JP2014117925A - 液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電極や配線層の剥離を抑制すると共に圧電体層のダメージを抑制した液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】液体を噴射するノズル開口21に連通する圧力発生室12を有する流路形成基板10と、該流路形成基板10の一方面側に設けられた第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80と、前記第1電極60及び前記第2電極80に電気的に接続された配線層90と、を有する圧電素子300と、を具備し、前記配線層90が、前記第1電極60及び前記第2電極80側に設けられた密着層191と、該密着層191の前記第1電極60及び前記第2電極80とは反対面側に設けられた導電層192と、を具備し、該密着層191が、少なくとも前記圧電体層70に覆われていない前記第1電極60及び前記第2電極80の表面に亘って延設されている。
【選択図】 図3
【解決手段】液体を噴射するノズル開口21に連通する圧力発生室12を有する流路形成基板10と、該流路形成基板10の一方面側に設けられた第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80と、前記第1電極60及び前記第2電極80に電気的に接続された配線層90と、を有する圧電素子300と、を具備し、前記配線層90が、前記第1電極60及び前記第2電極80側に設けられた密着層191と、該密着層191の前記第1電極60及び前記第2電極80とは反対面側に設けられた導電層192と、を具備し、該密着層191が、少なくとも前記圧電体層70に覆われていない前記第1電極60及び前記第2電極80の表面に亘って延設されている。
【選択図】 図3
Description
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置、液体噴射ヘッド等に搭載される圧電素子及びその製造方法に関する。
圧電素子(圧電アクチュエーター)を変形させて圧力発生室内の液体に圧力変動を生じさせることで、圧力発生室に連通するノズル開口から液滴を噴射させる液体噴射ヘッドが知られている。この液体噴射ヘッドの代表例としては、液滴としてインク滴を噴射させるインクジェット式記録ヘッドがある。
インクジェット式記録ヘッドは、例えば、ノズル開口に連通する圧力発生室が設けられた流路形成基板の一方面側に圧電素子を備え、圧電素子の駆動によって振動板を変形させることで、圧力発生室内のインクに圧力変化を生じさせて、ノズル開口からインク滴を噴射させる。
ここで、圧電素子は、振動板上に設けられた第1電極、圧電体層及び第2電極を具備し、第1電極及び第2電極には、駆動IC等に接続された配線と接続するための配線層が接続されたものがある(例えば、特許文献1〜3参照)。
しかしながら、配線層として、ニッケルクロム等の密着層を用いて、密着層をウェットエッチングによりパターニングすると、密着層をウェットエッチングする際に用いるエッチャントとして酸を用いるため、酸によって密着層と電極との間に電蝕が発生し、配線層の剥離等が発生する虞があるという問題がある。
また、密着層をウェットエッチングする際に酸を用いると、この酸が圧電体層にダメージを与えてしまうという問題がある。
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。また、液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子に限定されず、他のデバイスに搭載される圧電素子においても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、電極や配線層の剥離を抑制すると共に圧電体層のダメージを抑制した液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室を有する流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に設けられた第1電極と、圧電体層と、第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極に電気的に接続された配線層と、を有する圧電素子と、を具備し、前記配線層が、前記第1電極及び前記第2電極側に設けられた密着層と、該密着層の前記第1電極及び前記第2電極とは反対面側に設けられた導電層と、を具備し、該密着層が、少なくとも前記圧電体層に覆われていない前記第1電極及び前記第2電極の表面に亘って延設されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、密着層で電極を覆うことで、密着層をウェットエッチングではなく、ドライエッチング等で形成することができると共に、ウェットエッチングしたとしても密着層が電極を覆っているため、エッチング液によって密着層と電極との間に電蝕が発生するのを抑制することができる。
かかる態様では、密着層で電極を覆うことで、密着層をウェットエッチングではなく、ドライエッチング等で形成することができると共に、ウェットエッチングしたとしても密着層が電極を覆っているため、エッチング液によって密着層と電極との間に電蝕が発生するのを抑制することができる。
ここで、前記密着層が、前記圧電体層の前記第2電極に覆われていない領域にも延設されていることが好ましい。これによれば、密着層が圧電体層を覆うため、密着層をウェットエッチングしたとしても、エッチング液が圧電体層に接触する面積を減少させて、圧電体層がエッチング液によってダメージを受けるのを抑制することができる。
また、前記密着層が、ニッケル、クロム、チタン及びタングステンから選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。これによれば、密着性を向上して、導電層の剥離を抑制することができる。
また、前記導電層が、金、白金、アルミニウム、銅から選択される少なとも一種を含むことが好ましい。これによれば、電気抵抗の低い材料を用いることで、比較的薄い厚さで形成することができ、圧電素子の変異特性の低下を抑制することができる。さらに材料厚さを薄くすることによってエッチング液との接触面は小さくなり、電蝕現象を抑制することができる。
さらに、本発明の他の態様は、上記態様に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、配線の剥離を抑制して信頼性の高い液体噴射装置を実現できる。
かかる態様では、配線の剥離を抑制して信頼性の高い液体噴射装置を実現できる。
また、本発明の他の態様は、第1電極と、圧電体層と、第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極に電気的に接続された配線層と、を具備し、前記配線層が、前記第1電極及び前記第2電極側に設けられた密着層と、該密着層の前記第1電極及び前記第2電極とは反対面側に設けられた導電層と、を具備し、該密着層が、少なくとも前記圧電体層に覆われていない前記第1電極及び前記第2電極の表面に亘って延設されていることを特徴とする圧電素子にある。
かかる態様では、密着層で電極を覆うことで、密着層をウェットエッチングではなく、ドライエッチング等で形成することができると共に、ウェットエッチングしたとしても密着層が電極を覆っているため、エッチング液によって密着層と電極との間に電蝕が発生するのを抑制することができる。
かかる態様では、密着層で電極を覆うことで、密着層をウェットエッチングではなく、ドライエッチング等で形成することができると共に、ウェットエッチングしたとしても密着層が電極を覆っているため、エッチング液によって密着層と電極との間に電蝕が発生するのを抑制することができる。
さらに、本発明の他の態様は、第1電極と、圧電体層と、第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極に電気的に接続された配線層と、を具備し、前記配線層が、前記第1電極及び前記第2電極側に設けられた密着層と、該密着層の前記第1電極及び前記第2電極とは反対面側に設けられた導電層と、を具備する圧電素子の製造方法であって、前記第1電極を形成すると共にパターニングする工程と、前記第1電極上に前記圧電体層及び前記第2電極を形成すると共に、前記第2電極及び前記圧電体層をパターニングする工程と、前記圧電体層に覆われていない前記第1電極上及び前記第2電極上に亘って前記密着層を形成する工程と、前記密着層上に前記導電層を形成すると共にパターニングする工程と、前記密着層をパターニングして、少なくとも前記圧電体層に覆われていない前記第1電極及び前記第2電極の表面に亘って延設された当該密着層を形成する工程と、を具備することを特徴とする圧電素子の製造方法にある。
かかる態様では、密着層で電極を覆うことで、密着層をウェットエッチングではなく、ドライエッチング等で形成することができると共に、ウェットエッチングしたとしても密着層が電極を覆っているため、エッチング液によって密着層と電極との間に電蝕が発生するのを抑制することができる。
かかる態様では、密着層で電極を覆うことで、密着層をウェットエッチングではなく、ドライエッチング等で形成することができると共に、ウェットエッチングしたとしても密着層が電極を覆っているため、エッチング液によって密着層と電極との間に電蝕が発生するのを抑制することができる。
また、前記密着層をパターニングする工程の後、前記第2電極をパターニングする工程をさらに具備してもよく、前記密着層をパターニングする工程と、前記第2電極をパターニングする工程と、を同時に行うことが好ましい。これによれば、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの斜視図であり、図2は、インクジェット式記録ヘッドの流路形成基板の平面図であり、図3は図2のA−A′線に準ずる断面図であり、図4は図2のB−B′線に準ずる断面図であり、図5は図3のC−C′線の断面図である。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの斜視図であり、図2は、インクジェット式記録ヘッドの流路形成基板の平面図であり、図3は図2のA−A′線に準ずる断面図であり、図4は図2のB−B′線に準ずる断面図であり、図5は図3のC−C′線の断面図である。
図示するように、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドIが備える流路形成基板10には、圧力発生室12が形成されている。そして、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12が同じ色のインクを吐出する複数のノズル開口21が並設される方向に沿って並設されている。以降、この方向を圧力発生室12の並設方向、又は第1の方向Xと称する。また、この第1の方向Xと直交する方向を、以降、第2の方向Yと称する。
また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向の一端部側、すなわち第1の方向Xに直交する第2の方向Yの一端部側には、インク供給路13と連通路14とが複数の隔壁11によって区画されている。連通路14の外側(第2の方向Yにおいて圧力発生室12とは反対側)には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるマニホールド100の一部を構成する連通部15が形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、インク供給路13、連通路14及び連通部15からなる液体流路が設けられている。
流路形成基板10の一方面側、すなわち圧力発生室12等の液体流路が開口する面には、各圧力発生室12に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって接合されている。すなわち、ノズルプレート20には、第1の方向Xにノズル開口21が並設されている。
流路形成基板10の他方面側には、振動板50が形成されている。本実施形態に係る振動板50は、流路形成基板10上に形成された弾性膜51と、弾性膜51上に形成された絶縁体膜52とで構成されている。なお、圧力発生室12等の液体流路は、流路形成基板10を一方面から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力発生室12等の液体流路の他方面は、振動板50(弾性膜51)で構成されている。
絶縁体膜52上には、厚さが例えば、約0.2μmの第1電極60と、厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの第2電極80とで構成される圧電素子300が形成されている。この基板(流路形成基板10)に設けられた圧電素子300が本実施形態のアクチュエーター装置となる。
以下、アクチュエーター装置を構成する圧電素子300について、図3及び図4を参照してさらに詳細に説明する。
図示するように、圧電素子300を構成する第1電極60は、圧力発生室12毎に切り分けられて、後述する能動部毎に独立する個別電極を構成する。この第1電極60は、圧力発生室の第1の方向Xにおいては、圧力発生室12の幅よりも狭い幅で形成されている。すなわち、圧力発生室12の第1の方向Xにおいて、第1電極60の端部は、圧力発生室12に対抗する領域の内側に位置している。また、第2の方向Yにおいて、第1電極60の両端部は、それぞれ圧力発生室12の外側まで延設されている。なお、第1電極60の材料は、後述する圧電体層70を成膜する際に酸化せず、導電性を維持できる材料であることが必要であり、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等の貴金属、またはランタンニッケル酸化物(LNO)などに代表される導電性酸化物が好適に用いられる。
図示するように、圧電素子300を構成する第1電極60は、圧力発生室12毎に切り分けられて、後述する能動部毎に独立する個別電極を構成する。この第1電極60は、圧力発生室の第1の方向Xにおいては、圧力発生室12の幅よりも狭い幅で形成されている。すなわち、圧力発生室12の第1の方向Xにおいて、第1電極60の端部は、圧力発生室12に対抗する領域の内側に位置している。また、第2の方向Yにおいて、第1電極60の両端部は、それぞれ圧力発生室12の外側まで延設されている。なお、第1電極60の材料は、後述する圧電体層70を成膜する際に酸化せず、導電性を維持できる材料であることが必要であり、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等の貴金属、またはランタンニッケル酸化物(LNO)などに代表される導電性酸化物が好適に用いられる。
また、第1電極60として、前述の導電材料と、振動板50との間に、密着力を確保するための密着層を用いてもよい。本実施形態では、特に図示していないが密着層としてチタンを用いている。なお、密着層としては、ジルコニウム、チタン、酸化チタンなどを用いることができる。すなわち、本実施形態では、チタンからなる密着層と、上述した導電材料から選択される少なくとも一種の導電層とで第1電極60が形成されている。
圧電体層70は、第2の方向Yが所定の幅となるように、第1の方向Xに亘って連続して設けられている。圧電体層70の第2の方向Yの幅は、圧力発生室12の第2の方向Yの長さよりも広い。このため、圧力発生室12の第2の方向Yでは、圧電体層70は圧力発生室12の外側まで設けられている。
圧力発生室12の第2の方向Yにおいて、圧電体層70のインク供給路側の端部は、第1電極60の端部よりも外側に位置している。すなわち、第1電極60の端部は圧電体層70によって覆われている。また、圧電体層70のノズル開口21側の端部は、第1電極60の端部よりも内側(圧力発生室12側)に位置しており、第1電極60のノズル開口21側の端部は、圧電体層70に覆われていない。
圧電体層70は、第1電極60上に形成される電気機械変換作用を示す強誘電性セラミックス材料からなるペロブスカイト構造の結晶膜(ペロブスカイト型結晶)である。圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等を用いることができる。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等を用いることができる。本実施形態では、圧電体層70として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた。
また、圧電体層70の材料としては、鉛を含む鉛系の圧電材料に限定されず、鉛を含まない非鉛系の圧電材料を用いることもできる。非鉛系の圧電材料としては、例えば、鉄酸ビスマス((BiFeO3)、略「BFO」)、チタン酸バリウム((BaTiO3)、略「BT」)、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)(NbO3)、略「KNN」)、ニオブ酸カリウムナトリウムリチウム((K,Na,Li)(NbO3))、ニオブ酸タンタル酸カリウムナトリウムリチウム((K,Na,Li)(Nb,Ta)O3)、チタン酸ビスマスカリウム((Bi1/2K1/2)TiO3、略「BKT」)、チタン酸ビスマスナトリウム((Bi1/2Na1/2)TiO3、略「BNT」)、マンガン酸ビスマス(BiMnO3、略「BM」)、ビスマス、カリウム、チタン及び鉄を含みペロブスカイト構造を有する複合酸化物(x[(BixK1−x)TiO3]−(1−x)[BiFeO3]、略「BKT−BF」)、ビスマス、鉄、バリウム及びチタンを含みペロブスカイト構造を有する複合酸化物((1−x)[BiFeO3]−x[BaTiO3]、略「BFO−BT」)や、これにマンガン、コバルト、クロムなどの金属を添加したもの((1−x)[Bi(Fe1−yMy)O3]−x[BaTiO3](Mは、Mn、CoまたはCr))等が挙げられる。
圧電体層70は、詳しくは後述するが、ゾル−ゲル法、MOD(Metal-Organic Decomposition)法などの液相法や、スパッタリング法、レーザーアブレーション法等などのPVD(Physical Vapor Deposition)法(気相法)などで形成することができる。
このような圧電体層70には、各隔壁11に対応する凹部71が形成されている。この凹部71の第1の方向Xの幅は、各隔壁11の第1の方向の幅と略同一、もしくはそれよりも広くなっている。これにより、振動板50の圧力発生室12の第2の方向Yの端部に対抗する部分(いわゆる振動板50の腕部)の剛性が押さえられるため、圧電素子300を良好に変位させることができる。
第2電極80は、圧電体層70の第1電極60とは反対面側に設けられており、複数の能動部310に共通する共通電極を構成する。
第2電極80は、圧電体層70との界面を良好に形成できること、導電性及び圧電特性を発揮できる材料が望ましく、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)等の貴金属材料、及びランタンニッケル酸化物(LNO)に代表される導電性酸化物が好適に用いられる。また、第2電極80は、複数材料の積層であってもよい。本実施形態では、イリジウムとチタンとの積層電極(イリジウムが圧電体層70と接する)を使用している。そして、第2電極80は、スパッタリング法、レーザーアブレーション法などのPVD(Physical Vapor Deposition)法(気相法)、ゾル−ゲル法、MOD(Metal-Organic Decomposition)法、メッキ法などの液相法により形成することができる。また、第2電極80の形成後に、加熱処理を行うことにより、圧電体層70の特性改善を行うことができる。
このような第2電極80は、圧電体層70上のみ、すなわち、圧電体層70の流路形成基板10とは反対側の表面上のみに形成されている。
このような第2電極80は、本実施形態では、圧電体層70上において除去部83によって第1電極60側と、第1電極60とは反対側とで電気的に切断されて設けられている。ここで、除去部83は、圧電体層70上のノズル開口21側に設けられており、第2電極80を厚さ方向(圧電体層70と第2電極80との積層方向)に貫通して設けられている。このような除去部83は、第1の方向Xに連続して設けられている。
このような第1電極60、圧電体層70及び第2電極80で構成される圧電素子300は、第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加することで変位が生じる。すなわち両電極の間に電圧を印加することで、第1電極60と第2電極80とで挟まれている圧電体層70に圧電歪みが生じる。そして、両電極に電圧を印加した際に、圧電体層70に圧電歪みが生じる部分を能動部310と称する。これに対して、圧電体層70に圧電歪みが生じない部分を非能動部と称する。また、圧電体層70に圧電歪みが生じる能動部310において、圧力発生室12に対向する部分を可撓部と称し、圧力発生室12の外側の部分を非可撓部と称する。
本実施形態では、第2の方向Yにおいて、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80の全てが圧力発生室12の外側まで連続的に設けられている。すなわち能動部310が圧力発生室12の外側まで連続的に設けられている。このため、能動部310のうち圧電素子300の圧力発生室12に対向する部分が可撓部となり、圧力発生室12の外側の部分が非可撓部となっている。
すなわち、本実施形態では、図3に示すように、能動部310の第2の方向Yの端部は、第2電極80の端部(除去部83による端部も含む)によって規定されている。
また、能動部310の第1の方向Xの端部は、第1電極60によって規定されている。そして、第1電極60の第1の方向Xの端部は、圧力発生室12に相対向する領域内に設けられている。したがって、能動部310の第1の方向Xの端部は、可撓部に設けられていることになり、第1の方向Xにおいて、能動部310と非能動部との境界における応力が振動板の変形によって開放される。このため、能動部310の第1の方向Xの端部における応力集中に起因する焼損やクラック等の破壊を抑制することができる。
このような圧電素子300では、第1電極60の主要部分を圧電体層70が覆っているため、第1電極60と第2電極80との間で電流がリークすることがなく、圧電素子300の破壊を抑制することができる。ちなみに、第1電極60と第2電極80とが近接した状態で露出されていると、圧電体層70の表面を電流がリークし、圧電体層70が破壊されてしまう。なお、第1電極60と第2電極80とが露出されていても距離が近くなければ、電流のリークは発生しない。
このような圧電素子300の第1電極60と、第2電極80とには、本実施形態の配線層であるリード電極90(個別リード電極91及び共通リード電極92)が接続されている。
個別リード電極91及び共通リード電極92(以降、両者を合わせてリード電極90と称する)は、本実施形態では、同一層からなるが、電気的に不連続となるように形成されている。具体的には、リード電極90は、流路形成基板10側に設けられた密着層191と、密着層191上に設けられた導電層192と、を具備する。
密着層191は、第2電極80、第1電極60及び振動板50等と導電層192との密着性を向上させるためのものであり、その材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ニッケルクロム(NiCr)、チタン(Ti)、チタンタングステン(TiW)等を用いることができる。もちろん、密着層191は、上述したものを単一材料として用いたものであってもよく、また、複数の材料が混合した複数材料であってもよく、さらに、異なる材料の複数層を積層したものであってもよい。本実施形態では、密着層191としてニッケルクロム(NiCr)を用いた。
また、密着層191は、少なくとも圧電体層70によって覆われていない第1電極60及び第2電極80上に亘って延設されている。本実施形態では、密着層191は、第2電極80上と、第2電極80が設けられていない圧電体層70の側面上と、凹部71内の振動板50上と、圧電体層70によって覆われていない第1電極60上とに設けられている。つまり、密着層191が第1電極60上及び第2電極80上に亘って延設されているとは、圧電体層70によって覆われていない第1電極60及び第2電極80の表面上に形成されていることを言う。そして、これら第1電極60上の密着層191と、第2電極80上の密着層191とは、同一層からなるが、電気的に不連続となるように形成されている。本実施形態では、第2電極80には、除去部83が設けられているため、第2電極80上の密着層191は、除去部83によって電気的に切断されている。すなわち、第1電極60上の密着層191は、第2電極80と同一層からなるが除去部83によって電気的に切断された電極上にまで連続して延設されている。そして、この第1電極60上の密着層191と、第2電極80上の密着層191とは、除去部83によって電気的に切断されている。
このような第2電極80上に設けられた密着層191は、複数の能動部310の共通電極(第2電極80)の一部として機能する。また、第1電極60上に設けられた密着層191は、各能動部310の個別電極(第1電極60)の一部として機能する。つまり、本実施形態では、リード電極90の密着層191を、電極(第1電極60及び第2電極80)の一部を構成する電極層と共通化したものである。
リード電極90の導電層192は、比較的導電性の高い材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等を用いることができる。本実施形態では、導電層192として金(Au)を用いた。
ここで、個別リード電極91は、圧電体層70の外側に設けられた第1電極60上から振動板50上まで引き出されている。
共通リード電極92は、第1の方向Xの両端部において、第2電極80上から振動板50上まで第2の方向Yに引き出されている。
また、共通リード電極92は、第2の方向Yにおいて、圧力発生室12の壁面上に、すなわち、可撓部と非可撓部との境界部分に跨って設けられた延設部93を有する。延設部93は、複数の能動部310の第1の方向Xに亘って連続して設けられており、第1の方向Xの両端部で共通リード電極92に連続する。すなわち、延設部93を有する共通リード電極92は、保護基板30側から平面視した際に、能動部310の周囲を囲むように連続して配置されている。このように、延設部93を設けることで、可撓部と非可撓部との境界における応力集中における圧電体層70の破壊を抑制することができる。また、共通リード電極92が可撓部上には実質的に形成されていないため、能動部310の変位低下を抑えることができる。
このようなリード電極90は、詳しくは後述するが、流路形成基板10の一方面の全面に亘って形成した後、所定の形状にパターニングされて形成される。
このとき、本実施形態の密着層191は、ニッケルクロム(NiCr)で形成されているため、密着層191をエッチングするエッチング液(エッチャント)は、例えば、硝酸セリウムアンモニウム等の酸が用いられる。しかしながら、本実施形態では、密着層191は、電極(第1電極60及び第2電極80)の略全てを覆っているため、密着層191と電極との間に電蝕が発生するのを抑制することができ、リード電極90の剥離を抑制することができる。なお、電極は、除去部83の端部等で露出されているが、除去部83の端部で露出された電極の面積はかなり小さく、剥離等が発生するまでの電蝕は発生し難い。ちなみに、電極(第1電極60や第2電極80)を露出した状態で、密着層191をエッチングすると、酸によって密着層191と電極との間には電蝕が発生し、リード電極90が剥離してしまう虞がある。
なお、密着層191の材料として、ニッケルクロム(NiCr)以外の材料、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、チタンタングステン(TiW)等であっても、エッチャントとしては酸が用いられ、また電極に適した材料が、一般的にイオン化傾向の低い材料であるため、密着層191と電極との間に電蝕が発生するという同様の問題が生じるものである。
また、密着層191を酸によってウェットエッチングする際に、エッチング液が圧電体層70に付着して、圧電体層70にダメージを与えてしまうが、本実施形態では、密着層191は、圧電体層70の略全てを覆っているため、密着層191をウェットエッチングするエッチング液が圧電体層70に付着するのを抑制して、圧電体層70にダメージを与えるのを抑制することができる。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、図1〜図3に示すように、圧電素子300を保護する保護基板30が接着剤35によって接合されている。保護基板30には、圧電素子300を収容する空間を画成する凹部である圧電素子保持部31が設けられている。また保護基板30には、マニホールド100の一部を構成するマニホールド部32が設けられている。マニホールド部32は、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部15と連通している。また保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。各能動部310の第1電極60に接続されたリード電極90は、この貫通孔33内に露出しており、図示しない駆動回路に接続される接続配線の一端が、この貫通孔33内でリード電極90に接続されている。
保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってマニホールド部32の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料で形成される。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加する。これにより圧電素子300と共に振動板50がたわみ変形して各圧力発生室12内の圧力が高まり、各ノズル開口21からインク滴が噴射される。
ここで、このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドの製造方法について説明する。なお、図6〜図9は、インクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
まず、図6(a)に示すように、シリコンウェハーである流路形成基板用ウェハー110の表面に振動板50を形成する。本実施形態では、流路形成基板用ウェハー110を熱酸化することによって形成した二酸化シリコン(弾性膜51)と、スパッタリング法で成膜後、熱酸化することによって形成した酸化ジルコニウム(絶縁体膜52)との積層からなる振動板50を形成した。
もちろん、振動板50の材料は、二酸化シリコン、酸化ジルコニウムに限定されず、窒化シリコン(Si3N4)、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミン酸ランタン(LaAlO3)等を用いるようにしてもよい。また、弾性膜51の形成方法は熱酸化に限定されず、スパッタリング法、CVD法、蒸着法、スピンコート法等又はこれらの組み合わせによって形成してもよい。
振動板50(積層膜の場合、電極形成側)は絶縁体であること、かつ圧電体層70の形成時の温度(一般に500℃以上)に耐えうることが必須であるほか、シリコンウェハーを流路形成基板10に用いて、且つ圧力発生室12等の流路を形成する際に、KOH(水酸化カリウム)による異方性エッチングを用いる場合、振動板(積層の場合、シリコンウェハー側)はエッチングストップ層として機能することが必要である。また、振動板50の一部に二酸化シリコンを使用した場合、圧電体層70に含まれる鉛やビスマスなどが二酸化シリコンに拡散すると、二酸化シリコンが変質し、上層の電極や圧電体層70が剥離する。このため、二酸化シリコンへの拡散防止層も必要となる。
二酸化シリコンと酸化ジルコニウムとを積層した振動板50は、それぞれの材料が圧電体層70を形成する際の温度に耐えて且つ、二酸化シリコンが絶縁層とエッチングストップ層を、酸化ジルコニウムが絶縁層と拡散防止層として機能するため、最も好適である。本実施形態では、この弾性膜51及び絶縁体膜52によって振動板50が形成されるが、振動板50として、弾性膜51及び絶縁体膜52の何れか一方のみを設けるようにしてもよい。
次いで、図6(b)に示すように、絶縁体膜52上の全面に第1電極60を形成する。この第1電極60の材料は特に限定されないが、圧電体層70を形成する際の熱処理(一般に500℃以上)時の酸化または圧電体層70に含まれる材料の拡散などによって導電性を消失しない材料であることが必須である。このため、第1電極60の材料としては高温でも導電性を失わない白金、イリジウム等の金属や、酸化イリジウム、ランタンニッケル酸化物などの導電性酸化物、及びこれらの材料の積層材料が好適に用いられる。また、第1電極60は、例えば、スパッタリング法やPVD法(物理蒸着法)、レーザーアブレーション法などの気相成膜、スピンコート法などの液相成膜などにより形成することができる。また、前述の導電材料と、振動板50との間に、密着力を確保するための密着層を用いてもよい。本実施形態では、特に図示していないが密着層としてチタンを用いている。なお、密着層としては、ジルコニウム、チタン、酸化チタンなどを用いることができる。密着層の成膜方法は、電極材料と同様である。また、電極表面(圧電体層70の成膜側)に圧電体層70の結晶成長を制御するための制御層を形成してもよい。本実施形態では、圧電体層70(PZT)の結晶制御としてチタンを使用している。チタンは、圧電体層70の成膜時に圧電体層70内に取り込まれるため、圧電体層70形成後には膜として存在していない。結晶制御層としては、ランタンニッケル酸化物などのペロブスカイト型結晶構造の導電性酸化物などを使用してもよい。結晶制御層の成膜方法は、電極材料と同様である。なお、絶縁性の結晶制御層は、圧電体層70形成後、圧電体層70と第1電極60との間に存在しないことが望ましい。これは、結晶制御層と圧電体層70のコンデンサの直列接続になるため、圧電体層70に印加される電界が低下するためである。本実施形態のように、配向制御層としてチタンを用いることで、本来であれば酸化物(絶縁体)になる熱処理を受けるが、圧電体層70中に取り込まれるため膜として存在しない。
次に、本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。ここで、本実施形態では、金属錯体を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成している。なお、圧電体層70の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法やスパッタリング法又はレーザーアブレーション法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法等を用いてもよい。すなわち、圧電体層70は液相法、気相法の何れで形成してもよい。本実施形態では、複数層の圧電体膜74を積層することで圧電体層70を形成するようにした。
具体的には、図7(a)に示すように、第1電極60上に1層目の圧電体膜74を形成した段階で、第1電極60及び1層目の圧電体膜74をそれらの側面が傾斜するように同時にパターニングする。なお、第1電極60及び1層目の圧電体膜74のパターニングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)、イオンミリング等のドライエッチングにより行うことができる。
ここで、例えば、第1電極60をパターニングしてから1層目の圧電体膜74を形成する場合、フォト工程・イオンミリング・アッシングして第1電極60をパターニングするため、第1電極60の表面や、結晶種層などが変質してしまう。そうすると変質した面上に圧電体膜74を形成しても当該圧電体膜74の結晶性が良好なものではなくなり、2層目以降の圧電体膜74も1層目の圧電体膜74の結晶状態に影響して結晶成長するため、良好な結晶性を有する圧電体層70を形成することができない。
それに比べ、1層目の圧電体膜74を形成した後に第1電極60と同時にパターニングすれば、1層目の圧電体膜74はチタン等の結晶種に比べて2層目以降の圧電体膜74を良好に結晶成長させる種(シード)としても性質が強く、たとえパターニングで表層に極薄い変質層が形成されていても2層目以降の圧電体膜74の結晶成長に大きな影響を与えない。
なお、2層目の圧電体膜74を成膜する前に露出した振動板50上(本実施形態では、酸化ジルコニウムである絶縁体膜52)に、2層目以降の圧電体膜74を成膜するときに、結晶制御層(中間結晶制御層)を用いてもよい。本実施形態では、中間結晶制御層としてチタンを用いるようにした。このチタンからなる中間結晶制御層は、第1電極60上に形成する結晶制御層のチタンと同様に、圧電体膜74を成膜する際に圧電体膜74に取り込まれる。ちなみに、中間結晶制御層は、中間電極または直列接続されるコンデンサの誘電体となってしまった場合、圧電特性の低下を引き起こす。このため、中間結晶制御層は、圧電体膜74(圧電体層70)に取り込まれ、圧電体層70の成膜後に膜として残らないものが望ましい。
次に、図7(b)に示すように、2層目以降の圧電体膜74を積層することにより、複数層の圧電体膜74からなる圧電体層70を形成する。
ちなみに、2層目以降の圧電体膜74は、絶縁体膜52上、第1電極60及び1層目の圧電体膜74の側面上、及び1層目の圧電体膜74上に亘って連続して形成される。
次に、図7(c)に示すように、圧電体層70上に第2電極80を形成する。本実施形態では、特に図示していないが、まず、圧電体層70上にイリジウムを有するイリジウム層と、イリジウム層上にチタンを有するチタン層とを積層する。なお、このイリジウム層及びチタン層は、スパッタリング法やCVD法等によって形成することができる。その後、イリジウム層及びチタン層が形成された圧電体層70をさらに再加熱処理(ポストアニール)する。このように再加熱処理することで、圧電体層70の第2電極80側にイリジウム層等を形成した際のダメージが発生しても、再加熱処理を行うことで、圧電体層70のダメージを回復して、圧電体層70の圧電特性を向上することができる。
次に、図8(a)に示すように、第2電極80及び圧電体層70を各圧力発生室12に対応してパターニングする。本実施形態では、第2電極80上に所定形状に形成したマスク(図示なし)を設け、このマスクを介して第2電極80及び圧電体層70をエッチングする、いわゆるフォトリソグラフィーによってパターニングした。なお、圧電体層70のパターニングは、例えば、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングが挙げられる。
次に、図8(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の一方面側(圧電体層70が形成された面側)に亘って、すなわち、第2電極80上、圧電体層70のパターニングした側面上、絶縁体膜52上、及び第1電極60上等に亘って、例えば、ニッケルクロム(NiCr)からなる密着層191と、金(Au)からなる導電層192とを形成することで、配線層であるリード電極90を形成する。
次に、図8(c)に示すように、導電層192を所定形状にパターニングする。すなわち、導電層192上に所定形状のマスクを形成し(図示なし)、マスクを介して導電層192をエッチングすることでパターニングする。なお、導電層192のエッチングはウェットエッチングであってもドライエッチングであってもよい。
次に、図8(d)に示すように、密着層191と第2電極80とをパターニングする。本実施形態では、密着層191が少なくとも圧電体層70に覆われていない第1電極60及び第2電極80を覆うように形成する。本実施形態では、密着層191を、圧電体層70によって覆われていない第1電極60上、第2電極80上、圧電体層70の側面(第2電極80によって覆われていない部分)、及び凹部71の振動板50上等に亘って連続して形成した。
また、このパターニングでは、密着層191及び第2電極80に除去部83を形成すると共に、密着層191及び第2電極80の余分な領域を除去する。これにより、圧電素子300の能動部310が規定されると共に、個別リード電極91及び共通リード電極92が形成される。
なお、本実施形態では、反応性イオンエッチングによって密着層191と第2電極80とを同時にエッチングした。これにより、密着層191をウェットエッチングでパターニングするのに比べて、密着層191と電極との間に電蝕が発生するのを抑制することができ、電蝕によるリード電極90の剥離を抑制することができる。また、密着層191をウェットエッチングしないため、ウェットエッチングを行う回数を減少させて、圧電体層70が密着層191をウェットエッチングする際の酸によってダメージを受けることがなく、圧電体層70の圧電特性が低下するのを抑制することができる。さらに、密着層191と第2電極80とのエッチングを同時に行うことで製造工程を簡略化してコストを低減することができる。
なお、本実施形態では、密着層191と第2電極80とを反応性イオンエッチングで同時にパターニングするようにしたが、特にこれに限定されず、密着層191と第2電極80とを個別にエッチングするようにしてもよい。
密着層191と第2電極80とを個別にエッチングする場合、密着層191は、例えば、酸を用いたウェットエッチングすることによりパターニングすることができる。このように、密着層191をエッチングするエッチャントとして酸を用いたとしても、電極(第1電極60及び第2電極80)は、密着層191によって略覆われているため、酸によって密着層191と電極との間に電蝕が発生するのを抑制することができる。つまり、密着層191をウェットエッチングする際に、電極(第1電極60や第2電極80)が露出していると、酸からなるエッチング液(エッチャント)によって密着層191と電極との間に電蝕が発生する。本実施形態では、電極の露出面積を著しく低減させるように密着層191を形成するようにしたため、エッチャントとして酸を用いても密着層191と電極との間に電蝕が発生するのを抑制することができる。したがって、密着層191と電極との間に電蝕が発生することによって電極やリード電極90が剥離するのを抑制することができる。
また、密着層191をウェットエッチングしたとしても、本実施形態では、圧電体層70は、その略全てが密着層191によって覆われているため、密着層191をウェットエッチングする際のエッチング液が圧電体層70に接触して、圧電体層70がダメージを追うのを抑制することができる。
また、密着層191をウェットエッチングによりパターニングした場合には、第2電極80は、例えば、ドライエッチングによってパターニングして除去部83等を形成すればよい。
次に、図9(a)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の圧電素子300側に、シリコンウェハーであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハー130を接着剤35を介して接合した後、流路形成基板用ウェハー110を所定の厚みに薄くする。
次いで、図9(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110にマスク膜53を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図9(c)に示すように、流路形成基板用ウェハー110をマスク膜53を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、インク供給路13、連通路14及び連通部15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハー110の保護基板用ウェハー130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハー130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハー110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドとする。
このように、配線層であるリード電極90の密着層191を、少なくとも露出された電極(第1電極60及び第2電極80)の表面に設けることで、密着層191をウェットエッチングすることなくパターニングすることができる。したがって、リード電極90の密着層191をウェットエッチングする際に密着層191と電極との間に電蝕が発生するのを抑制して、電極の剥離やリード電極90の剥離が発生するのを抑制することができる。また、密着層191をウェットエッチングしなくてもよいため、ウェットエッチングの回数を減少させてエッチング液による圧電体層70のダメージを抑制することができる。
また、密着層191が露出された電極を覆っているため、密着層191をウェットエッチングしたとしても、エッチング液が電極に接触して電蝕が発生するのを抑制することができる。したがって、密着層191をウェットエッチングしたとしても、密着層191と電極間の電蝕によってリード電極90が剥離するのを抑制することができる。また、本実施形態では、密着層191が圧電体層70を略覆っているため、密着層191をウェットエッチングしたとしても、圧電体層70にエッチング液が接触する面積を減少させて、圧電体層70のエッチング液の接触によるダメージを抑制することができる。
(実施形態2)
図10は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの要部を拡大した断面図及びそのD−D′線断面図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図10は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの要部を拡大した断面図及びそのD−D′線断面図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図示するように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIに搭載される圧電素子300は、第1電極60が複数の能動部310に亘って連続して設けられた共通電極となっており、第2電極80が各能動部310に個別に設けられた個別電極となっている。
具体的には、第1電極60は、第2の方向Yにおいて、圧力発生室12の幅よりも幅狭に設けられており、第1の方向Xに亘って連続して設けられている。
また、圧電体層70は、第1電極60の第2の方向Yの端部を覆うように、第1電極60の外側まで延設されている。
また、圧電体層70は、第1の方向Xにおいて互いに隣り合う能動部310の間で、能動部310よりも薄い厚さで連続して設けられている。すなわち、第1の方向Xで互いに隣り合う能動部310の間において、第1電極60は完全に圧電体層70によって覆われている。
さらに、第2電極80は、圧力発生室12に対応して切り分けられて設けられている。
このような圧電素子300では、能動部310の第2の方向Yの端部が第1電極60の端部によって規定されている。また、能動部310の第1の方向Xの端部が、第2電極80の端部によって規定されている。
また、第1電極60上及び第2電極80上には、配線層であるリード電極90(個別リード電極91及び共通リード電極92)が形成されている。
このリード電極90は、密着層191と、導電層192と、を具備する。密着層191は、導電層192の下に形成されており、圧電体層70に覆われていない第1電極60上及び第2電極80を覆うように延設されて設けられている。
また、共通リード電極92は、圧電体層70を厚さ方向に貫通したコンタクトホール75を介して第1電極60と電気的に接続されている。
このような構成では、第1電極60が露出されていないため、従来の圧電素子300を覆う保護膜が不要となる。
そして、密着層191によって電極(第1電極60及び第2電極80)を覆うことで、リード電極90(個別リード電極91及び共通リード電極92)をウェットエッチングする際の酸からなるエッチング液によって密着層191と電極との間に電蝕が発生するのを抑制することができ、リード電極90の剥離を抑制することができる。
なお、本実施形態では、第1電極60を複数の能動部310の共通電極とするため、例えば、弾性膜51及び絶縁体膜52を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、上述した実施形態1のように第1電極60が個別電極として設けられた場合であっても、また、第1電極60が共通電極として設けられた場合であっても、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。ただし、流路形成基板10上に直接第1電極60を設ける場合には、第1電極60とインクとが導通しないように第1電極60を絶縁性の保護膜等で保護するのが好ましい。つまり、基板(流路形成基板10)上に第1電極60が設けられているとは、基板の直上も、間に他の部材が介在した状態(上方)も含むものである。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態1では、各能動部310の圧電体層70が連続的に設けられた構成を例示したが、勿論、圧電体層70は、能動部310毎に独立して設けられていてもよい。
また、上述した実施形態2では、第2電極80を単層で形成したが、第2電極80を2層以上に積層したものとしてもよい。
また、インクジェット式記録ヘッドIは、例えば、図11に示すように、インクジェット式記録装置IIに搭載される。インクジェット式記録ヘッドIを有する記録ヘッドユニット1は、インク供給手段を構成するカートリッジ2が着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動可能に設けられている。この記録ヘッドユニット1は、例えば、ブラックインク組成物及びカラーインク組成物を噴射する。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
そして本発明では、上述のようにインクジェット式記録ヘッドIを構成する圧電素子300の破壊を抑制しつつ噴射特性の均一化を図ることができる。結果として、印刷品質を向上し耐久性を高めたインクジェット式記録装置IIを実現することができる。
なお、上述した例では、インクジェット式記録装置IIとして、インクジェット式記録ヘッドIがキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、その構成は特に限定されるものではない。インクジェット式記録装置IIは、例えば、インクジェット式記録ヘッドIを固定し、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させることで印刷を行う、いわゆるライン式の記録装置であってもよい。
また、上述の実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて本発明を説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものである。液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッドの他、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子に限られず、超音波発信機等の超音波デバイス、超音波モーター、圧力センサー、焦電センサー等他の装置に搭載される圧電素子にも適用することができる。また、本発明は強誘電体メモリー等の強誘電体素子にも同様に適用することができる。
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 II インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 流路形成基板(基板)、 11 隔壁、 12 圧力発生室、 13 インク供給路、 14 連通路、 15 連通部、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 圧電素子保持部、 32 マニホールド部、 33 貫通孔、 35 接着剤、 40 コンプライアンス基板、 41 封止膜、 42 固定板、 43 開口部、 50 振動板、 51 弾性膜、 52 絶縁体膜、 60 第1電極、 70 圧電体層、 71 凹部、 80 第2電極、 90 リード電極(配線層)、 100 マニホールド、 191 密着層、 192 導電層、 300 圧電素子、 310 能動部
Claims (9)
- 液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室を有する流路形成基板と、
該流路形成基板の一方面側に設けられた第1電極と、圧電体層と、第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極に電気的に接続された配線層と、を有する圧電素子と、を具備し、
前記配線層が、前記第1電極及び前記第2電極側に設けられた密着層と、該密着層の前記第1電極及び前記第2電極とは反対面側に設けられた導電層と、を具備し、
該密着層が、少なくとも前記圧電体層に覆われていない前記第1電極及び前記第2電極の表面に亘って延設されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。 - 前記密着層が、前記圧電体層の前記第2電極に覆われていない領域にも延設されていることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
- 前記密着層が、ニッケル、クロム、チタン及びタングステンから選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の液体噴射ヘッド。
- 前記導電層が、金、白金、アルミニウム、銅から選択される少なとも一種を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
- 請求項1〜4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
- 第1電極と、圧電体層と、第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極に電気的に接続された配線層と、を具備し、
前記配線層が、前記第1電極及び前記第2電極側に設けられた密着層と、該密着層の前記第1電極及び前記第2電極とは反対面側に設けられた導電層と、を具備し、
該密着層が、少なくとも前記圧電体層に覆われていない前記第1電極及び前記第2電極の表面に亘って延設されていることを特徴とする圧電素子。 - 第1電極と、圧電体層と、第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極に電気的に接続された配線層と、を具備し、
前記配線層が、前記第1電極及び前記第2電極側に設けられた密着層と、該密着層の前記第1電極及び前記第2電極とは反対面側に設けられた導電層と、を具備する圧電素子の製造方法であって、
前記第1電極を形成すると共にパターニングする工程と、
前記第1電極上に前記圧電体層及び前記第2電極を形成すると共に、前記第2電極及び前記圧電体層をパターニングする工程と、
前記圧電体層に覆われていない前記第1電極上及び前記第2電極上に亘って前記密着層を形成する工程と、
前記密着層上に前記導電層を形成すると共にパターニングする工程と、
前記密着層をパターニングして、少なくとも前記圧電体層に覆われていない前記第1電極及び前記第2電極の表面に亘って延設された当該密着層を形成する工程と、
を具備することを特徴とする圧電素子の製造方法。 - 前記密着層をパターニングする工程の後、前記第2電極をパターニングする工程をさらに具備することを特徴とする請求項7記載の圧電素子の製造方法。
- 前記密着層をパターニングする工程と、前記第2電極をパターニングする工程と、を同時に行うことを特徴とする請求項7記載の圧電素子の製造方法。
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