以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの斜視図であり、図2は、インクジェット式記録ヘッドの流路形成基板の平面図であり、図3は図2のA−A′線に準ずる断面図であり、図4は図2のB−B′線に準ずる断面図である。
図示するように、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドIが備える流路形成基板10には、圧力発生室12が形成されている。そして、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12が同じ色のインクを吐出する複数のノズル開口21が並設される方向に沿って並設されている。以降、この方向を圧力発生室12の並設方向、又は第1の方向Xと称する。また、この第1の方向Xと直交する方向を、以降、第2の方向Yと称する。
また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向の一端部側、すなわち第1の方向Xに直交する第2の方向Yの一端部側には、インク供給路13と連通路14とが複数の隔壁11によって区画されている。連通路14の外側(第2の方向Yにおいて圧力発生室12とは反対側)には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるマニホールド100の一部を構成する連通部15が形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、インク供給路13、連通路14及び連通部15からなる液体流路が設けられている。
流路形成基板10の一方面側、すなわち圧力発生室12等の液体流路が開口する面には、各圧力発生室12に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって接合されている。すなわち、ノズルプレート20には、第1の方向Xにノズル開口21が並設されている。
流路形成基板10の他方面側には、振動板50が形成されている。本実施形態に係る振動板50は、流路形成基板10上に形成された弾性膜51と、弾性膜51上に形成された絶縁体膜52とで構成されている。なお、圧力発生室12等の液体流路は、流路形成基板10を一方面から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力発生室12等の液体流路の他方面は、振動板50(弾性膜51)で構成されている。
絶縁体膜52上には、厚さが例えば、約0.2μmの第1電極60と、厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの第2電極80とで構成される圧電素子300が形成されている。この基板(流路形成基板10)に設けられた圧電素子300が本実施形態のアクチュエーター装置となる。
以下、アクチュエーター装置を構成する圧電素子300について、図3及び図4を参照してさらに詳細に説明する。
図示するように、圧電素子300を構成する第1電極60は、圧力発生室12毎に切り分けられて、後述する能動部毎に独立する個別電極を構成する。この第1電極60は、圧力発生室の第1の方向Xにおいては、圧力発生室12の幅よりも狭い幅で形成されている。すなわち、圧力発生室12の第1の方向Xにおいて、第1電極60の端部は、圧力発生室12に対抗する領域の内側に位置している。また、第2の方向Yにおいて、第1電極60の両端部は、それぞれ圧力発生室12の外側まで延設されている。なお、第1電極60の材料は、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等の貴金属、またはランタンニッケル酸化物(LNO)などに代表される導電性酸化物が好適に用いられる。
また、第1電極60として、前述の導電材料と、振動板50との間に、密着力を確保するための密着層を用いてもよい。本実施形態では、特に図示していないが密着層としてチタンを用いている。なお、密着層としては、ジルコニウム、チタン、酸化チタンなどを用いることができる。すなわち、本実施形態では、チタンからなる密着層と、上述した導電材料から選択される少なくとも一種の導電層とで第1電極60が形成されている。
圧電体層70は、第2の方向Yが所定の幅となるように、第1の方向Xに亘って連続して設けられている。圧電体層70の第2の方向Yの幅は、圧力発生室12の第2の方向Yの長さよりも広い。このため、圧力発生室12の第2の方向Yでは、圧電体層70は圧力発生室12の外側まで設けられている。
圧力発生室12の第2の方向Yにおいて、圧電体層70のインク供給路側の端部は、第1電極60の端部よりも外側に位置している。すなわち、第1電極60の端部は圧電体層70によって覆われている。また、圧電体層70のノズル開口21側の端部は、第1電極60の端部よりも内側(圧力発生室12側)に位置しており、第1電極60のノズル開口21側の端部は、圧電体層70に覆われていない。
圧電体層70は、第1電極60上に形成される電気機械変換作用を示す強誘電性セラミックス材料からなるペロブスカイト構造の結晶膜(ペロブスカイト型結晶)である。圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等を用いることができる。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等を用いることができる。本実施形態では、圧電体層70として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた。
また、圧電体層70の材料としては、鉛を含む鉛系の圧電材料に限定されず、鉛を含まない非鉛系の圧電材料を用いることもできる。非鉛系の圧電材料としては、例えば、鉄酸ビスマス((BiFeO3)、略「BFO」)、チタン酸バリウム((BaTiO3)、略「BT」)、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)(NbO3)、略「KNN」)、ニオブ酸カリウムナトリウムリチウム((K,Na,Li)(NbO3))、ニオブ酸タンタル酸カリウムナトリウムリチウム((K,Na,Li)(Nb,Ta)O3)、チタン酸ビスマスカリウム((Bi1/2K1/2)TiO3、略「BKT」)、チタン酸ビスマスナトリウム((Bi1/2Na1/2)TiO3、略「BNT」)、マンガン酸ビスマス(BiMnO3、略「BM」)、ビスマス、カリウム、チタン及び鉄を含みペロブスカイト構造を有する複合酸化物(x[(BixK1−x)TiO3]−(1−x)[BiFeO3]、略「BKT−BF」)、ビスマス、鉄、バリウム及びチタンを含みペロブスカイト構造を有する複合酸化物((1−x)[BiFeO3]−x[BaTiO3]、略「BFO−BT」)や、これにマンガン、コバルト、クロムなどの金属を添加したもの((1−x)[Bi(Fe1−yMy)O3]−x[BaTiO3](Mは、Mn、CoまたはCr))等が挙げられる。
圧電体層70は、詳しくは後述するが、ゾル−ゲル法、MOD(Metal-Organic Decomposition)法などの液相法や、スパッタリング法、レーザーアブレーション法等などのPVD(Physical Vapor Deposition)法(気相法)などで形成することができる。
このような圧電体層70には、各隔壁11に対応する凹部71が形成されている。この凹部71の第1の方向Xの幅は、各隔壁11の第1の方向の幅と略同一、もしくはそれよりも広くなっている。これにより、振動板50の圧力発生室12の第2の方向Yの端部に対抗する部分(いわゆる振動板50の腕部)の剛性が押さえられるため、圧電素子300を良好に変位させることができる。
第2電極80は、圧電体層70の第1電極60とは反対面側に設けられており、複数の能動部310に共通する共通電極を構成する。本実施形態では、第2電極80は、圧電体層70側に設けられた第1層81と、第1層81の圧電体層70とは反対側に設けられた第2層82と、を具備する。
第1層81は、圧電体層70との界面を良好に形成できること、絶縁性及び圧電特性を発揮できる材料が望ましく、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)等の貴金属材料、及びランタンニッケル酸化物(LNO)に代表される導電性酸化物が好適に用いられる。また、第1層81は、複数材料の積層であってもよい。本実施形態では、イリジウムとチタンとの積層電極(イリジウムが圧電体層70と接する)を使用している。そして、第1層81は、スパッタリング法、レーザーアブレーション法などのPVD(Physical Vapor Deposition)法(気相法)、ゾル−ゲル法、MOD(Metal-Organic Decomposition)法、メッキ法などの液相法により形成することができる。また、第1層81の形成後に、加熱処理を行うことにより、圧電体層70の特性改善を行うことができる。このような第1層81は、圧電体層70上のみ、すなわち、圧電体層70の流路形成基板10とは反対側の表面上のみに形成されている。
また、第2電極80を構成する第2層82は、導電性を有する材料、例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)等の金属材料を用いることができる。もちろん、第2層82は、上記金属材料の単一材料であっても、複数の材料が混合した複数材料であってもよい。また、第1層81と第2層82との間に、チタン等を設けるようにしてもよい。本実施形態では、第2層82として、イリジウム(Ir)を用いた。
このような第2層82は、本実施形態では、第1層81上と、第1層81が設けられていない圧電体層70の側面上と、第1電極60上と、に亘って連続して設けられている。ちなみに、第1層81上の第2層82と、第1電極60上の第2層82とは、除去部83を介して電気的に切断されている。すなわち、第1層81上の第2層82と、第1電極60上の第2層82とは、同一層からなるが電気的に不連続となるように形成されている。ここで、除去部83は、圧電体層70上のノズル開口21側に設けられており、第2電極80を、すなわち、第1層81及び第2層82を厚さ方向(第1層81と第2層82との積層方向)に貫通して電気的に切断するものである。このような除去部83は、第1の方向Xに亘って連続して第2電極80を厚さ方向に貫通して設けられている。
このような第1電極60、圧電体層70及び第2電極80で構成される圧電素子300は、第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加することで変位が生じる。すなわち両電極の間に電圧を印加することで、第1電極60と第2電極80とで挟まれている圧電体層70に圧電歪みが生じる。そして、両電極に電圧を印加した際に、圧電体層70に圧電歪みが生じる部分を能動部310と称する。これに対して、圧電体層70に圧電歪みが生じない部分を非能動部と称する。また、圧電体層70に圧電歪みが生じる能動部310において、圧力発生室12に対向する部分を可撓部と称し、圧力発生室12の外側の部分を非可撓部と称する。
本実施形態では、第2の方向Yにおいて、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80の全てが圧力発生室12の外側まで連続的に設けられている。すなわち能動部310が圧力発生室12の外側まで連続的に設けられている。このため、能動部310のうち圧電素子300の圧力発生室12に対向する部分が可撓部となり、圧力発生室12の外側の部分が非可撓部となっている。
すなわち、本実施形態では、図3に示すように、能動部310の第2の方向Yの端部は、第2電極80(除去部83)によって規定されている。
また、能動部310の第1の方向Xの端部は、第1電極60によって規定されている。そして、第1電極60の第1の方向Xの端部は、圧力発生室12に相対向する領域内に設けられている。したがって、能動部310の第1の方向Xの端部は、可撓部に設けられていることになり、第1の方向Xにおいて、能動部310と非能動部との境界における応力が振動板の変形によって開放される。このため、能動部310の第1の方向Xの端部における応力集中に起因する焼損やクラック等の破壊を抑制することができる。
このような圧電素子300では、第2電極80が、圧電体層70を覆っているため、第1電極60と第2電極80との間で電流がリークすることがなく、圧電素子300の破壊を抑制することができる。ちなみに、第1電極60と第2電極80とが近接した状態で露出されていると、圧電体層70の表面を電流がリークし、圧電体層70が破壊されてしまう。第1電極60と第2電極80とが露出されていても距離が近くなければ、電流のリークは発生しない。
さらに、本発明では、第2電極80の能動部310の第2の方向Yの端部での破壊を抑制するために、詳細は後述するように、少なくとも能動部310の第2電極80の第2方向端部に還元性ガス雰囲気下でのプラズマ処理を施しており、信頼性の向上を図っている。ここで、還元性ガス雰囲気下とは、酸化反応より還元反応を促進するガスが存在する雰囲気であり、還元性ガスとしては、水素を含む化合物のガスなどを挙げることができる。好適には、水素を含む化合物のガスが好ましく、アンモニア、CHF3、H2O、CH4、CH3OHなどを挙げることができるが、特にアンモニアが好ましい。
また、第2電極80上には、絶縁性を有する絶縁膜200が設けられている。絶縁膜200としては、絶縁性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、酸化チタン(TiOX)、酸化シリコン(SiOX)、酸化タンタル(TaOX)、酸化アルミニウム(AlOX)等の無機絶縁材料、又は、ポリイミド(PI)等の有機絶縁材料を用いることができる。
本実施形態では、絶縁膜200は、平面視した際に、第2電極80の第2層82と略同じ形状となるように形成されている。すなわち、絶縁膜200は、圧電体層70から突出して設けられた第1電極60上と、圧電体層70上に設けられた第2電極80上とに設けられている。ちなみに、本実施形態の絶縁膜200は、第1電極60と第2電極80との電流のリーク(沿面放電)を抑制するためのものではなく、詳しくは後述する製造方法においてリード電極90の密着層191をエッチングによりパターニングする際に電極を覆っていればいいため、最終的には、配線層であるリード電極90と電極(本実施形態では、第2電極80の第2層82)との間の領域以外の領域の絶縁膜200を除去して、電極とリード電極90との間のみに設けられていてもよい。
このような圧電素子300の第1電極60と、第2電極80とには、本実施形態の配線層である個別リード電極91と、共通リード電極92とが接続されている。
個別リード電極91及び共通リード電極92(以降、両者を合わせてリード電極90と称する)は、本実施形態では、同一層からなるが、電気的に不連続となるように形成されている。具体的には、リード電極90は、電極(第2電極80の第2層82)側に設けられた密着層191と、密着層191上に設けられた導電層192と、を具備する。
密着層191は、第2層82や絶縁膜200、振動板50等と導電層192との密着性を向上させるためのものであり、その材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ニッケルクロム(NiCr)、チタン(Ti)、チタンタングステン(TiW)等を用いることができる。もちろん、密着層191は、上述したものを単一材料として用いたものであってもよく、また、複数の材料が混合した複数材料であってもよく、さらに、異なる材料の複数層を積層したものであってもよい。本実施形態では、密着層191としてニッケルクロム(NiCr)を用いた。
また、導電層192は、比較的導電性の高い材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等を用いることができる。本実施形態では、導電層192として金(Au)を用いた。
ここで、個別リード電極91は、圧電体層70の外側に設けられた第1電極60上に設けられており、絶縁膜200を厚さ方向に貫通する第1コンタクトホール201を介して第1電極60と電気的に接続されている。ちなみに、第1電極60上には、上述したように第2電極80の第2層82と同一層からなるが、第2層82と不連続となる電極層が設けられている。このため、第1電極60と個別リード電極91とは、この第2層82と同一層からなるが第2層82とは不連続な電極層を介して電気的に接続されている。
共通リード電極92は、第2電極80上(圧電体層70上の第2電極80上)に設けられており、絶縁膜200を厚さ方向に貫通する2つの第2コンタクトホール202を介して第2電極80と電気的に接続されている。また、共通リード電極92は、流路形成基板10の第1の方向Xの両端部に、第2の方向Yに連続して振動板50上に引き出されている。
また、共通リード電極92は、第2の方向Yにおいて、圧力発生室12の壁面上に、すなわち、可撓部と非可撓部との境界部分に跨って設けられた延設部93を有する。延設部93は、複数の能動部310の第1の方向Xに亘って連続して設けられており、第1の方向Xの両端部で共通リード電極92に連続する。すなわち、延設部93を有する共通リード電極92は、保護基板30側から平面視した際に、能動部310の周囲を囲むように連続して配置されている。このように、延設部93を設けることで、可撓部と非可撓部との境界における応力集中における圧電体層70の破壊を抑制することができる。また、共通リード電極92が可撓部上には実質的に形成されていないため、能動部310の変位低下を抑えることができる。
このようなリード電極90は、詳しくは後述するが、流路形成基板10の一方面の全面に亘って形成した後、ウェットエッチングすることで所定の形状にパターニングされて形成される。
このとき、本実施形態の密着層191は、ニッケルクロム(NiCr)で形成されているため、密着層191をエッチングするエッチング液(エッチャント)は、例えば、硝酸セリウムアンモニウム等の酸が用いられる。このとき、絶縁膜200で電極(第1電極60や第2電極80)を覆うことで、密着層191と電極の間に電蝕が発生するのを抑制することができ、リード電極90の剥離を抑制することができる。ちなみに、電極(第1電極60や第2電極80)を露出した状態で、密着層191をエッチングすると、酸によって密着層191と電極の間には電蝕が発生し、リード電極90が剥離してしまう虞がある。
なお、密着層191の材料として、ニッケルクロム(NiCr)以外の材料、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、チタンタングステン(TiW)等であっても、エッチャントとしては酸が用いられ、また電極に適した材料が、一般的にイオン化傾向の低い材料であるため、密着層191と電極の間に電蝕が発生するという同様の問題が生じるが、本実施形態のように絶縁膜200を設けることで、リード電極90の剥離を抑制することができる。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、図1及び図2に示すように、圧電素子300を保護する保護基板30が接着剤35によって接合されている。保護基板30には、圧電素子300を収容する空間を画成する凹部である圧電素子保持部31が設けられている。また保護基板30には、マニホールド100の一部を構成するマニホールド部32が設けられている。マニホールド部32は、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部15と連通している。また保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。各能動部310の第1電極60に接続されたリード電極90は、この貫通孔33内に露出しており、図示しない駆動回路に接続される接続配線の一端が、この貫通孔33内でリード電極90に接続されている。
保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってマニホールド部32の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料で形成される。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加する。これにより圧電素子300と共に振動板50がたわみ変形して各圧力発生室12内の圧力が高まり、各ノズル開口21からインク滴が噴射される。
ここで、このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドの製造方法について説明する。なお、図5〜図10は、インクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
まず、図5(a)に示すように、シリコンウェハーである流路形成基板用ウェハー110の表面に弾性膜51を形成する。本実施形態では、流路形成基板用ウェハー110を熱酸化することによって形成した二酸化シリコン(弾性膜51)と、スパッタリング法で成膜後、熱酸化することによって形成した酸化ジルコニウム(絶縁体膜52)との積層からなる振動板50を形成した。
次いで、図5(b)に示すように、絶縁体膜52上の全面に第1電極60を形成する。この第1電極60の材料は特に限定されないが、第1電極60の材料としては高温でも導電性を失わない白金、イリジウム等の金属や、酸化イリジウム、ランタンニッケル酸化物などの導電性酸化物、及びこれらの材料の積層材料が好適に用いられる。また、第1電極60は、例えば、スパッタリング法やPVD法(物理蒸着法)、レーザーアブレーション法などの気相成膜、スピンコート法などの液相成膜などにより形成することができる。
次に、本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。ここで、本実施形態では、金属錯体を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成している。なお、圧電体層70の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法やスパッタリング法又はレーザーアブレーション法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法等を用いてもよい。すなわち、圧電体層70は液相法、気相法の何れで形成してもよい。本実施形態では、複数層の圧電体膜74を積層することで圧電体層70を形成するようにした。
具体的には、図6(a)に示すように、第1電極60上に1層目の圧電体膜74を形成した段階で、第1電極60及び1層目の圧電体膜74をそれらの側面が傾斜するように同時にパターニングする。なお、第1電極60及び1層目の圧電体膜74のパターニングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)、イオンミリング等のドライエッチングにより行うことができる。
ここで、例えば、第1電極60をパターニングしてから1層目の圧電体膜74を形成する場合、フォト工程・イオンミリング・アッシングして第1電極60をパターニングするため、第1電極60の表面や、表面に設けた図示しないチタン等の結晶種層などが変質してしまう。そうすると変質した面上に圧電体膜74を形成しても当該圧電体膜74の結晶性が良好なものではなくなり、2層目以降の圧電体膜74も1層目の圧電体膜74の結晶状態に影響して結晶成長するため、良好な結晶性を有する圧電体層70を形成することができない。
それに比べ、1層目の圧電体膜74を形成した後に第1電極60と同時にパターニングすれば、1層目の圧電体膜74はチタン等の結晶種に比べて2層目以降の圧電体膜74を良好に結晶成長させる種(シード)としても性質が強く、たとえパターニングで表層に極薄い変質層が形成されていても2層目以降の圧電体膜74の結晶成長に大きな影響を与えない。
なお、2層目の圧電体膜74を成膜する前に露出した振動板50上(本実施形態では、酸化ジルコニウムである絶縁体膜52)に、2層目以降の圧電体膜74を成膜するときに、結晶制御層(中間結晶制御層)を用いてもよい。本実施形態では、中間結晶制御層としてチタンを用いるようにした。このチタンからなる中間結晶制御層は、第1電極60上に形成する結晶制御層のチタンと同様に、圧電体膜74を成膜する際に圧電体膜74に取り込まれる。ちなみに、中間結晶制御層は、中間電極または直列接続されるコンデンサの誘電体となってしまった場合、圧電特性の低下を引き起こす。このため、中間結晶制御層は、圧電体膜74(圧電体層70)に取り込まれ、圧電体層70の成膜後に膜として残らないものが望ましい。
次に、図6(b)に示すように、2層目以降の圧電体膜74を積層することにより、複数層の圧電体膜74からなる圧電体層70を形成する。
ちなみに、2層目以降の圧電体膜74は、絶縁体膜52上、第1電極60及び1層目の圧電体膜74の側面上、及び1層目の圧電体膜74上に亘って連続して形成される。
次に、図6(c)に示すように、圧電体層70上に第1層81を形成する。本実施形態では、特に図示していないが、まず、圧電体層70上にイリジウムを有するイリジウム層と、イリジウム層上にチタンを有するチタン層とを積層する。なお、このイリジウム層及びチタン層は、スパッタリング法やCVD法等によって形成することができる。その後、イリジウム層及びチタン層が形成された圧電体層70をさらに再加熱処理(ポストアニール)する。このように再加熱処理することで、圧電体層70の第2電極80側にイリジウム層等を形成した際のダメージが発生しても、再加熱処理を行うことで、圧電体層70のダメージを回復して、圧電体層70の圧電特性を向上することができる。
次に、図7(a)に示すように、第1層81及び圧電体層70を各圧力発生室12に対応してパターニングする。本実施形態では、第1層81上に所定形状に形成したマスク(図示なし)を設け、このマスクを介して第1層81及び圧電体層70をエッチングする、いわゆるフォトリソグラフィーによってパターニングした。なお、圧電体層70のパターニングは、例えば、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングが挙げられる。
次に、図7(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の一方面側(圧電体層70が形成された面側)に亘って、すなわち、第1層81上、圧電体層70のパターニングした側面上、絶縁体膜52上、及び第1電極60上等に亘って、例えば、イリジウム(Ir)からなる第2層82を形成することで第2電極80を形成する。
ここで、第2電極80をパターニングした際に第2電極80を覆っていたレジストを除去後、図7(c)に示すように、還元性ガス雰囲気下でプラズマ処理Pを施した。かかるプラズマ処理Pは、第2電極80の第2の方向Yの端部、特に、能動部310の端部に対して行えばよいので、他の部分をレジストで覆った後行ってもよい。ここで、還元性ガス雰囲気下とは、上述したように、酸化反応より還元反応を促進するガスが存在する雰囲気であり、還元性ガスとしては、水素を含む化合物のガスを挙げることができる。好適には、水素を含む化合物のガスが好ましく、アンモニア、CHF3、H2O、CH4、CH3OHなどを挙げることができるが、特にアンモニアが好ましい。本実施形態では、アンモニアガス雰囲気下で常温でプラズマ処理を施した。
また、プラズマ処理は、例えば、並行平板電極を有するプラズマ発生装置で行えばよく、好ましくは、被処理体を載置する電極にバイアス電力、好ましくは高周波電力を印加するのが好ましい。高周波電力は、例えば、50〜500Wの範囲とすればよい。また、チャンバー内の真空度は、例えば、1〜133Paとすればよく、ガスの供給は、例えば、50〜1000sccm程度とすればよい。
次に、絶縁膜200を形成する。絶縁膜200としては、例えば、酸化チタン(TiOX)、酸化シリコン(SiOX)、酸化タンタル(TaOX)、酸化アルミニウム(AlOX)等の無機絶縁材料、又は、ポリイミド(PI)等の有機絶縁材料を用いることができる。また、絶縁膜200の形成方法は、スピンコート法などの液相法、またはスパッタリング法、CVD法等の気相法、またはそれらと熱酸化処理の組み合わせの何れであってもよい。
本実施形態では、図7(d)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の一方面側に亘ってチタン(Ti)からなるチタン層210を形成した後、図7(e)に示すように、第2電極80(第1層81及び第2層82)と、チタン層210とを所定の形状にパターニングする。具体的には、チタン層210上にレジスト等のマスクを所定形状に形成し(図示なし)、マスクを介してチタン層210をドライエッチングした後、マスクをアッシングによって剥離する。この第2電極80及びチタン層210をドライエッチングする際に用いたレジストマスクを剥離する際に、酸素(O2)によるプラズマ処理が行われることで、チタン層210は酸化されて酸化チタン(TiOX)からなる絶縁膜200となる。
なお、第2電極80とチタン層210とのドライエッチングとしては、例えば、反応性イオンエッチングやイオンミリング等を用いることで、第2電極80とチタン層210(絶縁膜200)とを同時にパターニングすることができる。
このように、第2電極80上に酸化し易い材料、上述した例では、チタン(Ti)を用いたチタン層210を形成した後、酸化することで酸化チタン(TiOX)からなる絶縁膜200を形成するようにしたが、特にこれに限定されず、酸化しやすい材料であれば、チタン以外の材料であってもよい。
また、絶縁膜200の形成方法は特にこれに限定されず、第2電極80上に酸化チタン等の絶縁性を有する材料の絶縁膜200を直接形成してもよい。
このように、第2電極80と絶縁膜200とを同時にエッチングすることで、絶縁膜200と第2層82とは同じ領域に、すなわち、平面視した際に同じ形状で重なるように配置される。ちなみに、第2層82及び絶縁膜200は、第1層81上と、圧電体層70によって覆われていない第1電極60上と、圧電体層70の側面上及び凹部71内の振動板50上等に形成する。
もちろん、第2電極80のエッチングによるパターニングと、絶縁膜200のエッチングによるパターニングとは、別工程で行うようにしてもよいが、同一工程で行うことで、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。
また、この工程では、圧電体層70上の一部の第2電極80及び絶縁膜200を厚さ方向に完全に除去して、除去部83を形成する。この工程によって、第2電極80によって規定された能動部310と非能動部とが形成される。
次に、図8(a)に示すように、絶縁膜200をエッチングして第1コンタクトホール201及び第2コンタクトホール202等を形成する。本実施形態では、絶縁膜200をドライエッチングすることで、第1コンタクトホール201及び第2コンタクトホール202等を形成した。
次に、図8(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の一方面の全面に亘ってニッケルクロム(NiCr)からなる密着層191と、金(Au)からなる導電層192とを形成することで、配線層であるリード電極90を形成する。このとき、絶縁膜200の第1コンタクトホール201及び第2コンタクトホール202を介して、第1電極60(第2層82)及び第2電極80とリード電極90とが電気的に接続される。
次に、図8(c)に示すように、導電層192をウェットエッチングすることで、パターニングする。すなわち、導電層192上に所定形状のマスクを形成し(図示なし)、マスクを介して導電層192をウェットエッチングする。
次に、図8(d)に示すように、密着層191を酸を用いてウェットエッチングすることによりパターニングする。すなわち、導電層192をマスクとして、密着層191をウェットエッチングする。これにより、個別リード電極91及び共通リード電極92が形成される。
このとき、密着層191をエッチングするエッチャントとして酸を用いているものの、電極(第2層82)は、絶縁膜200によって覆われているため、密着層191と電極(第2層82)との間に電蝕が発生するのを抑制することができる。つまり、密着層191をウェットエッチングする際に、電極(第1電極60や第2電極80)が露出していると、酸からなるエッチング液(エッチャント)によって密着層191と電極の間に電蝕が発生する。本実施形態では、電極が露出しないように絶縁膜200で覆うことで、エッチャントとして酸を用いても密着層と電極の間に電蝕が発生するのを抑制することができる。したがって、密着層191と電極(第1電極60上の第2層82及び第2電極80)との間に電蝕が発生するのを抑制して、電蝕によってリード電極90が剥離するのを抑制することができる。
次に、図9(a)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の圧電素子300側に、シリコンウェハーであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハー130を接着剤35を介して接合した後、流路形成基板用ウェハー110を所定の厚みに薄くする。
次いで、図9(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110にマスク膜53を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図9(c)に示すように、流路形成基板用ウェハー110をマスク膜53を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、インク供給路13、連通路14及び連通部15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハー110の保護基板用ウェハー130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハー130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハー110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドとする。
このように、少なくとも配線層であるリード電極90(個別リード電極91及び共通リード電極92)と電極(第1電極60上の第2層82と第2電極80)との間に絶縁性を有する絶縁膜200を設けることで、リード電極90の密着層191をウェットエッチングする際に密着層191と電極の間に電蝕が発生するのを抑制して、リード電極90の剥離が発生するのを抑制することができる。ちなみに、リード電極90をウェットエッチングではなく、密着層191と電極の間に電蝕が発生しないドライエッチングでパターニングする方法も考えられるが、ドライエッチングでは、第1電極60、第2電極80及び振動板50等がオーバーエッチングされる虞があり、変位特性や電気特性に悪影響を与えてしまう虞がある。また、ウェットエッチングではバッチ処理が行えるのに対し、ドライエッチングではバッチ処理が行えないため、高コストになってしまう。すなわち、リード電極90をウェットエッチングによって形成することで、第1電極60、第2電極80及び振動板50等がオーバーエッチングされて変位特性や電気特性(断線や電気抵抗が増大)に影響を与えるのを抑制することができると共に、コストを低減することができる。
また、本実施形態の絶縁膜200は、圧電素子300の第1電極60と第2電極80との電流のリークを抑制する保護膜とは異なり、密着層191をウェットエッチングしてパターニングする際に用いるエッチャントの酸により密着層191と電極の間に電蝕が発生するのを抑制するために設けたものである。したがって、密着層191をウェットエッチングした後は、絶縁膜200のリード電極90と電極との間の領域以外の部分を除去するようにしてもよい。すなわち、従来の第1電極を共通電極とし、第2電極を個別電極とした圧電素子に設ける保護膜は、第1電極60と第2電極80との電流のリークを抑制するために設けるものであるため、第1電極60と第2電極80とが露出して近接して設けられた部分に必要となる。これに対して、本実施形態の絶縁膜200は、密着層191をウェットエッチングする際に電極(第1電極60上の第2層82や第2電極80)が露出しないように設けるものであるため、その後の工程で、リード電極90と電極との間の領域以外の絶縁膜200を除去してしまっても特に問題ない。特に、本実施形態では、第2電極80を複数の能動部310の共通電極とすることで、第2電極80(第2層82)によって、第1電極60と第2電極80とが露出して近接して設けられた部分が存在しないため、従来のリーク電流を抑制する保護膜が不要である。また、リード電極90と電極との間の領域以外の絶縁膜200を除去するということは、能動部310上の絶縁膜200を除去することになるため、絶縁膜200を設けることによる能動部310の変位の阻害を抑制して、優れた変位量を得ることができるという効果を奏する。
(試験例)
以下、プラズマ処理について試験した結果を示す。
上述した実施形態の図7(b)のプロセス終了後、全面に以下のプラズマ処理を行い、後は上述した通りの処理を実施した。なお、プラズマ処理は、図10に示すような並行平板のプラズマ発生装置により行った。なお、かかるプラズマ発生装置500は、被処理体501を載置する下電極502と、被処理体501に対向して配置される上電極503とを具備し、下電極502及び上電極503には、それぞれRF電力が印加できるようになっている。また、チャンバー504内は所定のガス雰囲気とすることができるようになっている。
(試験例1)
処理ガスをアンモニア(NH3)ガスを用い、RF(高周波)印加を、上電極503のみ、下電極502のみ、上下電極両方に行い、表1に示す条件下でプラズマ処理を実施した。なお、サンプル1は、プラズマ処理を行わないサンプルとした。
上記3条件で実施したサンプル2〜4の素子およびプラズマ処理を実施していない素子(サンプル1)、各180個にDC電圧を100時間かけ、素子の破壊した本数を計測した。その破壊率を図11に示す。プラズマ処理をしないサンプル1の場合および下電極502にRFを印加せずに上電極503のみにRF印加してプラズマ処理を実施したサンプル2の素子は、30hrでほぼ全ての素子が破壊した。一方、少なくとも下電極502にRFを印加してプラズマ処理を実施したサンプル3、4の素子では、10%以下に破壊率を抑えることができた。
(試験例2)
処理ガスの効果を確認するため、ガス種をCF4、Ar、O2、N2、Cl2とし、RF(高周波)印加を、上下電極両方に300Wとし、流量500sccm、圧力30Pa、処理時間300秒で実施した。
上記3条件で実施したサンプル2〜4の素子およびプラズマ処理を実施していない素子(サンプル1)、各180個にDC電圧を100時間かけ、素子の破壊した本数を計測した。その破壊率を表2及び図12に示す。表2及び図12より、塩素で処理したサンプル9以外のガスを用いたサンプル4〜8(サンプル4は試験例1のものと同様)で信頼性が向上した。特にNH3処理したサンプル4が効果的であることが分かった。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態1では、各能動部310の圧電体層70が連続的に設けられた構成を例示したが、勿論、圧電体層70は、能動部310毎に独立して設けられていてもよい。
また、上述した実施形態1では、第2電極80を第1層81と第2層82とを積層したものとしたが、特にこれに限定されず、第2電極80は単層であっても3層以上に積層したものであってもよい。
さらに、例えば、上述した実施形態1では、圧電体前駆体膜73を塗布、乾燥及び脱脂した後、焼成して圧電体膜74を形成するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、圧電体前駆体膜73を塗布、乾燥及び脱脂する工程を複数回、例えば、2回繰り返し行った後、焼成することで圧電体膜74を形成するようにしてもよい。
また、インクジェット式記録ヘッドIは、例えば、図13に示すように、インクジェット式記録装置IIに搭載される。インクジェット式記録ヘッドIを有する記録ヘッドユニット1は、インク供給手段を構成するカートリッジ2が着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動可能に設けられている。この記録ヘッドユニット1は、例えば、ブラックインク組成物及びカラーインク組成物を噴射する。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、ヘッドユニット1を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、紙等の記録媒体である記録シートSが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。なお、記録シートSを搬送する搬送手段は、搬送ローラーに限られずベルトやドラム等であってもよい。
そして本発明では、上述のようにインクジェット式記録ヘッドIを構成する圧電素子300の破壊を抑制しつつ噴射特性の均一化を図ることができる。結果として、印刷品質を向上し耐久性を高めたインクジェット式記録装置IIを実現することができる。
なお、上述した例では、インクジェット式記録装置IIとして、インクジェット式記録ヘッドIがキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、その構成は特に限定されるものではない。インクジェット式記録装置IIは、例えば、インクジェット式記録ヘッドIを固定し、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させることで印刷を行う、いわゆるライン式の記録装置であってもよい。
また、上述の実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて本発明を説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものである。液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッドの他、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子に限られず、超音波発信機、超音波センサー等の超音波デバイス、超音波モーター、圧力センサー、焦電センサー等他の装置に搭載される圧電素子にも適用することができる。また、本発明は強誘電体メモリー等の強誘電体素子にも同様に適用することができる。