JP2010173197A - 液体噴射ヘッド、液体噴射装置、アクチュエーター装置及び液体噴射ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】酸化ジルコニウム層と第1電極との密着性を向上して、耐久性及び信頼性を向上した液体噴射ヘッド、液体噴射装置、アクチュエーター装置及び液体噴射ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】基板10上方に設けられた酸化ジルコニウムを主成分とする酸化ジルコニウム層55と、該酸化ジルコニウム層55上に設けられた第1電極60、該第1電極60上に設けられた圧電体層70及び該圧電体層70上に設けられた第2電極80を具備する圧電素子300と、を具備し、前記酸化ジルコニウム層55は、前記第1電極60側の表面粗さRaが2.0より大きく、且つRmaxが10nm以下である。
【選択図】 図2
【解決手段】基板10上方に設けられた酸化ジルコニウムを主成分とする酸化ジルコニウム層55と、該酸化ジルコニウム層55上に設けられた第1電極60、該第1電極60上に設けられた圧電体層70及び該圧電体層70上に設けられた第2電極80を具備する圧電素子300と、を具備し、前記酸化ジルコニウム層55は、前記第1電極60側の表面粗さRaが2.0より大きく、且つRmaxが10nm以下である。
【選択図】 図2
Description
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド、液体噴射装置、アクチュエーター装置及び液体噴射ヘッドの製造方法に関する。
ノズル開口に連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドには、例えば、下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子のたわみ変形を用いたものが実用化されている。
振動板として、酸化ジルコニウムからなる酸化ジルコニウム層を具備するものがある(例えば、特許文献1〜3参照)。
しかしながら、酸化ジルコニウムと第1電極との密着性が低いと、圧電素子を駆動して酸化ジルコニウム層を変形させた際に、酸化ジルコニウムと第1電極との剥離が生じてしまうという問題がある。
そして、特許文献1〜3では、酸化ジルコニウム層の表面粗さについての記載はあるものの、特許文献1〜3には、酸化ジルコニウム層と第1電極との密着性については全く記載されておらず、密着性を向上するために酸化ジルコニウム層の表面粗さを規定したものではない。
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに限定されず、他の装置に搭載されるアクチュエーター装置においても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、酸化ジルコニウム層と第1電極との密着性を向上して、耐久性及び信頼性を向上した液体噴射ヘッド、液体噴射装置、アクチュエーター装置及び液体噴射ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、基板上方に設けられた酸化ジルコニウムを主成分とする酸化ジルコニウム層と、該酸化ジルコニウム層上に設けられた第1電極、該第1電極上に設けられた圧電体層及び該圧電体層上に設けられた第2電極を具備する圧電素子と、を具備し、前記酸化ジルコニウム層は、前記第1電極側の表面粗さRaが2.0より大きく、且つRmaxが10nm以下であることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、酸化ジルコニウム層の表面粗さRaを規定することで、酸化ジルコニウム層と第1電極との密着性をアンカー効果によって向上して剥離が生じるのを抑制できる。また、酸化ジルコニウム層の表面粗さRmaxを規定することで、突起の根元となる第1電極との間にボイド等が発生するのを抑制して密着力を向上することができる。なお、ここで言う上方とは、直上も、間に他の部材が介在した状態も含むものである。
かかる態様では、酸化ジルコニウム層の表面粗さRaを規定することで、酸化ジルコニウム層と第1電極との密着性をアンカー効果によって向上して剥離が生じるのを抑制できる。また、酸化ジルコニウム層の表面粗さRmaxを規定することで、突起の根元となる第1電極との間にボイド等が発生するのを抑制して密着力を向上することができる。なお、ここで言う上方とは、直上も、間に他の部材が介在した状態も含むものである。
ここで、前記基板と前記酸化ジルコニウム層との間には、酸化シリコンを主成分とする酸化シリコン層が設けられていてもよい。
また、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、層間剥離を抑制して耐久性及び信頼性を向上した液体噴射装置を実現できる。
かかる態様では、層間剥離を抑制して耐久性及び信頼性を向上した液体噴射装置を実現できる。
さらに、本発明の他の態様は、基板上方に設けられた酸化ジルコニウムを主成分とする酸化ジルコニウム層と、該酸化ジルコニウム層上に設けられた第1電極、該第1電極上に設けられた圧電体層及び該圧電体層上に設けられた第2電極を具備する圧電素子と、を具備し、前記酸化ジルコニウム層の前記第1電極側の表面粗さRaが2.0より大きく、且つRmaxが10nm以下であることを特徴とするアクチュエーター装置にある。
かかる態様では、酸化ジルコニウム層の表面粗さRaを規定することで、酸化ジルコニウム層と第1電極との密着性をアンカー効果によって向上して剥離が生じるのを抑制できる。また、酸化ジルコニウム層の表面粗さRmaxを規定することで、突起の根元となる第1電極との間にボイド等が発生するのを抑制して密着力を向上することができる。
かかる態様では、酸化ジルコニウム層の表面粗さRaを規定することで、酸化ジルコニウム層と第1電極との密着性をアンカー効果によって向上して剥離が生じるのを抑制できる。また、酸化ジルコニウム層の表面粗さRmaxを規定することで、突起の根元となる第1電極との間にボイド等が発生するのを抑制して密着力を向上することができる。
また、本発明の他の態様は、基板上方に設けられた酸化ジルコニウムを主成分とする酸化ジルコニウム層と、該酸化ジルコニウム層上に設けられた第1電極、該第1電極上に設けられた圧電体層及び該圧電体層上に設けられた第2電極を具備する圧電素子と、を具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記基板の上方にジルコニウム層をスパッタリング法により形成するジルコニウム層形成工程と、該ジルコニウム層を熱酸化して酸化ジルコニウム層とする酸化ジルコニウム層形成工程とを具備し、前記ジルコニウム層形成工程が、前記ジルコニウム層を0.1Pa以上のチャンバー内圧力で、0.5kW/m2以上のパワー密度で形成することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる態様では、酸化ジルコニウム層の表面粗さRaを規定することで、酸化ジルコニウム層と第1電極との密着性をアンカー効果によって向上して剥離が生じるのを抑制できる。また、酸化ジルコニウム層の表面粗さRmaxを規定することで、突起の根元となる第1電極との間にボイド等が発生するのを抑制して密着力を向上することができる。
かかる態様では、酸化ジルコニウム層の表面粗さRaを規定することで、酸化ジルコニウム層と第1電極との密着性をアンカー効果によって向上して剥離が生じるのを抑制できる。また、酸化ジルコニウム層の表面粗さRmaxを規定することで、突起の根元となる第1電極との間にボイド等が発生するのを抑制して密着力を向上することができる。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図である。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図である。
本実施形態の流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には酸化シリコンを主成分とする酸化シリコン層として弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板のリザーバー部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバーの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。なお、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。
なお、本実施形態では、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられていることになる。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、酸化ジルコニウムを主成分とする酸化ジルコニウム層として絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80とが、積層形成されて、圧電素子300(本実施形態の圧力発生素子)を構成している。ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエーター装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び第1電極60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
絶縁体膜55は、上述のように酸化ジルコニウムを主成分とする本実施形態の酸化ジルコニウム層である。
絶縁体膜55は、その表面粗さRaが2.0nm以上で、且つ最大粗さRmaxが10nmより小さい。絶縁体膜55の表面粗さRaを2.0nm以上とすることで、絶縁体膜55上に形成される第1電極60を、アンカー効果により密着性を高めることができ、第1電極60と絶縁体膜55との間で層間剥離が発生するのを抑制することができる。
また、絶縁体膜55の最大粗さRmaxを10nmより小さくすることで、絶縁体膜55と第1電極60との密着性を向上して、層間剥離が発生するのを抑制することができる。すなわち、図3に示すように、絶縁体膜55の最大粗さが10nm以上となる大きな突起が存在すると、その上の第1電極60との間の突起の根元にボイドのような異常が生じ易く、ボイドのような異常が生じると絶縁体膜55と第1電極60との間の密着性を低下して剥離し易くなってしまう。
このように、絶縁体膜55と第1電極60との剥離を抑制することで、耐電圧を高くすることができ、耐久性及び信頼性に優れたアクチュエーター装置とすることができる。
ちなみに、本実施形態で言う酸化ジルコニウムとは、ジルコニウムと酸素とが結合したZrO2などの既知の化合物や、酸化ジルコニウム、ジルコニウム及び酸素の混合状態を言い、絶縁体膜55は、酸化ジルコニウムを主成分としていれば、その他の元素を含有するものであってもよい。
圧電体層70は、第1電極60上に形成される電気機械変換作用を示す圧電材料、特に圧電材料の中でも一般式ABO3で示されるペロブスカイト構造を有する金属酸化物からなる。圧電体層70としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等が好適である。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等を用いることができる。
圧電体層70の厚さについては、製造工程でクラックが発生しない程度に厚さを抑え、且つ十分な変位特性を呈する程度に厚く形成する。例えば、本実施形態では、圧電体層70を1〜5μm前後の厚さで形成した。
また、圧電素子300の個別電極である各第2電極80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、絶縁体膜55及びリード電極90上には、リザーバー100の少なくとも一部を構成するリザーバー部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このリザーバー部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバー100を構成している。また、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、リザーバー部31のみをリザーバーとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、絶縁体膜55等)にリザーバーと各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってリザーバー部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のリザーバー100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバー100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部のインク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、リザーバー100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、第1電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
以下、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図4〜図7を参照して説明する。なお、図4〜図7は、本発明の実施形態に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す圧力発生室の長手方向の断面図である。
まず、図4(a)に示すように、シリコンウェハーであり流路形成基板10が複数一体的に形成される流路形成基板用ウェハー110の表面に弾性膜50を構成する酸化膜51を形成する。本実施形態では、流路形成基板用ウェハー110を熱酸化することにより、二酸化シリコンからなる酸化膜51を形成した。
次に、弾性膜50(酸化膜51)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。具体的には、図4(b)に示すように、弾性膜50上に、スパッタリング法によりジルコニウムを主成分とするジルコニウム層155を形成後、図4(c)に示すように、このジルコニウム層155を、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化することにより酸化ジルコニウムを主成分とする絶縁体膜55を形成することができる。そして、表面粗さ(Ra≧2nm、Rmax<10nm)の絶縁体膜55を形成するためには、ジルコニウム層155を形成するスパッタリング法において、スパッタリング装置のチャンバー内圧力を0.1Pa以上、パワー密度を0.5kW/m2以上とすることが好ましい。ジルコニウム層155を形成する際のチャンバー内圧力及びパワー密度が小さいと、その後に形成される絶縁体膜55の表面粗さRaが2.0nmよりも小さくなってしまうと共に、最大粗さRmaxが10nm以上となってしまうからである。
次に、図4(d)に示すように、絶縁体膜55上の全面に第1電極60を形成すると共に、所定形状にパターニングする。この第1電極60の材料は、特に限定されないが、圧電体層70としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いる場合には、酸化鉛の拡散による導電性の変化が少ない材料であることが望ましい。このため、第1電極60の材料としては白金、イリジウム等が好適に用いられる。また、第1電極60は、例えば、スパッタリング法やPVD法(物理蒸着法)などにより形成することができる。
このように第1電極60を形成した際に、下地となる絶縁体膜55は、その表面粗さRaが2.0nm以上となっているため、アンカー効果によって絶縁体膜55との密着性を高めることができる。
次に、図5(a)に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層70と、例えば、イリジウムからなる第2電極80とを流路形成基板用ウェハー110の全面に形成する。なお、圧電体層70の形成方法は、本実施形態では、金属有機物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成した。なお、圧電体層70の形成方法は、特に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法、スパッタリング法又はレーザーアブレーション法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法等を用いてもよい。
次に、図5(b)に示すように、第2電極80及び圧電体層70を同時にエッチングすることにより各圧力発生室12に対応する領域に圧電素子300を形成する。ここで、第2電極80及び圧電体層70のエッチングは、例えば、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングが挙げられる。
次に、図5(c)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の全面に亘って金(Au)からなるリード電極90を形成後、各圧電素子300毎にパターニングする。
次に、図6(a)に示すように、保護基板用ウェハー130を、流路形成基板用ウェハー110上に接着剤35を介して接着する。ここで、この保護基板用ウェハー130は、保護基板30が複数一体的に形成されたものであり、保護基板用ウェハー130には、リザーバー部31及び圧電素子保持部32が予め形成されている。保護基板用ウェハー130を接合することによって流路形成基板用ウェハー110の剛性は著しく向上することになる。
次いで、図6(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110を所定の厚みに薄くする。
次いで、図6(c)に示すように、流路形成基板用ウェハー110上にマスク52を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図7に示すように、流路形成基板用ウェハー110をマスク52を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウェハー110表面のマスク52を除去し、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハー110の保護基板用ウェハー130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハー130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハー110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドとする。
以上説明したように、本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドIの製造方法では、弾性膜50上にジルコニウムを主成分とするジルコニウム層155を形成後、このジルコニウム層155を加熱することにより熱酸化させて絶縁体膜55を形成することで、絶縁体膜55の表面を所望の表面粗さ(Ra,Rmax)とすることができる。これにより、絶縁体膜55と第1電極60との密着性をアンカー効果及び絶縁体膜55の突起の根元となる第1の電極60にボイド等の発生を防止することで向上することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生素子として、薄膜型の圧電素子300を有するアクチュエーター装置を用いて説明したが、特にこれに限定されず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型のアクチュエーター装置や、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型のアクチュエーター装置などを使用することができる。また、圧力発生素子として、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生素子として、薄膜型の圧電素子300を有するアクチュエーター装置を用いて説明したが、特にこれに限定されず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型のアクチュエーター装置や、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型のアクチュエーター装置などを使用することができる。また、圧力発生素子として、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
また、例えば、上述した実施形態1では、流路形成基板10としてシリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、結晶面方位が(100)面、(110)面等のシリコン単結晶基板を用いるようにしてもよく、また、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
また、これらのインクジェット式記録ヘッドIは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図8は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図8に示すインクジェット式記録装置IIにおいて、インクジェット式記録ヘッドIを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
また、上述した実施形態1では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
さらに、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載されるアクチュエーター装置に限られず、他の装置に搭載されるアクチュエーター装置にも適用することができる。
1 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 10 流路形成基板(基板)、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 15 連通路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板(結晶基板)、 31 リザーバー部、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜(酸化シリコン層)、 55 絶縁体膜(酸化ジルコニウム層)、 60 第1電極、 70 圧電体層、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 リザーバー、 120 駆動回路、 300 圧電素子
Claims (5)
- 基板上方に設けられた酸化ジルコニウムを主成分とする酸化ジルコニウム層と、該酸化ジルコニウム層上に設けられた第1電極、該第1電極上に設けられた圧電体層及び該圧電体層上に設けられた第2電極を具備する圧電素子と、を具備し、
前記酸化ジルコニウム層は、前記第1電極側の表面粗さRaが2.0より大きく、且つRmaxが10nm以下であることを特徴とする液体噴射ヘッド。 - 前記基板と前記酸化ジルコニウム層との間には、酸化シリコンを主成分とする酸化シリコン層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
- 請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
- 基板上方に設けられた酸化ジルコニウムを主成分とする酸化ジルコニウム層と、該酸化ジルコニウム層上に設けられた第1電極、該第1電極上に設けられた圧電体層及び該圧電体層上に設けられた第2電極を具備する圧電素子と、を具備し、
前記酸化ジルコニウム層の前記第1電極側の表面粗さRaが2.0より大きく、且つRmaxが10nm以下であることを特徴とするアクチュエーター装置。 - 基板上方に設けられた酸化ジルコニウムを主成分とする酸化ジルコニウム層と、該酸化ジルコニウム層上に設けられた第1電極、該第1電極上に設けられた圧電体層及び該圧電体層上に設けられた第2電極を具備する圧電素子と、を具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記基板の上方にジルコニウム層をスパッタリング法により形成するジルコニウム層形成工程と、該ジルコニウム層を熱酸化して酸化ジルコニウム層とする酸化ジルコニウム層形成工程とを具備し、
前記ジルコニウム層形成工程が、前記ジルコニウム層を0.1Pa以上のチャンバー内圧力で、0.5kW/m2以上のパワー密度で形成することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
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2009
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