JP2014179503A - 液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子、超音波トランスデューサー及び超音波デバイス - Google Patents

液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子、超音波トランスデューサー及び超音波デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】繰り返し駆動による変位量の低下を抑制すると共に破壊を抑制した液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子、超音波トランスデューサー及び超音波デバイスを提供する。
【解決手段】第1電極60、圧電材料で形成された圧電体層70及び第2電極80が積層された圧電素子300を具備し、前記圧電体層70は、前記第1電極60側から前記第2電極80側に向かって共通する圧電材料で形成された第1圧電体部71、第2圧電体部72及び第3圧電体部73を具備し、前記第1圧電体部71及び第3圧電体部73は、前記圧電材料に加えてニッケル及びランタンを含み、前記第2圧電体部72は、前記圧電材料に加えてニッケルのみを含む。
【選択図】 図3

Description

本発明は、ノズル開口から液体を吐出する液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置及び液体噴射ヘッド等に搭載される圧電素子並びに圧電素子を搭載する超音波トランスデューサー及び超音波トランスデューサーを具備する超音波デバイスに関する。
液体噴射ヘッド等に用いられる圧電素子は、電気機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した誘電材料からなる圧電体層を、2つの電極で挟んで構成されたものがある。なお、液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッド等がある(特許文献1及び2参照)。
特許第3387380号公報 特開2011−160037号公報
しかしながら、圧電素子を長期に渡って繰り返し駆動すると、初期の変位量と、繰り返し駆動後の変位量とに差が生じ、このような変位特性の劣化によって安定した駆動を行わせることができなくなってしまうという問題がある。
また、圧電素子を繰り返し駆動した際に、圧電素子が破壊されないものが望まれている。
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。また、このような問題は、液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子に限定されず、超音波デバイスをはじめ、他のデバイスに用いられる圧電素子においても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、繰り返し駆動による変位量の低下を抑制すると共に破壊を抑制した液体噴射ヘッド、液体噴射装置、圧電素子、超音波トランスデューサー及び超音波デバイスを提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、第1電極、圧電体層、第2電極を有する圧電素子を具備し、前記圧電体層は、前記第1電極側から前記第2電極側に向かって共通する圧電材料で形成された第1圧電体部、第2圧電体部及び第3圧電体部を具備し、第1圧電体部及び第3圧電体部は前記圧電材料に加えてニッケル及びランタンを含み、第2圧電体部は前記圧電材料に加えてニッケルのみを含むことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、初期変位量が高く、繰り返し駆動を行っても変位量の低下が抑制されて(変位低下率が低い)、破壊の発生を低減した圧電素子を有する液体噴射ヘッドを実現できる。
ここで、前記第1電極は、前記圧電体層側にランタンニッケル酸化物を主成分とする第1金属酸化膜を有することが好ましい。これによれば、第1金属酸化膜が圧電体層の配向を制御する配向制御層として機能させることができると共に、圧電体層中に第1金属酸化膜の成分を拡散して第1圧電体部及び第2圧電体部を容易に形成することができる。
また、前記第2電極は、前記圧電体層側にランタンニッケル酸化物を主成分とする第2金属酸化膜を有することが好ましい。これによれば、圧電体層中に第2金属酸化膜の成分を拡散して第2圧電体部及び第3圧電体部を容易に形成することができる。
また、前記圧電体層は、鉛、チタン及びジルコニウムを含むことが好ましい。これによれば、圧電特性に優れた圧電素子を実現できる。
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、長期に渡って信頼性を向上した液体噴射装置を実現できる。
また、本発明の他の態様は、第1電極、圧電体層及び第2電極が積層された圧電素子であって、前記圧電体層は、前記第1電極側から前記第2電極側に向かって共通する圧電材料で形成された第1圧電体部、第2圧電体部及び第3圧電体部を具備し、第1圧電体部及び第3圧電体部は前記圧電材料に加えてニッケル及びランタンを含み、第2圧電体部は前記圧電材料に加えてニッケルのみを含むことを特徴とする圧電素子にある。
かかる態様では、このような圧電素子は、初期変位量が高く、繰り返し駆動を行っても変位量の低下が抑制されて(変位低下率が低い)、破壊の発生を低減することができる。
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の圧電素子を具備することを特徴とする超音波トランスデューサー及び超音波デバイスにある。
かかる態様では、初期変位量が高く、繰り返し駆動を行っても変位量の低下が抑制されて(変位低下率が低い)、破壊の発生を低減した超音波トランスデューサー及び超音波トランスデューサーを具備する超音波デバイスを実現できる。
本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。 本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。 本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。 本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 本発明の実施形態1に係る比較例の圧電素子を示す断面図である。 本発明の実施形態1に係る比較例の圧電素子を示す断面図である。 本発明の試験結果を示すグラフである。 本発明の試験結果を示すグラフである。 本発明の実施形態1に係る記録装置の概略斜視図である。 本発明の実施形態2に係る超音波デバイスの平面図及び断面図である。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′線断面図であり、図3は、図2のB−B′線断面図である。
図示するように、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドIが備える流路形成基板10は、本実施形態では、例えば、シリコン単結晶基板からなる。この流路形成基板10には、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12がインクを吐出する複数のノズル開口21が並設される方向に沿って並設されている。以降、この方向を圧力発生室12の並設方向、又は第1の方向Xと称する。また、この第1の方向Xと直交する方向を、以降、第2の方向Yと称する。
また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向の一端部側、すなわち第1の方向Xに直交する第2の方向Yの一端部側には、インク供給路13と連通路14とが複数の隔壁11によって区画されている。連通路14の外側(第2の方向Yにおいて圧力発生室12とは反対側)には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるマニホールド100の一部を構成する連通部15が形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、インク供給路13、連通路14及び連通部15からなる液体流路が設けられている。
流路形成基板10の一方面側、すなわち圧力発生室12等の液体流路が開口する面には、各圧力発生室12に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって接合されている。すなわち、ノズルプレート20には、第1の方向Xにノズル開口21が並設されている。
一方、流路形成基板10のノズルプレート20とは反対面側には、振動板50が形成されている。本実施形態では、振動板50として、流路形成基板10側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜51と、弾性膜51上に設けられた酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜52と、を設けるようにした。なお、圧力発生室12等の液体流路は、流路形成基板10を一方面側(ノズルプレート20が接合された面側)から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力発生室12等の液体流路の他方面は、弾性膜51によって画成されている。
ここで、振動板50(積層膜の場合、電極形成側)は絶縁体であること、かつ圧電体層70の形成時の温度(一般に500℃以上)に耐えうることが必須であるほか、シリコンウェハーを流路形成基板10に用いて、且つ圧力発生室12等の流路を形成する際に、KOH(水酸化カリウム)による異方性エッチングを用いる場合、振動板(積層の場合、シリコンウェハー側)はエッチングストップ層として機能することが必要である。また、振動板50の一部に二酸化シリコンを使用した場合、圧電体層70に含まれる鉛やビスマスなどが二酸化シリコンに拡散すると、二酸化シリコンが変質し、上層の電極や圧電体層70が剥離する。このため、二酸化シリコンへの拡散防止層も必要となる。
二酸化シリコンと酸化ジルコニウムとを積層した振動板50は、それぞれの材料が圧電体層70を形成する際の温度に耐えて且つ、二酸化シリコンが絶縁層とエッチングストップ層を、酸化ジルコニウムが絶縁層と拡散防止層として機能するため、最も好適である。本実施形態では、この弾性膜51及び絶縁体膜52によって振動板50が形成されるが、振動板50として、弾性膜51及び絶縁体膜52の何れか一方のみを設けるようにしてもよい。
また、振動板50上には、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを有する圧電素子300が形成されている。ここで圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。また、第1電極60と第2電極80と、これらの間で挟まれた圧電体層70とで構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪が生じて実質的な駆動部となる部分を圧電体能動部320という。このような圧電素子300では、何れか一方の電極を複数の圧電体能動部に共通する共通電極とし、他方の電極を各圧電体能動部320毎に独立した個別電極として構成する。本実施形態では、第1電極60を複数の圧電体能動部320の共通電極とし、第2電極80を各圧電体能動部320毎に独立した個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。なお、本実施形態では、第2電極80及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成している。ちなみに、上述した例では、振動板50、第1電極60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜51及び絶縁体膜52の何れか一方又は両方を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。ただし、流路形成基板10上に直接第1電極60を設ける場合には、第1電極60とインクとが導通しないように第1電極60を絶縁性の保護膜等で保護するのが好ましい。
第1電極60は、本実施形態では、図3に示すように、複数の圧力発生室12に亘って第1の方向Xに連続して設けられている。このような第1電極60の材料は、金属又は金属酸化物であれば特に限定されないが、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等が好適に用いられる。
また、第1電極60は、流路形成基板10側(振動板50側)に下地との密着力を向上する密着層を有してもよい。なお、密着層としては、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)やこれらの酸化物などを用いることができる。
本実施形態では、第1電極60は、流路形成基板10側(振動板50側)にチタンからなる密着層61と、密着層61上に白金からなる導電層62と、を有する。
さらに、第1電極60は、圧電体層70側にランタンニッケル酸化物(LNO)を主成分とする第1金属酸化膜63を有する。
第2電極80の材料としては、金属又は金属酸化物であれば特に限定されないが、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等が好適に用いられる。
また、本実施形態では、第2電極80の圧電体層70側には、ランタンニッケル酸化物を主成分とする第2金属酸化膜81が設けられている。
本実施形態では、第2電極80として、圧電体層70側に設けられた第2金属酸化膜81と、第2金属酸化膜81上に白金からなる導電層82とを設けるようにした。
圧電体層70は、第1電極60上に形成される分極構造を有する酸化物の圧電材料からなり、例えば、一般式ABOで示されるペロブスカイト型酸化物からなることができ、Aは、鉛を含み、Bは、ジルコニウムおよびチタンのうちの少なくとも一方を含むことができる。前記Bは、例えば、さらに、ニオブを含むことができる。具体的には、圧電体層70としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O:PZT)、シリコンを含むニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O:PZTNS)などを用いることができる。
また、圧電体層70は、鉛を含まない非鉛系圧電材料、例えば、鉄酸ビスマスや鉄酸マンガン酸ビスマスと、チタン酸バリウムやチタン酸ビスマスカリウムとを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物などとしてもよい。本実施形態では、圧電体層70として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた。
このような圧電体層70は、第1電極60側から第2電極80側に向かって、共通する圧電材料で形成された第1圧電体部71、第2圧電体部72及び第3圧電体部73を有する。
第1圧電体部71と第2圧電体部72との間、及び第2圧電体部72と第3圧電体部73との間には、界面が存在せず、第1圧電体部71、第2圧電体部72及び第3圧電体部73は、主成分として同じ圧電材料、本実施形態では、PZTで形成されたものである。
そして、第1圧電体部71は、上述した共通する圧電材料(本実施形態では、PZT)に加えて、ランタン(La)、ニッケル(Ni)を含むものである。つまり、第1圧電体部71は、Aサイトに鉛、ランタンを含み、Bサイトにジルコニウム、チタン及びニッケルを含むものであり、PbLa1−y(Zrx−zTi1−x−zNi)Oで表される。なお、第1圧電体部71に含まれるランタン(La)及びニッケル(Ni)は、1モル%以下が好ましい。
第2圧電体部72は、上述した共通する圧電材料(本実施形態では、PZT)に加えて、ニッケル(Ni)のみを含むものである。すなわち、第2圧電体部72は、ランタン(La)を含まない。つまり、第2圧電体部72は、Aサイトに鉛、Bサイトにジルコニウム、チタン及びニッケルを含むものであり、Pb(Zrx−zTi1−x−zNi)Oで表される。なお、第2圧電体部72に含まれるニッケル(Ni)は、1モル%以下が好ましい。
第3圧電体部73は、第1圧電体部71と同様に、上述した圧電材料(本実施形態では、PZT)に加えて、ランタン(La)、ニッケル(Ni)を含むものである。つまり、第1圧電体部71は、Aサイトに鉛、ランタンを含み、Bサイトにジルコニウム、チタン及びニッケルを含むものであり、PbLa1−y(Zrx−zTi1−x−zNi)Oで表される。なお、第3圧電体部73に含まれるランタン(La)及びニッケル(Ni)は、1モル%以下が好ましい。
なお、第1圧電体部71、第2圧電体部72及び第3圧電体部73は、Bサイトにジルコニウム、チタン及びニッケルを含むものであるが、従来周知のように、Bサイトに鉛を含むものであってもよい。
このように第1圧電体部71及び第3圧電体部73に圧電材料に加えてランタン(La)、ニッケル(Ni)を含み、第2圧電体部72に圧電材料に加えてニッケル(Ni)を含むことで、圧電素子300を繰り返し駆動した際の変位低下を抑制することができる。すなわち、圧電素子300を繰り返し駆動した際の初期の変位量と、繰り返し駆動した後の変位量との差を減少させて、安定した駆動を行わせることができる。したがって、長期に渡ってインク滴(液滴)の噴射特性にばらつきが生じるのを抑制して、印刷品質が低下するのを抑制することができる。
また、圧電素子300を繰り返し駆動した際の当該圧電素子300の破壊、特に圧電体層70の破壊を抑制することができる。
このような圧電素子300の個別電極である各第2電極80には、インク供給路13側の端部近傍から引き出され、振動板50上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、振動板50及びリード電極90上には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホールド部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このマニホールド部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部15と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。また、流路形成基板10の連通部15を圧力発生室12毎に複数に分割して、マニホールド部31のみをマニホールドとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する弾性膜51及び絶縁体膜52にマニホールドと各圧力発生室12とを連通するインク供給路13を設けるようにしてもよい。
保護基板30には、圧電素子300に対向する領域に、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電アクチュエーター保持部32が設けられている。なお、圧電アクチュエーター保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、信号処理部として機能する駆動回路120が固定されている。駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、貫通孔33を挿通させたボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルムからなり、この封止膜41によってマニホールド部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料、例えば、ステンレス鋼(SUS)等で形成される。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜51、絶縁体膜52、第1電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
ここで、このようなインクジェット式記録ヘッドIの製造方法について図4〜図8を参照して説明する。なお、図4〜図8は、本発明のインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
まず、図4(a)に示すように、シリコンウェハーである流路形成基板用ウェハー110の表面に振動板50を形成する。本実施形態では、流路形成基板用ウェハー110を熱酸化することによって形成した二酸化シリコン(弾性膜51)と、スパッタリング法で成膜後、熱酸化することによって形成した酸化ジルコニウム(絶縁体膜52)との積層からなる振動板50を形成した。
振動板50(積層膜の場合、電極形成側)は絶縁体であること、かつ圧電体層70の形成時の温度(一般に500℃以上)に耐えうることが必須であるほか、シリコンウェハーを流路形成基板10に用いて、且つ圧力発生室12等の流路を形成する際に、KOH(水酸化カリウム)による異方性エッチングを用いる場合、振動板(積層の場合、シリコンウェハー側)はエッチングストップ層として機能することが必要である。また、振動板50の一部に二酸化シリコンを使用した場合、圧電体層70に含まれる鉛やビスマスなどが二酸化シリコンに拡散すると、二酸化シリコンが変質し、上層の電極や圧電体層70が剥離する。このため、二酸化シリコンへの拡散防止層も必要となる。
二酸化シリコンと酸化ジルコニウムとを積層した振動板50は、それぞれの材料が圧電体層70を形成する際の温度に耐えて且つ、二酸化シリコンが絶縁層とエッチングストップ層を、酸化ジルコニウムが絶縁層と拡散防止層として機能するため、最も好適である。本実施形態では、この弾性膜51及び絶縁体膜52によって振動板50が形成されるが、振動板50として、弾性膜51及び絶縁体膜52の何れか一方のみを設けるようにしてもよい。
次いで、図4(b)に示すように、振動板50上の全面に第1電極60を形成する。この第1電極60の材料は特に限定されないが、圧電体層70を形成する際の熱処理(一般に500℃以上)時の酸化または圧電体層70に含まれる材料の拡散などによって導電性を消失しない材料であることが必須である。このため、第1電極60の材料としては高温でも導電性を失わない白金、イリジウム等の金属や、酸化イリジウム、ランタンニッケル酸化物などの導電性酸化物、及びこれらの材料の積層材料が好適に用いられる。また、第1電極60は、例えば、スパッタリング法やPVD法(物理蒸着法)、レーザーアブレーション法などの気相成膜、スピンコート法などの液相成膜などにより形成することができる。また、前述の導電材料と、振動板50との間に、密着力を確保するための密着層を用いてもよい。本実施形態では、チタンからなる密着層61と、白金からなる導電層62と、ランタンニッケル酸化物からなる第1金属酸化膜63と、を積層することで第1電極60を形成した。
なお、密着層61としては、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)やこれらの酸化物などを用いることができる。
また、第1電極60の表面(圧電体層70の成膜側)に設けられた第1金属酸化膜63は、ペロブスカイト型構造の導電性酸化物であるランタンニッケル酸化物で形成されているため、第1金属酸化膜63は、圧電体層70の結晶成長を制御するための制御層として機能する。
さらに、第1電極60には、圧電体層70に含まれる成分が当該第1電極60内及び第1電極60の下地側(圧電体層70とは反対側)に拡散するのを抑制する拡散防止層を設けるようにしてもよい。拡散防止層としては、例えば、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pb)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)及びオスミウム(Os)やこれらの酸化物等を用いることができる。
次に、本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。ここで、本実施形態では、金属錯体を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成している。なお、圧電体層70の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法やスパッタリング法又はレーザーアブレーション法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法等を用いてもよい。すなわち、圧電体層70は液相法、気相法の何れで形成してもよい。本実施形態では、複数層の圧電体膜75を積層することで圧電体層70を形成するようにした。
具体的には、図4(c)に示すように、第1電極60上に1層目の圧電体膜75を形成した後、図4(d)に示すように第1電極60及び1層目の圧電体膜75をそれらの側面が傾斜するように同時にパターニングする。なお、第1電極60及び1層目の圧電体膜75のパターニングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)、イオンミリング等のドライエッチングにより行うことができる。
ここで、例えば、第1電極60をパターニングしてから1層目の圧電体膜75を形成する場合、フォト工程・イオンミリング・アッシングして第1電極60をパターニングするため、第1電極60の表面や、表面に設けた図示しないチタン等の結晶種層などが変質してしまう。そうすると変質した面上に圧電体膜75を形成しても当該圧電体膜75の結晶性が良好なものではなくなり、2層目以降の圧電体膜75も1層目の圧電体膜75の結晶状態に影響して結晶成長するため、良好な結晶性を有する圧電体層70を形成することができない。
それに比べ、1層目の圧電体膜75を形成した後に第1電極60と同時にパターニングすれば、1層目の圧電体膜75はチタン等の結晶種に比べて2層目以降の圧電体膜75を良好に結晶成長させる種(シード)としても性質が強く、たとえパターニングで表層に極薄い変質層が形成されていても2層目以降の圧電体膜75の結晶成長に大きな影響を与えない。
なお、2層目の圧電体膜75を成膜する前に露出した振動板50上(本実施形態では、酸化ジルコニウムである絶縁体膜52)に、2層目以降の圧電体膜75を成膜するときに、結晶制御層(中間結晶制御層)を用いてもよい。本実施形態では、中間結晶制御層としては、例えば、チタンを用いるようにした。このチタンからなる中間結晶制御層は、圧電体膜75を成膜する際に圧電体膜75(圧電体層70)に取り込まれる。ちなみに、中間結晶制御層は、中間電極または直列接続されるコンデンサの誘電体となってしまった場合、圧電特性の低下を引き起こす。このため、中間結晶制御層は、圧電体膜75(圧電体層70)に取り込まれ、圧電体層70の成膜後に膜として残らないものが望ましい。
次に、図5(a)に示すように、2層目以降の圧電体膜75を積層することにより、複数層の圧電体膜75からなる圧電体層70を形成する。
ちなみに、2層目以降の圧電体膜75は、振動板50上、第1電極60及び1層目の圧電体膜75の側面上、及び1層目の圧電体膜75上に亘って連続して形成される。
このように第1電極60上に圧電体層70を熱処理によって形成することで、第1電極60の圧電体層70が成膜される側に設けられた第1金属酸化膜63に含まれる成分が圧電体層70に拡散する。
ここで、第1金属酸化膜63は、ランタンニッケル酸化物からなり、圧電体層70には、第1金属酸化膜63の成分であるランタン(La)、ニッケル(Ni)が拡散する。したがって、圧電体層70の第1電極60側には、主成分である圧電材料(本実施形態では、PZT)にランタン(La)及びニッケル(Ni)が拡散した第1圧電体部71が形成される。
また、ランタン(La)は、ニッケル(Ni)に比べて圧電体層70に拡散し難いため、圧電体層70の第1電極60とは反対側には、主成分である圧電材料(本実施形態では、PZT)にニッケル(Ni)のみが拡散された領域が形成される。このニッケルのみが拡散された領域の一部が、後の工程で第2圧電体部72となる。
次に、図5(b)に示すように、圧電体層70上に第2電極80を構成するランタンニッケル酸化物からなる第2金属酸化膜81を形成する。第2金属酸化膜81は、例えば、スパッタリング法やPVD法(物理蒸着法)、レーザーアブレーション法などの気相成膜、スピンコート法などの液相成膜などによって形成することができる。
次に、図6(a)に示すように、このように上部に第2金属酸化膜81が設けられた圧電体層70を再度加熱処理することによりポストアニールを行う(ポストアニール工程)。本実施形態では、圧電体層70を酸素雰囲気中で700℃で加熱することによりポストアニールを行った。
このように第2金属酸化膜81が設けられた圧電体層70をポストアニールすることで、第2金属酸化膜81に含まれる成分を圧電体層70内に拡散することができる。ここで、第2金属酸化膜81は、ランタンニッケル酸化物からなり、圧電体層70には、第2金属酸化膜81の成分であるランタン(La)、ニッケル(Ni)が拡散する。したがって、圧電体層70の第2電極80側には、主成分である圧電材料(本実施形態では、PZT)にランタン(La)及びニッケル(Ni)が拡散した第3圧電体部73が形成される。
また、ランタン(La)は、ニッケル(Ni)に比べて圧電体層70に拡散し難いため、圧電体層70の第1電極60、圧電体層70及び第2電極80の積層方向の中央部には、主成分である圧電材料(本実施形態では、PZT)にニッケル(Ni)のみが拡散された第2圧電体部72が形成される。
このようにポストアニール工程を行った後は、図6(b)に示すように、第2金属酸化膜81上に亘ってイリジウム(Ir)からなる導電層82を形成することで、第2電極80とする。
そして、図7(a)に示すように、圧電体層70及び第2電極80を各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。本実施形態では、第2電極80上に所定形状に形成したマスク(図示なし)を設け、このマスクを介して第2電極80及び圧電体層70をエッチングする、いわゆるフォトリソグラフィーによってパターニングした。なお、圧電体層70のパターニングは、例えば、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングが挙げられる。
次に、リード電極90を形成する。具体的には、図7(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎にパターニングすることで形成される。
次に、図7(c)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の圧電素子300側に、シリコンウェハーであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハー130を接着剤35を介して接合した後、流路形成基板用ウェハー110を所定の厚みに薄くする。
次いで、図8(a)に示すように、流路形成基板用ウェハー110にマスク膜53を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図8(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110をマスク膜53を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、インク供給路13、連通路14及び連通部15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハー110の保護基板用ウェハー130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハー130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハー110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドとする。
(実施例1)
ここで、上述した製造方法によって、実施例1の圧電素子300を形成した。
(比較例1)
比較のため、図9(a)に示すように、第1電極60に第1金属酸化膜63を設けず、第2電極80に第2金属酸化膜81を設けずに、圧電素子を形成した。これにより、圧電体層70には、ランタン(La)及びニッケル(Ni)が拡散されないようにした。
(比較例2)
比較のため、図9(b)に示すように、第1電極60にランタンニッケル酸化物からなる第1金属酸化膜63を設け、第2電極80に第2金属酸化膜81を設けずに圧電素子を形成した。これにより、比較例2の圧電体層70は、第1電極60側に、主成分の圧電材料にランタン(La)及びニッケル(Ni)が拡散した第1圧電体部71と、第2電極80側に主成分の圧電材料にニッケル(Ni)のみが拡散した第2圧電体部72と、を有する。
(比較例3)
比較のため、図10に示すように、第2電極80に第2金属酸化膜81を設け、第1電極60に第1金属酸化膜63を設けずに圧電素子を形成した。これにより、圧電体層70は、第2電極80側に、主成分の圧電材料にランタン(La)及びニッケル(Ni)が拡散した第3圧電体部73と、第1電極60側に主成分の圧電材料にニッケル(Ni)のみが拡散した第2圧電体部72と、を有する。
(試験例)
これら実施例1及び比較例1〜3の圧電素子を繰り返し駆動して、変位量を測定した。この結果を変位量と変位低下率として図11に示す。また、圧電素子を繰り返し駆動した際の圧電素子が破壊した割合(破壊率)を測定した。この結果を図12に示す。なお、圧電素子の駆動は、50kHzのパルス(振幅35V)で行った。また、圧電素子の破壊率は、90個の圧電素子に対する破壊された圧電素子の数を測定した。
図11(a)及び(b)に示すように、実施例1及び比較例2の圧電素子は、比較例1及び3の圧電素子に比べて初期の変位量が高い。また、圧電素子を繰り返し駆動した後の変位低下率(変位低下量)は、実施例1及び比較例3が小さく、比較例1及び2が大きくなった。
また、図12に示すように、比較例1及び比較例3の圧電素子は、繰り返し駆動した後に圧電素子の破壊が生じ、特に比較例3の圧電素子は破壊率が高くなった。
この結果から分かるように、実施例1の圧電素子は、駆動の初期において変位量が高く、繰り返し駆動を行っても変位量の低下が少なく(変位低下率が小さく)、繰り返し駆動を行っても破壊され難い信頼性の高いものである。
また、このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図13は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図13に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
また、上述したインクジェット式記録装置IIでは、インクジェット式記録ヘッド(記録ヘッドユニット1A、1B)がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッドIが固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
(実施形態2)
以下、本発明の一実施形態である超音波センサーについて説明する。なお、以下の説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であることとは限らない。また、上述した実施形態1と同一の部材には同一の符号をつけて重複する説明は省略する。
本実施形態においては、超音波の発信と受信は圧電効果を利用する電気音響変更器を用いて行われる。係る電気音響変換器は、圧電素子であり、超音波発信時には電気エネルギーを機械エネルギーに変換(逆圧電効果)を利用し、圧電体層の収縮と伸長による変化は、振動板を振動させるように励起させることによって超音波を発信する。従ってこの場合は、圧電素子は発信用超音波トランスデューサーである。
更に被検出体から反射された超音波を受信するには機械エネルギーを電気エネルギーに変換(正圧電効果)を利用し、圧電体層の変形によって電気エネルギーが生成され、電気エネルギーの信号を検出する。従ってこの場合は、圧電素子は受信用超音波トランスデューサーである。
なお、本実施形態においては、圧電素子(超音波トランスデューサー)とは、振動板と、振動板上に設けられた第1電極と、第1電極上に設けられた圧電体層と、圧電体層上に設けられた第2電極と、を具備するものである。なお、第1電極を振動板として使用することも可能である。
図14は、本発明の実施形態2に係る超音波トランスデューサーを搭載する超音波デバイスの平面図及びそのC−C′線断面図である。
図14(a)に示すように、複数の発信用超音波トランスデューサー301と受信用超音波トランスデューサー302とが基板開口部12を有する基板10上にアレイ状に設けられ、超音波デバイス200(アレイセンサー)を成している。複数の発信用超音波トランスデューサー301及び複数の受信用超音波トランスデューサー302を列ごとに交互に配置し、トランスデューサーの列ごとに通電は切り替えられる。こうした通電の切り替えに応じてラインスキャンやセクタースキャンは実現される。また、通電するトランスデューサーの個数と列数とに応じて超音波の出力と入力のレベルが決定される。図中では省略されて6行×6列が描かれる。配列の行数と列数はスキャンの範囲の広がりに応じて決定される。
なお、発信用超音波トランスデューサー301と受信用超音波トランスデューサー302とをトランスデューサーごとに交互に配置することも可能である。この場合は、発信側と受信側の中心軸を合わせた超音波発信・受信源とすることで発信・受信の指向角を合わせ易いものとする。
また、本実施形態は、デバイスの小型化のため、一枚の基板10上に発信用超音波トランスデューサー301と受信用超音波トランスデューサー302との両方を配置したが、超音波トランスデューサーの機能に応じて発信用超音波トランスデューサー301と受信用超音波トランスデューサー302とはそれぞれ独立の基板上に配置するか、或いは用途に応じて複数枚の基板を用いることも可能である。更に発信と受信の時間差を利用して一つの超音波トランスデューサーに発信と受信との機能を両方備えることも可能である。
図14(b)において、超音波変換器として使用可能な実施例としては、例えば、基板10は(100)、(110)或いは(111)配向を有する単結晶シリコンによって構成される。または、シリコン材料以外にもZrOあるいはAlを代表とするセラミック材料、ガラスセラミック材料、MgO、LaAlOのような酸化物基板材料、SiC、SiO、多結晶シリコン、Siのような無機材料も使用できる。または、これらの材料の組合せによる積層材料でもよい。
基板10の上方(圧電体層70側)に振動板50が形成されている。振動板50は基板10の一部を薄化して用いることは可能であるが、圧電体層70或いは第1電極60を用いてもよい。更に別の材料を用いて製膜することも可能である。この場合は、例えば、SiO、SiC、Siのようなシリコン化合物、多結晶シリコン、ZrO、Alのようなセラミック材料、MgO、LaAlO、TiOのような酸化物にしでもよい。膜厚と材料の選定は、共振周波数に基づき決定する。なお、圧電体層70側の振動板50の表面層は、圧電体層材料の拡散を防止できる材料、例えばZrOなどを用いることが好ましい。この場合は、圧電体層の圧電特性が向上させることによってトランスデューサーの発信と受信特性が向上にも繋がる。
基板10には、開口である基板開口部12が形成されている。基板開口部12は、基板材料に応じてエッチング、研磨、レーザー加工などの加工方法を用いて形成することができる。
第1電極60、圧電体層70及び第2電極80については上述した実施形態1と同様のため、構成の説明は省略する。なお、実施形態1に対して、超音波デバイスはインクジェット式記録ヘッドIに代表される液体噴射ヘッドに比べてより高周波数領域で駆動する必要が有るため、圧電体層70、振動板50と各電極材料の厚み及びヤング率などの物性値を調整してもよい。
さらに、発信用超音波トランスデューサー301と受信用超音波トランスデューサー302とにそれぞれ配線(図示略)が接続され、各配線はフレキシブルプリント基板(図示略)を介して制御基板(図示略)の端子部(図示略)に接続されている。制御基板には演算部、記憶部などからなる制御部(図示略)が設けられている。制御部は、発信用超音波トランスデューサー301に入力する入力信号を制御すると共に、受信用超音波トランスデューサー302から出力された出力信号を処理するように構成されている。
このように、本願の超音波デバイス200では、バルク型圧電体セラミックスなどを利用したセンサーに比べてMEMSの技術を用いて作成した圧電素子300を狭いピッチ(高分解能)で配置でき、且つ駆動電圧が低いため、デバイスと該デバイスを搭載する装置の小型化、薄型化と省エネルギー化に効果がある。また、圧電素子300間の製造ばらつきが少ないため、認識精度が高くなる効果もある。
また、圧電体層70の膜厚を薄くすることによって変位特性を向上させ、超音波の発信と受信の効率を向上できる効果が得られる。
さらに、本実施形態では、圧電体層70として第1圧電体部71、第2圧電体部72及び第3圧電体部73を有するものを用いることで、駆動の初期において変位量が高く、繰り返し駆動を行っても変位量の低下が少なく(変位低下率が小さく)、繰り返し駆動を行っても破壊され難い信頼性の高い超音波トランスデューサーを実現できる。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態では、第1電極60にランタンニッケル酸化物からなる第1金属酸化膜を設け、第1電極60上に圧電体層70を焼成により形成することで、第1金属酸化膜に含まれる成分を圧電体層70に拡散させて、第1圧電体部71及び第2圧電体部72を形成するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、圧電体膜75を形成する際に、予めランタン(La)やニッケル(Ni)等を含むように形成してもよい。つまり、圧電体層70をゾル−ゲル法によって形成する場合には、ランタン及びニッケルの何れか一方又は両方を添加したゾルを用いれば、第1圧電体部71、第2圧電体部72及び第3圧電体部73を容易に形成することができる。もちろん、圧電体層70は、ゾル−ゲル法に限定されず、スパッタリング法で形成する場合であっても、第1圧電体部71、第2圧電体部72及び第3圧電体部73毎に焼成を行えば、積層方向で組成の異なる圧電体層70を容易に形成することができる。
また、第2電極80に第2金属酸化膜81を設けない場合や、ポストアニール工程を行わない場合であっても同様に、圧電体層70を形成する際にニッケルやランタン等を添加すれば、第3圧電体部73(第2圧電体部72)を容易に形成することができる。もちろん、第1金属酸化膜63、第2金属酸化膜81の何れか一方を設け、これにより所望の材料が拡散されない部分の圧電体層70だけ、上述したようにランタンやニッケル等を添加するようにしてもよい。
なお、上記実施の形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドや超音波センサーに搭載される圧電素子に限られず、超音波モーター、圧力センサー、焦電センサー等他の装置に搭載される圧電素子にも適用することができる。また、本発明は強誘電体メモリー等の強誘電体素子にも同様に適用することができる。
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 II インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、基板開口部、 13 インク供給路、 14 連通路、 15 連通部、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 40 コンプライアンス基板、 50 振動板、 51 弾性膜、 52 絶縁体膜、 60 第1電極、 61 密着層、 62 導電層、 63 第1金属酸化膜、 70 圧電体層、 71 第1圧電体部、 72 第2圧電体部、 73 第3圧電体部、 80 第2電極、 81 第2金属酸化膜、 82 導電層、 90 リード電極、 100 マニホールド、 120 駆動回路、 200 超音波デバイス、 300 圧電素子、 301 発信用超音波トランスデューサー、 302 受信用超音波トランスデューサー

Claims (8)

  1. 第1電極、圧電体層、第2電極を有する圧電素子を具備し、
    前記圧電体層は、前記第1電極側から前記第2電極側に向かって共通する前記圧電材料で形成された第1圧電体部、第2圧電体部及び第3圧電体部を具備し、
    第1圧電体部及び第3圧電体部は前記圧電材料に加えてニッケル及びランタンを含み、
    第2圧電体部は前記圧電材料に加えてニッケルのみを含むことを特徴とする液体噴射ヘッド。
  2. 前記第1電極は、前記圧電体層側にランタンニッケル酸化物を主成分とする第1金属酸化膜を有することを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
  3. 前記第2電極は、前記圧電体層側にランタンニッケル酸化物を主成分とする第2金属酸化膜を有することを特徴とする請求項1又は2記載の液体噴射ヘッド。
  4. 前記圧電体層は、鉛、チタン及びジルコニウムを含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
  6. 第1電極、圧電体層及び第2電極が積層された圧電素子であって、
    前記圧電体層は、前記第1電極側から前記第2電極側に向かって共通する圧電材料で形成された第1圧電体部、第2圧電体部及び第3圧電体部を具備し、
    第1圧電体部及び第3圧電体部は前記圧電材料に加えてニッケル及びランタンを含み、
    第2圧電体部は前記圧電材料に加えてニッケルのみを含むことを特徴とする圧電素子。
  7. 請求項6記載の圧電素子を具備する超音波トランスデューサー。
  8. 開口を有する基板と、
    前記基板上に設けられた請求項7記載の超音波トランスデューサーと、
    を具備することを特徴とする超音波デバイス。
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