以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」および「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
本発明の一実施形態は、「非晶性樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有する静電潜像現像用トナーであって、炭素数2〜12のジカルボン酸および炭素数2〜12のジアルコールからなる数平均分子量(Mn)2,000〜10,000の結晶性セグメントと、数平均分子量(Mn)500〜2,000の非晶性セグメントと、が結合してなる化合物をさらに含有することを特徴とする、静電潜像現像用トナー」である。
なお、本明細書中、「静電荷像現像用トナー」を単に「トナー」とも称する場合がある。
本発明は、非晶性樹脂および結晶性ポリエステル樹脂の他に、炭素数2〜12のジカルボン酸および炭素数2〜12のジアルコールからなる数平均分子量(Mn)2,000〜10,000の結晶性セグメント(以下単に結晶性セグメントとも称する)と、数平均分子量(Mn)500〜2,000の非晶性セグメント(以下単に非晶性セグメントとも称する)と、が結合してなる化合物(以下単に造核剤とも称する)をトナーが有することに特徴がある。
上述したように、結晶性ポリエステル樹脂はトナーの低温定着性向上に有効であるが、非晶性樹脂と組み合わせた場合にトナーの耐熱保存性が低下し、トナーの定着部材からの分離性(以下、単に分離性とも称する)が低下する場合があった。一般的に、低温定着性と、耐熱保存性および分離性とはトレードオフの関係にあり、全ての物性の向上を図ることが課題であった。従来の非晶性樹脂に結晶性ポリエステル樹脂を組み合わせたトナーの耐熱保存性および分離性の低下の原因として、本発明者らは、製造段階で結晶性ポリエステル樹脂の結晶化が十分に進行していないことに起因して、非晶性樹脂中に結晶性ポリエステル樹脂が可塑化することが原因ではないかと考えた。そのため、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化が十分に進行すれば、上記課題を解決できると考え、種々検討した結果、結晶性セグメントと非晶性セグメントとが結合してなる化合物を造核剤として含有させることを見出したものである。
本発明の造核剤は、結晶性セグメントと、非晶性セグメントとを有する。このため、結晶性ポリエステル樹脂および非晶性樹脂を用いた場合に両者への親和性がよい。
造核剤を用いることによって、トナーが低温定着効果を有するとともに、耐熱保存性が良好で、分離性が向上するメカニズムは、限定されるものではないが、以下のように考えられる。
本願の造核剤は比較的分子が小さいために、自身が結晶化しやすい性質を有する。このため、造核剤が結晶化することによって該結晶が結晶性ポリエステル樹脂の結晶化の際の種結晶となり、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化が十分に進行するものと考えられる。
このため、結晶性ポリエステル樹脂の添加量が少なくとも低温定着効果が得られるので、離型剤がトナー内部へ十分に分散し、また離型剤のドメイン形成の阻害も少ない。これにより、トナー分離性を確保することができるものと考えられる。
以下、本発明について詳説する。
<結晶性ポリエステル樹脂>
結晶性ポリエステル樹脂とは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、実施例に記載の示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
結晶性ポリエステル樹脂は、上記定義したとおりであれば特に限定されず、例えば、結晶性ポリエステル樹脂による主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂が上記のように明確な吸熱ピークを示すものであれば、本発明でいう結晶性ポリエステル樹脂に該当する。
結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは2,000〜15,000であり、より好ましくは2,500〜12,000である。かような範囲であると、後述する凝集・融着工程において非晶性樹脂との相溶を防止・抑制し、得られるトナー粒子が粒子全体として融点の低いものにならず耐ブロッキング性に優れ、また、低温定着性にも優れる。
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度(Tc)は、50℃以上120℃未満であることが好ましく、60℃以上90℃未満であることがより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融解温度が上記の範囲にあることにより、低温定着性および定着分離性が適切に得られるため好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融解温度(Tc)は、下記実施例に記載の方法で求められる吸熱ピーク温度を指す。
結晶性ポリエステル樹脂の酸価(酸価AV)は5〜70mgKOH/gが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分および多価アルコール成分から生成される。この際、結晶性ポリエステル樹脂の多価カルボン酸成分の炭素数2〜12であり、多価アルコール成分の炭素数が2〜12であることが好ましい。多価アルコール部分の炭素数が2〜12である結晶性樹脂(以下、単に低炭素数結晶性樹脂とも称する)は、熱定着時に速やかに溶融して非晶性樹脂を可塑化するので、少ない添加量でも、優れた低温定着性が得られる。しかし、耐熱保存性の低下が激しく使いこなしが困難であった。本発明の造核剤は、結晶性セグメント部分の炭素数が低炭素数結晶性樹脂の炭素鎖長と近いため、結晶性樹脂への親和性が高く、結晶性樹脂が微細な結晶状態となってトナー内部へ確実に存在できるようになる。このため、トナーの耐熱保存性の低下やフィルミングを抑制することが可能となる。また、多価カルボン酸成分および多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2〜3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、特に好ましい形態として価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について説明する。
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジカルボン酸成分は、一種類のものに限定されるものではなく、二種類以上を混合して用いてもよい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,10−ドデカンジカルボン酸(1,10−ドデカン二酸)、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
上記の脂肪族ジカルボン酸の中でも、上述のとおり本発明の効果が得られやすいことから、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸と共に用いることのできる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、入手容易性および乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸を用いることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸の使用量は、結晶性ポリエステル樹脂を形成するためのジカルボン酸成分全体を100構成モル%とした場合の20構成モル%以下とされることが好ましく、より好ましくは10構成モル%以下、特に好ましくは5構成モル%以下である。芳香族ジカルボン酸の使用量が20構成モル%以下とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を確保することができて製造されるトナーに優れた低温定着性が得られ、最終的に形成される画像に光沢性が得られると共に融点降下による画像保存性の低下が抑制され、さらに、当該結晶性ポリエステル樹脂を含む油相液を用いて油滴を形成させるときに、確実に乳化状態を得ることができる。
また、ジオール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましく、必要に応じて脂肪族ジオール以外のジオールを含有させてもよい。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどが挙げられる。
ジオール成分としては、脂肪族ジオールの中でも、上述のとおり本発明の効果が得られやすいことから、炭素数2〜12の脂肪族ジオールであることが好ましい。
ジオール成分としては、分岐型の脂肪族ジオールを用いることもできるが、この場合、結晶性の確保の観点から、直鎖型の脂肪族ジオールと共に使用し、かつ、当該直鎖型の脂肪族ジオールの割合を高めにして使用することが好ましい。このように直鎖型の脂肪族ジオールの割合を高めにして使用することによって、結晶性が確保されて製造されるトナーに優れた低温定着性が確実に得られ、最終的に形成される画像において融点降下による画像保存性の低下が抑制され、さらには耐ブロッキング性が確実に得られる。
ジオール成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するためのジオール成分としては、脂肪族ジオールの含有量が80構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは90構成モル%以上であり、さらに好ましくは100構成モル%である。ジオール成分における脂肪族ジオールの含有量が80構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を確保することができて製造されるトナーに優れた低温定着性が得られると共に最終的に形成される画像に光沢性が得られる。
脂肪族ジオール以外のジオールとしては、二重結合を有するジオール、スルホン酸基を有するジオールなどが挙げられ、具体的には、二重結合を有するジオールとしては、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオールなどが挙げられる。ジオール成分における二重結合を有するジオールの含有量は20構成モル%以下とされることが好ましい。二重結合を有するジオールの含有量が20構成モル%以下であることにより、得られるポリエステル樹脂が融点の大幅に低減されたものとなることがなく、従って、フィルミングが発生する虞が小さい。
上記のジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率は、ジオール成分のヒドロキシル基[OH]とジカルボン酸成分のカルボキシル基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、1.5/1〜1/1.5とされることが好ましく、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。ジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率が上記の範囲にあることにより、所望の分子量を有する結晶性ポリエステル樹脂を確実に得ることができる。
結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、トナー全体に対して通常1〜40質量部、好ましくは5〜20質量部となる量とすることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の添加量が40質量部以下であると、外添剤の埋没やフィルミングなどの発生が少ない。また、1質量部以上であると低温定着性向上の効果が効果的に得られる。
<非晶性樹脂>
非晶性樹脂は特に限定されるものではないが、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分とを縮合してなる非晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂は、上記結晶性ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂である。つまり、通常は融点を有さず、比較的高いガラス転移点温度(Tg)を有するものである。より具体的には、ガラス転移点温度(Tg)は、40〜90℃であることが好ましく、特に45〜80℃であることが好ましい。なお、ガラス転移点温度(Tg)は、実施例に記載の方法で測定する。
上記多価アルコール成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどの脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、およびこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などを挙げることができ、また、3価以上の多価アルコール成分としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。さらに、製造コストや環境性から、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ネオペンチルアルコールなどを用いてもよい。また、非晶性ポリエステル樹脂を形成しうる多価アルコール成分としては、2−ブチン−1,4ジオール、3−ブチン−1,4ジオール、9−オクタデゼン−7,12ジオールなどの不飽和多価アルコールなども用いることができる。
これらの中でも、帯電性やトナー強度の観点から、多価アルコール成分としてはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とプロピレンオキサイド付加物を用いることが好ましい。
これらの多価アルコール成分は1種単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。
上記多価アルコール成分と縮合させる2価カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などの脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類;及びこれらの酸の低級アルキルエステル、酸無水物などが挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
これら多価カルボン酸の中でも、特にアルケニルコハク酸もしくはその無水物を用いると、他の官能基に比べ疎水性の高いアルケニル基が存在することにより、より容易に結晶性ポリエステル樹脂と相溶することができる。アルケニルコハク酸成分の例としては、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、並びにこれらの酸無水物、酸塩化物及び炭素数1〜3の低級アルキルエステルを挙げることができる。
更に、3価以上のカルボン酸を含有することにより、高分子鎖が架橋構造をとることができ、該架橋構造をとることにより、高温側での弾性率の低下を抑制させることができ、高温側でのオフセット性を向上させることができる。
上記3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸や1,2,5−ベンゼントリカルボン酸などのトリメリット酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、並びにこれらの酸無水物、酸塩化物及び炭素数1〜3の低級アルキルエステルなどが挙げられるが、トリメリット酸(無水物)が特に好適である。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
非晶性ポリエステル樹脂の軟化温度は、70〜140℃が好ましく、更に70〜125℃が好ましい。また、ポリエステル樹脂の酸価は5〜70mgKOH/gが好ましい。
非晶性樹脂としては、非晶性のポリエステル樹脂の他、特開2011−197659号に記載のスチレン−アクリレン系樹脂などが挙げられる。
非晶性樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは3,000〜100,000、より好ましくは4,000〜70,000である。非晶性樹脂の数平均分子量(Mn)がかかる範囲である場合、得られるトナーが耐ブロッキング性に優れ、低温定着性も得ることができる。
非晶性樹脂の含有量は、トナー全体に対して通常50〜95質量部、好ましくは60〜80質量部となる量とすることが好ましい。かような範囲であると得られるトナーが耐ブロッキング性に優れ、低温定着性も得ることができる。
<炭素数2〜12のジカルボン酸および炭素数2〜12のジアルコールからなる数平均分子量(Mn)2,000〜10,000の結晶性セグメントと、数平均分子量(Mn)500〜2,000の非晶性セグメントと、が結合してなる化合物>
化合物を構成する結晶性セグメントとは、上記結晶性ポリエステル樹脂由来のセグメントを指す。すなわち、上記定義される結晶性ポリエステル樹脂を構成するものと同じ化学構造、分子量の分子を指す。また、化合物を構成する非晶性セグメントとは、上記非晶性樹脂由来のセグメントを指す。すなわち、非晶性樹脂を構成するのと同じ化学構造、分子量の分子を指す。
このため、結晶性セグメントおよび非晶性セグメントが結合してなる化合物は、結晶性樹脂と非晶性樹脂の双方の化学的性質を有する。すなわち、化合物は、示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピークを有するとともに、好ましくは10〜50℃、より好ましくは20〜40℃のガラス転移温度(Tg)を有する。また、造核剤の融点は、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化促進の点から、50〜130℃であることが好ましく、55〜100℃であることがより好ましい。なお、融点は下記実施例に記載の融解温度の測定方法により求められる吸熱ピーク温度とする。
結晶性セグメントは、炭素数2〜12のジカルボン酸および炭素数2〜12のジアルコールからなる。ジカルボン酸およびジアルコールの炭素数が12を超えると、トナーの低温定着性が低下する。これは、融点が高くなり定着ニップでのトナー溶融性を充分に確保できないためと考えられる。また、結晶性ポリエステルの結晶化促進効果が小さく、耐熱保存性および分離性も低下する。
炭素数2〜12のジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、ドデカン二酸などが挙げられ、また、これらの酸無水物を用いることもできる。中でも、炭素数6〜12のジカルボン酸を用いることが結晶性ポリエステルの結晶化がより促進され、耐熱保存性および分離性がより向上するので好ましい。
炭素数2〜12のジアルコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどが挙げられる。中でも、炭素数6〜12のジアルコールを用いることが結晶性ポリエステルの結晶化促進の点で好ましい。
上記のジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率は、ジオール成分のヒドロキシル基[OH]とジカルボン酸成分のカルボキシル基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、1.5/1〜1/1.5とされることが好ましく、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。ジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率が上記の範囲にあることにより、所望の分子量を有する結晶性ポリエステルセグメントを得ることができる。
結晶性セグメントの数平均分子量(Mn)は2,000〜10,000である。結晶性セグメントの数平均分子量(Mn)が10,000を超えると、造核剤が結晶化しにくくなるため、結晶性ポリエステル樹脂の種結晶となりにくくなる。このため、耐熱保存性や分離性が低下する。また、溶融開始温度が高く、トナーの低温定着性が著しく低下する。さらに、結晶性セグメントの数平均分子量(Mn)が2,000未満であると、マイグレーションが進行し、化合物が可塑剤として作用するため、耐熱保管性が低下する。結晶性セグメントの数平均分子量(Mn)は、造核剤の結晶化の点から、2,000〜10,000であることがより好ましい。なお、本明細書において数平均分子量の測定方法は下記実施例に記載の方法により測定したものを採用する。
結晶性セグメントを構成する結晶性ポリエステル樹脂の融解温度(Tc)は、50℃以上120℃未満であることが好ましく、60℃以上90℃未満であることがより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融解温度が上記の範囲にあることにより、低温定着性および定着分離性が適切に得られるため好ましい。
結晶性セグメントを構成する結晶性ポリエステル樹脂の酸価(酸価AV)は5〜70mgKOH/gが好ましい。
結晶性セグメントを構成する結晶性ポリエステル樹脂は、上記炭素数2〜12のジカルボン酸および炭素数2〜12のジアルコールを重縮合して得られる。重縮合の際、数平均分子量(Mn)が2,000〜10,000となるように、反応温度、反応時間等を適宜調整する。重合温度は特に限定されるものではないが、150〜230℃であることが好ましい。また、重合時間は特に限定されるものではないが、0.5〜10時間であることがより好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
重合性単量体が、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い重合性単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い重合性単量体とその重合性単量体と重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
結晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等などを挙げることができる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどなどのチタンキレートなどを挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。さらにアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシドなどが挙げられ、トリブチルアルミネート、トリオクチルアルミネート、トリステアリルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、結晶性セグメントを構成する結晶性ポリエステル樹脂を製造する際に好適な触媒としては、オクチル酸スズなどが挙げられる。
非晶性セグメントは、製造性向上のために必須のセグメントである。これは、非晶性セグメントが存在することでメイン樹脂である非晶性ポリエステル樹脂に結晶性ポリエステル樹脂を取込むことができ、トナー製造性を確保できる。
非晶性セグメントの数平均分子量(Mn)は、500〜2,000である。非晶性セグメントの数平均分子量(Mn)が500未満であると、メインの非晶性樹脂と化合物との相溶性が悪くなる。また、非晶性セグメントの数平均分子量(Mn)が2,000を超えると、結晶化度が低くなり造核剤としての機能が低下するために結晶性ポリエステルの結晶化を促進できず、耐熱保存性および分離性が低下する。非晶性セグメントの数平均分子量(Mn)は、メイン樹脂との相溶性と造核剤としての機能の点から、1,000〜2,000であることがより好ましい。
非晶性セグメントを構成する非晶性樹脂は特に限定されるものではないが、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分とを縮合してなる非晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
上記多価アルコール成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどの脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、およびこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などを挙げることができ、また、3価以上の多価アルコール成分としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。さらに、製造コストや環境性から、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ネオペンチルアルコールなどを用いてもよい。また、非晶性ポリエステル樹脂を形成しうる多価アルコール成分としては、2−ブチン−1,4ジオール、3−ブチン−1,4ジオール、9−オクタデゼン−7,12ジオールなどの不飽和多価アルコールなども用いることができる。
これらの中でも、メインの非晶性ポリエステル樹脂との相溶性の観点から、多価アルコール成分としてはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とプロピレンオキサイド付加物を用いることが好ましい。
これらの多価アルコール成分は1種単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。
上記多価アルコール成分と縮合させる多価カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などの脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類;及びこれらの酸の低級アルキルエステル、酸無水物などが挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
これらの中でも、多価カルボン酸成分としては、入手性や、コストの観点から、テレフタル酸、トリメリット酸無水物、フマル酸、ドデセニル無水コハク酸、アジピン酸、セバシン酸を用いることが好ましい。
非晶性セグメントを構成する非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、15〜50℃が好ましく、更に20〜40℃が好ましい。
非晶性セグメントを構成する非晶性ポリエステル樹脂の軟化温度は、70〜140℃が好ましく、更に70〜125℃が好ましい。また、非晶性ポリエステル樹脂の酸価は5〜70mgKOH/gが好ましい。
非晶性セグメントを構成する非晶性樹脂は、上記多価カルボン酸成分および多価カルボン酸成分を重縮合することにより得られる。重縮合は、上記結晶性ポリエステル樹脂と同様に行うことができる。重縮合の際、数平均分子量(Mn)が500〜2,000となるように、反応温度、反応時間等を適宜調整する。この際の重合温度は特に限定されるものではないが、80〜200℃であることが好ましい。また、重合時間は特に限定されるものではないが、0.5〜10時間であることがより好ましい。
非晶性セグメントを構成する非晶性樹脂としては、非晶性のポリエステル樹脂の他、特開2011−197659号に記載のスチレン−アクリレン系樹脂などが挙げられる。
結晶性セグメントと非晶性セグメントとの結合態様は特に限定されるものではなく、結晶性セグメントの末端に非晶性セグメントが結合してなる、グラフト共重合体などの結合態様があるが、結晶性セグメントの末端に非晶性セグメントが結合してなることが好ましい。換言すれば、結晶性セグメントと非晶性セグメントとのブロック共重合体であることが好ましい。これは、非晶性セグメントが結晶性セグメントの結晶化を阻害するのを防ぐであるためである。したがって、非晶性セグメントを構成する多価アルコール成分および多価カルボン酸成分は2価であることが好ましい。
さらに、造核剤の数平均分子量(Mn)は2,000〜15,000であることが好ましく、5,000〜13,000であることがより好ましい。かような範囲であれば、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化が十分に進行しやすく、また化合物の過度のマイグレーション進行も少ないため、低温定着性が良好で、耐熱保存性および分離性にも優れる。
造核剤の含有量は、トナー全体に対して通常0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部となる量とすることが好ましい。かような範囲であると造核剤の効果が適切に得られる。
造核剤は、炭素数2〜12のジカルボン酸および炭素数2〜12のジアルコールからなる数平均分子量(Mn)2,000〜10,000の結晶性ポリエステル樹脂と、数平均分子量(Mn)500〜2,000の非晶性樹脂とを反応させて得られる。
造核剤の製造方法として、具体的には、非晶性樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを加熱混合することが好ましい。この際の混合質量比は、非晶性樹脂:結晶性ポリエステル樹脂=1:5〜100であることが好ましく、10〜50であることがより好ましい。また、加熱温度は、反応が進行するよう適宜設定されるが、70〜150℃であることが好ましく、80〜120℃であることがより好ましい。加熱時間としては、反応が進行するよう適宜設定されるが、0.5〜10時間であることが好ましく、0.8〜5時間であることがより好ましい。
本発明のトナー中には、上記必須成分の他、必要に応じて、離型剤、着色剤、荷電制御剤などの内添剤;無機微粒子、有機微粒子、滑材などの外添剤が含有されていてもよい。
<離型剤(ワックス)>
トナーを構成する離型剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどの低分子量ポリオレフィン類;合成エステルワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油などの植物系ワックス;モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの鉱物、石油系ワックス;これらの変性物などが挙げられる。
離型剤の添加量は、トナー全体に対して通常0.5〜25質量部、好ましくは3〜15質量部となる量とされる。かような範囲であるとホットオフセット防止や分離性確保の効果がある。
また、離型剤の大きさとしては、体積平均粒子径で、10〜1000nm、50〜500nmが好ましく、さらには80〜300nmが特に好ましい。
<着色剤>
トナーを構成しうる着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料などを任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金、例えばマンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−錫などのホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、二酸化クロムなどを用いることができる。
黒色の着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48;1、C.I.ピグメントレッド53;1、C.I.ピグメントレッド57;1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
また、オレンジもしくはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
さらに、グリーンもしくはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15;2、C.I.ピグメントブルー15;3、C.I.ピグメントブルー15;4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
これらの着色剤は必要に応じて単独もしくは二つ以上を選択併用することも可能である。
着色剤の添加量はトナー全体に対して1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲で、これらの混合物も用いることができる。かような範囲であると画像の色再現性を確保できる。
また、着色剤の大きさとしては、体積平均粒子径で、10〜1000nm、50〜500nmが好ましく、さらには80〜300nmが特に好ましい。
<荷電制御剤>
荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。
荷電制御剤の添加量は、最終的に得られるトナー粒子中における結着樹脂100質量部に対して通常0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部となる量とされる。
荷電制御剤粒子の大きさとしては、数平均一次粒子径で10〜1000nm、50〜500nmが好ましく、さらには80〜300nmが特に好ましい。
<外添剤>
トナーとしての帯電性能や流動性、あるいはクリーニング性を向上させる観点から、トナー粒子の表面に公知の無機微粒子や有機微粒子などの粒子、滑材を外添剤として添加することできる。
無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウムなどによる無機微粒子を好ましいものとして挙げられる。
必要に応じてこれらの無機微粒子は疎水化処理されていてもよい。
有機微粒子としては、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体による有機微粒子を使用することができる。
滑材は、クリーニング性や転写性をさらに向上させる目的で使用されるものであって、滑材としては、例えば、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウムなどの塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、リノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩などの高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。これらの外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
外添剤の添加量は、トナー粒子に対して0.1〜10.0質量%であることが好ましい。
外添剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの公知の種々の混合装置を使用して添加する方法が挙げられる。
本発明のトナーの平均粒径は、体積平均粒径で3.0〜8.0μm、好ましくは4.0〜7.5μmである。上記の範囲であることにより、定着時において飛翔して加熱部材に付着し定着オフセットを発生させる付着力の大きいトナー粒子が少なくなり、また、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。また、トナー流動性も確保できる。
トナーの平均粒径は、トナーの製造時の凝集・融着工程における凝集剤の濃度や溶剤の添加量、または融着時間、さらにはポリエステル樹脂の組成によって制御することができる。
本発明の静電潜像現像用トナーは、転写効率の向上の観点から、下記数式1で示される平均円形度が0.920〜1.000であることが好ましく、0.940〜0.995であることがより好ましい。
なお、平均円形度は、例えば、平均円形度の測定装置「FPIA−3000」(Sysmex社製)を用いて測定することができる。
<本発明のトナーの製造方法>
本発明のトナーを製造する方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。
これらの中でも、高画質化、帯電の高安定化に有利となる粒径の均一性、形状の制御性、コア−シェル構造形成の容易性の観点から、乳化凝集法を採用することが好ましい。
乳化凝集法は、界面活性剤や分散安定剤によって分散された樹脂の微粒子(以下、「樹脂微粒子」ともいう。)の分散液を、必要に応じて着色剤の微粒子などのトナー粒子構成成分の分散液と混合し、凝集剤を添加することによって所望のトナーの粒径となるまで凝集させ、その後または凝集と同時に、樹脂微粒子間の融着を行い、形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する方法である。
ここで、樹脂微粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とする複数層で形成された複合粒子とすることもできる。
樹脂微粒子は、例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、転相乳化法などにより製造、またはいくつかの製法を組み合わせて製造することができる。樹脂微粒子に内添剤を含有させる場合には、中でもミニエマルション重合法を用いることが好ましい。
トナー粒子中に内添剤を含有させる場合は、樹脂微粒子を内添剤を含有したものとしてもよく、また、別途内添剤のみよりなる内添剤微粒子の分散液を調製し、当該内添剤微粒子を樹脂微粒子を凝集させる際に共に凝集させてもよい。
また、トナー粒子をコア−シェル構造を有するものとして構成する場合は、凝集時に組
成の異なる樹脂微粒子を時間差で添加して凝集させればよい。
続いて、本発明のトナーの製造方法の好ましい実施形態を具体的に示す。
本発明の好ましい実施形態によるトナーの製造方法は、炭素数2〜12のジカルボン酸および炭素数2〜12のジアルコールからなる数平均分子量(Mn)2,000〜10,000の結晶性ポリエステル樹脂と、数平均分子量(Mn)500〜2,000の非晶性樹脂とを反応させて化合物を得る工程(以下、造核剤合成工程とも称する)(1)と、
前記化合物を水系溶液に分散させて化合物分散液を得る工程(以下、造核剤粒子分散液調製工程)(2)と、前記化合物分散液と、結晶性ポリエステル樹脂分散液と、非晶性樹脂分散液とを混合して凝集・融着させる、または、前記化合物分散液と、結晶性ポリエステル樹脂分散液と、を混合して凝集・融着させた後、非晶性樹脂分散液を混合して凝集・融着させる工程(以下、凝集・融着工程とも称する)(3)と、を含む静電潜像現像用トナーの製造方法である。
さらに好適な実施形態は、前記工程(3)の後に、前記結晶性ポリエステル樹脂の融点から5〜20℃低い温度にて30分以上保持した後、10℃/分以上の速度で0〜45℃以下まで冷却する工程(以下、冷却工程とも称する)(4)と、を含む静電潜像現像用トナーの製造方法である。
以下、各工程について詳述する。
(1)造核剤合成工程
造核剤の合成方法は上記記載したとおりであるため、ここでは詳細を割愛する。
(2)造核剤粒子分散液調製工程
この造核剤粒子分散液調製工程は、造核剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて造核剤微粒子の分散液を調製する工程である。
造核剤を水系媒体中に分散させる方法としては、当該化合物を、ホモジナイザー等を用いて、力学的なせん断による機械分散などによって水系媒体中に分散させる方法が挙げられる。
本発明において、「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいい、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶剤を使用することが好ましい。好ましくは、水系媒体として水のみを使用する。
水系媒体の使用量は、造核剤100質量部に対して、50〜2,000質量部であることが好ましく、100〜1,000質量部であることがより好ましい。水系媒体の使用量を上記の範囲とすることで、水系媒体中において油相液を所望の粒径に乳化分散させることができる。
水系媒体中には、分散安定剤が溶解されていてもよく、また油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。
分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなどの無機化合物を挙げることができるが、得られるトナー母体粒子中より分散安定剤を除去する必要があることから、リン酸三カルシウムなどのように酸やアルカリに可溶性のものを使用することが好ましく、または環境面の視点からは、酵素により分解可能なものを使用することが好ましい。
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤などが挙げられ、また、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤も使用することができる。
また、分散安定性の向上のための樹脂微粒子としては、粒径が0.5〜3μmのものが好ましく、具体的には、粒径が1μmおよび3μmのポリメタクリル酸メチル樹脂微粒子、粒径が0.5μmおよび2μmのポリスチレン樹脂微粒子、粒径が1μmのポリスチレン−アクリロニトリル樹脂微粒子などが挙げられる。
このような油相液の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、分散機としては、特に限定されるものではなく、ホモジナイザー、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられる。
分散の際には、溶液を加熱することが好ましい。加熱条件は特に限定されるものではないが、通常40〜90℃程度である。
分散液はその後の工程である凝集工程で円滑に凝集を進行させるため、pHを4.0〜8.0に調整することが好ましい。
このように準備された造核剤粒子分散液における造核剤粒子(油滴)の粒径は、体積平均粒径で、60〜1000nmとされることが好ましく、さらに好ましくは80〜500nmである。なお、この体積平均粒径は、実施例に記載の方法で測定する。なお、この油滴の体積平均粒径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさによりコントロールすることができる。
また、造核剤粒子分散液における造核剤粒子の含有量は、10〜50質量%の範囲とすることが望ましく、より望ましくは15〜40質量%の範囲である。このような範囲であると、安定して保存できるため好ましい。
(3)凝集・融着工程
工程(3)は、より詳細には下記結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程、非晶性樹脂微粒子分散液調製工程があり、また、必要に応じて、離型剤分散液調製工程、着色剤分散液調製工程を含む。
(3−1)結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程
この結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液調製工程は、トナー粒子を構成する結晶性ポリエステル樹脂を合成し、この結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させて結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液を調製する工程である。
結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、当該結晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒(溶剤)中に溶解または分散させて油相液を調製し、油相液を、転相乳化などによって水系媒体中に分散させて、所望の粒径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒を除去する方法が挙げられる。
油相液の調製に使用される有機溶媒(溶剤)としては、油滴の形成後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、かつ、水への溶解性が低いものが好ましく、具体的には、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらは一種単独であるいは二種以上組み合わせて用いることができる。
有機溶媒(溶剤)の使用量(二種類以上使用する場合はその合計使用量)は、結晶性ポリエステル樹脂100質量部に対して、通常1〜300質量部、好ましくは10〜200質量部、さらに好ましくは25〜100質量部である。
さらに、油相液中には、カルボキシル基をイオン乖離させて、水相に安定に乳化させて乳化を円滑に進めるためにアンモニア、水酸化ナトリウムなどを添加してもよい。
水系媒体の使用量は、油相液100質量部に対して、50〜2,000質量部であることが好ましく、100〜1,000質量部であることがより好ましい。水系媒体の使用量を上記の範囲とすることで、水系媒体中において油相液を所望の粒径に乳化分散させることができる。
水系媒体中には、分散安定剤が溶解されていてもよく、また油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。
分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなどの無機化合物を挙げることができるが、得られるトナー母体粒子中より分散安定剤を除去する必要があることから、リン酸三カルシウムなどのように酸やアルカリに可溶性のものを使用することが好ましく、または環境面の視点からは、酵素により分解可能なものを使用することが好ましい。
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤などが挙げられ、また、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤も使用することができる。
また、分散安定性の向上のための樹脂微粒子としては、粒径が0.5〜3μmのものが好ましく、具体的には、粒径が1μmおよび3μmのポリメタクリル酸メチル樹脂微粒子、粒径が0.5μmおよび2μmのポリスチレン樹脂微粒子、粒径が1μmのポリスチレン−アクリロニトリル樹脂微粒子などが挙げられる。
このような油相液の乳化分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、乳化分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられ、具体的には例えばTK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)などを挙げることができる。
油滴の形成後における有機溶媒の除去は、結晶性ポリエステル樹脂微粒子が水系媒体中に分散された状態の分散液全体を、徐々に撹拌状態で昇温し、一定の温度域において強い撹拌を与えた後、脱溶媒を行うなどの操作により行うことができる。あるいは、エバポレータ等の装置を用いて減圧しながら除去することができる。
このように準備された結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液における結晶性ポリエステル樹脂微粒子(油滴)の粒径は、体積平均粒径で、60〜1000nmとされることが好ましく、さらに好ましくは80〜500nmである。なお、この体積平均粒径は、実施例に記載の方法で測定する。なお、この油滴の体積平均粒径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさによりコントロールすることができる。
また、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液における結晶性ポリエステル樹脂微粒子の含有量は、10〜50質量%の範囲とすることが望ましく、より望ましくは15〜40質量%の範囲である。このような範囲であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
(3−2)非晶性樹脂微粒子分散液調製工程
この非晶性樹脂微粒子分散液調製工程は、トナー粒子を構成する結着樹脂の材料となる非晶性樹脂を得るための非晶性樹脂を合成し、この非晶性樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させて非晶性樹脂微粒子の分散液を調製する工程である。
非晶性樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる場合と同様に、当該非晶性樹脂を有機溶媒(溶剤)中に溶解または分散させて油相液を調製し、油相液を、転相乳化などによって水系媒体中に分散させて、所望の粒径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒(溶剤)を除去する方法が挙げられる。
油相液の調製に使用される有機溶媒(溶剤)としては、上記と同様に、油滴の形成後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、かつ、水への溶解性が低いものが好ましく、具体的には、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらは一種単独であるいは二種以上組み合わせて用いることができる。
有機溶媒(溶剤)の使用量(二種類以上使用する場合はその合計使用量)は、非晶性樹脂100質量部に対して、通常1〜300質量部、好ましくは10〜200質量部、さらに好ましくは25〜100質量部である。
さらに、油相液中には、カルボキシル基をイオン乖離させて、水相に安定に乳化させて乳化を円滑に進めるためにアンモニア、水酸化ナトリウムなどを添加してもよい。
水系媒体の使用量は、油相液100質量部に対して、50〜2,000質量部であることが好ましく、100〜1,000質量部であることがより好ましい。水系媒体の使用量を上記の範囲とすることで、水系媒体中において油相液を所望の粒径に乳化分散させることができる。
また、上記と同様に、水系媒体中には、分散安定剤が溶解されていてもよく、また油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。
このような油相液の乳化分散は、上記と同様に、機械的エネルギーを利用して行うことができ、乳化分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられ、具体的には例えばTK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)などを挙げることができる。
油滴の形成後における有機溶媒の除去は、非晶性樹脂微粒子が水系媒体中に分散された状態の分散液全体を、徐々に撹拌状態で昇温し、一定の温度域において強い撹拌を与えた後、脱溶媒を行うなどの操作により行うことができる。あるいは、エバポレータ等の装置を用いて減圧しながら除去することができる。
このように準備された非晶性樹脂微粒子分散液における非晶性ポリエステル樹脂微粒子(油滴)の粒径は、体積平均粒径で、60〜1000nmとされることが好ましく、さらに好ましくは80〜500nmである。なお、この体積平均粒径は、実施例に記載の方法で測定する。なお、この油滴の体積平均粒径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさによりコントロールすることができる。
また、非晶性樹脂微粒子分散液における非晶性樹脂微粒子の含有量は、10〜50質量%の範囲とすることが望ましく、より望ましくは15〜40質量%の範囲である。このような範囲であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
(3−3)離型剤微粒子分散液調製工程
この離型剤微粒子分散液調製工程は、トナー粒子として離型剤を含有するものを所望する場合に必要に応じて行う工程であって、離型剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて離型剤微粒子の分散液を調製する工程である。
当該水系媒体は上記で説明した通りであり、この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。
離型剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記で挙げたように、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザー、あるいは、高圧ホモジナイザーなどが挙げられ、具体的には例えばマントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社)などを挙げることができる。
離型剤を分散させるにあたり、必要に応じて加熱を行ってもよい。
離型剤微粒子の体積平均粒径は、10〜300nmとされることが好ましい。
また、離型剤微粒子分散液における離型剤微粒子の含有量は、10〜50質量%の範囲とすることが望ましく、より望ましくは15〜40質量%の範囲である。このような範囲であると、ホットオフセット防止と分離性確保の効果がある。
(3−4)着色剤微粒子分散液調製工程
この着色剤微粒子分散液調製工程は、トナー粒子として着色剤を含有するものを所望する場合に必要に応じて行う工程であって、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤微粒子の分散液を調製する工程である。
当該水系媒体は上記で説明した通りであり、この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記で挙げたように、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、あるいは、高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられ、具体的には例えば(株)スギノマシン製、HJP30006などを挙げることができる。
着色剤微粒子の体積平均粒径は、10〜300nmとされることが好ましく、さらに好ましくは100〜200nmmである。
また、着色剤微粒子分散液における着色剤微粒子の含有量は、10〜50質量%の範囲とすることが望ましく、より望ましくは15〜40質量%の範囲である。このような範囲であると、色再現性確保の効果がある。
(3−4)凝集・融着工程
この凝集・融着工程は、造核剤粒子の分散液、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液、非晶性樹脂微粒子の分散液、また必要に応じて、離型剤微粒子の分散液、着色剤微粒子の分散液、などの他の成分を添加、混合し、pH調製による微粒子表面の反発力と電解質体よりなる凝集剤の添加による凝集力とのバランスを取りながら緩慢に凝集させ、平均粒径および粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に、加熱撹拌することで微粒子間の融着を行って形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する工程である。この凝集・融着工程も必要に応じ機械的エネルギーや加熱手段を利用して行うことができる。
凝集工程においては、まず得られた各分散液を混合して混合液とし、非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度以下の温度で加熱して凝集させ、凝集粒子を形成する。凝集粒子の形成は、攪拌下、混合液のpHを酸性にすることによってなされる。pHとしては、2〜7の範囲が望ましく、2.2〜6の範囲がより望ましく、2.4〜5の範囲がさらに望ましい。この際、凝集剤を使用することも有効である。
用いられる凝集剤は、分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属錯体を好適に用いることができる。
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩およびその重合体が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、より適している。
凝集粒子が所望の粒径になったところで、非晶性樹脂微粒子を追添加することで、コア凝集粒子の表面を非晶性樹脂で被覆した構成のトナーを作製することができる。追添加する場合、追添加前に凝集剤を添加したり、pH調製を行ってもよい。
凝集の際には加熱、昇温することが好ましい。加熱温度は40〜100℃の範囲で行い、昇温速度としては0.1〜5℃/分の範囲で行うことが好ましい。
凝集粒子が所望の粒径になったところで、反応系内の各種の微粒子の凝集を停止させる(以下、凝集停止工程とも称する)。凝集の停止は、反応系内における微粒子の凝集作用を抑制するために、凝集工程における微粒子の凝集作用が促進されるpH環境から脱する方向にpH調整することができる、塩基化合物からなる凝集停止剤を添加することにより、行われる。凝集粒子が所望の粒径は特に限定されるものではないが、体積平均粒径が4.5〜7.0μm程度であることが好ましい。
この凝集停止工程においては、反応系のpHを5.0〜9.0に調整することが好ましい。
凝集停止剤(塩基化合物)としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)およびそのナトリウム塩などのアルカリ金属塩、グルコナール、グルコン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびクエン酸ナトリウム、ニトロトリアセテート(NTA)塩、GLDA(市販のL−グルタミン酸N,N二酢酸)、フミン酸およびフルビン酸、マルトールおよびエチルマルトール、ペンタ酢酸およびテトラ酢酸、カルボキシル基および水酸基の両方の官能基を有する公知の水溶性ポリマー類(高分子電解質)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。凝集停止工程においては、凝集工程に準じて攪拌を行ってもよい。
融着工程は、上記凝集停止工程を経た後、反応系を所期の融着温度に加温することにより、凝集停止工程において確保された凝集粒子を構成する各微粒子を融着させて凝集粒子を融合して、融合粒子を形成させる工程である。
この融着工程における融着温度は、結晶性ポリエステル樹脂の融点以上であることが好ましく、融着温度は、結晶性ポリエステル樹脂の融点より0〜20℃高い温度であることが好ましい。加熱の時間としては、融合がされる程度行えばよく、0.5〜10時間程度行えばよい。
また、前記化合物分散液と、結晶性ポリエステル樹脂分散液と、を混合して上記と同様に凝集・融着させた後、非晶性樹脂分散液を混合して凝集・融着させて、コア・シェル形態としてもよい。
この凝集・融着工程においては、凝集系における各微粒子を安定に分散させるために、水系媒体中に界面活性剤を追加してもよい。
界面活性剤としては、特に限定されずに公知の種々のものを用いることができるが、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩;ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウムなどの硫酸エステル塩;オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムなどの脂肪酸塩などの、アニオン性、カチオン性を含む、イオン性界面活性剤を好適なものとして例示することができる。
また、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレノキサイドとのエステル、ソルビタンエステルなどのノニオン性界面活性剤も使用することができる。以上の界面活性剤は、所望に応じて、一種または二種以上を組み合わせて使用することができる。
この凝集・融着工程における造核剤粒子/結晶性ポリエステル樹脂微粒子の添加割合(質量比)は、好ましくは0.1〜20であり、より好ましくは0.2〜5である。かような範囲であれば、得られるトナーが耐熱保管性に優れ、また低温定着性に優れる。
この凝集・融着工程における非晶性ポリエステル樹脂微粒子/結晶性ポリエステル樹脂微粒子の添加割合(質量比)は、好ましくは1〜100である。かような範囲であれば、得られるトナーが耐熱保管性に優れ、また低温定着性に優れる。
なお、トナー粒子中に他の内添剤を導入する場合は、この凝集・融着工程の前に内添剤のみよりなる内添剤微粒子の分散液を調製し、この凝集・融着工程において結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液および非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液と共に当該内添剤微粒子の分散液を混合する方法が好ましい。
また、コア・シェル粒子とする場合には、コア粒子分散液(造核剤粒子の分散液、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液等)中に、シェル用の樹脂粒子(非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液)を添加してコア粒子表面にシェル用の樹脂粒子を凝集、融着させてコアシェル構造のトナー母体粒子を形成するシェル化工程、コアシェル構造のトナー母体粒子を熱エネルギーにより熟成して、コアシェル構造のトナー母体粒子の形状を調整する第2の熟成工程などを経て形成することができる。
(4)冷却工程
融合後に冷却し、融合粒子を得る。また冷却の工程で、結晶性ポリエステル樹脂の融点から5〜20℃低い温度にて30分以上保持した後、5℃/分より速い速度で0〜45℃まで冷却することが好ましい。すなわち、冷却工程は、融点から5〜20℃低い温度にて30分以上保持する保持工程(以下、単に保持工程とする)と、5℃/分より速い速度で0〜45℃まで冷却する冷却工程(以下、単に冷却工程とする)とを含む。一定時間保持した後、急冷をすることで保持工程で形成した結晶性ポリエステルや離型剤の均一なドメインを維持することが可能であるため、耐熱保存性や分離性に優れる。
融合して得た融合粒子は、ろ過などの固液分離工程や、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程を経てトナー粒子とすることができる。
保持工程における保持時間の上限は特に限定されるものではないが、生産性の観点から10時間以下であることが好ましい。保持時間はより好ましくは0.5〜3時間である。
冷却速度はより好ましくは1.0〜7.0℃/分である。
さらに、トナーの製造方法においては、下記(5)濾過・洗浄工程、(6)乾燥工程、(7)外添剤添加工程を含んでいてもよい。
(5)濾過・洗浄工程
この濾過・洗浄工程では、得られたトナー粒子の分散液を冷却して冷却後のスラリーとし、この冷却されたトナー粒子の分散液から、水等の溶媒を用いて、トナー粒子を固液分離してトナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。具体的な固液分離および洗浄の方法としては、遠心分離法、アスピレータ、ヌッチェなどを使用する減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用する濾過法などが挙げられ、これらは特に限定されるものではない。この濾過・洗浄工程においては適宜、pH調製や粉砕などを行ってもよい。このような操作は繰り返し行ってもよい。
(6)乾燥工程
この乾燥工程では、洗浄処理されたトナー粒子に乾燥処理が施される。この乾燥工程で使用される乾燥機としては、オーブン、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などが挙げられ、これらは特に限定されるものではない。なお、乾燥処理されたトナー粒子中のカールフィッシャー電量滴定法にて測定される水分量は、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
また、乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集して凝集体を形成している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、コーミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサーなどの機械式の解砕装置を使用することができる。
(7)外添剤添加工程
この外添剤添加工程は、乾燥処理されたトナー粒子に、流動性、帯電性の改良およびクリーニング性の向上などの目的で、荷電制御剤や種々の無機微粒子、有機微粒子、または滑剤などの外添剤を添加する工程であって、必要に応じて行われる。外添剤を添加するために使用される装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機、サンプルミルなどの種々の公知の混合装置を挙げることができる。また、トナーの粒度分布を適当な範囲とするため、必要に応じ篩分級を行ってもよい。
以上のような製造方法によれば、基本的に高画質の画像を形成することができ、さらに、優れた低温定着性を有しながら優れた耐高温オフセット性を有し、しかも、優れた機械的強度を有するトナーを少ない製造負荷で容易に製造することができる。
<現像剤>
以上のようなトナーは、例えば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが考えられ、いずれも好適に使用することができる。
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子を用いることが好ましい。
キャリアとしては、その体積平均粒径としては15〜100μmのものが好ましく、25〜60μmのものがより好ましい。キャリアの体積平均粒径(体積基準メディアン径)は、実施例に記載の方法により測定することができる。
キャリアとしては、さらに樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。被覆用の樹脂組成としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン系樹脂、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレートの共重合体、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂あるいはフッ素含有重合体系樹脂などが用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール系樹脂など使用することができる。
<画像形成方法>
以上のトナーは、接触加熱方式による定着工程を含む画像形成方法に好適に用いることができる。画像形成方法としては、具体的には、以上のようなトナーを使用して、例えば像担持体上に静電的に形成された静電潜像を、現像装置において現像剤を摩擦帯電部材によって帯電させることにより顕在化させてトナー像を得、このトナー像を記録材に転写し、その後、記録材上に転写されたトナー像を接触加熱方式の定着処理によって記録材に定着させることにより、可視画像が得られる。つまり、本発明のトナーは静電荷像現像用に用いられる。
<定着方法>
本発明のトナーを使用する好適な定着方法としては、いわゆる接触加熱方式のものを挙げることができる。接触加熱方式としては、特に熱圧定着方式、さらには熱ロール定着方式および固定配置された加熱体を内包した回動する加圧部材により定着する圧接加熱定着方式を挙げることができる。
熱ロール定着方式の定着方法においては、通常、表面にフッ素樹脂などが被覆された鉄やアルミニウムなどよりなる金属シリンダー内部に熱源が備えられた上ローラと、シリコーンゴムなどで形成された下ローラとから構成された定着装置が用いられる。
熱源としては、線状のヒータが用いられ、このヒータによって上ローラの表面温度が120〜200℃程度に加熱される。上ローラおよび下ローラ間には圧力が加えられており、この圧力によって下ローラが変形されることにより、この変形部にいわゆるニップが形成される。ニップの幅は1〜10mm、好ましくは1.5〜7mmとされる。定着線速は40mm/sec〜600mm/secとされることが好ましい。ニップの幅が過小である場合には、熱を均一にトナーに付与することができなくなり、定着ムラが発生する虞があり、一方、ニップ幅が過大である場合には、トナー粒子に含有されるポリエステル樹脂の溶融が促進され、定着オフセットが発生する虞がある。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の態様に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
以下、本発明の代表的な実施形態を示し、本発明につきさらに説明するが、無論、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではない。なお、実施例中において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
<測定方法>
(数平均分子量(Mn)の測定)
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)(ポリスチレン換算)は、GPC装置として、東ソー(株)製HLC−8120GPC、SC−8020装置を用い、カラムはTSKgei,SuperHM−H(6.0mmID×15cm×2)を用い、溶離液として和光純薬社製クロマトグラフ用THF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、IR検出器を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:A−500、F−1、F−10、F−80、F−380、A−2500、F−4、F−40、F−128、F−700の10サンプルから作製した。また試料解析におけるデータ収集間隔は300msとした。
(樹脂粒子、着色剤粒子等の平均粒径、体積平均粒径)
樹脂粒子、着色剤粒子等の平均粒径または体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)で測定した。
(結晶性ポリエステル樹脂の吸熱ピーク温度および非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg))
結晶性ポリエステル樹脂の吸熱ピーク温度および非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量計(島津製作所製:DSC−60A)を用いて得た。この装置(DSC−60A)の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いた。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/分で昇温し、200℃で5分間ホールドし、200℃から0℃まで液体窒素を用いて−10℃/分で降温し、0℃で5分間ホールドし、再度0℃から200℃まで10℃/分で昇温を行った。2度目の昇温時の吸熱曲線から解析をおこない、非晶性樹脂についてはオンセット温度をTgとし、結晶性ポリエステル樹脂については極大ピークより吸熱ピーク温度(融解温度Tc)とした。
(実施例1)
<造核剤粒子分散液の調製>
(1)非晶性ポリエステル樹脂の製造
ビスフェノールAエチレンオキサイド2.2モル付加物 50モル%
フマル酸 50モル%
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、窒素雰囲気下100℃で1時間重縮合を実施したところ、均一透明な非晶性ポリエステル樹脂を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂のGPCによる数平均分子量(Mn)は1,500、DSCによるガラス転移温度Tgが35℃、フローテスターによる軟化温度が85℃、酸価AVが8.4mgKOH/gであった。
(2)結晶性ポリエステル樹脂の製造
1,6−ヘキサンジオール 55モル%
セバシン酸 50モル%
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、オクチル酸スズを前記モノマー成分100質量部に対して0.25質量部投入した。窒素ガス気流下、170℃で3時間攪拌反応させた後、温度をさらに210℃まで1時間かけて昇温し、反応容器内を3kPaまで減圧し、減圧下で13時間攪拌反応させて、結晶性ポリエステル樹脂を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂は、DSCによる融解温度Tcが67℃、GPCによる数平均分子量(Mn)が5,500、酸価AVが10.1mgKOH/gであった。
(3)造核剤樹脂の製造
上記ポリエステル樹脂2種を100℃にて非晶性ポリエステル樹脂:結晶性ポリエステル樹脂=100:1000(質量比)で混合して、撹拌機を備えたリアクターにて2時間加熱することにより、ポリエステルブロック共重合体を形成した。ポリエステルブロック共重合体としてのDSCによるガラス転移温度(オンセット)は35℃であり、融点は65℃であった。また、GPCによる数平均分子量(Mn)は12,000であった。
(4)造核剤粒子分散液の調製
(3)で得られた樹脂100部に界面活性剤としてソフト型ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部を加え、さらにイオン交換水300部を加え、80℃に加熱しながら丸型ガラス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で十分に混合・分散した。その後、さらに0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを5.0に調整した後、ホモジナイザーによる撹拌を継続しながら90℃まで加熱してポリエステルブロック共重合体の造核剤粒子分散液を得た。造核剤粒子の平均径が200nm、固形分量が20%の造核剤粒子分散液を得た
<結晶性ポリエステル樹脂分散液(PC1)の調製>
(1)結晶性ポリエステル樹脂(C1)の合成>
1,6−ヘキサンジオール 50モル%
セバシン酸 50モル%
攪拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に上記モノマー成分を入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、チタンテトラブトキサイド(試薬)を前記モノマー成分100質量部に対して0.25質量部投入した。窒素ガス気流下、170℃で3時間攪拌反応させた後、温度をさらに210℃まで1時間かけて昇温し、反応容器内を3kPaまで減圧し、減圧下で13時間攪拌反応させて、結晶性ポリエステル樹脂(C1)を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂(C1)は、DSCによる融解温度Tcが73.6℃、GPCによる数平均分子量(Mn)が10500、酸価AVが10.1mgKOH/gであった。
(2)結晶性ポリエステル樹脂分散液(PC1)の調製
コンデンサー、温度計、水滴下装置、アンカー翼を備えたジャケット付き3リットル反応槽(東京理化器械株式会社製:BJ−30N)に、前記結晶性ポリエステル樹脂(PC1)300質量部と、メチルエチルケトン(溶剤)160質量部と、イソプロピルアルコール(溶剤)100質量部とを入れ、水循環式恒温槽にて70℃に維持しながら、100rpmで攪拌混合しつつ樹脂を溶解させた〔溶解液調製工程〕。
その後攪拌回転数を150rpmにし、水循環式恒温槽を66℃に設定し、10質量%アンモニア水(試薬)17質量部を10分間かけて投入した後、66℃に保温されたイオン交換水を7質量部/分の速度で、合計900質量部滴下し転相させて、乳化液を得た。
すぐに、得られた乳化液800質量部とイオン交換水700質量部とを2リットルのナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレーター(東京理化器械株式会社)にセットした。ナスフラスコを回転させながら、60℃の湯バスで加温し、突沸に注意しつつ7kPaまで減圧し溶剤を除去した。溶剤回収量が1100質量部になった時点で常圧に戻し、ナスフラスコを水冷して分散液を得た。得られた分散液に溶剤臭は無かった。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径D50vは130nmであった。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20質量%になるように調整し、これを結晶性ポリエステル樹脂分散液(PC1)とした。
<非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA1)の調製>
(1)非晶性ポリエステル樹脂(A1)の合成
ビスフェノールAエチレンオキサイド2.2モル付加物 10モル%
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2.2モル付加物 40モル%
テレフタル酸 22モル%
フマル酸 15モル%
ドデセニルコハク酸無水物 11モル%
トリメリット酸無水物 2モル%
攪拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、上記モノマー成分のうちフマル酸とトリメリット酸無水物以外と、ジオクタン酸スズを上記モノマー成分の合計100質量部に対して0.25質量部投入した。窒素ガス気流下、235℃で6時間反応させた後、200℃に降温して、上記フマル酸とトリメリット酸無水物を投入し1時間反応させた。温度をさらに220℃まで4時間かけて昇温し、10kPaの圧力下で所望の分子量になるまで重合させ、淡黄色透明な非晶性ポリエステル樹脂(A1)を得た。
得られた非晶性ポリエステル樹脂(A1)は、DSCによるガラス転移温度Tgが59℃、GPCによる数平均分子量(Mn)が7000、フローテスターによる軟化温度が106℃、酸価AVが11mgKOH/gであった。
(2)非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(PA1)の調製
コンデンサー、温度計、水滴下装置、アンカー翼を備えたジャケット付き3リットル反応槽(東京理化器械株式会社製:BJ−30N)を水循環式恒温槽にて40℃に維持しながら、該反応槽に酢酸エチル160質量部とイソプロピルアルコール100質量部との混合溶剤を投入し、これに上記非晶性ポリエステル樹脂(A1)を300質量部投入して、スリーワンモーターを用い150rpmで攪拌を施し、溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に10質量%アンモニア水溶液を、滴下時間5分間で14質量部滴下し、10分間混合した後、更にイオン交換水900質量部を毎分7質量部の速度で滴下して転相させて、乳化液を得た。
すぐに、得られた乳化液800質量部とイオン交換水700質量部とを2リットルのナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレーター(東京理化器械株式会社)にセットした。ナスフラスコを回転させながら、60℃の湯バスで加温し、突沸に注意しつつ7kPaまで減圧し溶剤を除去した。溶剤回収量が1100質量部になった時点で常圧に戻し、ナスフラスコを水冷して分散液を得た。得られた分散液に溶剤臭は無かった。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径D50vは130nmであった。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20質量%になるように調整し、これを非晶性ポリエステル樹脂分散液(PA1)とした。
<離型剤分散液(W1)の調製>
炭化水素系ワックス(日本精鑞社製、商品名:FNP0090、融解温度Tw=90.2℃):270質量部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンRK、有効成分量:60質量%):13.5質量部(有効成分として、離型剤に対して3.0質量%)
イオン交換水:21.6質量部
上記成分を混合し、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製、ゴーリンホモジナイザ)で、内液温度120℃にて離型剤を溶解した後、分散圧力5MPaで120分間、続いて40MPaで360分間分散処理し、冷却して、離型剤分散液(W1)を得た。この離型剤分散液中の粒子の体積平均粒径D50vは225nmであった。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20.0質量%になるように調整した。
<着色剤分散液(M1)の調製>
シアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3):200質量部
アニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンSC):33質量部(有効成分60質量%。着色剤に対して10質量%)
イオン交換水: 750質量部
上記成分を全て投入した際に液面の高さが容器の高さの1/3程度になる大きさのステンレス容器に、上記イオン交換水のうち280質量部と上記アニオン系界面活性剤を入れ、温度40℃に加温して充分に界面活性剤を溶解させた後25℃に冷却し、上記オレンジ顔料全てを投入し、攪拌器を用いて、濡れていない顔料が無くなるまで攪拌するとともに、充分に脱泡させた。
脱泡後に残りのイオン交換水を加え、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、5000回転で10分間分散した後、攪拌器で一昼夜攪拌させて脱泡した。脱泡後、再度ホモジナイザーを用いて、6000回転で10分間分散した後、攪拌器で一昼夜攪拌させて脱泡した。続けて、分散液を高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン社製、HJP30006)を用いて、圧力240MPaで分散した。分散は、トータル仕込み量と装置の処理能力とから換算して25パス相当行った。
得られた分散液を72時間放置して沈殿物を除去し、イオン交換水を加えて、固形分濃度を15質量%になるように調整した。得られた着色剤分散液中の粒子の体積平均粒径D50Vは165nmであり、250nm以上の粗粉は観測されなかった。なお、該体積平均粒径D50Vは、マイクロトラックにて5回測定した内の、最大値と最小値を除いた3回の測定値の平均値を用いた。この着色剤分散液を(M1)とする。
<硫酸アルミニウム水溶液(SA)の調製>
硫酸アルミニウム粉末(浅田化学工業株式会社製:17%硫酸アルミニウム):35質量部
イオン交換水:1965質量部
上記成分を2リットル容器へ投入し、30℃にて、沈殿物が消失するまで攪拌混合して硫酸アルミニウム水溶液を調製した。
<トナー(TC1)の調製>
非晶性ポリエステル樹脂分散液(PA1):700質量部
結晶性ポリエステル樹脂分散液(PC1):300質量部
着色剤分散液(M1):128質量部
造核剤粒子分散液:128質量部
離型剤分散液(W1):128質量部
イオン交換水: 300質量部
アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、Dowfax2A1):6.5質量部
上記成分を、温度計、pH計、攪拌器を具備した3リットルの反応容器に入れ、温度25℃にて、0.3M硝酸を加えてpHを3.0にした後、ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)にて5000rpmで分散しながら、調製した硫酸アルミニウム水溶液(SA)を130質量部添加して6分間分散した。
その後、反応容器に攪拌器、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌されるように攪拌器の回転数を調整しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、ベックマン−コールター社製)にて粒径を測定した。体積平均粒径が5.0μmになったところで4質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、5℃ごとにpHが9.0になるように同様にして調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、90℃で保持した。15分ごとに光学顕微鏡と走査電子顕微鏡(FE−SEM)にて粒子形状および表面性を観察したところ、2.0時間目で粒子の合一が確認されたので、冷却水にて容器を57℃まで冷却して2時間保持した。その後、30℃まで5分間かけて冷却した(冷却速度5.4℃/分)。
冷却後のスラリーを、目開き15μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粉を除去し、メッシュを通過したトナースラリーに、硝酸を加えてpH6.0に調整した後、アスピレータで減圧ろ過した。ろ紙上に残ったトナーを手でできるだけ細かく砕いて、温度30℃でトナー量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合した後、再度アスピレータで減圧ろ過し、ろ液の電気伝導度を測定した。ろ液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、トナーを洗浄した。
洗浄されたトナーを湿式乾式整粒機(コーミル)で細かく砕いてから、35℃のオーブン中で36時間真空乾燥して、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子100質量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製、RY50)1.0質量部を加え、サンプルミルを用いて13000rpmで30秒間混合ブレンドした。その後、目開き45μmの振動篩いで篩分して、シアントナー(TC1)を得た。
得られたシアントナー(TC1)は、体積平均粒径D50vが6.0μm、平均円径度が0.960(シスメックス株式会社製、FPIA−3000)であった。尚、トナーのSEM画像を観察したところ、滑らかな表面を持ち、離型剤の突き出しや表面層の剥がれなどの不具合は見られなかった。
<樹脂被覆キャリア(C)の調製>
・Mn−Mg−Sr系フェライト粒子(平均粒径40μm): 100質量部
・トルエン: 14質量部
・シクロヘキシルメタアクリレート/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体(共重合重量比99:1、Mw8万):2.0質量部
・カーボンブラック(VXC72:キャボット製):0.12質量部
フェライト粒子を除く上記成分及びガラスビーズ(φ1mm、トルエンと同量)を、関西ペイント社製サンドミルを用いて1200ppmで30分間攪拌し、樹脂被覆層形成用溶液と得た。さらに、この樹脂被覆層形成用溶液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れ、減圧し、トルエンを留去して乾燥することにより、樹脂被覆キャリア(C)を調製した。
<シアン現像剤(DC1)の調製>
上記樹脂被覆キャリア(C)500質量部に対して、前記オレンジトナー(TC1)40質量部を加え、V型ブレンダーで20分間ブレンドした後、目開き212μmの振動ふるいにより凝集体を除去して、シアン現像剤(DC1)を調製した。
(実施例2)
下記のように製造された結晶性ポリエステル樹脂を結晶性セグメントとして用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシアン現像剤(DC2)を調製した。
(2)結晶性ポリエステル樹脂の製造
1,6−ヘキサンジオール 50モル%
アジピン酸 50モル%
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、オクチル酸スズを前記モノマー成分100質量部に対して0.25質量部投入した。窒素ガス気流下、170℃で3時間攪拌反応させた後、温度をさらに210℃まで1時間かけて昇温し、反応容器内を3kPaまで減圧し、減圧下で13時間攪拌反応させて、結晶性ポリエステル樹脂を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂は、DSCによる融解温度Tcが65℃、GPCによる数平均分子量(Mn)が7,000、酸価AVが5.8mgKOH/gであった。
(3)造核剤樹脂の製造
上記ポリエステル樹脂2種を100℃にて非晶性ポリエステル樹脂:結晶性ポリエステル樹脂=100:1500(質量比)で混合して、撹拌機を備えたリアクターにて2時間加熱することにより、ポリエステルブロック共重合体を形成した。ポリエステルブロック共重合体としてのDSCによるガラス転移温度(オンセット)は50℃であり、融点は65℃であった。また、GPCによる数平均分子量(Mn)は9400であった。
(実施例3)
下記のように製造された結晶性ポリエステル樹脂を結晶性セグメントとして用いたこと以外は、実施例1と同様にしてシアン現像剤(DC3)を調製した。
(2)結晶性ポリエステル樹脂の製造
1,4−ブタンジオール 50モル%
コハク酸 50モル%
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、オクチル酸スズを前記モノマー成分100質量部に対して0.25質量部投入した。窒素ガス気流下、170℃で3時間攪拌反応させた後、温度をさらに210℃まで1時間かけて昇温し、反応容器内を3kPaまで減圧し、減圧下で13時間攪拌反応させて、結晶性ポリエステル樹脂を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂は、DSCによる融解温度Tcが60℃、GPCによる数平均分子量(Mn)が6,500、酸価AVが7.7mgKOH/gであった。
(3)造核剤樹脂の製造
上記ポリエステル樹脂2種を100℃にて非晶性ポリエステル樹脂:結晶性ポリエステル樹脂=100:1400(質量比)で混合して、撹拌機を備えたリアクターにて2時間加熱することにより、ポリエステルブロック共重合体を形成した。ポリエステルブロック共重合体としてのDSCによるガラス転移温度(オンセット)は50℃であり、融点は65℃であった。また、GPCによる数平均分子量(Mn)は10500であった。
(比較例1)
実施例1の造核剤粒子分散液を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較シアン現像剤(DC1’)を調製した。
(比較例2)
下記のように製造された結晶性ポリエステル樹脂を結晶性セグメントとして用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較シアン現像剤(DC2’)を調製した。
(2)結晶性ポリエステル樹脂の製造
1,6−ヘキサンジオール 50モル%
セバシン酸 50モル%
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、オクチル酸スズを前記モノマー成分100質量部に対して0.25質量部投入した。窒素ガス気流下、170℃で3時間攪拌反応させた後、温度をさらに210℃まで1時間かけて昇温し、反応容器内を3kPaまで減圧し、減圧下で13時間攪拌反応させて、結晶性ポリエステル樹脂を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂は、DSCによる融解温度Tcが80℃、GPCによる数平均分子量(Mn)が15,000、酸価AVが4mgKOH/gであった。
(3)造核剤樹脂の製造
上記ポリエステル樹脂2種を100℃にて非晶性ポリエステル樹脂:結晶性ポリエステル樹脂=100:2000(質量比)で混合して、撹拌機を備えたリアクターにて2時間加熱することにより、ポリエステルブロック共重合体を形成した。ポリエステルブロック共重合体としてのDSCによるガラス転移温度(オンセット)は50℃であり、融点は65℃であった。また、GPCによる数平均分子量(Mn)は18,000であった。
(比較例3)
下記のように製造された非晶性ポリエステル樹脂を非晶性セグメントとして用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較シアン現像剤(DC3’)を調製した。
(1)非晶性ポリエステル樹脂の製造
ビスフェノールAエチレンオキサイド2.2モル付加物 50モル%
フマル酸 50モル%
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、窒素雰囲気下100℃で1時間重縮合を実施したところ、均一透明な非晶性ポリエステル樹脂を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂のGPCによる数平均分子量(Mn)は4,500、DSCによるガラス転移温度Tgが40℃、フローテスターによる軟化温度が82℃、酸価AVが15mgKOH/gであった。
(3)造核剤樹脂の製造
上記ポリエステル樹脂2種を100℃にて非晶性ポリエステル樹脂:結晶性ポリエステル樹脂=100:900(質量比)で混合して、撹拌機を備えたリアクターにて2時間加熱することにより、ポリエステルブロック共重合体を形成した。ポリエステルブロック共重合体としてのDSCによるガラス転移温度(オンセット)は50℃であり、融点は65℃であった。また、GPCによる数平均分子量(Mn)は5,000であった。
(比較例4)
表1に記載の結晶性セグメントからなる化合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較シアン現像剤(DC4’)を調製した。
(比較例5)
下記のように製造された結晶性ポリエステル樹脂を結晶性セグメントとして用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較シアン現像剤(DC5’)を調製した。
(2)結晶性ポリエステル樹脂の製造
1,6−ヘキサンジオール 50モル%
ヘキサデカン二酸 50モル%
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、オクチル酸スズを前記モノマー成分100質量部に対して0.25質量部投入した。窒素ガス気流下、170℃で3時間攪拌反応させた後、温度をさらに210℃まで1時間かけて昇温し、反応容器内を3kPaまで減圧し、減圧下で13時間攪拌反応させて、結晶性ポリエステル樹脂を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂は、DSCによる融解温度Tcが75℃、GPCによる数平均分子量(Mn)が8,000、酸価AVが8mgKOH/gであった。
(3)造核剤樹脂の製造
上記ポリエステル樹脂2種を100℃にて非晶性ポリエステル樹脂:結晶性ポリエステル樹脂=100:1000(質量比)で混合して、撹拌機を備えたリアクターにて2時間加熱することにより、ポリエステルブロック共重合体を形成した。ポリエステルブロック共重合体としてのDSCによるガラス転移温度(オンセット)は50℃であり、融点は65℃であった。また、GPCによる数平均分子量(Mn)は20,000であった。
<評価方法>
〔低温定着性〕
複写機「bizhub PRO C6550」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)において、定着装置を、加熱ローラの表面温度(定着温度)を120〜200℃の範囲で変更することができるように改造したものを用い、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、A4サイズの上質紙上に、トナー付着量10mg/cm2 のベタ画像を定着させる定着実験を、設定される定着温度を120℃から5℃刻みで増加させるように変更しながら200℃まで繰り返し行った。
目視で低温オフセットによる画像汚れが観察されない定着実験のうち、最低の定着温度に係る定着実験の当該定着温度を、最低定着温度として評価した。結果を表3に示す。なお、下限定着温度が140℃以下であるものを合格(○)と判断する。
〔耐熱保管性〕
上記のトナーについて、それぞれ、トナー0.5gを内径21mmの10mLガラス瓶に取り、蓋を閉めてタップデンサー「KYT−2000」(セイシン企業社製)で室温にて600回振とうした後、蓋を取った状態で温度55℃、湿度35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、トナーを48メッシュ(日開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物を解砕しないよう注意しながら載せて、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmの振動強度に調整し、10秒間振動を加えた後、篩上の残存した残存トナー量を測定し、下記式(3)によりトナー凝集率を算出し、これにより評価した。結果を表3に示す。
式(3):トナー凝集率(質量%)={残存トナー量(g)/0.5(g)}×100
なお、トナー凝集率が15質量%未満である場合が優良(○)、15質量%以上20質量%以下である場合が良好(△)として判断され、20質量%を超える場合は、本発明の基準を満たさず、不合格(×)と判断される。
〔分離性〕
複写機「bizhub PRO C6550」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)において、定着装置を、加熱ローラの表面温度(定着温度)を最低定着温度+10℃に設定し、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、A4サイズの上質紙上に、先端余白を5mmの全面ベタ画像を定着させる定着実験を、トナー付着量2.0g/cm2から0.5g・cm2刻みで増加させるように変更しながら繰り返し行った。
○:3.5g/cm2以上で定着器にて巻きつきを発生せず通紙可能であるもの
△:1.5〜3.5g/cm2で定着器にて巻きつきを発生せず通紙可能であるもの
×:1.5g/cm2未満でも定着器にて巻きつきを発生して通紙不可能であるもの
〔トナー製造性〕
トナー製造時、冷却後のトナースラリーを減圧濾過した濾液の色が、透明な場合は○、結晶性ポリエステルがメイン樹脂から濾液に一部吐き出されて白濁している場合を×とした。
以上の結果より、実施例1〜3のトナーを用いた場合、低温定着性に優れ、かつ耐熱保存性および分離性にも優れていた。また、トナーの製造性にも優れていた。一方、比較例1および4のトナーを用いた場合、低温定着性には優れているものの、耐熱保存性、分離性およびトナーの製造性が低下していた。比較例3のトナーを用いた場合、低温定着性には優れているものの、耐熱保存性、分離性が低下していた。また、比較例2および5のトナーを用いた場合、低温定着性が顕著に低下し、また耐熱保存性および分離性も十分なものではなかった。