JP2007031580A - ポリオレフィン樹脂水性分散体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐水性、接着性、ヒートシール性に優れ、各種コーティング剤、塗料、インキ、接着剤のバインダー等の用途に好適な、ポリオレフィン樹脂水性分散体とその製造方法を提供する。
【解決手段】炭素数3〜6の不飽和炭化水素の含有量が50〜98質量%であり、かつ不飽和カルボン酸単位の含有量が0.5〜20質量%である非塩素系のポリオレフィン樹脂、塩基性化合物および沸点185〜300℃でかつ分子内に水酸基を有さないかまたは1個有する有機溶剤を含有し、不揮発性の水性化助剤を実質的に含有しない水性分散体であって、このポリオレフィン樹脂の水性分散体中での数平均粒子径が1μm以下であることを特徴とするポリオレフィン樹脂水性分散体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、不揮発性水性化助剤を含有しておらず、各種コーティング剤、塗料、インキ、接着剤のバインダーとして好適なポリオレフィン樹脂水性分散体に関する。
プロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂は、電気特性、力学特性、化学特性、賦形性、衛生性、リサイクル性等が優れていることから、自動車、電気、包装、日用雑貨を中心に大量に使用されている。しかし、通常、ポリオレフィン樹脂は分子鎖に極性基を含まないためコーティングや接着が困難であるという問題がある。このため、プロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂のコーティングや接着には塩素化ポリオレフィン樹脂を主成分とした樹脂を使用する方法が提案されている。しかし、塩素化した樹脂は、焼却時に酸性ガス等の有害物質を発生するため、近年環境への関心が高まるとともに非塩素系材料への移行が強く望まれている。そこで、酸などで変性した変性ポリオレフィン樹脂の開発が行われている。変性ポリオレフィン樹脂をコーティングや接着の用途に使用するためには、樹脂を液状化する必要があり、例えば、a)樹脂を溶融して用いる、b)樹脂を有機溶剤に溶解または分散して用いる、c)樹脂を水性媒体に分散して用いる、といった方法が使われている。しかし、a)では用途が限定される、樹脂の溶融粘度との兼ね合いで薄肉化が困難であるといった問題がある。b)とc)を比べた場合、環境保護、省資源、消防法等による危険物規制、職場環境改善の立場から有機溶剤の使用が制限される傾向にあり、c)の方が望まれている。
上記のような背景から、変性ポリオレフィン樹脂の水性化の検討が盛んに行われている。例えば、特許文献1〜10には、変性ポリオレフィン樹脂を水性媒体中に安定に分散するために各種の界面活性剤を必須として用いることが記載されており、また、特許文献11には液状ポリオールを必須として用いることが記載されている。
特開平6−73250号公報 特開平6−80738号公報 特開平6−80844号公報 特開平6−80845号公報 特開平6−256592号公報 特開平8−3376号公報 特開平8−67726号公報 特開平8−67726号公報 特開平8−92427号公報 特許第2895574号公報 特許第2610559号公報
しかしながら、上記のような界面活性剤は不揮発性であり、乾燥後も変性ポリオレフィン樹脂の塗膜中に残存するため、その使用量が多い場合は、塗膜の耐水性を著しく低下させ、また、例え少量でも界面特性を劇的に変化させて基材との接着性等の性能に悪影響を及ぼし、さらに、塗膜からブリードアウトする恐れがあるために環境的、衛生的にも好ましくないばかりか、経時的に性能が変化してしまう恐れがある。また、液状ポリオールは親水性が高く、ポリオールのみで樹脂を完全に水性化することは困難であり、実際、特許文献11では界面活性剤を併用している。界面活性剤を用いると上述したような問題が生じる。
本発明者らは、上記のような現状に対して、乾燥後に塗膜中に残存するような不揮発性化合物を添加することなく、変性ポリオレフィン樹脂を水性媒体中に微細、かつ均一に分散させた、変性ポリオレフィン樹脂の特性を損なうことがない水性分散体を提供しようとするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の有機溶剤を用いることで特定組成のポリオレフィン樹脂を界面活性剤等の不揮発性水性化助剤の添加なしに水性媒体中に安定に分散できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、炭素数3〜6の不飽和炭化水素の含有量が50〜98質量%であり、かつ不飽和カルボン酸単位の含有量が0.5〜20質量%である非塩素系のポリオレフィン樹脂、塩基性化合物および沸点185〜300℃でかつ分子内に水酸基を有さないかまたは1個有する有機溶剤を含有し、不揮発性の水性化助剤を実質的に含有しない水性分散体であって、このポリオレフィン樹脂の水性分散体中での数平均粒子径が1μm以下であることを特徴とするポリオレフィン樹脂水性分散体である。
本発明によれば、特定組成のポリオレフィン樹脂の水性分散体を界面活性剤等の不揮発性水性化助剤の添加なしに数平均粒子径が1μm以下に微細かつ安定に得ることができる。この水性分散体から得られる塗膜は界面活性剤等の不揮発性水性化助剤を含んでいないため、ポリオレフィン樹脂本来の特性を損なうことなく、耐水性や基材との接着性、ヒートシール性に優れており、長期的にもこれらの性能は殆ど変化しない。したがって、各種コーティング剤、塗料、インキ、接着剤のバインダー等の用途に好適である。また、本発明の製造方法ではホモジナイザーやミキサー型乳化器等の高速攪拌装置を用いる必要がないため、設備の簡略化やコストダウンにも寄与することができる。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリオレフィン樹脂は、炭素数3〜6の不飽和炭化水素の含有量が50〜98質量%である、好ましくは60〜95質量%である非塩素系のポリオレフィン樹脂である。炭素数3〜6の不飽和炭化水素の含有量が50質量%未満ではポリプロピレン等のポリオレフィン材料に対する接着性が低下し、98質量%を超えると樹脂の水性化が困難になる。炭素数3〜6の不飽和炭化水素としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等のアルケン類やブタジエンやイソプレン等のジエン類が挙げられ、樹脂の製造のし易さ、水性化のし易さ、各種材料に対する接着性、ブロッキング性等の点から、プロピレン成分および/または1−ブテンやイソブテンのブテン成分であることが好ましく、プロピレン成分とブテン成分の質量比(プロピレン/ブテン)は、10/90〜95/5であることがより好ましく、15/85〜90/10であることが特に好ましい。さらに、本発明のポリオレフィン樹脂としては、炭素数3〜6の不飽和炭化水素以外にエチレン成分を2〜50質量%含有していることが好ましい。エチレン成分を含有することで樹脂の水性化や塗膜性能が向上する。本発明のポリオレフィン樹脂としては、プロピレン成分、ブテン成分、エチレン成分を含有していることが特に好ましく、それらの望まれる範囲としては、プロピレン成分が10〜90質量%、ブテン成分が10〜90質量%、エチレン成分が2〜50質量%である。
本発明のポリオレフィン樹脂は、上述した成分がランダム共重合されていてもよく、ブロック共重合されていてもよい。重合のし易さの点から、ランダム共重合されていることが好ましい。また、本発明の範囲になるように2種以上のポリオレフィン樹脂を混合してもよい。
また、上記成分以外に他の成分を10質量%以下程度、含有していてもよく、他の成分としては、1−オクテン、ノルボルネン類等の炭素数6以上のアルケン類やジエン類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類ならびにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄、などが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。
本発明におけるポリオレフィン樹脂は、その分散性の点から、ポリオレフィン樹脂の構造中に不飽和カルボン酸単位を0.5〜20質量%有している必要があり、0.5〜15質量%が好ましく、0.5〜12質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましく、1〜8質量%が特に好ましい。不飽和カルボン酸の量が0.5質量%未満の場合は、樹脂を水性化することが困難になる傾向がある。一方、不飽和カルボン酸の含有量が20質量%を超えた場合は、樹脂の水性化は容易になるが、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂材料への接着性が低下してしまう。
不飽和カルボン酸単位は、不飽和カルボン酸や、その無水物により導入され、具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物を用いることができる。中でもポリオレフィン樹脂への導入のし易さの点から無水マレイン酸が好ましい。また不飽和カルボン酸単位は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
前記した不飽和カルボン酸単位をポリオレフィン樹脂へ導入する方法は、特に限定されないが、例えば、ラジカル発生剤存在下、ポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸とをポリオレフィン樹脂の融点以上に加熱溶融して反応させる方法やポリオレフィン樹脂を有機溶剤に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法等によりポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸単位をグラフト共重合する方法が挙げられる。操作が簡便である点から前者の方法が好ましい。グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル類が挙げられる。これらは反応温度によって適宜、選択して使用すればよい。
ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は5,000〜150,000であることが好ましく、20,000〜120,000であることがより好ましく、30,000〜100,000であることがさらに好ましく、35,000〜90,000であることが特に好ましく、40,000〜80,000であることが最も好ましい。重量平均分子量が5,000未満の場合は、基材との接着性が低下したり、得られる塗膜が硬くてもろくなったりする。重量平均分子量が150,000を超える場合は、樹脂の水性化が困難になる傾向がある。なお、樹脂の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン樹脂を標準として求めることができる。
本発明の水性分散体は、上記のポリオレフィン樹脂が水性媒体中に分散もしくは溶解されている。ここで、水性媒体とは、水を主成分とする液体であり、後述する水溶性の有機溶剤や塩基性化合物を含有していてもよい。
本発明の水性分散体中に分散しているポリオレフィン樹脂粒子の数平均粒子径は、1μm以下である。さらに、低温造膜性の観点から0.5μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましく、0.2μm以下がさらに好ましい。数平均粒子径が1μmを超えると低温造膜性が著しく悪化したり、水性分散体の保存安定性が低下したりする。また、重量平均粒子径に関しても、低温造膜性や保存安定性の点から、2μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.5μm以下がさらに好ましく、0.3μm以下が特に好ましい。
本発明の水性分散体における、樹脂含有率は、成膜条件、目的とする樹脂塗膜の厚さや性能等により適宜選択でき、特に限定されるものではないが、コーティング組成物の粘性を適度に保ち、かつ良好な塗膜形成能を発現させる点で、1〜60質量%が好ましく、3〜55質量%がより好ましく、5〜50質量%がさらに好ましく、10〜45質量%が特に好ましい。
本発明の水性分散体は、不揮発性の水性化助剤を実質的に含有しないことを特徴とする。このため、塗膜特性、特に耐水性、基材との接着性、ヒートシール性が優れており、これらの性能は長期的に殆ど変化しない。

ここで、「水性化助剤」とは、水性分散体の製造において、水性化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは、高沸点(例えば300℃を超えるもの)であることを指す。

「不揮発性水性化助剤を実質的に含有しない」とは、こうした助剤を製造時に用いず、得られる分散体が結果的にこの助剤を含有しないことを意味する。したがって、こうした不揮発性水性化助剤は、含有量がゼロであることが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、ポリオレフィン樹脂成分に対して0.1質量%未満程度含まれていても差し支えない。

なお、本発明でいう沸点とは、全て常圧時における沸点のことである。
本発明でいう不揮発性水性化助剤としては、例えば、後述する界面活性剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子等が挙げられる。

界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性(非イオン性)界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、反応性界面活性剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、乳化剤類も含まれる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸およびその塩、オレイン酸、ステアリン酸、パルチミン酸等の高級カルボン酸およびその塩、アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体等のポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のソルビタン誘導体等が挙げられ、両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。反応性界面活性剤としては、アルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルジアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩等の反応性2重結合を有する化合物が挙げられる。
保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子、としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックス等の重量平均分子量が通常は5,000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が20質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物が挙げられる。
本発明の水性分散体は、塩基性化合物を含有する。この塩基性化合物によって、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基は、その一部または全部が中和され、生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって微粒子間の凝集が防がれ、水性分散体に安定性が付与される。
塩基性化合物としては特に限定されないが、アンモニアまたは沸点300℃以下の有機アミン化合物が塗膜の耐水性の面から好ましい。沸点が300℃を超えると樹脂塗膜から乾燥によって有機アミン化合物を飛散させることが困難になり、塗膜の耐水性や基材との接着性が悪化する場合がある。有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。塩基性化合物の添加量はポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基に対して0.5〜3.0倍当量であることが好ましく、0.8〜2.5倍当量がより好ましく、0.9〜2.0倍当量が特に好ましい。0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、3.0倍当量を超えると塗膜形成時の乾燥時間が長くなったり、水性分散体の安定性が悪化する場合がある。
本発明においては、ポリオレフィン樹脂の水性化を促進し、分散粒子径を小さくするために、水性化の際に沸点が185〜300℃でありしかも水酸基を分子内にゼロまたは1つ有する有機溶剤を用いる。使用する有機溶剤量は、水性媒体中の50質量%以下が好ましく、1〜45質量%であることがより好ましく、2〜40質量%がさらに好ましく、3〜35質量%が特に好ましい。有機溶剤量が50質量%を超える場合には、実質的に水性媒体とはみなせなくなり、本発明の目的のひとつ(環境保護)を逸脱するだけでなく、使用する有機溶剤によっては水性分散体の安定性が低下してしまう場合がある。
本発明で用いる有機溶剤の具体例としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、1,2−メチレングリセリン、1,3−メチレングリセリン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、アセトニトリルアセトン、ホロン、イソホロン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等が挙げられる。これらの中でも、樹脂の水性化がし易く、水性分散体の安定性が良好である点から、水酸基を分子内に1つ有する有機溶剤を用いることが好ましい。これらの有機溶剤は2種以上を混合して使用してもよい。
次に、ポリオレフィン樹脂水性分散体の製造方法について説明する。
本発明のポリオレフィン樹脂水性分散体を得るための方法は特に限定されないが、既述の各成分、すなわち、ポリオレフィン樹脂、塩基性化合物、有機溶剤、水を、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法を採用することができ、この方法が最も好ましい。本発明の場合、沸点が185〜300℃である有機溶剤を用いるため、条件によっては開放系でも樹脂を水性化することができる。
容器としては、固/液撹拌装置や乳化機として当業者に知られている装置を使用することができ、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することが好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されないが、樹脂が水性媒体中で浮遊状態となる程度の低速の撹拌でよい。したがって、高速撹拌(例えば1,000rpm以上)は必須ではなく、簡便な装置でも水性分散体の製造が可能である。
上記の装置にポリオレフィン樹脂、水性媒体などの原料を投入し、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておく。次いで、槽内の温度を60〜220℃、好ましくは80〜200℃、さらに好ましくは100〜190℃、特に好ましくは100〜180℃の温度に保ちつつ、好ましくは粗大粒子が無くなるまで(例えば、5〜120分間)攪拌を続けることによりポリオレフィン樹脂を十分に水性化させ、その後、好ましくは攪拌下で40℃以下に冷却することにより、水性分散体を得ることができる。槽内の温度が60℃未満の場合は、ポリオレフィン樹脂の水性化が困難になる。槽内の温度が220℃を超える場合は、ポリオレフィン樹脂の分子量が低下する恐れがある。
この後、必要に応じてさらにジェット粉砕処理を行ってもよい。ジェット粉砕処理とは、ポリオレフィン樹脂水性分散体を、高圧下でノズルやスリットのような細孔より噴出させ、樹脂粒子同士や樹脂粒子と衝突板等とを衝突させて、機械的なエネルギーによって樹脂粒子をさらに細粒化することであり、そのための装置の具体例としA.P.V.GAULIN社製ホモジナイザー、みずほ工業社製マイクロフルイタイザーM−110E/H等が挙げられる。
このようにして得られた水性分散体の固形分濃度の調整方法としては、例えば、所望の固形分濃度となるように水性媒体を留去したり、水により希釈したりする方法が挙げられる。
上記の製法を採ることで、本発明の水性分散体は、ポリオレフィン樹脂が水性媒体中に分散または溶解され、均一な液状に調製されて得られる。ここで、均一な液状であるとは、外観上、水性分散体中に沈殿、相分離あるいは皮張りといった、固形分濃度が局部的に他の部分と相違する部分が見いだされない状態にあることをいう。
本発明の水性分散体から得られる樹脂組成物は、様々な基材、例えば、金属、ガラス、プラスチックの成形体、フィルム、合成紙、紙等との接着性に優れるため、これらの基材へのコーティング剤、塗料、インキ、接着剤として好適である。
本発明の水性分散体には、性能をさらに向上させるため、他の重合体の水性分散体、粘着付与剤、無機粒子、架橋剤、顔料、染料等を添加することができる。
他の重合体の水性分散体としては、特に限定されない。例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、ロジンなどの粘着付与樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の水性分散体を挙げることができる。これらは、2種以上を混合して使用してもよい。
無機粒子としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化すず等の金属酸化物、炭酸カルシウム、シリカ等の無機粒子や、バーミキュライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ハイドロタルサイト、合成雲母等の層状無機化合物を添加することができる。これらの無機粒子の平均粒子径は水性分散体の安定性の面から0.005〜10μmが好ましく、より好ましくは0.005〜5μmである。なお、無機粒子は、2種以上を混合して使用してもよい。なお、酸化亜鉛は紫外線遮蔽、酸化すずは帯電防止の目的にそれぞれ使用できる。
耐水性や耐溶剤性等の各種の塗膜性能をさらに向上させるために、架橋剤を水性分散体中の樹脂100質量部に対して0.01〜80質量部、好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは0.5〜30質量部添加することができる。架橋剤の添加量が0.01質量部未満の場合は、塗膜性能の向上の程度が小さく、80質量部を超える場合は、加工性等の性能が低下してしまう。架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属等を用いることができ、このうちイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が好ましい。また、これらの架橋剤を組み合わせて使用してもよい。
顔料・染料としては、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等が挙げられる。
本発明の水性分散体には、さらに必要に応じて、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤、耐候剤、難燃剤等の各種薬剤を添加することも可能である。
次に、本発明のポリオレフィン樹脂水性分散体の使用方法について説明する。
本発明の水性分散体は、塗膜形成能に優れているので、公知の成膜方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥又は乾燥と焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な樹脂塗膜を各種基材表面に接着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、被コーティング物である基材の特性や後述する硬化剤の種類、配合量等により適宜選択されるものであるが、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、30〜250℃が好ましく、60〜230℃がより好ましく、80〜210℃が特に好ましく、加熱時間としては、1秒〜60分が好ましく、5秒〜30分がより好ましく、5秒〜10分が特に好ましい。なお、架橋剤を添加した場合は、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基と架橋剤との反応を十分進行させるために、加熱温度および時間は架橋剤の種類によって適宜選定することが望ましい。
また、本発明の水性分散体の塗布量としては、その用途によって適宜選択されるものであるが、乾燥後の塗布量として0.01〜100g/mが好ましく、0.1〜50g/mがより好ましく、0.2〜30g/mが特に好ましい。0.01〜100g/mの範囲となるように成膜すれば、均一性に優れた樹脂塗膜が得られる。
なお、塗布量を調節するためには、コーティングに用いる装置やその使用条件を適宜選択することに加えて、目的とする樹脂塗膜の厚さに適した濃度の水性分散体を使用することが好ましい。このときの濃度は、調製時の仕込み組成により調節することができる。また、一旦調製した水性分散体を適宜希釈、あるいは濃縮して調節してもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、各種の特性は以下の方法によって測定または評価した。

(1)不飽和カルボン酸単位の含有量
不飽和カルボン酸単位の含有量は下記に示す方法〔(1−A)または(1−B)〕を用いて求めた。
(1−A)ポリオレフィン樹脂の酸価をJIS K5407に準じて測定し、その値から不飽和カルボン酸の含有量(グラフト率)を次式から求めた。
含有量(質量%)=(グラフトした不飽和カルボン酸の質量)/(原料ポリオレフィン樹脂の質量)×100
(1−B)赤外吸収スペクトル分析(Perkin Elmer System-2000 フーリエ変換赤外分光光度計、分解能4cm-1)を行い求めた。
(2)不飽和カルボン酸単位以外の樹脂の構成
オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて1H-NMR、13C-NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い求めた。13C-NMR分析では定量性を考慮したゲート付きデカップリング法を用いて測定した。
(3)樹脂の重量平均分子量
重量平均分子量は、GPC分析(東ソー社製HLC-8020、カラムはTSK-GEL)を用いて、試料をテトラヒドロフランに溶解して40℃で測定し、ポリスチレン標準試料で作成した検量線から重量平均分子量を求めた。テトラヒドロフランに溶解し難い場合はオルトジクロロベンゼンを用いた。
(4)水性分散体の固形分濃度
ポリオレフィン分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、ポリオレフィン樹脂固形分濃度を求めた。
(5)ポリオレフィン樹脂粒子の数平均および重量平均粒子径
日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340)を用い、数平均粒子径(mn)および重量平均粒子径(mw)を求めた。なお、樹脂の屈折率は1.5とした。
(6)ポットライフ
水性分散体を室温で90日放置したときの外観を、次の3段階で評価した。
○:外観に変化なし。
△:増粘がみられる。
×:固化、凝集や沈殿物の発生が見られる。
また、外観の評価が○の場合は数平均粒子径も上記方法で測定した。
(7)水性分散体中の有機溶剤の含有率
島津製作所社製ガスクロマトグラフGC−8A〔FID検出器使用、キャリアーガス:窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG−HT(5%)−Uniport HP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):180℃、カラム温度:80℃、内部標準物質:n−ブタノール〕を用い、水性分散体を必要に応じて水で希釈したものを直接装置内に投入して、有機溶剤の含有率を求めた。検出限界は0.01質量%であった。
(8)塗膜の耐水性
水性分散体を延伸ポリプロピレン(PP)フィルム(東セロ社製、OP U−1、厚み20μm)の未処理面上に乾燥後の塗布量が約2g/mになるようにメイヤーバーでコートし、110℃で30分間乾燥した。このようにして作製したコートフィルムを40℃の温水に1日、浸漬した後、コート面の状態を目視で評価した。
○:外観に変化なし。
△:塗膜が白化する。
×:コート層が溶解、あるいは剥離する。
(9)塗膜の接着性評価
水性分散体を延伸ポリプロピレン(PP)フィルム(東セロ社製、OP U−1、厚み20μm)、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12、厚み12μm)、2軸延伸ナイロン6(Ny6)フィルム(ユニチカ社製エンブレム、厚み15μm)の未処理面上に乾燥後の塗布量が約2g/mになるようにメイヤーバーでコートし、110℃で30分間乾燥した後、塗膜面に粘着テープ(ニチバン社製TF−12)を貼り付けた後、勢いよくテープを剥離した。塗膜面の状態を目視で観察して、以下のように評価した。
○:全く剥がれがなかった。
△:一部に剥がれが生じた。
×:全て剥がれた。
(10)ヒートシール強度評価
水性分散体を含むコート液を延伸ポリプロピレン(PP)フィルム(東セロ社製、OP U−1、厚み20μm)の未処理面、アルミニウム箔(三菱アルミニウム社製、厚み15μm)、及びA4サイズの上質紙(大昭和製紙製)上に乾燥後の塗布量が約5g/mになるようにメイヤーバーでコートし、110℃で30分間乾燥した。PPフィルムとPPフィルムのコート面、PPフィルムとアルミニウム箔のコート面、及びPPフィルムと上質紙のコート面が接するようにして、ヒートプレス機(シール圧3kg/cmで5秒間)にて110℃でプレスした。このサンプルを15mm幅で切り出し、1日後、引張り試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)を用い、引張り速度200mm/分、引張り角度180度で塗膜の剥離強度を測定することでヒートシール強度を評価した。
(11)長期保存後のヒートシール強度評価
(10)で示した方法で作製したPPフィルム同士をヒートシールしたサンプルを15mm幅で切り出し、40℃、90%RHの条件下で30日間、保存した後、引張り試験機(インテスコ株式会社製のインテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い、引張り速度200mm/分、引張り角度180度で塗膜の剥離強度を測定することで保存後のヒートシール強度を評価した。
(ポリオレフィン樹脂P−1の製造)
プロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体(ヒュルスジャパン社製、ベストプラスト708、プロピレン/ブテン/エチレン=64.8/23.9/11.3質量%)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を170℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸32.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド6.0gをそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥してポリオレフィン樹脂P−1を得た。得られた樹脂の特性を表1に示す。
(ポリオレフィン樹脂P−2の製造)
プロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体(ヒュルスジャパン社製、ベストプラスト408、プロピレン/ブテン/エチレン=12.3/82.2/5.5質量%)を用いた以外は実施例1と同様の方法でポリオレフィン樹脂P−2を得た。得られた樹脂の特性を表1に示す。
(ポリオレフィン樹脂P−3の製造)
プロピレン−エチレン共重合体(プロピレン/エチレン=81.8/18.2質量%、重量平均分子量85,000)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を180℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸35.0gとラジカル発生剤としてジ−t−ブチルパーオキサイド6.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥してポリオレフィン樹脂P−3を得た。得られた樹脂の特性を表1に示す。
実施例1
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂(P−1)、60.0gのジエチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬社製、沸点231℃)、6.9g(樹脂中の無水マレイン酸単位のカルボキシル基に対して1.0倍当量)のN,N−ジメチルエタノールアミン(和光純薬社製、沸点134℃)及び173.1gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白黄色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。なお、フィルター上には残存樹脂は殆どなかった。水性分散体の各種特性および塗膜性能を表2に示した。
実施例2〜4
添加する有機溶剤の種類、量および塩基性化合物の種類、量を表2記載のように変更した以外は実施例1と同様の方法で水性分散体E−2〜E−4を得た。水性分散体の各種特性および塗膜性能を表2に示した。なお、有機溶剤として用いたジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(Aldrich社製)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(Aldrich社製)の沸点はそれぞれ260℃、212℃であり、塩基性化合物として用いたトリエチルアミン(和光純薬社製)の沸点は90℃である。
実施例5、6
ポリオレフィン樹脂としてP−2、P−3を用いた以外は実施例1と同様の方法で水性分散体E−5、E−6を得た。水性分散体の各種特性および塗膜性能を表2に示した。
実施例7
ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1とE−5をそれぞれの固形分質量比が75/25になるように混合、攪拌して水性分散体E−7を得た。水性分散体の各種特性および塗膜性能を表2に示した。
比較例1
ポリオレフィン樹脂としてニュクレルN1050H(三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタクリル酸含有量10質量%、P−4とする)用いた以外は実施例1に準じた方法で水性分散体を得た。この水性分散体は冷却後に増粘したため、水で希釈して固形分濃度を10質量%とした後、フィルターでろ過したものを水性分散体H−1とした。水性分散体の各種特性および塗膜性能を表2に示した。
比較例2
不揮発性の水性化助剤であるノイゲンEA−190D(第一工業製薬社製、ノニオン性界面活性剤)を固形分全量に対して7質量%となるように添加した以外は実施例1に準じた方法で水性分散体H−2を得た。水性分散体の各種特性および塗膜性能を表2に示した。
比較例3
不揮発性水性化助剤として、Igepal CO−720(Aldrich社製、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ノニオン性界面活性剤)を固形分全量に対して5質量%となるように添加した以外は実施例1に準じた方法で水性分散体H−3を得た。水性分散体の各種特性および塗膜性能を表2に示した。
比較例4
エチレングリコール(和光純薬社製、沸点196〜198℃)を用いた以外は実施例1と同様の方法で水性化を行ったが、樹脂の水性化は殆ど進行せずフィルター上には多量の樹脂が残存した。実質的にエチレングリコールのみの添加では樹脂の水性化はできなかった。
比較例5
1,4−ブタンジオール(和光純薬社製、沸点224℃)を用いた以外は実施例1と同様の方法で水性化を行ったが、樹脂の水性化は殆ど進行せずフィルター上には多量の樹脂が残存した。実質的に1,4−ブタンジオールのみの添加では樹脂の水性化はできなかった。
実施例8
実施例1で得られたポリオレフィン樹脂水性分散体E−1と他の重合体の水性分散体とを混合した。他の重合体の水性分散体としては、ポリウレタン水性分散体(アデカボンタイターHUX−380、旭電化工業社製)を用いた。E−1を撹拌しておき、E−1の固形分100質量部に対して上記水性分散体を固形分換算で50質量部添加し、室温で30分間、撹拌した(M−1とする)。この液から得られる塗膜の接着性評価結果を表3に示す。
実施例9〜11
実施例1で得られたポリオレフィン樹脂水性分散体E−1と架橋剤とを混合した。架橋剤としては、メラミン化合物(サイメル327、三井サイテック社製、実施例9)、イソシアネート化合物(バイヒジュール3100、住友バイエルウレタン社製、実施例10)、オキサゾリン基含有化合物(エポクロスWS−700、日本触媒社製、実施例11)を用いた。E−1を撹拌しておき、E−1の固形分100質量部に対して上記架橋剤を固形分換算で表3に示す量を添加し、室温で10分間、撹拌した(それぞれ、M−2〜M−4とする)。これらの液から得られる塗膜の接着性評価結果を表3に示す。
実施例12
実施例1で得られたポリオレフィン樹脂水性分散体E−1の固形分100質量部に対して、顔料としてカーボンブラックを含有する水性分散体(ライオン社製、ライオンペーストW-376R)の固形分80質量部を混合し、プロペラ攪拌して水性塗料M−5を作製した。この液から得られる塗膜の接着性評価結果を表3に示す。
実施例1〜7では、界面活性剤等の不揮発性の水性化助剤を添加することなしに、ポリオレフィン樹脂の数平均粒子径が1μm以下の微細でかつ安定な水性分散体を得ることができた。この水性分散体から得られる塗膜は、耐水性、接着性、ヒートシール性に優れていた。さらに、塗膜中に界面活性剤等を含まないため長期間、保存しておいてもシートシール性は殆ど変化しなかった。また、他の樹脂水分散体、架橋剤、顔料を添加した場合(実施例8〜12)でも、接着性等の性能は低下することはなく良好であった。
これに対して、比較例1はポリオレフィン樹脂の組成が本発明の範囲外であるためにPP等に対する接着性、ヒートシール性は悪かった。比較例2、3は、従来の方法で用いられていた界面活性剤類(不揮発性水性化助剤)を添加してものであり、水性分散体は得られるものの、これから得られる塗膜は、耐水性、接着性、ヒートシール性は、実施例に比べ大きく低下した。特に、長期保存後のヒートシール性は著しく低下した。
また、比較例4,5に示すようにポリオールのみの添加では樹脂の水性化は実質的に困難であった。

Claims (1)

  1. 炭素数3〜6の不飽和炭化水素の含有量が50〜98質量%であり、かつ不飽和カルボン酸単位の含有量が0.5〜20質量%である非塩素系のポリオレフィン樹脂、塩基性化合物および沸点185〜300℃でかつ分子内に水酸基を有さないかまたは1個有する有機溶剤を含有し、不揮発性の水性化助剤を実質的に含有しない水性分散体であって、このポリオレフィン樹脂の水性分散体中での数平均粒子径が1μm以下であることを特徴とするポリオレフィン樹脂水性分散体。
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Cited By (3)

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JP2009226870A (ja) * 2008-03-25 2009-10-08 Unitika Ltd 積層フィルム
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