JP2020086032A - トナーおよびトナーの製造方法 - Google Patents

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ひとみ 茂谷
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Kaori Matsushima
香織 松島
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Abstract

【課題】低温定着性、耐熱保管性、現像性、転写性に優れ、画像の光沢ムラの発生が抑制されるトナーを提供する。【解決手段】少なくとも結着樹脂と結晶性ポリエステル樹脂と着色剤と離型剤を含有し、トナーの体積平均粒径が4〜8μmの範囲であり、トナー断面の円相当径が4〜8μmの範囲であるトナー断面画像に離型剤ドメインが存在しており、離型剤ドメインの重心とトナー断面の重心との距離Aとトナー断面の円相当径との比(距離A/円相当径)を0から0.05刻み毎の領域に分割した際に、比が0.25以上0.3以下である領域で離型剤ドメインの個数頻度が最も高い値となり、かつこの領域における離型剤ドメインの個数頻度が20%以上である、トナーを構成する。【選択図】図1

Description

本発明は、トナーおよびトナーの製造方法に関する。
少量多品種化が進んでいるPOD(オンデマンド印刷)市場や、省エネ化が求められるオフィス用複写機市場等において、高速印刷や省エネに対応する静電潜像用トナーには、高い印刷速度や、低電力でも瞬時にトナーを定着する低温定着性が、求められる(例えば、特許文献1を参照)。
特開2017−102399号公報
ところが、トナーの低温定着性を向上するために、トナーの樹脂を低溶融化すると、トナーもしくは二成分現像剤を高温高湿環境で保管した際に、トナーの樹脂や離型剤が溶融して、トナー凝集が発生し、耐熱保管性が悪化する場合がある。
また、高温高湿環境では、保管時に発生した凝集物や印刷時に現像機内で攪拌されているトナーの表層にトナー中の離型剤等の成分のブリードアウトが発生すると、現像ローラ上のトナーを感光体へ現像する工程や感光体上のトナーを転写ベルトや記録媒体へ転写する工程において、ブリードアウトにより発生した凝集物により電荷がリークし、現像性、転写性等が悪化することがある。
また、低溶融のトナーでは、表面の凹凸の大きい記録媒体に画像形成したときに、定着部で記録媒体にかかる圧力の違いにより、画像の光沢ムラが発生することがある。
また、定着時や画像搬送時に、定着部材や画像搬送部材等によって、定着画像に押圧がかかったときに、光沢ムラが発生する等の問題がある。
本発明においては、低温定着性、耐熱保管性、現像性、転写性に優れ、画像の光沢ムラの発生が抑制される、トナーおよびこのトナーの製造方法を提供するものである。
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂と結晶性ポリエステル樹脂と着色剤と離型剤を含有する。
そして、トナーの体積平均粒径が4〜8μmの範囲であり、トナー断面の円相当径が4〜8μmの範囲であるトナー断面画像に離型剤ドメインが存在している。
さらに、離型剤ドメインの重心とトナー断面の重心との距離Aとトナー断面の円相当径との比(距離A/円相当径)を、0から0.05刻み毎の領域に分割する。そして、比(距離A/円相当径)が0.25以上0.3以下である領域で、離型剤ドメインの個数頻度が最も高い値となり、この比(距離A/円相当径)が0.25以上0.3以下である領域における離型剤ドメインの個数頻度が20%以上である構成とする。
本発明のトナーの製造方法は、上記本発明のトナーを製造する方法であって、離型剤を含有する結着樹脂粒子分散液と、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、着色剤分散液を、それぞれ調整する工程、水系媒体と、結着樹脂粒子分散液と、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、着色剤分散液から、混合分散液を調整する工程、混合分散液を凝集する工程、混合分散液を凝集して得られた粒子を融着する工程、をそれぞれ有する。
本発明のトナーによれば、離型剤ドメインが、比(距離A/円相当径)が0.25以上0.3以下である領域に、即ち、トナー重心とトナー表面の中間部に、多く存在する。
これにより、定着時にトナーが溶融した際に、離型剤がトナーの溶融を促進しやすく、低温定着性が向上する。
本発明の製造方法によれば、混合分散液を凝集して、得られた粒子を融着することにより、本発明のトナーの粒子を、容易に作製することができる。
トナー重心と離型剤ドメインの重心の距離Aを説明する概略構成図である。 トナー断面がほぼ円形である場合の距離A/円相当径の比の値の範囲を示す図である。
以下、本発明とその構成要素、および本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂と結晶性ポリエステル樹脂と着色剤と離型剤を含有する。そして、トナーの体積平均粒径が4〜8μmの範囲であり、トナー断面の円相当径が4〜8μmの範囲であるトナー断面画像に、離型剤ドメインが存在している。
本発明のトナーは、さらに、離型剤ドメインの重心とトナー断面の重心との距離Aとトナー断面の円相当径との比(距離A/円相当径)を、0から0.05刻み毎の領域に分割する。そして、比(距離A/円相当径)が0.25以上0.3以下である領域で、離型剤ドメインの個数頻度が最も高い値となり、この比(距離A/円相当径)が0.25以上0.3以下である領域における離型剤ドメインの個数頻度が20%以上である構成とする。
なお、本発明のトナーに係るトナー断面は、例えば、透過型電子顕微鏡でトナー断面を観察したトナー断面画像によって得ることができる。
本発明のトナーにおいて、好ましくは、比(距離A/円相当径)が0.30以上0.45以下である各領域における、離型剤ドメインの個数頻度がそれぞれ10%以上である構成とする。即ち、比が0.30以上0.35以下である領域、比が0.35以上0.40以下である領域、比が0.40以上0.45以下である領域、の3つの領域は、いずれも離型剤ドメインの個数頻度が10%以上である。
ここで、さらに好ましくは、比が0.30以上0.45以下である上記の3つの領域が、それ以外の領域(0.30以下である6つの領域、0.45以上である領域)よりも個数頻度が高い構成とする。
また、本発明のトナーにおいて、より好ましくは、比(距離A/円相当径)が0.15以上0.45以下である各領域における、離型剤ドメインの個数頻度がそれぞれ5%以上である構成とする。即ち、比が0.15以上0.45以下である、6つの領域は、いずれも離型剤ドメインの個数頻度が5%以上である。
ここで、さらに好ましくは、比が0.15以上0.45以下であるの6つの領域が、それ以外の領域(0.15以下である3つの領域、0.45以上である領域)よりも個数頻度が高い構成とする。
上記の構成を有する本発明のトナーは、静電潜像現像用トナーとして使用することができる。
本発明のトナーの製造方法は、上記本発明のトナーを製造する方法である。
そして、離型剤を含有する結着樹脂粒子分散液と、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、着色剤分散液を、それぞれ調整する工程、水系媒体と、結着樹脂粒子分散液と、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、着色剤分散液から、混合分散液を調整する工程、混合分散液を凝集する工程、混合分散液を凝集して得られた粒子を融着する工程、をそれぞれ有する。
次に、上記のトナー重心と離型剤ドメインの重心の距離Aを説明するために、トナーの概略構成図を、図1に示す。
図1では、上下方向に長い楕円形の断面形状を有する、トナー10を示している。
図1に示すように、トナー10の内部に、数個の離型剤ドメイン1が分布している。
なお、図1において、離型剤ドメイン1以外の他の成分は、図示を省略している。他の成分は、トナー10の内部のうち、離型剤ドメイン1が存在していない部分に分布している。
図1において、トナー10の重心11と、離型剤ドメイン1の重心2とを結ぶ、線分の長さを、距離Aとする。
そして、トナー10内の各離型剤ドメイン1について、それぞれ距離Aを求める。
さらに、求めた距離Aの値から、距離A/円相当径の比の値を算出して、それぞれの離型剤ドメイン1の比の値が属する0.05刻みの領域から、離型剤ドメイン1の個数頻度を求めることができる。
次に、トナー断面がほぼ円形である場合の、本発明で規定された距離A/円相当径の比の値の上述した範囲を、図2に示す。
図2では、内側から、比が0.15〜0.25である領域(0.05刻みで2つの領域)、比が0.25〜0.3である領域(0.05刻みで1つの領域)、比が0.3〜0.45である領域(0.05刻みで3つの領域)、が示されている。
このうち、本発明において、個数頻度が最も高い値となり、かつ、個数頻度が20%以上である、比が0.25〜0.3である領域は、トナー10の重心と周縁とのほぼ中間部に位置している。
なお、図2において、数字の記載されていない各領域(比が0〜0.15、0.45〜の領域)は、本発明で規定された比の値の範囲外の領域である。
また、図2に示したような、断面がほぼ円形であるトナー10では、比の値の最大値が約0.50となるが、図1に示したような、縦横比の大きいトナー10では、比の値の最大値が0.70等の大きな値となる。
本発明のトナーにおいては、離型剤ドメイン1の比(距離A/円相当径)が0.25以上0.3以下である領域で、離型剤ドメイン1の個数頻度が最も高い値となり、かつ個数頻度が20%以上である。即ち、離型剤ドメイン1が、トナー重心とトナー表面の中間部の多く存在する。
これにより、定着時にトナーが溶融した際に、離型剤がトナーの溶融を促進しやすく、低温定着性が向上する。また、トナーを記録媒体に定着する以前に離型剤がトナー表面にブリードアウトして、トナー同士が凝集し耐熱保管性が低下することを防止することが可能となる。また、トナー表面に離型剤が露出し、現像、転写時に電荷がリークし、現像性、転写性が低下することを防止することが可能になる。さらに、離型剤がトナー表面に過剰に溶出することを抑制し、定着画像への部材の押圧等により発生する光沢ムラが抑制される。
また、離型剤ドメインの比が0.30以上0.45以下である各領域における、離型剤ドメインの個数頻度が10%以上である構成とすれば、定着時にトナーが溶融した際、離型剤によるトナーの溶融がより促進しやすく、低温定着性がさらに向上する。また、離型剤が定着する前にブリードアウトすることを防止し、耐熱保管性、現像性、転写性が向上する。また、離型剤がトナー表面に過剰に溶出することを抑制し、定着画像への部材の押圧等により発生する光沢ムラが抑制される。
さらに、離型剤ドメインの比が0.15以上0.45以下である各領域における、離型剤ドメインの個数頻度が5%以上である構成とすれば、定着時にトナーが溶融した際、離型剤によるトナーの溶融がより促進しやすく、低温定着性がさらに向上する。また、離型剤が定着する前にブリードアウトすることを防止し、耐熱保管性、現像性、転写性が向上する。また、離型剤がトナー表面に過剰に溶出することを抑制し、定着画像への部材の押圧等により発生する光沢ムラが抑制される。
本発明の製造方法によれば、本発明のトナーの成分(結着樹脂、結晶性ポリエステル、着色剤)のそれぞれの粒子分散液から調整した混合分散液を、凝集または融着することにより、本発明のトナーの粒子を、容易に作製することができる。
次に、本発明のトナーの構成要件について、より詳細に説明する。
本発明のトナーは、少なくとも、結着樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、着色剤、離型剤を含有する。
まず、これらの各成分について、以下に詳細に説明する。
<結着樹脂>
本発明の静電潜像現像用トナーにおいて、結着樹脂としては、スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル共重合体樹脂、オレフィン樹脂等のビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスルホン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂等の公知の種々の樹脂を用いることができる。これらは、単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。また、結着樹脂としては、これらの樹脂を変性したものを用いることもできる。さらに、結着樹脂としては、非晶性樹脂または結晶性樹脂であってもよく、両者を併用してもよい。
なかでも、結着樹脂は、ビニル樹脂、未変性ポリエステル樹脂、および変性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。以下では、ビニル樹脂について説明する。
(ビニル樹脂)
ビニル樹脂を構成する重合性単量体としては、重合性(樹脂粒子の形成性)の観点から、下記(1)〜(9)のビニル単量体を含むことが好ましい。これらビニル単量体は、1種単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
(1)スチレンまたはスチレン誘導体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等。
(2)メタクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル誘導体
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノメタクリレート等。
(3)アクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル誘導体
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、アクリル酸3−ヒドロキシブチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノアクリレート等。
(4)オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレン等。
(5)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等。
(6)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等。
(7)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等が挙げられる。
(8)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
(9)カルボキシル基を有する単量体
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等。
(10)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリル酸またはメタクリル酸誘導体;メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩等のビニル結合を有する反応性界面活性剤等。
上記ビニル単量体の中でも、重合反応安定化の点から、(1)スチレンまたはスチレン誘導体、(2)メタクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル誘導体、(3)アクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル誘導体、(9)カルボキシル基を有する単量体、およびビニル結合を有する反応性界面活性剤が好ましい。より好ましくは、スチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩である。
ビニル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10,000〜500,000が好ましく、20,000〜200,000がより好ましい。
なお、本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて下記の条件により行う。すなわち、濃度1mg/mLになるように測定試料をテトラヒドロフランに溶解させる。溶解条件としては、室温にて超音波分散機を用いて5分間行う。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理した後、GPCへ10μL試料溶解液を注入する。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
ビニル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、0〜100℃であることが好ましく、10〜80℃であることがより好ましい。
なお、本明細書において、ビニル樹脂のガラス転移温度は、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量計(株式会社島津製作所製:DSC−60A)を用いて測定することができる。この装置(DSC−60A)の検出部の温度補正は、インジウムの融点と亜鉛の融点とを用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/分で昇温し、200℃で5分間ホールドし、200℃から0℃まで液体窒素を用いて−10℃/分で降温し、0℃で5分間ホールドし、再度0℃から200℃まで10℃/分で昇温を行い、2度目の昇温時の吸熱曲線から解析を行い、オンセット温度をTgとする。
ビニル樹脂の含有量は、トナー母体粒子の全質量に対し、5〜15質量%であることが好ましい。
ビニル樹脂の製造方法は、特に制限されず、上記単量体の重合に通常用いられる過酸化物、過硫酸塩、過硫化物、アゾ化合物等の任意の重合開始剤を用い、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、ミニエマルション法、分散重合法等、公知の重合手法により重合を行う方法が挙げられる。また、分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、たとえば、アルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステル等を挙げることができる。
<結晶性ポリエステル樹脂>
結晶性樹脂は、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
「結晶性ポリエステル樹脂」とは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)およびその誘導体と、2価以上のアルコール(多価アルコール)およびその誘導体との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、上記吸熱特性を満たす樹脂である。
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、55〜90℃であることが好ましく、60〜85℃であることが、さらにより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融点がこのような範囲であれば、結晶性ポリエステルを添加すると、結着樹脂よりも低い融点で結晶性ポリエステル樹脂が溶融するため、結着樹脂の軟化を促進し、低温定着性が向上する。なお、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。また、本明細書中、樹脂の融点は、実施例に記載の方法により測定された値を採用する。
結晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸および多価アルコールの価数としては、好ましくはそれぞれ2〜3であり、特に好ましくはそれぞれ2である。このため、以下では、価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について詳説する。
(ジカルボン酸成分)
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、必要に応じて芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジカルボン酸成分は、単独で用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、こはく酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸(テトラデカン二酸)、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等が挙げられる。中でも、カルボキシル炭素を除いた炭素数が6〜14の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、8〜12の脂肪族ジカルボン酸がより好ましく、8〜10の脂肪族ジカルボン酸がさらにより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸と共に用いることのできる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性および乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸を用いることが好ましい。
また、上記ジカルボン酸の他、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等の3価以上の多価カルボン酸、マレイン酸、フマル酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等の二重結合を有するジカルボン酸、および上記のカルボン酸化合物の無水物、あるいは炭素数1〜3のアルキルエステル等を用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するためのジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸の含有量が50構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは70構成モル%以上であり、さらに好ましくは80構成モル%以上であり、特に好ましくは100構成モル%である。ジカルボン酸成分における脂肪族ジカルボン酸の含有量が50構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を十分に確保することができる。
(ジオール成分)
ジオール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましく、必要に応じて脂肪族ジオール以外のジオールを併用してもよい。脂肪族ジオールとしては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジオール成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上用いてもよい。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。中でも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールが好ましく、炭素数5〜10の脂肪族ジオールがより好ましく、炭素数7〜9の脂肪族ジオールがさらにより好ましい。
脂肪族ジオールと共に用いることのできるジオールとしては、二重結合を有するジオール、スルホン酸基を有するジオール等が挙げられ、具体的には、二重結合を有するジオールとしては、例えば、1,4−ブテンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオール等が挙げられる。また、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール等の3価以上の多価アルコール等を用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するためのジオール成分としては、脂肪族ジオールの含有量が50構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは70構成モル%以上であり、さらに好ましくは80構成モル%以上であり、特に好ましくは100構成モル%である。ジオール成分における脂肪族ジオールの含有量が50構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を確保することができ、低温定着性に優れたトナーが得られる。
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、十分な低温定着性および優れた長期耐熱保管安定性を確実に両立して得るという観点から、3,000〜100,000であると好ましく、4,000〜50,000であるとより好ましく、5,000〜20,000であると特に好ましい。なお、本明細書中、重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載の方法により求めた値を採用する。
上記のジオール成分とジカルボン酸成分の使用比率は、ジカルボン酸成分のカルボキシル基に対するジオール成分のヒドロキシル基のモル比([OH]/[COOH])が、2.5/1〜0.5/1であることが好ましく、2/1〜1/1であることがより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等の第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属の化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;およびアミン化合物等が挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等を挙げることができる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネート等のチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレート等のチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート等のチタンキレート等を挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム等を挙げることができる。さらにアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウム等の酸化物、トリブチルアルミネート等のアルミニウムアルコキシド等を挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、トナー母体粒子中、0.5〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の重合温度は、特に限定されるものではないが、150〜250℃であることが好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂の重合時間は、特に限定されるものではないが、0.5〜15時間とすると好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
<着色剤>
本発明の静電潜像現像用トナーにおいて、着色剤としては、下記に例示するような有機または無機の各種、各色の顔料を使用することができ、必要に応じて、色ごとに2つ以上の着色剤を組み合わせて用いてもよい。
具体的には、ブラックトナー用の着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラック等を使用することができる。カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が挙げられ、また、磁性体としてはフェライト、マグネタイト等が挙げられる。
イエロートナー用の着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントイエロー2、同6、同14、同15、同16、同19、同21、同33、同44、同56、同61、同77、同79、同80、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162等が挙げられ、また、顔料としてC.I.ピグメントイエロー1、同3、同5、同11、同12、同13、同14、同15、同17、同62、同65、同73、同74、同81、同83、同93、同94、同97、同138、同139、同147、同150、同151、同154、同155、同162、同168、同174、同176、同180、同183、同185、同191等が挙げられ、これらの混合物も使用することができる。
マゼンタトナー用の着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122等が挙げられ、顔料としてC.I.ピグメントレッド2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同13、同15、同16、同21、同22、同23、同31、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同49:1、同53:1、同57:1、同60、同63、同63:1、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同146、同149、同150、同163、同166、同169、同170、同175、同176、同177、同178、同184、同185、同188、同202、同206、同207、同208、同209、同210、同222、同238、同254、同255、同266、同268、同269等が挙げられ、これらの混合物も使用することができる。
シアントナー用の着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等が挙げられ、顔料としてC.I.ピグメントブルー2、同3、同15、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同60、同62、同66等が挙げられ、これらの混合物も使用することができる。
着色剤の含有量は、トナー中、1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。
着色剤の数平均一次粒子径は、特に制限されないが、概ね10〜200nm程度が好ましい。
また、着色剤としては、表面改質されたものを使用することもできる。表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を用いることができる。
<離型剤>
本発明に係るトナーは、離型剤を含む。
離型剤としては特に制限されず、公知の種々のワックスが用いられる。具体例としては、たとえば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトン等のジアルキルケトン系ワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘニル、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等のエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等のアミド系ワックス等を用いることができる。
離型剤の含有量は、トナー中、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。離型剤の添加量が0.1質量%以上であれば、定着部材と画像の剥離不良による画像欠陥の抑制の点で好ましい。また、離型剤の添加量が30質量%以下であれば、良好な画質を得ることができる点で好ましい。
〔トナー粒子の粒径〕
本発明の静電潜像現像用トナーにおいて、トナー粒子の粒径については、体積平均粒径が4〜8μmであると好ましく、4〜7μmであることがより好ましい。
このような範囲であれば、細線の再現性や、写真画像の高画質化が達成できると共に、トナーの消費量を、大粒径トナーを用いた場合に比して削減することができる。また、トナーの流動性も確保できる。トナーの体積平均粒径は、後述のトナーの製造時の凝集・融着工程における凝集剤の濃度や溶剤の添加量、または融着時間、さらには樹脂成分の組成等によって制御することができる。
トナーの体積平均粒子径は、コールターカウンターマルチサイザー3(ベックマン・コールター株式会社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター株式会社製)を接続した装置を用いて測定、算出することができる。
測定手順としては、まず、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20mlで馴染ませる。その後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を作製する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター株式会社製)の入ったビーカーに、測定器表示濃度が5%〜10%になるまでピペットにて注入する。この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値が得られる。測定器において、測定粒子カウント数を25,000個、アパーチャ−径を100μmに設定し、測定範囲である2.0〜60μmの範囲を256分割して頻度値を算出し、体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準のメジアン径(体積D50%径)とする。
〔トナー母体粒子の製造方法〕
本発明のトナーを製造する際には、トナー母体粒子を、例えば、乳化凝集法によって製造することができる。
本発明に係るトナー母体粒子を、乳化凝集法によって製造する場合の製造方法は、例えば、結晶性樹脂微粒子を含む分散液(a)および非晶性樹脂微粒子を含む分散液(b)を水系媒体に添加して混合分散液を調製する工程と、混合分散液を昇温して非晶性樹脂微粒子および結晶性樹脂微粒子を凝集かつ融着させてトナー母体粒子を形成する工程と、を含む。なお、本明細書において、「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものを言い、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができる。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶剤を使用することが好ましい。好ましくは、水系媒体として水のみを使用する。
上記製造方法は、例えば、以下の各工程を含む構成とすることができる。ここで、以下の例は、結晶性樹脂微粒子が結晶性ポリエステル樹脂微粒子であり、さらにトナー母体粒子が着色剤を含有するものである場合について記載したものであり、本発明の技術的範囲がこれらの形態に限定されるわけではない。
(1)着色剤粒子が分散されてなる着色剤粒子分散液の調製工程、
(2)結晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解し、水系分散媒中に乳化分散させ、有機溶媒を除去することにより結晶性ポリエステル樹脂微粒子を含む分散液を調製する、分散液(a)の調製工程、
(3)離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子を含む分散液(b)を調製する、分散液(b)の調製工程、
(4)上記(1)〜(3)で調製した各分散液を水系媒体に添加して混合分散液を調製する、混合分散液の調製工程、
(5)上記(4)で調製した混合分散液を昇温して非晶性樹脂微粒子および結晶性樹脂微粒子を凝集させてトナー母体粒子を形成する凝集粒子形成工程、
(6)上記(5)で形成された凝集粒子を熱エネルギーにより融着させて形状を制御し、トナー母体粒子を得る融着工程、
(7)トナー母体粒子の分散液を冷却する冷却工程、
(8)水系媒体からトナー母体粒子を濾別し、当該トナー母体粒子から界面活性剤等を除去する濾過・洗浄工程、
(9)洗浄されたトナー母体粒子を乾燥する乾燥工程。
上述した各工程を実施するにあたっては、従来公知の知見が適宜参照されうる。
例えば、上述した結晶性樹脂微粒子を含む分散液(a)や、非晶性樹脂微粒子を含む分散液(b)については、機械的せん断力によって乳化させる方法等の種々の乳化方法を用いて調製することができるが、転相乳化法と称される手法を用いて調製することが好ましい。特に、分散液(a)については、転相乳化法により調製されたものを用いると、ポリエステルのカルボキシル基の安定性を変化させることによって油滴を均一分散させることができ、機械乳化法のように無理矢理せん断力で分散させない点で優れている。「転相乳化法」では、有機溶媒に樹脂を溶解し、樹脂溶解液を得る溶解工程と、樹脂溶解液に中和剤を投入する中和工程と、中和後の樹脂溶解液を水系分散媒中に乳化分散させ、樹脂乳化液を得る乳化工程と、樹脂乳化液から有機溶媒を除去する脱溶媒工程と、を経ることで、樹脂微粒子の分散液が得られる。
なお、分散液中の樹脂微粒子の粒径は、中和剤添加量を変更することによって制御可能である。上記結晶性樹脂微粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径として、100〜300nmであることが好ましい。当該平均粒径の測定方法は、後述の実施例に記載したとおりである。
また、上記のトナー母体粒子をコアとして、その表面にシェル層を設けることによって、コアシェル構造のトナー母体粒子とすることもできる。コアシェル構造とすることによって、耐熱保管性と低温定着性をさらに向上させることができる。
コアシェル構造のトナー母体粒子を製造するには、例えば、上述した製造方法において、上記(5)の凝集粒子形成工程の後に、以下の工程:
(5’)上記(5)で調製したトナー母体粒子をコア粒子として用い、非晶性樹脂微粒子を含むシェル用分散液(c)を混合分散液に添加して、上記コア粒子の表面にシェルを形成する工程、を実施し、次いで上記(6)以降の工程を実施することとすればよい。
〔着色剤粒子分散液の調整工程〕
(顔料粒子分散液の調整方法)
着色剤として顔料を使用する場合において、顔料粒子を水系媒体中に分散させる際には、顔料粒子の水系媒体分散液を調整し、該分散液と、樹脂粒子の水系媒体分散液とを用いて、凝集・融着を行うことが好ましい。
顔料粒子の水系媒体分散液を調整する際に用いられる水系媒体は、上記で説明した通りであり、この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子等が添加されていてもよい。
顔料粒子の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記で挙げたように、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、あるいは、高圧衝撃式分散機アルティマイザー等が挙げられ、具体的には、例えば(株)スギノマシン製、HJP30006等を挙げることができる。
〔離型剤を含有する結着樹脂粒子分散液の調整工程〕
離型剤を含有する結着樹脂粒子分散液の作製方法としては、乳化重合法、ミニエマルション法が好ましい。
例えば、結着樹脂を構成する重合性単量体と、離型剤を混合して、混合液を調整し、界面活性剤と重合開始剤を加えた水系媒体を加熱し、加熱した水系媒体中に上記の混合液を添加する。そして、機械的に攪拌することで混合分散し、重合性単量体を乳化重合することで、離型剤を含有した結着樹脂粒子を得ることができる。
さらに必要により、得られた離型剤を含有した結着樹脂粒子に、重合性単量体もしくは重合性単量体と離型剤の混合液を添加し、重合性単量体を重合する工程を繰り返すことで、コアシェル構造の離型剤を含有する結着樹脂粒子を得ることができる。
重合性単量体の水系媒体への混合や重合の際には、重合性単量体の分散を良好なものとし、重合が円滑に進行するように、機械的エネルギーを用いて攪拌しながら行うことが好ましい。かような機械的エネルギーを付与する機器としては、ホモジナイザー、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機、アルティマイザー等の分散機が挙げられる。
重合性単量体の重合は、常圧、減圧、加圧のいずれでも行うことができるが、好ましくは常圧(又はその近傍、通常±10mmHg)で行う。また、重合温度は、特に限定されず、重合性単量体の重合が進行する範囲において、適宜選択することができる。重合温度としては、例えば、50℃以上150℃以下であることが好ましく、60℃以上130℃以下であることがより好ましい。さらに、重合時間も、重合性単量体の重合が進行する範囲において、適宜選択することができ、例えば、0.5〜5時間であることが好ましく、0.5〜3時間であることがより好ましい。
なお、重合性単量体および重合開始剤の水系媒体への添加順序は、特に限定されるものではなく、(1)重合開始剤を水系媒体に添加した後、重合性単量体(添加物)を添加する方法、(2)重合性単量体(混合物)を水系媒体に添加した後、重合開始剤を添加する方法、のどちらであってもよい。
第1段階の重合において、離型剤を含まない場合には、簡便性の観点から、(1)重合開始剤を水系媒体に添加した後、重合性単量体(混合物)を添加する方法が好ましく、重合性単量体(混合物)を滴下しながら添加することがより好ましい。
一方、第1段階の重合において、離型剤を単量体とともに分散させる際には、(2)重合性単量体(混合物)および離型剤を水系媒体に添加した後、重合開始剤を添加する方法が好ましい。離型剤の分散性を良好にするために、離型剤および第1の重合性単量体の混合物を水系媒体に添加した後、機械的エネルギーを付与して攪拌することが好ましく、ホモジナイザー、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機、アルティマイザー等の分散機を用いることが好ましい。分散機としては市販品を用いることもでき、例えば、「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)を用いることができる。乳化重合の際には、界面活性剤を用いて、第1の重合性単量体および離型剤を乳化・分散させることが好ましい。
界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下に示すイオン性界面活性剤が好ましいものとして使用できる。イオン性界面活性剤には、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、脂肪酸塩等があり、スルホン酸塩には、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、o−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等がある。
硫酸エステル塩には、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等があり、脂肪酸塩には、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム等がある。
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤を使用することも可能で、具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル、等がある。
これらの界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
(連鎖移動剤)
結着樹脂の分子量調整のために、公知の連鎖移動剤を用いることもできる。具体的には、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、タービノーレン、四臭化炭素、α−メチルスチレンダイマー等がある。
(重合開始剤)
重合性単量体の重合は、ラジカル重合剤の存在下で行うことが好ましい。
重合性単量体を重合する際に用いられる重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、公知の重合開始剤を使用することができる。乳化重合法で樹脂微粒子を形成する場合は、水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等がある。本実施形態では、乳化重合法を好適に使用するため、過硫酸カリウム(KPS)がより好ましい。
重合開始剤の添加量は、重合が進行するように適宜設定されるが、重合時の重合性単量体100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましい。
(樹脂微粒子)
重合により得られた樹脂微粒子の体積平均粒子径は、50〜400nmであることが好ましく、60〜200nmであることがより好ましい。
〔凝集工程と融着工程〕
凝集工程(上記の凝集粒子形成工程)においては、離型剤を含有する結着樹脂粒子分散液と結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と着色剤分散液を水系媒体中に投入し、混合した混合分散液を調整し、この混合分散液中に凝集剤を添加して、離型剤を含有する結着樹脂粒子、結晶性ポリエステル樹脂粒子、着色剤を凝集させる。
凝集性付与のために、凝集剤の添加前に、予め水酸化ナトリウム水溶液等の塩基を樹脂微粒子の分散液に加えて、pHを9〜12に調整しておくことが好ましい。
次いで、分散液に、凝集剤を添加する。添加温度および添加速度は、特に限定されるものではないが、25〜35℃で5〜15分かけて攪拌しながら添加することが好ましい。
使用可能な凝集剤は、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。例えば、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、銅等の2価の金属の塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の塩等がある。具体的な塩としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられる。上述した凝集剤は、1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
凝集剤の使用量は、分散液中の固形分全量100質量部に対して、5〜30質量部が適当である。
凝集させる際には、凝集剤を添加した後に分散液を放置する放置時間(加熱を開始するまでの時間)をできるだけ短くすることが好ましい。放置時間は、通常30分以内とされ、好ましくは10分以内であり、より好ましくは2〜6分である。凝集剤を添加する温度は特に限定されないが、結着樹脂のガラス転移温度以下であることが好ましい。
凝集させる際には、加熱、昇温することが好ましい。加熱温度は70〜95度の範囲で行い、昇温速度としては1〜15℃/分の範囲で行うことが好ましい。
凝集粒子が所望の粒径になったところで、反応系内の各種の粒子の凝集を停止させてもよい。凝集の停止は、pH調整することができるキレート化合物や、塩化ナトリウム等の無機塩化合物等の凝集停止剤を添加することにより、行われる。体積基準メジアン径は、例えば、コールター・ベックマン社製コールターマルチサイザー3によって測定することができる。
融着工程は、上記の凝集工程で得られた凝集粒子を融着する工程であり、結着樹脂のガラス転移温度以上の温度で行うことが好ましい。そして、結着樹脂のガラス転移温度以上の温度に到達した後に、分散液の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させる。これにより、粒子の成長(樹脂粒子の凝集)と、凝集粒子中の樹脂粒子の融着とを効果的に進行させることができる。保持時間としては、融合される程度行えばよく、融着時の最高温度で0.5〜10時間程度保持すればよい。
凝集工程と融着工程は、トナー母体粒子が所望の体積基準メジアン径や円形度になるまで行うことが好ましい。トナー母体粒子の成長の停止は、塩化ナトリウム水溶液等を添加して行うことができる。
トナー母体粒子を得る工程は、離型剤を含有する樹脂粒子を凝集し、融着させる工程を、複数回行うことが好ましい。凝集し融着させる工程を複数回行うことにより、多層構造のトナー母体粒子となって、離型剤をトナー母体粒子中の適切な位置に分散させることが可能となる。
〔冷却工程〕
融着工程の後の冷却工程においては、0〜45℃まで冷却することが好ましい。
融着して得た融着粒子は、濾過等の固液分離工程や、必要に応じて、洗浄工程、乾燥工程を経て、トナー母体粒子とすることができる。
〔濾過・洗浄工程〕
この濾過・洗浄工程では、冷却されたトナー母体粒子の分散液から、水等の溶媒を用いて、トナー母体粒子を固液分離してトナー母体粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー母体粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤等の付着物を除去する洗浄処理とが施される。具体的に、固液分離および洗浄の方法としては、遠心分離法、アスピレータ、ヌッチェ等を使用する減圧濾過法、フィルタープレス等を使用する濾過法、等が挙げられ、これらは特に限定されるものではない。この濾過・洗浄工程においては、適宜、pH調整や粉砕等を行ってもよい。このような操作は繰り返し行ってもよい。
〔乾燥工程〕
この乾燥工程は、洗浄処理されたトナー母体粒子に乾燥処理が施される。この乾燥工程で使用される乾燥機としては、オーブン、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機等が挙げられ、これらは特に限定されるものではない。なお、乾燥処理された粒子中のカールフィッシャー電量滴定法にて測定される水分量は、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
また、乾燥処理された粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集して凝集体を形成している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、コーミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式解砕装置を使用することができる。
〔トナー粒子の製造方法〕
トナー粒子を製造するには、上記の乾燥処理したトナー母体粒子に、後述する外添剤の粒子を添加し、混合することにより、トナー粒子を調製する工程を行う。
外添剤の添加方法としては、乾燥されたトナー母体粒子に外添剤を粉体で添加する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサーおよびコーヒーミル等の機械式の混合装置が挙げられる。
〔外添剤〕
本発明に係るトナー母体粒子の表面には、流動性や帯電性を制御する目的で、外添剤を含んでもよい。
外添剤としては、従来公知の金属酸化物粒子を使用することができ、たとえば、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子、および酸化ホウ素粒子等が挙げられる。これらは、単独でもまたは2種以上を併用してもよい。
また、スチレン、メタクリル酸メチル等の単独重合体やこれらの共重合体等の有機粒子を外添剤として使用してもよい。
外添剤として用いられる金属酸化物粒子は、カップリング剤等の公知の表面処理剤により表面の疎水化処理が施されているものが好ましい。上記表面処理剤としては、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、シリコーンオイル等が好ましい。
クリーニング性や転写性をさらに向上させるために、外添剤として、滑剤や研磨剤を使用することも可能である。
滑剤としては、例えば、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
研磨剤としては、例えば、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナ等が挙げられる。
これら外添剤の添加量の総量は、トナー母体粒子100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
〔荷電制御剤〕
本発明に係るトナーは、荷電制御剤を含んでもよい。
荷電制御剤としては、水系媒体中に分散することができる公知の種々の化合物を用いることができ、具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体等が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、トナー中、0〜10質量%であることが好ましく、0〜5質量%であることがより好ましい。
〔平均円形度〕
本発明に係るトナーの粒子の平均円形度は、0.920〜0.980であることが好ましい。このような平均円軽度の範囲内であれば、現像性、クリーニング性が良好なトナーとなる。
平均円形度は、例えば、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス株式会社製)を用いて測定することができる。具体的には、以下の方法で測定することができる。トナー粒子を界面活性剤水溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行い、分散させる。その後、「FPIA−3000」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3,000〜10,000個の適正濃度で測定し、下記式により各粒子の円形度を算出する。算出された各粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で除した値が平均円形度である;
円形度=(粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
本発明の実施例として、実際に本発明のトナーを作製して、特性の評価を行った。
<トナーの作製>
本発明の実施例、および本発明に対する比較例のトナーを、以下の方法により作製した。
(1)スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液の調製
(a)樹脂微粒子1Oの作製
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤:ドデシル硫酸ナトリウム7.08質量部をイオン交換水3,010質量部に溶解させて界面活性剤溶液を作製した。この界面活性剤溶液を、窒素気流下で230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、反応容器内の温度を80℃に昇温させた。
次に、界面活性剤溶液に、重合開始剤:過硫酸カリウム(KPS)9.2質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を投入し、反応容器内の温度を75℃にした後、下記の成分が混合されてなる混合液〔1〕を1時間かけて滴下した。
スチレン 69.4質量部
アクリル酸n−ブチル 28.3質量部
メタクリル酸 2.3質量部
更に、混合液〔1〕を、75℃で2時間撹拌して重合することにより、樹脂微粒子〔1O〕が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔1O〕を作製した。
(b)樹脂微粒子1OPの作製
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、
スチレン 97.1質量部
アクリル酸n−ブチル 39.7質量部
メタクリル酸 3.22質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル 5.6質量部
を投入し、更に、ペンタエリスリトールテトラベヘネート160.0質量部を添加し、90℃に加熱して、上記の化合物が混合されてなる混合液〔2〕を調製した。
一方、撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム1.6質量部をイオン交換水2,700質量部に溶解させた界面活性剤溶液を調製し、これを98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に上記の樹脂微粒子分散液〔1O〕を固形分換算で28質量部添加した後、混合液〔2〕を投入した。更に、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により2時間混合分散を行って分散液(乳化液)を調製した。
次に、この乳化液に、過硫酸カリウム(KPS)5.1質量部をイオン交換水240質量部に溶解させた開始剤溶液およびイオン交換水750質量部を添加し、この反応系を98℃で2時間撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子〔1O〕の表面に樹脂層が被覆されてなる複合構造を有する、樹脂微粒子〔1OP〕が分散されてなる、樹脂微粒子分散液〔1OP〕を作製した。
(c)樹脂微粒子1OPQの作製
上記の樹脂微粒子分散液〔1OP〕に、過硫酸カリウム(KPS)7.4質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加して、温度を80℃に調整した後、
スチレン 277質量部
アクリル酸n−ブチル 113質量部
メタクリル酸 9.21質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル 10.4質量部
が混合されてなる混合液〔3〕を1時間かけて滴下した後、80℃に維持したままで2時間にわたって加熱、撹拌して重合を行った。その後、反応系を28℃に冷却して、樹脂微粒子〔1OP〕の表面に樹脂層が被覆されてなる複合構造を有する、樹脂微粒子〔1OPQ〕が分散されてなる、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液〔A〕を調製した。
(d)樹脂微粒子2OPの作製
(b)樹脂微粒子1OPの作製において、ペンタエリスリトールテトラベヘネートを80.4質量部にした以外は同様にして、樹脂微粒子分散液〔2OP〕を作製した。
(e)樹脂微粒子2OPQの作製
(c)樹脂微粒子1OPQの作製において、樹脂粒子分散液〔1OP〕を、樹脂微粒子分散液〔2OP〕に変更した以外は同様にして、樹脂微粒子〔2OPQ〕が分散されてなるスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液〔B〕を調製した。
(f)樹脂微粒子3OPの作製
(b)樹脂微粒子1OPの作製において、ペンタエリスリトールテトラベヘネートを42.9質量部にした以外は同様にして、樹脂微粒子分散液〔3OP〕を作製した。
(g)樹脂微粒子3OPQの作製
(c)樹脂微粒子1OPQの作製において、樹脂粒子分散液〔1OP〕を、樹脂微粒子分散液〔3OP〕に変更した以外は同様にして、樹脂微粒子〔3OPQ〕が分散されてなるスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液〔C〕を調製した。
(h)樹脂微粒子4OPの作製
(b)樹脂微粒子1OPの作製において、ペンタエリスリトールテトラベヘネートを16.1質量部にした以外は同様にして、樹脂微粒子分散液〔4OP〕を作製した。
(i)樹脂微粒子4OPQの作製
(c)樹脂微粒子1OPQの作製において、樹脂粒子分散液〔1OP〕を樹脂微粒子分散液〔4OP〕に変更した以外は同様にして、樹脂微粒子〔4OPQ〕が分散されてなるスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液〔D〕を調製した。
(j)樹脂微粒子5OPの作製
(b)樹脂微粒子1OPの作製において、ペンタエリスリトールテトラベヘネートを220.0質量部にした以外は同様にして、樹脂微粒子分散液〔5OP〕を作製した。
(k)樹脂微粒子5OPQの作製
(c)樹脂微粒子1OPQの作製において、樹脂粒子分散液〔1OP〕を樹脂微粒子分散液〔5OP〕に変更した以外は同様にして、樹脂微粒子〔5OPQ〕が分散されてなるスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液〔E〕を調製した。
(2)結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の調製
(a)結晶性ポリエステル樹脂の合成
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた反応容器に、多価カルボン酸成分としてドデカン二酸189質量部、多価アルコール成分として1,6−ヘキサンジオール97質量部を仕込み、反応系の温度を1時間かけて190℃に上昇させ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、触媒としてTi(OBu)4 を、多価カルボン酸成分全量に対して0.006質量%となる量を投入し、さらに、生成される水を留去しながら反応系の温度を同温度から6時間かけて240℃に上昇させ、さらに240℃に維持した状態で6時間にわたって脱水縮合反応を継続して重合反応を行うことにより、結晶性ポリエステル樹脂〔a〕を得た。
(b)結晶性ポリエステル樹脂微粒子の作製
撹拌動力を与えるアンカー翼の備えられた反応容器に、メチルエチルケトンおよびイソプロピルアルコールを添加した後、上記の結晶性ポリエステル樹脂〔a〕をハンマーミルで粗粉砕したものを、徐々に添加して撹拌し、完全に溶解させて油相となる結晶性ポリエステル樹脂溶液を得た。次いで、撹拌しながら、この油相に希アンモニア水溶液を数量滴下し、さらに、この油相にイオン交換水を滴下して転相乳化させた後、エバポレーターで減圧しながら溶剤を除去して結晶性ポリエステル樹脂微粒子を生成させ、さらに、イオン交換水を追加して固形分を20質量%に調整することにより、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔F〕を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔F〕中の樹脂微粒子の体積基準のメジアン径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ、185nmであった。
(3)カーボンブラック分散液の作製
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解させて作製した溶液を撹拌させておき、当該溶液中に、カーボンブラック「モーガルL」を420質量部、徐々に添加した。次いで、撹拌装置「クレアミックス(エム・テクニック株式会社製)」を用いて分散処理を行い、「カーボンブラック分散液」を作製した。
「カーボンブラック分散液」中のカーボンブラックの粒径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ、質量平均粒径で110nmであった。
(4)トナー母体粒子の形成
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を備えた反応容器に、
結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔F〕 8質量部(固形分換算)
スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液〔C〕 81.8質量部(固形分換算)
イオン交換水 1100質量部
カーボンブラック分散液 50質量部(固形分換算)
を投入し、液温を30℃に調整した後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10.0に調整した。
この反応系を撹拌しながら、塩化マグネシウム・6水和物20質量部をイオン交換水20質量部に溶解してなる水溶液を10分間かけて添加し、その後、3分間放置した後、昇温を開始して、この系を90℃まで昇温させて、90℃を保持した状態で樹脂微粒子の会合を行って、粒子〔1〕を成長させた。
次に、上記のスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液〔A〕145.5質量部(固形分換算)、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔F〕15.0質量部(固形分換算)を添加し、この反応系を撹拌しながら、塩化マグネシウム・6水和物40質量部をイオン交換水40質量部に溶解してなる水溶液を10分間かけて添加し、粒子〔1〕の表面にスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔A〕を融着させた、粒子〔2〕を形成した。
次に、上記のスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液〔B〕100.0質量部(固形分換算)、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔F〕10.0質量部(固形分換算)を添加し、この反応系を撹拌しながら、塩化マグネシウム・6水和物25質量部をイオン交換水25質量部に溶解してなる水溶液を10分間かけて添加し、粒子〔2〕の表面にスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔B〕を融着させた、粒子〔3〕を得た。
次に、上記のスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液〔D〕172.7質量部(固形分換算)、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔F〕17.0質量部(固形分換算)を添加し、この反応系を撹拌しながら、塩化マグネシウム・6水和物45質量部をイオン交換水45質量部に溶解してなる水溶液を10分間かけて添加し、粒子〔3〕の表面にスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔D〕を融着させた、粒子〔4〕を得た。そして、「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」を用いて会合粒子の粒径測定を行いながら、体積基準のメジアン径が6.0μmになった時点で、塩化ナトリウム180.0質量部をイオン交換水1,000質量部に溶解させてなる水溶液を反応系に添加して粒子の成長を停止させて、粒子〔4〕を形成した。
この系を95℃にして20分間にわたって加熱撹拌を行って熟成処理を行い、融着させた後、30℃まで冷却した後、固形分をろ過し、35℃のイオン交換水で繰り返し洗浄した後、40℃の温風で乾燥することにより、トナー母体粒子〔i〕を作製した。
<トナー母体粒子〔ii〕の作製>
トナー母体粒子〔i〕の作製において、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液〔C〕を、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔D〕にした以外は同様にして、トナー母体粒子〔ii〕を作製した。
<トナー母体粒子〔iii〕の作製>
トナー母体粒子〔i〕の作製において、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液〔C〕を、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔D〕にして、粒子〔2〕の表面に融着させるスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔B〕を、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔C〕にした以外は同様にして、トナー母体粒子〔iii〕を作製した。
<トナー母体粒子〔iv〕の作製>
トナー母体粒子〔i〕の作製において、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液〔C〕を、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液〔B〕にして、粒子〔1〕の表面に融着させるスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔A〕を、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔E〕にした以外は同様にして、トナー母体粒子〔iv〕を作製した。
<トナー母体粒子〔v〕の作製>
トナー母体粒子〔i〕の作製において、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔F〕8質量部、15質量部、10質量部、17質量部(固形分換算)を、それぞれ0質量部にして、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液〔C〕81.8質量部(固形分換算)を、154.3質量部(固形分換算)にして、塩化マグネシウム・6水和物20質量部をイオン交換水20質量部に溶解してなる水溶液を、塩化マグネシウム・6水和物40質量部をイオン交換水40質量部に溶解してなる水溶液にして、粒子〔1〕の表面に融着させるスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔A〕145.5質量部(固形分換算)を、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔B〕67.9質量部(固形分換算)にして、塩化マグネシウム・6水和物40質量部をイオン交換水40質量部に溶解してなる水溶液を塩化マグネシウム・6水和物20質量部をイオン交換水20質量部に溶解してなる水溶液にして、粒子〔2〕の表面に融着させるスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔B〕100.0質量部(固形分換算)を、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔C〕277.8質量部(固形分換算)にして、塩化マグネシウム・6水和物25質量部をイオン交換水25質量部に溶解してなる水溶液を、塩化マグネシウム・6水和物70質量部をイオン交換水70質量部に溶解してなる水溶液にして、粒子〔3〕の表面に融着させるスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔D〕172.7質量部(固形分換算)を0質量部にして、塩化マグネシウム・6水和物45質量部をイオン交換水45質量部に溶解してなる水溶液を0質量部にした以外は同様にして、トナー母体粒子〔v〕を作製した。
<トナー母体粒子〔vi〕の作製>
トナー母体粒子〔i〕の作製において、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔F〕8質量部、15質量部、10質量部、17質量部(固形分換算)をそれぞれ0質量部にして、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液〔C〕を、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液〔D〕にして、粒子〔1〕の表面に融着させるスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔A〕を、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔B〕にして、粒子〔2〕の表面に融着させるスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔B〕を、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔A〕にした以外は同様にして、トナー母体粒子〔vi〕を作製した。
<トナー母体粒子〔vii〕の作製>
トナー母体粒子〔v〕の作製において、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子分散液〔C〕を、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔D〕にして、粒子〔2〕の表面に融着させるスチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔C〕を、スチレン−アクリル共重合体樹脂微粒子〔A〕にした以外は同様にして、トナー母体粒子〔vii〕を作製した。
<トナー母体粒子〔viii〕の作製>
トナー母体粒子〔v〕の作製において、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔F〕の量(それぞれ0質量部(固形分換算))を、(15質量部、7質量部、28質量部、0質量部(固形分換算))にした以外は同様にして、トナー母体粒子〔viii〕を作製した。
(5)トナーの作製
<トナー1の作製>
得られたトナー母体粒子〔i〕100質量部に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=50nm)1.5質量部および疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm)0.5質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により回転翼周速35mm/sec、32℃で20分間混合した後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去する外添剤処理を施すことにより、トナー1を製造した。
得られたトナー1は、平均粒径(体積基準のメジアン径)が6.0μmであった。なお、平均粒径は、上述の項で述べた方法と同様の方法で測定した。
<トナー2〜8の作製>
トナー1の作製において、トナー母体粒子〔i〕をトナー母体粒子〔ii〕〜〔viii〕に変更した以外は同様にして、トナー2〜8を作製した。
<キャリアの作製>
「フェライト粒子」100.0質量部、「被覆樹脂(CHMA:MMA=50:50)」2.0質量部を、撹拌羽根付き高速撹拌混合機に投入し、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃で30分間混合撹拌した後、120℃で50分混合してキャリアを作製した。
<二成分現像剤1の作製>
上記で作製した「キャリア」100.0質量部と「トナー1」6.0質量部とをV型混合機で5分間混合し、「二成分現像剤1」を調製した。
<二成分現像剤2〜8の作製>
二成分現像剤1の作製において、「トナー1」を「トナー2〜8」に変更した以外は同様にして、「二成分現像剤2〜8」を作製した。
〔評価方法〕
また、作製したトナーの特性の評価は、以下の方法により行った。
(トナー断面観察)
下記に示すような観察により、トナーの断面観察を行うことにより、離型剤ドメインを確認できる。
装置:電子顕微鏡「JSM−7401F」(日本電子(株)製)
試料:四酸化ルテニウム(RuO)によって染色したトナー粒子の切片(切片の厚さ:60〜100nm)
加速電圧:30kV
倍率:50000倍
観察条件:透過電子検出器、明視野像
(トナー粒子の切片作製方法)
トナー1〜2mgを10mLサンプル瓶に広げるように入れ、下記に示すように四酸化ルテニウム(RuO)蒸気染色条件下で処理後、光硬化性樹脂「D−800」(日本電子社製)中に分散させ、光硬化させてブロックを形成した。
次に、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用いて、上記のブロックから、厚さ60〜100nmの超薄片状のサンプルを切り出した。
その後、切り出したサンプルを、再び下記の処理条件にて処理し、染色した。
(四酸化ルテニウム処理条件)
四酸化ルテニウム処理は、真空電子染色装置VSC1R1(フィルジェン(株)製)を用いて行う。装置手順に従い、染色装置本体に四酸化ルテニウムが入った昇華室を設置し、トナーまたは超薄切片を染色チャンバー内に導入後、四酸化ルテニウムによる染色条件として、室温(24〜25℃)、濃度3(300Pa)、時間10分の条件下で処理を行う。
(分散粒子の観察)
染色後、24時間以内に電子顕微鏡「JSM−7401F」(日本電子(株)製)にて観察する。
トナーの断面を観察した写真画像を画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)の「面積AREA」を用いて、トナー断面の面積および離型剤ドメインの面積を測定した。トナー断面の面積より、トナー断面の円相当径を以下の式(1)により算出した。
トナー断面の円相当径=2√(トナー断面の面積/π) (1)
またトナー断面画像を等間隔に分割した画像より、断面トナー、離型剤についてそれぞれ面積が均等に分割される位置を求め、トナー断面の重心の位置と離型剤ドメインの重心の位置から、離型剤ドメインの重心とトナー断面の重心との距離Aを算出する。
トナー粒子10個について同様に行い、各々の離型剤ドメインについて、距離Aとトナー断面の円相当径との比(距離A/円相当径)を算出し、距離Aとトナー断面の円相当径との比(距離A/円相当径)の0から0.05刻み毎の個数頻度〔%〕の分布を求め、分布からピークの距離Aとトナー断面の円相当径との比(距離A/円相当径)と、個数頻度値〔%〕を算出した。
<特性の評価>
(定着性)
複写機「bizhub PRO(登録商標)C6500」(コニカミノルタ株式会社製)の改造機を準備し、上記で作製した二成分現像剤セットを装填し、画像評価装置の加熱ローラの表面温度(ローラの中心部で測定)を90〜130℃の範囲の5℃刻みで変化させ、それぞれの表面温度の際に、搬送方向に対して垂直方向に5mm幅のべた黒帯状画像と20mm幅のハーフトーン画像を有するA4画像を横送りで搬送し、定着オフセットに起因する画像汚れが発生しない温度領域(非オフセット領域)によって、定着性の評価を行った。
定着性の評価基準は、以下の通りとした。
〔定着性の評価基準〕
◎:非オフセット領域の下限温度が110℃以下であり、かつ温度領域が16℃以上。
○:非オフセット領域の下限温度が120℃以下であり、かつ温度領域が16℃未満。
×:非オフセット領域の下限温度が120℃以上。
〔非オフセット下限温度の評価基準〕
◎:非オフセット領域の下限温度が110℃以下
○:非オフセット領域の下限温度が120℃以下
×:非オフセット領域の下限温度が120℃以上
〔定着温度領域の評価基準〕
◎:非オフセット領域の温度領域が16℃以上
○:非オフセット領域の温度領域が16℃未満
×:非オフセット領域の温度領域が10℃未満
(耐熱保管性(凝集度))
トナー0.5gを内径21mmの10mlガラス瓶に取り蓋を閉めて、タップデンサーKYT−2000(セイシン企業製)で室温にて600回振とうした後、蓋を取った状態で55℃、35%RHの環境下に2時間放置した。
次に、トナーを、48メッシュ(目開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながらのせて、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmの振動強度に調整し、10秒間振動を加えた後、篩上の残存したトナー量の比率(質量%)を測定した。
トナー凝集率は、下記の式により算出される値である。
トナー凝集率(%)=(篩上の残存トナー質量(g))/0.5(g)×100
算出されたトナー凝集率の値から、下記に記載の基準により、トナーの耐熱保管性(凝集度)の評価を行った。
◎:トナー凝集率が15質量%未満(トナーの耐熱保管性が極めて良好)
○:トナー凝集率が20質量%以下(トナーの耐熱保管性が良好)
×:トナー凝集率が20%を超える(トナーの耐熱保管性が悪く、使用不可)
(現像性、転写性(帯電量))
複写機「bizhub PRO(登録商標)C6500」(コニカミノルタ株式会社製)の改造機を準備し、上記で作製した二成分現像剤セットを装填し、5万枚のプリントを行った。プリントは、高温高湿(40℃、80%RH)の環境下で、印字率3%の文字画像をA4判の転写紙に5万枚行った。
プリント初期(プリント10枚目、以下同じ)および5万枚プリント終了後の帯電量を、下記のブローオフ法で求めた。
ブローオフ帯電量測定装置「TB−200(東芝ケミカル株式会社製)」を用い、測定する二成分現像剤を、400メッシュのステンレス製スクリーンを装着した上記のブローオフ帯電量測定装置にセットし、ブロー圧50kPaの条件で10秒間窒素ガスにてブローし、電荷を測定した。初期と5万枚プリント後の2成分現像剤の電荷を測定して、これらの帯電量差ΔQを求めた。
帯電量差ΔQの値から、下記に記載の基準により、現像性、転写性(帯電量)の評価を行った。
◎:ΔQ<10
○:10≦ΔQ≦15
×:15<ΔQ
(光沢ムラ)
市販の複写機「bizhub PRO(登録商標)C6500」(コニカミノルタ株式会社製)を準備し、上記で作製した二成分現像剤セットを装填し、5万枚のプリントを行った。プリントは、高温高湿(40℃、80%RH)の環境下で、印字率3%の文字画像をA4判の転写紙に5万枚行い、画像を観察した。
観察した画像から、下記に記載の基準により、光沢ムラの評価を行った。
◎:光沢のムラがまったく検知できない
○:ルーペで拡大しない限り、光沢のムラがまったく検知できない
×:すじ状の光沢のムラが目視で検知できる。
各実施例および比較例における、比の値が0.15〜0.45の各領域の個数頻度(%)と、CPES(結晶性ポリエステル樹脂)の有無、定着性と凝集度と帯電量と光沢ムラの各評価の結果を、表1に示す。
Figure 2020086032
<評価結果>
表1に示す結果より、以下の知見が得られた。
実施例1〜実施例4は、いずれも、比(距離A/円相当径)が0.25以上0.3以下の領域が、最も個数頻度が高く、かつ個数頻度が20%以上である。これら実施例のトナーは、凝集度(耐熱保管性)と帯電量が優れており、定着性と光沢ムラについても良好であった。
比較例1は、比が0.25以上0.3以下の領域が、最も個数頻度が高いことは実施例と同様であるが、比が0.25以上0.3以下の領域の個数頻度が12.2%と20%未満であった。この領域の個数頻度が少ない比較例1では、定着性が良くなかった。
比較例2は、最も個数頻度が高い領域は、比が0.35以上0.40以下の領域であり、実施例よりも外側の領域であった。また、比が0.25以上0.3以下の領域の個数頻度が13.2%と20%未満であった。比較例2では、定着性と光沢ムラが良くなかった。
比較例3は、最も個数頻度が高い領域は、比が0.35以上0.40以下の領域であり、実施例よりも外側の領域であった。また、比が0.25以上0.3以下の領域の個数頻度が12.5%と20%未満であった。さらに、比が0.45以上0.50以下の領域の個数頻度が21.4%と多くなっており、トナーの外周付近にも多く離型剤が分布していた。比較例3では、定着性、凝集度、帯電量、光沢ムラの全てが良くなかった。
比較例4は、比が0.25以上0.3以下の領域が、最も個数頻度が高いことは実施例と同様であるが、比が0.25以上0.3以下の領域の個数頻度が12.3%と20%未満であった。この領域の個数頻度が少ない比較例4では、定着性が良くなかった。
各実施例と各比較例の評価結果の違いから、実施例のように比が0.25以上0.3以下の領域が、最も個数頻度が高く、かつ個数頻度が20%以上であることにより、凝集度(耐熱保管性)と帯電量に優れ、定着性と光沢ムラについても良好となることがわかる。
また、実施例1、実施例2、実施例4は、0.30以上0.45以下の3つの領域の個数頻度がいずれも10%以上である。一方、実施例3は、0.30以上0.45以下の3つの領域の個数頻度がいずれも10%未満である。
実施例3と比較して、実施例1、実施例2、実施例4は定着性の非オフセット下限温度の結果が優れていたことから、0.30以上0.45以下の3つの領域の個数頻度がいずれも10%以上である構成とすることにより、定着性をさらに向上できると考えられる。
また、0.30以上0.45以下の3つの領域の個数頻度が似通っている、実施例1と実施例2を比較すると、0.15以上0.45以下の6つの領域の個数頻度が、実施例1はいずれも5%以上であるのに対して、実施例2は5%未満である領域が2つある。
実施例1は、実施例2と比較して、定着温度領域が向上している。従って、0.15以上0.45以下の6つの領域の個数頻度がいずれも5%以上である構成とすることにより、定着温度領域を向上することができると考えられる。
比較例4は、各実施例と同様にCPES(結晶性ポリエステル樹脂)を有しているが、十分な定着性が得られなかった。
比較例4は、比較例1とはCPESの有無の違いがあるが、離型剤ドメインの個数頻度が同様の分布となっている。
比較例4では、CPESを有していることにより、CPESの無い比較例1よりは、定着温度領域の改善はあった。
しかし、比較例4は、比が0.25以上0.3以下の領域の離型剤ドメインの個数頻度が20%未満であり、本発明の構成を満たしていないため、非オフセット下限温度が高く、低温での定着性が十分得られなかった。
従って、低温で十分な定着性が得られるためには、CPESを有しているだけでなく、離型剤ドメインの個数頻度が本発明の構成を満たす必要があることがわかる。
1 離型剤ドメイン、2 離型剤ドメインの重心、10 トナー、11 トナーの重心

Claims (5)

  1. 少なくとも結着樹脂と結晶性ポリエステル樹脂と着色剤と離型剤を含有するトナーであって、
    トナーの体積平均粒径が4〜8μmの範囲であり、
    トナー断面の円相当径が4〜8μmの範囲であるトナー断面画像に離型剤ドメインが存在しており、
    前記離型剤ドメインの重心と前記トナー断面の重心との距離Aと前記トナー断面の円相当径との比(距離A/円相当径)を0から0.05刻み毎の領域に分割した際に、前記比(距離A/円相当径)が0.25以上0.3以下である領域で、前記離型剤ドメインの個数頻度が最も高い値となり、前記比(距離A/円相当径)が0.25以上0.3以下である領域における前記離型剤ドメインの個数頻度が20%以上である
    トナー。
  2. 前記比(距離A/円相当径)が0.30以上0.45以下である各領域における、前記離型剤ドメインの個数頻度がそれぞれ10%以上である
    請求項1に記載のトナー。
  3. 前記比(距離A/円相当径)が0.15以上0.45以下である各領域における、前記離型剤ドメインの個数頻度がそれぞれ5%以上である
    請求項2に記載のトナー。
  4. 静電潜像現像用トナーである、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のトナー。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のトナーを製造する方法であって、
    離型剤を含有する結着樹脂粒子分散液と、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、着色剤分散液を、それぞれ調整する工程、
    水系媒体と、前記結着樹脂粒子分散液と、前記結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液と、前記着色剤分散液から、混合分散液を調整する工程、
    前記混合分散液を凝集する工程、
    前記混合分散液を凝集して得られた粒子を融着する工程、
    をそれぞれ有する
    トナーの製造方法。
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