JP2016028988A - ガラス基板表面の異物除去方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フロート法で製造されたガラス基板表面に存在するドロス、特に、型残りドロスの除去に好適な方法の提供。【解決手段】塩素イオン、ヨウ素イオン、臭素イオン、フッ素イオン、および、硫酸イオンからなる群から選択される少なくとも1つのイオンを含むpH3以下の無機酸水溶液と、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属とを、それぞれ、前記無機酸および前記金属の単位面積当たりの供給量が1g/m2以上となるように、フロート法で製造されたガラス基板の溶融金属浴との接触面に供給して、該面をエッチング処理した後、該エッチング処理された面を、研磨量が0.1μm以上2μm以下になるように、機械研磨または化学機械研磨することを特徴とする、ガラス基板表面の異物除去方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ガラス基板表面の異物除去方法に関する。
現在、ガラス基板の主要な製造方法はフロート法である。これは、溶融金属浴と呼ばれる溶融金属スズを満たした浴面上に溶融ガラスを連続的に流してガラスリボンを形成し、このガラスリボンを溶融金属浴面に沿って浮かしながら前進させて成板する方法であり、平坦性の高いガラス基板を大量に生産する上で極めて優れている。
しかし、このフロート法では、溶融スズと接するガラスリボンの下面側にドロス(dross)と呼ばれる異物が発生する場合がある。
ドロスは、蛍光灯下でガラスを目視観察するなどした場合、点状に散見される凸状の付着欠点である。フロート法で製造されるガラスリボンの場合、発生するドロスは、溶融金属浴の金属成分である金属スズの酸化物、すなわち、酸化スズ(SnO2)を主成分とする酸化スズ系のドロスが多い。
フロート法で製造されたガラス基板の用途によっては、基板表面にこのような酸化スズ系のドロスが存在すると問題となる。具体的には、フロート法で製造されたガラス基板の用途が、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル等のフラットパネルディスプレイ用ガラス基板の場合、基板表面に酸化スズ系のドロスが存在すると、基板表面に形成される配線を断線させるおそれがある。このため、基板表面に見つかった酸化スズ系のドロスは、ガラス基板表面を2μm以上研磨することによって除去されている。
生産性の向上の観点からは、この研磨量を少なくすることが望ましい。このため、研磨を実施する前に、ガラス基板表面に存在する酸化スズ系のドロスをある程度除去しておくことが望ましい。
フロート法で製造されたガラス基板表面から、スズまたはスズ化合物からなる異物を除去する方法として、特許文献1には、2価のクロムイオンを含む無機酸水溶液にフロートガラス基板を浸漬して、基板表面に存在する微小な異物を溶解して除去する方法が開示されている。
また、特許文献2には、フッ化水素酸水溶液または2価のクロムイオンを含む酸性水溶液に該ガラス基板を浸漬して、基板表面に存在する微小な異物を除去した後、該基板表面を研磨する方法が開示されている。
しかしながら、2価のクロムイオンを含む酸性水溶液を使用した場合、毒性のある六価クロムを発生するおそれがあるため、廃液処理の負担が大きい。
一方、ガラスに対してエッチング作用があるフッ化水素酸水溶液にガラス基板を浸漬すると、基板表面にピットと呼ばれる凹欠点を生じさせるおそれがある。このような凹欠点が生じた場合、基板表面の研磨量を増加させる必要がある。
フラットパネルディスプレイパネルのカバーガラス、モバイルPCやスマートフォン、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、携帯型ゲーム機器などの携帯機器のカバーガラスとして用いられるガラス基板の場合も、基板表面に最大径が10μm以上のドロスが存在すると、目視により確認できるため、ガラス基板の欠点となる。
なお、こちらの場合、酸化スズ系のドロスだけでなく、他の金属酸化物を主成分とするドロス、たとえば、アルミナ(Al23)やジルコニア(ZrO2)を主成分とするドロスや、ガラスカレットを主成分とするドロスも問題となる。
特開平9−295832号公報 特開平9−295833号公報
本願発明者らは、鋭意検討した結果、フロート法で製造されたガラス基板の表面に発生する酸化スズ系のドロスには異なる複数の形態があることを見出した。
第1の形態は、寸法が数百nmオーダーの粒が集合した形態のものであり、以下、本明細書において、「通常ドロス」と呼ぶ。この通常ドロスは、ガラスリボンの搬送ローラに付着していた酸化スズの粒子がガラスリボンに転写されることによって発生すると考えられる。
なお、上記した酸化スズ系以外のドロス、すなわち、アルミナ(Al23)やジルコニア(ZrO2)を主成分とするドロスや、ガラスカレットを主成分とするドロスの発生原因も同様であると考えられる。
第2の形態は、寸法が数μmの粒状の酸化スズを中心とし、該粒状の酸化スズの周囲に数十nmの薄膜状の酸化スズが広がったもので、以下、本明細書において、「型残りドロス」と呼ぶ。この型残りドロスは、ガラスリボンの下面側に付着していた金属スズが、搬送ローラによって押しつぶされる過程で酸化スズとなったものと考えられる。
これらの酸化スズ系のドロスのうち、数百nmオーダーの粒が集合した通常ドロスは、基板表面に形成させる配線を断線させるおそれがなく、また、基板表面の研磨により比較的容易に除去できる。
一方、型残りドロスの場合、粒状の部分は、研磨により比較的容易に除去できるが、その周囲に存在する薄膜状の部分は研磨の圧力がかかりにくく、また硬度も高く摩滅しにくいため、図1に示すように、研磨量を大きくしても完全に除去するのが困難である。図1は、通常ドロス、型残りドロスのそれぞれについて、ガラス基板の研磨量と、ドロスの消失率と、の関係を示したグラフである。ここで、ドロスの消失率とは、同一の研磨量でドロスが各1点ずつ付着した複数のサンプル(寸法50mm角、無アルカリガラス)を研磨し、その合計数に対するドロスが除去されたサンプル数の割合であり、全てのサンプルについて、研磨量を増やしつつ、ドロス(通常ドロス、型残りドロス)の除去を確認した。この点については、後述する実施例2〜3、比較例2〜4の場合も同様である。なお、通常ドロスのサンプル数は16、型残りドロスのサンプル数は37である。
サンプルの研磨は、発泡ポリウレタン製の研磨パッド(D硬度:30度、JIS K6253、2012年制定)、酸化セリウムを研磨剤として使用し、4B片面研磨機(浜井産業社製:商品名4BT、研磨荷重 5kPa)により実施した。
しかも、型残りドロスのうち、数十nmの薄膜状の部分は、検査により検出することが困難である。
本発明は、上記の問題を解決するため、フロート法で製造されたガラス基板表面に存在するドロス、特に、型残りドロスの除去に好適な方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、通常ドロス、および、後述する酸化スズ系以外のドロスの除去に好適な方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記の目的を達成するため、塩素イオン、ヨウ素イオン、臭素イオン、フッ素イオン、および、硫酸イオンからなる群から選択される少なくとも1つのイオンを含むpH3以下の無機酸水溶液と、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属とを、それぞれ、前記無機酸および前記金属の単位面積当たりの供給量が1g/m2以上となるように、フロート法で製造されたガラス基板の溶融金属浴との接触面に供給して、該面をエッチング処理した後、該エッチング処理された面を、研磨量が0.1μm以上2μm以下になるように、機械研磨または化学機械研磨することを特徴とする、ガラス基板表面の異物除去方法(1)を提供する。
本発明の方法(1)において、前記無機酸水溶液が塩酸(HCl)を0.1質量%以上含有することが好ましい。
また、本発明の方法(1)において、前記無機酸水溶液が硫酸(H2SO4)を0.1質量%以上含有することが好ましい。
また、本発明の方法(1)において、前記無機酸水溶液がフッ化水素酸(HF)を0.5〜20質量%含有することが好ましい。
また、本発明は、塩酸、および、硫酸からなる群から選択される、pH3以下の無機酸水溶液と、フッ化水素酸(HF)水溶液と、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属とを、それぞれ、前記無機酸、前記フッ化水素酸水溶液、および、前記金属の単位面積当たりの供給量が、1g/m2以上、0.05g/m2以上、および、1g/m2以上となるように、フロート法で製造されたガラス基板の溶融金属浴との接触面に供給して、該面をエッチング処理することを特徴とする、ガラス基板表面の異物除去方法(2)を提供する。
本発明の方法(2)において、前記無機酸水溶液が、0.1質量%以上の塩酸(HCl)水溶液であることが好ましい。
また、本発明の方法(2)において、前記無機酸水溶液が、0.1質量%以上の硫酸(H2SO4)水溶液であることが好ましい。
また、本発明の方法(2)において、前記フッ化水素酸(HF)水溶液が、フッ化水素酸を0.1〜3質量%含有することが好ましい。
また、本発明の方法(2)において、前記フッ化水素酸(HF)水溶液が、フッ化水素酸を0.5〜20質量%含有することが好ましい。
本発明の方法(1),(2)において、前記金属は、溶媒中に分散されたスラリーとして、供給することが好ましい。
該スラリーは、前記金属の含有量が1質量%以上であることが好ましい。
本発明の方法(1),(2)において、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属に加えて、マンガン、マグネシウムおよびニッケルからなる群から選択される少なくとも1種の金属を、前記面に供給してもよい。
本発明の方法(1),(2)において、前記エッチング処理する面に対し、水、または、pH10以上のアルカリ水溶液を洗浄液とする予備洗浄を行ってもよい。
本発明の方法(1)において、前記ガラス基板は、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板であることが好ましい。
本発明の方法(2)において、前記ガラス基板は、カバーガラス用のガラス基板であることが好ましい。
また、本発明は、本発明の方法(1),(2)により処理されたガラス基板を提供する。
本発明の方法(1)によれば、フロート法で製造されたガラス基板表面に存在する酸化スズ系のドロス、特に、研磨による除去が困難な型残りドロスを極めて速やかに除去できる。
本発明の方法(1)では、塩素イオン、ヨウ素イオン、臭素イオン、フッ素イオン、および、硫酸イオンからなる群から選択される少なくとも1つのイオンを含む無機酸水溶液と、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属と、を、ガラス基板のエッチング処理面に供給するため、ガラス基板をエッチング処理液に浸漬させる方法に比べて廃液の発生量が少なく、かつ、有毒な六価クロムが発生するおそれがないため、廃液処理の負担が緩和される。
また、本発明の方法(1)では、ガラス基板表面を、型残りドロスのなく、平滑な状態にするための研磨量が、0.1μm以上2μm以下と少なくて済むため、ガラス基板の生産性が向上する。
本発明の方法(2)によれば、フロート法で製造されたガラス基板表面に存在する酸化スズ系のドロスのうち通常ドロス、および、酸化スズ系以外のドロスを極めて速やかに除去できる。
本発明の方法(2)では、塩酸、および、硫酸からなる群から選択される無機酸水溶液と、フッ化水素酸(HF)水溶液と、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属と、を、ガラス基板のエッチング処理面に供給するため、ガラス基板をエッチング処理液に浸漬させる方法に比べて廃液の発生量が少なく、かつ、有毒な六価クロムが発生するおそれがないため、廃液処理の負担が緩和される。
図1は、通常ドロス、型残りドロスのそれぞれについて、ガラス基板の研磨量と、該ガラス基板表面に存在するドロスの消失率と、の関係を示したグラフである。 図2(A)〜(C)は、本発明の方法(1)におけるエッチング処理の機構を示した模式図である。 図3は、実施例2、および、比較例2,3について、ガラス基板の研磨量と、該ガラス基板表面に存在する型残りドロスの消失率との関係を示したグラフである。 図4は、実施例3、比較例4について、ガラス基板の研磨量と、該ガラス基板のスズ接触面に存在する通常ドロスの消失率との関係を示したグラフである。
以下、本発明の方法(1),(2)を説明する。
本発明の方法(1)は、フロート法で製造されたガラス基板表面に存在する酸化スズ系のドロス、特に、型残りドロスを除去する方法である。本発明の方法(1)は、基板表面に酸化スズ系のドロスが存在すると、基板表面に形成される配線を断線させるおそれがある、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板へ適用するのに好適である。
本発明の方法(1)では、塩素イオン、ヨウ素イオン、臭素イオン、フッ素イオン、および、硫酸イオンからなる群から選択される少なくとも1つのイオンを含むpH3以下の無機酸水溶液と、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属とを、それぞれ、該無機酸および該金属の単位面積当たりの供給量が1g/m2以上となるように、フロート法で製造されたガラス基板の溶融金属浴との接触面に供給して、該面をエッチング処理した後、該エッチング処理された面を、研磨量が0.1μm以上2μm以下になるように機械研磨または化学機械研磨する。
図2(a)〜(c)は、本発明の方法(1)におけるエッチング処理の機構を示した模式図である。図2(a)〜(c)に示すガラス基板は、その上面がフロート法での製造時における溶融金属浴との接触面である。以下、本明細書において、フロート法での製造時における溶融金属浴との接触面のことを、「ガラス基板のスズ接触面」ともいう。
図2(a)において、ガラス基板のスズ接触面(上面)には型残りドロスが存在している。この型残りドロスは、寸法が数μmの酸化スズ粒を中心とし、該SnO2粒子からガラス基板上に、SnO2拡散領域が、厚さ数十nmの薄膜状に形成されている。
図示した例では、塩素イオン、ヨウ素イオン、臭素イオン、フッ素イオン、および、硫酸イオンからなる群から選択される少なくとも1つのイオンを含むpH3以下の無機酸水溶液として、塩酸(HCl)水溶液を使用し、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属として、亜鉛(Zn)を使用した。
ガラス基板のスズ接触面(上面)に供給された亜鉛(Zn)と、塩酸(HCl)と、が反応して活性水素(H+)が発生する(下記式(1))。
Zn + 2HCl → ZnCl2 + 2H+↑ (1)
このようにして発生した活性水素(H+)が、図2(b)に示すように、ガラス基板のスズ接触面(上面)に存在する型残りドロスに作用し、SnO2粒の表面およびSnO2拡散領域に存在する酸化スズ(SnO2)を金属スズ(Sn)へと還元させる(下記式(2))。
SnO2 + 4H+ → Sn + 2H2O (2)
なお、図2(b)では、活性水素による作用で金属スズ(Sn)へと還元された部位を、濃いグレートーンで示した。
そして、還元により金属スズ(Sn)となった部位が塩酸(HCl)と反応して、図2(c)に示すように、四塩化スズ(SnCl4)として、ガラス基板のスズ接触面(上面)から除去される(下記式(3))。
Sn + 4HCl → SnCl4 + 2H2↑ (3)
この結果、図2(c)に示すように、ガラス基板のスズ接触面(上面)には、SnO2粒のみが存在する状態となる。SnO2粒は高さがあるため、続いて実施する機械研磨または化学研磨時に圧力が加わることによって容易に除去できる。そのため結果的に少ない研磨量で型残りドロスを除去できる。
なお、エッチング処理の条件によっては、図2(b)に示す手順でSnO2粒が全て金属スズへと還元される。この場合、図2(c)に示す手順でガラス基板のスズ接触面(上面)から型残りドロスが全て除去される。
但し、型残りドロスが除去された部位には凹欠点が生じるため、エッチング処理の実施後には研磨の実施が必要となる。
本発明の方法(1)において、塩素イオン、ヨウ素イオン、臭素イオン、フッ素イオン、および、硫酸イオンからなる群から選択される少なくとも1つのイオンを含む無機酸水溶液を使用するのは、上記(1)および(3)に示す反応の進行には、塩素イオン、ヨウ素イオン、臭素イオン、フッ素イオン、または、硫酸イオンの存在が必要となるからである。
上記のイオンを含む無機酸水溶液としては、塩酸(HCl)以外に、フッ化水素酸(HF)、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)、過塩素酸(HClO4)、ヨウ素酸(HIO3)、または、硫酸(H2SO4)の水溶液を用いることができ、これらの酸を複数含む水溶液も用いることができる。
これらの中でも、塩酸(HCl)、硫酸(H2SO4)またはフッ化水素酸(HF)の水溶液が、エッチング作用の高さ、入手しやすさ等の理由から好ましく、塩酸(HCl)水溶液がより好ましい。
本発明の方法(1)において、pH3以下の無機酸水溶液をエッチング処理液として使用するのは、エッチング処理液のpHが3よりも高いと、型残りドロスの主成分である酸化スズ(SnO2)が不動態化して、エッチング処理が進行しなくなるからである。
本発明の方法(1)において、pH2以下の無機酸水溶液を使用することがより好ましく、pH1以下の無機酸水溶液を使用することがさらに好ましい。
本発明の方法(1)において、pH3以下の無機酸水溶液として塩酸(HCl)水溶液を使用する場合、塩酸(HCl)を0.1質量%以上含有する水溶液であることが、エッチング作用を発揮するうえで好ましく、1質量%以上含有する水溶液であることがより好ましく、10質量%以上含有する水溶液であることがさらに好ましい。
但し、装置の腐食防止等の観点からは、塩酸(HCl)含有量は35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
本発明の方法(1)において、pH3以下の無機酸水溶液として硫酸(H2SO4)水溶液を使用する場合、硫酸(H2SO4)を0.1質量%以上含有する水溶液であることが、エッチング作用を発揮するうえで好ましく、1質量%以上含有する水溶液であることがより好ましく、10質量%以上含有する水溶液であることがさらに好ましい。
但し、装置の腐食防止および金属硫化物の生成の抑制の観点からは、硫酸(H2SO4)含有量は50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
本発明の方法(1)において、pH3以下の無機酸水溶液としてフッ化水素酸(HF)水溶液を使用する場合、フッ化水素酸(HF)を0.5〜20質量%含有する水溶液であることが好ましい。
フッ化水素酸を0.5質量%以上含有する水溶液であれば、型残りドロスのエッチング作用が十分になる。一方、フッ化水素酸を20質量%以下含有する水溶液であれば、フッ化水素酸によるガラス基板のエッチング作用により、ガラス基板のスズ接触面にピットを呼ばれる凹欠点を生じさせるおそれがない。
フッ化水素酸の含有量は、1〜15質量%であることがより好ましい。フッ化水素酸の含有量が1〜15質量%であれば、エッチングレートを制御しやすくなり、且つ、前記水溶液の寿命を長くできる。
本発明の方法(1)では、亜鉛(Zn)以外に、鉄(Fe)またはアルミニウム(Al)を使用することができる。これらの金属の存在下で、上記式(1)の反応が進行するからである。これらの金属は2種以上併用してもよい。
これらの中でも、亜鉛(Zn)が、エッチング作用の高さから好ましい。
本発明の方法(1)では、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属に加えて、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)およびニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1種の金属を併用してもよい。これらの金属の併用により、上記式(1)の反応が促進されることが期待される。
本発明の方法(1)において、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属、および、これらの金属と併用する場合がある、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)およびニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1種の金属は、金属粉末として、ガラス基板のスズ接触面に供給することも可能である。但し、大気雰囲気下のような酸素が存在する雰囲気下で金属粉末を供給すると、爆発のおそれがあるため、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下でエッチング処理を実施する必要がある。
酸素が存在する雰囲気下でエッチング処理を実施する場合、亜鉛(Zn)等の金属を溶媒に分散させたスラリーとして、ガラス基板のスズ接触面に供給することが好ましい。この目的で使用する溶媒としては、水等を使用できる。また、この溶媒には、ポリエチレングリコール等の粘性調整剤を加えてもよい。
スラリーとして、亜鉛等の金属を供給する場合、スラリー中の各金属の含有量が1質量%以上であることが、エッチング作用を発揮するうえで好ましく、5質量%以上含有することがより好ましく、10質量%以上含有することがさらに好ましい。スラリー中の各金属の含有量が10質量%以上であれば、エッチングレートが高くなるうえで好ましい。
本発明の方法(1)において、pH3以下の無機酸水溶液は、単位面積当たりの無機酸の供給量(無機酸水溶液が塩酸(HCl)水溶液の場合は、塩酸(HCl)の供給量)が1g/m2以上となるようにガラス基板のスズ接触面に供給する。単位面積当たりの無機酸の供給量が1g/m2未満だと、型残りドロスのエッチング作用が不十分になる。
単位面積当たりの無機酸の供給量は、5g/m2以上であることが好ましく、10g/m2以上であることがより好ましく、20g/m2以上であることがさらに好ましい。単位面積当たりの無機酸の供給量が20g/m2以上であれば、エッチングレートが高くなるうえで好ましい。
本発明の方法(1)において、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属は、単位面積当たりの供給量が1g/m2以上となるようにガラス基板のスズ接触面に供給する。ここで、亜鉛等の金属を溶媒に分散させたスラリーとして供給する場合、該スラリーに含まれる各金属の単位面積当たりの供給量が1g/m2以上となるように供給する。
単位面積当たりの金属の供給量が1g/m2未満だと、型残りドロスのエッチング作用が不十分になる。
単位面積当たりの金属の供給量は、2g/m2以上であることが好ましく、5g/m2以上であることがより好ましく、10g/m2以上であることがさらに好ましい。
本発明の方法(1)において、pH3以下の無機酸水溶液の供給形態は特に限定されない。例えば、ガラス基板のスズ接触面に対して、ノズル等を用いて無機酸水溶液を噴射してもよく、ロールコーター等を用いて、無機酸水溶液を塗布してもよい。
亜鉛等の金属を溶媒に分散させたスラリーとして供給する場合も同様であり、ガラス基板のエッチング面に対して、ノズル等を用いてスラリーを噴射してもよく、ロールコーター等を用いて、スラリーを塗布してもよい。また、フローコートやカーテンコートなどと呼ばれる液循環塗布方式も可能である。
亜鉛等の金属を金属粉末として供給する場合、ノズル等を用いて金属粉末を噴射してもよく、ふるいを用いる方法や静電気を用いる方法も使用可能である。
本発明の方法(1)において、pH3以下の無機酸水溶液、および、亜鉛等の金属は、ガラス基板のスズ接触面全体に供給してもよいし、ガラス基板のスズ接触面のうち、型残りドロスが存在する部位のみに供給してもよい。後者の場合、型残りドロスが存在する部位の面積は通常1m2より小さいため、該当する部位の面積を1m2までスケールアップした場合の供給量が1g/m2以上になるように、pH3以下の無機酸水溶液、および、亜鉛等の金属を供給する。
図2(a)〜(c)では、ガラス基板のスズ接触面が上面になっているが、エッチング処理する際のガラス基板の向きはこれに限定されず、ガラス基板のスズ接触面を下面とした状態でエッチング処理を実施してもよい。この場合、ガラス基板の下方から、pH3以下の無機酸水溶液、および、亜鉛等の金属を供給する。
本発明の方法(1)におけるエッチング処理時間は、0.1秒以上であることが、型残りドロスのエッチング作用を発揮するうえで好ましく、1秒以上であることがより好ましく、10秒以上であることがさらに好ましい。
無機酸水溶液として、フッ化水素酸(HF)水溶液を使用する場合、エッチング処理時間が長すぎると、フッ化水素酸によるガラスのエッチング作用により、ガラス基板のスズ接触面にピットと呼ばれる凹欠点を生じさせるおそれがある。このため、エッチング処理時間は、300秒以下であることが好ましく、60秒以下であることがより好ましい。
本発明の方法(1)において、エッチング処理の実施後、ガラス基板のスズ接触面を、水、アルカリ性洗剤、酸性洗剤、または、希釈した酸を用いて洗浄する。
本発明の方法(1)では、上記の手順でエッチング処理されたガラス基板のスズ接触面を、研磨量が0.1μm以上2μm以下になるように機械研磨または化学機械研磨する。
図2(c)に示すように、ガラス基板のスズ接触面(上面)にSnO2粒が存在する場合、この研磨処理によって除去される。一方、エッチング処理によって、ガラス基板のスズ接触面に存在していた型残りドロスが全て除去された場合、型残りドロスが除去された部位に生じた凹欠点が、この研磨処理によって平坦化される。
なお、ガラス基板のスズ接触面に型残りドロス以外の形態のドロス、すなわち、通常ドロスが存在していた場合、上述したエッチング処理を実施し、該エッチング処理された面(スズ接触面)を機械研磨または化学機械研磨することによって除去される。
ガラス基板のスズ接触面に対して裏面側、すなわち、フロート法による製造時に、ガラスリボンが溶融金属浴で接触していなかった側の面にも、酸化スズ(SnO2)で覆われた金属スズを主成分とする異物が存在する場合がある。このような場合、本発明の方法をガラス基板のスズ接触面に対して裏面側に適用することで、すなわち、該裏面側に対して上述したエッチング処理を実施し、該エッチング処理された面を機械研磨または化学機械研磨することによって、酸化スズ(SnO2)で覆われた金属スズを主成分とする異物を容易に除去できる。
本発明の方法(1)における機械研磨および化学機械研磨には、ガラス基板の研磨に使用される通常の手順を適用することができる。たとえば、機械研磨の場合、発泡ポリウレタン製の研磨パッドと、コロイダルシリカ、アルミナ、ジルコニア等の研磨剤とを、使用し、4B片面研磨機、オスカー式研磨機、または連続式研磨機等の研磨機を用いて所定の研磨荷重で実施する。一方、化学機械研磨の場合、発泡ポリウレタン製の研磨パッドと、酸化セリウムを含む研磨剤と、を使用し、4B片面研磨機、オスカー式研磨機、または連続式研磨機等の研磨機を用いて所定の研磨荷重で実施する。機械研磨および化学機械研磨のいずれの場合も、研磨荷重は20〜200g/cm2であることが好ましい。
研磨荷重が20g/cm2以上であれば、研磨速度が速く、所定の研磨量を達成するのに短時間で済む。一方、研磨荷重が200g/cm2以下であれば、ガラス基板端部にクラックが発生した場合でも該クラックが伸張せず、ガラス基板が破損するおそれがない。
研磨荷重は、40〜190g/cm2であることがより好ましく、60〜180g/cm2であることがさらに好ましい。
機械研磨、化学機械研磨のいずれの場合も、使用する研磨パッドの硬度がD硬度80度以下、A硬度(JIS K6253、2012年制定)10度以上であることが好ましく、D硬度70度以下、A硬度20以上がより好ましい。使用する研磨パッドの硬度がD硬度80度以下であれば、研磨によってガラス基板のスズ接触面にキズが生じるおそれがない。一方、使用する研磨パッドの硬度がA硬度10度以上であれば、研磨速度が速く、所定の研磨量を達成するのに短時間で済む。さらに、研磨を2段、3段と多段化し、各研磨段階において、上記の硬度範囲内の硬度が異なる研磨パッドを使用してもよい。
本発明の方法(1)では、ガラス基板のスズ接触面に対して、上述したエッチング処理を実施し、該エッチング処理された面(スズ接触面)を機械研磨または化学機械研磨することによって、該スズ接触面に存在していた型残りドロスが除去される。ガラス基板のスズ接触面に型残りドロス以外形態のドロス、すなわち、通常ドロスが存在している場合は、これらのドロスも除去される。
本発明の方法(1)は、フロート法で製造されたガラス基板に幅広く適用できるが、型残りドロスの存在が問題となるフラットパネルディスプレイ用のガラス基板に適用するのが特に好ましい。
本発明の方法(2)は、フロート法で製造されたガラス基板表面に存在するドロスを除去する方法であり、酸化スズ系のドロスのうち、通常ドロス、および、酸化スズ系以外のドロスの両方を除去対象とする。
なお、酸化スズ系のドロスのうち通常ドロスのみを除去対象とする理由は以下の通り。
フラットパネルディスプレイ用のガラス基板に使用される無アルカリガラスのような粘性の高いガラスの場合、フロート法における成形域の温度が高いため、ガラスリボンの表面に付着した金属スズが燃焼するため型残りドロスが極めて発生し易いが、カバーガラス等に用いられるアルミノシリケートガラスやソーダライムガラスのような粘性の低いガラスの場合、フロート法における成形域の温度が、無アルカリガラスのような粘性の高いガラスに比べると100℃以上低いため、ガラスリボンの表面に付着した金属スズが燃焼しないため型残りドロスが発生しない。このため、通常ドロスのみを除去対象とすることができる。
本発明の方法(2)は、製造過程で基板表面の研磨処理を通常実施しない用途のガラス基板へ適用するのに好適である。このようなガラス基板としては、たとえば、カバーガラス用のガラス基板がある。カバーガラス用のガラス基板は、基板表面に最大径が10μm以上のドロスが存在すると、目視により確認できるため、ガラス基板の欠点となるため問題となるが、基板の表面性状、すなわち、平坦度や表面粗さに関する要求は、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板に比べるとはるかに低いため、製造過程で基板表面の研磨処理を通常実施されず、研磨処理の実施は、製造コストの増加につながるため望ましくない。
本発明の方法(2)では、塩酸、および、硫酸からなる群から選択される、pH3以下の無機酸水溶液と、フッ化水素酸(HF)水溶液と、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属とを、それぞれ、該無機酸、該フッ化水素酸水溶液、および、該金属の単位面積当たりの供給量が1g/m2以上となるように、フロート法で製造されたガラス基板の溶融金属浴との接触面に供給して、該面をエッチング処理する。
本発明の方法(2)におけるエッチング処理の機構は以下の通りである。
酸化スズ系のドロスのうち、本発明の方法(2)で除去対象とする通常ドロスは、ガラス基板のスズ接触面に、寸法が数百nmオーダーの粒が集合した形態、すなわち、酸化スズ(SnO2)の粒子として存在している。
ガラス基板のスズ接触面に対して、塩酸(HCl)、および、硫酸(H2SO4)からなる群から選択される、pH3以下の無機酸水溶液、および、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属を供給すると、上記式(1)に示したのと同様の機構で、無機酸と金属とが反応して活性水素(H+)が発生する。
そして、発生した活性水素(H+)が、ガラス基板のスズ接触面に存在する通常ドロスに作用し、上記式(2)に示したのと同様の機構で、酸化スズ(SnO2)粒子の表面を金属スズ(Sn)へと還元させる。
そして、還元により金属(Sn)となった部位が無機酸と反応して、上記式(3)に示したのと同様の機構で、四塩化スズ(SnCl4)(または硫酸スズ(SnSO4))として、ガラス基板のスズ接触面から除去される。
一方、酸化スズ系以外のドロス、すなわち、アルミナ(Al23)やジルコニア(ZrO2)を主成分とするドロスや、ガラスカレットを主成分とするドロスについては、ガラス基板に対する、フッ化水素酸(HF)のエッチング作用により除去される。すなわち、アルミナ(Al23)やジルコニア(ZrO2)を主成分とするドロスは、ガラス基板がエッチングされることにより、基板との接触面積が減少して剥離する。ガラスカレットを主成分とするドロスについても上記と同様ガラス基板がエッチングされることにより、基板との接触面積が減少して剥離する。また、ドロス自体が、フッ化水素酸(HF)のエッチング作用により消滅する場合もある。
但し、本発明の方法におけるフッ化水素酸(HF)のエッチング作用は、特許文献2に記載の方法のようなフッ化水素酸水溶液にガラス基板を浸漬する方法に比べると、エッチング作用が弱いため、基板表面にピットと呼ばれる凹欠点を生じさせるおそれがない。
本発明の方法(2)において、塩酸(HCl)、および、硫酸(H2SO4)からなる群から選択される無機酸水溶液を使用するのは、上記式(1)および(3)に示す反応に進行には、塩素イオン、または、硫酸イオンの存在が必要となるからである。これらの無機酸の中で、塩酸(HCl)が、エッチング作用の高さ、入手しやすさ等の理由から好ましい。
本発明の方法(2)において、pH3以下の無機酸水溶液をエッチング処理液として使用するのは、エッチング処理液のpHが3よりも高いと、通常ドロスの主成分である酸化スズ(SnO2)が不動態化して、エッチング処理が進行しなくなるからである。
本発明の方法(2)において、pH2以下の無機酸水溶液を使用することがより好ましく、pH1以下の無機酸水溶液を使用することがさらに好ましい。
本発明の方法(2)において、pH3以下の無機酸水溶液として塩酸(HCl)水溶液を使用する場合、塩酸(HCl)を0.1質量%以上含有する水溶液であることが、エッチング作用を発揮するうえで好ましく、1質量%以上含有する水溶液であることがより好ましく、10質量%以上含有する水溶液であることがさらに好ましい。
但し、装置の腐食防止等の観点からは、塩酸(HCl)含有量は35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
本発明の方法(2)において、pH3以下の無機酸水溶液として硫酸(H2SO4)水溶液を使用する場合、硫酸(H2SO4)を0.1質量%以上含有する水溶液であることが、エッチング作用を発揮するうえで好ましく、1質量%以上含有する水溶液であることがより好ましく、10質量%以上含有する水溶液であることがさらに好ましい。
但し、装置の腐食防止および金属硫化物の生成の抑制の観点からは、硫酸(H2SO4)含有量は50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
一方、酸化スズ系以外のドロスを除去するには、上述したように、フッ化水素酸(HF)によるエッチング作用が必要となる。
本発明の方法(2)において、フッ化水素酸(HF)水溶液をエッチング処理液として使用するのは、上述したようにガラスに対するエッチング作用が必要となるためである。
本発明の方法(2)におけるフッ化水素酸(HF)水溶液としては、フッ化水素酸(HF)を0.1〜3質量%含有する水溶液を使用できる。フッ化水素酸を0.1質量%以上含有する水溶液であれば、ガラス基板に対するフッ化水素酸の(HF)のエッチング作用が、酸化スズ以外のドロスを除去するのに十分である。一方、フッ化水素酸を3質量%以下含有する水溶液であれば、ガラス基板に対するフッ化水素酸(HF)のエッチング作用により、ガラス基板のスズ接触面にピットを呼ばれる凹欠点を生じさせるおそれがない。
フッ化水素酸の含有量は、0.2〜2質量%であることがより好ましい。フッ化水素酸の含有量が0.2〜2質量%であれば、エッチングレートを制御しやすくなり、且つ、前記水溶液の寿命を長くできる。
本発明の方法(2)において、ガラス基板のスズ接触面に生じる凹欠点があまり問題にならない場合には、フッ化水素酸(HF)水溶液としては、フッ化水素酸(HF)を0.5〜20質量%含有する水溶液を使用できる。フッ化水素酸を0.5質量%以上含有する水溶液であれば、酸化スズ以外のドロスのエッチング作用に加えて、ガラス基板の強度を向上させる効果が得られる。ガラス基板の強度が向上する理由は、搬送ローラとの接触により亀裂が生じた場合でも亀裂の先端がエッチングにより丸くなり、伸展しにくくなるためである。
一方、フッ化水素酸を20質量%以下含有する水溶液であれば、ガラス基板に対するフッ化水素酸(HF)のエッチング作用により、ガラス基板のスズ接触面にピットを呼ばれる凹欠点を顕著に生じさせるおそれがない。
フッ化水素酸の含有量は、1〜15質量%であることがより好ましい。フッ化水素酸の含有量が1〜15質量%であれば、エッチングレートを制御しやすくなり、且つ、前記水溶液の寿命を長くできる。
本発明の方法(2)では、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属を使用する。これらの金属の存在下で、上記式(1)の反応が進行するからである。これらの金属は2種以上併用してもよい。
これらの中でも、亜鉛(Zn)が、エッチング作用の高さから好ましい。
本発明の方法(2)では、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属に加えて、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)およびニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1種の金属を併用してもよい。これらの金属の併用により、上記式(1)の反応が促進されることが期待される。
本発明の方法(2)において、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属、および、これらの金属と併用する場合がある、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)およびニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1種の金属は、金属粉末として、ガラス基板のスズ接触面に供給することも可能である。但し、大気雰囲気下のような酸素が存在する雰囲気下で金属粉末を供給すると、爆発のおそれがあるため、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下でエッチング処理を実施する必要がある。
酸素が存在する雰囲気下でエッチング処理を実施する場合、亜鉛(Zn)等の金属を溶媒に分散させたスラリーとして、ガラス基板のスズ接触面に供給することが好ましい。この目的で使用する溶媒としては、水等を使用できる。また、この溶媒には、ポリエチレングリコール等の粘性調整剤を加えてもよい。
スラリーとして、亜鉛等の金属を供給する場合、スラリー中の各金属の含有量が1質量%以上であることが、エッチング作用を発揮するうえで好ましく、5質量%以上含有することがより好ましく、10質量%以上含有することがさらに好ましい。スラリー中の各金属の含有量が10質量%以上であれば、エッチングレートが高くなるうえで好ましい。
本発明の方法(2)において、pH3以下の無機酸水溶液(塩酸(HCl)水溶液または硫酸(H2SO4)水溶液)は、単位面積当たりの無機酸の供給量(無機酸水溶液が塩酸(HCl)水溶液の場合は塩酸(HCl)の供給量、無機酸水溶液が硫酸(H2SO4)水溶液の場合は硫酸(H2SO4)の供給量))が1g/m2以上となるようにガラス基板のスズ接触面に供給する。単位面積当たりの無機酸の供給量が1g/m2未満だと、酸化スズ系のドロスである、通常ドロスのエッチング作用が不十分になる。
単位面積当たりの無機酸の供給量は、5g/m2以上であることが好ましく、10g/m2以上であることがより好ましく、20g/m2以上であることがさらに好ましい。単位面積当たりの無機酸の供給量が20g/m2以上であれば、エッチングレートが高くなるうえで好ましい。
本発明の方法(2)において、フッ化水素酸(HF)水溶液は、単位面積当たりのフッ化水素酸(HF)の供給量が0.05g/m2以上となるようにガラス基板のスズ接触面に供給する。単位面積当たりのフッ化水素酸(HF)の供給量が0.05g/m2未満だと、ガラス基板に対するフッ化水素酸(HF)のエッチング作用が、酸化スズ系以外のドロスの除去には不十分になる。
単位面積当たりのフッ化水素酸(HF)の供給量は、0.5g/m2以上であることが好ましく、2g/m2以上であることがより好ましく、5g/m2以上であることがさらに好ましい。単位面積当たりのフッ化水素酸(HF)の供給量が5g/m2以上であれば、エッチングレートが高くなるうえで好ましい。
本発明の方法(2)において、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属は、単位面積当たりの供給量が1g/m2以上となるようにガラス基板のスズ接触面に供給する。ここで、亜鉛等の金属を溶媒に分散させたスラリーとして供給する場合、該スラリーに含まれる各金属の単位面積当たりの供給量が1g/m2以上となるように供給する。
単位面積当たりの金属の供給量が1g/m2未満だと、酸化スズ系のドロスである、通常ドロスのエッチング作用が不十分になる。
単位面積当たりの金属の供給量は、2g/m2以上であることが好ましく、5g/m2以上であることがより好ましく、10g/m2以上であることがさらに好ましい。
本発明の方法(2)において、pH3以下の無機酸水溶液、フッ化水素酸(HF)水溶液、および、亜鉛等の金属の供給形態については、本発明の方法(1)について記載したのと同様である。
本発明の方法(2)において、pH3以下の無機酸水溶液、フッ化水素酸(HF)水溶液、および、亜鉛等の金属は、ガラス基板のスズ接触面全体に供給してもよいし、ガラス基板のスズ接触面のうち、ドロス(酸化スズ系のドロス、および、酸化スズ系以外のドロス)が存在する部位のみに供給してもよい。後者の場合、ドロスが存在する部位の面積は通常1m2より小さいため、該当する部位の面積を1m2までスケールアップした場合の供給量が1g/m2以上になるように、pH3以下の無機酸水溶液、および、亜鉛等の金属を供給する。
本発明の方法(2)におけるエッチング処理時間は、0.1秒以上であることが、ドロス(酸化スズ系のドロス、および、酸化スズ系以外のドロス)のエッチング作用を発揮するうえで好ましく、1秒以上であることがより好ましく、10秒以上であることがさらに好ましい。
但し、エッチング処理時間が長すぎると、ガラス基板に供給された上記水溶液が乾燥してしみになる恐れがある。このため、エッチング処理時間は、300秒以下であることが好ましく、60秒以下であることがより好ましい。
本発明の方法(2)において、エッチング処理の実施後、ガラス基板のスズ接触面を、水、アルカリ性洗剤、酸性洗剤、または、希釈した酸を用いて洗浄する。
本発明の方法(2)は、フロート法で製造されたガラス基板に幅広く適用できるが、酸化スズ系のドロスのうち、通常ドロス、および、酸化スズ系以外のドロスの存在が問題となるカバーガラス用のガラス基板に適用するのが特に好ましい。
その発生機構から、酸化スズ系以外のドロスは、フロート法以外の製造方法、たとえば、ダウンドロー法やリドロー法で製造されたガラス基板の基板表面、具体的には、搬送ローラとの接触面にも存在する場合がある。本発明の方法(2)によれば、ダウンドロー法やリドロー法で製造されたガラス基板の基板表面に存在するドロスも除去できる。
本発明の方法(1),(2)は、ガラス基板を構成するガラスに応じて適宜選択できる。本発明の方法(1)は、粘性が高く、フロート法における成形域の温度が高いガラスに好適である。このようなガラスの具体例としては、ガラス組成にアルカリ金属成分を実質的に含まない、いわゆる無アルカリのアルミノホウケイ酸ガラス(以下、無アルカリガラスともいう。)が例示される。なお、アルカリ金属成分を実質的に含まないとは、ガラス組成中におけるアルカリ金属酸化物の含有量が1質量%以下であることをいう。
一方、本発明の方法(2)は、粘性が低く、フロート法における成形域の温度が低いガラスに好適である。このようなガラスの具体例としては、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス等が例示される。
本発明の方法(1),(2)では、フロート法で製造されたガラス基板の用途に応じて、問題となる大きさのドロスが除去できればよい。したがって、ガラス基板上にドロスが存在する場合でも、ガラス基板の使用上、問題とならない大きさであれば、このドロスは除去しなくてもよい。
本発明の方法(1),(2)において、エッチング処理する面、すなわち、ガラス基板のスズ接触面全体に対し、水、または、pH10以上のアルカリ水溶液を洗浄液とする予備洗浄を行うことが好ましい。
ガラス基板の表面には、保管時や取扱い時に有機物系の汚れが付着している場合がある。このような有機物系の汚れの具体例としては、ガラス基板の取扱い時に使用する手袋に付着した油汚れ、ガラス基板に素手で触った場合に付着した指紋、ガラス基板の保管時に使用する保護紙に付着した油汚れ等がある。
これら有機物系の汚れが基板表面に付着した状態で、エッチング処理を実施すると、エッチング処理液(無機酸水溶液、フッ化水素酸水溶液、亜鉛等の金属)をガラス基板のスズ接触面に噴霧した際に、該スズ接触面の濡れ性が低下して、エッチング作用が低下するおそれがある。予備洗浄により有機物系の汚れを予め除去することで、エッチング作用が好ましく発揮される。
予備洗浄では、上記の洗浄液を使用してブラシ洗浄を行うことが好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1
フロート法で製造されたガラス基板(50mm角、無アルカリガラス製)を18枚準備した。該ガラス基板のスズ接触面にはそれぞれ1点の型残りドロスが存在していた。該ガラス基板のスズ接触面に対し、塩酸(HCl)水溶液(pH0.1、塩酸(HCl)含有量18質量%)と、亜鉛(Zn)を分散させたスラリー(溶媒:水、亜鉛(Zn)含有量30質量%)を供給して、1分間エッチング処理した。ここで、単位面積当たりの塩酸(HCl)の供給量は22g/m2であり、単位面積当たりの亜鉛(Zn)の供給量は20g/m2であった。次に、エッチング処理された面を、研磨量が平均0.6μmになるように、発泡ポリウレタン製の研磨パッド(D硬度30度)と、研磨剤として酸化セリウムを使用し、4B片面研磨機を用いて所定の研磨荷重(50g/cm2)で化学機械研磨した。化学機械研磨の終了後、ガラス基板の表面に存在していた型残りドロスは全て除去されていた。
比較例1
フロート法で製造されたガラス基板(50mm角、無アルカリガラス製)を19枚準備した。該ガラス基板のスズ接触面にはそれぞれ1点の型残りドロスが存在していた。該ガラス基板のスズ接触面に対し、エッチング処理を施さすことなしに、実施例1と同様の手順で、化学機械研磨を実施した。型残りドロスのうち、2点のみが除去され、残りの17点は除去できなかった。
実施例2、比較例2,3
フロート法で製造されたガラス基板(50mm角、無アルカリガラス製)を18枚準備した。該ガラス基板のスズ接触面にはそれぞれ1点の型残りドロスが存在していた。該ガラス基板のスズ接触面に対し、塩酸(HCl)水溶液(pH0.1、塩酸(HCl)含有量18質量%)と、亜鉛(Zn)を分散させたスラリー(溶媒:水、亜鉛(Zn)含有量30質量%)を供給して、1分間エッチング処理した。ここで、単位面積当たりの塩酸(HCl)の供給量は22g/m2であり、単位面積当たりの亜鉛(Zn)の供給量は20g/m2であった。次に、該エッチング処理された面の研磨量が平均0.1μmになるように、発泡ポリウレタン製の研磨パッド(D硬度30度)と、研磨剤として酸化セリウムを使用し、4B片面研磨機を用いて所定の研磨荷重(50g/cm2)で化学機械研磨を繰り返し行い、ガラス基板の研磨量と、ドロスの消失率と、の関係を評価したものを実施例2とした。
フロート法で製造されたガラス基板(50mm角、無アルカリガラス製)を19枚準備した。該ガラス基板のスズ接触面にはそれぞれ1点の型残りドロスが存在していた。該ガラス基板のスズ接触面に対し、エッチング処理を施さすことなしに、実施例2と同様の手順で化学機械研磨を実施し、ガラス基板の研磨量と、ドロスの消失率と、の関係を評価したものを比較例2とした。
フロート法で製造されたガラス基板(50mm角、無アルカリガラス製)を20枚準備した。該ガラス基板のスズ接触面にはそれぞれ1点の型残りドロスが存在していた。該ガラス基板のスズ接触面に対し、塩酸(HCl)水溶液(pH0.1、塩酸(HCl)含有量18質量%)のみを供給して、1分間エッチング処理した。ここで、単位面積当たりの塩酸(HCl)の供給量は22g/m2であった。次に、実施例2と同様の手順で化学機械研磨を実施し、ガラス基板の研磨量と、ドロスの消失率と、の関係を評価したものを比較例3とした。
図3は、実施例2、および、比較例2,3について、ガラス基板の研磨量と、該ガラス基板のスズ接触面に存在する型残りドロスの消失率との関係を示したグラフである。図3中、エッチング処理あり(HClaq/Zn)が実施例2の結果、エッチング処理なしが比較例2の結果、エッチング処理あり(HClaq)が比較例3の結果である。
図3から明らかなように、エッチング処理を実施しなかった比較例2、pH3以下の塩酸(HCl)水溶液のみを供給してエッチング処理を実施した比較例3と比較した場合、ガラス基板のスズ接触面に、pH3以下の塩酸(HCl)水溶液と、亜鉛(Zn)を分散させたスラリーを供給してエッチング処理した後、該エッチング処理された面を化学機械研磨した実施例2では少ない研磨量で型残りドロスが除去できた。
なお、研磨量が0.1μmの場合は、実施例2では消失率が50%であったのに対して、比較例2,3では消失率が0%であった。
実施例3、比較例4
フロート法で製造されたガラス基板(50mm角、無アルカリガラス製)を22枚準備した。該ガラス基板のスズ接触面にはそれぞれ1点の通常ドロスが存在していた。該ガラス基板のスズ接触面に対し、塩酸(HCl)水溶液(pH0.1、塩酸(HCl)含有量18質量%)と、亜鉛(Zn)を分散させたスラリー(溶媒:水、亜鉛(Zn)含有量30質量%)を供給して、1分間エッチング処理した。ここで、単位面積当たりの塩酸(HCl)の供給量は22g/m2であり、単位面積当たりの亜鉛(Zn)の供給量は20g/m2であった。次に、該エッチング処理された面の研磨量が平均0.1μmとなるように、発泡ポリウレタン製の研磨パッド(D硬度30度)と、研磨剤として酸化セリウムを使用し、4B片面研磨機を用いて所定の研磨荷重(50g/cm2)で化学機械研磨を行い、ガラス基板の研磨量と、ドロスの消失率と、の関係を評価したものを実施例3とした。
フロート法で製造されたガラス基板(50mm角、無アルカリガラス製)を16枚準備した。該ガラス基板のスズ接触面にはそれぞれ1点の通常ドロスが存在していた。該ガラス基板のスズ接触面に対し、エッチング処理を施さすことなしに、実施例3と同様の手順で化学機械研磨を実施し、ガラス基板の研磨量と、ドロスの消失率と、の関係を評価したものを比較例3とした。
図4は、実施例3、比較例4について、ガラス基板の研磨量と、該ガラス基板のスズ接触面に存在する通常ドロスの消失率との関係を示したグラフである。図4中、エッチング処理ありが実施例3の結果、エッチング処理なしが比較例4の結果である。
図4から明らかなように、エッチング処理を実施しなかった比較例4と比較した場合、ガラス基板のスズ接触面に、pH3以下の塩酸(HCl)水溶液と、亜鉛(Zn)を分散させたスラリーを供給してエッチング処理した後、該エッチング処理された面を化学機械研磨した実施例3では少ない研磨量で通常ドロスも除去できた。
実施例4
フロート法で製造されたガラス基板(5cm角、無アルカリガラス製)を20枚準備した。該ガラス基板のスズ接触面にはそれぞれ1点の型残りドロスが存在していた。該ガラス基板のスズ接触面に対し、硫酸(H2SO4)水溶液(pH0.4、硫酸(H2SO4)含有量24質量%)と、亜鉛(Zn)を分散させたスラリー(溶媒:水、亜鉛(Zn)含有量30質量%)を供給して、1分間エッチング処理した。ここで、単位面積当たりの硫酸(H2SO4)の供給量22g/m2であり、単位面積当たりの亜鉛(Zn)の供給量は20g/m2であった。次に、エッチング処理された面を、研磨量が平均0.6μmになるように、発泡ポリウレタン製の研磨パッド(D硬度30度)と、研磨剤として酸化セリウムを使用し、4B片面研磨機を用いて所定の研磨荷重(50g/cm2)で化学機械研磨した。化学機械研磨の終了後、ガラス基板の表面に存在していた型残りドロスは全て除去されていた。
比較例5
フロート法で製造されたガラス基板(5cm角、無アルカリガラス製)を20枚準備した。該ガラス基板のスズ接触面にはそれぞれ1点の型残りドロスが存在していた。該ガラス基板のスズ接触面に対し、硫酸の代わりに硝酸(pH−0.2、硝酸(HNO3)含有量30質量%)を用いて実施例4と同様の手順でエッチングおよび化学機械研磨を実施した。型残りドロスのうち、2点のみが除去され、残りの18点は除去できなかった。
実施例5
フロート法で製造されたガラス基板(50mm角、無アルカリガラス製)を19枚準備した。該ガラス基板のスズ接触面にはそれぞれ1点の型残りドロスが存在していた。該ガラス基板のスズ接触面に対し、塩酸(HCl)水溶液(pH0.1、塩酸(HCl)含有量18質量%)と、亜鉛(Zn)を分散させたスラリー(溶媒:水、亜鉛(Zn)含有量30質量%)を供給して、1分間エッチング処理した。ここで、単位面積当たりの塩酸(HCl)の供給量は5g/m2であり、単位面積当たりの亜鉛(Zn)の供給量は1g/m2であった。次に、エッチング処理された面を、研磨量が平均0.6μmになるように、発泡ポリウレタン製の研磨パッド(D硬度30度)と、研磨剤として酸化セリウムを使用し、4B片面研磨機を用いて所定の研磨荷重(50g/cm2)で化学機械研磨した。化学機械研磨の終了後、ガラス基板の表面に存在していた型残りドロスのうち13点が除去され、6点が除去できなかった。
比較例6
フロート法で製造されたガラス基板(50mm角、無アルカリガラス製)を19枚準備した。該ガラス基板のスズ接触面にはそれぞれ1点の型残りドロスが存在していた。該ガラス基板のスズ接触面に対し、単位面積当たりの塩酸(HCl)の供給量を0.05g/m2、単位面積当たりの亜鉛(Zn)の供給量を0.05g/m2とした以外は実施例5と同様の手順で、エッチングおよび化学機械研磨を実施した。型残りドロスのうち、2点のみが除去され、残りの17点は除去できなかった。
実施例6
フロート法で製造されたガラス基板(50mm角、アルミノシリケートガラス製)を92枚準備した。該ガラス基板のスズ接触面にはそれぞれ1点の通常ドロスまたは酸化スズ系以外のドロスが存在していた。該ガラス基板のスズ接触面に対し、塩酸(HCl)とフッ酸(HF)の混合水溶液(pH0.5、塩酸(HCl)含有量9質量%、フッ酸(HF)含有量0.6質量%)と、亜鉛(Zn)を分散させたスラリー(溶媒:水、亜鉛(Zn)含有量30質量%)を供給して、1分間エッチング処理した。ここで、単位面積当たりの塩酸(HCl)およびフッ酸(HF)の供給量はそれぞれ11g/m2および0.7g/m2であり、単位面積当たりの亜鉛(Zn)の供給量は20g/m2であった。エッチング処理された通常ドロスの視認性を、特開2000−169177号公報、特開2000−169179号公報、および、特開2000−169180号公報の記載と同様の簡易エッジライト検査により評価したところ、エッチング前後で合格率が15%から82%になった。
比較例7
フロート法で製造されたガラス基板(50mm角、アルミノシリケートガラス製)を31枚準備した。該ガラス基板のスズ接触面にはそれぞれ1点の通常ドロスまたは酸化スズ系以外のドロスが存在していた。該ガラス基板のスズ接触面に対し、フッ酸(HF)を供給しない以外は実施例6と同様の手順でエッチングおよび簡易エッジライト検査を実施した。エッチング前後で合格率は19%から29%になった。
比較例8
フロート法で製造されたガラス基板(50mm角、アルミノシリケートガラス製)を35枚準備した。該ガラス基板のスズ接触面にはそれぞれ1点の通常ドロスまたは酸化スズ系以外のドロスが存在していた。該ガラス基板のスズ接触面に対し、塩酸(HCl)を供給しない以外は実施例6と同様の手順でエッチングおよび簡易エッジライト検査を実施した。エッチング前後で合格率は17%から26%になった。
実施例7
フロート法で製造されたガラス基板(50mm角、アルミノシリケートガラス製)を40枚準備した。該ガラス基板のスズ接触面にはそれぞれ1点の通常ドロスまたは酸化スズ系以外のドロスが存在していた。該ガラス基板のスズ接触面に対し、単位面積当たりの塩酸(HCl)およびフッ酸(HF)の供給量をそれぞれ6g/m2および0.4g/m2とし、単位面積当たりの亜鉛(Zn)の供給量を5g/m2とした以外は実施例6と同様の手順でエッチングおよび簡易エッジライト検査を実施した。エッチング前後で合格率は13%から65%になった。
比較例9
フロート法で製造されたガラス基板(50mm角、アルミノシリケートガラス製)を30枚準備した。該ガラス基板のスズ接触面にはそれぞれ1点の通常ドロスまたは酸化スズ系以外のドロスが存在していた。該ガラス基板のスズ接触面に対し、単位面積当たりの塩酸(HCl)およびフッ酸(HF)の供給量をそれぞれ0.6g/m2および0.04g/m2とし、単位面積当たりの亜鉛(Zn)の供給量を0.5g/m2とした以外は実施例6と同様の手順でエッチングおよび簡易エッジライト検査を実施した。エッチング前後で合格率は17%で変化が無かった。

Claims (16)

  1. 塩素イオン、ヨウ素イオン、臭素イオン、フッ素イオン、および、硫酸イオンからなる群から選択される少なくとも1つのイオンを含むpH3以下の無機酸水溶液と、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属とを、それぞれ、前記無機酸および前記金属の単位面積当たりの供給量が1g/m2以上となるように、フロート法で製造されたガラス基板の溶融金属浴との接触面に供給して、該面をエッチング処理した後、該エッチング処理された面を、研磨量が0.1μm以上2μm以下になるように、機械研磨または化学機械研磨することを特徴とする、ガラス基板表面の異物除去方法。
  2. 前記無機酸水溶液が塩酸を0.1質量%以上含有する、請求項1に記載のガラス基板表面の異物除去方法。
  3. 前記無機酸水溶液が硫酸を0.1質量%以上含有する、請求項1に記載のガラス基板表面の異物除去方法。
  4. 前記無機酸水溶液がフッ化水素酸を0.5〜20質量%含有する、請求項1に記載のガラス基板表面の異物除去方法。
  5. 塩酸、および、硫酸からなる群から選択される、pH3以下の無機酸水溶液と、フッ化水素酸(HF)水溶液と、亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属とを、それぞれ、前記無機酸、前記フッ化水素酸水溶液、および、前記金属の単位面積当たりの供給量が1g/m2以上、0.05g/m2以上、および、1g/m2以上となるように、フロート法で製造されたガラス基板の溶融金属浴との接触面に供給して、該面をエッチング処理することを特徴とする、ガラス基板表面の異物除去方法。
  6. 前記無機酸水溶液が、0.1質量%以上の塩酸(HCl)水溶液である、請求項5に記載のガラス基板表面の異物除去方法。
  7. 前記無機酸水溶液が、0.1質量%以上の硫酸(H2SO4)水溶液である、請求項5に記載のガラス基板表面の異物除去方法。
  8. 前記フッ化水素酸(HF)水溶液が、フッ化水素酸を0.1〜3質量%含有する、請求項5〜7のいずれか一項に記載のガラス基板表面の異物除去方法。
  9. 前記フッ化水素酸(HF)水溶液が、フッ化水素酸を0.5〜20質量%含有する、請求項5〜7のいずれか一項に記載のガラス基板表面の異物除去方法。
  10. 前記金属は、溶媒中に分散されたスラリーとして供給される、請求項1〜9のいずれか一項に記載のガラス基板表面の異物除去方法。
  11. 前記スラリーは、前記金属の含有量が1質量%以上である、請求項10に記載のガラス基板表面の異物除去方法。
  12. 亜鉛、鉄およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属に加えて、マンガン、マグネシウムおよびニッケルからなる群から選択される少なくとも1種の金属を前記面に供給する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のガラス基板表面の異物除去方法。
  13. 前記エッチング処理する面に対し、水、または、pH10以上のアルカリ水溶液を洗浄液とする予備洗浄を行う、請求項1〜12のいずれか一項に記載のガラス基板表面の異物除去方法。
  14. 前記ガラス基板は、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス基板表面の異物除去方法。
  15. 前記ガラス基板は、カバーガラス用のガラス基板である、請求項5〜9のいずれか一項に記載のガラス基板表面の異物除去方法。
  16. 請求項1〜15のいずれか一項に記載のガラス基板表面の異物除去方法で処理されたガラス基板。
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