JP2016110149A - トナー - Google Patents
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Abstract
Description
そこでブロッキング耐性と低温定着性の両立の手段として、融点を超えると粘度が大きく低下するシャープメルト性を有した結晶性樹脂を用いる技術が提案されている(特許文献1〜3)。
一方、トナー材料として結晶性樹脂と非晶性樹脂を併用することも行われている。この場合、低温定着性を得るためには結晶性樹脂と非晶性樹脂の相溶性が高い必要がある。しかしながら、両樹脂の相溶性が高い場合、トナー製造時に結晶性樹脂と非晶性樹脂が相溶し、トナーのガラス転移温度(以下、単に「Tg」ともいう)を低下させることで、トナーの帯電性及び保存性(例えば、耐ブロッキング性)を悪化させるといった問題があった。
また、帯電性及び耐ブロッキング性を維持するために、結晶性樹脂と非晶性樹脂において相溶性の低い樹脂を選択した場合は、帯電性と耐ブロッキング性は得られるが結晶性樹脂による非晶性樹脂の可塑化効果が発揮されにくく、低温定着性は得られにくいといった問題があった。
(1)固体13C−NMRを用い、トナーを測定して得られた、トナー中の結晶性樹脂の各構成成分の水素核緩和時間(HT1ρ−C)のばらつきが小さいこと。
(2)結晶性樹脂の各構成成分の水素核緩和時間(HT1ρ−C)のうち最も緩和時間が長い構成成分の水素核緩和時間(HT1ρ−C1)の、非晶性樹脂の各構成成分の水素核緩和時間(HT1ρ−A)のうち最も緩和時間の短い構成成分の水素核緩和時間(HT1ρ−A1)に対する比{(HT1ρ−C1)/(HT1ρ−A1)}が特定の範囲を満たすこと。
すなわち、本発明は、
結晶性樹脂及び非晶性樹脂を含有するトナーであって、
前記トナーの固体13C−NMRで測定された水素核緩和時間(HT1ρ−C)の標準偏差が0.0以上5.0以下であり、
前記水素核緩和時間(HT1ρ−C)のうち最も緩和時間が長い13Cピークの水素核緩和時間(HT1ρ−C1)と、水素核緩和時間(HT1ρ−A)のうち最も緩和時間の短い13Cピークの水素核緩和時間(HT1ρ−A1)が下記式(1)を満たすことを特徴とするトナーに関する。
3.0≦{(HT1ρ−C1)/(HT1ρ−A1)}≦6.0 (式1)
[前記水素核緩和時間(HT1ρ−C)は、前記トナーを固体13C−NMR(DD/MAS)法により測定して得られた、結晶性樹脂由来の13Cピークについて、ピーク強度の大きい方から順番にならべ、該13Cピークのピーク強度の最上位から、全13Cピークの積分強度の合計値に対する該13Cピークの積分強度の累積値の比率が90%に達する13Cピークまでを、固体13C−NMR(CP/MAS)法により測定して得られたものであり、
前記水素核緩和時間(HT1ρ−A)は、前記トナーを固体13C−NMR(DD/MAS)法により測定して得られた、全ての非晶性樹脂由来の13Cピークについて、固体13C−NMR(CP/MAS)法により測定して得られたものである。]
非晶性樹脂のマトリクスの中に結晶性樹脂が数nmオーダーの微小なドメインで均一に分散していることで、抵抗値の低い結晶性樹脂のドメイン同士の接触が防止できる。これにより、抵抗値の高い非晶性樹脂のマトリックス中において電荷の逃げ道の形成が防止される。したがって、トナーは高い帯電性を得ることができる。
また、結晶性樹脂のドメインが微小であるため、非晶性樹脂のマトリックスとの接触面積を大きくすることが可能となり、結晶性樹脂の非晶性樹脂に対する可塑化の効率が顕著に向上し、トナーは優れた低温定着性を得ることができる。
さらに、結晶性樹脂と非晶性樹脂とが十分に相分離した状態となることで、非晶性樹脂マトリックスのTgの低下を防止することが可能となり、トナーは優れた保存性を得ることができる。
結晶性樹脂及び非晶性樹脂を含有するトナーであって、
前記トナーの固体13C−NMRで測定された水素核緩和時間(HT1ρ−C)の標準偏差が0.0以上5.0以下であり、
前記水素核緩和時間(HT1ρ−C)のうち最も緩和時間が長い13Cピークの水素核緩和時間(HT1ρ−C1)と、水素核緩和時間(HT1ρ−A)のうち最も緩和時間の短い13Cピークの水素核緩和時間(HT1ρ−A1)が下記式(1)を満たすことを特徴とする。
3.0≦{(HT1ρ−C1)/(HT1ρ−A1)}≦6.0 (式1)
[前記水素核緩和時間(HT1ρ−C)は、前記トナーを固体13C−NMR(DD/MAS)法により測定して得られた、結晶性樹脂由来の13Cピークについて、ピーク強度の大きい方から順番にならべ、該13Cピークのピーク強度の最上位から、全13Cピークの積分強度の合計値に対する該13Cピークの積分強度の累積値の比率が90%に達する13Cピークまでを、固体13C−NMR(CP/MAS)法により測定して得られたものであり、
前記水素核緩和時間(HT1ρ−A)は、前記トナーを固体13C−NMR(DD/MAS)法により測定して得られた、全ての非晶性樹脂由来の13Cピークについて、固体13C−NMR(CP/MAS)法により測定して得られたものである。]
<固体13C−NMRの測定条件>
装置: CMX−300 Infinity
(Chemagnetics社製)
測定法: DD/MAS法、CP/MAS法、緩和時間測定(一成分解析)測定各周波数: 75.188829MHz(13C核)
スペクトル幅: 30.003kHz
パルス幅: 4.2μsec(90°パルス)
パルス繰り返し時間: ACQTM:34.13msec
PD:8.0sec(CP/MAS、緩和時間測定)
600sec(DD/MAS)
コンタクトタイム: 3.0msec
観測ポイント: 1024 データポイント:8192
基準物質: ポリジメチルシロキサン(内部基準:1.56ppm)
温度: 室温(約22℃)
試料回転数: 10.3kHz
トナーを試料管に50mgから100mg密に充填して、測定試料を調製し、得られた測定試料について、上記条件で測定した。
(1)上記条件で、トナーを固体13C−NMR(DD/MAS)法により測定する。
(2)測定により得られた13Cピークのうち、結晶性樹脂由来の13Cピークを同定する。
(3)同定された13Cピークをピーク強度の大きい方から順番にならべる(P1(最も大きい)、P2、・・、Pn(最も小さい))。
(4)P1〜Pnの各積分強度(ピーク面積;P1a、P2a、・・、Pna)を求める。
(5)結晶性樹脂由来の全13Cピークの積分強度の合計値(P1a+・・・+Pna)を求める。
(6){累積値(P1a+・・・+Pαa)}/{合計値(P1a+・・・+Pna)}×100が90以上になったときのPαa(α<n)を決定する。
(7)P1、P2・・・・Pαの各13Cピークについての水素核緩和時間(HT1ρ−C)を、固体13C−NMR(CP/MAS)法により測定する。
(8)得られた各水素核緩和時間(HT1ρ−C)の標準偏差を算出する。
一般的に、トナー用に用いられる結晶性樹脂は、単独では、HT1ρ−Cの値は大きく
、非晶性樹脂のHT1ρ−Aは小さい値を示す。
本発明のトナーのように、少なくとも2種類の樹脂(すなわち、結晶性樹脂及び非晶性樹脂)からなる複合材料のHT1ρの値はそれぞれの樹脂の物理的距離に依存して影響を与え合う。
非晶性樹脂のマトリクスの中に結晶性樹脂が数nmオーダーの微小なドメインで均一に分散されている場合は、非晶性樹脂との界面に近い結晶性樹脂の官能基とドメインの中心近くに位置する結晶性樹脂の官能基の、非晶性樹脂からの影響度は等しくなる傾向に有り、HT1ρ−Cの値のばらつきが小さくなる。
一方、非晶性樹脂のマトリクスの中に結晶性樹脂が数nmオーダーより大きいドメインで相分離している場合は、非晶性樹脂との界面に近い結晶性樹脂の官能基とドメインの中心近くに位置する結晶性樹脂の官能基の、非晶性樹脂からの影響度が大きく異なる。
具体的には、非晶性樹脂との界面に近い結晶性樹脂の官能基は、非晶性樹脂の影響を受けて運動性が低くなり、HT1ρ−Cが低くなる。一方、ドメインの中心近くに位置する結晶性樹脂の官能基は、非晶性樹脂の影響を受けにくく、運動性が低下することはなく、HT1ρ−Cも高い状態が保たれる。その結果、HT1ρ−Cの値のばらつきが大きくなる。
なお、従来のトナーは、結晶性樹脂が数nmオーダーより大きいドメインで相分離している場合に相当し、HT1ρ−Cの値のばらつきが大きい。
該13Cピークの積分強度の累積値の比率が90%に達する13Cピークまでの緩和時間を評価すれば不純物による影響を取り除くことができ、かつ、必要とする結晶性樹脂由来の13Cピークの緩和時間を評価することができる。
該水素核緩和時間(HT1ρ−C)の標準偏差が0.0以上5.0以下であれば、上記のように、トナーにおいて、非晶性樹脂のマトリクスの中に結晶性樹脂が数nmオーダーの微小なドメインで均一に分散されている。これにより、抵抗値の高い非晶性樹脂のマトリックス中において電荷の逃げ道の形成が防止され、トナーは高い帯電性を得ることができる。また、結晶性樹脂のドメインが微小であるため、非晶性樹脂のマトリックスとの接触面積を大きくすることが可能となり、結晶性樹脂の非晶性樹脂に対する可塑化の効率が顕著に向上し、トナーは優れた低温定着性を得ることができる。
該水素核緩和時間(HT1ρ−C)の標準偏差は、0.0以上4.5以下であることがより好ましく、0.0以上4.0以下であることがさらに好ましい。
一方、{(HT1ρ−C1)/(HT1ρ−A1)}が3.0以上6.0以下を満たす場合は、結晶性樹脂と非晶性樹脂が相溶化した状態ではなく、トナー中で結晶性樹脂と非晶性樹脂とが十分に相分離していることを示している。これにより、非晶性樹脂マトリックスのTgの低下を防止することが可能となり、トナーは優れた保存性を得ることができる。
{(HT1ρ−C1)/(HT1ρ−A1)}が3.0未満である場合は、結晶性樹脂と非晶性樹脂の相分離が十分でなく、非晶性樹脂マトリックスのTgの低下、及び、非晶性樹脂マトリクスの抵抗値の低下を引き起こし、保存性及び帯電性が低下する。
一方、{(HT1ρ−C1)/(HT1ρ−A1)}が6.0より大きい場合は、相分離して結晶性樹脂のドメインが大きくなっている状態、又は一部相溶しにくい成分の緩和時間が長い状態であり、非晶性樹脂のマトリックスとの接触面積の低下、及び、非晶性樹脂のマトリックス中における電荷の逃げ道の形成を引き起こし、低温定着性及び帯電性が低下する。
該{(HT1ρ−C1)/(HT1ρ−A1)}は、3.0以上5.0以下であることがより好ましく、3.0以上4.5以下であることがさらに好ましい。
なお、上記水素核緩和時間(HT1ρ−C)の標準偏差、及び、{(HT1ρ−C1)/(HT1ρ−A1)}は、トナーにおいて、結晶性樹脂を非晶性樹脂のマトリクスの中に、数nmオーダーの微小なドメインで均一に分散させ、かつ、結晶性樹脂と非晶性樹脂とを十分に相分離させることで、上記範囲に制御することができる。
上記水素核緩和時間(HT1ρ−C)のうち最も緩和時間が短い13Cピークの水素核緩和時間(HT1ρ−C2)[単位はミリ秒;以下、msecともいう]と、水素核緩和時間(HT1ρ−A)[msec]のうち最も緩和時間の長い13Cピークの水素核緩和時間(HT1ρ−A2)が下記式(2)を満たすことが好ましい。
(式2)
−2.0msec≦{(HT1ρ−C2)−(HT1ρ−A2)}≦10.0msec
上記水素核緩和時間(HT1ρ−C)は、上記熱履歴付与トナーを固体13C−NMR(DD/MAS)法により測定して得られた、結晶性樹脂由来の13Cピークについて、ピーク強度の大きい方から順番にならべ、該13Cピークのピーク強度の最上位から、全13Cピークの積分強度の合計値に対する該13Cピークの積分強度の累積値の比率が90%に達する13Cピークまでを、固体13C−NMR(CP/MAS)法により測定して得られたものであり、前記水素核緩和時間(HT1ρ−A)は、前記熱履歴付与トナーを固体13C−NMR(DD/MAS)法により測定して得られた、全ての非晶性樹脂由来の13Cピークについて、固体13C−NMR(CP/MAS)法により測定して得られたものである。
トナーが上記条件を満たすということは、結晶性樹脂と非晶性樹脂の相溶性が最適な範囲にあることを示しており、低温定着性、保存性及び帯電性の各性能がより向上する。
トナーを構成する結晶性樹脂及び非晶性樹脂の相溶性が最適な範囲にある場合、トナーを上記のように加熱溶融した後、急冷して得られた熱履歴付与トナーは、結晶性樹脂と非晶性樹脂の一部が相溶化し、その他の部分が相分離した状態となる。その結果、HT1ρ−Cの標準偏差が大きくなり、8.0以上となる。
また、該熱履歴付与トナーは、結晶性樹脂と非晶性樹脂の一部が相溶化し、その他の部分が相分離した状態となっているため、(HT1ρ−C2)の値と(HT1ρ−A2)の値が近しいものとなり、{(HT1ρ−C2)−(HT1ρ−A2)}が−2.0msec以上10.0msec以下の範囲を示す。
ここで、熱履歴付与トナーのHT1ρ−Cの標準偏差が8.0未満で有り、{(HT1ρ−C2)−(HT1ρ−A2)}が−2.0msec以上10.0msec以下の場合は、トナーの帯電性及び保存性が低下する傾向にある。
また、熱履歴付与トナーのHT1ρ−Cの標準偏差が8.0未満で有り、{(HT1ρ−C2)−(HT1ρ−A2)}が10.0msecより大きい場合、又は、熱履歴付与トナーのHT1ρ−Cの標準偏差が8.0以上で有り、{(HT1ρ−C2)−(HT1ρ−A2)}が10.0msecより大きい場合は、トナーの低温定着性が低下する傾向にある。
なお、熱履歴付与トナーのHT1ρ−Cの標準偏差は、8.0以上10.0以下であることがより好ましい。また、熱履歴付与トナーの{(HT1ρ−C2)−(HT1ρ−A2)}は、−2.0msec以上8.0msec以下であることがより好ましい。
本発明において、上記熱履歴付与トナーは、以下の手順で調製する。
温度をトナーのガラス転移温度より50℃高い温度に、回転数を200rpmに設定した二軸混練押し出し機(PCM−30:池貝鉄工所社製)を用い、トナーを1時間加熱溶
融した後に、20℃/分で25℃まで冷却して処理物を得る。
得られた処理物を、カッターミルを用いて粗粉砕した後、ターボミルを用いて微粉砕して、熱履歴付与トナーを得る。
<結晶性樹脂>
本発明において、結晶性樹脂としては、結晶性を有し、水素核緩和時間が上記条件を満たしうる樹脂であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
該結晶性樹脂は、示差走査熱量計(DSC)を用いた示差走査熱量測定において、融解吸熱ピーク(融点)を有する。
用いられる樹脂としては、例えば、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリエーテル樹脂、結晶性ビニル樹脂、及びこれらの変性結晶性樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、融点及び機械的強度の観点から結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂は特に限定されるものではないが、ジオール成分とジカルボン酸成分を縮重合して得られるものが挙げられる。
上記ジオール成分としては、具体的には以下のものが挙げられる。
エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−イコサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、及びシクロヘキサンジメタノール、並びに、これらの誘導体。誘導体としては、上記縮重合により同様の樹脂構造が得られるものであれば特に限定されない。例えば、上記ジオールをエステル化した誘導体が挙げられる。
これらのうち、エステル基濃度及び融点の観点から、炭素数4以上12以下の直鎖脂肪族ジオールが好ましい。
また、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、及びヘキサエチロールメラミンなどの3価以上のアルコールを用いてもよい。
シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸;1,1−シクロペンテンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレン二酢酸、p−フェニレンジプロピオニック酸、m−フェニレンジプロピオニック酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;並びに、これらの誘導体。誘導体としては、上記縮重合により同様の樹脂構造が得られるものであれば特に限定されない。例えば、上記ジカルボン酸成分をメチルエステル化、エチルエステル化、又は酸クロライド化した誘導体が挙げられる。
これらのうち、エステル基濃度及び融点の観点から、炭素数6以上14以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
また、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテト
ラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、及びピレンテトラカルボン酸などの3価以上の多価カルボン酸を用いることも可能である。
また、該樹脂が、結晶性樹脂中に総量で60質量%以上含有されていることが好ましく、90質量%以上含有されていることがより好ましい。
結晶性樹脂は、一般に、分子鎖が規則的な配列を示した結晶構造を形成しており、マクロ的に見ると、融点未満の温度領域では分子運動が制限された状態を保持していると考えられる。しかしながら、結晶性樹脂は、ミクロ的に見ると、全てが結晶構造部から構成されている訳でなく、分子鎖が規則的な配列を示し結晶構造を有する結晶構造部と、それ以外のアモルファス構造部とから形成されている。
通常トナーで使用される範囲の融点を有する結晶性ポリエステル樹脂の場合、結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は室温よりもはるかに低いため、ミクロ的に見ると、室温下であっても、アモルファス構造部が分子運動を起こしていると考えられる。このように樹脂の分子運動性が高い環境下では、極性基であるエステル結合などを介して電荷の授受が可能であり、その結果、樹脂の体積抵抗が低下すると考えられる。
従って、極性基であるエステル基濃度を低く抑えることで、体積抵抗を増大させることが可能になると推察されることから、エステル基濃度の低い結晶性ポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
該エステル基濃度の値は、主にはジオール成分及びジカルボン酸成分の種類によって決まり、それぞれ炭素数の大きいものを選定することで低い値に設計することができる。
但し、エステル基濃度を低く設計すると、非晶性樹脂との相溶性が低下する場合や、得られる結晶性ポリエステル樹脂の融点が高くなる場合がある。
結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、上記範囲を満たすことで、トナーにおける樹脂の強度と低温定着性をより向上させることができる。
なお、結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、結晶性樹脂の種々公知の製造条件によって容易に制御が可能である。
また、上記結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下のように測定する。
ゲルクロマトグラフ用のo−ジクロロベンゼンに、特級2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を濃度が0.10質量%となるように添加し、室温で溶解する。サンプルビンに結晶性樹脂と上記BHTを添加したo−ジクロロベンゼンとを入れ、150℃に設定したホットプレート上で加熱し、結晶性樹脂を溶解する。
結晶性樹脂が溶けたら、予め加熱しておいたフィルターユニットに入れ、本体に設置する。フィルターユニットを通過させたものをGPCサンプルとする。
尚、サンプル溶液は、濃度が約0.15質量%となるように調整する。
このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置: HLC−8121GPC/HT(東ソー社製)
検出器: 高温用RI
カラム: TSKgel GMHHR−H HT 2連(東ソー社製)
温度: 135.0℃
溶媒: ゲルクロマトグラフ用o−ジクロロベンゼン
(BHT 0.10質量%添加)
流速: 1.0ml/min
注入量: 0.4ml
結晶性樹脂の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
結晶性樹脂の融点は示査走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。
具体的には、0.01g〜0.02gの試料をアルミパンに精秤し、昇温速度10℃/minで、0℃から200℃まで昇温し、DSC曲線を得る。
得られたDSC曲線より、融解吸熱ピークのピーク温度を融点とする。
また、トナー中に存在する結晶性樹脂の融点も同様の手法で測定できる。その際に、トナー中に存在する離型剤による融点が観察される場合がある。離型剤の融点と結晶性樹脂の融点の判別は、トナーからヘキサン溶媒を使用したソックスレー抽出によって離型剤を抽出し、離型剤単体の示査走査熱量測定を上記方法で行い、得られた融点とトナーの融点を比較することにより行う。
結晶性樹脂の含有量を10質量%以上とすることで、より優れた低温定着性を発揮する。
また、結晶性樹脂の含有量を40質量%以下とすることで、抵抗値の低い結晶性樹脂のドメイン同士の接触をより防止することができる。これにより、抵抗値の高い非晶性樹脂のマトリックス中において電荷の逃げ道の形成が顕著に防止され、トナーはより優れた帯電性を得ることができる。
本発明において、非晶性樹脂としては、結晶性を有していない樹脂あれば、特に制限はなく、トナーに通常用いられている公知の重合体を目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、下記の重合体を用いることが可能である。
ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロロアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂などが挙
げられる。
以下、非晶性樹脂としてポリエステル樹脂を選択した場合の例を詳細するが、非晶性樹脂がポリエステル樹脂に限定されるわけではない。
非晶性ポリエステル樹脂は、特に限定されるものではないが、アルコール成分とカルボン酸成分を縮重合して得られるものが挙げられる。
上記アルコール成分としては、具体的には以下のものが挙げられる。
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、並びに、これらの誘導体。誘導体としては、上記縮重合により同様の樹脂構造が得られるものであれば特に限定されない。例えば、上記アルコール成分をエステル化した誘導体が挙げられる。
一方、カルボン酸成分としては、以下のものが挙げられる。
フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸のような芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸のようなアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6〜18のアルキル基若しくはアルケニル基で置換されたコハク酸又はその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸のような不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸類;並びに、これらの誘導体。誘導体としては、上記縮重合により同様の樹脂構造が得られるものであれば特に限定されない。例えば、上記カルボン酸成分をメチルエステル化、エチルエステル化、又は酸クロライド化した誘導体が挙げられる。
非晶性ポリエステル樹脂の好適な例として、下記構造式(1)で表されるビスフェノール及びその誘導体からなる群より選ばれた化合物を含有するアルコール成分と、2価以上のカルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた化合物(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸など)を含有するカルボン酸成分とを縮重合して得られる樹脂が挙げられる。
また、構造式(2)で表されるビスフェノール及びその誘導体からなる群より選ばれた化合物は、アルコール成分中に総量で50モル%以上含有することが好ましく、90モル%以上含有することがより好ましい。
さらに、該樹脂が、非晶性樹脂中に総量で25質量%以上含有されていることが好ましく、50質量%以上含有されていることがより好ましい。
ガラス転移温度が、30℃以上の場合は、保存性が向上する。
また、高温高湿度環境下で樹脂の分子運動に起因した抵抗低下が誘起されにくくなるため、帯電性も向上する。
一方、ガラス転移温度が、80℃以下の場合は低温定着性が向上する。
また、ガラス転移温度は、40℃以上であることが保存性の観点からより好ましい。一方、ガラス転移温度は、70℃以下であることが低温定着性の観点からより好ましい。
なお、上記ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(メトラートレド製:DSC822/EK90)を用いて測定することができる。
具体的には、0.01g〜0.02gの試料をアルミパンに精秤し、昇温速度10℃/minで、0℃から200℃まで昇温する。引き続き、200℃から降温速度10℃/minで−100℃まで冷却し、再度、−100℃から200℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、DSC曲線を得る。
得られたDSC曲線において、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
軟化温度(Tm)が上記の温度範囲内であれば、耐ブロッキング性と耐オフセット性との両立が良好に図られ、さらに、高温時において定着時のトナー溶融成分の紙への染込みが程度となり、良好な表面平滑性が得られる。
本発明において、非晶性樹脂の軟化温度(Tm)は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用いて測定することができる。
尚、CFT−500Dは、上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに
充填した測定試料を昇温させながら溶融してシリンダ底部の細管孔から押し出し、この際のピストンの降下量(mm)と温度(℃)から流動曲線をグラフ化できる装置である。
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化温度(Tm)とする。
尚、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。
まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量(流出終了点、Smaxとする)と、流出が開始した時点におけるピストンの降下量(最低点、Sminとする)との差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、ピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度を、1/2法における溶融温度とする。
測定試料は、1.2gの非晶性樹脂を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、標準手動式ニュートンプレス NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて10MPaで、60秒間圧縮成型し、直径8mmの円柱状としたものを用いる。
測定における具体的な操作は、装置に付属のマニュアルに従って行なう。
CFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:60℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):5.0kgf
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
また、上記非晶性樹脂の酸価は、3mgKOH/g〜35mgKOH/gであることが好ましく8mgKOH/g〜25mgKOH/gであることがより好ましい。
非晶性樹脂の酸価が上記の範囲内であれば、高湿環境下及び低湿環境下のいずれにおいても良好な帯電量が得られる。なお、酸価とは試料1g中に含有されている遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。測定方法は、JIS−K0070に準じて測定する。
結晶性樹脂と非晶性樹脂とは、同じ樹脂骨格を持つものを選択する。
例えば、結晶性樹脂を結晶性ポリエステル樹脂とし、非晶性樹脂を非晶性ポリエステル樹脂とする。また、結晶性樹脂を結晶性アクリル樹脂とし、非晶性樹脂を非晶性アクリル樹脂とする。
以下に、具体的な組合せを例示するが、これらに限定されない。
結晶性樹脂が、下記構造式Iで表されるジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するジカルボン酸成分と、下記構造式IIで表されるジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するジオール成分とを縮重合して得られた樹脂。
非晶性樹脂が、イソフタル酸、テレフタル酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するジカルボン酸成分と、下記構造式IIIで表される芳香族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物をジ
オール成分中に総量で50モル%以上含有するジオール成分とを縮重合して得られた樹脂。
本発明のトナーは、着色剤を含有してもよい。該着色剤としては、公知の有機顔料、染料、カーボンブラック、又は磁性粉体などが例示できる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド254が挙げられる。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー111、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー176、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー191、C.I.ピグメントイエロー194が挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性粉体、又は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。
これらの着色剤は、単独または混合して、さらには固溶体の状態で用いることができる。
該着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナーへの分散性の点から選択するとよい。
該着色剤の含有量は、トナーを構成する樹脂成分100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましい。
本発明のトナーは離型剤を含有してもよく、以下のものが挙げられる。
ポリエチレンのような低分子量ポリオレフィン類;加熱により融点(軟化点)を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミドのような脂肪酸アミド類;ステアリン酸ステアリルのようなエステルワックス類;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油のような植物系ワックス;ミツロウのような動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、エステルワックスのような鉱物・石油系ワックス;及びそれらの変性物が挙げられる。
離型剤の含有量は、トナーを構成する樹脂成分100質量部に対して、1〜25質量部であることが好ましい。
本発明のトナーにおいて、非晶性樹脂のマトリクスの中に結晶性樹脂が数nmオーダーの微小なドメインで均一に分散されており、かつ、結晶性樹脂と非晶性樹脂とが十分に相分離している。
該トナーを製造するためには、以下の二点を実行することが好ましい。
(1)トナー中、又はトナーを構成する樹脂組成物中で、結晶性樹脂と非晶性樹脂を一旦相溶化し、結晶性樹脂と非晶性樹脂とを均一に混和すること。
(2)従来の熱処理による結晶性樹脂の結晶成長とは異なる機構で、結晶性樹脂と非晶性樹脂の相分離構造を形成させること。
具体的には、トナーの製造工程において、以下の工程を含むことが好ましい。
結晶性樹脂及び非晶性樹脂を結晶性樹脂の融点以上に加熱する、又は結晶性樹脂及び非晶性樹脂を溶解し得る有機溶剤に結晶性樹脂及び非晶性樹脂を溶解することにより、トナ
ー中、又はトナーを構成する樹脂組成物中で結晶性樹脂と非晶性樹脂を相溶させて相溶化物を得る相溶化工程。
得られた相溶化物を、非晶性樹脂の良溶媒、かつ、結晶性樹脂の貧溶媒で処理する溶剤処理工程。
これら工程を経ることで、トナー中、又はトナーを構成する樹脂組成物中で、結晶性樹脂が非晶性樹脂のマトリクスの中に数nmオーダーの微小なドメインで均一に分散され、かつ、結晶性樹脂と非晶性樹脂とが十分に相分離される。
上記相溶化工程は、結晶性樹脂と非晶性樹脂とを相溶させて相溶化物を得る工程である。
具体例として、結晶性樹脂及び非晶性樹脂を結晶性樹脂の融点以上に加熱し、結晶性樹脂と非晶性樹脂とを相溶させて相溶化物を得る工程、又は、
結晶性樹脂及び非晶性樹脂を溶解し得る有機溶剤に、結晶性樹脂及び非晶性樹脂を溶解し、結晶性樹脂と非晶性樹脂とを相溶させて相溶化物を得る工程、が挙げられる。また、結晶性樹脂と非晶性樹脂とが相溶したところで、冷却することで、又は有機溶剤を除去することで相溶化物を得ればよい。
上記相溶化工程における加熱温度は、結晶性樹脂の融点以上であればよく、より好ましくは結晶性樹脂の融点より5℃以上高い温度であり、さらに好ましくは結晶性樹脂の融点より10℃以上高い温度である。
一方、上記相溶化工程における加熱温度の上限値は、コストに対する影響などを考慮して決定されるものであり、特に限定されないが、結晶性樹脂の融点より140℃程度高い温度であることが好ましい。
結晶性樹脂と非晶性樹脂を相溶させるために、得られたトナーは、下記(式3)を満たすことが好ましい。
0.00≦{Wt/(Wr×Z/100)}≦0.50 (式3)
Wt:該トナーの示差走査熱量計(DSC)を用いた測定において、2回目の昇温時の結晶性樹脂由来の融解熱量(J/g)
Wr:該結晶性樹脂の示差走査熱量計(DSC)を用いた測定において、2回目の昇温時の融解熱量(J/g)
Z:トナー中の結晶性樹脂の含有割合(質量%)
上記示差走査熱量計(DSC)の測定方法は以下の通りである。
0.01g〜0.02gのトナー、又は、結晶性樹脂をアルミパンに精秤し、昇温速度10℃/minで、0℃から200℃まで昇温し、1回目の昇温におけるDSC曲線を得る。
引き続き、200℃から降温速度10℃/minで−100℃まで冷却し、再度、−100℃から200℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、2回目の昇温におけるDSC曲線を得る。
該2回目の昇温時のDSC曲線において、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と融解吸熱ピークで囲まれた面積から融解熱量(J/g)を求める。
上記(式3)の分母である、結晶性樹脂単体で観測される結晶の融解熱量(Wr)とトナー中の結晶性樹脂の含有量(Z)の積は、トナー中に含有する結晶性樹脂が結晶性樹脂
単体と同様に結晶化した場合の融解熱量を意味する。
そのため、トナーに含まれる結晶性樹脂と非晶性樹脂との相溶の程度が高いほど、換言すれば、結晶性樹脂と非晶性樹脂の相溶性が高いほど、Wtが、(Wr×Z/100)よりも小さくなっていく。
上記{Wt/(Wr×Z/100)}が0.50を超えると、相溶化工程における結晶性樹脂と非晶性樹脂の相溶化の程度が低下する傾向にあり、得られるトナー中における結晶性樹脂の均一分散性が低下する傾向にある。また、結晶性樹脂と非晶性樹脂との相溶性が低いため、非晶性樹脂の可塑化が十分に誘起されず、低温定着性が低下する傾向にある。
また、{Wt/(Wr×Z/100)}は、0.00以上0.40以下であることがより好ましく、0.00以上0.30以下であることがさらに好ましい。この値が小さいほど、相溶化しやすく、トナー中おける結晶性樹脂の均一分散性を向上させることができる。
離型剤などの単体は、トナーからヘキサン溶媒を用いたソックスレー抽出によって離型剤などを抽出して得るか、又は、実際に添加した離型剤などを用いるとよい。
また、トナー中に含まれる結晶性樹脂単体の示査走査熱量測定は、トナーからヘキサン溶媒を使用したソックスレー抽出によって離型剤を抽出した後、非晶性樹脂と結晶性樹脂の溶剤に対する溶解度差を利用して結晶性樹脂を分離して測定すればよい。
上記溶剤処理工程は、相溶化物を有機溶剤で処理する工程であり、該有機溶剤が、上記非晶性樹脂の良溶媒、かつ、上記結晶性樹脂の貧溶媒である。
上記相溶化工程は、得られた相溶化物に対し、非晶性樹脂の良溶媒であり、かつ、結晶性樹脂の貧溶媒となる特定の有機溶剤を添加することにより、非晶性樹脂と相溶していた結晶性樹脂を析出処理し、結晶相の分離が誘起された溶剤処理物を得る工程である。
上記溶剤処理工程により、結晶性樹脂が非晶性樹脂と十分に相分離し、かつ、結晶性樹脂が非晶性樹脂のマトリクスの中に数nmオーダーの微小なドメインで均一に分散される。
この理由は明確ではないが、以下のように推察する。
該溶剤処理工程は、従来の熱処理による結晶性樹脂の結晶成長に伴う相分離の機構とは異なる。なぜなら、熱処理により結晶性樹脂の相分離と結晶成長とを同時に誘起するのではなく、非晶性樹脂と結晶性樹脂の有機溶剤に対する溶解性の違いを利用しているからである。
つまり、該溶剤処理工程は、非晶性樹脂の良溶媒、かつ、結晶性樹脂の貧溶媒の添加により、非晶性樹脂を可溶化した状態で、非晶性樹脂と相溶している結晶性樹脂のみを結晶化し析出させることで、結晶性樹脂の相分離を実現する。その結果、トナー中、又はトナーを構成する樹脂組成物中で、結晶性樹脂のドメインを大きく成長させることなく、十分な相分離が可能となる。
本発明において、溶剤処理工程で用いられる有機溶剤は、非晶性樹脂の良溶媒、かつ、結晶性樹脂の貧溶媒であれば特に限定されるものではない。
該有機溶剤が、非晶性樹脂及び結晶性樹脂に対し良溶媒である場合は、相溶化工程で非晶性樹脂に相溶した結晶性樹脂を析出させることが難しい。
一方、非晶性樹脂及び結晶性樹脂に対し貧溶媒である場合は、非晶性樹脂に溶媒が浸透
できないことから、非晶性樹脂に相溶した結晶性樹脂に対しても溶媒が浸透できず、結晶性樹脂の析出を誘起できない。
本発明における貧溶媒とは、上記溶剤処理工程の処理温度における樹脂の溶解度が10g/L未満となる溶剤である。一方、本発明における良溶媒とは、上記溶剤処理工程の処理温度における樹脂の溶解度が100g/L以上の溶剤である。
すなわち、本発明においては、該非晶性樹脂の良溶媒は、該溶剤処理工程の処理温度における該非晶性樹脂の溶解度が100g/L以上となる溶剤であり、該結晶性樹脂の貧溶媒は、該溶剤処理工程の処理温度における該結晶性樹脂の溶解度が10g/L未満となる溶剤である。
該有機溶剤は、非晶性樹脂に対する溶解度と結晶性樹脂に対する溶解度との差が大きいほどよい。上記のように結晶性樹脂と非晶性樹脂とが相溶化している状況において、結晶性樹脂を析出させることを鑑みると、該溶剤処理工程の処理温度における結晶性樹脂の溶解度が5g/L以下であることが好ましい。
有機溶剤1Lに対し、非晶性樹脂又は結晶性樹脂を、所定の質量(1〜200g)添加し、溶剤処理工程の処理温度(例えば、25℃)環境下にて12時間撹拌した後、その溶解性を濁度や沈殿物の有無から評価する。
また、有機溶剤が、相溶化物を含む水系媒体へ添加される場合を想定すると、水への溶解度が低い場合には、水系媒体中で、油相として相分離する場合がある。この油相中に相溶化物などが取り込まれた場合は、粗粉が発生しやすくなる。したがって、該有機溶剤は親水性溶剤であることが好ましい。本発明において、該親水性溶剤は、上記溶剤処理工程の処理温度における、水に対する溶解度が50g/L以上であることが好ましい。
相溶化物を有機溶剤で処理する際は、粗大粒子を発生させない観点から十分撹拌した状態で処理することが好ましい。また、該有機溶剤による処理は、界面活性剤などを含有した水系媒体に該相溶化物を分散した分散体に対して、界面活性剤などを含有した水系媒体に該有機溶剤を溶解又は懸濁した状態で添加することが好ましい。
本発明において、溶剤処理工程における有機溶剤の添加量は、結晶性樹脂及び非晶性樹脂の種類、並びに使用する有機溶剤の種類に依存するので一概に規定することはできない。
樹脂に対する添加量が多くなるほど、非晶性樹脂の可塑化が促進され、溶剤処理工程が速やかに進行しやすい。しかしながら、添加量が多すぎると、結晶性樹脂が有機溶剤に溶解しやすい状態となり、結晶性樹脂を析出しにくい傾向となる。また、上記油相の相分離が起こりやすい傾向にあり、その結果、粗粉が発生しやすくなる。
したがって、溶剤処理工程における有機溶剤の添加量は、相溶化物100質量部に対して、1質量部以上500質量部以下であることが好ましく、5質量部以上250質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上150質量部以下であることがさらに好ましい。水への溶解度が低い有機溶剤を用いる際、相溶化物に対する有機溶剤の添加量を多くするには、水分散体中の相溶化物の濃度をイオン交換水などで希釈すればよい。
処理温度が高温になるほど、非晶性樹脂の粘度低下を伴い、結晶性樹脂の結晶化が速やかに誘起されるが、有機溶剤の添加量と同様に結晶性樹脂が溶解しやすい状態となり、結晶性樹脂を析出しにくい傾向となる。
本発明において、有機溶剤で処理するときの温度は、結晶性樹脂の融点より20℃以上
低い温度が好ましく、結晶性樹脂の融点より30℃以上低い温度がより好ましく、結晶性樹脂の融点より40℃以上低い温度がさらに好ましい。
溶剤処理工程における、有機溶剤で処理する時間は、処理温度と有機溶剤の添加量に依存するので一概に規定することはできないが、一般的には30分以上10時間以下であることが好ましい。
また、目的とする結晶相が分離したところで、冷却及び減圧して有機溶剤を除去することで溶剤処理物を得ればよい。また、該有機溶剤の除去は、結晶性樹脂が溶解して結晶性樹脂と非晶性樹脂が再度相溶化することを防止する観点から、結晶性樹脂の融点より30℃以上低い温度が好ましく、結晶性樹脂の融点より40℃以上低い温度がより好ましく、結晶性樹脂の融点より50℃以上低い温度がさらに好ましい。より低温であることが好ましい。
また、上記溶剤処理工程は所定の相分離構造を形成させるために複数回行ってもよい。
溶剤処理工程を経ることで、結晶性樹脂が非晶性樹脂と十分に相分離し、かつ、結晶性樹脂が非晶性樹脂のマトリクスの中に数nmオーダーの微小なドメインで均一に分散される。この分散状態は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー断面の構造観察により確認することができる。
結晶性樹脂が非晶性樹脂のマトリクスの中に数nmオーダーの微小なドメインで均一に分散されたトナーの断面を図1に示す。針状に見える微小なドメインが結晶性樹脂である。
一方、比較として結晶性樹脂が結晶成長し、数nmオーダーより大きなドメインとなったトナーの断面を図2に示す。針状ではあるがドメインが数nmオーダーより大きくなっている。
以下、混練粉砕法及び乳化凝集法における、上記相溶化工程、又は溶剤処理工程の適用について具体的に例示するが、これらに限定されるものではない。
<混練粉砕法>
混練粉砕法では、先ず、トナーの構成材料である結晶性樹脂及び非晶性樹脂、並びに、必要に応じて添加される離型剤、着色剤及びその他の添加剤を十分混合し、加熱ロールやニーダーなどの公知の熱混練機を用いて溶融混練する(混練工程)。その後、所望のトナー粒子径になるまで機械的に粉砕し(粉砕工程)、所望の粒度分布になるよう分級を行い(分級工程)、トナーを製造する。
該混練工程において、結晶性樹脂の融点以上に加熱することで、トナーを構成する樹脂組成物中に存在する結晶性樹脂と非晶性樹脂とを相溶させて相溶化物を得る。その後、該相溶化物を粉砕及び分級して樹脂粒子を得る。次いで、該樹脂粒子を、界面活性剤を含有する水系媒体中に公知の方法で分散し、かつ、該水系媒体に有機溶剤を添加し、溶剤処理工程を実施するとよい。
<混練工程>
トナーの構成材料の溶融混練は、加熱ロールやニーダーなどの公知の熱混練機を用いて行うことができる。上記混練工程は、トナーの構成材料が混合機を用いて事前に十分混合されていることが好ましい。
混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられる。
熱混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Bus
s社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられる。
<粉砕工程>
粉砕工程とは、上記混練工程で得られた混練物を粉砕可能な硬度に達するまで冷却した後、衝突板式ジェットミル、流動層式ジェットミル、及び回転型機械ミル等の公知の粉砕機で、トナー粒子径になるまで、機械的に粉砕する工程である。粉砕効率の観点から、粉砕機としては、流動層式ジェットミルを用いることが望ましい。
粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)などが挙げられる。
<分級工程>
分級工程とは、上記粉砕工程で得られた微粉砕物を分級し、所望の粒度分布を有するトナーを得る工程である。
分級に用いられる分級機としては、風力分級機、慣性式分級機、及び篩式分級機等の公知の装置を使用することができる。具体的には、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラッシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボフレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。
上記工程を経て作製したトナーには、必要に応じて、シリカ、アルミナ、チタニア、及び炭酸カルシウム等の無機微粒子や、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、及びシリコーン樹脂等の樹脂微粒子を、乾燥状態で剪断力を印加して添加してもよい。これらの無機微粒子や樹脂微粒子は、流動性助剤やクリーニング助剤等の外添剤として機能する。
乳化凝集法とは、目的の粒子径に対して、十分に小さい、トナーの構成材料から成る微粒子の水系分散液を前もって準備し、その微粒子を水系媒体中でトナーの粒子径になるまで凝集し、加熱により樹脂を融着させてトナーを製造する方法である。
すなわち、乳化凝集法では、トナーの構成材料から成る微粒子分散液を作製する分散工程、トナーの構成材料から成る微粒子を凝集させて、トナーの粒子径になるまで粒子径を制御する凝集工程、得られた凝集粒子に含まれる樹脂を融着させる融合工程、及びその後の冷却工程、を経てトナーが製造される。
例えば、上記融合工程において、結晶性樹脂の融点以上に加熱することで、凝集粒子中に存在する結晶性樹脂と非晶性樹脂とを相溶させて相溶化物を得ることができる。
その後、該相溶化物を含む水系分散体に対し、特定の有機溶剤を添加し、溶剤処理工程を実施するとよい。
<分散工程>
非晶性樹脂及び結晶性樹脂の微粒子の水系分散液は、公知の方法により調製できるが、これらの手法に限定されるものではない。公知の方法としては、例えば、乳化重合法、自己乳化法、有機溶剤に溶解させた樹脂溶液に水系媒体を添加していくことで樹脂を乳化する転相乳化法、又は、有機溶剤を用いず、水系媒体中で高温処理することで強制的に樹脂を乳化する強制乳化法が挙げられる。
具体的には、非晶性樹脂又は結晶性樹脂をこれらが溶解する有機溶媒に溶解して、界面活性剤や塩基性化合物を加える。続いて、ホモジナイザーなどにより撹拌を行いながら、
水系媒体をゆっくり添加し樹脂微粒子を析出させる。その後、加熱又は減圧して溶剤を除去することにより、樹脂微粒子の水系分散液を作製する。該樹脂を溶解させるために使用する有機溶媒としては、該樹脂を溶解できるものであればどのようなものでも使用可能であるが、テトラヒドロフランなどの水と均一相を形成する有機溶媒を用いることが、粗粉の発生を抑える観点から好ましい。
上記乳化時に使用する界面活性剤としては、特に限定されるものでは無いが、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、カルボン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。該界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記乳化時に使用する塩基性化合物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの無機塩基;アンモニア、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミノエタノール、及びジエチルアミノエタノールなどの有機塩基が挙げられる。該塩基は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
非晶性樹脂の微粒子の体積分布基準の50%粒径(d50)は0.05〜1.0μmであることが好ましく、0.05〜0.4μmがより好ましい。
体積分布基準の50%粒径(d50)を上記範囲に調整することで、トナー粒子として適切な体積平均粒径である4.0〜7.0μmのトナー粒子を得ることが容易になる。
結晶性樹脂の微粒子の体積分布基準の50%粒径(d50)は、凝集工程において粗大粒子の発生を抑制する観点から、0.05〜0.5μmであることが好ましく、0.05〜0.3μmであることがより好ましい。
なお、体積分布基準の50%粒径(d50)の測定には、動的光散乱式粒度分布計(ナノトラックUPA−EX150:日機装製)を使用する。
着色剤、水系媒体及び分散剤を公知の撹拌機、乳化機、及び分散機のような混合機により混合することで調製できる。ここで用いる分散剤は、界面活性剤及び高分子分散剤といった公知のものを使用できる。
界面活性剤及び高分子分散剤のいずれの分散剤も後述する洗浄工程において除去できるが、洗浄効率の観点から、界面活性剤が好ましい。界面活性剤の中でも、アニオン系界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤がより好ましい。
該界面活性剤としては、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、及びせっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、及び4級アンモニウム塩型のようなカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、及び多価アルコール系のようなノニオン界面活性剤が挙げられる。これらの中でもノニオン界面活性剤またはアニオン界面活性剤が好ましい。また、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤とを併用してもよい。上記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、分散剤の量は、着色剤100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましく、分散安定性と洗浄効率を両立する観点から、2〜10質量部であることがより好ましい。
着色剤微粒子の水系分散液における含有量は特に制限はないが、着色剤微粒子の水系分散液の全質量に対して1〜30質量%であることが好ましい。
また、水系分散液中における着色剤微粒子の分散粒径は、最終的に得られるトナー中での着色剤の分散性の観点から、体積分布基準の50%粒径(d50)が0.5μm以下であることが好ましい。また、同様の理由で、体積分布基準の90%粒径(d90)が2μm以下であることが好ましい。なお、水系媒体中に分散した着色剤微粒子の分散粒径は、動的光散乱式粒度分布計(ナノトラックUPA−EX150:日機装製)で測定する。
着色剤を水系媒体中に分散させる際に用いる公知の撹拌機、乳化機、及び分散機のような混合機としては、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、圧力式ホモジナイザー、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカーが挙げられる。これらを単独もしくは組み合わせて用いてもよい。
離型剤微粒子の水系分散液は、界面活性剤を含有した水系媒体に離型剤を加え、離型剤の融点以上に加熱するとともに、強い剪断付与能力を有するホモジナイザー(例えば、エム・テクニック社製の「クレアミックスWモーション」)や圧力吐出型分散機(例えば、ゴーリン社製の「ゴーリンホモジナイザー」)で粒子状に分散させた後、融点未満まで冷却することで作製することができる。
水系分散液中における離型剤微粒子の分散粒径は、体積分布基準の50%粒径(d50)が0.03〜1.0μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。また、1μm以上の粗大粒子が存在しないことが好ましい。
離型剤微粒子の分散粒径が上記範囲内であることで、定着時の離型剤の溶出が良好となり、ホットオフセット温度を上昇させることができ、かつ、感光体へのフィルミングの発生を抑制することが可能となる。
なお、水系媒体中に分散した離型剤微粒子の分散粒径は、動的光散乱式粒度分布計(ナノトラックUPA−EX150:日機装製)で測定する。
凝集工程では、上記非晶性樹脂微粒子の水系分散液、及び結晶性樹脂微粒子の水系分散液、並びに、必要に応じて離型剤微粒子の水系分散液、及び着色剤微粒子の水系分散液を混合した混合液を調製する。ついで、調製された混合液中に含まれる微粒子を凝集し、目的とする粒径の凝集体を形成させる。このとき、凝集剤を添加混合し、必要に応じて加熱及び/又は機械的動力を適宜加えることにより、樹脂微粒子、着色剤微粒子、及び離型剤微粒子が凝集した凝集粒子を形成させる。
該凝集剤としては、2価以上の金属イオンを含有する凝集剤を用いることが好ましい。2価以上の金属イオンを含有する凝集剤は、凝集力が高く、少量の添加により、樹脂微粒子の酸性極性基、並びに、樹脂微粒子の水系分散液、着色剤微粒子の水系分散液及び離型剤微粒子の水系分散液中に含まれるイオン性界面活性剤をイオン的に中和することができる。その結果、塩析及びイオン架橋の効果により、樹脂微粒子、着色剤微粒子及び離型剤微粒子を凝集させる。
2価以上の金属イオンを含有する凝集剤としては、2価以上の金属塩又は金属塩の重合体が挙げられる。具体的には、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、及び塩化亜鉛のような2価の無機金属塩、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硫酸アルミニウム、及び塩化アルミニウムのような3価の金属塩、及びポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、及び多硫化カルシウムのような無機金属塩重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
該凝集剤は、乾燥粉末及び水系媒体に溶解させた水溶液のいずれの形態で添加してもよいが、均一な凝集を起こさせるためには、水溶液の形態で添加するのが好ましい。
また、該凝集剤の添加及び混合は、混合液中に含まれる樹脂のガラス転移温度以下の温度で行うことが好ましい。この温度条件下で混合を行うことで、均一に凝集が進行する。混合液への凝集剤の混合は、ホモジナイザー、及びミキサーのような公知の混合装置を用いて行うことができる。
凝集工程において形成される凝集粒子の平均粒径としては、特に制限はないが、通常、最終的に得ようとするトナーの平均粒径と同じ程度になるように制御することが好ましい。なお、凝集粒子の粒径制御は、温度、固形分濃度、凝集剤の濃度及び撹拌の条件を適宜
調整することにより容易に行うことができる。
また、上記凝集工程で得られた凝集粒子の分散液に、さらにシェル相を形成するための樹脂微粒子を添加することによって、凝集粒子の表面に樹脂微粒子を付着させるシェル付着工程、及び、樹脂微粒子を表面に付着させた凝集粒子が後述する融合工程を経ることによって、コアシェル構造を有するトナー粒子を製造することが可能である。ここで添加するシェル相を形成するための樹脂微粒子は凝集粒子に含まれる樹脂と同一の構造を有する樹脂微粒子でも良いし、異なる構造を有する樹脂微粒子でも良い。
融合工程においては、凝集工程で得られた凝集粒子を含む分散液に、凝集工程と同様の撹拌下で、凝集停止剤が添加される。凝集停止剤としては、樹脂微粒子の酸性極性基を解離側へ平衡を移動させ、凝集粒子を安定化する塩基性化合物;樹脂微粒子の酸性極性基と凝集剤である金属イオンとのイオン架橋を部分的に解離し、金属イオンと配位結合を形成させることで、凝集粒子を安定化するキレート剤などが挙げられる。これらのうち、凝集停止の効果がより大きいキレート剤が好ましい。
凝集停止剤の作用により、分散液中での凝集粒子の分散状態が安定となった後、非晶性樹脂のガラス転移温度以上に加熱し、凝集粒子を融合する。
上記相溶化工程を融合工程と同時に行う場合は、結晶性樹脂の融点以上に加熱して、凝集粒子を融合する。
また、相溶化工程及び溶剤処理工程を実施した後に、該融合工程を実施する場合は、結晶性樹脂と非晶性樹脂とが再び相溶化しないように、結晶性樹脂の融点未満で行うとよい。
上記キレート剤としては、公知の水溶性キレート剤であれば特に限定されない。具体的には、酒石酸、クエン酸、及びグルコン酸のようなオキシカルボン酸、並びに、これらのナトリウム塩;イミノジ酢酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、及びエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、並びに、これらのナトリウム塩;が挙げられる。
該キレート剤は、凝集粒子の分散液中に存在する凝集剤の金属イオンに配位することで、この分散液中の環境を、静電的に不安定で凝集しやすい状態から、静電的に安定で更なる凝集が生じにくい状態へと変化させることができる。これにより、分散液中の凝集粒子の更なる凝集を抑え、凝集粒子を安定化させることができる。
該キレート化剤は、添加量が少量でも効果があり、粒度分布もシャープなトナー粒子が得られることから、3価以上のカルボン酸を有する有機金属塩であることが好ましい。
また、キレート剤の添加量は、凝集状態からの安定化と洗浄効率を両立する観点から、樹脂粒子100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、2.5〜15質量部であることがより好ましい。
上記融合工程で得られた粒子を含む水系分散体に対し、上記特定の有機溶剤を添加し、溶剤処理工程を実施するとよい。
次いで、溶剤処理された粒子を洗浄、ろ過、乾燥等することにより、トナーを得ることができる。その後、必要に応じて、シリカ、アルミナ、チタニア、及び炭酸カルシウム等の無機微粒子や、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、及びシリコーン樹脂等の樹脂微粒子を、乾燥状態で剪断力を印加して添加してもよい。これらの無機微粒子や樹脂微粒子は、流動性助剤やクリーニング助剤等の外添剤として機能する。
テトラヒドロフラン(和光純薬製) 200g
ポリエステル樹脂A 120g
[組成(モル%)〔ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:イソフタル酸:テレフタル酸=100:50:50〕、数平均分子量(Mn)=4,600、重量平均分子量(Mw)=16,500、ピーク分子量(Mp)=10,400、Mw/Mn=3.6、軟化温度(Tm)=122℃、ガラス転移温度(Tg)=70℃、酸価=13mgKOH/g]
アニオン界面活性剤(第一工業製薬製:ネオゲンRK) 0.6g
上記を混合後、12時間攪拌し、樹脂を溶解した。
次いで、N,N−ジメチルアミノエタノール2.7gを加え、超高速攪拌装置T.K.ロボミックス((株)プライミクス製)を用いて4000rpmで攪拌した。
さらに、イオン交換水360gを1g/minの速度で添加し、樹脂微粒子を析出させた。その後、エバポレーターを用いて、テトラヒドロフランを除去し、非晶性樹脂微粒子1及びその分散液を得た。
該非晶性樹脂微粒子1の体積分布基準の50%粒径(d50)を、動的光散乱式粒度分布計(ナノトラック:日機装製)を用いて測定したところ、0.13μmであった。
ポリエステル樹脂Aを、ポリエステル樹脂B[組成(モル%)〔ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:テレフタル酸:ドデシルコハク酸:トリメリット酸=33:17:24:20:6〕、Mn=4,600、Mw=62,000、Mp=8,500、Mw/Mn=12.9、Tm=120℃、Tg=56℃、酸価=11mgKOH/g]に変更した以外は非晶性樹脂微粒子1の製造と同様にして、非晶性樹脂微粒子2及びその分散液を得た。得られた非晶性樹脂微粒子2の体積分布基準の50%粒径(d50)は、0.15μmであった。
ポリエステル樹脂Aを、ポリエステル樹脂C[組成(モル%)〔ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:テレフタル酸=50:50〕、Mn=3,900、Mw=12,300、Mw/Mn=3.1、Tm=109℃、Tg=58℃、酸価=12mgKOH/g]に変更した以外は非晶性樹脂微粒子1の製造と同様にして、非晶性樹脂微粒子3及びその分散液を得た。得られた非晶性樹脂微粒子3の体積分布基準の50%粒径(d50)は、0.12μmであった。
テトラヒドロフラン(和光純薬製) 200g
結晶性ポリエステル樹脂A 120g
[組成(モル%)〔1,9−ノナンジオール:セバシン酸=100:100〕、数平均分子量(Mn)=5,500、重量平均分子量(Mw)=15,500、ピーク分子量(Mp)=11,400、Mw/Mn=2.8、融点=78℃、酸価=13mgKOH/g]アニオン界面活性剤(第一工業製薬製:ネオゲンRK) 0.6g
上記を混合後、50℃に加熱して3時間攪拌し、樹脂を溶解した。
次いで、N,N−ジメチルアミノエタノール2.7gを加え、超高速攪拌装置T.K.ロボミックス((株)プライミクス製)を用いて4000rpmで攪拌した。
さらに、イオン交換水360gを1g/minの速度で添加し、樹脂微粒子を析出させた。その後、エバポレーターを用いて、テトラヒドロフランを除去し、結晶性樹脂微粒子1及びその分散液を得た。
該結晶性樹脂微粒子1の体積分布基準の50%粒径(d50)を、動的光散乱式粒度分布計(ナノトラック:日機装製)を用いて測定したところ、0.30μmであった。
その結果、酢酸エチルは、ポリエステル樹脂A〜C(非晶性樹脂)の良溶媒であり、かつ、結晶性ポリエステル樹脂A(結晶性樹脂)の貧溶剤であることを確認した。
着色剤 10.0質量部
(シアン顔料 大日精化製:Pigment Blue 15:3)
アニオン界面活性剤(第一工業製薬製:ネオゲンRK) 1.5質量部
イオン交換水 88.5質量部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業製)を用いて約1時間分散して、着色剤を分散させてなる着色剤微粒子の分散液を調製した。
得られた着色剤微粒子の体積分布基準の50%粒径(d50)は動的光散乱式粒度分布計(ナノトラック:日機装製)を用いて測定し、0.20μmであった。
離型剤(HNP−51、融点78℃、日本精蝋製) 20.0質量部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬製:ネオゲンRK) 1.0質量部
イオン交換水 79.0質量部
以上を攪拌装置付きの混合容器に投入した後、90℃に加熱し、クレアミックスWモーション(エム・テクニック製)へ循環しながらローター外径が3cm、クリアランスが0.3mmの剪断攪拌部位にて、ローター回転数19000rpm、スクリーン回転数19000rpmの条件にて攪拌し、60分間分散処理した。
その後、ローター回転数1000rpm、スクリーン回転数0rpm、冷却速度10℃/minの冷却処理条件にて40℃まで冷却することで、離型剤微粒子の分散液を得た。該離型剤微粒子の体積分布基準の50%粒径(d50)は動的光散乱式粒度分布計(ナノトラック:日機装製)を用いて測定し、0.15μmであった。
(トナー1の製造)
非晶性樹脂微粒子1の分散液 320質量部
結晶性樹脂微粒子1の分散液 80質量部
着色剤微粒子の分散液 50質量部
離型剤微粒子の分散液 50質量部
イオン交換水 400質量部
上記の各材料を丸型ステンレス製フラスコに投入、混合した後、ここに98質量部のイオン交換水に対し、硫酸マグネシウム2質量部を溶解させた水溶液を添加し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて5000rpmで10分間分散した。
その後、加熱用ウォーターバス中で撹拌翼を用いて、混合液が撹拌されるような回転数を適宜調節しながら58℃まで加熱した。58℃で1時間保持し、体積平均粒径が約6.0μmである凝集粒子を得た。
該凝集粒子を含む分散液に、380質量部のイオン交換水に対し、クエン酸三ナトリウム20質量部を溶解させた水溶液を追加した後、85℃まで加熱した。
85℃で2時間保持し、体積平均粒径が約5.8μm、平均円形度が0.968のトナー粒子が得られた。
なお、粒子の体積平均粒径は、コールターマルチサイザーIII(コールター社製)を用い、該装置の操作マニュアルに従い測定した。また、平均円形度は、フロー式粒子像測定装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)を用い、該装置の操作マニュアルに従って測定を行い、算出した。
得られたトナー粒子の水系分散液を、撹拌を維持したまま25℃まで冷却し、15質量部の酢酸エチルを添加し、3時間密閉した状態で保持した。
その後、25℃を保ったままエバポレーターを用いて減圧し、酢酸エチルを除去して、ろ過・固液分離した後、ろ物をイオン交換水で十分に洗浄し、真空乾燥機を用いて乾燥することにより、体積平均粒径が5.4μmのトナー1を得た。トナー1の処方及び特性を、表1及び表2に示す。
(トナー2の製造)
非晶性樹脂微粒子2の分散液 348質量部
結晶性樹脂微粒子1の分散液 52質量部
着色剤微粒子の分散液 50質量部
離型剤微粒子の分散液 50質量部
イオン交換水 400質量部
上記の各材料を丸型ステンレス製フラスコに投入、混合した後、ここに98質量部のイオン交換水に対し、硫酸マグネシウム2質量部を溶解させた水溶液を添加し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて5000rpmで10分間分散した。
その後、加熱用ウォーターバス中で撹拌翼を用いて、混合液が撹拌されるような回転数を適宜調節しながら50℃まで加熱した。50℃で1時間保持し、体積平均粒径が約5.8μmである凝集粒子を得た。
該凝集粒子を含む分散液に、380質量部のイオン交換水に対し、クエン酸三ナトリウム20質量部を溶解させた水溶液を追加した後、80℃まで加熱した。
80℃で2時間保持し、体積平均粒径が約5.6μm、平均円形度が0.965のトナー粒子が得られた。
得られたトナー粒子の水系分散液を、撹拌を維持したまま25℃まで冷却し、15質量部の酢酸エチルを添加し、3時間密閉した状態で保持した。
その後、25℃を保ったままエバポレーターを用いて減圧し、酢酸エチルを除去して、ろ過・固液分離した後、ろ物をイオン交換水で十分に洗浄し、真空乾燥機を用いて乾燥することにより、体積平均粒径が5.3μmのトナー2を得た。トナー2の処方及び特性を、表1及び表2に示す。
(トナー3の製造)
ポリエステル樹脂A 80質量部
結晶性ポリエステル樹脂A 20質量部
着色剤 5質量部
(シアン顔料 大日精化製:Pigment Blue 15:3)
離型剤(HNP−51、融点78℃、日本精蝋製) 5質量部
上記原材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、130℃、200rpmに設定した二軸混練押し出し機(PCM−30:池貝鉄工所社製)によって、1時間混練処理を行った。
得られた混練物を冷却しカッターミルで粗粉砕した後、得られた粗粉砕物を、ターボミルT−250(ターボ工業社製)を用いて微粉砕し、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、体積平均粒径が5.8μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部を、890質量部のイオン交換水に対し、アニオン界面活性剤(第一工業製薬製:ネオゲンRK)10質量部を溶解させた水溶液に加えて、超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を用いて、1時間超音波を照射し、トナー粒子の水系分散体を得た。
得られたトナー粒子の水系分散体を25℃に調節し、撹拌翼で水系分散体を撹拌しながら、酢酸エチル15質量部を添加し、3時間密閉した状態で保持した。
その後、エバポレーターを用いて、酢酸エチルを除去し、ろ過・固液分離した後、ろ物をイオン交換水で十分に洗浄し、真空乾燥機を用いて乾燥することにより、体積平均粒径が5.8μmのトナー3を得た。トナー3の処方及び特性を、表1及び表2に示す。
(トナー4の製造)
着色剤としてシアン顔料(大日精化製:Pigment Blue 15:3)20質量部、溶媒としてトルエン180質量部、ガラスビーズ(直径1mm)130質量部を混合し、アトライター[日本コークス工業(株)製]で3時間分散させ、メッシュで濾過して着色剤分散液を得た。
次に、水浴にセットしたビーカーにリン酸三ナトリウム12水和物(和光純薬製)を11.7質量部とイオン交換水1200質量部を加えて、リン酸三ナトリウム12水和物を溶解した。続いて、水浴の温度を60℃まで上げた。60℃に到達後、5.15質量部の塩化カルシウム(キシダ化学製)をイオン交換水100質量部に溶解した水溶液を添加した。添加後30分間撹拌を行い、リン酸三カルシウムを含有する水系媒体を得た。
ポリエステル樹脂A 80質量部
結晶性ポリエステル樹脂A 20質量部
着色剤分散液 50質量部
離型剤(HNP−51、融点78℃、日本精蝋製) 10質量部
トルエン 350質量部
上記材料を混合し、撹拌しながら80℃まで昇温して、各材料を溶解及び分散させて、樹脂組成物を作製した。
一方、上記リン酸三カルシウムを含有する水系媒体600質量部を、クレアミックス(エム・テクニック社製)で撹拌を行いながら、80℃に加熱した。該リン酸三カルシウムを含有する水系媒体に樹脂組成物を添加し、10000rpmで10分間撹拌を行うことで分散液を得た。得られた分散液を、撹拌翼を用いて攪拌を行いながら80℃で5時間継続することでトルエンを除去した。その後、25℃まで10分間で冷却しトナー粒子の水系分散体を得た。
得られたトナー粒子の水系分散液を、撹拌を維持したまま25℃を維持し、15質量部の酢酸エチルを添加し、3時間密閉した状態で保持した。
その後、25℃を保ったままエバポレーターを用いて減圧し、酢酸エチルを除去した後、撹拌をしながら、希塩酸を添加した。pH1.5で2時間撹拌し、リン酸三カルシウムを溶解した後に、濾過器で固液分離し、トナー粒子を得た。
これを水中に投入して撹拌し、再び分散液とした後に、濾過器で固液分離した。この操作をリン酸三カルシウムが十分に除去されるまで繰り返し行い、得られたトナー粒子を、乾燥機で十分に乾燥し、体積平均粒径が6.2μmのトナー4を得た。トナー4の処方及び特性を、表1及び表2に示す。
(トナー5の製造)
非晶性樹脂微粒子1の分散液 320質量部
結晶性樹脂微粒子1の分散液 80質量部
着色剤微粒子の分散液 50質量部
離型剤微粒子の分散液 50質量部
イオン交換水 400質量部
上記の各材料を丸型ステンレス製フラスコに投入、混合した後、ここに98質量部のイオン交換水に対し、硫酸マグネシウム2質量部を溶解させた水溶液を添加し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて5000rpmで10分間分散
した。
その後、加熱用ウォーターバス中で撹拌翼を用いて、混合液が撹拌されるような回転数を適宜調節しながら58℃まで加熱した。58℃で1時間保持し、体積平均粒径が約6.0μmである凝集粒子を得た。
該凝集粒子を含む分散液に、380質量部のイオン交換水に対し、クエン酸三ナトリウム20質量部を溶解させた水溶液を追加した後、85℃まで加熱した。
85℃で3時間密閉した状態で保持し、体積平均粒径が約5.8μm、平均円形度が0.975であり、十分に融合したトナー粒子を得た。
続いて、ウォーターバス内に水を入れ、25℃までトナー粒子の水系分散液を冷却し、ろ過・固液分離した後、ろ物をイオン交換水で十分に洗浄し、真空乾燥機を用いて乾燥することにより、体積平均粒径が5.4μmのトナー5を得た。トナー5の処方及び特性を、表1及び表2に示す。
(トナー6の製造)
非晶性樹脂微粒子1の分散液 320質量部
結晶性樹脂微粒子1の分散液 80質量部
着色剤微粒子の分散液 50質量部
離型剤微粒子の分散液 50質量部
イオン交換水 400質量部
上記の各材料を丸型ステンレス製フラスコに投入、混合した後、ここに98質量部のイオン交換水に対し、硫酸マグネシウム2質量部を溶解させた水溶液を添加し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて5000rpmで10分間分散した。
その後、加熱用ウォーターバス中で撹拌翼を用いて、混合液が撹拌されるような回転数を適宜調節しながら58℃まで加熱した。58℃で1時間保持し、体積平均粒径が約6.0μmである凝集粒子を得た。
該凝集粒子を含む分散液に、380質量部のイオン交換水に対し、クエン酸三ナトリウム20質量部を溶解させた水溶液を追加した後、85℃まで加熱した。
85℃で3時間密閉した状態で保持し、体積平均粒径が約5.8μm、平均円形度が0.975で、十分に融合したトナー粒子を得た。
続いて、ウォーターバス内に水を入れ、25℃までトナー粒子の水系分散液を冷却した後、加熱によるアニーリング処理として、再び50℃まで加熱して12時間保持した。
その後、トナー粒子の水系分散液を25℃まで冷却し、ろ過・固液分離した後、ろ物をイオン交換水で十分に洗浄し、真空乾燥機を用いて乾燥することにより、体積平均粒径が5.4μmのトナー6を得た。トナー6の処方及び特性を、表1及び表2に示す。
(トナー7の製造)
非晶性樹脂微粒子3の分散液 320質量部
結晶性樹脂微粒子1の分散液 80質量部
着色剤微粒子の分散液 50質量部
離型剤微粒子の分散液 50質量部
イオン交換水 400質量部
上記の各材料を丸型ステンレス製フラスコに投入、混合した後、ここに98質量部のイオン交換水に対し、硫酸マグネシウム2質量部を溶解させた水溶液を添加し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて5000rpmで10分間分散した。
その後、加熱用ウォーターバス中で撹拌翼を用いて、混合液が撹拌されるような回転数を適宜調節しながらで53℃まで加熱した。53℃で1時間保持し、体積平均粒径が約5
.8μmである凝集粒子を得た。
該凝集粒子を含む分散液に、380質量部のイオン交換水に対し、クエン酸三ナトリウム20質量部を溶解させた水溶液を追加した後、80℃まで加熱した。
80℃で3時間密閉した状態で保持し、体積平均粒径が約5.5μm、平均円形度が0.981で、十分に融合したトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子の水系分散液を、撹拌を維持したまま25℃まで冷却し、15質量部の酢酸エチルを添加し、3時間密閉した状態で保持した。
その後、25℃を保ったままエバポレーターを用いて減圧し、酢酸エチルを除去して、ろ過・固液分離した後、ろ物をイオン交換水で十分に洗浄し、真空乾燥機を用いて乾燥することにより、体積平均粒径が5.2μmのトナー7を得た。トナー7の処方及び特性を、表1及び表2に示す。
(トナー8の製造)
ポリエステル樹脂B 80質量部
結晶性ポリエステル樹脂A 20質量部
着色剤 5質量部
(シアン顔料 大日精化製:Pigment Blue 15:3)
離型剤(HNP−51、融点78℃、日本精蝋製) 5質量部
上記原材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、62℃、200rpmに設定した二軸混練押し出し機(PCM−30:池貝鉄工所社製)によって、5時間混練処理を行った。
得られた混練物を冷却しカッターミルで粗粉砕した後、得られた粗粉砕物を、ターボミルT−250(ターボ工業社製)を用いて微粉砕し、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、体積平均粒径が5.8μmのトナー8を得た。トナー8の処方及び特性を、表1及び表2に示す。
(トナー9の製造)
ポリエステル樹脂A 80質量部
結晶性ポリエステル樹脂A 20質量部
着色剤 5質量部
(シアン顔料 大日精化製:Pigment Blue 15:3)
離型剤(HNP−51、融点78℃、日本精蝋製) 5質量部
上記原材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、130℃、200rpmに設定した二軸混練押し出し機(PCM−30:池貝鉄工所社製)によって、1時間混練処理を行った。
得られた混練物を冷却しカッターミルで粗粉砕した後、得られた粗粉砕物を、ターボミルT−250(ターボ工業社製)を用いて微粉砕し、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、体積平均粒径が5.8μmのトナー9を得た。トナー9の処方及び特性を、表1及び表2に示す。
(トナー10の製造)
実施例4で得られた着色剤分散液、及びリン酸三カルシウムを含有する水系媒体を用いた。
ポリエステル樹脂A 80質量部
結晶性ポリエステル樹脂A 20質量部
着色剤分散液 50質量部
離型剤(HNP−51、融点78℃、日本精蝋製) 10質量部
トルエン 350質量部
上記材料を混合し、撹拌しながら80℃まで昇温して、各材料を溶解及び分散させて、樹脂組成物を作製した。
一方、上記リン酸三カルシウムを含有する水系媒体600質量部を、クレアミックス(エム・テクニック社製)で撹拌を行いながら、80℃に加熱した。該リン酸三カルシウムを含有する水系媒体に樹脂組成物を添加し、10000rpmで10分間撹拌を行うことで分散液を得た。得られた分散液を、撹拌翼を用いて攪拌を行いながら80℃で5時間継続することでトルエンを除去した。その後、25℃まで10分間で冷却しトナー粒子の水系分散体を得た。
得られたトナー粒子の水系分散液を、撹拌をしながら、希塩酸を添加し、pH1.5で2時間撹拌し、リン酸三カルシウムを溶解した後に、濾過器で固液分離し、トナー粒子を得た。
これを水中に投入して撹拌し、再び分散液とした後に、濾過器で固液分離した。この操作をリン酸三カルシウムが十分に除去されるまで繰り返し行い、得られたトナー粒子を、乾燥機で十分に乾燥し、体積平均粒径が6.2μmのトナー10を得た。トナー10の処方及び特性を、表1及び表2に示す。
上記トナー1〜10を用いて、下記の評価を実施した。結果は表1に示す。
評価には、100質量部のトナーに、BET法で測定した比表面積が200m2/gであり、シリコーンオイルにより疎水化処理されたシリカ微粒子1.8質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山製)で乾式混合して、外添剤が添加されたトナーを用いた。
<保存性の評価>
該トナーを恒温恒湿槽中で3日間静置し、目開き75μmの篩を用いて、振とう幅1mmで300秒間篩がけを行った際に篩の上に残存するトナーの量を下記基準にて評価した。
(評価基準)
A:温度55℃、湿度10%RHの恒温恒湿槽中で3日間静置後、篩処理した際、篩上に残存したトナー量が10%未満
B:温度55℃、湿度10%RHの恒温恒湿槽中で3日間静置後、篩処理した際、篩上に残存したトナー量が10%以上だが、温度50℃、湿度10%RHの恒温恒湿槽中で3日間静置後、篩処理した際、篩上に残存したトナー量は10%未満
C:温度50℃、湿度10%RHの恒温恒湿槽中で3日間静置後、篩処理した際、篩上に残存したトナー量は10%以上
上記外添剤が添加されたトナーと、シリコーン樹脂で表面コートしたフェライトキャリア(平均粒径42μm)とを、トナー濃度が8質量%になるように混合して、二成分現像剤を調製した。該二成分現像剤を市販のフルカラーデジタル複写機(CLC1100、キヤノン社製)に充填し、受像紙(64g/m2)上に未定着のトナー画像(0.6mg/cm2)を形成した。市販のフルカラーデジタル複写機(imageRUNNER ADVANCE C5051、キヤノン製)から取り外した定着ユニットを定着温度が調節できるように改造し、これを用いて未定着のトナー画像の定着試験を行った。常温常湿下、プロセススピードを246mm/秒に設定し、未定着のトナー画像を定着させたときの様子を目視にて評価した。
(評価基準)
A:120℃以下の温度領域で定着が可能
B:120℃より高く、125℃以下の温度領域で定着が可能
C:125℃より高く、130℃以下の温度領域で定着が可能
D:130℃より高く、140℃以下の温度領域で定着が可能
E:140℃より高い温度領域にしか定着可能領域がない
低温定着性の評価に用いた二成分現像剤を使用し、トナーの摩擦帯電量を測定し、下記基準でトナーの帯電性を評価した。
トナーの摩擦帯電量は、ホソカワミクロン(株)のEspartアナライザーにて測定した。Espartアナライザーは、電場と音響場を同時に形成させた検知部(測定部)に試料粒子を導入し、レーザードップラー法で粒子の移動速度を測定して、粒径と帯電量を測定する装置である。装置の測定部に入った試料粒子は、音響場と電場の影響を受け、水平方向に偏倚しながら落下し、この水平方向の速度のビート周波数がカウントされる。カウント値は、コンピュータに割り込みで入力され、リアルタイムでコンピュータ画面に粒子径分布又は単位粒径当たりの帯電量分布が示される。そして、所定の個数分の帯電量が測定されると画面は停止し、その後、帯電量と粒子径の3次元分布や粒径別の帯電量分布、平均帯電量(クーロン/重量)などが画面に表示される。Espartアナライザーの測定部に試料粒子として上記二成分現像剤を導入することで、トナーの摩擦帯電量を測定できる。
上記手法にて初期トナーの摩擦帯電量を測定後、当該二成分現像剤を恒温恒湿槽中(温度30℃、湿度80%RH)で一週間静置し、再度摩擦帯電量を測定した。
測定結果を下記式に代入して摩擦帯電量の保持率を算出し、下記基準で評価した。
式:トナーの摩擦帯電量保持率(%)=[1週間後のトナーの摩擦帯電量]/[初期トナーの摩擦帯電量]×100
(評価基準)
A:トナーの摩擦帯電量保持率が80%以上
B:トナーの摩擦帯電量保持率が60%以上80%未満
C:トナーの摩擦帯電量保持率が60%未満
Claims (9)
- 結晶性樹脂及び非晶性樹脂を含有するトナーであって、
前記トナーの固体13C−NMRで測定された水素核緩和時間(HT1ρ−C)の標準偏差が0.0以上5.0以下であり、
前記水素核緩和時間(HT1ρ−C)のうち最も緩和時間が長い13Cピークの水素核緩和時間(HT1ρ−C1)と、水素核緩和時間(HT1ρ−A)のうち最も緩和時間の短い13Cピークの水素核緩和時間(HT1ρ−A1)が下記式(1)を満たすことを特徴とするトナー。
3.0≦{(HT1ρ−C1)/(HT1ρ−A1)}≦6.0 (式1)
[前記水素核緩和時間(HT1ρ−C)は、前記トナーを固体13C−NMR(DD/MAS)法により測定して得られた、結晶性樹脂由来の13Cピークについて、ピーク強度の大きい方から順番にならべ、該13Cピークのピーク強度の最上位から、全13Cピークの積分強度の合計値に対する該13Cピークの積分強度の累積値の比率が90%に達する13Cピークまでを、固体13C−NMR(CP/MAS)法により測定して得られたものであり、
前記水素核緩和時間(HT1ρ−A)は、前記トナーを固体13C−NMR(DD/MAS)法により測定して得られた、全ての非晶性樹脂由来の13Cピークについて、固体13C−NMR(CP/MAS)法により測定して得られたものである。] - 前記結晶性樹脂が、下記構造式Iで表されるジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するジカルボン酸成分と、下記構造式IIで表されるジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するジオール成分とを縮重合して得られた樹脂で有り、
前記非晶性樹脂が、イソフタル酸、テレフタル酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するジカルボン酸成分と、下記構造式IIIで表される芳香族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物をジオール成分中に総量で50モル%以上含有するジオール成分とを縮重合して得られた樹脂である、請求項1に記載のトナー。
- 前記トナーを該トナーのガラス転移温度より50℃高い温度で加熱溶融した後に、20℃/分で25℃まで冷却して得られた熱履歴付与トナーの固体13C−NMRで測定された水素核緩和時間(HT1ρ−C)の標準偏差が8.0以上12.0以下であり、
前記水素核緩和時間(HT1ρ−C)のうち最も緩和時間が短い13Cピークの水素核緩和時間(HT1ρ−C2)と、水素核緩和時間(HT1ρ−A)のうち最も緩和時間の長い13Cピークの水素核緩和時間(HT1ρ−A2)が下記式(2)を満たす、請求項1又は2に記載のトナー。
式(2):
−2.0msec≦{(HT1ρ−C2)−(HT1ρ−A2)}≦10.0msec
[前記水素核緩和時間(HT1ρ−C)は、前記熱履歴付与トナーを固体13C−NMR(DD/MAS)法により測定して得られた、結晶性樹脂由来の13Cピークについて、ピーク強度の大きい方から順番にならべ、該13Cピークのピーク強度の最上位から、全13Cピークの積分強度の合計値に対する該13Cピークの積分強度の累積値の比率が90%に達する13Cピークまでを、固体13C−NMR(CP/MAS)法により測定して得られたものであり、
前記水素核緩和時間(HT1ρ−A)は、前記熱履歴付与トナーを固体13C−NMR(DD/MAS)法により測定して得られた、全ての非晶性樹脂由来の13Cピークについて、固体13C−NMR(CP/MAS)法により測定して得られたものである。] - 前記結晶性樹脂が、前記トナー中に10質量%以上40質量%以下含有される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記結晶性樹脂の融点が、50℃以上100℃以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記トナーは、
前記結晶性樹脂と前記非晶性樹脂とを相溶させて相溶化物を得る相溶化工程、及び、
該相溶化物を、該非晶性樹脂の良溶媒、かつ、該結晶性樹脂の貧溶媒で処理する溶剤処理工程、を有する製造方法を用いて製造される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のトナー。 - 前記相溶化工程は、
前記結晶性樹脂及び前記非晶性樹脂を該結晶性樹脂の融点以上に加熱し、該結晶性樹脂と該非晶性樹脂とを相溶させて相溶化物を得る工程、又は、
前記結晶性樹脂及び前記非晶性樹脂を溶解し得る有機溶剤に、該結晶性樹脂及び該非晶性樹脂を溶解し、該結晶性樹脂と該非晶性樹脂とを相溶させて相溶化物を得る工程である、請求項6に記載のトナー。 - 前記非晶性樹脂の良溶媒は、前記溶剤処理工程の処理温度における該非晶性樹脂の溶解度が100g/L以上となるものであり、
前記結晶性樹脂の貧溶媒は、前記溶剤処理工程の処理温度における該結晶性樹脂の溶解度が10g/L未満となるものである、請求項6又は7に記載のトナー。 - 前記トナーは、下記(式3)を満たす、請求項6〜8のいずれか1項に記載のトナー。0.00≦{Wt/(Wr×Z/100)}≦0.50 (式3)
Wt:前記トナーの示差走査熱量計(DSC)を用いた測定において、2回目の昇温時の結晶性樹脂由来の融解熱量(J/g)
Wr:前記結晶性樹脂の示差走査熱量計(DSC)を用いた測定において、2回目の昇温時の融解熱量(J/g)
Z:トナー中の結晶性樹脂の含有割合(質量%)
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