムなどの金属原子と該金属原子に結合した2つの環状アルキル分子(例えばシクロペンタジエン環)とで構成されるモノサイト触媒が上げられる。メタロセン触媒は共触媒または活性剤としてのアルミノオキサン、好ましくはメチルアルミノオキサン(MAO)と一緒に用いられることが多い。
前記メタロセンポリエチレンは、Mw/Mn比が、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。ここで、MwおよびMnは、それぞれ重量平均分子量および数平均分子量を意味する。
本発明の接着性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料等の添加剤または他の重合体やゴムなどを必要に応じて含有することができる。他の重合体として、例えば、前記ポリエチレン(C)よりも高い密度を有するエチレン単独重合体などを用いてもよい。
<接着性樹脂組成物の物性>
本発明の接着性樹脂組成物において、前記成分(A)〜(C)の合計を100質量%とした場合、
前記グラフト共重合体(A)の含有割合は10〜35質量%、好ましくは14〜26質量%であり、
前記SBSブロック共重合体(B)の含有割合が23〜38質量%、好ましくは24〜36質量%であり、
前記ポリエチレン(C)の含有割合が27〜67質量%、好ましくは38〜62質量%である。特に成分(B)が前記範囲内にあることにより、スチレン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物等の樹脂との接着力を両立させるとともに、高温下での接着力を改善することができる。
本発明の接着性樹脂組成物のメルトフローレート(ASTM D 1238,荷重2.16kg、190℃)は、好ましくは0.1〜30g/10分、より好ましくは0.2〜10g/10分、さらに好ましくは0.5〜5g/10分である。
本発明の接着性樹脂組成物の密度は、好ましくは0.90〜0.98g/cm3、より好ましくは0.91〜0.97g/cm3、さらに好ましくは0.92〜96g/cm3ある。
本発明の接着性樹脂組成物は、種々公知の方法、例えば、前記成分(A)〜(C)および必要に応じてその他の成分を、ヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダー、V−ブレンダー等によりドライブレンドする方法、ドライブレンドした後、単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー等により溶融混練する方法、および溶媒の存在下で、攪拌混合する方法等によって調製することができる。
[積層体]
本発明の積層体は、上述した本発明の接着性樹脂組成物を含む層(I)(以下「接着層(I)」ともいう。)と、ポリスチレン単独重合体またはポリスチレン共重合体(以下、これらをまとめて「スチレン系樹脂」ともいう。)を含む層(II)(以下「PS層(II)」ともいう。)と有し、かつ、前記層(II)が前記層(I)の一方の面に直接積層されていることを特徴とする。
また、本発明の積層体は、ポリアミド、脂肪族ポリケトン、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、ポリエチレン、ポリエステルおよびポリスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーを含む層(III)をさらに有し、かつ、前記層(III)が前記層(I)の他方の面に直接積層されていることが好ましい。本発明の積層体は、前記層(III)として、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物を含む層を少なくとも1層有することが好ましい。
前記層(II)に含まれるスチレン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、水添スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(HSBR)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレン共重合体(SIB)などが挙げられる。
前記層(III)に含まれるポリアミドとしては、特に限定されないが、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン11、MXDナイロン、アモルファスナイロン、共重合ナイロンなどが挙げられる。
前記層(III)に含まれるポリケトンとしては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリケトンなどが挙げられる。
前記層(III)に含まれるエチレン・ビニルアルコール共重合体鹸化物(EVOH)は、好ましくは、エチレン含有率が15〜60モル%、好ましくは20〜50モル%のエチレン・酢酸ビニル共重合体をケン化して得られる、ケン化度90〜100%、好ましくは95〜100%の重合体である。
前記層(III)に含まれるポリエチレンとしては、特に限定されず、公知のポリエチレンを用いることができる。
前記層(III)に含まれるポリエステルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフテナートおよびこれら樹脂の混合物または芳香族ポリエステル、例えば液晶ポリマー等の中から選択できる。
前記層(III)に含まれるポリスチレンとしては、特に限定されず、公知のポリスチレンを用いることができる。
本発明の積層体の層構成としては、例えば、PS層(II)/接着層(I)の2層構造、PS層(II)/接着層(I)/層(III)の3層構造、PS層(II)/接着層(I)/層(III)/接着層(I)の4層構造、PS層(II)/接着層(I)/層(III)/接着層(I)/PS層(II)およびPS層(II)/接着層(I)/層(III)/接着層(I)/層(III)等の5層構造などが挙げられる。
また、本発明の積層体は、本発明の効果を損なわない限り、上述した接着層(I)、PS(II)、層(III)以外の他の層を含んでいてもよい。他の層としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫およびニッケル等の金属からなる層やこれらの金属の少なくとも一種を主成分として含む合金からなる層、およびリグラインド層などが挙げられる。リグラインド層とは、積層体を成形する場合に生じるバリ部分(不要部分)、積層体の回収品(スクラップ)、成形の際に生じる不良品などを粉砕、あるいは必要であれば、当該粉砕物を押出機等で溶融混練してなるもの(リグラインド)からなる層である。このような他の層は、前記層(III)の代わりに用いることもできる。
本発明の積層体を構成する上記各層には、本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤、安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等の公知の添加剤を配合することができる。
本発明の積層体は、共押出成形、プレス成形、押出ラミネート成形等公知の方法により製造することができる。これらの中では層間接着力の点で、共押出成形法を用いる事が好ましい。共押出成形法としてはフラット・ダイを用いるTーダイ法とサーキュラー・ダイを用いるインフレーション法とがある。フラット・ダイはブラック・ボックスを使用したシングル・マニホールド形式およびマルチ・マニホールド形式のいずれを用いてもよい。インフレーション法に用いるダイについても公知のダイを用いることができる。
本発明の積層体は、優れた層間接着力と耐熱接着性を示すことから、様々な用途に利用することができる。例えば、本発明の積層体から、該積層体を含むフィルムを製造することができ、さらに該フィルムから袋を得ることができる。また、本発明の積層体から、該積層体を含む包装容器を製造することができる。
また、本発明の積層体の内、シート状のものは、これを真空成形、圧空成形、プラグアシスト成形等に付することにより、カップ状、トレイ状の容器が得られ、また、サーキュラー・ダイを通して押し出されたパリソンを中空成形することにより、ボトル、タンク、チューブ等の容器を得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれら実施例になんら制約されるものではない。
[各種測定方法]
本実施例等においては、以下の方法に従って測定を実施した。
<メルトフローレート(MFR)>
メルトフローレートは、ASTM D1238に準拠して、温度190℃、2.16kg荷重下で測定した。ただし、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体については、温度200℃、5kg荷重下で測定した。
<密度>
密度は、JIS K7112に準拠して測定した。
[使用した材料]
本実施例等で調製した接着性樹脂組成物を構成する成分は以下のとおりである。
<変性エチレン・α−オレフィン共重合体(A)>
MAH−LLDPE:無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン(無水マレイン酸変性エチレン・1−ブテン共重合体、グラフト量:1質量%、MFR:0.3g/10分、密度:0.920g/cm3
<スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(B)>
SBS:スチレンとブタジエンの共重合樹脂(スチレン含量:73%、ブタジエン含量:27%、密度:1.01g/cm3、MFR:7.5g/10分)
<ポリエチレン(C)>
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン(エチレン・1−ブテン共重合体、密度:0.920g/cm3
[実施例1〜2および比較例1〜4]
<接着性樹脂組成物の調製>
無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン(MAH−LLDPE)、スチレンとブタジエンの共重合樹脂(SBS)および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を、下記表1に示す配合処方にて、二軸混練機(日本製鋼所製「TEX−30」)を用いて230℃で溶融混練して接着性樹脂組成物を得た。得られた接着性樹脂組成物のメルトフローレートを測定した結果を表1に示す。
<積層体の製造>
ポリスチレン(東洋スチレン(株)製「トーヨースチロールHI E640N」、MFR:2.7g/10分)から形成される層(PS層)、得られた接着性樹脂組成物から形成される層(AD層)、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物((株)クラレ製「エバール J171B」、MFR:1.7g/10分)から形成される層(EVOH層)、AD層およびポリエチレン((株)プライムポリマー製「ウルトゼックス 2021L」、MFR:2.0g/10分)から形成される層(PE層)がこの順に積層された5層からなる積層体を下記の方法で製造した。
まず、PS、前記接着性樹脂組成物、EVOHおよびPEを下記条件で押出し、押し出された各樹脂を、フィードブロック内で、前記構成を有する積層体が得られるように積層した。ダイス温度は230℃とした。次いで、厚さ約900μmのフィルム状に共押出された各樹脂を、チルロールで冷却しつつ、1m/分の速さで引き取って積層体を得た。
(押出し条件)
PS;直径40mm、L/D 28のスクリュー、設定温度230℃
接着性樹脂組成物;直径40mm、L/D 28のスクリュー、設定温度230℃
EVOH;直径30mm、L/D 28のスクリュー、設定温度220℃
PE;直径40mm、L/D 28のスクリュー、設定温度220℃
得られた積層体における各層の厚さは、PS層/AD層/EVOH層/AD層/PE層=350/50/100/50/350μmであった。
<積層体の層間接着力測定>
得られた積層体を15mm幅に切り、PS層とAD層との界面およびEVOH層とAD層との界面において、引張試験機((株)インテスコ社製「IM−20ST型」)を用いて、室温(23℃)で層間接着力測定を行い、PS層とAD層との層間接着力(以下「PS接着力」ともいう。)およびEVOH層とAD層との層間接着力(以下「EVOH接着力」ともいう。)を求めた。クロスヘッドスピード(剥離速度)は300mm/minとした。同様にして、引張試験機((株)インテスコ社製「万能材料試験機210X型」)を用いて、70℃で層間接着力測定を行い、PS層とAD層との層間接着力(PS接着力)およびEVOH層とAD層との層間接着力(EVOH接着力)を求めた。クロスヘッドスピード(剥離速度)は300mm/minとした。これらの結果を表1に示す。
Figure 2020100720

Claims (6)

  1. 不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された変性エチレン・α−オレフィン共重合体(A)10〜35質量%、
    スチレン由来の構成単位の含有量が50〜90モル%のスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(B)23〜38質量%、および
    密度が0.910〜0.940g/cm3であるポリエチレン(C)27〜67質量%
    を含む(ただし、成分(A)〜(C)の合計を100質量%とする。)接着性樹脂組成物。
  2. 前記変性エチレン・α−オレフィン共重合体(A)が、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であって、密度が0.860〜0.960g/cm3の範囲にある未変性エチレン・α−オレフィン共重合体を不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性して得られ、そのグラフト量が0.01〜5質量%である請求項1に記載の接着性樹脂組成物。
  3. 前記不飽和カルボン酸又はその誘導体が、無水マレイン酸である請求項1または2に記載の接着性樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物を含む層(I)と、ポリスチレン単独重合体またはポリスチレン共重合体を含む層(II)と有し、かつ、前記層(II)が前記層(I)の一方の面に直接積層されている積層体。
  5. ポリアミド、脂肪族ポリケトン、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリエチレン、ポリエステルおよびポリスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーを含む層(III)をさらに有し、かつ、前記層(III)が前記層(I)の他方の面に直接積層されている請求項4に記載の積層体。
  6. 前記層(III)として、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物を含む層を少なくとも1層有する請求項5に記載の積層体。
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WO2022265039A1 (ja) * 2021-06-16 2022-12-22 藤森工業株式会社 接着フィルムおよび接着フィルムの製造方法

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