JP2016004854A - 圧電素子、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、アクチュエーター、センサー及び圧電材料 - Google Patents

圧電素子、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、アクチュエーター、センサー及び圧電材料 Download PDF

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Abstract

【課題】リーク電流を低減し、変位量を向上することができる圧電素子、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、センサー及び圧電材料を提供する。【解決手段】第1電極60と、第1電極上に設けられた圧電体層70と、圧電体層上に設けられた第2電極80とを備えた圧電素子300であって、圧電体層は、Bi及びFeを含む菱面体晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物、及びBa及びTiを含む正方晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第1成分と、Bi、K及びTiを含み、正方晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第2成分と、Bi、Mg及びTiを含み、菱面体晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第3成分とを含む混晶として表される圧電材料からなる。【選択図】図3

Description

本発明は、圧電素子、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、アクチュエーター、センサー及び圧電材料に関する。
圧電素子としては、電気的機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した圧電材料からなる圧電体層を、2つの電極で挟んで構成されたものがある。このような圧電素子は、例えば撓み振動モードのアクチュエーター装置として液体噴射ヘッドに搭載される。液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴として吐出させるインクジェット式記録ヘッドがある。
このような圧電素子に用いられる圧電材料としては、一般的に、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)に代表される鉛系の圧電セラミックスが使用されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、環境問題の観点から、鉛を含有しない圧電材料、すなわち、非鉛系圧電材料の開発が進められている。非鉛系圧電材料としては、例えばABOで示されるペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウム(BaTiO)や鉄酸ビスマス(BiFeO)が挙げられる(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、非鉛系圧電材料は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)と比較して、リーク電流が大きく、変位量が不十分であるため、例えばインクジェット式記録ヘッドにおいては大液滴の吐出が難しいという問題がある。このような非鉛系圧電材料のリーク特性及び変位特性を向上させるため、ペロブスカイト構造のAサイトを占める元素や、Bサイトを占める元素の一部をイオン価数及びイオン半径の異なる元素で置換する技術が提案されている(例えば、特許文献3、4)。
特開2001−223404号公報 特開2009−252789号公報 特開2010−214841号公報 特開2011−035385号公報
しかしながら、鉛(Pb)系圧電材料に匹敵するほどのリーク特性や変位特性を得るためには、ペロブスカイト構造の置換サイトや置換元素の選択、置換量等についてさらに検討を加え、一層の最適化を図る必要がある。なお、このような問題は、インクジェット式記録ヘッドに搭載される圧電素子に限定されず、インク以外の液滴を吐出する他の液体噴射ヘッド、液体噴射装置及びセンサーに搭載される圧電素子においても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、リーク電流を低減し、変位量を向上することができる圧電素子、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、アクチュエーター、センサー及び圧電材料を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、第1電極と、前記第1電極上に設けられた圧電体層と、前記圧電体層上に設けられた第2電極とを備えた圧電素子であって、前記圧電体層は、Bi及びFeを含む菱面体のペロブスカイト構造を有する複合酸化物、及びBa及びTiを含む正方晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第1成分と、Bi、K及びTiを含み、正方晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第2成分と、Bi、Mg及びTiを含み、菱面体晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第3成分とを含む混晶として表される圧電材料からなることを特徴とする圧電素子にある。かかる態様では、BiFeMnO−BaTiOに四面体構造を持つ(Bi0.50.5)TiOと菱面体構造を持つBi(Mg0.5Ti0.5)Oとを同時に導入することによって、Fe2+が抑えられ、格子歪効果とモルフォトロピック相境界(MPB)効果が活用でき、高圧電変位と低リーク電流を実現することが可能になる。また、鉛を含有しないため、環境への負荷を低減することができる。
ここで、前記第1成分は、Bi(Fe,Mn)O-BaTiOであり、前記第2成分は(Bi0.50.5)TiOであり、前記第3成分はBi(Mg0.5Ti0.5)Oであることが好ましい。これによれば、より確実に、Fe2+の発生が抑えられ、格子歪効果とモルフォトロピック相境界(MPB)効果が活用でき、高圧電変位と低リーク電流を実現することが可能になる。これにより、大きな変位量を得ることができる。
また、前記第1成分、前記第2成分及び前記第3成分において、菱面体晶の複合酸化物の正方晶の複合酸化物に対する比率である菱面体晶の複合酸化物/正方晶の複合酸化物は、70/30〜65/35であることが好ましい。これによれば、より確実に、Fe2+の発生が抑えられ、リーク電流をさらに低減することができる。
また、Ba及びTiを含む正方晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物の含有量は、25〜30mol%であることが好ましい。これによれば、より確実に、Fe2+の発生が抑えられ、リーク電流をさらに低減することができる。
また、前記第2成分の含有量は、5〜10mol%であることが好ましい。これによれば、より確実に、Fe2+の発生が抑えられ、リーク電流をさらに低減することができる。
また、前記第3成分の含有量は、5〜10mol%であることが好ましい。これによれば、より確実に、Fe2+の発生が抑えられ、リーク電流をさらに低減することができる。
また、前記第2成分及び前記第3成分の総含有量は、10〜20mol%であることが好ましい。これによれば、より確実に、Fe2+の発生が抑えられ、リーク電流をさらに低減することができる。
また、前記第1電極と前記圧電体層との間に、マンガン酸ビスマスからなる配向制御層を有することが好ましい。これによれば、圧電体層がより優先的に(100)面に配向し、変位量が向上する。
本発明の他の態様は、前記何れかの態様に記載する圧電素子を具備する液体噴射ヘッドにある。かかる態様では、Fe2+が抑えられ、格子歪効果とモルフォトロピック相境界(MPB)効果が活用でき、高圧電変位と低リーク電流を実現することが可能になる。また、鉛を含有しないため、環境への負荷を低減することができる。
本発明の他の態様は、前記液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。かかる態様では、Fe2+が抑えられ、格子歪効果とモルフォトロピック相境界(MPB)効果が活用でき、高圧電変位と低リーク電流を実現することが可能になる。また、鉛を含有しないため、環境への負荷を低減することができる。
本発明の他の態様は、前記何れかの態様に記載する圧電素子を具備することを特徴とするアクチュエーターとセンサーにある。かかる態様では、Fe2+が抑えられ、格子歪効果とモルフォトロピック相境界(MPB)効果が活用でき、高圧電変位と低リーク電流を実現することが可能になる。また、鉛を含有しないため、環境への負荷を低減することができる。
本発明の他の態様は、Bi及びFeを含む菱面体晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物、及びBa及びTiを含む正方晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第1成分と、Bi、K及びTiを含み、正方晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第2成分と、Bi、Mg及びTiを含み、菱面体晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第3成分とを含む混晶として表される圧電材料からなることを特徴とする圧電材料にある。かかる態様では、Fe2+が抑えられ、格子歪効果とモルフォトロピック相境界(MPB)効果が活用でき、高圧電変位と低リーク電流を実現することが可能になる。また、鉛を含有しないため、環境への負荷を低減することができる。
実施形態1に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図。 実施形態1に係る記録ヘッドの平面図。 実施形態1に係る記録ヘッドの断面図。 実施例のSEM写真。 実施例のSEM写真。 比較例のSEM写真。 実施例のX線回折パターンを示す図。 実施例のX線回折パターンを示す図。 比較例のX線回折パターンを示す図。 実施例のP−Vの関係示す図。 実施例のP−Vの関係示す図。 比較例のP−Vの関係示す図。 実施例のS−Vの関係示す図。 比較例のS−Vの関係示す図。 実施例及び比較例の電流密度と電圧との関係を示す図。 本発明の一実施形態に係る記録装置の概略構成を示す図。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図であり、図3は図2のA−A′線断面図である。図1〜図3に示すように、本実施形態の流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板のマニホールド部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールドの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。なお、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。本実施形態では、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられていることになる。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、例えば厚さ30〜50nm程度の酸化チタン等からなり、弾性膜50と第1電極60との密着性を向上させるための密着層56が設けられている。密着層56の材質は第1電極60とその下地の種類等により異なるが、例えば、チタン、ジルコニウム、アルミニウムを含む酸化物や窒化物や、SiO、MgO、CeO等とすることができる。なお、弾性膜50上に、必要に応じて酸化ジルコニウム等からなる絶縁体膜が設けられていてもよい。
さらに、この密着層56上には、白金(Pt)やイリジウム(Ir)等からなる第1電極60と、詳しくは後述するが、圧電体層70を(100)面に優先配向させる配向制御層65と、圧電体層70と、第2電極80とが、積層形成されて圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生手段としての圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、第1電極60、配向制御層65、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエーター装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、密着層56、第1電極60及び必要に応じて設ける絶縁体膜が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50や密着層56が設けられていなくてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。ただし、流路形成基板10上に直接第1電極60を設ける場合には、第1電極60とインクとが導通しないように第1電極60を絶縁性の保護膜等で保護するのが好ましい。
本実施形態の配向制御層65は、当該配向制御層65上に形成される圧電体層70を(100)面に優先配向させるものである。ここで、「(100)面に優先配向する」とは、圧電体層70の全ての結晶が(100)面に配向している場合と、ほとんどの結晶(例えば、50%以上)が(100)面に配向している場合を含むものである。
このような配向制御層65は、本実施形態では、TiとMnを含む酸化物であり、具体的にはマンガン酸ビスマス(BiMnO)からなる。
配向制御層65は、これに限定されず、ビスマス(Bi)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)及びチタン(Ti)から選ばれる少なくとも一種以上を含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなるものでもよい。具体的には、Bi及びMn、又はBi、Mn及びFe、又はBi、Fe及びTiを含む複合酸化物が挙げられる。ペロブスカイト構造、すなわち、ABO型構造ではAサイトに酸素が12配位しており、Bサイトに酸素が6配位して8面体(オクタヘドロン)をつくっている。例えば配向制御層65がBi、Mn、Fe及びTiを含む場合、このAサイトにBiが、BサイトにMn、Fe、Tiが位置する。
配向制御層65の厚さは、当該配向制御層65上に形成される圧電体層70を(100)面に優先配向させることができる厚さであればよく、例えば5nm〜20nmである。なお、このような厚さを有する配向制御層65は、全面に設けられていなくてもよく、例えば島状に設けられていてもよい。「島状」とは、複数のドメインが互いに離間して形成されている状態をいう。
ここで、圧電体層70は結晶方位によって、変位量、誘電率、ヤング率等様々な物理的性質や、ヒステリシス曲線、I−V曲線等の電気特性が異なるものとなる。このため、配向制御層65を用いて圧電体層70を単一配向、すなわち、(100)面に優先配向させることにより圧電特性を十分に発揮させることができる。
本発明に係る圧電体層70は、Bi及びFeを含む菱面体晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物、及びBa及びTiを含む正方晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第1成分と、Bi、K及びTiを含み、正方晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第2成分と、Bi、Mg及びTiを含み、菱面体晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第3成分とを含む混晶として表される圧電材料からなり、(100)面に優先配向している。ペロブスカイト構造のAサイトには、Bi及びBaが位置し、BサイトにはFe、Ti及びMgが位置する。本実施形態では、圧電体層70として鉄酸ビスマス(BiFeO)と、チタン酸バリウム(BaTiO)と、マグネシウムチタン酸ビスマス(BiMgTiO)との3元系混晶として表される組成を有する複合酸化物を用いている。ここで、第1成分は、Bi(Fe,Mn)O-BaTiOであり、第2成分は(Bi0.50.5)TiOであり、第3成分はBi(Mg0.5Ti0.5)Oである。BiFeMnO−BaTiOに正方晶構造を持つ(Bi0.50.5)TiOと菱面体晶構造を持つBi(Mg0.5Ti0.5)Oとを同時に導入することによって、Fe2+が抑えられ、格子歪効果とMPB効果が活用でき、高圧電変位と低リーク電流を実現することが可能になる。
また、圧電体層70は薄膜形成プロセスにより形成される。ここで、薄膜形成プロセスとは、化学溶液法、レーザーアブレーション法、スパッター法、パルス・レーザー・デポジション法(PLD法)、化学蒸着法(CVD法)、エアロゾル・デポジション法等を用いて、厚さミクロンオーダーの薄膜を形成する方法をいう。薄膜形成プロセスにより形成された圧電体層70の厚さは、一般的に3μm以下、好ましくは0.6μm〜1.2μmである。
このようなBi、Fe、Ba、Ti及びMgを含むペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電体層70の組成は、((Bi,Ba)(Fe,Ti,Mg)O)で表される。代表的には、下記一般式(1)で表される鉄酸ビスマス((BiFeO)、略「BF」)と、チタン酸バリウム((BaTiO)、略「BT」)との混晶に、チタン酸ビスマスカリウム((Bi0.50.5)TiO、略「BKT」と、マグネシウムチタン酸ビスマス(Bi(Mg0.5Ti0.5)O)、略「BMT」)とを複合添加することで、変位量が大幅に向上し、一方、リーク電流も大幅に減少する。
この式(1)は、下記一般式(1’)で表すこともできる。
(1-x-y-z)[BiFeO3]-x[BaTiO3]-y[(Bi0.5K0.5)TiO3]-z[Bi(Mg0.5Ti0.5)O3] (1)
(Bi1-xBax)(Fe1-x―yーzTix+y+0.5zMg0.5z)O3 (1’)
ここで、好ましくは、0.25≦x≦0.30、0.05≦y≦0.10、0.05≦z≦0.10となる。
ここで、一般式(1)、(1’)の記述は化学量論に基づく組成表記であり、上述したように、ペロブスカイト構造を取り得る限りにおいて、格子不整合、元素(Bi、Fe、Ba、K、Ti、MgやO)の一部欠損等による不可避な組成のずれは勿論、元素の一部置換等も許容される。例えば、化学量論比を1とすると、0.85〜1.20の範囲内のものは許容される。また、下記のように一般式で表した場合は異なるものであっても、Aサイトの元素とBサイトの元素との比が同じものは、同一の複合酸化物とみなせる場合がある。
さらに、結晶中に格子欠陥を誘起させることにより、圧電体層70にかかる応力を緩和することができる。具体的には、圧電体層70を形成する際の焼成工程等で発生する熱応力や、電圧印加時に発生する応力を緩和することができる。これにより、クラックの発生も抑制することができる。
ここで、第1成分、第2成分及び第3成分において、菱面体晶の複合酸化物の正方晶の複合酸化物に対する比率である、菱面体晶の複合酸化物/正方晶の複合酸化物は、70/30〜65/35であるのが好ましい。これによれば、格子歪効果とMPB効果が活用でき、高圧電変位と低リーク電流を実現することが可能になる。
また、圧電体層70の(Bi0.50.5)TiOの含有量は、5〜10mol%であるのが好ましい。また、第3成分はBi(Mg0.5Ti0.5)Oの含有量は、5〜10mol%であるのが好ましい。さらに、第2成分及び第3成分の総含有量は、10〜20mol%であることが好ましい。
また、圧電体層70を構成する鉄酸ビスマス、チタン酸バリウム及びマグネシウムチタン酸ビスマスは、それぞれペロブスカイト構造を有する公知の圧電材料であり、それぞれ種々の組成のものが知られている。例えば、鉄酸ビスマス、チタン酸バリウム及びマグネシウムチタン酸ビスマスとして、BiFeO、BaTiO、(Bi0.50.5)TiO及びBi(Mg0.5Ti0.5)O以外に、元素(Bi、Fe、Ba、K、Ti、MgやO)が一部欠損する又は過剰であったり、元素の一部が他の元素に置換されたものも知られているが、本発明で鉄酸ビスマス、チタン酸バリウム及びマグネシウムチタン酸ビスマスと表記した場合、欠損・過剰により化学量論の組成からずれたものや元素の一部が他の元素に置換されたものも、鉄酸ビスマス、チタン酸バリウム及びマグネシウムチタン酸ビスマスの範囲に含まれるものとする。また、鉄酸ビスマス、チタン酸バリウム及びマグネシウムチタン酸ビスマスとの比も、種々変更することができる。
また、圧電体層70を構成する複合酸化物は、Bi、Fe、Ba、Ti及びMg以外に、さらにマンガン(Mn)、コバルト(Co)、クロム(Cr)などの他の元素を含むことが好ましく、これらの中でもMnを含むことがより好ましい。Mn、Co、Crなどを含むことにより、リーク特性を向上させることができ、圧電特性に優れた非鉛系の圧電材料とすることができる。なお、圧電体層70が他の元素を含む複合酸化物である場合も、ペロブスカイト構造を有する必要がある。
圧電体層70が、Mn、CoやCrを含む場合、Mn、CoやCrはBサイトに位置する。例えば、圧電体層70がMnを含む場合、圧電体層70を構成する複合酸化物は、鉄酸ビスマスとチタン酸バリウムとマグネシウムチタン酸ビスマスが均一に固溶した固溶体のFe、Ti、Mgの一部がMnで置換された構造、又は鉄酸マンガン酸ビスマスとチタン酸バリウムとマグネシウムチタン酸ビスマスとの3元系混晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物として表され、基本的な特性は鉄酸ビスマスとチタン酸バリウムとマグネシウムチタン酸ビスマスとの3元系混晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物と同じであるが、リーク特性がさらに向上することがわかっている。また、CoやCrを含む場合も、Mnと同様にリーク特性が向上するものである。ここで、下記式(2)または(2’)で表記できる。
(Bi1-xBax){Fe,A}(1-x-y-z)(Ti(x+y+0.5z)Mg0.5z)O3 (2)
或いは:
(Bi1-xBax)Fe0.95(1-x-y-z)A0.05(1-x-y-z)(Ti(x+y+0.5z)Mg0.5z)O3
(A=Mn,Co,Cr から選ばれる1種以上) (2’)
ここで、好ましくは、0.25≦x≦0.30、0.05≦y≦0.10、0.05≦z≦0.10となる。
上述では、圧電体層70が他の元素としてMn、CoおよびCrを含む場合について説明したが、その他遷移金属元素の2元素を同時に含む場合にも同様にリーク特性が向上することがわかっており、これらも圧電体層70とすることができる。また、圧電体層70は特性を向上させるため公知のその他の添加物をさらに含んでいてもよい。
なお、X線回折パターンにおいて、鉄酸ビスマス、チタン酸バリウム、マグネシウムチタン酸ビスマス、鉄酸マンガン酸ビスマス、鉄酸コバルト酸ビスマス、チタン酸ビスマスカリウム及び鉄酸クロム酸ビスマスなどは、単独では検出されないものである。
しかしながら、X線回折装置(Rigaku RINT−2000、CuKα線)を使用し、シンクロトロン放射施設(SPring−8)のビームライン(BL02B2)を用いた高強度シンクロトロンX線回折によれば、鉄酸ビスマス(BF)とチタン酸バリウム(BT)とマグネシウムチタン酸ビスマス(BMT)との3元系混晶(BF−BT−BMT)として表される焼結体や、チタン酸バリウム(BT)とマグネシウムチタン酸ビスマス(BMT)との2元系混晶(BT−BMT)として表される焼結体について、ペロブスカイト構造に帰属されるピークを観測することができる場合もある。
第2電極80としては、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の各種金属の何れでもよく、また、これらの合金や、酸化イリジウム等の金属酸化物が挙げられる。圧電素子300の個別電極である各第2電極80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、流路形成基板10上に延設された金(Au)等のリード電極90がそれぞれ接続されている。このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加される。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、弾性膜50や必要に応じて設ける絶縁体膜及びリード電極90上には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホールド部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このマニホールド部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。また、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、マニホールド部31のみをマニホールドとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、必要に応じて設ける絶縁体膜等)にマニホールド100と各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってマニホールド部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIでは、図示しない外部のインク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、密着層56、第1電極60、配向制御層65及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、(100)面に配向した単結晶シリコン(Si)基板の表面に熱酸化により厚さ1200nmの二酸化シリコン膜を形成した。次に、二酸化シリコン膜上にRFマグネトロンスパッター法により厚さ40nmのチタン膜を形成し、熱酸化することで酸化チタン膜(密着層56)を形成した。次に、酸化チタン膜上にRFマグネトロンスパッター法により、厚さ100nmの白金膜を形成し、(111)面に配向した電極(第1電極60)とした。
次に、第1電極60上に圧電体層70を(100)面に優先配向させるための配向制御層65を形成した。その手法は以下のとおりである。まず、2−エチルヘキサン酸ビスマスと2−エチルヘキサン酸マンガンのn−オクタン溶液を、モル濃度比がBi:Mn=100:100となるように混合して、配向制御層の前駆体溶液を調製した。次いで、配向制御層の前駆体溶液を、酸化チタン膜及び白金膜が形成された上記基板上に滴下し、3000rpmで基板を回転させてスピンコート法により配向制御層前駆体膜を形成した(配向制御層塗布工程)。次に、ホットプレート上で、180℃で2分間乾燥した(配向制御層乾燥工程)。次いで、350℃で2分間脱脂を行った(配向制御層脱脂工程)。その後に、3℃/秒で700℃まで昇温し、酸素雰囲気中で、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置で700℃2分間の焼成を行うことにより、マンガン酸ビスマスからなる配向制御層を形成した(配向制御層焼成工程)。これにより、Bi及びMnからなる複合酸化物からなる配向制御層65を得た。
次いで、配向制御層65上に、ペロブスカイト構造を有する所定の圧電体層70を形成した。その手法は以下のとおりである。2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸マグネシウム及び2−エチルヘキサン酸チタンの各n−オクタン溶液を混合し、Bi、Fe、Mn、Ba、Mg、K、Tiのモル比が、Bi:Fe:Mn:Ba:Mg:K:Ti=72.5:61.75:3.25:25.0:2.5:2.5:32.5となるように混合して、前駆体溶液を調製した。
次いで、前駆体溶液を、配向制御層65上に滴下し、500rpmで6秒間回転後、3000rpmで基板を20秒回転させてスピンコート法により成膜した。次に、ホットプレート上に基板を載せ、180℃で2分間乾燥した。次いで、ホットプレート上に基板を載せ、350℃で2分間脱脂を行った。この溶液塗布〜脱脂工程を2回繰り返した後に、酸素雰囲気中で、RTA装置で、750℃で5分間焼成を行った。次いで、上記の工程を6回繰り返し、計12回の塗布により圧電体層70を形成した。
その後、圧電体層70上に、第2電極80としてRFマグネトロンスパッター法により厚さ100nmの白金膜を形成して第2電極80とした。これにより、第1電極60、配向制御層65、圧電体層70及び第2電極80を具備する圧電素子300を得た。
(実施例2)
前駆体溶液として、2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸マグネシウム及び2−エチルヘキサン酸チタンの各n−オクタン溶液を混合し、Bi、Fe、Mn、Ba、Mg、K、Tiのモル比が、Bi:Fe:Mn:Ba:Mg:K:Ti=67.5:57.0:3.0:30:2.5:2.5:37.5となるように混合したものを用いて圧電体層70を形成した以外は、実施例1と同様の操作を行い、圧電素子300を作製した。
(実施例3)
前駆体溶液として、2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸マグネシウム及び2−エチルヘキサン酸チタンの各n−オクタン溶液を混合し、Bi、Fe、Mn、Ba、Mg、K、Tiのモル比が、Bi:Fe:Mn:Ba:Mg:K:Ti=70.0:57.0:3.0:25:2.5:5:37.5となるように混合したものを用いて圧電体層70を形成した以外は、実施例1と同様の操作を行い、圧電素子300を作製した。
(実施例4)
前駆体溶液として、2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸マグネシウム及び2−エチルヘキサン酸チタンの各n−オクタン溶液を混合し、Bi、Fe、Mn、Ba、Mg、K、Tiのモル比が、Bi:Fe:Mn:Ba:Mg:K:Ti=70:52.25:2.75:25:5:5:40.0となるように混合したものを用いて圧電体層70を形成した以外は、実施例1と同様の操作を行い、圧電素子300を作製した。
(比較例1)
実施例1と同様の溶液を用いて、Bi、Ba、Fe、Mn、Tiのモル比が、Bi:Fe:Mn:Ba:Ti=75.0:71.25:3.75:25.0:25.0となるようにMgを含まない前駆体溶液を調合した。この前駆体溶液を用いて実施例1と同様の操作を行い、計12回の塗布により圧電体層70を形成した以外は、実施例1と同様の操作を行い、圧電素子300を作製した。
(試験例1)
実施例1〜4及び比較例1の圧電素子について、薄膜断面を用いて観察したSEM写真を示す。この結果を図4〜図6に示す。この結果より、BKT+BMT添加によるBFM−BT薄膜モフォロジーの変化が殆ど見られないことがわかった。
(試験例2)
実施例1〜4及び比較例1の圧電体層について、Bruker AXS社製の「D8 Discover」を用いてX線回折の測定を行った。図7〜図9に、実施例1〜4及び比較例1のX線回折パターンを示す。XRD測定結果から、すべてのサンプルは(100)面優先結晶配向になっているが、配向度はBT量とBKT+BMT量に依存することがわかった。
(試験例3)
実施例1〜4及び比較例1の圧電素子について、東陽テクニカ社製「FCE−1A」で、φ=500μmの電極パターンを使用し、室温(25℃)で周波数1kHzの三角波を印加して、P分極量と電圧との関係(ヒステリシス曲線)、S(電界誘起歪(変位量))−V(電圧)の関係(バタフライ)を求めた。図10〜図11に実施例1〜4のヒステリシス曲線を示し、図12に比較例1のヒステリシス曲線を示す。また、図13に実施例1,2のバタフライ曲線を示し、図14に比較例1のバタフライ曲線を示す。なお、駆動方法はバイポーラ駆動によるものである。
この結果、BKT+BMTを添加した実施例では角型性が小さくなったことがわかった。
(試験例4)
実施例1〜4及び比較例1の圧電素子について、±50Vの電圧を印加して、電流密度と電圧との関係(I−V曲線)を求めた。I−V曲線の測定は、ヒューレットパッカード社製「4140B」を用い、測定時の保持時間を2秒として大気下で行った。また、測定は遮光したプローバーを使用し、光起電力等の影響を排除して行った。図15に実施例1〜4及び比較例1の測定結果を示す。
図10〜図15の結果より、実施例1〜4では、BKT+BMTの添加によってリーク電流が大幅低減したことがわかった。これらにおいては、組成中のBFM量が減少するとFe2+量が減り、また、BKTとBMT中にあるTiはFe3+の電価安定に効果があると考えられ、この結果、リーク電流が低減したと考えられる。
(試験例5)
実施例1〜4及び比較例1の圧電素子について、アグザクト社製の変位測定装置(DBLI)を用いて、室温でφ=500μmの電極パターンを使用し、周波数1kHzで30Vの電圧を印加して、バイポーラ駆動及びユニポーラ駆動でそれぞれ電界誘起歪(変位量)を測定した。
この結果、実施例1〜4では、比較例1と比較して変位量が24%向上した。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、流路形成基板10として、シリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
さらに、上述した実施形態では、基板(流路形成基板10)上に第1電極60、配向制御層65、圧電体層70及び第2電極80を順次積層した圧電素子300を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子にも本発明を適用することができる。
上述した実施形態1では、第1電極60が圧力発生室12の並設方向に亘って連続的に設けられた共通電極を構成し、第2電極80が圧力発生室12に対応して独立して設けられた個別電極を構成している液体噴射ヘッドを例示したが、第1電極60が圧力発生室12に対応して独立して設けられた個別電極を構成し、第2電極80が圧力発生室12の並設方向に亘って連続的に設けられた共通電極を構成していてもよい。
また、インクジェット式記録ヘッドI(図1参照)は、例えば、図16に示すように、インクジェット式記録装置IIに搭載される。インクジェット式記録ヘッドIを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動可能に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、ブラックインク組成物及びカラーインク組成物を噴射する。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、紙等の記録媒体である記録シートSが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。なお、記録シートSを搬送する搬送手段は、搬送ローラーに限られずベルトやドラム等であってもよい。
なお、上述した例では、インクジェット式記録装置IIとして、インクジェット式記録ヘッドIがキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、その構成は特に限定されるものではない。インクジェット式記録装置IIは、例えば、インクジェット式記録ヘッドIを固定し、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させることで印刷を行う、いわゆるライン式の記録装置であってもよい。
また、上述した実施形態では、圧電素子を具備する液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
また、本発明に係る圧電素子300は、各種センサーに搭載して用いることができる。各種センサーとしては、例えば、焦電センサー、赤外線センサー、テラヘルツセンサー、温度センサー、超音波センサー、感熱センサー、圧力センサー、加速度センサー、及びジャイロセンサー(角速度センサー)等が挙げられる。これらのセンサーは、リーク電流が低減され、変位量が向上した圧電素子を具備するため、検出感度が高いものとなる。
また、本発明に係る圧電素子300は、強誘電体素子に好適に用いることができる。強誘電体素子としては、強誘電体メモリ(FeRAM)、強誘電体トランジスタ(FeFET)、強誘電体演算回路(FeLogic)、強誘電体キャパシタなどが挙げられる。
さらに、本発明に係る圧電素子300は、光学素子に好適に用いることができる。光学素子としては、波長変換機、光導波路、赤外線などの有害光線の遮断フィルター、量子ドット形成によるフォトニック結晶効果を使用した光学フィルター、薄膜の光干渉を利用した光学フィルター、特定パターン構造を利用した光−熱変換フィルターなどが挙げられる。
さらに、本発明に係る圧電素子300は、発電装置に搭載して用いることができる。発電装置としては、圧力−電気変換効果を使用した発電装置、光による電子励起(光起電力)を使用した発電装置、熱による電子励起(熱起電力)を使用した発電装置、振動を利用した発電装置などが挙げられる。
また、本発明に係る圧電素子300は、上述の液体噴射ヘッド、当該液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置、各種センサー、強誘電体素子、光学素子及び発電装置に用いられる圧電素子に限定されず、その他のデバイスにも用いることができる。その他のデバイスとしては、例えば、超音波発信機等の超音波デバイス、超音波モーター、圧電トランス、圧電モーター、振動式ダスト除去装置等が挙げられる。
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 II インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 マニホールド部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 56 密着層、 60 第1電極、 65 配向制御層、 70 圧電体層、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 マニホールド、 120 駆動回路、 300 圧電素子

Claims (12)

  1. 第1電極と、前記第1電極上に設けられた圧電体層と、前記圧電体層上に設けられた第2電極とを備えた圧電素子であって、
    前記圧電体層は、Bi及びFeを含む菱面体晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物、及びBa及びTiを含む正方晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第1成分と、Bi、K及びTiを含み、正方晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第2成分と、Bi、Mg及びTiを含み、菱面体晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第3成分とを含む混晶として表される圧電材料からなる
    ことを特徴とする圧電素子。
  2. 前記第1成分は、Bi(Fe,Mn)O-BaTiOであり、前記第2成分は(Bi0.50.5)TiOであり、前記第3成分はBi(Mg0.5Ti0.5)Oであることを特徴とする請求項1に記載する圧電素子。
  3. 前記第1成分、前記第2成分及び前記第3成分において、菱面体晶の複合酸化物の正方晶の複合酸化物に対する比率である菱面体晶の複合酸化物/正方晶の複合酸化物は、70/30〜65/35であることを特徴とする請求項1又は2に記載する圧電素子。
  4. Ba及びTiを含む正方晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物の含有量は、25〜30mol%であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載する圧電素子。
  5. 前記第2成分の含有量は、5〜10mol%であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載する圧電素子。
  6. 前記第3成分の含有量は、5〜10mol%であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載する圧電素子。
  7. 前記第2成分及び前記第3成分の総含有量は、10〜20mol%であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載する圧電素子。
  8. 前記第1電極と前記圧電体層との間に、マンガン酸ビスマスからなる配向制御層を有することを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載する圧電素子。
  9. 請求項1〜8の何れか一項に記載する圧電素子を具備することを特徴とする液体噴射ヘッド。
  10. 請求項9に記載する液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
  11. 請求項1〜8の何れか一項に記載する圧電素子を具備することを特徴とするアクチュエーターとセンサー。
  12. Bi及びFeを含む菱面体晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物、及びBa及びTiを含む正方晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第1成分と、Bi、K及びTiを含み、正方晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第2成分と、Bi、Mg及びTiを含み、菱面体晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる第3成分とを含む混晶として表される圧電材料からなることを特徴とする圧電材料。
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