JP2016006245A - 繊維収束剤、繊維状強化材および繊維強化樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
一般的に繊維強化プラスチックに使用されている繊維状強化材は、多数本の細いフィラメントで構成されており、伸度が小さく摩擦などによって毛羽が発生しやすいため、繊維の収束性を向上させることによる毛羽立ちの抑制や、プラスチックとの相溶性の向上などの目的で、繊維収束剤(サイジング剤とも呼ばれる)により表面処理されている。
(2)プロピレン成分以外のオレフィン成分(B)がブテン成分であることを特徴とする(1)に記載の繊維収束剤。
(3)(1)または(2)に記載の繊維収束剤により表面処理された繊維状強化材。
(4)(3)に記載の繊維状強化材と、熱可塑性マトリックス樹脂を含むことを特徴とする繊維強化樹脂組成物。
(5)熱可塑性マトリックス樹脂がポリプロピレンであることを特徴とする(4)に記載の繊維強化樹脂組成物。
本発明の繊維収束剤は、特定組成のポリオレフィン樹脂と水性媒体とを含有する。
混合使用してもよい。
他の成分の含有量(質量比)としては、一般にポリオレフィン樹脂全体の10質量%以下が好ましい。
通常、上述のような方法により不飽和カルボン酸単位を未変性ポリオレフィン樹脂に導入した場合、未反応の不飽和カルボン酸モノマーが、ポリオレフィン樹脂に残存する。
繊維収束剤の乾燥残渣中における不飽和カルボン酸モノマー量が10,000ppm以上の場合、繊維状強化材と熱可塑性マトリックス樹脂との接着性などに悪影響を与え、リサイクルした場合に著しく強度が低下したり、ウェルド部の物性が低下したり、耐光性が劣ることで経時的に退色したり、金型を腐食するといった問題を生ずる場合がある。
ポリオレフィン樹脂中の、不飽和カルボン酸モノマーを低減する方法は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂から減圧留去する方法、ポリオレフィン樹脂を溶媒に溶解させて再沈殿することにより分離する方法、粉末やペレット状にしたポリオレフィン樹脂を水や有機溶媒中で洗浄する方法、ソックスレー抽出法により除去する方法などが挙げられる。中でも、操作性や低減効率の観点から、ポリオレフィン樹脂から減圧留去する方法、ポリオレフィン樹脂を溶媒に溶解させて再沈殿することにより分離する方法、粉末やペレット状にしたポリオレフィン樹脂を水や有機溶媒中で洗浄する方法が好ましい。
例えば、上記の装置にポリオレフィン樹脂、水性媒体等の原料を投入し、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておく。次いで、槽内の温度を80〜240℃、好ましくは100〜220℃、さらに好ましくは100〜200℃、特に好ましくは110〜190℃の温度に保ちつつ、好ましくは粗大粒子が無くなるまで(例えば、5〜300分間)攪拌を続ける。
撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されないが、樹脂が水性媒体中で浮遊状態となる程度の低速の撹拌でよい。したがって、高速撹拌(例えば1000rpm以上)は必須ではなく、簡便な装置でも本発明の繊維収束剤は製造が可能である。
一方、繊維状強化材としてガラス繊維を用いた場合、安価で、高強度、高耐熱性の繊維強化樹脂組成物を得ることができる。
他の添加剤を使用する場合の配合量は特に限定されないが、好ましい配合量としては、繊維強化樹脂組成物全体の0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5質量%程度である。添加剤の配合量が少ない場合、十分な効果が得られにくく、多すぎた場合、成形体の強度が低下するなどの問題が生じる可能性がある。
なお、各種の特性は以下の方法により測定又は評価した。
(1)不飽和カルボン酸成分の含有量
プロピレン(A)とプロピレン以外のオレフィン(B)との合計に対する不飽和カルボン酸成分の含有量は、赤外吸収スペクトル分析(Perkin Elmer System−2000 フーリエ変換赤外分光光度計、分解能4cm−1)により求めた。
(2)不飽和カルボン酸成分以外の樹脂の構成
プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)との質量比は、オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて1H−NMR、13C−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い求めた。13C−NMR分析では定量性を考慮したゲート付きデカップリング法に基づき測定した。
(3)重量平均分子量
重量平均分子量は、GPC分析(東ソー社製HLC−8020、カラムはSHODEX社製KF−804L2本、KF805L1本を連結して用いた。)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、流速1ml/min、40℃の条件で測定した。約10mgの樹脂をテトラヒドロフラン5.5mLに溶解し、PTFEメンブランフィルターでろ過したものを測定用試料とした。ポリスチレン標準試料で作成した検量線から重量平均分子量を求めた。テトラヒドロフランに溶解し難い場合はオルトジクロロベンゼンで溶解した。
(1)ポリオレフィン樹脂粒子の数平均粒子径、重量平均粒子径、および分散度
日機装社製、Nanotrac Wave−UZ152粒度分布測定装置を用いて、数平均粒子径(mn)、重量平均粒子径(mw)を測定した。なお、樹脂の屈折率は1.5とした。
分散度は、下記式に基づき算出した。
分散度=重量平均粒子径(mw)/数平均粒子径(mn)
(2)不飽和カルボン酸モノマー量
繊維収束剤を乾燥することにより得た乾燥残渣を凍結粉砕して得られた微粉末を約0.05g精秤し、20mlのメタノールを抽出溶媒とし、連続転倒混和により室温で21時間抽出を行った。この抽出液をディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過した濾液について、高速液体クロマトグラフィー(Hewlett Packard社製 HP1100、カラムはWaters社製 Puresil 5μm C18 120Å φ4.6mm×250mm(40℃))にて定量した。
不飽和カルボン酸モノマー量が1,000ppm未満の場合、該乾燥残渣量を0.5gに変更して同様に定量した。
検量線は、濃度既知の不飽和カルボン酸モノマー標準サンプルを用いて作成した。
(1)繊維収束剤の付着量測定
繊維収束剤で表面処理された繊維状強化材を約20g採取し質量(W1)を測定した。その後、繊維状強化材を50リットル/分の窒素気流中、温度450℃に設定したマッフル炉(ヤマト科学社製、製品名:F0100)に15分間静置し、繊維収束剤を完全に熱分解させた。そして、常温に冷却した後、繊維束を秤量(W2)して、次式より繊維収束剤付着量を求めた。
繊維収束剤付着量(質量%)=(W1−W2)/W1×100 (i)
(2)収束性
繊維収束剤で表面処理された繊維状強化材のチョップドストランド50gと、ポリプロピレン樹脂ペレット(日本ポリプロ社製、製品名:ノバテックMA3)100gを容積1Lのタンブラーに入れ、10分間混合した後、発生した毛羽を採取して重量を測定し、下記判定基準により評価を行った。
○;0.15g未満、△;0.15以上1.5g未満、×;1.5g以上
(3)接着性
複合材料界面特性評価装置HM410(東栄産業株式会社製)を使用し、マイクロドロップレット法により接着性を評価した。繊維収束剤で表面処理された繊維状強化材をサンプルとし、複合材料界面特性評価装置にセッティングする。装置上で溶融したポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、製品名:ノバテックMA3)のドロップをサンプル上に形成させ、室温で十分に冷却し、測定用の試料を得た。再度測定試料を装置にセッティングし、ドロップを装置ブレードで挟み、サンプルを装置上で0.12mm/分の速度で走行させ、サンプルからドロップを引き抜く際の最大引き抜き荷重Fを測定した。
次式により界面剪断強度τを算出し、繊維状強化材とポリプロピレン樹脂との接着性を評価した。測定数はn=5とし、平均値を用いた。
界面剪断強度τ(単位:MPa)=F/πdl
(F:最大引き抜き荷重 d:繊維状フィラメント直径 l:ドロップの引き抜き方向の粒子径)
(1)曲げ強度
繊維強化樹脂組成物のペレット(ペレットAまたはペレットB)を乾燥させた後、日本製鋼所社製J350EIII型射出成形機を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度60℃で、長さ130±1mm、幅25±0.2mmのテストピースを作製し、ASTM D−790(2004)に規定する試験方法に従い、3点曲げ試験冶具(圧子10mm、支点10mm)を用いて支持スパンを100mmに設定し、クロスヘッド速度5.3mm/分で曲げ強度を測定した。なお、本実施例においては、試験機としてインストロン万能試験機4201型(インストロン社製)を用いた。測定数はn=5とし、平均値を曲げ強度とした。
(2)繊維強化樹脂組成物のリサイクル時の曲げ強度
(1)の曲げ試験後に粉砕した粉砕物30質量%、繊維強化樹脂組成物のペレット(ペレットAまたはペレットB)70質量%の割合でドライブレンドしたペレットを用いて、(1)と同様の条件で作製したテストピースについて、ASTM D−790(2004)に規定する試験方法に従い、3点曲げ試験冶具(圧子10mm、支点10mm)を用いて支持スパンを100mmに設定し、クロスヘッド速度5.3mm/分で曲げ強度を測定した(リサイクル1回目)。なお、本実施例においては、試験機としてインストロン万能試験機4201型(インストロン社製)を用いた。測定数はn=5とし、平均値を曲げ強度とした。
また、上記のリサイクル作業(テストピースの粉砕、ペレットAまたはペレットBとの混合、テストピースの作製)をさらに2回行って得られたテストピースについても、同様に曲げ強度の測定を行った(リサイクル3回目)。
(3)ウェルド部の表面外観
繊維強化樹脂組成物のペレット(ペレットAまたはペレットB)を射出成形機(FANUC社製、商品名「α−100iA」)にて、シリンダー温度250℃、金型温度60℃、射出圧力:(100MPa)で、図1に示す「1」のゲート部から樹脂を射出し、厚み0.4mm、幅40mm、長さ70mmの図1に示す中央部分(幅30mm、長さ50mm)が開いているロの字型形状の成形体を得た。図1中の「2」の部分に現れるウェルド部の表面を目視で観察し、強化繊維の浮き状態を調べた。3,000個の成形体を連続して成形し、初期成形体と3,000個目の成形体を、それぞれ観察した。評価方法を下記に示す。
◎:成形体のウェルド部表面に無機充填材に由来する凹凸が全く見られず、光が十分に反射している。
○:成形体のウェルド部表面に無機充填材に由来する凹凸が見られないが、光の反射が十分でない。
△:成形体のウェルド部表面に無機充填材に由来する凹凸がわずかに見られる。
×:成形体のウェルド部表面に無機充填材に由来する凹凸が観察され、光の反射も悪い。
本発明においては、○および◎を実用に耐えうるものとした。
(4)曲げ弾性率
長さ150mm、幅10mm、厚さ3mmの試験片を1点ゲートで射出成形し、ASTM D790に準拠して23℃で測定した。
なお、試験片を作製するにあたり、射出成形機のシリンダー温度は250℃で、金型温度は60℃、冷却時間は1分で行った。
曲げ弾性率は、5GPa以上が好ましく、6GPa以上がより好ましい。
(5)ウェルド部の曲げ弾性率
長さ150mm、幅10mm、厚さ3mmの試験片を両端からの2点ゲートで射出成形し、中央部にできたウェルド部に対し、(2)曲げ弾性率同様に、ASTM D790に準拠して23℃で測定した。
なお、試験片を作製するにあたり、射出成形機のシリンダー温度は250℃で、金型温度は60℃、冷却時間は1分で行った。
次式により(2)曲げ弾性率と、(3)ウェルド部の曲げ弾性率の比をとり、曲げ弾性率の保持率を算出した。
曲げ弾性率の保持率(%)={(ウェルド部の曲げ弾性率)/(曲げ弾性率)}×100
曲げ弾性率の保持率は60%以上が好ましく、より好ましくは70%以上である。
(6)金型腐食性
射出成形機(FANUC社製S−2000i、および60mm×60mm×4mmtのキャビティの中央に20mm×20mm×2mmtの腐食評価用入れ子を具備した金型を使用し、シリンダー温度250℃、金型温度60℃にて、10000ショット連続成形した後、腐食評価用入れ子を金型から抜き取り、入れ子表面の錆の発生状況を目視で判定した。なお、評価は以下のように行った。○および◎を実用に耐えうるものとした。
◎:特に変化なし
○:わずかに腐食あるいはヤニ状付着物が認められる。(入れ子表面積の3%未満)
△:腐食が認められる。(入れ子表面積の3%〜10%未満)
×:腐食が顕著に認められる。(入れ子表面積の10%以上)
(7)耐光性
繊維強化樹脂組成物のペレット(ペレットB)を乾燥させた後、ペレットB100質量部に対して着色材として赤色染料(大日精化工業社製UP−D 202レッド)を0.3質量部添加して射出成形機(東芝機械社製「EC−100」)を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度60℃で、90mm×50mm×2mmtの板状成形体を作製した。前記板状成形体をキセノンウェザーメーター(アトラス社製Ci4000型)を用いて、JIS K7350−2に準拠し、ブラックパネル温度65℃、湿度50%RH、放射露光量550W/m2(降雨なし)の条件下で1000時間の照射試験を行った。
ここで、JIS Z8722に基づき、分光色差計(日本電色工業社製SE6000)を用いて、照射試験前後での板状成形体の色差△Eを測定(光源:C−2)し、耐光性の判断指標とした。
色差△Eは、実用的には5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=80/20)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下でキシレン470gに加熱溶解させた後、系内温度を140℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸40.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド28.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後6時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。
この析出させた樹脂を、アセトンで1回洗浄し、その後メタノールで1回洗浄することで未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で乾燥して、ポリオレフィン樹脂P−1を得た。
製造例1において、プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=65/35)を用いた以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−2を得た。
製造例1において、析出させた樹脂をトリエチルアミン:アセトン=1:4の混合溶液で1回洗浄し、その後トリエチルアミンを含まないアセトンで1回洗浄した以外は、同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−3を得た。
製造例1において、無水マレイン酸の添加量を70.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を33.0gとし、析出させた樹脂をアセトンで2回洗浄した以外は、同様の方法でポリオレフィン樹脂P−4を得た。
プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=80/20)56gをラボプラストミル装置(東洋精機社製ラボプラストミルR−60型)に投入し、窒素雰囲気下140℃で加熱溶融させた後、系内温度を170℃に保って回転数80rpm攪拌下において、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸3.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド7.0gを10分間かけて加え、その後30分間反応させることにより、ポリオレフィン樹脂P−5を得た。
製造例5において、プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=80/20)に代えて、プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=65/35)を使用し、無水マレイン酸の量を6.0g、ジクミルパーオキサイドを6.0gとした以外は、同様の操作を行ってポリオレフィン樹脂P−6を得た。
製造例5において、無水マレイン酸の添加量を7.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を3.0gとしたこと以外は、同様の方法でポリオレフィン樹脂P−7を得た。
製造例6において、プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=80/20)に代えて、プロピレン−エチレン共重合体(質量比:プロピレン/エチレン=92/8)を用いた以外は、同様の方法でポリオレフィン樹脂P−8を得た。
製造例3において、無水マレイン酸の添加量を24.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を18.5gとした以外は同様の方法で、ポリオレフィン樹脂P−9を得た。
製造例3において、無水マレイン酸の添加量を70.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を33.0gとした以外は同様の方法で、ポリオレフィン樹脂P−10を得た。
製造例5において、無水マレイン酸の添加量を10.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を6.0gとした以外は同様の方法で、ポリオレフィン樹脂P−11を得た。
製造例5において、無水マレイン酸の添加量を7.0gとした以外は同様の方法で、ポリオレフィン樹脂P−12を得た。
製造例1において、無水マレイン酸の添加量を70.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を20.0gとし、アセトンの洗浄工程およびメタノールの洗浄工程を省いた以外は同様の方法で、ポリオレフィン樹脂P−13を得た。
製造例3において、プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=80/20)に代えて、プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=97/3)を使用した以外は同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−14を得た。
製造例3において、プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=80/20)に代えて、プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=50/50)を使用した以外は同様の操作を行って、ポリオレフィン樹脂P−15を得た。
製造例3において、無水マレイン酸の添加量を2.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を1.4gとした以外は、同様の方法でポリオレフィン樹脂P−16を得た。
製造例5において、無水マレイン酸の添加量を6.0gとし、ジクミルパーオキサイドを6.0gとし、反応により得られた樹脂をトリエチルアミン:アセトン=1:4の混合溶液中に投入し、撹拌して樹脂の洗浄を行い、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥してポリオレフィン樹脂P−17を得た。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂(P−1)、90.0gのn−プロピルアルコール(NPA)(和光純薬社製)、9.0gのN,N−ジメチルエタノールアミン(DMEA)及び141.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、撹拌状態を維持したまま、空冷にて内温が40℃になるまで冷却した。さらに、水を添加し、ロータリーエバポレーターを用い、浴温80℃で溶媒を留去させた。その後空冷にて、室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、均一な繊維収束剤E−1を得た。
ポリオレフィン樹脂としてP−2〜P−17を用いた以外は、調製例1と同様の方法で繊維収束剤E−2〜E−16、18を得た。なお、P−16では、安定した分散体を得ることができなかった。
25gのポリオレフィン樹脂P−1をトルエン100gに加え、撹拌しながら加温して均一に溶解させた。一方、別の容器にポリオキシアルキル系界面活性剤2.0gを水100gに加えて溶解させた。前記変性ポリオレフィン樹脂のトルエン溶液と界面活性剤を含有した水とを撹拌した。さらに、DMEAを加えて、pHを調整した後、ロータリーエバポレーターで、トルエンと水を留去させて、繊維収束剤E−17を得た。
未処理の炭素繊維(東邦テナックス社製 「ベスファイトSTS−24KN00」、直径7μm)に、繊維収束剤E−1の水希釈液を含浸させ、次いで150℃で30秒間乾燥を行って、炭素繊維の繊維束を得た。得られた繊維束をロービングカッターで6mmの長さに切断してチョップドストランドを作製した。日本製鋼所社製TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)を使用し、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、製品名:ノバテックMA3)80質量部を押出機のホッパーに供給し、前記チョップドストランド20質量部をサイドフィーダから供給し、シリンダー設定温度240℃で溶融混練してストランド状に押出し、水中で冷却後切断して繊維強化樹脂組成物のペレットを得た。これをペレットAと呼ぶ。ペレットAを乾燥させた後、日本製鋼所社製J350EIII型射出成形機を用いて、シリンダー設定温度250℃で長さ130±1mm、幅25±0.2mmのテストピースを作製し、曲げ強度試験を行った。さらに、曲げ強度試験を行った後のテストピースを粉砕し、この粉砕物を30質量部、ペレットAを70質量部の割合でドライブレンドして、再度テストピースを作製し、曲げ強度の測定を行った(リサイクル1回目)。この操作(テストピースの粉砕、ペレットAとの混合、テストピースの作製)をさらに2回行って同様に曲げ強度の測定を行った(リサイクル3回目)。
実施例1において、繊維収束剤E−1に変えて、繊維収束剤E−2〜E−10、E−18を用いた以外は同様の操作を行って、繊維収束剤で表面処理された繊維状強化材および繊維強化樹脂組成物を得た。
実施例3において、液の希釈倍率を変えることにより、繊維収束剤の付着量を変えた以外は同様の操作を行って、繊維状強化材および繊維強化樹脂組成物を得た。
実施例1において、繊維収束剤E−1とポリウレタン樹脂水性分散液(三井化学社製、タケラックW−6010、固形分質量30質量%)とを、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、ポリウレタン樹脂の含有量が10質量部になるように混合した液を繊維収束剤として用いた以外は同様の操作を行って、繊維状強化材および繊維強化樹脂組成物を得た。
実施例14において、ポリウレタン樹脂の含有量が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して50質量部になるように混合した以外は同様の操作を行って、繊維状強化材および繊維強化樹脂組成物を得た。
実施例15において、繊維収束剤E−1に代えて、繊維収束剤E−2を用いた以外は同様の操作を行って、繊維状強化材および繊維強化樹脂組成物を得た。
実施例1において、繊維収束剤E−1に代えて、繊維収束剤E−11〜15、17を用いた以外は同様の操作を行って、繊維状強化材および繊維強化樹脂組成物を得た。
一方、繊維収束剤中に含まれる不飽和カルボン酸モノマー量が本発明の規定する範囲を超えると(比較例1〜3)、繊維強化樹脂組成物をリサイクルして用いた場合に、曲げ強度が低下し、リサイクル性に劣るものであった。さらに、得られた成形体のウェルド部の外観に劣り、物性も低いうえに射出成形の連続生産では金型内の腐食が認められた。オレフィン成分に対する不飽和カルボン酸成分量が本発明の規定する範囲を超える調製例16は、安定した水性分散体を得ることができず繊維収束剤を作製することが困難であった。また、オレフィン成分の構成が本発明の規定する範囲外である比較例4、5は、収束性、接着性、曲げ強度、リサイクル性に劣ったものであった。さらに、不揮発性水性化助剤である乳化剤を含有した繊維収束剤(比較例6)は、繊維収束剤中のポリオレフィン樹脂粒子径が大きく、収束性、接着性、曲げ強度、リサイクル性に劣ったものであり、ウェルド部の物性も劣る傾向にあった。
未処理のガラス繊維(直径9μm)に、繊維収束剤E−1の水希釈液を含浸させ、次いで150℃で30秒間乾燥を行って、ガラス繊維の繊維束を得た。得られた繊維束をロービングカッターで6mmの長さに切断してチョップドストランドを作製した。日本製鋼所社製TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)を使用し、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、製品名:ノバテックMA3)65質量部と、着色用マスターバッチ(ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、製品名:ノバテックMA3)60質量%とPIGMENT RED254(東京化成工業社製)40質量%を混合)5質量部をドライブレンドしたものを押出機のホッパーに供給し、前記チョップドストランド30質量部をサイドフィーダから供給し、シリンダー設定温度240℃で溶融混練してストランド状に押出し、水中で冷却後切断して繊維強化樹脂組成物のペレットを得た。これをペレットBと呼ぶ。ペレットBを乾燥させた後、日本製鋼所社製J350EIII型射出成形機を用いて、シリンダー設定温度250℃で長さ130±1mm、幅25±0.2mmのテストピースを作製し、曲げ強度試験を行った。さらに、曲げ強度試験を行った後のテストピースを粉砕し、この粉砕物を30質量部、ペレットBを70質量部の割合でドライブレンドして、再度テストピースを作製し、曲げ強度の測定を行った(リサイクル1回目)。この操作(テストピースの粉砕、ペレットBとの混合、テストピースの作製)をさらに2回行って同様に曲げ強度の測定を行った(リサイクル3回目)。
実施例18において、繊維収束剤E−1に変えて、繊維収束剤E−2〜E−10、E−18を用いた以外は同様の操作を行って、繊維収束剤で表面処理された繊維状強化材および繊維強化樹脂組成物を得た。
実施例20において、液の希釈倍率を変えることにより、繊維収束剤の付着量を変えた以外は同様の操作を行って、繊維状強化材および繊維強化樹脂組成物を得た。
実施例18において、繊維収束剤E−1とポリウレタン樹脂水性分散液(三井化学社製、タケラックW−6010、固形分質量30質量%)とを、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、ポリウレタン樹脂の含有量が10質量部になるように混合した液を繊維収束剤として用いた以外は同様の操作を行って、繊維状強化材および繊維強化樹脂組成物を得た。
実施例31において、ポリウレタン樹脂の含有量が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して50質量部になるように混合した以外は同様の操作を行って、繊維状強化材および繊維強化樹脂組成物を得た。
実施例32において、繊維収束剤E−1に代えて、繊維収束剤E−2を用いた以外は同様の操作を行って、繊維状強化材および繊維強化樹脂組成物を得た。
実施例18において、繊維収束剤E−1に代えて、繊維収束剤E−11〜15、17を用いた以外は同様の操作を行って、繊維状強化材および繊維強化樹脂組成物を得た。
一方、繊維収束剤中に含まれる不飽和カルボン酸モノマー量が本発明の規定する範囲を超えると(比較例7〜9)、繊維強化樹脂組成物をリサイクルして用いた場合に、曲げ強度が低下し、リサイクル性に劣るものであり、着色した成形体は耐光試験前後で色調の変化が確認された。さらに、得られた成形体のウェルド部の外観に劣り、物性も低いうえに射出成形の連続生産では金型内を腐食するものであった。また、オレフィン成分の構成が本発明の規定する範囲外である比較例10、11は、収束性、接着性、曲げ強度、リサイクル性に劣ったものであった。さらに、不揮発性水性化助剤である乳化剤を含有した繊維収束剤(比較例12)は、繊維収束剤中のポリオレフィン樹脂粒子径が大きく、収束性、接着性、曲げ強度、リサイクル性に劣ったものであり、ウェルド部の物性も劣る傾向にあった。
2.ウェルド部
Claims (5)
- プロピレン成分(A)とプロピレン成分以外のオレフィン成分(B)とを質量比(A/B)が60/40〜95/5の範囲で含有すると共に、オレフィン成分の総量(A+B)の100質量部に対し不飽和カルボン酸単位を1質量部以上含有するポリオレフィン樹脂と、水性媒体とを含有し、かつ不揮発性水性化助剤を実質的に含有しない繊維収束剤であって、繊維収束剤の乾燥残渣における不飽和カルボン酸モノマー量が10,000ppm以下であることを特徴とする繊維収束剤。
- プロピレン成分以外のオレフィン成分(B)がブテン成分であることを特徴とする請求項1に記載の繊維収束剤。
- 請求項1または2に記載の繊維収束剤により表面処理された繊維状強化材。
- 請求項3に記載の繊維状強化材と、熱可塑性マトリックス樹脂を含むことを特徴とする繊維強化樹脂組成物。
- 熱可塑性マトリックス樹脂がポリプロピレンであることを特徴とする請求項4に記載の繊維強化樹脂組成物。
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