JP2016002728A - 液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】圧電アクチュエーターの破壊を抑制した液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置を提供する。【解決手段】圧力発生室12が設けられた流路形成基板10と、流路形成基板10の一方面側に設けられた振動板50と、振動板50の圧力発生室12とは反対側に、振動板50側から第1電極60、圧電体層70及び第2電極80が積層された圧電アクチュエーター300と、を具備し、圧電アクチュエーター300は、第2電極80が複数の能動部310に亘って連続して設けられて、複数の能動部310の共通電極として機能し、第2電極80は、圧電体層70側の第1層81と、圧電体層70とは反対側の第2層82と、を具備し、第2層82は、第1層81上に端部が形成されており、第1層81と第2層82との間の少なくとも第2層82の端部に重なる位置に絶縁層200が設けられている。【選択図】図3
Description
本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを噴射するインクジェット式記録ヘッド及びその製造方法並びにインクジェット式記録装置に関する。
圧電アクチュエーターを変形させて圧力発生室内の液体に圧力変動を生じさせることで、圧力発生室に連通するノズル開口から液滴を噴射させる液体噴射ヘッドが知られている。この液体噴射ヘッドの代表例としては、液滴としてインク滴を噴射させるインクジェット式記録ヘッドがある。
インクジェット式記録ヘッドは、例えば、ノズル開口に連通する圧力発生室が設けられた流路形成基板の一方面側に圧電アクチュエーターを備え、圧電アクチュエーターの駆動によって振動板を変形させることで、圧力発生室内のインクに圧力変化を生じさせて、ノズル開口からインク滴を噴射させる。
ここで、圧電アクチュエーターは、基板上に設けられた第1電極、圧電体層及び第2電極を具備し、第1電極を圧電アクチュエーターの実質的な駆動部である能動部毎に個別電極として設け、第2電極を複数の能動部に亘って連続して共通電極として設けることで、圧電体層を第2電極で覆うようにした構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、このような圧電アクチュエーターでは、第1電極と第2電極とが導通しないように隙間を空けて形成されており、その隙間から圧電体層が露出されている。このため、圧電体層が、製造工程中に発生する水素ガス等によって溶解し、第1電極と第2電極との間でリーク電流が生じ、焼損が発生する虞がある。
このため、圧電体層の露出した部分と保護基板との間に接着剤を設け、圧電体層の水素ガス等による溶解を抑制するようにした構成が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、特許文献1及び2の構成では、第1電極と第2電極との間に隙間を形成するために、第2電極をエッチングによってパターニングする工程が行われる。このため、第2電極のパターニング時に圧電体層の表面にエッチングダメージやアッシングダメージなどのダメージ層が形成されてしまい、ダメージ層によってリーク電流が生じ易くなり、焼損が発生し易くなるという問題がある。
なお、第2電極を圧電体層上の全面に亘って設けることによって、圧電体層の表面の露出を抑制して、水素ガスによる溶解やダメージ層の形成を抑制する構成も考えられるものの、第2電極を圧電体層の全面に亘って設けると第2電極と第1電極とを電気的に導通しないように構成するのが困難である。
また、圧電体層として鉛を含む材料を用いた場合には、圧電体層の最表面に鉛を過剰に含む過剰鉛層が形成され、過剰鉛層によって圧電体層の耐電圧が低くなり、破壊が発生する虞があるという問題がある。
このような問題は、インクジェット式記録ヘッドに限定されず、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、圧電アクチュエーターの破壊を抑制した液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が複数設けられた流路形成基板と、前記流路形成基板の一方面側に設けられた振動板と、前記振動板の前記圧力発生室とは反対側に、前記振動板側から第1電極、圧電体層及び第2電極が積層された圧電アクチュエーターと、を具備し、前記圧電アクチュエーターは、実質的な駆動部となる能動部を複数具備し、前記第1電極が前記能動部毎に設けられて、各能動部の個別電極として機能すると共に、前記第2電極が複数の前記能動部に亘って連続して設けられて、複数の前記能動部の共通電極として機能し、前記第2電極は、前記圧電体層側の第1層と、前記圧電体層とは反対側の第2層と、を具備し、前記第2層は、前記第1層上に端部が形成されており、前記第1層と前記第2層との間の少なくとも前記第2層の前記端部に重なる位置に絶縁層が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、絶縁膜によって圧電体層を保護することができ、圧電体層の水素ガス等による溶解を抑制してリーク電流による破壊を抑制することができる。また、第2層の端部に相対向する領域に絶縁層を設けることで、第2層のパターニング時のアッシングダメージやエッチングダメージ等のダメージ層が圧電体層に形成されるのを抑制して、圧電体層のリーク電流による破壊を抑制することができる。さらに、第2電極が第1層と第2層とを有するため、第1層を形成した後に圧電体層の再加熱処理等を容易に行うことができ、圧電体層の圧電特性、特に耐電圧等を向上することができる。
かかる態様では、絶縁膜によって圧電体層を保護することができ、圧電体層の水素ガス等による溶解を抑制してリーク電流による破壊を抑制することができる。また、第2層の端部に相対向する領域に絶縁層を設けることで、第2層のパターニング時のアッシングダメージやエッチングダメージ等のダメージ層が圧電体層に形成されるのを抑制して、圧電体層のリーク電流による破壊を抑制することができる。さらに、第2電極が第1層と第2層とを有するため、第1層を形成した後に圧電体層の再加熱処理等を容易に行うことができ、圧電体層の圧電特性、特に耐電圧等を向上することができる。
ここで、前記第1層は、前記圧電体層の前記第1電極とは反対側の面に亘って連続して設けられており、前記第1電極上には、前記第2層と同一層からなる導電層が設けられており、前記導電層と前記第2層とは、前記第1層上に設けられた除去部によって電気的に不連続となるように設けられており、前記端部は、前記除去部によって形成されたものであり、前記絶縁層は、前記第1層と前記導電層との間まで延設されていることが好ましい。これによれば、圧電体層等のパターニング時に第1電極がオーバーエッチングされても、導電層を設けることで第1電極の短絡や電気抵抗値の増大を抑制することができる。また、絶縁層を第1層の端部まで設けることで第1電極と第2電極とが導通するのを抑制することができる。
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、圧電アクチュエーターの破壊を抑制して耐久性を向上した液体噴射装置を実現できる。
かかる態様では、圧電アクチュエーターの破壊を抑制して耐久性を向上した液体噴射装置を実現できる。
また、本発明の他の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が複数設けられた流路形成基板と、前記流路形成基板の一方面側に設けられた振動板と、前記振動板の前記圧力発生室とは反対側に、前記振動板側から第1電極、圧電体層及び第2電極が積層された圧電アクチュエーターと、を具備し、前記圧電アクチュエーターは、実質的な駆動部となる能動部を複数具備し、前記第1電極が前記能動部毎に設けられて、各能動部の個別電極として機能すると共に、前記第2電極が複数の前記能動部に亘って連続して設けられて、複数の前記能動部の共通電極として機能し、前記第2電極は、前記圧電体層側の第1層と、前記圧電体層とは反対側の第2層と、を具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記流路形成基板上に振動板と、前記第1電極と、前記圧電体層と、を形成する工程と、前記圧電体層上に、前記第1層を形成する工程と、前記第1層上に絶縁層を形成すると共にパターニングする工程と、前記第1層及び前記絶縁層上に亘って第2層を形成する工程と、前記第2層をパターニングして、前記絶縁層上に前記第2層の端部を形成すると共に、前記第1層及び前記第2層を有する第2電極を形成する工程と、を具備することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる態様では、絶縁膜によって圧電体層を保護することができ、圧電体層の水素ガス等による溶解を抑制してリーク電流による破壊を抑制することができる。また、第2層の端部に相対向する領域に絶縁層を設けることで、第2層のパターニング時のアッシングダメージやエッチングダメージ等のダメージ層が圧電体層に形成されるのを抑制して、圧電体層のリーク電流による破壊を抑制することができる。さらに、第2電極が第1層と第2層とを有するため、第1層を形成した後に圧電体層の再加熱処理等を容易に行うことができ、圧電体層の圧電特性、特に耐電圧等を向上することができる。
かかる態様では、絶縁膜によって圧電体層を保護することができ、圧電体層の水素ガス等による溶解を抑制してリーク電流による破壊を抑制することができる。また、第2層の端部に相対向する領域に絶縁層を設けることで、第2層のパターニング時のアッシングダメージやエッチングダメージ等のダメージ層が圧電体層に形成されるのを抑制して、圧電体層のリーク電流による破壊を抑制することができる。さらに、第2電極が第1層と第2層とを有するため、第1層を形成した後に圧電体層の再加熱処理等を容易に行うことができ、圧電体層の圧電特性、特に耐電圧等を向上することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの斜視図であり、図2は、インクジェット式記録ヘッドの流路形成基板の平面図であり、図3は図2のA−A′線に準ずる断面図及び拡大断面図であり、図4は図3のB−B′線に準ずる断面図である。
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの斜視図であり、図2は、インクジェット式記録ヘッドの流路形成基板の平面図であり、図3は図2のA−A′線に準ずる断面図及び拡大断面図であり、図4は図3のB−B′線に準ずる断面図である。
図示するように、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドIが備える本実施形態の基板である流路形成基板10には、圧力発生室12が形成されている。そして、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12が同じ色のインクを吐出する複数のノズル開口21が並設される方向に沿って並設されている。以降、この方向を圧力発生室12の並設方向、又は第1の方向Xと称する。また、この第1の方向Xと直交する方向を、以降、第2の方向Yと称する。
また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向の一端部側、すなわち第1の方向Xに直交する第2の方向Yの一端部側には、インク供給路13と連通路14とが複数の隔壁11によって区画されている。連通路14の外側(第2の方向Yにおいて圧力発生室12とは反対側)には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるマニホールド100の一部を構成する連通部15が形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、インク供給路13、連通路14及び連通部15からなる液体流路が設けられている。
流路形成基板10の一方面側、すなわち圧力発生室12等の液体流路が開口する面には、各圧力発生室12に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって接合されている。すなわち、ノズルプレート20には、第1の方向Xにノズル開口21が並設されている。
流路形成基板10の他方面側には、振動板50が形成されている。本実施形態に係る振動板50は、流路形成基板10上に形成された弾性膜51と、弾性膜51上に形成された絶縁体膜52とで構成されている。なお、圧力発生室12等の液体流路は、流路形成基板10を一方面から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力発生室12等の液体流路の他方面は、振動板50(弾性膜51)で構成されている。
絶縁体膜52上には、厚さが例えば、約0.2μmの第1電極60と、厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの第2電極80とで構成される圧電アクチュエーター300が形成されている。
以下、圧電アクチュエーター300について、図3及び図4を参照してさらに詳細に説明する。
図示するように、圧電アクチュエーター300を構成する第1電極60は、圧力発生室12毎に切り分けられて、後述する能動部毎に独立する個別電極を構成する。この第1電極60は、圧力発生室の第2の方向Yにおいては、圧力発生室12の幅よりも狭い幅で形成されている。すなわち、圧力発生室12の第1の方向Xにおいて、第1電極60の端部は、圧力発生室12に対抗する領域の内側に位置している。また、第2の方向Yにおいて、第1電極60の両端部は、それぞれ圧力発生室12の外側まで延設されている。なお、第1電極60の材料は、後述する圧電体層70を成膜する際に酸化せず、導電性を維持できる材料が好ましく、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等の貴金属、またはランタンニッケル酸化物(LNO)などに代表される導電性酸化物が好適に用いられる。
また、第1電極60として、前述の導電材料と、振動板50との間に、密着力を確保するための密着層を用いてもよい。本実施形態では、特に図示していないが密着層としてチタンを用いている。なお、密着層としては、ジルコニウム、チタン、酸化チタンなどを用いることができる。すなわち、本実施形態では、チタンからなる密着層と、上述した導電材料から選択される少なくとも一種の導電層とで第1電極60が形成されている。
圧電体層70は、第2の方向Yが所定の幅となるように、第1の方向Xに亘って連続して設けられている。圧電体層70の第2の方向Yの幅は、圧力発生室12の第2の方向Yの長さよりも広い。このため、圧力発生室12の第2の方向Yでは、圧電体層70は圧力発生室12の外側まで設けられている。
圧力発生室12の第2の方向Yにおいて、圧電体層70のインク供給路側の端部は、第1電極60の端部よりも外側に位置している。すなわち、第1電極60の端部は圧電体層70によって覆われている。また、圧電体層70のノズル開口21側の端部は、第1電極60の端部よりも内側(圧力発生室12側)に位置しており、第1電極60のノズル開口21側の端部は、圧電体層70に覆われていない。
圧電体層70は、第1電極60上に形成される電気機械変換作用を示す強誘電性セラミックス材料からなるペロブスカイト構造の結晶膜(ペロブスカイト型結晶)である。圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等を用いることができる。また、圧電体層70の材料としては、鉛を含む鉛系の圧電材料に限定されず、鉛を含まない非鉛系の圧電材料を用いることもできる。
圧電体層70は、詳しくは後述するが、ゾル−ゲル法、MOD(Metal-Organic Decomposition)法などの液相法や、スパッタリング法、レーザーアブレーション法等などのPVD(Physical Vapor Deposition)法(気相法)などで形成することができる。
このような圧電体層70には、各隔壁11に対応する凹部71が形成されている。この凹部71の第1の方向Xの幅は、各隔壁11の第1の方向の幅と略同一、もしくはそれよりも広くなっている。これにより、振動板50の圧力発生室12の第2の方向Yの端部に対抗する部分(いわゆる振動板50の腕部)の剛性が押さえられるため、圧電アクチュエーター300を良好に変位させることができる。
第2電極80は、圧電体層70の第1電極60とは反対面側に設けられており、複数の能動部310に共通する共通電極を構成する。本実施形態では、第2電極80は、圧電体層70側に設けられた第1層81と、第1層81の圧電体層70とは反対側に設けられた第2層82と、を具備する。
第1層81は、圧電体層70との界面を良好に形成できること、絶縁性及び圧電特性を発揮できる材料が望ましく、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)等の貴金属材料、及びランタンニッケル酸化物(LNO)に代表される導電性酸化物が好適に用いられる。また、第1層81は、複数材料の積層であってもよい。本実施形態では、イリジウムとチタンとの積層電極(イリジウムが圧電体層70と接する)を使用している。そして、第1層81は、スパッタリング法、レーザーアブレーション法などのPVD(Physical Vapor Deposition)法(気相法)、ゾル−ゲル法、MOD(Metal-Organic Decomposition)法、メッキ法などの液相法により形成することができる。また、第1層81の形成後に、加熱処理を行うことにより、圧電体層70の特性改善を行うことができる。このような第1層81は、圧電体層70上のみ、すなわち、圧電体層70の流路形成基板10とは反対側の表面上のみに形成されている。つまり、第1層81が圧電体層70の流路形成基板10とは反対側の表面に設けられているとは、第1層81が圧電体層70の積層方向に交差する方向の側面上には設けられていないことを言う。
また、第2電極80を構成する第2層82は、導電性を有する材料、例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)等の貴金属材料やタングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等の一般的な金属材料を用いることができる。もちろん、第2層82は、上記金属材料の単一材料であっても、複数の材料が混合した複数材料であってもよい。また、第1層81と第2層82との間に、チタン等を設けるようにしてもよい。本実施形態では、第2層82として、イリジウム(Ir)とチタン(Ti)との積層電極を用いた。
このような第2層82は、本実施形態では、第1層81上と、第1層81が設けられていない圧電体層70の側面上と、第1電極60上と、に亘って連続して設けられている。なお、第1層81上の第2層82と、第1電極60上の第2層82とは、除去部83を介して電気的に切断されている。すなわち、第1層81上の第2層82と、第1電極60上の第2層82とは、同一層からなるが電気的に不連続となるように形成されている。本実施形態では、第1電極60上に設けられて第2層82と同一層からなるが電気的に不連続となるように設けられた層を導電層84と称する。ここで、除去部83は、圧電体層70上のノズル開口21側に設けられており、第2層82のみを厚さ方向(第1層81と第2層82との積層方向)に貫通して電気的に切断するものである。このような除去部83は、第1の方向Xに亘って連続して第2層82を厚さ方向に貫通して設けられている。つまり、本実施形態では、第2層82には、除去部83によって端部が形成されていることになる。このように、第2層82を圧電体層70の側面上及び第1電極60上に延設して導電層84を設けることで、圧電体層70をパターニングした際に第1電極60がオーバーエッチングされたとしても、導電層84によって第1電極60の断線や電気抵抗値が高くなるのを抑制することができる。また、導電層84と第2層82とは除去部83によって電気的に不連続となっているため、第1電極60と第2電極80とが導通して能動部310を駆動することができなくなることがない。
このような第1電極60、圧電体層70及び第2電極80で構成される圧電アクチュエーター300は、第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加することで変位が生じる。すなわち両電極の間に電圧を印加することで、第1電極60と第2電極80とで挟まれている圧電体層70に圧電歪みが生じる。そして、両電極に電圧を印加した際に、圧電体層70に圧電歪みが生じる部分を能動部310と称する。これに対して、圧電体層70に圧電歪みが生じない部分を非能動部と称する。また、圧電体層70に圧電歪みが生じる能動部310において、圧力発生室12に対向する部分を可撓部と称し、圧力発生室12の外側の部分を非可撓部と称する。
本実施形態では、第2の方向Yにおいて、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80の全てが圧力発生室12の外側まで連続的に設けられている。すなわち能動部310が圧力発生室12の外側まで連続的に設けられている。このため、能動部310のうち圧電アクチュエーター300の圧力発生室12に対向する部分が可撓部となり、圧力発生室12の外側の部分が非可撓部となっている。
すなわち、本実施形態では、図3に示すように、能動部310の第2の方向Yの端部は、第2電極80の第1層81によって規定されている。
また、能動部310の第1の方向Xの端部は、第1電極60によって規定されている。そして、第1電極60の第1の方向Xの端部は、圧力発生室12に相対向する領域内に設けられている。したがって、能動部310の第1の方向Xの端部は、可撓部に設けられていることになり、第1の方向Xにおいて、能動部310と非能動部との境界における応力が振動板の変形によって開放される。このため、能動部310の第1の方向Xの端部における応力集中に起因する焼損やクラック等の破壊を抑制することができる。
また、第2電極80の第1層81と第2層82との間には、絶縁性を有する材料で形成された絶縁層200が設けられている。絶縁層200は、絶縁材料であれば特に限定されないが、詳しくは後述する製造工程において、絶縁層200の下地となる圧電体層70や第1電極60等に影響を及ぼさずにパターニングできる材料が好ましく、感光性樹脂を好適に用いることができる。
このような絶縁層200は、圧電アクチュエーター300を積層方向から平面視した際に、第2層82の除去部83によって形成された端部に重なる位置に設けられている。すなわち、絶縁層200は、第2層82の端部に相対向して、つまり、絶縁層200は、第2層82の端部に跨がって第1層81と第2層82との間から除去部83が形成された領域まで設けられている。また、絶縁層200は、第2層82と同一層である導電層84の端部にも相対向して設けられている。すなわち、本実施形態では、絶縁層200は、第2の方向Yにおいて、除去部83によって設けられた第2層82(導電層84)の2つの端部と、除去部83とに跨がって連続して設けられている。なお、絶縁層200は、第1の方向Xにおいても、除去部83を完全に覆って、第1層81の表面が露出しないように設けられている。
また、絶縁層200は、第2の方向Yにおいて、第1層81の第1電極60が引き出された側の端部を覆うように、圧電体層70の側面に達するまで延設されている。これにより、第1層81と詳しくは後述する個別リード電極91とが絶縁層200によって導通するのを抑制することができる。なお、圧電体層70の側面とは、圧電アクチュエーター300の積層方向とは交差する方向に設けられた面のことである。
また、絶縁層200は、非可撓部内に設けられている。すなわち、絶縁層200は、第2の方向Yにおいて、第1電極60が引き出された端部とは反対側の端部は、圧力発生室12に相対向しない領域まで延設されている。ちなみに、絶縁層200を可撓部まで延設すると、絶縁層200が圧電アクチュエーター300の変形を阻害して変位効率が低下すると共に、第1層81と第2層82との電気的な接続面積が狭くなってしまう。本実施形態では、絶縁層200を非可撓部のみに設けることで、変位効率の低下を抑制して、第1層81と第2層82との電気的な接続面積が減少して電気抵抗値が高くなるのを抑制することができる。
このような圧電アクチュエーター300では、第2電極80が、圧電体層70を覆っているため、第1電極60と第2電極80との間で電流がリークすることがなく、圧電アクチュエーター300の破壊を抑制することができる。ちなみに、第1電極60と第2電極80とが近接した状態で露出されていると、圧電体層70の表面を電流がリークし、圧電体層70が破壊されてしまう。ただし、第1電極60と第2電極80とが露出されていても距離が近くなければ、電流のリークは発生しない。
このような圧電アクチュエーター300の第1電極60と、第2電極80とには、図3及び図4に示すように、本実施形態の配線層である個別リード電極91と、共通リード電極92とが接続されている。
個別リード電極91及び共通リード電極92(以降、両者を合わせてリード電極90と称する)は、本実施形態では、同一層からなるが、電気的に不連続となるように形成されている。具体的には、リード電極90は、電極(第2電極80の第2層82)側に設けられた密着層191と、密着層191上に設けられた導電層192と、を具備する。
密着層191は、第2層82や絶縁層200、振動板50等と導電層192との密着性を向上させるためのものであり、その材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ニッケルクロム(NiCr)、チタン(Ti)、チタンタングステン(TiW)等を用いることができる。もちろん、密着層191は、上述したものを単一材料として用いたものであってもよく、また、複数の材料が混合した複数材料であってもよく、さらに、異なる材料の複数層を積層したものであってもよい。本実施形態では、密着層191としてニッケルクロム(NiCr)を用いた。
また、導電層192は、比較的導電性の高い材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等を用いることができる。本実施形態では、導電層192として金(Au)を用いた。
ここで、個別リード電極91は、圧電体層70の外側に設けられた第1電極60上に設けられている。ちなみに、第1電極60上には、上述したように第2電極80の第2層82と同一層からなるが、第2層82とは不連続となる電極層が設けられている。このため、第1電極60と個別リード電極91とは、この第2層82と同一層で且つ第2層82とは不連続な導電層84を介して電気的に接続されている。
共通リード電極92は、第2電極80上(圧電体層70の第2電極80上)に設けられている。また、図2に示すように、共通リード電極92は、流路形成基板10の第1の方向Xの両端部に、第2の方向Yに連続して振動板50上に引き出されている。
また、共通リード電極92は、第2の方向Yにおいて、圧力発生室12の壁面上に、すなわち、可撓部と非可撓部との境界部分に跨って設けられた延設部93を有する。延設部93は、複数の能動部310の第1の方向Xに亘って連続して設けられており、第1の方向Xの両端部で共通リード電極92に連続する。すなわち、延設部93を有する共通リード電極92は、保護基板30側から平面視した際に、能動部310の周囲を囲むように連続して配置されている。このように、延設部93を設けることで、可撓部と非可撓部との境界における応力集中における圧電体層70の破壊を抑制することができる。また、共通リード電極92が可撓部上には実質的に形成されていないため、能動部310の変位低下を抑えることができる。
このような圧電アクチュエーター300が形成された流路形成基板10上には、図1及び図2に示すように、圧電アクチュエーター300を保護する保護基板30が接着剤35によって接合されている。保護基板30には、圧電アクチュエーター300を収容する空間を画成する凹部である圧電アクチュエーター保持部31が設けられている。なお、本実施形態では、保護基板30は、個別リード電極91上に接着剤35を介して接合されている。これにより、接着剤35が可撓部等に流れ出して、可撓部の変形を阻害するのを抑制することができる。もちろん、保護基板30を絶縁層200に接着剤35を介して接合してもよい。また、保護基板30には、マニホールド100の一部を構成するマニホールド部32が設けられている。マニホールド部32は、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部15と連通している。また保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。各能動部310の第1電極60に接続されたリード電極90は、この貫通孔33内に露出しており、図示しない駆動回路に接続される接続配線の一端が、この貫通孔33内でリード電極90に接続されている。
保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってマニホールド部32の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料で形成される。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加する。これにより圧電アクチュエーター300と共に振動板50がたわみ変形して各圧力発生室12内の圧力が高まり、各ノズル開口21からインク滴が噴射される。
ここで、このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドの製造方法について説明する。なお、図5〜図9は、インクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
まず、図5(a)に示すように、流路形成基板10が複数一体的に形成されるシリコンウェハーである流路形成基板用ウェハー110の表面に振動板50を形成する。本実施形態では、流路形成基板用ウェハー110を熱酸化することによって形成した二酸化シリコン(弾性膜51)と、スパッタリング法で成膜後、熱酸化することによって形成した酸化ジルコニウム(絶縁体膜52)との積層からなる振動板50を形成した。
次いで、図5(b)に示すように、絶縁体膜52上の全面に第1電極60を形成する。この第1電極60の材料は特に限定されないが、例えば、高温でも導電性を失わない白金、イリジウム等の貴金属や、酸化イリジウム、ランタンニッケル酸化物などの導電性酸化物、及びこれらの材料の積層材料が好適に用いられる。また、第1電極60は、例えば、スパッタリング法やPVD法(物理蒸着法)、レーザーアブレーション法などの気相成膜、スピンコート法などの液相成膜などにより形成することができる。また、前述の導電材料と、振動板50との間に、密着力を確保するための密着層を用いてもよい。本実施形態では、特に図示していないが密着層としてチタンを用いている。なお、密着層としては、ジルコニウム、チタン、酸化チタンなどを用いることができる。また、電極表面(圧電体層70の成膜側)に圧電体層70の結晶成長を制御するための制御層を形成してもよい。本実施形態では、圧電体層70(PZT)の結晶制御としてチタンを使用している。チタンは、圧電体層70の成膜時に圧電体層70内に取り込まれるため、圧電体層70形成後には膜として存在していない。結晶制御層としては、ランタンニッケル酸化物などのペロブスカイト型結晶構造の導電性酸化物などを使用してもよい。
次に、本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。ここで、本実施形態では、金属錯体を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成している。なお、圧電体層70の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法やスパッタリング法又はレーザーアブレーション法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法等を用いてもよい。すなわち、圧電体層70は液相法、気相法の何れで形成してもよい。本実施形態では、複数層の圧電体膜74を積層することで圧電体層70を形成するようにした。
具体的には、図6(a)に示すように、第1電極60上に1層目の圧電体膜74を形成した段階で、第1電極60及び1層目の圧電体膜74をそれらの側面が傾斜するように同時にパターニングする。なお、第1電極60及び1層目の圧電体膜74のパターニングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)、イオンミリング等のドライエッチングにより行うことができる。
ここで、例えば、第1電極60をパターニングしてから1層目の圧電体膜74を形成する場合、フォト工程・イオンミリング・アッシングして第1電極60をパターニングするため、第1電極60の表面や、表面に設けた図示しないチタン等の結晶種層などが変質してしまう。そうすると変質した面上に圧電体膜74を形成しても当該圧電体膜74の結晶性が良好なものではなくなり、2層目以降の圧電体膜74も1層目の圧電体膜74の結晶状態に影響して結晶成長するため、良好な結晶性を有する圧電体層70を形成することができない。
それに比べ、1層目の圧電体膜74を形成した後に第1電極60と同時にパターニングすれば、1層目の圧電体膜74はチタン等の結晶種に比べて2層目以降の圧電体膜74を良好に結晶成長させる種(シード)としても性質が強く、たとえパターニングで表層に極薄い変質層が形成されていても2層目以降の圧電体膜74の結晶成長に大きな影響を与えない。
なお、2層目の圧電体膜74を成膜する前に露出した振動板50上(本実施形態では、酸化ジルコニウムである絶縁体膜52)に、2層目以降の圧電体膜74を成膜するときに、結晶制御層(中間結晶制御層)を用いてもよい。本実施形態では、中間結晶制御層としてチタンを用いるようにした。このチタンからなる中間結晶制御層は、第1電極60上に形成する結晶制御層のチタンと同様に、圧電体膜74を成膜する際に圧電体膜74に取り込まれる。ちなみに、中間結晶制御層は、中間電極または直列接続されるコンデンサの誘電体となってしまった場合、圧電特性の低下を引き起こす。このため、中間結晶制御層は、圧電体膜74(圧電体層70)に取り込まれ、圧電体層70の成膜後に膜として残らないものが望ましい。
次に、図6(b)に示すように、2層目以降の圧電体膜74を積層することにより、複数層の圧電体膜74からなる圧電体層70を形成する。
ちなみに、2層目以降の圧電体膜74は、絶縁体膜52上、第1電極60及び1層目の圧電体膜74の側面上、及び1層目の圧電体膜74上に亘って連続して形成される。
次に、図6(c)に示すように、圧電体層70上に第2電極80を構成する第1層81を形成する。本実施形態では、特に図示していないが、まず、圧電体層70上にイリジウムを有するイリジウム層と、イリジウム層上にチタンを有するチタン層とを積層する。なお、このイリジウム層及びチタン層は、スパッタリング法やCVD法等によって形成することができる。その後、イリジウム層及びチタン層が形成された圧電体層70をさらに再加熱処理(ポストアニール)する。このように再加熱処理することで、圧電体層70の第2電極80側にイリジウム層等を形成した際のダメージが発生しても、再加熱処理を行うことで、圧電体層70のダメージを回復して、圧電体層70の圧電特性を向上することができる。また、圧電体層70を形成する際に、第2電極80側に鉛が過剰に含まれる層(過剰鉛の層)が形成されたとしても、再加熱処理を行うことで、過剰な鉛を第1層81に吸着させて、過剰鉛による圧電体層70の圧電特性の低下を抑制することができる。
次に、図7(a)に示すように、第1層81及び圧電体層70を各圧力発生室12に対応してパターニングする。本実施形態では、第1層81上に所定形状に形成したマスク(図示なし)を設け、このマスクを介して第1層81及び圧電体層70をエッチングする、いわゆるフォトリソグラフィーによってパターニングした。なお、圧電体層70のパターニングは、例えば、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングが挙げられる。これにより、圧電体層70はパターニングされて凹部71(図4参照)等が形成される。また、この第1層81及び圧電体層70のエッチングによって、第1電極60の一部が露出されるが、第1電極60上に圧電体層70の一部が残留してしまうと、第1電極60と個別リード電極91とを接続することができなくなってしまう。したがって、特に図示していないが、第1層81及び圧電体層70のエッチングでは、第1電極60上に圧電体層70が残留しないように、第1電極60の表面(圧電体層70側)側の一部が同時に除去されるまで行う。
次に、図7(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の一方面側(圧電体層70が形成された面側)、すなわち、第1層81、圧電体層70、第1電極60及び絶縁体膜52上に亘って絶縁層200を形成すると共にパターニングする。絶縁層200としては、感光性材料を用いることが好ましい。このように感光性材料の絶縁層200を用いることで、ドライエッチングなどを用いることなく絶縁層200をパターニングして、第1層81や圧電体層70がオーバーエッチングにより除去されるのを抑制することができる。ちなみに、絶縁層200をドライエッチングする場合、第1層81や圧電体層70をオーバーエッチングして除去してしまう虞があるからである。
また、絶縁層200は、後の工程で第2層82に除去部83を形成する領域に重なる領域であって、除去部83よりも広い領域に形成する。また、絶縁層200は、第1層81の端面を覆うように設ける。
次に、図7(c)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の一方面側(圧電体層70が形成された面側)に亘って、すなわち、絶縁層200、第1層81、圧電体層70、絶縁体膜52及び第1電極60上等に亘って、例えば、イリジウム(Ir)とチタン(Ti)とを積層して第2層82を形成する。
次に、図7(d)に示すように、第2電極80を所定形状にパターニングして除去部83等を形成する。ここで、第2層82の除去部83は、絶縁層200上に形成されるため、第1層81や圧電体層70がオーバーエッチングにより除去されることがない。ちなみに、絶縁層200を設けていない場合、第2層82に除去部83を形成する際に、第1層81や圧電体層70がオーバーエッチングされてしまい、第1層81の厚さが薄くなると共に、圧電体層70にダメージが生じる。なお、絶縁層200を設けていない場合には、第1電極60と第2電極80とが導通しないように、除去部83は第1層81にも形成しなくてはならない。すなわち、除去部83は、第1層81及び第2層82を厚さ方向に貫通して設けられる。したがって、第1層81及び第2層82に除去部83を形成する際に、圧電体層70にフォトレジストのアッシングによるアッシングダメージ、オーバーエッチングによるエッチングダメージなどのダメージ層170が形成されてしまう。このように、圧電体層70の除去部83によって露出された領域にダメージ層170が形成されると、ダメージ層170によって第1電極60と第2電極80との間でリーク電流が発生し、圧電体層70が破壊され易くなってしまう。本実施形態では、絶縁層200を設けることで、第1層81に除去部83を設けることなく、絶縁層200によって第1電極60と第2電極80とが導通しないようにすることができる。したがって、第1層81に除去部83を設けるエッチングを行う必要がなく、エッチング時のアッシングダメージやエッチングダメージなどのダメージ層170が圧電体層70に形成されるのを抑制することができる。また、第2層82に除去部83を形成する際にも、第1層81が圧電体層70を覆って圧電体層70の表面が露出されていないのに加えて、除去部83が形成される領域には絶縁層200が形成されているため、絶縁層200にアッシングダメージやオーバーエッチングによるエッチングダメージのダメージ層170が形成されるだけで、第1層81や圧電体層70にダメージ層170が形成されるのを抑制することができる。
なお、絶縁層200は、後の工程で、流路形成基板用ウェハー110を異方性エッチング(ウェットエッチング)した際に発生する水素ガス等によって圧電体層70が溶解するのを抑制する役割も有する。すなわち、絶縁層200を設けることで、第1層81に除去部83を設けずに圧電体層70が露出されるのを抑制して、水素ガス等によって圧電体層70が溶解するのを抑制し、第2電極80と第1電極60との間でリーク電流が生じるのを抑制して、焼損が発生し難くすることができる。
ここで、例えば、図10に示すように、第1層81及び第2層82に除去部83を形成した後、除去部83を覆う絶縁層200を設けることで、後の工程で発生する水素ガス等から圧電体層70を保護する構成も考えられる。しかしながら、圧電体層70には、第1層81及び第2層82をパターニングして除去部83を形成した際のダメージ層170が形成されてしまうため、ダメージ層170にリーク電流が生じて、焼損が発生し易い。
また、例えば、図11に示すように、第1層81と第2層82とに除去部83を設けずに、圧電体層70の側面を覆う絶縁層200を設けることで、後の工程で発生する水素ガス等から圧電体層70を保護する構成も考えられる。しかしながら、第1層81及び第2層82や圧電体層70をパターニングする際に第1電極60がオーバーエッチングされて厚さが薄くなり、断線や電気抵抗値の増大が生じるなどの問題がある。これに対して、本実施形態では、オーバーエッチングした第1電極60上に第2電極80を構成する第2層82と同一層からなるが除去部83によって不連続となる導電層84を設けることで、第1電極60がオーバーエッチングされても第1電極60の断線や電気抵抗値の増大を抑制することができる。
さらに、例えば、図12に示すように、第2電極80の一部を除去して圧電体層70を露出させると共に、圧電体層70の露出された表面を絶縁層200で覆うことで、後の工程で発生する水素ガス等から圧電体層70を保護する構成も考えられる。しかしながら、図12に示す構成では、第1層81及び第2層82をパターニングした際に圧電体層70にダメージ層170が形成されてしまうため、ダメージ層170にリーク電流が生じて、焼損が発生し易い。また、第1層81及び第2層82や圧電体層70をパターニングする際に第1電極60がオーバーエッチングされて厚さが薄くなり、断線や電気抵抗値の増大が生じるなどの問題がある。
すなわち、本実施形態では、第1層81や圧電体層70をパターニングした際に第1電極60がオーバーエッチングされても、第1電極60上に第2層82と同一層からなるが不連続となる導電層84を設けることで、第1電極60の断線や電気抵抗値の増大を抑制することができる。また、導電層84と第2層82とを不連続とする除去部83を第2層82のみに設け、第1層81と第2層82との間に絶縁層200を設けることで、圧電体層70が露出されるのを抑制して、圧電体層70にダメージ層170が形成されるのを抑制すると共に後の工程で発生する水素ガス等によって圧電体層70が溶解するのを抑制することができる。
次に、図8(a)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の一方面の全面に亘ってリード電極90を形成する。本実施形態では、密着層191と、導電層192とを積層することでリード電極90を形成した。
次に、図8(b)に示すように、リード電極90を所定形状にパターニングする。リード電極90のパターニングでは、先に導電層192をウェットエッチング等でパターニングした後、密着層191をウェットエッチングによってパターニングすればよい。このリード電極90のパターニング時においても、圧電体層70は、第1層81、第2層82及び絶縁層200によって略全ての領域が覆われているため、リード電極90のエッチング液等による影響を抑制することができる。
次に、図9(a)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の圧電アクチュエーター300側に、シリコンウェハーであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハー130を接着剤35を介して接合した後、流路形成基板用ウェハー110を所定の厚みに薄くする。
次いで、図9(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110にマスク膜53を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図9(c)に示すように、流路形成基板用ウェハー110をマスク膜53を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電アクチュエーター300に対応する圧力発生室12、インク供給路13、連通路14及び連通部15等を形成する。この流路形成基板用ウェハー110を構成するシリコンウェハーのアルカリ溶液を用いた異方性エッチングでは、水素ガスが発生するが、本実施形態の圧電体層70は、第1層81、第2層82及び絶縁層200によって略全ての領域が覆われているため、圧電体層70が水素ガスによって溶解するのを抑制することができる。したがって、圧電体層70の溶解、特に除去部83に対応する領域において溶解することで、第1電極60と第2電極80との間でリーク電流が発生するのを抑制して、圧電体層70の破壊を抑制することができる。
その後は、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハー110の保護基板用ウェハー130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハー130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハー110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドとする。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態1では、絶縁層200を第1層81の端部を覆う領域、すなわち、圧電体層70の側面まで延設するようにしたが、特にこれに限定されない。ここで、絶縁層200の変形例を図13及び図14に示す。なお、図13及び図14は、インクジェット式記録ヘッドの要部断面図である。図13に示すように、絶縁層200は、第1層81上から圧電体層70の側面を通って、第1電極60の圧電体層70側の端部まで延設されている。これによっても第1電極60と第2電極80とを絶縁層200によって電気的に接続しないようにすることができる。また、図14に示すように、絶縁層200は、第1電極60の略全面に亘って設けられていてもよい。この場合、絶縁層200に厚さ方向に貫通するコンタクトホール201を設け、コンタクトホール201を介して絶縁層200上の個別リード電極91と第1電極60とを電気的に接続すればよい。
また、例えば、絶縁層200は、第1層81と第2層82との間に設けられていればよく、第1層81と第2層82との間には、絶縁層200以外の膜が設けられていてもよい。また、第2電極80は、第1層81と第2層82とを有するものであれば、その他の膜を有するものであってもよい。
さらに、上述した実施形態1では、各能動部310の圧電体層70が連続的に設けられた構成を例示したが、勿論、圧電体層70は、能動部310毎に独立して設けられていてもよい。
また、上述した実施形態1のように第1電極60が個別電極として設けられた場合であっても、圧電アクチュエーター300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。ただし、流路形成基板10上に直接第1電極60を設ける場合には、第1電極60とインクとが導通しないように第1電極60を絶縁性の保護膜等で保護するのが好ましい。つまり、流路形成基板10上に第1電極60が設けられているとは、流路形成基板10の直上も、間に他の部材が介在した状態(上方)も含むものである。また、流路形成基板10を構成するシリコン基板の一部を残して振動板として作用するようにしてもよい。
また、インクジェット式記録ヘッドIは、例えば、図15に示すように、インクジェット式記録装置IIに搭載される。インクジェット式記録ヘッドIを有する記録ヘッドユニット1は、インク供給手段を構成するカートリッジ2が着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動可能に設けられている。この記録ヘッドユニット1は、例えば、ブラックインク組成物及びカラーインク組成物を噴射する。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、紙等の記録媒体である記録シートSが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。なお、記録シートSを搬送する搬送手段は、搬送ローラーに限られずベルトやドラム等であってもよい。
そして本発明では、上述のようにインクジェット式記録ヘッドIを構成する圧電アクチュエーター300の破壊を抑制することができる。結果として、耐久性を高めたインクジェット式記録装置IIを実現することができる。
なお、上述した例では、インクジェット式記録装置IIとして、インクジェット式記録ヘッドIがキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、その構成は特に限定されるものではない。インクジェット式記録装置IIは、例えば、インクジェット式記録ヘッドIを固定し、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させることで印刷を行う、いわゆるライン式の記録装置であってもよい。
また、上述の実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて本発明を説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものである。液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッドの他、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 II インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 流路形成基板(基板)、 11 隔壁、 12 圧力発生室、 13 インク供給路、 14 連通路、 15 連通部、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 圧電アクチュエーター保持部、 32 マニホールド部、 33 貫通孔、 35 接着剤、 40 コンプライアンス基板、 41 封止膜、 42 固定板、 43 開口部、 50 振動板、 51 弾性膜、 52 絶縁体膜、 60 第1電極、 70 圧電体層、 71 凹部、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 マニホールド、 170 ダメージ層、 200 絶縁層、 201 コンタクトホール、 300 圧電アクチュエーター、 310 能動部
Claims (4)
- 液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が複数設けられた流路形成基板と、
前記流路形成基板の一方面側に設けられた振動板と、
前記振動板の前記圧力発生室とは反対側に、前記振動板側から第1電極、圧電体層及び第2電極が積層された圧電アクチュエーターと、を具備し、
前記圧電アクチュエーターは、実質的な駆動部となる能動部を複数具備し、
前記第1電極が前記能動部毎に設けられて、各能動部の個別電極として機能すると共に、前記第2電極が複数の前記能動部に亘って連続して設けられて、複数の前記能動部の共通電極として機能し、
前記第2電極は、前記圧電体層側の第1層と、前記圧電体層とは反対側の第2層と、を具備し、
前記第2層は、前記第1層上に端部が形成されており、
前記第1層と前記第2層との間の少なくとも前記第2層の前記端部に重なる位置に絶縁層が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
- 前記第1層は、前記圧電体層の前記第1電極とは反対側の面に亘って連続して設けられており、
前記第1電極上には、前記第2層と同一層からなる導電層が設けられており、
前記導電層と前記第2層とは、前記第1層上に設けられた除去部によって電気的に不連続となるように設けられており、
前記端部は、前記除去部によって形成されたものであり、
前記絶縁層は、前記第1層と前記導電層との間まで延設されていることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。 - 請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
- 液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が複数設けられた流路形成基板と、
前記流路形成基板の一方面側に設けられた振動板と、
前記振動板の前記圧力発生室とは反対側に、前記振動板側から第1電極、圧電体層及び第2電極が積層された圧電アクチュエーターと、を具備し、
前記圧電アクチュエーターは、実質的な駆動部となる能動部を複数具備し、
前記第1電極が前記能動部毎に設けられて、各能動部の個別電極として機能すると共に、前記第2電極が複数の前記能動部に亘って連続して設けられて、複数の前記能動部の共通電極として機能し、
前記第2電極は、前記圧電体層側の第1層と、前記圧電体層とは反対側の第2層と、を具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記流路形成基板上に振動板と、前記第1電極と、前記圧電体層と、を形成する工程と、
前記圧電体層上に、前記第1層を形成する工程と、
前記第1層上に絶縁層を形成すると共にパターニングする工程と、
前記第1層及び前記絶縁層上に亘って第2層を形成する工程と、
前記第2層をパターニングして、前記絶縁層上に前記第2層の端部を形成すると共に、前記第1層及び前記第2層を有する第2電極を形成する工程と、
を具備することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
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JP2014125092A JP2016002728A (ja) | 2014-06-18 | 2014-06-18 | 液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN113352755A (zh) * | 2020-03-04 | 2021-09-07 | 精工爱普生株式会社 | 液体喷出头 |
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- 2014-06-18 JP JP2014125092A patent/JP2016002728A/ja active Pending
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