JP6296227B2 - 液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電素子 - Google Patents

液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電素子 Download PDF

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Description

本発明は、ノズル開口に連通する圧力発生室に圧力変化を生じさせる電極及び圧電体層を有する圧電素子を具備する液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電素子に関する。
液体噴射ヘッドを構成する圧電体層として用いられる圧電材料には高い圧電特性が求められており、圧電材料の代表例として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、環境問題の観点から、非鉛又は鉛の含有量を抑えた圧電材料が求められている。鉛を含有しない圧電材料としては、例えば、ビスマス及び鉄を含むBiFeO系の圧電材料がある。具体例としては、鉄酸マンガン酸ビスマス(Bi(Fe,Mn)O)とチタン酸バリウム(BaTiO)との混晶として表される複合酸化物がある(例えば、特許文献2参照)。
また、高品質な印刷を行うため、インクジェット式記録ヘッドに用いられる駆動波形として、インクを収容した圧力発生室を膨張させてから収縮させるという、いわゆる「引き打ち」を行うことによって、吐出するインク滴の重量を少なくし、記録ドット径を小さくすることが可能である(例えば、特許文献3参照)。
撓み変位型の圧電振動を使用するインクジェット式記録ヘッドでは、前述の「引き打ち」を行うため、中間電位Vを基点として、圧力発生室を膨張させるための第1の信号と、インクを吐出するために圧力発生室を収縮させるための第2の信号と、インク吐出後に収縮した圧力発生室を元の状態に復帰させる第3の信号と、を含む駆動波形を使用する。このため、非駆動時は中間電位Vの直流電圧が圧電体に印加された状態となる。
前述したPZTは高い絶縁性を有するため、中間電位Vはこれまで問題とならなかった。このように、PZTがVを問題とならない程度の高い絶縁性を示すのは、PZTが広いバンドギャップを有するバンド絶縁体であることに起因している。
一方、BiFeOは3d軌道の電子間反発(オンサイト・クーロン反発)によりバンドギャップが生じたモット絶縁体である。このため、BiFeO系の圧電材料では、特許文献2に記載されているように、価数及びd電子の自由度が高いMnを添加物として加えることでリーク電流量を下げる対策がとられてきた。
特開2001−223404号公報 特開2009−252789号公報 特開昭55−17589号公報
しかしながら、リーク電流量を下げる対策ではMnは同時に不純物準位を形成するため、PZT並みの絶縁性は実現できない。このような背景から、BiFeO系の圧電材料をPZTと同等以上の信頼性を有する液体噴射ヘッドの圧電材料として使用するためには、絶縁性向上以外で直流電圧に対する耐性を向上させる必要がある。
本発明はこのような事情に鑑み、ビスマス及び鉄を含む圧電材料において、直流電圧に対する破壊耐性が向上した圧電素子を具備する液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を吐出するノズル開口に連通する圧力発生室と、第1電極、前記第1電極上に設けられた圧電体層及び前記圧電体層上に設けられた第2電極を備えた圧電素子と、を具備する液体噴射ヘッドであって、前記圧電体層は、少なくともビスマス及び鉄を50mol%以上含み、(100)面、又は、(001)面に優先配向しており、前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加して得られる前記圧電体層の電流−時間曲線は、2つ以上の変極点を有することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。かかる態様では、圧電体層の電流−時間曲線に、直流伝導により励起されるキャリアー濃度の小さい不純物準位(サブバンド)が挿入される。キャリアー濃度の小さい不純物は、励起時間が遅いため、誘電緩和と競合することで圧電体層の誘電緩和時間を長くすることができる。これにより、絶縁性の飛躍的な向上無しに直流電圧に対する破壊耐性を向上することができる液体噴射ヘッドが実現される。
ここで、前記電流−時間曲線において、前記変極点の1つ目が電流量の絶対値に対して上に凸であることが好ましい。これによれば、最初に電流量が時間経過に伴い増加するため、圧電体層の誘電緩和時間をより長くすることができ、直流電圧に対する破壊耐性をより向上することができる。
ここで、前記電流−時間曲線において、前記変極点の2つ目が電流量の絶対値に対して下に凸であることが好ましい。これによれば、キャリアー濃度の小さい不純物の励起と誘電緩和とが競合することで圧電体層の誘電緩和時間を確実に長くすることができる。
ここで、前記電流−時間曲線において、前記変極点の1つ目における電流量の絶対値が、前記変極点の2つ目における電流量の絶対値以上であることが好ましい。これによれば、キャリアー濃度の小さい不純物の励起時間を確実に遅くすることができ、圧電体層の誘電緩和時間を一層長くすることができる。
また、前記圧電体層は、少なくともビスマス及び鉄を含む酸化物層を焼成することにより作製され、前記酸化物層の焼成は、窒素雰囲気中で行われることが好ましい。これによれば、圧電体層にキャリアー濃度の小さい不純物を比較的容易に導入することができ、圧電体層の電流−時間曲線に、サブバンドを確実に挿入することができる。
また、前記圧電体層は、さらにバリウム及びチタンを含むことが好ましい。これによれば、直流電圧に対する破壊耐性をより向上することができる。
また、前記圧電体層は、さらにマンガンを含むことが好ましい。これによれば、リーク電流を抑制することができ、且つ直流電圧に対する破壊耐性を確実に向上することができる。
また、前記第1電極は、前記圧電体層側にニッケルランタン層を含むことが好ましい。
また、本発明の他の態様は、前記何れかの態様に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。かかる態様では、絶縁性の飛躍的な向上無しに直流電圧に対する破壊耐性を向上することができる液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置が実現される。
また、本発明の他の態様は、第1電極、前記第1電極上に設けられた圧電体層及び前記圧電体層上に設けられた第2電極を備えた圧電素子であって、前記圧電体層は、当該圧電体層に対し、少なくともビスマス及び鉄を50mol%以上含み、(100)面、又は、(001)面に優先配向しており、前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加して得られる前記圧電体層の電流−時間曲線は、2つ以上の変極点を有することを特徴とする圧電素子にある。
かかる態様では、圧電体層の電流−時間曲線に、直流伝導により励起されるキャリアー濃度の小さい不純物準位(サブバンド)が挿入される。キャリアー濃度の小さい不純物は、励起時間が遅いため、誘電緩和と競合することで圧電体層の誘電緩和時間を長くすることができる。これにより、絶縁性の飛躍的な向上無しに直流電圧に対する破壊耐性を向上することができる圧電素子が実現される。
また、別の態様は、液体を吐出するノズル開口に連通する圧力発生室と、第1電極、前記第1電極上に設けられた圧電体層及び前記圧電体層上に設けられた第2電極を備えた圧電素子と、を具備する液体噴射ヘッドであって、前記圧電体層は、少なくともビスマス及び鉄を50mol%以上含み、前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加して得られる前記圧電体層の電流−時間曲線は、2つ以上の変極点を有することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。かかる態様では、圧電体層の電流−時間曲線に、直流伝導により励起されるキャリアー濃度の小さい不純物準位(サブバンド)が挿入される。キャリアー濃度の小さい不純物は、励起時間が遅いため、誘電緩和と競合することで圧電体層の誘電緩和時間を長くすることができる。これにより、絶縁性の飛躍的な向上無しに直流電圧に対する破壊耐性を向上することができる液体噴射ヘッドが実現される。
ここで、前記電流−時間曲線において、前記変極点の1つ目が電流量の絶対値に対して上に凸であることが好ましい。これによれば、最初に電流量が時間経過に伴い増加するため、圧電体層の誘電緩和時間をより長くすることができ、直流電圧に対する破壊耐性をより向上することができる。
ここで、前記電流−時間曲線において、前記変極点の2つ目が電流量の絶対値に対して下に凸であることが好ましい。これによれば、キャリアー濃度の小さい不純物の励起と誘電緩和とが競合するため、圧電体層の誘電緩和時間を確実に長くすることができる。
ここで、前記電流−時間曲線において、前記変極点の1つ目における電流量の絶対値が、前記変極点の2つ目における電流量の絶対値以上であることが好ましい。これによれば、キャリアー濃度の小さい不純物の励起時間を確実に遅くすることができ、圧電体層の誘電緩和時間を一層長くすることができる。
また、前記圧電体層は、少なくともビスマス及び鉄を含む酸化物層を焼成することにより作製され、前記酸化物層の焼成は、窒素雰囲気中で行われることが好ましい。これによれば、圧電体層にキャリアー濃度の小さい不純物を比較的容易に導入することができ、圧電体層の電流−時間曲線に、サブバンドを確実に挿入することができる。
また、前記圧電体層は、さらにバリウム及びチタンを含むことが好ましい。これによれば、直流電圧に対する破壊耐性をより向上することができる。
また、前記圧電体層は、さらにマンガンを含むことが好ましい。これによれば、リーク電流を抑制することができ、且つ直流電圧に対する破壊耐性を確実に向上することができる。
また、本発明の他の態様は、前記何れかの態様に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。かかる態様では、絶縁性の飛躍的な向上無しに直流電圧に対する破壊耐性を向上することができる液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置が実現される。
また、本発明の他の態様は、第1電極、前記第1電極上に設けられた圧電体層及び前記圧電体層上に設けられた第2電極を備えた圧電素子であって、前記圧電体層は、当該圧電体層に対し、少なくともビスマス及び鉄を50mol%以上含み、前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加して得られる前記圧電体層の電流−時間曲線は、2つ以上の変極点を有することを特徴とする圧電素子にある。
かかる態様では、圧電体層の電流−時間曲線に、直流伝導により励起されるキャリアー濃度の小さい不純物準位(サブバンド)が挿入される。キャリアー濃度の小さい不純物は、励起時間が遅いため、誘電緩和と競合することで圧電体層の誘電緩和時間を長くすることができる。これにより、絶縁性の飛躍的な向上無しに直流電圧に対する破壊耐性を向上することができる圧電素子が実現される。
実施形態1に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図。 実施形態1に係る記録ヘッドの平面図。 実施形態1に係る記録ヘッドの断面図。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図。 実施例及び比較例における電流密度の対数と電界強度との関係を示す図。 実施例及び比較例における電流密度と時間の対数との関係を示す図。 実施例の電流密度の極大値と極小値のアレニウスプロットを示す図。 実施例及び比較例における緩和時間の対数と温度との関係を示す図。 実施例及び比較例における破壊率と時間との関係を示す図。 本発明の一実施形態に係る記録装置の概略構成を示す図。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図であり、図3は図2のA−A′線断面図である。図1〜図3に示すように、本実施形態の流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板のマニホールド部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールドの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。なお、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。本実施形態では、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられていることになる。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように二酸化シリコンからなり、厚さが例えば、約0.5μm〜1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)からなる絶縁体膜55が積層形成されている。なお、絶縁体膜55上に、必要に応じて、例えば厚さ10〜30nm程度の密着層が設けられていてもよい。密着層としては、チタン、ジルコニウム又はこれらの酸化物が挙げられる。
さらに、絶縁体膜55上には、第1電極60と、厚さが3μm以下、好ましくは0.3〜1.5μmの薄膜である圧電体層70と、第2電極80とが、積層形成されて、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生手段としての圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエーター装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55、第1電極60及び必要に応じて設ける密着層が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50や絶縁体膜55を設けなくてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。ただし、流路形成基板10上に直接第1電極60を設ける場合には、第1電極60とインクとが導通しないように第1電極60を絶縁性の保護膜等で保護するのが好ましい。
ここで、図3に示すように、本実施形態の第1電極60は、例えば、白金からなる配線層61と、配線層61上に形成されたニッケル酸ランタン層(LNO層)62との二層から構成される。
かかるニッケル酸ランタン層62は、具体的には、酢酸ランタン、酢酸ニッケル及びプロピオン酸を混合して混合溶液を得た後、混合溶液を加熱することにより得られたニッケル酸ランタン膜形成用組成物を用いて形成される。ニッケル酸ランタン層62は、結晶の配向面が(001)面又は(100)面に優先配向(自然配向)する。これにより、ニッケル酸ランタン層62上に設けられる圧電体層70を(001)面又は(100)面に優先配向させることができる。ニッケル酸ランタンとしては、LaNiO、LaNi、LaNiO、LaNiO、LaNi、LaNi10などが挙げられる。なお、ニッケル酸ランタン層62は、他のニッケル酸ランタン膜形成用組成物を用いて化学溶液法により形成してもよく、スパッター法などの気相法により成膜してもよい。
また、本実施形態では、配線層61は、白金からなる白金層としたが、これに限定されず、例えば、イリジウム、酸化イリジウムを含む酸化イリジウム層、白金層と酸化イリジウム層の積層構造などが挙げられる。配線層61の厚さは特に限定されないが、例えば、10〜300nm程度とすればよい。また、ニッケル酸ランタン層62の厚さも特に限定されないが、例えば10〜100nm程度とすればよい。このような配線層61及びニッケル酸ランタン層62で構成される第1電極60は、積層構造でなくてもよく、例えば白金からなる一層の配線層61としてもよい。
本発明に係る圧電体層70は、少なくともビスマス(Bi)及び鉄(Fe)を50mol%以上含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる。本実施形態では、さらにBa及びTiを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物を圧電体層70とした。圧電体層70は、ペロブスカイト構造、すなわち、ABO型構造のAサイトは酸素が12配位しており、また、Bサイトは酸素が6配位して8面体(オクタヘドロン)をつくっている。このAサイトにBi及びBaが、BサイトにFe及びTiが位置している。
このような圧電体層70、すなわち、少なくともBi及びFeを50mol%以上含み、さらにBa及びTiを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物は、鉄酸ビスマスとチタン酸バリウムとの混晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物、または、鉄酸ビスマスとチタン酸バリウムが均一に固溶した固溶体として表される。
ここで、鉄酸ビスマスやチタン酸バリウムは、それぞれペロブスカイト構造を有する公知の圧電材料であり、それぞれ種々の組成のものが知られている。例えば、鉄酸ビスマスやチタン酸バリウムとして、BiFeOやBaTiO以外に、元素が一部欠損する又は過剰であったり、元素の一部が他の元素に置換されたものも知られているが、本発明で鉄酸ビスマス、チタン酸バリウムと表記した場合、基本的な特性が変わらない限り、欠損・過剰により化学量論の組成からずれたものや元素の一部が他の元素に置換されたものも、鉄酸ビスマス、チタン酸バリウムの範囲に含まれるものとする。
このようなペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる圧電体層70の組成は、((Bi,Ba)(Fe,Ti)O)で表される。代表的には、下記一般式(1)で表される混晶として表される。また、この式(1)は、下記一般式(1’)で表すこともできる。ここで、一般式(1)及び一般式(1’)の記述は化学量論に基づく組成表記であり、上述したように、ペロブスカイト構造を取り得る限りにおいて、格子不整合、酸素欠損等による不可避な組成のずれは勿論、元素の一部置換等も許容される。例えば、化学量論比が1とすると、0.85〜1.20の範囲内のものは許容される。
(1−x)[BiFeO]−x[BaTiO] (1)
(0<x<0.40)
(Bi1−xBa)(Fe1−xTi)O (1’)
(0<x<0.40)
ここで、圧電体層70を構成する鉄酸ビスマス(BiFeO)は3d軌道の電子間反発(オンサイト・クーロン反発)によりバンドギャップが生じたモット絶縁体であり、バンドギャップを形成しているFe3+の3d状態は、Fe2+の3d状態との競合関係にある。このため、格子欠陥を含む複合酸化物では、Feの一部がFe2+として存在するため、絶縁性が破れリーク電流を生じる。このようなリークメカニズムは、Bi及びFeを含む鉄酸ビスマスだけでなく、本実施形態に係る圧電体層70、すなわち、鉄酸ビスマスとチタン酸バリウムとの混晶、または、鉄酸ビスマスとチタン酸バリウムが均一に固溶した固溶体でも発生する。このため、圧電体層70に価数及びd電子の自由度が高いMn、Co、Crなどを添加物として添加することでリーク電流量を下げることができる。
圧電体層70が、Mn、CoやCrを含む場合、Mn、CoやCrはBサイトに位置した構造の複合酸化物である。例えば、Mnを含む場合、圧電体層70を構成する複合酸化物は、鉄酸ビスマスとチタン酸バリウムが均一に固溶した固溶体のFeの一部がMnで置換された構造、又は、鉄酸マンガン酸ビスマスとチタン酸バリウムとの混晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物として表され、基本的な特性は鉄酸ビスマスとチタン酸バリウムとの混晶のペロブスカイト構造を有する複合酸化物と同じである。また、CoやCrを含む場合も、Mnと同様にリーク特性を向上することができる。なお、X線回折パターンにおいて、鉄酸ビスマス、チタン酸バリウム、鉄酸マンガン酸ビスマス、鉄酸コバルト酸ビスマス、及び鉄酸クロム酸ビスマスは、単独では検出されないものである。また、Mn、CoおよびCrを例として説明したが、その他遷移金属元素の2元素を同時に含む場合にも同様にリーク特性が向上することがわかっており、これらも圧電体層70とすることができ、さらに、特性を向上させるため公知のその他の添加物を含んでもよい。なお、圧電体層70が、Mn、Co、Crなどを含む複合酸化物である場合も、ペロブスカイト構造を有することが好ましい。
ここで、Bi、Fe、Ba及びTiに加えてMn、CoやCrも含む圧電体層70の組成は、((Bi,Ba)(Fe,Ti,Mn,Co,Cr)O)で表される。代表的には、下記一般式(2)で表される混晶である。また、この式(2)は、下記一般式(2’)で表すこともできる。なお一般式(2)及び一般式(2’)において、Mは、Mn、CoまたはCrである。ここで、一般式(2)及び一般式(2’)の記述は化学量論に基づく組成表記であり、上述したように、ペロブスカイト構造を取り得る限りにおいて、格子不整合、酸素欠損等による不可避な組成のずれは許容される。例えば、化学量論比が1であれば、0.85〜1.20の範囲内のものは許容される。また、下記のように一般式で表した場合は異なるものであっても、Aサイトの元素とBサイトの元素との比が同じものは、同一の複合酸化物とみなせる場合がある。
(1−x)[Bi(Fe1−y)O]−x[BaTiO] (2)
(0<x<0.40、0.01<y<0.10)
(Bi1−xBa)((Fe1−y1−xTi)O (2’)
(0<x<0.40、0.01<y<0.10)
このように((Bi,Ba)(Fe,Ti,Mn,Co,Cr)O)で表される圧電体層70に、Mn、CoやCrを添加することによりリーク特性を向上することができる。しかしながら、Mn、CoやCrは同時に不純物準位を形成するため、直流電圧に対する破壊耐性を向上させることがさらに必要となる。
本発明では、圧電体層70の電流−時間曲線に、直流伝導により励起されるキャリアー濃度の小さい不純物準位(サブバンド)を挿入することで、直流電圧に対する破壊耐性を向上させる。このようなサブバンドの挿入により、圧電体層70は、電流−時間曲線の変極点を2つ以上有するものとなる。具体的に変極点を2つ以上有する圧電体層70は、例えば、液相法によりBi、Fe、Ba及びTiを含む複合酸化物からなる酸化物層72(図5(c)参照)を形成し、酸化物層72を窒素雰囲気中で焼成すること、窒素加圧雰囲気中で焼成すること、不活性ガス中で焼成すること、不活性ガス加圧雰囲気中で焼成すること、などにより形成することができる。
本実施形態では、酸化物層72を、加圧した窒素雰囲気中で焼成することにより、圧電体層70にキャリアー濃度の小さい不純物を導入し、電流−時間曲線の変極点を2つ有する圧電体層70を形成した。かかる圧電体層70の電流−時間曲線は、サブバンドの挿入に起因した変極点(準位1とする)と、通常の誘電緩和に起因した変極点(準位2とする)との2つの変極点を有するものとなる。具体的には、最初に電流量が時間経過に伴い極大まで増加した後、減少に変化する変極点(準位1)と、さらに時間経過に伴い極小まで減少した後、増加に変化する変極点(準位2)とを有する。このような変極点は、1つ目(準位1)が電流量の絶対値に対して上に凸となり、2つ目(準位2)が電流量の絶対値に対して下に凸となる。
通常の圧電体層の電流−時間曲線は、最初に誘電緩和による電流量が減少し、時間経過に伴い極小まで減少した後、増加に変化する変極点(準位2)を有するのみであり、本発明のようなサブバンドの挿入に起因した変極点(準位1)は見られない。このようなサブバンドの挿入により生じる準位1は、圧電体層70に導入されたキャリアー濃度の小さい不純物の励起準位に相当する。キャリアー濃度の小さい不純物の励起時間は、後述する実施例に示すように誘電緩和時間と比べて非常に遅い、すなわち、準位1に到達するまでの時間は、準位2に到達するまでの時間より長くなる。これにより、キャリアー濃度の小さい不純物の励起と誘電緩和とが競合し、圧電体層70の誘電緩和時間を長くすることができ、直流電圧に対する破壊耐性を向上することができる。
なお、圧電体層70の電流−時間曲線において、変極点の1つ目における電流量の絶対値は、変極点の2つ目における電流量の絶対値以上であることが好ましい。これにより、キャリアー濃度の小さい不純物の励起時間を確実に遅くすることができ、圧電体層の誘電緩和時間を一層長くすることができる。
このような圧電体層70は、詳しくは後述するが、ゾル−ゲル法、MOD(Metal-Organic Decomposition)法などの液相法や、スパッター法、レーザーアブレーション法等などのPVD(Physical Vapor Deposition)法(気相法)などで形成することができる。
個別電極である各第2電極80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、弾性膜50上及び絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。また、圧電素子300は、必要に応じて図示されない絶縁体としての保護膜を含む。保護膜が設けられる場合、保護膜は少なくとも圧電体層70を覆う。保護膜としては、酸化アルミニウム(AlO)等の無機絶縁材料が挙げられる。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、弾性膜50、絶縁体膜55及びリード電極90上には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホールド部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このマニホールド部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。また、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、マニホールド部31のみをマニホールドとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55等)にマニホールド100と各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましい。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってマニホールド部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIでは、図示しない外部のインク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、第1電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
次に、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドの製造方法の一例について、図4〜図8を参照して説明する。なお、図4〜図8は、圧力発生室の長手方向の断面図である。本実施形態では、圧電体層70として、Bi,Fe,Ba及びTiを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物を形成する場合について例示する。かかる複合酸化物(圧電体層70)は、10層の圧電体膜73で構成される。
まず、図4(a)に示すように、シリコンウェハーである流路形成基板用ウェハーの表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン(SiO)等からなる二酸化シリコン膜を形成する。次いで、図4(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。
次に、図5(a)に示すように、絶縁体膜55の上に、白金、イリジウム、酸化イリジウム又はこれらの積層構造等からなる配線層61をスパッター法や蒸着法等により全面に形成し、さらに、配線層61上にニッケル酸ランタン(LNO)層62をスパッター法や蒸着法又は化学溶液法などにより形成し、第1電極60とする。次に、図5(b)に示すように、第1電極60上に所定形状のレジスト(図示なし)をマスクとして、第1電極60の側面が傾斜するように同時にパターニングする。
次いで、レジストを剥離した後、この第1電極60上に、圧電体層70を積層する。圧電体層70の製造方法は特に限定されないが、例えば、金属錯体を含む溶液を塗布乾燥し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層(圧電体膜)を得るMOD(Metal-Organic Decomposition)法やゾル−ゲル法等の化学溶液法を用いて圧電体層70を製造することができる。その他、レーザーアブレーション法、スパッター法、パルス・レーザー・デポジション法(PLD法)、CVD法、エアロゾル・デポジション法など、気相法、液相法や固相法でも圧電体層70を製造することができる。
圧電体層70を化学溶液法で形成する場合の具体的な形成手順例としては、まず、図5(c)に示すように、第1電極60上に、金属錯体、具体的には、Bi、Fe、Ba及びTiを含有する金属錯体を含むMOD溶液やゾルからなる圧電体膜形成用組成物(前駆体溶液)を、スピンコート法などを用いて塗布して圧電体前駆体膜71を形成する(塗布工程)。
塗布する前駆体溶液は、焼成によりBi、Fe、Ba及びTiを含む複合酸化物を形成しうる金属錯体を混合し、該混合物を有機溶媒に溶解または分散させたものである。また、MnやCoを含む複合酸化物からなる圧電体層70を形成する場合は、さらに、MnやCoを有する金属錯体を含有する前駆体溶液を用いる。Bi、Fe、Ba、Tiをそれぞれ含む金属錯体や、必要に応じて混合するMnやCoを有する金属錯体の混合割合は、各金属が所望のモル比となるように混合すればよい。Bi、Fe、Ba、Ti、Mn、Coをそれぞれ含む金属錯体としては、例えば、アルコキシド、有機酸塩、βジケトン錯体などを用いることができる。Biを含む金属錯体としては、例えば2−エチルヘキサン酸ビスマス、酢酸ビスマスなどが挙げられる。Feを含む金属錯体としては、例えば2−エチルヘキサン酸鉄、酢酸鉄、トリス(アセチルアセトナート)鉄などが挙げられる。Baを含む金属錯体としては、例えばバリウムイソプロポキシド、2−エチルヘキサン酸バリウム、バリウムアセチルアセトナートなどが挙げられる。Tiを含有する金属錯体としては、例えばチタニウムイソプロポキシド、2−エチルヘキサン酸チタン、チタン(ジ−i−プロポキシド)ビス(アセチルアセトナート)などが挙げられる。Mnを含む金属錯体としては、例えば2−エチルヘキサン酸マンガン、酢酸マンガンなどが挙げられる。Coを含む有機金属化合物としては、例えば2−エチルヘキサン酸コバルト、コバルト(III)アセチルアセトナートなどが挙げられる。勿論、Bi、Fe、Ba、Tiや、必要に応じて含有させるMn、Coを二種以上含む金属錯体を用いてもよい。また、前駆体溶液の溶媒としては、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、オクタン、デカン、シクロヘキサン、キシレン、トルエン、テトラヒドロフラン、酢酸、2−エチルヘキサン酸などが挙げられる。
次いで、この圧電体前駆体膜71を所定温度(例えば、150〜200℃)に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。次に、乾燥した圧電体前駆体膜71を所定温度(例えば、350〜450℃)に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。これにより、圧電体前駆体膜71は酸化物層72となる。ここで言う脱脂とは、圧電体前駆体膜71に含まれる有機成分を、例えば、NO、CO、HO等として離脱させることである。乾燥工程や脱脂工程の雰囲気は限定されず、大気中、酸素雰囲気中や、不活性ガス中でもよい。なお、塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程を複数回行って酸化物層72を形成してもよい。
次に、図6(a)に示すように、酸化物層72を所定温度、例えば600〜850℃程度に加熱して、一定時間、例えば、1〜10分間保持することによって焼成する(焼成工程)。これにより酸化物層72を結晶化させ、Bi、Fe、Ba及びTiを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる圧電体膜73を形成する(焼成工程)。乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、赤外線ランプの照射により加熱するRTA(Rapid Thermal Annealing)装置やホットプレート等が挙げられる。
本発明では、酸化物層72を焼成して圧電体膜73を形成する際に、酸化物層72の焼成工程の、焼成雰囲気、焼成温度等の焼成条件を調整することにより、キャリアー濃度の小さい不純物を圧電体膜73に導入する。本実施形態では、酸化物層72の焼成工程を、加圧した窒素雰囲気中で行うことにより、キャリアー濃度の小さい不純物を圧電体膜73に導入した。これにより、圧電体膜73(圧電体層70)の電流−時間曲線に、キャリアー濃度の小さい不純物準位(サブバンド)が挿入される。このようなサブバンドの挿入により、圧電体層70の電流−時間曲線は、電流量の絶対値に対して上に凸となる1つ目の変極点(準位1)と、電流量の絶対値に対して下に凸となる2つ目の変極点(準位2)とを有するものとなる。1つ目の変極点はサブバンドの挿入に起因した変極点であり、2つ目の変極点は通常の誘電緩和に起因した変極点である。圧電体層70に導入されるキャリアー濃度の小さい不純物の励起時間は、誘電緩和時間と比べて非常に遅いため、誘電緩和と競合することで圧電体層70の誘電緩和時間を長くすることができる。これにより、直流電圧に対する破壊耐性が向上した圧電体層70が得られる。
次いで、上述した塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程や、塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程を所望の膜厚などに応じて複数回繰り返して複数の圧電体膜73からなる圧電体層70を形成することで、図6(b)に示すように複数層の圧電体膜73からなる所定厚さの圧電体層70を形成する。例えば、塗布溶液の1回あたりの膜厚が0.1μm程度の場合には、例えば、10層の圧電体膜73からなる圧電体層70全体の膜厚は約1.0μm程度となる。本実施形態では、圧電体膜73を10層積層して設けたが、1層のみでもよい。
このように圧電体層70を形成した後は、図7(a)に示すように、圧電体層70上に白金等からなる第2電極80をスパッター法等で形成し、各圧力発生室12に対向する領域に圧電体層70及び第2電極80を同時にパターニングして、第1電極60と圧電体層70と第2電極80からなる圧電素子300を形成する。なお、圧電体層70と第2電極80とのパターニングでは、所定形状に形成したレジスト(図示なし)を介してドライエッチングすることにより一括して行うことができる。その後、必要に応じて、例えば、600〜850℃の温度域でアニールを行ってもよい。これにより、圧電体層70と第1電極60や第2電極80との良好な界面を形成することができ、かつ、圧電体層70の結晶性を改善することができる。
次に、図7(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎にパターニングする。
次に、図7(c)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の圧電素子300側に、シリコンウェハーであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハー130を接着剤35を介して接合した後に、流路形成基板用ウェハー110を所定の厚さに薄くする。
次に、図8(a)に示すように、流路形成基板用ウェハー110上に、マスク膜52を新たに形成し、所定形状にパターニングする。
そして、図8(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110をマスク膜52を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハー110の保護基板用ウェハー130とは反対側の面のマスク膜52を除去した後にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハー130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハー110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIとする。
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、(100)単結晶シリコン(Si)基板の表面に熱酸化により膜厚1070nmの酸化シリコン(SiO)膜を形成した。次に、SiO膜上にジルコニウム膜を作成し、熱酸化することで膜厚400nmの酸化ジルコニウム膜(絶縁体膜55)を形成した。次に、密着層としてスパッター法により膜厚10nmのジルコニウム膜を作製した。次に、ジルコニウム膜上にスパッター法により膜厚50nmの(111)に配向した白金膜(配線層61)を作製し、白金膜上にニッケル酸ランタン(LNO)膜を作製した。ここで、LNO膜(LNO層62)の形成手法は以下のとおりである。まず、酢酸ランタン、酢酸ニッケル及びプロピオン酸をモル比1:1で混合し、ホットプレート上にて140℃で1時間加熱攪拌した後、プロピオン酸で0.3mol/Lに調製することでLNO前駆体溶液を作製した。次に、LNO前駆体溶液をスピンコート法にて2200rpmで白金膜が形成された上記基板上に滴下し、塗布し、ホットプレート上で5分間380℃で加熱した後に、RTAを使用し5分間750℃で加熱することでLNO膜を作製した。
そして、LNO膜上に所定の形状のフォトレジストを形成し、ドライエッチングにより密着層、白金膜及びLNO膜をパターニングすることで、第1電極60を作製した。
次いで、第1電極60上に圧電体層70を形成した。圧電体層70の形成手法は以下のとおりである。まず、酢酸ビスマス、酢酸鉄、酢酸マンガン、酢酸バリウム及びチタニウムイソプロポキシドをそれぞれ2−エチルヘキサン酸に混合し、200℃で2時間過熱攪拌した後、2−エチルヘキサン酸及びn−オクタンで約0.5mol/Lに調製した。次に、調製された溶液をICP分析し、ICP分析濃度に基づいて、各元素がモル比でBi:Fe:Mn:Ba:Ti=60:57:3:20:20となるように混合して、前駆体溶液を調製した。
そして、この前駆体溶液を第1電極60が形成された上記基板上に滴下し、塗布し、3000rpmで上記基板を回転させて圧電体前駆体膜71を形成した(塗布工程)。次に、ホットプレート上で、180℃で4分間乾燥し(乾燥工程)、次いで、350℃で4分間脱脂を行った(脱脂工程)。これにより、圧電体前駆体膜71を酸化物層72とした。この塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程からなる工程を2回繰り返した後に、RTA装置を使用して650℃で5分間、10atmで加圧した窒素雰囲気中で焼成を行って酸化物層72を圧電体膜73とした(焼成工程)。この一連の工程を6回繰り返すことで、12層の圧電体膜73からなる圧電体層70を形成した。
その後、圧電体層70上に、スパッター法にて膜厚50nmのイリジウム(Ir)膜を形成し、ドライエッチングによりIr及び圧電体層70をパターニングすることで、第2電極80を形成した。
これにより、Bi、Fe、Mn、Ba及びTiを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物を圧電体層70とする圧電素子300を作製した。
(比較例1)
酸化物層72の焼成工程において、酸素雰囲気中(1atm)で焼成を行った以外は実施例と同様の手順で圧電素子を形成した。
(試験例1)
実施例及び比較例の外観検査を第1電極の形成後、圧電膜の形成後、第2電極の形成後、及び圧電素子の作製後に行った。その結果、いずれの工程後においても膜の割れ、及び形状異常は観測されなかった。
(試験例2)
実施例及び比較例の動的疲労試験による破壊率の評価を行った。破壊率の評価は、該実験専用に作製した装置を用い、印加波形の周波数を50kHzとし、電位差45Vの台形波を使用して行った。この結果、1.9×1010パルスを印加後において、どちらの圧電素子も破壊は見られなかった。これにより、実施例及び比較例の圧電素子は、初期不良、構造起因による応力集中、及び機械振動による破壊が起こらないことがわかった。
(試験例3)
実施例及び比較例の電流−電圧曲線(I−V曲線)の測定を行った。I−V曲線の測定は、ヒューレットパッカード社製「4140B」を用い、測定時の保持時間を2秒として大気下で行った。また、測定は遮光したプローバーを使用し、光起電力等の影響を排除して行った。
図9にI−V曲線を示す。なお、図9のI−V曲線では、縦軸を電流密度の対数とし、横軸を電界強度とした。図9に示すように、実施例及び比較例の圧電素子は、どちらも電界強度に対する電流密度が同等であったため、実施例及び比較例の圧電素子で絶縁性の差がないことがわかった。
(試験例4)
実施例及び比較例の電流−時間曲線(I−t曲線)の測定を行った。I−t曲線の測定は、ヒューレットパッカード社製「4140B」を用い、測定温度を75℃として大気下で行った。温度制御はホットプレートを使用して、温度の振れ幅を±1℃以下にして行った。また、測定は遮光したプローバーを使用し、光起電力等の影響を排除して行った。
図10(a)に実施例のI−t曲線を示し、図10(b)に比較例のI−t曲線を示す。図10(a)に示すように、実施例の圧電素子は、最初に時間経過に伴い電流量の増加が観測され、電流量が極大まで増加した後、減少に変化する変極点(準位1)と、さらに時間経過に伴い極小まで減少した後、増加に変化する変極点(準位2)が観測された。
一方、図10(b)に示すように、比較例の圧電素子は、最初に時間経過に伴い電流量の減少が観測され、その後極小まで減少した後、増加に変化する変極点(準位2′)が観測された。このように実施例で最初に電流量の増加が生じているのは、酸化物層72の焼成を、加圧した窒素雰囲気中で行ったことでキャリアー密度(準位の電子密度)の小さい不純物が圧電体層70に導入され、圧電体層70の電流−時間曲線に、かかる不純物準位(サブバンド)が挿入されたためである。一方、酸化物層72の焼成を酸素雰囲気下で行った比較例では、最初の電流量の増加は生じなかったため、圧電体層にキャリアー密度の小さい不純物は導入されていないことがわかった。
また、図11に実施例における電流密度の極大値及び極小値のアレニウスプロットを示す。図11に示すように、電流密度の極大値及び極小値におけるアレニウスプロットにおける傾き、すなわち準位1及び準位2の活性化エネルギーは同等であることがわかった。
また、図12に実施例及び比較例における緩和時間の対数と温度との関係を示す。図12に示すように、緩和時間の対数は温度に対し直線関係にあり、各温度における実施例の緩和時間は、比較例の緩和時間に対し約10倍の時間加速関係となっていることがわかった。例えば室温(25℃)における緩和時間を算出すると、実施例は205時間、比較例は31時間となり、実施例の緩和時間が約6.6倍長いことがわかった。
(試験例5)
実施例及び比較例の経時破壊(TDDB)評価を行った。TDDB評価は、該実験専用に作製した装置を用い、直流電圧45Vを印加して行った。図13に、実施例及び比較例における破壊率と時間との関係を示す。図13に示すように、実施例の圧電素子は200時間後の破壊率が5%以下であるのに対し、比較例の圧電素子は16時間後の破壊率が8%であり、42時間後では13%まで増加することがわかった。
(結果のまとめ)
図10のI−t曲線から、実施例及び比較例における伝導に寄与する主たる準位は極小に対応する準位(準位2、準位2′)であることが明らかになった。さらに、図9におけるI−V曲線の電流密度(電流量)が同等であること、及び図11における実施例の電流密度の極大値及び極小値における活性化エネルギーが同等であることから、準位2及び準位2′のポテンシャルエネルギー及びキャリアー密度は同等であることがわかった。
一方、実施例のI−t曲線においてのみ観測された極大(準位1)は、活性化エネルギーは準位2と同等であるが、電流量の増加は7%以下と小さいものであった。これにより、準位1は酸化物層72の焼成工程において、加圧した窒素雰囲気中で圧電体層70に導入されたキャリアー濃度(準位の電子密度)の小さい不純物に起因する不純物準位であり、キャリアー濃度の小さい不純物の励起時間は、誘電緩和時間と比べて非常に遅いものであることがわかった。この結果、キャリアー濃度の小さい不純物の励起と誘電緩和とが競合し、実施例の圧電体層の誘電緩和時間を長くできることが明らかとなった。
さらに、図13のTDDB評価結果より、誘電緩和時間が長い実施例では200時間で破壊率が5%以下であるのに対し、比較例では42時間で13%もの破壊率となった。ここで、試験例2の動的疲労試験では実施例及び比較例の圧電素子のどちらも破壊が見られなかったことから、TDDB評価で確認された破壊は直流電圧に特有の破壊モードであることがわかった。これにより、実施例の圧電素子は直流電圧に対し優れた破壊耐性を有することがわかった。
また、上述した図10のI−t曲線で見られる時間に対する電流量の増加は、誘電体としての性質の破壊に由来するものであるため、絶縁性が同等であっても、誘電緩和時間を長くすることで破壊に至る時間を遅くすることができる。本発明によれば、圧電体層の電流−時間曲線に、伝導に寄与する主たる準位2と活性化エネルギーが近接し、且つ直流伝導により励起される準位1を挿入することで、誘電緩和時間を長くし、直流電圧による破壊率を低下させることができる、すなわち、絶縁性の飛躍的な向上無しに直流電圧に対する破壊耐性を向上することができる圧電素子を具備する液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電素子が実現される。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
また、上述した実施形態1では、各能動部310の圧電体層70が連続的に設けられた構成を例示したが、勿論、圧電体層70は、能動部310毎に独立して設けられていてもよい。
上述した実施形態1では、第1電極60が圧力発生室12に対応して独立して設けられた個別電極を構成し、第2電極80が圧力発生室12の並設方向に亘って連続的に設けられた共通電極を構成している液体噴射ヘッドを例示したが、第1電極60が圧力発生室12の並設方向に亘って連続的に設けられた共通電極を構成し、第2電極80が圧力発生室12に対応して独立して設けられた個別電極を構成していてもよい。
また、インクジェット式記録ヘッドI(図1参照)は、例えば、図14に示すように、インクジェット式記録装置IIに搭載される。インクジェット式記録ヘッドIを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動可能に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、ブラックインク組成物及びカラーインク組成物を噴射する。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、紙等の記録媒体である記録シートSが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。なお、記録シートSを搬送する搬送手段は、搬送ローラーに限られずベルトやドラム等であってもよい。
なお、上述した例では、インクジェット式記録装置IIとして、インクジェット式記録ヘッドIがキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、その構成は特に限定されるものではない。インクジェット式記録装置IIは、例えば、インクジェット式記録ヘッドIを固定し、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させることで印刷を行う、いわゆるライン式の記録装置であってもよい。
また、上述した実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
また、本発明に係る圧電体層70は、良好な強誘電特性を示すことから、強誘電体素子に好適に用いることができる。好適に用いることができる強誘電体素子としては、強誘電体メモリ(FeRAM)、強誘電体トランジスタ(FeFET)、強誘電体演算回路(FeLogic)、強誘電体キャパシタなどが挙げられる。
また、本発明に係る圧電体層70は、良好な圧電特性を示すことから、圧電素子に好適に用いることができる。好適に用いることができる圧電素子としては、液体噴射装置、超音波モーター、圧電トランス、振動式ダスト除去装置、圧力−電気変換機、超音波発信機、超音波検出器、圧力センサー、加速度センサーなどが挙げられる。
また、本発明に係る圧電体層70は、良好な焦電特性を示すことから、焦電デバイスに好適に用いることができる。好適に用いることができる焦電素子としては、熱−電気変換機、赤外線検出器、テラヘルツ検出器、温度センサー、感熱センサーなどが挙げられる。
さらに、本発明に係る圧電体層70は、良好な平坦面と高い誘電率を示すことから、光学素子に好適に用いることができる。好適に用いることができる光学素子としては、波長変換機、光導波路、赤外線などの有害光線の遮断フィルター、量子ドット形成によるフォトニック結晶効果を使用した光学フィルター、薄膜の光干渉を利用した光学フィルター、特定パターン構造を利用した光−熱変換フィルターなどが挙げられる。
さらに、本発明に係る圧電体層70は、良好なエネルギー−電気変換能力を示すことから、発電素子に好適に用いることができる。好適に用いることができる発電素子としては、圧力−電気変換効果を使用した発電素子、光による電子励起(光起電力)を使用した発電素子、熱による電子励起(熱起電力)を使用した発電素子、振動を利用した発電素子などが挙げられる。
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 II インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 15 連通路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 マニホールド部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 第1電極、 70 圧電体層、 72 酸化物層、 73 圧電体膜、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 マニホールド、 120 駆動回路、 300 圧電素子

Claims (10)

  1. 液体を吐出するノズル開口に連通する圧力発生室と、第1電極、前記第1電極上に設けられた圧電体層及び前記圧電体層上に設けられた第2電極を備えた圧電素子と、を具備する液体噴射ヘッドであって、
    前記圧電体層は、少なくともビスマス及び鉄を50mol%以上含み、(100)面、又は、(001)面に優先配向しており、
    前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加して得られる前記圧電体層の電流−時間曲線は、2つ以上の変極点を有することを特徴とする液体噴射ヘッド。
  2. 前記電流−時間曲線において、前記変極点の1つ目が電流量の絶対値に対して上に凸であることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
  3. 前記電流−時間曲線において、前記変極点の2つ目が電流量の絶対値に対して下に凸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
  4. 前記電流−時間曲線において、前記変極点の1つ目における電流量の絶対値が、前記変極点の2つ目における電流量の絶対値以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
  5. 前記圧電体層は、少なくともビスマス及び鉄を含む酸化物層を焼成することにより作製され、
    前記酸化物層の焼成は、窒素雰囲気中で行われることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
  6. 前記圧電体層は、さらにバリウム及びチタンを含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
  7. 前記圧電体層は、さらにマンガンを含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
  8. 前記第1電極は、前記圧電体層側にニッケルランタン層を含むことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
  9. 請求項1〜の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
  10. 第1電極、前記第1電極上に設けられた圧電体層及び前記圧電体層上に設けられた第2電極を備えた圧電素子であって、
    前記圧電体層は、当該圧電体層に対し、少なくともビスマス及び鉄を50mol%以上含み、(100)面、又は、(001)面に優先配向しており、
    前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加して得られる前記圧電素子の電流−時間曲線は、2つ以上の変極点を有することを特徴とする圧電素子。
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