JP2009061729A - 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】振動板の破壊を抑制して耐久性及び信頼性を向上することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体を噴射するノズル開口21に連通する圧力発生室12が設けられた流路形成基板10と、該流路形成基板10の一方面側に振動板を介して設けられた圧力発生素子300とを具備し、前記振動板が、前記圧力発生室12側に設けられた第1の膜50と、前記圧力発生素子300側に設けられた第2の膜51と、前記第1の膜50と第2の膜51との間に設けられて、当該第1の膜50及び第2の膜51よりも熱膨張係数が大きな材料からなる応力付与層52とで構成されている。
【選択図】図3
【解決手段】液体を噴射するノズル開口21に連通する圧力発生室12が設けられた流路形成基板10と、該流路形成基板10の一方面側に振動板を介して設けられた圧力発生素子300とを具備し、前記振動板が、前記圧力発生室12側に設けられた第1の膜50と、前記圧力発生素子300側に設けられた第2の膜51と、前記第1の膜50と第2の膜51との間に設けられて、当該第1の膜50及び第2の膜51よりも熱膨張係数が大きな材料からなる応力付与層52とで構成されている。
【選択図】図3
Description
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に、液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッドとしては、例えば、ノズル開口に連通する圧力発生室が設けられた流路形成基板と、この流路形成基板の一方面側に二酸化シリコン膜と酸化ジルコニウム膜とで構成される振動板を介して形成された圧電素子とを具備するものがある(例えば、特許文献1参照)。
そして、特許文献1では、振動板を構成する二酸化シリコン膜は、シリコン単結晶基板からなる流路形成基板を熱酸化することにより形成され、二酸化ジルコニウム膜はスパッタリング法により形成されている。
しかしながら、振動板は、内部応力が引っ張り応力となっているため、振動板を変異させた際にクラックが発生し易いと共に、振動板にクラック等が発生した際に自身の引っ張り応力によりクラックが進展してしまうという問題がある。
なお、このような問題は、インクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の他の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、振動板の破壊を抑制して耐久性及び信頼性を向上することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が設けられた流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられた圧力発生素子とを具備し、前記振動板が、前記圧力発生室側に設けられた第1の膜と、前記圧力発生素子側に設けられた第2の膜と、前記第1の膜と第2の膜との間に設けられて、当該第1の膜及び第2の膜よりも熱膨張係数が大きな材料からなる応力付与層とで構成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、振動板の形成時や圧電素子の形成時、並びに圧電素子の駆動時などに振動板が加熱されて熱膨張し、その後冷却されることによって収縮した際に、応力付与層が振動板に圧縮応力を付与することができる。したがって、応力付与層が振動板の内部応力を圧縮応力にして、振動板を変位させた際にクラックが発生したとしても、クラックが進展することがなく、耐久性及び信頼性を向上することができる。
かかる態様では、振動板の形成時や圧電素子の形成時、並びに圧電素子の駆動時などに振動板が加熱されて熱膨張し、その後冷却されることによって収縮した際に、応力付与層が振動板に圧縮応力を付与することができる。したがって、応力付与層が振動板の内部応力を圧縮応力にして、振動板を変位させた際にクラックが発生したとしても、クラックが進展することがなく、耐久性及び信頼性を向上することができる。
ここで、前記第1の膜及び前記第2の膜が、熱酸化膜であることが好ましい。これによれば、第1の膜及び第2の膜を熱酸化により形成するため、振動板の形成時に加熱されることによって、熱膨張し、その後冷却されることによって収縮した際に、応力付与層が振動板に圧縮応力を付与することができる。
また、前記第1の膜及び前記第2の膜が、酸化シリコン又は金属酸化物を主成分とすることが好ましい。これによれば、振動板上に圧電素子を高精度に形成することができると共に、流路形成基板に圧力発生室を異方性エッチングにより高精度に形成することができる。
また、前記応力付与層が、シリコンを主成分とする材料であることが好ましい。これによれば、シリコンを主成分とする応力付与層によって、振動板に圧縮応力を確実に付与することができる。
また、前記応力付与層が、シリコンにボロンがドープされたものであることが好ましい。これによれば、応力付与層を容易に形成することができると共に、流路形成基板に圧力発生室等を異方性エッチングで形成する際に応力付与層をエッチングストップ層として利用できるため、応力付与層及び圧力発生室等を高精度に形成することができる。
また、前記流路形成基板がシリコン単結晶基板からなると共に、前記応力付与層が前記流路形成基板と一体的に設けられていることが好ましい。製造工程を煩雑にすることなく、液体噴射ヘッドを容易に形成することができる。
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、耐久性及び信頼性を向上した液体噴射装置を実現できる。
かかる態様では、耐久性及び信頼性を向上した液体噴射装置を実現できる。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図であり、図3は、図2(b)のB−B′断面図である。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図であり、図3は、図2(b)のB−B′断面図である。
図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、一方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁によって区画された圧力発生室12がその幅方向(短手方向)に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向一端部側には、インク供給路14と連通路15とが隔壁によって区画されている。また、連通路15の一端には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバ100の一部を構成する連通部13が形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられている。
インク供給路14は、圧力発生室12の長手方向一端部側に連通し且つ圧力発生室12より小さい断面積を有する。例えば、本実施形態では、インク供給路14は、リザーバ100と各圧力発生室12との間の圧力発生室12側の流路を幅方向に絞ることで、圧力発生室12の幅より小さい幅で形成されている。
すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12と、圧力発生室12の短手方向の断面積より小さい断面積を有するインク供給路14と、このインク供給路14に連通すると共にインク供給路14の短手方向の断面積よりも大きい断面積を有する連通路15とが複数の隔壁により区画されて設けられている。
また、流路形成基板10の圧力発生室12が開口する面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.01〜1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜4.5[×10-6/℃]であるガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又はステンレス鋼などからなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側の面には、圧力発生室12側に、第1の膜50が形成され、この第1の膜50上に応力付与層52が形成されている。また、応力付与層52上には、第2の膜51が形成されている。すなわち、本実施形態では、第1の膜50と、第2の膜51との間に応力付与層52が設けられていることになる。
そして、第2の膜51上には、厚さが約0.4μmの絶縁体膜53が形成されている。さらに、この絶縁体膜53上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1.1μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部320という。本実施形態では、下電極膜60を複数の圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を各圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室12毎に圧電体能動部320が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300を所定の基板上(流路形成基板10上)に設け、当該圧電素子300を駆動させた装置をアクチュエータ装置と称する。なお、上述した例では、第1の膜50、応力付与層52、第2の膜51及び絶縁体膜53が振動板として作用する。
ここで、振動板を構成する第1の膜50及び第2の膜51の材料としては、例えば、酸化物、窒化物、セラミック系材料を用いることができる。なお、第1の膜50及び第2の膜51は、熱酸化膜であることが好ましい。これは、詳しくは後述するが、第1の膜50及び第2の膜51を形成する際の熱によって振動板が熱膨張し、その後冷却されることによって収縮した際に、応力付与層52が振動板に圧縮応力を付与することができるからである。ちなみに、第1の膜50及び第2の膜51として利用できる熱酸化物としては、例えば、酸化シリコン又は酸化金属が挙げられる。酸化金属としては、例えば、酸化タンタル、酸化ジルコニウム等が挙げられる。本実施形態では、二酸化シリコン(SiO2)からなる第1の膜50及び第2の膜51をそれぞれ400〜600nmの厚さで形成した。なお、第1の膜50及び第2の膜51は、例えば、スパッタリング法、CVD法又は熱酸化により形成することができるが、特に第1の膜50を圧電素子300が形成された後に形成する場合、圧電体層70の焼成温度よりも低い温度で形成するのが好ましい。
このような第1の膜50と第2の膜51との間に設けられた応力付与層52は、第1の膜50及び第2の膜51よりも熱膨張係数の大きい材料からなる。応力付与層52の材料としては、例えば、シリコンやボロンをドープしたシリコンなどが挙げられる。本実施形態では、応力付与層52として、流路形成基板10と同一材料のシリコンを用いて、流路形成基板10と連続するように設けた。
このような応力付与層52は、詳しくは後述するが厚く設けることで振動板に付与する応力を増大させることができる。また、応力付与層52として、第1の膜50及び第2の膜51よりもヤング率の高い材料、本実施形態では、二酸化シリコンよりもヤング率の高いシリコンを用いているため、応力付与層52を厚く設けると振動板の変位低下が生じてしまう。したがって、応力付与層52の厚さは、振動板に付与する応力及び振動板の変位低下を考慮して適宜選択するのが好ましく、本実施形態では、例えば、80〜130nmで形成した。
なお、本実施形態では、第1の膜50、第2の膜51、応力付与層52及び絶縁体膜53からなる振動板を設けたが、振動板の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、絶縁体膜53を設けないようにしてもよく、また、これら以外の膜を設けるようにしてもよい。
また、応力付与層52を流路形成基板10と連続して設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、応力付与層52と流路形成基板10とが不連続となるように設けてもよく、流路形成基板10とは異なる材料を用いるようにしてもよい。
このように、振動板として、第1の膜50及び第2の膜51を設け、これらの間に応力付与層52を設けるようにしたため、振動板は、振動板を形成する際や圧電素子の駆動時などに発生する熱によって加熱されて熱膨張し、その後冷却されることによって収縮した際に、応力付与層52が振動板に圧縮応力を付与することができる。すなわち、応力付与層52は、第1の膜50及び第2の膜51に比べて熱膨張係数が大きな材料からなるため、振動板が冷却された際に、応力付与層52が収縮する量は、第1の膜50及び第2の膜51の収縮量に比べて大きくなる。したがって、冷却時に応力付与層52が第1の膜50及び第2の膜51を圧縮する方向に応力を付与して、振動板の内部応力を圧縮応力にすることができる。これにより、振動板を変位させた際にクラックが発生し難くすることができると共に、振動板を変位させた際にクラックが発生したとしても、クラックが進展することがなく、耐久性及び信頼性を向上することができる。
一方、圧電素子300を構成する圧電体層70は、下電極膜60上に形成される電気機械変換作用を示す強誘電性セラミックス材料からなるペロブスカイト構造の結晶膜である。圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等が好適である。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等を用いることができる。圧電体層70の厚さについては、製造工程でクラックが発生しない程度に厚さを抑え、且つ十分な変位特性を呈する程度に厚く形成する。例えば、本実施形態では、圧電体層70を1〜2μm前後の厚さで形成した。
さらに、圧電素子300の個別電極である各上電極膜80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜53上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、下電極膜60、絶縁体膜53及びリード電極90上には、リザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部31を有する保護基板30が接着剤39を介して接合されている。このリザーバ部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、貫通孔33を挿通させたボンディングワイヤ等の導電性ワイヤからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料、すなわち、表面の結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板を用いて形成した。なお、保護基板30は、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料を用いることで、熱による変形を防止することができる。また、保護基板30として、結晶基板を用いることで、リザーバ部31及び圧電素子保持部32及び貫通孔33を異方性エッチングにより高精度に形成することができる。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、第1の膜50、第2の膜51、応力付与層52、絶縁体膜53、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
以下、このようなインクジェット式記録ヘッドIの製造方法について、図4〜図7を参照して説明する。なお、図4〜図7は、インクジェット式記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
まず、図4(a)に示すように、シリコン単結晶基板からなるシリコンウェハである流路形成基板用ウェハ110の表面に第2の膜51を形成する。本実施形態では、流路形成基板用ウェハ110を熱酸化することにより二酸化シリコンからなる第2の膜51を形成するようにした。なお、第2の膜51の形成方法は、特にこれに限定されず、例えば、スパッタリング法や蒸着法等を用いてもよい。
次に、図4(b)に示すように、第2の膜51上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜53を形成する。
次いで、図4(c)に示すように、例えば、白金(Pt)とイリジウム(Ir)とを絶縁体膜53上に積層することにより下電極膜60を形成した後、この下電極膜60を所定形状にパターニングする。次に、図4(d)に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層70と、例えば、イリジウムからなる上電極膜80とを流路形成基板用ウェハ110の全面に形成した後、図5(a)に示すように、これら圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。
なお、圧電素子300を構成する圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電性材料や、これにニオブ、ニッケル、マグネシウム、ビスマス又はイットリウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等が用いられる。その組成は、圧電素子300の特性、用途等を考慮して適宜選択すればよい。また、圧電体層70の形成方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態では、金属有機物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成した。勿論、圧電体層70の形成方法は、ゾル−ゲル法に限定されるものではなく、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法、スパッタリング法又はレーザーアブレーション法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法等を用いてもよい。
次に、図5(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の全面に亘って金(Au)からなるリード電極90を形成後、各圧電素子300毎にパターニングする。
次に、図5(c)に示すように、保護基板用ウェハ130を、流路形成基板用ウェハ110上に接着剤35によって接着する。ここで、この保護基板用ウェハ130には、リザーバ部31及び圧電素子保持部32が予め形成されている。このように保護基板用ウェハ130を接合することによって流路形成基板用ウェハ110の剛性は著しく向上することになる。
次いで、図6(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110を所定の厚みに薄くする。次に、図6(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110上に新たなマスク54を形成し、所定形状にパターニングして開口部55を形成する。そして、図6(c)に示すように、このマスク54を介して流路形成基板用ウェハ110をKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、流路形成基板用ウェハ110の開口部55に対応する領域に圧力発生室12、インク供給路14、連通路15及び連通部13を形成する。
流路形成基板用ウェハ110のエッチングでは、流路形成基板用ウェハ110を厚さ方向に貫通することなく、第2の膜51側に所定の厚さでシリコンが残留するように行う。これにより、第2の膜51のエッチングされた面側には、シリコンからなる応力付与層52が形成される。すなわち、流路形成基板用ウェハ110をハーフエッチングすることにより流路形成基板用ウェハ110の一部で応力付与層52を形成する。なお、流路形成基板用ウェハ110のエッチング量の調整は、エッチング時間の調整により行うことができる。ちなみに、エッチング液の濃度を調整することで、流路形成基板用ウェハ110のエッチング量をエッチング時間により高精度に制御することができる。
また、応力付与層52として、ボロンがドープされたシリコンを用いる場合には、例えば、第2の膜51を形成する前に、流路形成基板用ウェハ110にボロンをドープすればよい。そして、ボロンがドープされたシリコンからなる応力付与層52は、流路形成基板用ウェハ110を異方性エッチングした際に、エッチングストップ層として機能するため、流路形成基板用ウェハ110のエッチング時間を調整することなく応力付与層52の厚さを高精度に制御することができる。
次に、図7に示すように、マスク54を除去した後、応力付与層52の第2の膜51とは反対側の面に第1の膜50を形成する。本実施形態では、流路形成基板用ウェハ110の圧力発生室12等が開口する面側から酸化シリコンをスパッタリング法により形成することにより、流路形成基板用ウェハ110の内面及び開口面に亘って第1の膜50を形成した。
なお、第1の膜50の形成方法は、特にこれに限定されず、例えば、応力付与層52を予め厚く形成し、その後、流路形成基板用ウェハ110を熱酸化することで、応力付与層52の表面に第1の膜50を形成するようにしてもよい。もちろん、第1の膜50をその他の方法、例えば、蒸着法等で形成するようにしてもよい。
このように第1の膜50を流路形成基板用ウェハ110の圧力発生室12等の液体流路の内面にも形成することによって、第1の膜50は、流路形成基板10をインクから保護する保護膜としても機能する。
その後は、流路形成基板用ウェハ110及び保護基板用ウェハ130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110の保護基板用ウェハ130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、これら流路形成基板用ウェハ110を、図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10毎に分割することによって上述した構造のインクジェット式記録ヘッド1が製造される。
(実施形態2)
図8は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの要部を示す断面図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図8は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの要部を示す断面図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図8に示すように、流路形成基板10の振動板として、第1の膜50A、第2の膜51及び応力付与層52Aが形成されている。
第1の膜50Aは、例えば、酸化シリコンや酸化タンタル、酸化ジルコニウム等の酸化金属からなり、流路形成基板10の圧電素子300側の面に亘って設けられている。すなわち、本実施形態の第1の膜50Aは、流路形成基板10の液体流路の側面に設けられていない。
また、応力付与層52Aは、流路形成基板10とは別体で設けられたシリコン又はボロンがドープされたシリコンからなる。
このような構成としても、応力付与層52Aによって振動板に圧縮応力を付与して、その内部応力を圧縮応力にすることができるため、振動板を変位させた際にクラックが発生したとしても、クラックが進展することがなく、耐久性及び信頼性を向上することができる。
ここで、このようなインクジェット式記録ヘッドIの製造方法について詳細に説明する。なお、図9〜図10は、本発明の実施形態2に係るインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
まず、図9(a)に示すように、母材200の表面に第1の膜50Aを形成する。本実施形態では、母材200としてシリコン単結晶基板を用いて、母材200を熱酸化することでその表面に第1の膜50Aを形成するようにした。
なお、第1の膜50Aの形成方法については、特にこれに限定されず、第1の膜50Aを母材200上にスパッタリング法や蒸着法等により形成してもよい。もちろん、母材200の材料についても上述したものに限定されるものではない。また、本実施形態では、第1の膜50Aを母材200上に形成したが、第1の膜50Aを直接流路形成基板用ウェハ110上に形成するようにしてもよい。
次に、図9(b)に示すように、シリコン単結晶基板であるシリコンウェハからなる流路形成基板用ウェハ110の一方面に第1の膜50Aを接合する。このとき、第1の膜50Aを母材200と共に接合することで、厚さの薄い第1の膜50Aを破壊することなく、流路形成基板用ウェハ110に容易に接合することができる。なお、第1の膜50Aと流路形成基板用ウェハ110との接合は、例えば、直接接合や陽極接合などが挙げられる。
そして、本実施形態では、母材200として、シリコン単結晶基板を用いたため、流路形成基板用ウェハ110に第1の膜50Aを接合した後、母材200の第1の膜50Aと、応力付与層52Aとなる部分以外の余分な領域を除去する。このとき、母材200を第1の膜50A及び応力付与層52Aとなる領域から切り離すことで、後の工程で、母材200を再利用することができる。
次に、図9(c)に示すように、母材200の表面に第2の膜51を形成する。この母材200としては、上述した第1の膜50A及び応力付与層52Aを形成した際に切り離したものを用いることでコストを低減することができる。もちろん、新たな母材を用いるようにしてもよい。
本実施形態では、第2の膜51は、母材200を熱酸化することでその表面に酸化シリコンからなる第2の膜51を形成するようにした。なお、第2の膜51の形成方法及び母材200の材料は、上述した第1の膜50Aと同様にこれに限定されるものではない。また、第2の膜51は、例えば、応力付与層52Aの表面に直接、熱酸化やスパッタリング法等により形成するようにしてもよい。
次に、図9(d)に示すように、流路形成基板用ウェハ110に形成された応力付与層52A上に第2の膜51を接合し、母材200の第2の膜51以外の領域を除去する。これにより、流路形成基板用ウェハ110の一方面側には、第1の膜50A、応力付与層52A及び第2の膜51からなる振動板が形成される。
その後は、上述した実施形態1と同様に、第2の膜51上に絶縁体膜53、圧電素子300及びリード電極90を形成後、流路形成基板用ウェハ110に保護基板用ウェハ130を接合する。
そして、流路形成基板用ウェハ110上に新たなマスク54を形成し、所定形状にパターニングして開口部55を形成した後、図10に示すように、このマスク54を介して流路形成基板用ウェハ110をKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、流路形成基板用ウェハ110の開口部55に対応する領域に圧力発生室12、インク供給路14、連通路15及び連通部13を形成する。
このとき、流路形成基板用ウェハ110には、第1の膜50A及び応力付与層52Aが予め形成されているため、流路形成基板用ウェハ110を厚さ方向に貫通するまでエッチングすることができる。すなわち、本実施形態では、第1の膜50Aがエッチングストップ層として機能する。その後の工程は、上述した実施形態1と同様であるため重複する説明は省略する。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、インクジェット式記録ヘッドの基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1及び2では、振動板として、第1の膜50、50A、応力付与層52、52A、第2の膜51及び絶縁体膜53を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、絶縁体膜53を設けないようにしてもよく、また、その他の膜を形成するようにしてもよい。例えば、上述した実施形態2では、圧力発生室12等の液体流路の側面に第1の膜50Aが形成されていないため、流路形成基板10の内面に亘って、耐インク性を有する保護膜を設けるようにしてもよい。保護膜としては、例えば、シリコン酸化膜や酸化タンタルなどの酸化金属が挙げられる。なお、このような保護膜は、振動板の圧力発生室12側の面にも形成されるため、保護膜が振動板の一部を構成するようにしてもよい。
以上、本発明の各実施形態を説明したが、インクジェット式記録ヘッドの基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1及び2では、振動板として、第1の膜50、50A、応力付与層52、52A、第2の膜51及び絶縁体膜53を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、絶縁体膜53を設けないようにしてもよく、また、その他の膜を形成するようにしてもよい。例えば、上述した実施形態2では、圧力発生室12等の液体流路の側面に第1の膜50Aが形成されていないため、流路形成基板10の内面に亘って、耐インク性を有する保護膜を設けるようにしてもよい。保護膜としては、例えば、シリコン酸化膜や酸化タンタルなどの酸化金属が挙げられる。なお、このような保護膜は、振動板の圧力発生室12側の面にも形成されるため、保護膜が振動板の一部を構成するようにしてもよい。
また、上述した実施形態1及び2では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生素子として、薄膜型の圧電素子300を有するアクチュエータ装置を用いて説明したが、特にこれに限定されず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型のアクチュエータ装置や、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型のアクチュエータ装置などを使用することができる。また、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエータなどを使用することができる。いずれにしても、圧力発生室12の一方面を画成する振動板と、振動板を変位させて圧力発生室12の体積を変化させることにより、内部に圧力変化を生じさせてインクを吐出させる圧力発生素子を有するインクジェット式記録ヘッドに本発明は適用できる。
なお、このようなインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図11は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。図11に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8上を搬送されるようになっている。
なお、上述した例では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 II インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 15 連通路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 リザーバ部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、 50、50A 第1の膜、 51 第2の膜、 52、52A 応力付与層、 60 下電極膜、 70 圧電体層、 80 上電極膜、 90 リード電極、 100 リザーバ、 120 駆動回路、 121 接続配線、 300 圧電素子、 320 圧電体能動部
Claims (7)
- 液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が設けられた流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられた圧力発生素子とを具備し、
前記振動板が、前記圧力発生室側に設けられた第1の膜と、前記圧力発生素子側に設けられた第2の膜と、前記第1の膜と第2の膜との間に設けられて、当該第1の膜及び第2の膜よりも熱膨張係数が大きな材料からなる応力付与層とで構成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。 - 前記第1の膜及び前記第2の膜が、熱酸化膜であることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
- 前記第1の膜及び前記第2の膜が、酸化シリコン又は金属酸化物を主成分とすることを特徴とする請求項1又は2記載の液体噴射ヘッド。
- 前記応力付与層が、シリコンを主成分とすることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
- 前記応力付与層が、シリコンにボロンがドープされたものであることを特徴とする請求項4記載の液体噴射ヘッド。
- 前記流路形成基板がシリコン単結晶基板からなると共に、前記応力付与層が前記流路形成基板と一体的に設けられていることを特徴とする請求項4又は5記載の液体噴射ヘッド。
- 請求項1〜6の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
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JP2010253692A (ja) * | 2009-04-21 | 2010-11-11 | Konica Minolta Holdings Inc | インクジェットヘッド及びその製造方法 |
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2007
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