JP2015204216A - 燃料電池用電極触媒、及び燃料電池用電極触媒の製造方法 - Google Patents

燃料電池用電極触媒、及び燃料電池用電極触媒の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】燃料電池用電極触媒において、高い質量活性と高い耐久性とを両立する手段を提供する。【解決手段】本発明は、カーボン担体と、該カーボン担体に担持された白金及び白金合金から選択される触媒金属とを含み、該カーボン担体が5.0 nm以上の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)及び95〜170 m2/gの範囲の比表面積を有し、該触媒金属が4.5 nm以下の白金の(220)面の結晶子径を有する燃料電池用電極触媒に関する。本発明はまた、前記燃料電池用電極触媒の製造方法に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、燃料電池用電極触媒及びその製造方法に関する。
燃料電池は、水素及び酸素を電気化学的に反応させて電力を得る。燃料電池の発電に伴って生じる生成物は、原理的に水のみである。それ故、地球環境への負荷がほとんどない、クリーンな発電システムとして注目されている。
燃料電池は、アノード(燃料極)側に水素を含む燃料ガスを、カソード(空気極)側に酸素を含む酸化ガスを、それぞれ供給することにより、起電力を得る。ここで、アノード側では下記の(1)式に示す酸化反応が、カソード側では下記の(2)式に示す還元反応が進行し、全体として(3)式に示す反応が進行して外部回路に起電力を供給する。
H2→2H++2e- (1)
(1/2)O2+2H++2e-→H2O (2)
H2+(1/2)O2→H2O (3)
燃料電池は、電解質の種類によって、固体高分子型(PEFC)、リン酸型(PAFC)、溶融炭酸塩型(MCFC)及び固体酸化物型(SOFC)等に分類される。このうち、PEFC及びPAFCにおいては、カーボン担体等の導電性の担体と、該導電性の担体に担持された白金又は白金合金等の触媒活性を有する触媒金属の粒子とを有する電極触媒を使用することが一般的である。
燃料電池の運転条件下において、電極触媒のカーボン担体は、下記の(4)式に示す反応によって電気化学的に酸化される。当該酸化反応に伴い、カーボン担体を構成する炭素原子から変換された二酸化炭素は、該カーボン担体から離脱する。
C+2H2O→CO2+4H++4e- (4)
前記式(4)の反応の酸化還元電位は、約0.2 Vである。このため、燃料電池の運転条件下において、前記式(4)の反応は徐々に進行し得る。その結果、燃料電池を長期に亘って運転する場合、カーボン担体における炭素の減少に伴う電極の「痩せ」が観察される場合がある。電極の「痩せ」が発生すると、燃料電池の性能低下をもたらす可能性がある。
電極触媒に使用されるカーボン担体は、通常は、その表面に高比表面積、すなわち低結晶性のグラファイト構造を有する。高比表面積の表面には、触媒金属の粒子を高分散に担持し得る。それ故、高比表面積のカーボン担体を使用することにより、結果として得られる電極触媒の質量活性を向上し得る。また、前記式(4)の反応は、高結晶性のグラファイト構造の炭素において進行が抑制される。それ故、高結晶性のグラファイト構造を有するカーボン担体は、一般的に、前記(4)の酸化反応に対する耐久性が高い。
カーボン担体の比表面積を向上させるためには、該カーボン担体の表面構造を改変する必要がある。しかしながら、カーボン担体の表面構造を改変すると、該表面のグラファイト構造に乱れが生じ得る。すなわち、カーボン担体の比表面積を向上させることにより、結果として該カーボン担体の耐酸化性が低下し得る。このため、燃料電池用電極触媒として、高結晶性のカーボン担体を使用する技術が開発された。
例えば、特許文献1は、白金又は白金合金からなるカソード触媒、前記カソード触媒を担持する導電性炭素材料、及びプロトン伝導性の高分子電解質を含むカソード触媒層、並びに、アノード触媒、前記アノード触媒を担持する導電性炭素材料、及びプロトン伝導性の高分子電解質を含むアノード触媒層を記載する。当該文献は、前記カソード触媒層の導電性炭素材料として、黒鉛化処理されたカーボンブラックが含まれること、及び該カーボンブラックのBET表面積が100〜300 m2/gであることを記載する。
特許文献2は、[002]面の平均格子面間隔d002が0.337〜0.348 nm、結晶子の大きさLc(002)が3〜18 nm、且つ比表面積が70〜800 m2/gのカーボン担体に白金又は白金合金が担持された電極触媒を含むガス拡散電極と、イオン交換樹脂からなる電解質とを有することを特徴とする固体高分子型燃料電池を記載する。
特許文献3は、イオン交換膜と該イオン交換膜を介して対向するカソード及びアノードを有する固体高分子型燃料電池において、前記カソードはX線回折から算出される[002]面の平均格子面間隔d002が0.340〜0.362 nm、結晶子の大きさLcが0.6〜4 nm、且つ比表面積が260〜800 m2/gのカーボン担体に、白金又は白金合金が担持された電極触媒と、イオン交換樹脂とを含むことを特徴とする固体高分子型燃料電池を記載する。
特許文献4は、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の両側に配設された触媒層と、前記触媒層の外側に配設されたガス拡散層と、前記ガス拡散層の外側に配設されたセパレータと、を備え、カソード側となる前記触媒層は、X線回折から算出される〔002〕面の平均格子面間隔d002が0.343 nm〜0.358 nm、結晶子の大きさLcが3 nm〜10 nm、且つ、比表面積が200 m2/g〜300 m2/gである炭素から成る炭素担体と、前記炭素担体に担持された白金を含む触媒粒子と、電解質と、を含む固体高分子型燃料電池を記載する。
特許文献5は、カーボン結晶化度が57〜90%の高結晶性カーボン担体上に触媒金属を担持させたことを特徴とする燃料電池用電極触媒を記載する。当該文献は、前記高結晶性カーボンの結晶子サイズLcが2.3 nm以上であることを記載する。
特許文献6は、平均結晶子径が1〜4 nmである触媒金属粒子が、ラマン分光により測定されたD-バンドピーク強度ID及びG-バンドピーク強度IGの強度比R=ID/IGが0.9〜1.2である炭素材料に担持されてなることを特徴とする電極触媒を記載する。
国際公開第2005/106994号 特開2000-268828号公報 特開2001-357857号公報 特開2006-179463号公報 特開2010-102889号公報 特開2008-41253号公報
前記の通り、燃料電池用電極触媒として、高結晶性のカーボン担体を使用する技術が開発された。しかしながら、カーボン担体の耐酸化性を向上させることを目的として、カーボン担体の結晶性を向上させる場合、比表面積は低下し得る。カーボン担体の比表面積と、該カーボン担体における触媒金属の担持サイトの数との間には、一定の相関関係が存在する。カーボン担体の比表面積が低下する場合、該カーボン担体に担持される触媒金属の分散性が低下し得る。この場合、結果として得られる電極触媒の質量活性が低下する可能性がある。以上のように、高結晶性のカーボン担体を使用する従来技術の燃料電池用電極触媒は、質量活性及び耐久性の観点から、性能向上の余地が存在した。
それ故、本発明は、燃料電池用電極触媒において、高い質量活性と高い耐久性とを両立する手段を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、カーボン担体材料を所定の条件下で酸化処理することによって得られるカーボン担体に触媒金属を担持させることにより、質量活性と耐久性とのいずれをも向上し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)カーボン担体と、該カーボン担体に担持された白金及び白金合金から選択される触媒金属とを含み、該カーボン担体が5.0 nm以上の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)及び95〜170 m2/gの範囲の比表面積を有し、該触媒金属が4.5 nm以下の白金の(220)面の結晶子径を有する燃料電池用電極触媒。
(2)前記カーボン担体のラマンスペクトルにおけるD-バンドピーク強度IDとG-バンドピーク強度IGとの強度比が0.9未満である、前記(1)に記載の燃料電池用電極触媒。
(3)前記カーボン担体が、1.0〜2.5 nmの平均半径の細孔を少なくとも有する、前記(1)又は(2)に記載の燃料電池用電極触媒。
(4)前記触媒金属が白金であり、且つ24 ml/g-Pt以上のCO吸着量を有する、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒。
(5)前記触媒金属が白金合金であり、且つ18 ml/g-Pt以上のCO吸着量を有する、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒。
(6)前記触媒金属の担持量が、電極触媒の総質量に対して15〜35質量%の範囲である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒。
(7)前記触媒金属の担持量が、電極触媒の総質量に対して4.5質量%以上且つ15質量%未満の範囲である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒。
(8)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒を備えるカソード。
(9)前記(1)〜(5)及び(7)のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒を備えるアノード。
(10)前記(8)に記載のカソード及び前記(9)に記載のアノードの少なくともいずれかを備える燃料電池。
(11)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法であって、
酸素存在下、580〜650℃の範囲の温度でカーボン担体材料を熱酸化処理するか、又はカーボン担体材料を酸化剤で処理することによってカーボン担体材料を酸化して、5.0 nm以上の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)及び95〜170 m2/gの範囲の比表面積を有するカーボン担体を得る酸化工程;
前記酸化工程によって得られたカーボン担体と、白金及び白金合金から選択される触媒金属材料とを反応させて、該カーボン担体に触媒金属を担持させる触媒金属担持工程;
を含む、前記方法。
(12)前記酸化工程で使用される酸化剤が過マンガン酸カリウムを含む、前記(11)に記載の方法。
(13)前記酸化工程で使用される酸化剤が、カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して2.5〜14.5 mol%の範囲の量である、前記(11)又は(12)に記載の方法。
本発明により、燃料電池用電極触媒において、高い質量活性と高い耐久性とを両立する手段を提供することが可能となる。
図1は、カーボン担体材料(トーカブラック#3855)の表面の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す図である。A:スケールバー:5 nm;B:スケールバー:10 nm。 図2は、本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法における酸化工程終了後の、カーボン担体材料の表面の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す図である。A:実施例1-1-7、1-1-8、1-2-2、1-2-5及び1-2-7と同一の条件で酸化剤処理による酸化工程実施後のカーボン担体のTEM画像;B:実施例1-1-12、1-1-13、1-2-10及び1-2-11と同一の条件で熱酸化処理による酸化工程実施後のカーボン担体のTEM画像。 図3は、実施例1-1-1〜1-1-16及び比較例1-1-1〜1-1-12の白金担持電極触媒における、カーボン担体の比表面積と該電極触媒のCO吸着量との関係を示す図である。 図4は、実施例1-1-1〜1-1-16及び比較例1-1-1〜1-1-12の白金担持電極触媒における、カーボン担体の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)と該電極触媒のCO吸着量との関係を示す図である。 図5は、実施例1-1-1〜1-1-16及び比較例1-1-1〜1-1-12の白金担持電極触媒における、カーボン担体のラマンスペクトルにおけるD-バンドピーク強度IDとG-バンドピーク強度IGとの強度比と該電極触媒のCO吸着量との関係を示す図である。 図6は、実施例1-1-1〜1-1-16及び比較例1-1-1〜1-1-12の白金担持電極触媒における、触媒金属の白金の(220)面の結晶子径と該電極触媒のCO吸着量との関係を示す図である。 図7は、実施例1-1-1〜1-1-16及び比較例1-1-1〜1-1-12の白金担持電極触媒における、CO吸着量とECSA維持率との関係を示す図である。 図8は、実施例1-2-1〜1-2-14及び比較例1-2-1〜1-2-5の白金合金担持電極触媒における、カーボン担体の比表面積と該電極触媒のCO吸着量との関係を示す図である。 図9は、実施例1-2-1〜1-2-14及び比較例1-2-1〜1-2-5の白金合金担持電極触媒における、カーボン担体の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)と該電極触媒のCO吸着量との関係を示す図である。 図10は、実施例1-2-1〜1-2-14及び比較例1-2-1〜1-2-5の白金合金担持電極触媒における、カーボン担体のラマンスペクトルにおけるD-バンドピーク強度IDとG-バンドピーク強度IGとの強度比と該電極触媒のCO吸着量との関係を示す図である。 図11は、実施例1-2-1〜1-2-14及び比較例1-2-1〜1-2-5の白金合金担持電極触媒における、触媒金属の白金の(220)面の結晶子径と該電極触媒のCO吸着量との関係を示す図である。 図12は、実施例1-2-1〜1-2-14及び比較例1-2-1〜1-2-5の白金合金担持電極触媒における、CO吸着量とECSA維持率との関係を示す図である。 図13は、熱酸化処理前、600℃で熱酸化処理後、610℃で熱酸化処理後、620℃で熱酸化処理後、及び630℃で熱酸化処理後のカーボン担体の細孔分布を示す図である。 図14は、カーボン担体材料の熱酸化処理温度と結果として得られたカーボン担体の細孔容積との関係を示す図である。 図15は、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と熱重量分析によって決定された5%質量減少温度との関係を示す図である。 図16は、実施例1-1-11〜1-1-16及び比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と該電極触媒のCO吸着量及び白金の(220)面の結晶子径との関係を示す図である。 図17は、実施例1-1-11〜1-1-16及び比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体の比表面積との関係を示す図である。 図18は、実施例1-1-11〜1-1-16及び比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体に含有される酸素濃度との関係を示す図である。 図19は、実施例1-1-11〜1-1-16及び比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体のD/G比との関係を示す図である。 図20は、実施例1-1-1〜1-1-10及び比較例1-1-1の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比と該電極触媒のCO吸着量及び白金の(220)面の結晶子径との関係を示す図である。 図21は、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体の比表面積との関係を示す図である。 図22は、実施例1-1-11〜1-1-16及び比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体に含有される酸素濃度との関係を示す図である。 図23は、実施例1-1-11〜1-1-16及び比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体のD/G比との関係を示す図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
<1. 燃料電池用電極触媒>
本発明は、燃料電池用電極触媒に関する。
本発明の燃料電池用電極触媒は、カーボン担体と、該カーボン担体に担持された白金(Pt)及び白金合金から選択される触媒金属とを含むことが必要である。
従来、燃料電池用電極触媒において、触媒金属を高分散に担持することによって、質量活性(触媒金属の単位質量あたりの電流密度)を向上することを目的として、高比表面積を有するカーボン担体が使用された。一般に、カーボン担体は、その表面にグラファイトの結晶構造が発達している(図1)。そして、グラファイトの結晶性が高くなる程、グラファイトの結晶層の厚さが増加する。グラファイトの結晶層の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)画像に基づき決定されるだけでなく、X線回折(XRD)スペクトルに基づき決定される炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)によって表される。
カーボン担体の結晶性は、ラマンスペクトルに基づき評価することもできる。カーボン担体のラマンスペクトルにおいて、1300〜1400 cm-1の領域に観測されるピーク(以下、「D-バンドピーク」とも記載する)は、非グラファイト構造に由来し、1500〜1600 cm-1の領域に観測されるピーク(以下、「G-バンドピーク」とも記載する)は、グラファイト構造に由来することが知られている。G-バンドピークの半値幅(以下、「G-バンド半値幅」とも記載する)は、グラファイト構造の多様性に基づき変動し得る。G-バンド半値幅が小さい程、純粋なグラファイト構造に近いと考えられる。また、D-バンドピーク強度IDとG-バンドピーク強度IGとの強度比(D/G比)が小さい程、結晶性が高いと考えられる。
燃料電池用電極触媒において、カーボン担体のLc及びG-バンド半値幅は、カーボン担体の表面に形成されたグラファイト構造自体を表す物性値である。これに対し、カーボン担体のD/G比は、カーボン担体中に形成されたグラファイト構造の存在比を表す物性値である。燃料電池の運転条件下において、カーボン担体の酸化は、グラファイト構造と比較して、非グラファイト構造の部分においてより進行しやすいと予想された。また、カーボン担体におけるグラファイト構造部分の酸化は、低結晶性の部分においてより進行しやすいと予想された。燃料電池用電極触媒において、カーボン担体の酸化が進行すると、触媒金属粒子の移動及び/又は凝集を引き起こす可能性がある。電極触媒の触媒金属粒子が移動及び/又は凝集して粗大化すると、該触媒金属の質量活性が低下する可能性がある。
このため、グラファイト構造の存在比が高く、且つ結晶性が高いカーボン担体を用いることにより、燃料電池用電極触媒の耐久性(例えば高い耐酸化性)を向上させることができると考えられる。しかしながら、高結晶性のカーボン担体は、一般的に比表面積が低い。それ故、燃料電池用電極触媒において、高い質量活性及び高い耐久性を両立することは困難であった。
本発明者らは、燃料電池用電極触媒の製造において、以下で説明するカーボン担体材料の酸化処理を実施することにより、一定の比表面積を有し、グラファイト構造部分が多く、且つ該グラファイト構造部分の結晶性が高いカーボン担体が得られることを見出した。このような特徴を有するカーボン担体に触媒金属を担持することにより、触媒金属が高分散で担持され、且つ耐酸化性の高い燃料電池用電極触媒を得ることができる。
なお、本発明の燃料電池用電極触媒における触媒金属の分散度は、例えば、該電極触媒の一酸化炭素(CO)吸着量に基づき評価することができる。本発明の燃料電池用電極触媒のCO吸着量は、例えば、以下の方法で決定することができる。所定量の電極触媒を容器に秤量する。容器中の電極触媒を、水素雰囲気下で還元処理する。還元処理終了後、容器内へ一酸化炭素をパルス状に導入して、各電極触媒のCO吸着量を決定する。また、本発明の燃料電池用電極触媒におけるカーボン担体の耐酸化性は、例えば、該電極触媒の電気化学的有効比表面積(ECSA)維持率に基づき評価することができる。本発明の燃料電池用電極触媒のECSA維持率は、例えば、回転ディスク電極法に基づき決定することができる。
本発明の燃料電池用電極触媒に含まれるカーボン担体は、5.0 nm以上の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)を有することが必要である。前記Lcは、5.0〜5.5 nmの範囲であることが好ましく、5.1〜5.5 nmの範囲であることがより好ましい。本発明の燃料電池用電極触媒に含まれるカーボン担体のLcが前記範囲の場合、耐酸化性が高く、且つ/又は、触媒金属が高分散で担持された電極触媒を得ることができる。
前記Lcは、例えば、以下の方法で決定することができる。X線回折(XRD)装置を用いて、燃料電池用電極触媒に含まれるカーボン担体のXRDを測定する。得られたXRDスペクトルに基づき、Scherrerの式を用いて、炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)を決定する。
本発明の燃料電池用電極触媒に含まれるカーボン担体は、95〜170 m2/gの範囲の比表面積を有することが必要である。前記比表面積は、95〜165 m2/gの範囲であることが好ましく、125〜165 m2/gの範囲であることがより好ましい。本発明の燃料電池用電極触媒に含まれるカーボン担体の比表面積が95 m2/g以上、特に125 m2/g以上の場合、触媒金属が高分散で担持された電極触媒を得ることができる。
前記比表面積は、例えば、比表面積測定装置を用いて、ガス吸着法に基づき本発明の燃料電池用電極触媒に含まれるカーボン担体のBET比表面積を測定することにより、決定することができる。
本発明の燃料電池用電極触媒に含まれるカーボン担体は、ラマンスペクトルにおけるD-バンドピーク強度IDとG-バンドピーク強度IGとの強度比(以下、「D/G比」とも記載する)が0.9未満であることが好ましい。前記D/G比は、0.5以上且つ0.9未満の範囲であることが好ましく、0.6以上且つ0.9未満の範囲であることがより好ましい。また、本発明の燃料電池用電極触媒に含まれるカーボン担体は、G-バンドピークの半値幅(以下、「G-バンド半値幅」とも記載する)が30〜50 cm-1の範囲であることが好ましく、33〜42 cm-1の範囲であることがより好ましい。本発明において、「D-バンドピーク」は、1300〜1400 cm-1の領域に観測されるピークを意味し、通常は、1360 cm-1の最大吸収波長を有する。また、本発明において、「G-バンドピーク」は、1500〜1600 cm-1の領域に観測されるピークを意味し、通常は、1580 cm-1の最大吸収波長を有する。本発明の燃料電池用電極触媒に含まれるカーボン担体のD/G比及びG-バンド半値幅が前記範囲の場合、耐酸化性が高く、且つ/又は、触媒金属が高分散で担持された電極触媒を得ることができる。
前記D/G比及びG-バンド半値幅は、例えば、以下の方法で決定することができる。ラマン分光装置を用いて、本発明の燃料電池用電極触媒に含まれるカーボン担体のラマンスペクトルを測定する。得られたラマンスペクトルにおいて、1300〜1400 cm-1の領域に観測されるD-バンドピークと、1500〜1600 cm-1の領域に観測されるG-バンドピークとを同定する。同定されたD-バンドピーク及びG-バンドピークから、G-バンド半値幅及びD/G比を決定する。
本発明の燃料電池用電極触媒に含まれるカーボン担体は、1.0〜2.5 nmの平均半径の細孔を少なくとも有することが好ましい。前記細孔の平均半径は、1.7〜1.9 nmの範囲であることが好ましい。以下において説明する本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法において、カーボン担体材料を酸化処理する酸化工程を実施することにより、該カーボン担体材料に当初より存在する細孔に加えて、前記範囲の半径を有する微細な細孔が追加的に形成される。カーボン担体の表面に存在する細孔は、触媒金属の担持サイトとして機能し得る。それ故、本発明の燃料電池用電極触媒に含まれるカーボン担体が前記範囲の半径を有する微細な細孔を少なくとも有することにより、触媒金属が高分散で担持された電極触媒を得ることができる。
前記細孔の平均半径は、限定するものではないが、例えば、細孔分布測定装置を用いて、本発明の燃料電池用電極触媒に含まれるカーボン担体の細孔分布を測定することにより、決定することができる。
本発明の燃料電池用電極触媒に含まれる触媒金属は、4.5 nm以下の白金の(220)面の結晶子径を有することが必要である。前記白金の(220)面の結晶子径は、3.2 nm以上且つ4.1 nm未満の範囲であることが好ましく、3.3 nm以上且つ4.1 nm未満の範囲であることがより好ましい。本発明の燃料電池用電極触媒に含まれる触媒金属が4.5 nm以下、特に4.1 nm未満の白金の(220)面の結晶子径を有する場合、触媒金属が高分散で担持された電極触媒を得ることができる。また、本発明の燃料電池用電極触媒に含まれる触媒金属が3.2 nm以上、特に3.3 nm以上の白金の(220)面の結晶子径を有する場合、耐酸化性が高い電極触媒を得ることができる。
一般に、燃料電池用電極触媒に含まれる触媒金属において、白金の(220)面の結晶子径は、以下の要因によって変動し得る。すなわち、燃料電池用電極触媒に含まれるカーボン担体の比表面積が小さいほど、白金の(220)面の結晶子径は大きくなる。燃料電池用電極触媒に含まれる白金の担持量が増加するほど、白金の(220)面の結晶子径は大きくなる。また、燃料電池用電極触媒の製造において、白金の担持後の熱処理温度を高くするほど、白金の(220)面の結晶子径は大きくなる。すでに説明したように、本発明の燃料電池用電極触媒に含まれるカーボン担体は、高い値(すなわち5.0 nm以上)の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)を有する。一般に、高いLcを有するカーボン担体は、比表面積が小さくなる。本発明においては、以下において説明する酸化工程によって、比表面積を所定の高い値とすることができる。その後、白金の(220)面の結晶子径が前記範囲となるように、前記の変動要因を考慮して、以下において説明する触媒金属担持工程における白金担持量及び熱処理温度を所定の範囲に調整する。前記範囲の白金の(220)面の結晶子径を有する触媒金属を得るための具体的な条件は、予め予備実験を行って各条件の相関関係を取得しておき、該相関関係を適用することによって決定することができる。このような手段により、前記範囲の白金の(220)面の結晶子径を有する触媒金属を得ることができる。
前記白金の(220)面の結晶子径は、例えば、以下の方法で決定することができる。X線回折(XRD)装置を用いて、燃料電池用電極触媒に含まれる触媒金属のXRDを測定する。得られたXRDスペクトルに基づき、Scherrerの式を用いて、白金の(220)面の結晶子径を決定する。また、白金の(220)面の結晶子径は、(111)面のような白金の他の格子面の結晶子径との間に一定の相関関係を有する。それ故、前記白金の(220)面の結晶子径は、(111)面のような白金の他の格子面の結晶子径に基づき算出してもよい。
本発明の燃料電池用電極触媒に含まれる触媒金属は、白金であることが好ましい。この場合、本発明の燃料電池用電極触媒は、通常は、24 ml/g-Pt以上、典型的には24〜35 ml/g-Ptの範囲のCO吸着量を有する。或いは、本発明の燃料電池用電極触媒に含まれる触媒金属は、白金及び1種以上のさらなる金属元素からなる白金合金であることが好ましい。この場合、白金合金を形成する1種以上のさらなる金属元素としては、コバルト(Co)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、イリジウム(Ir)、鉄(Fe)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、並びにガドリニウム(Gd)、ランタン(La)及びセリウム(Ce)等のランタノイド元素を挙げることができる。前記1種以上のさらなる金属元素は、コバルト(Co)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)又はニオブ(Nb)が好ましい。前記白金合金において、白金と1種以上のさらなる金属元素との原子比は、10:1〜1:2の範囲であることが好ましい。この場合、本発明の燃料電池用電極触媒は、通常は、18 ml/g-Pt以上、典型的には24 ml/g-Pt以上、特に24〜35 ml/g-Ptの範囲のCO吸着量を有する。前記範囲のCO吸着量を有する電極触媒は、触媒金属が高分散で担持されている。それ故、本発明の燃料電池用電極触媒が前記範囲のCO吸着量を有する場合、触媒金属が高分散で担持された電極触媒を得ることができる。
本発明の燃料電池用電極触媒は、前記の特徴を有する触媒金属を、電極触媒の総質量に対して2〜40質量%の範囲の担持量で含むことが好ましい。本発明の燃料電池用電極触媒は、前記の特徴を有する触媒金属を、電極触媒の総質量に対して15〜35質量%の範囲の担持量で含むことが好ましい。或いは、本発明の燃料電池用電極触媒は、前記の特徴を有する触媒金属を、電極触媒の総質量に対して4.5質量%以上且つ15質量%未満の範囲の担持量で含むことが好ましい。本発明の燃料電池用電極触媒は、15〜35質量%の範囲の担持量で触媒金属を含む場合、燃料電池のカソードとして使用することができる。本発明の燃料電池用電極触媒は、4.5質量%以上且つ15質量%未満の範囲の担持量で触媒金属を含む場合、燃料電池のアノードとして使用することができる。
前記触媒金属の担持量は、例えば、王水を用いて、電極触媒から触媒金属を溶解させた後、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置を用いて該溶液中の触媒金属イオンを定量することにより、決定することができる。
本発明の燃料電池用電極触媒において、カーボン担体の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)及び比表面積が前記範囲であり、且つ触媒金属の白金の(220)面の結晶子径が前記範囲であることが特に好ましい。この場合、本発明の燃料電池用電極触媒は、触媒金属の種類に依存して、前記範囲のCO吸着量を有するだけでなく、通常は60%以上、典型的には65%以上、特に75%以上のECSA維持率を有する。前記範囲のECSA維持率は、従来技術の燃料電池用電極触媒のECSA維持率と比較して高い値である。それ故、本発明の燃料電池用電極触媒が前記範囲のCO吸着量及びECSA維持率を有する場合、触媒金属が高分散で担持され、且つ耐酸化性の高い電極触媒を得ることができる。
<2. 燃料電池>
前記で説明したように、本発明の燃料電池用電極触媒は、燃料電池のカソード及びアノードのいずれにも適用することができる。それ故、本発明はまた、本発明の燃料電池用電極触媒を備えるカソード又はアノードに関する。本発明はさらに、本発明のカソード及びアノードの少なくともいずれかを備える燃料電池にも関する。
本発明の燃料電池用電極触媒は、触媒金属が高分散で担持されており、且つ/又は耐酸化性が高い。それ故、本発明のカソード及びアノードの少なくともいずれかを備える本発明の燃料電池は、高い発電能力を有するだけでなく、長期に亘る使用においても高い耐久性を発揮することができる。本発明の燃料電池を自動車等の用途に適用することにより、長期に亘る使用においても、安定的に高い性能を発揮することができる。
<3. 燃料電池用電極触媒の製造方法>
本発明はまた、前記で説明した本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法に関する。
[3-1. 酸化工程]
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法は、酸素存在下でカーボン担体材料を熱酸化処理するか、又はカーボン担体材料を酸化剤で処理することによってカーボン担体材料を酸化して、5.0 nm以上の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)及び95〜170 m2/gの範囲の比表面積を有するカーボン担体を得る、酸化工程を含むことが必要である。
従来技術の燃料電池用電極触媒の製造方法において、カーボン担体材料を不活性ガス存在下で熱処理する工程がしばしば実施される。このような工程は、カーボン担体材料の表面のグラファイト構造を発達させることにより、カーボン担体材料の結晶性を向上させることを意図している。カーボン担体材料の結晶性が向上することにより、結果として得られる電極触媒の耐酸化性は向上し得る。しかしながら、カーボン担体材料の結晶性が向上することにより、該カーボン担体材料の比表面積は低下し得る。このため、不活性ガス雰囲気下におけるカーボン担体材料の熱処理は、結果として得られる電極触媒の耐酸化性の向上に寄与し得るものの、該電極触媒に担持される触媒金属の分散度を低下させる可能性がある。
本発明者らは、カーボン担体材料を所定の条件で酸化することにより、結果として得られるカーボン担体の表面の比表面積を所定の範囲に増加し得るとともに、グラファイト構造の結晶性及びグラファイト構造の存在比を所定の範囲に維持し得ることを見出した。それ故、本工程を実施することにより、結果として得られる電極触媒に担持された触媒金属の分散性を向上させるとともに、耐酸化性を向上させることができる。
本工程において使用されるカーボン担体材料は、当該技術分野で通常使用されるカーボン担体材料であれば特に限定されない。前記担体材料は、5.0 nm以上の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)を有することが好ましく、5.0〜9.0 nmの範囲のLcを有することが好ましい。また、前記担体材料は、80 m2/g以下の比表面積を有することが好ましく、20〜80 m2/gの範囲の比表面積を有することが好ましい。特に好適なカーボン担体材料は、トーカブラック#3855(商標、東海カーボン製)、トーカブラック#3845(商標、東海カーボン製)、又はトーカブラック#3800(商標、東海カーボン製)である。前記範囲のLc及び比表面積を有するカーボン担体材料を使用することにより、前記で説明した特徴を有するカーボン担体を得ることができる。
本工程において、カーボン担体材料を酸素存在下で熱酸化処理することによってカーボン担体材料を酸化する場合、熱酸化処理温度は、580〜650℃の範囲であることが必要である。前記熱酸化処理温度は、590〜630℃の範囲であることが好ましい。前記熱酸化処理温度における熱酸化処理の時間は、2〜8時間の範囲であることが好ましく、3〜7時間の範囲であることがより好ましい。前記熱酸化処理は、酸素を含むガス存在下で実施されることが好ましく、空気存在下で実施されることがより好ましい。前記条件で本工程を実施することにより、前記で説明した特徴を有するカーボン担体を得ることができる。
本工程において、カーボン担体材料を酸化剤で処理することによってカーボン担体材料を酸化する場合、該酸化剤は、過マンガン酸カリウム、硫酸、硝酸又は過酸化水素を含むことが好ましく、過マンガン酸カリウムを含むことがより好ましい。
前記酸化剤は、カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して2.5〜14.5 mol%の範囲であることが好ましく、2.5〜7.5 mol%の範囲であることがより好ましく、4.0〜7.5 mol%の範囲であることが特に好ましい。前記酸化剤が14.5 mol%以下の濃度で使用される場合、結果として得られるカーボン担体のD/G比を前記で説明した範囲とすることができる。すなわち、カーボン担体のグラファイト構造を所望の範囲で維持することができる。また、前記酸化剤が2.5 mol%以上の濃度で使用される場合、カーボン担体材料の酸化反応を制御された態様で実施することができる。これにより、前記で説明した特徴を有するカーボン担体を得ることができる。
本工程において使用される酸化剤は、前記成分に加えて、硫酸、硝酸カリウム、過酸化水素水、及び硝酸ナトリウムからなる群より選択される1種以上の補助成分を含むことが好ましい。前記補助成分は、硫酸、硝酸カリウム及び過酸化水素水からなる群より選択される1種以上の成分の組合せであることが好ましく、硫酸及び過酸化水素水の組合せ、又は硫酸、硝酸カリウム及び過酸化水素水の組合せであることがより好ましい。本工程において使用される酸化剤が前記補助成分をさらに含むことにより、カーボン担体材料の酸化反応を制御された態様で実施することができる。これにより、前記で説明した特徴を有するカーボン担体を得ることができる。
本工程において、カーボン担体材料を酸化剤で処理することによってカーボン担体材料を酸化する場合、過剰の酸素がカーボン担体に残留し得る。カーボン担体が過剰の酸素を含む場合、以下で説明する触媒金属担持工程において、触媒金属の作用によって、該触媒金属の近傍のカーボン担体の炭素がさらに酸化される可能性がある。このような場合、カーボン担体における触媒金属の担持部分が減少又は消失するため、該触媒金属の移動及び/又は凝集が促進される可能性がある。それ故、本工程において、カーボン担体材料を酸化剤で処理することによってカーボン担体材料を酸化する場合、本工程は、酸化剤で処理されたカーボン担体材料を、不活性ガス存在下で熱処理する工程をさらに含むことが好ましい。この場合、前記熱処理温度は、600〜1000℃の範囲であることが好ましく、700〜900℃の範囲であることがより好ましい。前記熱処理温度における熱処理の時間は、1〜6時間の範囲であることが好ましく、1〜3時間の範囲であることがより好ましい。前記不活性ガスは、アルゴン、窒素又はヘリウムであることが好ましく、アルゴンであることがより好ましい。酸化剤で処理されたカーボン担体材料を前記条件で熱処理することにより、過剰の酸素の残留に起因する触媒金属の移動及び/又は凝集を実質的に抑制することができる。
本工程において得られるカーボン担体は、前記で説明した範囲の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)、比表面積、D/G比及びG-バンド半値幅を有することが好ましい。
本工程において得られるカーボン担体は、該カーボン担体の総質量に対して通常は0.6質量%以上、典型的には0.7〜2.8質量%の範囲の酸素濃度で酸素を含む。酸素濃度が0.6質量%以上の場合、触媒金属の担持サイトを十分な量で確保することができる。また、酸素濃度が2.8質量%以下の場合、過剰の酸素の残留に起因する触媒金属の移動及び/又は凝集を実質的に抑制することができる。
前記酸素濃度は、例えば、不活性ガス中、インパルス加熱融解−NDIR法により、決定することができる。
本工程により、カーボン担体材料に当初より存在する細孔に加えて、微細な細孔がさらに形成される。このため、本工程において得られるカーボン担体は、カーボン担体材料に当初より存在する細孔に加えて、通常は1.0〜2.5 nmの範囲、典型的には1.7〜1.9 nmの範囲の半径を有する微細な細孔を少なくとも有する。カーボン担体の表面に存在する細孔は、触媒金属の担持サイトとして機能し得る。それ故、本発明の燃料電池用電極触媒に含まれるカーボン担体が前記範囲の半径を有する微細な細孔を追加的に有することにより、触媒金属が高分散で担持された電極触媒を得ることができる。
なお、カーボン担体材料又はカーボン担体に存在する細孔の平均半径は、前記で説明した方法により、決定することができる。
[3-2. 触媒金属担持工程]
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法は、前記酸化工程によって得られたカーボン担体と、白金及び白金合金から選択される触媒金属材料とを反応させて、該カーボン担体に触媒金属を担持させる触媒金属担持工程を含むことが必要である。
本工程において使用される触媒金属材料は、ジニトロジアンミン白金(II)硝酸のような白金含有錯体又はヘキサヒドロキソ白金アンミン錯体を含むことが好ましい。また、本発明の方法で製造される燃料電池用電極触媒に含まれる触媒金属が白金合金の場合、触媒金属材料は、前記化合物に加えて、硝酸コバルト、硝酸ニッケル又は硝酸マンガンのような、白金合金を形成する1種以上のさらなる金属元素の材料をさらに含むことが好ましい。
本工程は、コロイド法又は析出沈殿法等のような、当該技術分野で通常使用される反応を用いることにより、実施することができる。
本工程は、前記酸化工程によって得られたカーボン担体と、白金及び白金合金から選択される触媒金属材料とを反応させることによって得られた生成物を、不活性ガス存在下で熱処理する工程をさらに含むことが好ましい。この場合、前記熱処理温度は、600〜1000℃の範囲であることが好ましく、700〜900℃の範囲であることがより好ましい。前記熱処理温度における熱処理の時間は、1〜6時間の範囲であることが好ましく、1〜3時間の範囲であることがより好ましい。前記不活性ガスは、アルゴン、窒素又はヘリウムであることが好ましく、アルゴンであることがより好ましい。前記酸化工程によって得られたカーボン担体と、白金及び白金合金から選択される触媒金属材料とを反応させることによって得られた生成物を前記条件で熱処理することにより、所望の特徴を有する触媒金属が担持された電極触媒を得ることができる。
以上のように、本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法では、カーボン担体材料を所定の条件下で酸化処理することにより、該カーボン担体材料の表面に細孔を形成させて、比表面積を所定の範囲に向上させることができる。前記細孔は、触媒金属の担持サイトとして機能し得る。それ故、本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法により、前記で説明した特徴を有する、高い質量活性及び高い耐久性を備える燃料電池用電極触媒を得ることが可能となる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
<I. 電極触媒の調製>
〔I-1. カソード用白金電極触媒〕
[実施例1-1-1]
硫酸350 g中に、カーボン担体材料(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)20 gを添加し、攪拌した。次に、過マンガン酸カリウム10.8 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して4.1 mol%)を添加し、3昼夜攪拌した。次いで、イオン交換水800 gを添加後、30%過酸化水素水を6 ml添加した。この混合物を、そのまま一昼夜攪拌した後、ろ過及び洗浄した。洗浄後の生成物をろ過した後、固形分を1 N硝酸500 mlに添加し、一昼夜攪拌した。反応生成物を、ろ過及び洗浄した。洗浄後の生成物を、80℃で15時間乾燥した後、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)して、カーボン担体を得た(酸化工程)。このカーボン担体10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して30質量%のPt担持量となるPt仕込量(4.29 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
[実施例1-1-2]
硫酸350 g中に、カーボン担体材料(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)20 gを添加し、攪拌した。次に、過マンガン酸カリウム18 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して6.8 mol%)を添加し、3昼夜攪拌した。次いで、イオン交換水800 gを添加後、30%過酸化水素水を10 ml添加した。この混合物を、そのまま一昼夜攪拌した後、ろ過及び洗浄した。洗浄後の生成物をろ過した後、固形分を1 N硝酸500 mlに添加し、一昼夜攪拌した。反応生成物を、ろ過及び洗浄した。洗浄後の生成物を、80℃で15時間乾燥した後、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)して、カーボン担体を得た(酸化工程)。このカーボン担体10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して30質量%のPt担持量となるPt仕込量(4.29 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
[実施例1-1-3]
硫酸350 g中に、カーボン担体材料(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)20 gを添加し、攪拌した。次に、硝酸ナトリウム1.92 g及び過マンガン酸カリウム18 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して2.7 mol%)を添加し、3昼夜攪拌した。次いで、イオン交換水800 gを添加後、30%過酸化水素水を4 ml添加した。この混合物を、そのまま一昼夜攪拌した後、ろ過及び洗浄した。洗浄後の生成物をろ過した後、固形分を1 N硝酸500 mlに添加し、一昼夜攪拌した。反応生成物を、ろ過及び洗浄した。洗浄後の生成物を、80℃で15時間乾燥した後、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)して、カーボン担体を得た(酸化工程)。このカーボン担体10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
[実施例1-1-4]
実施例1-1-3において、酸化工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を800℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-1-5]
実施例1-1-3において、酸化工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を900℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-1-6]
実施例1-1-3において、触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を800℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-1-7]
実施例1-1-3において、酸化工程における硝酸ナトリウムの添加量を2.88 gに、過マンガン酸カリウムの添加量を10.8 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して4.1 mol%)に、30%過酸化水素水の添加量を6 mlに、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-1-8]
実施例1-1-3において、酸化工程における硝酸ナトリウムの添加量を2.88 gに、過マンガン酸カリウムの添加量を10.8 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して4.1 mol%)に、30%過酸化水素水の添加量を6 mlに、それぞれ変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を800℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-1-9]
実施例1-1-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-1-10]
実施例1-1-1において、酸化工程における過マンガン酸カリウムの添加量を18 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して6.8 mol%)に、30%過酸化水素水の添加量を10 mlに、それぞれ変更し、且つ触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-1-11]
カーボン担体材料(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)25 gを、磁性皿に秤量した。このカーボン担体材料を、空気中、590℃で熱酸化処理(条件:2時間で昇温、590℃で5時間保持)して、カーボン担体を得た(酸化工程)。このカーボン担体10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、800℃で2時間保持)した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
[実施例1-1-12]
実施例1-1-11において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を600℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-1-13]
実施例1-1-11において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を600℃に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-1-14]
実施例1-1-11において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を610℃に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-1-15]
実施例1-1-11において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を620℃に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-1-16]
実施例1-1-11において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を630℃に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[比較例1-1-1]
カーボン担体(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して30質量%のPt担持量となるPt仕込量(4.29 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
[比較例1-1-2]
比較例1-1-1において、触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を800℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[比較例1-1-3]
比較例1-1-1において、触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を900℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[比較例1-1-4]
カーボン担体材料(Ketjen;ライオン製)を、アルゴンガス中、2800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、2800℃で2時間保持)して、カーボン担体を得た。このカーボン担体10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して30質量%のPt担持量となるPt仕込量(4.29 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
[比較例1-1-5]
比較例1-1-4において、触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[比較例1-1-6]
比較例1-1-1において、カーボン担体材料をKetjen(ライオン製)に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を800℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[比較例1-1-7]
比較例1-1-1において、カーボン担体材料をKetjen(ライオン製)に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を900℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[比較例1-1-8]
比較例1-1-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[比較例1-1-9]
比較例1-1-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を900℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[比較例1-1-10]
カーボン担体材料(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)25 gを、磁性皿に秤量した。このカーボン担体材料を、空気中、550℃で熱酸化処理(条件:2時間で昇温、550℃で5時間保持)して、カーボン担体を得た(酸化工程)。このカーボン担体10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、800℃で2時間保持)した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
[比較例1-1-11]
比較例1-1-10において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を560℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[比較例1-1-12]
比較例1-1-10において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を570℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
〔I-2. カソード用白金合金電極触媒〕
[実施例1-2-1]
硫酸350 g中に、カーボン担体材料(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)20 gを添加し、攪拌した。次に、硝酸ナトリウム2.88 g及び過マンガン酸カリウム10.8 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して4.1 mol%)を添加し、3昼夜攪拌した。次いで、イオン交換水800 gを添加後、30%過酸化水素水を6 ml添加した。この混合物を、そのまま一昼夜攪拌した後、ろ過及び洗浄した。洗浄後の生成物をろ過した後、固形分を1 N硝酸500 mlに添加し、一昼夜攪拌した。反応生成物を、ろ過及び洗浄した。洗浄後の生成物を、80℃で15時間乾燥した後、アルゴンガス中、800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、800℃で2時間保持)して、カーボン担体を得た(酸化工程)。このカーボン担体10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して30質量%のPt担持量となるPt仕込量(4.29 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、800℃で2時間保持)した。得られた30質量%Pt担持カーボン担体を、カーボン担体の総質量に対して80倍の純水に分散させた。この分散液に、市販の硝酸コバルト六水和物を純水に溶解させることで調製された硝酸コバルト水溶液を、白金とコバルトとのmol比がPt:Co=2:1となるような量で滴下した。滴下終了後、使用された硝酸コバルトのコバルトに対して1〜6 mol当量の水素化ホウ素ナトリウム水溶液を滴下した。滴下終了後、反応液を1〜20時間撹拌した。その後、反応混合物を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた粉末ケーキを、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、800℃で2時間保持)して、白金とコバルトを合金化した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
[実施例1-2-2]
実施例1-2-1において、酸化工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-2-3]
実施例1-2-1において、酸化工程における硝酸ナトリウムの添加を廃止し、酸化工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-2-4]
実施例1-2-1において、酸化工程における硝酸ナトリウムの添加を廃止し、酸化工程における過マンガン酸カリウムの添加量を18 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して6.8 mol%)に、30%過酸化水素水の添加量を10 mlに、アルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-2-5]
実施例1-2-1において、酸化工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-2-6]
実施例1-2-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-2-7]
実施例1-2-1において、酸化工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に、白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-2-8]
実施例1-2-1において、酸化工程における硝酸ナトリウムの添加を廃止し、酸化工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を700℃に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に、白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-2-9]
実施例1-2-1において、酸化工程における硝酸ナトリウムの添加を廃止し、酸化工程における酸化工程における過マンガン酸カリウムの添加量を18 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して6.8 mol%)に、30%過酸化水素水の添加量を10 mlに、アルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更し、且つ触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に、白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-2-10]
カーボン担体材料(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)25 gを、磁性皿に秤量した。このカーボン担体材料を、空気中、600℃で熱酸化処理(条件:2時間で昇温、600℃で5時間保持)して、カーボン担体を得た(酸化工程)。このカーボン担体10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、800℃で2時間保持)した。得られた20質量%Pt担持カーボン担体を、カーボン担体の総質量に対して80倍の純水に分散させた。この分散液に、市販の硝酸コバルト六水和物を純水に溶解させることで調製された硝酸コバルト水溶液を、白金とコバルトとのmol比がPt:Co=2:1となるような量で滴下した。滴下終了後、使用された硝酸コバルトのコバルトに対して1〜6 mol当量の水素化ホウ素ナトリウム水溶液を滴下した。滴下終了後、反応液を1〜20時間撹拌した。その後、反応混合物を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた粉末ケーキを、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、800℃で2時間保持)して、白金とコバルトを合金化した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
[実施例1-2-11]
実施例1-2-10において、触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-2-12]
実施例1-2-10において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を610℃に変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-2-13]
実施例1-2-10において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を620℃に変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例1-2-14]
実施例1-2-10において、酸化工程における空気中熱酸化処理温度を630℃に変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[比較例1-2-1]
カーボン担体(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)10 gに、0.1 N硝酸水溶液420 gを加え、分散させた。この分散液に、最終生成物の総質量に対して30質量%のPt担持量となるPt仕込量(4.29 g)を含むジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液、99.5%エタノール50 gの順に加えた。この混合物を、実質的に均質となるように十分に撹拌した後、60〜90℃、3時間の条件で加熱した。加熱終了後、得られた分散液を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた固形分を、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、700℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、700℃で2時間保持)した。得られた30質量%Pt担持カーボン担体を、カーボン担体の総質量に対して80倍の純水に分散させた。この分散液に、市販の硝酸コバルト六水和物を純水に溶解させることで調製された硝酸コバルト水溶液を、白金とコバルトとのmol比がPt:Co=2:1となるような量で滴下した。滴下終了後、使用された硝酸コバルトのコバルトに対して1〜6 mol当量の水素化ホウ素ナトリウム水溶液を滴下した。滴下終了後、反応液を1〜20時間撹拌した。その後、反応混合物を、ろ過排液の導電率が5 μS/cm以下になるまで、繰返しろ過及び洗浄した。得られた粉末ケーキを、80℃で15時間送風乾燥した。乾燥後の粉末を、アルゴンガス中、800℃で熱処理(条件:5℃/minで昇温、800℃で2時間保持)して、白金とコバルトを合金化した(触媒金属担持工程)。以上の方法により、電極触媒の粉末を得た。
[比較例1-2-2]
比較例1-2-1において、カーボン担体材料をKetjen(ライオン製)に変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を800℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[比較例1-2-3]
比較例1-2-1において、カーボン担体材料をOSAB(デンカ製)に変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を800℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[比較例1-2-4]
比較例1-2-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[比較例1-2-5]
比較例1-2-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に変更し、且つ触媒金属担持工程における白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を900℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を800℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
〔I-3. アノード用白金電極触媒〕
[実施例2-1-1]
実施例1-1-16において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して5質量%のPt担持量となるPt仕込量(0.53 g)を含む量に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を400℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[実施例2-1-2]
実施例2-1-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して10質量%のPt担持量となるPt仕込量(1.11 g)を含む量に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[比較例2-1-1]
比較例1-1-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して5質量%のPt担持量となるPt仕込量(0.53 g)を含む量に変更し、且つ触媒金属担持工程におけるアルゴンガス中熱処理温度を400℃に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
[比較例2-1-2]
比較例2-1-1において、触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して10質量%のPt担持量となるPt仕込量(1.11 g)を含む量に変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
<II. 電極触媒の評価方法>
[II-1. カーボン担体の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)]
X線回折(XRD)装置(Rint2500;リガク製)を用いて、実施例及び比較例の電極触媒の調製に用いた触媒金属担持前のカーボン担体のXRDを測定した。測定条件は、以下のとおりである:Cu管球、50 kV、300 mA。得られたXRDスペクトルに基づき、Scherrerの式を用いて、炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)を決定した。
[II-2. カーボン担体の比表面積]
比表面積測定装置(BELSORP-mini;日本ベル製)を用いて、実施例及び比較例の電極触媒の調製に用いた触媒金属担持前のカーボン担体の、ガス吸着法に基づくBET比表面積(m2/g)を測定した。測定条件は、以下のとおりである:前処理:150℃、2時間真空脱気;測定:定容法を用いた窒素による吸着等温線の測定。
[II-3. カーボン担体の酸素濃度]
酸素分析装置(型番:EMGA-920;堀場製作所製)を用いて、実施例及び比較例の電極触媒の調製に用いた触媒金属担持前のカーボン担体に導入された酸素濃度(カーボン担体の総質量に対する質量%)を測定した。測定条件は、以下のとおりである:不活性ガス中、インパルス加熱溶融−NDIR法。
[II-4. カーボン担体のラマンスペクトル測定]
ラマン分光装置(NRS-1000;日本分光製)を用いて、実施例及び比較例の電極触媒の調製に用いた触媒金属担持前のカーボン担体のラマンスペクトルを測定した。測定条件は、以下のとおりである:レーザー波長:532 nm、レーザー出力:100 mV。得られたラマンスペクトルにおいて、1300〜1400 cm-1の領域に観測されるピーク(D-バンドピーク)と1500〜1600 cm-1の領域に観測されるピーク(G-バンドピーク)とを同定した。同定されたD-バンドピーク及びG-バンドピークから、G-バンドピークの半値幅(G-バンド半値幅)、及びD-バンドピーク強度IDとG-バンドピーク強度IGとの強度比(D/G比)を決定した。
[II-5. カーボン担体の細孔分布測定]
カーボン担体(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)を、実施例1-1-13〜1-1-16の酸化工程と同様の手順で熱酸化処理した。細孔分布測定装置(BELSORP-mini;日本ベル製)を用いて、熱酸化処理前、600℃で熱酸化処理後、610℃で熱酸化処理後、620℃で熱酸化処理後、及び630℃で熱酸化処理後のカーボン担体の、ガス吸着法に基づく細孔分布を測定した。測定条件は、以下のとおりである:前処理:120℃、8時間真空脱気;測定:定容法を用いた窒素による吸着等温線の測定。
[II-6. 触媒金属の担持量測定]
王水を用いて、所定量の実施例及び比較例の電極触媒から触媒金属を溶解させた。誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置(ICPV-8100;島津製作所製)を用いて、得られた溶液中の触媒金属イオンを定量した。前記定量値から、電極触媒に担持された触媒金属(Pt及びCo)の担持量(電極触媒の総質量に対する質量%)を決定した。
[II-7. 白金の(220)面の結晶子径]
X線回折(XRD)装置(Rint2500;リガク製)を用いて、実施例及び比較例の電極触媒のXRDを測定した。測定条件は、以下のとおりである:Cu管球、50 kV、300 mA。得られたXRDスペクトルに基づき、Scherrerの式を用いて、白金の(220)面の結晶子径を決定した。
[II-8. 電極触媒の電子顕微鏡観察]
透過型電子顕微鏡(TEM)(H9500;日立製作所製)を用いて、実施例及び比較例の電極触媒のカーボン担体の表面を観察した。湿式分散法を用いて、各電極触媒の試料を調製し、加速電圧300 kV、倍率1,000,000倍で、カーボン担体の構造を観察した。
[II-9. 電極触媒のCO吸着量]
0.05 gの実施例及び比較例の電極触媒を容器に秤量した。容器中の各試料を、ヘリウムガス(100% He)気流下、3℃/minの条件で80℃まで昇温した。80℃到達後、容器内の雰囲気を水素ガス(100% H2)に置換した。その後、水素雰囲気下で、各試料を30分間還元処理した。還元終了後、容器内の雰囲気をヘリウムガス(100% He)に置換し、ヘリウムガス気流下で30℃まで冷却した。次に、容器内へ、一酸化炭素(100% CO)をパルス状に導入(導入圧力:100 kPa)した。熱伝導度検出器(TCD)を用いて触媒に結合しなかったCO量を検出し、触媒に打ち込んだCO量と触媒に結合せずに排出されたCO量との差分として、各電極触媒の試料のCO吸着量(ml/g-触媒)を決定した。次いで、この値をPt担持率で除して、Pt単位質量当たりのCO吸着量(ml/g-Pt)を算出した。
[II-10. 電極触媒のECSA維持率]
0.1 M HClO4水溶液を電解液として用いる回転ディスク電極法に基づき、実施例及び比較例の電極触媒の電気化学的有効比表面積(ECSA)を測定した。作用極上に、所定量の白金を塗布した。電解液中に、窒素ガス(N2)を連続的に吹き込んだ状態で、電位サイクルクリーニング(RHE基準で50から1200 mV, 600サイクル)を実施した。その後、電位サイクル耐久処理(RHE基準で400から1200 mV, 5000サイクル)を実施した。電位サイクル耐久処理前後のECSAの測定値から、ECSA維持率(%)を決定した。
<III. 電極触媒の評価結果>
[III-1. 電極触媒の調製条件及び物性値]
実施例及び比較例の電極触媒の調製条件の概要を表1に、該電極触媒の物性値を表2に、それぞれ示す。また、実施例及び比較例の電極触媒の調製に用いたカーボン担体、並びに実施例及び比較例の電極触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を図1及び2に示す。さらに、実施例及び比較例の電極触媒の各物性値の関係を図3〜12にそれぞれ示す。
Figure 2015204216
Figure 2015204216
[III-2. カソード用白金担持電極触媒]
高比表面積を有する市販のカーボン担体材料であるKetjen及びOSAB、並びに比表面積の低い市販のカーボン担体材料であるトーカブラック#3855の表面を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。トーカブラック#3855のTEM画像を図1に示す。また、X線回折(XRD)測定により、前記カーボン担体材料の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)を決定した。Ketjenは、2.0 nmのLcを有し、OSABは、1.8 nmのLcを有した。これに対し、比表面積の低い市販のカーボン担体材料であるトーカブラックは、5.3 nmのLcを有した。
ラマンスペクトル測定により、前記カーボン担体材料のG-バンド半値幅及びD-バンドピーク強度IDとG-バンドピーク強度IGとの強度比(D/G比)を決定した。高比表面積を有する市販のカーボン担体材料であるKetjenは、81 cm-1のG-バンド半値幅及び1.18のD/G比を有し、OSABは、68 cm-1のG-バンド半値幅及び1.50のD/G比を有した。これに対し、比表面積の低い市販のカーボン担体材料であるトーカブラック#3855は、39 cm-1のG-バンド半値幅及び0.34のD/G比を有した。前記結果から、Ketjen及びOSABは、トーカブラック#3855と比較して、比表面積は高いものの、結晶性が低いことが示唆された。
図3に示すように、実施例1-1-1〜1-1-16の白金担持電極触媒は、170 m2/g以下の比表面積であっても24 ml/g-Pt以上のCO吸着量を有することが明らかとなった。前記実施例の白金担持電極触媒の比表面積は、95〜170 m2/gの範囲であった。これに対し、前記実施例と同一のカーボン担体材料(比表面積:79 m2/g)を、酸化工程を実施することなくそのまま用いた比較例1-1-1、1-1-2、1-1-3、1-1-8及び1-1-9の白金担持電極触媒、並びに高比表面積を有する市販のカーボン担体材料であるKetjen(比表面積:800 m2/g)を、酸化工程を実施することなくそのまま用いた比較例1-1-7の白金担持電極触媒は、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。
図4に示すように、実施例1-1-1〜1-1-16の白金担持電極触媒は、5.0 nm以上のLc及び24 ml/g-Pt以上のCO吸着量を有した。これに対し、市販のカーボン担体材料であるKetjenを、酸化工程を実施することなくそのまま用いた比較例1-1-7の白金担持電極触媒は、2.0 nmのLcであり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。
図5に示すように、実施例1-1-1〜1-1-16の白金担持電極触媒は、0.9未満のD/G比及び24 ml/g-Pt以上のCO吸着量を有した。前記実施例のD/G比は、0.5以上且つ0.9未満の範囲であった。これに対し、前記実施例と同一のカーボン担体材料を、酸化工程を実施することなくそのまま用いた比較例1-1-1、1-1-2、1-1-3、1-1-8及び1-1-9の白金担持電極触媒は、0.34のD/G比であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。また、前記実施例と同一のカーボン担体材料を550〜570℃の範囲の温度で熱酸化処理する酸化工程を実施することによって調製された比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒は、0.45〜0.57の範囲のD/G比であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。さらに、市販のカーボン担体材料であるKetjenを、酸化工程を実施することなくそのまま用いた比較例1-1-7の白金担持電極触媒は、1.17のD/G比であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。
図6に示すように、実施例1-1-1〜1-1-16の白金担持電極触媒は、4.5 nm以下の白金の(220)面の結晶子径及び24 ml/g-Pt以上のCO吸着量を有した。前記実施例の白金の(220)面の結晶子径は、3.2 nm以上且つ4.1 nm未満の範囲であった。これに対し、前記実施例と同一のカーボン担体材料を、酸化工程を実施することなくそのまま用いて、実施例1-1-1と同一の白金担持量(30質量%)となるように触媒金属担持工程を実施した比較例1-1-1、1-1-2及び1-1-3の白金担持電極触媒は、5.9 nmの白金の(220)面の結晶子径であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。また、実施例1-1-3と同一の白金担持量(20質量%)となるように触媒金属担持工程を実施した1-1-8及び1-1-9の白金担持電極触媒は、4.6 nmの白金の(220)面の結晶子径であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。前記実施例と同一のカーボン担体材料を550〜570℃の範囲の温度で熱酸化処理する酸化工程を実施することによって調製された比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒は、4.2〜4.4 nmの範囲の白金の(220)面の結晶子径であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。さらに、市販のカーボン担体材料であるKetjenを、酸化工程を実施することなくそのまま用いて、実施例1-1-1と同一の白金担持量(30質量%)となるように触媒金属担持工程を実施した比較例1-1-7の白金担持電極触媒は、4.2 nmの白金の(220)面の結晶子径であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。
比較例1-1-4及び1-1-5の白金担持電極触媒は、国際公開第2005/106994号に記載の方法と同様の方法によって調製された。図3に示すように、比較例1-1-4及び1-1-5の白金担持電極触媒は、前記文献に記載の値と同程度のカーボン担体の比表面積(123 m2/g)を有したが、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。また、図6に示すように、当該比較例の白金担持電極触媒の白金の(220)面の結晶子径は、4.5 nmを超える値であった。
図7に示すように、比較例の白金担持電極触媒は、高CO吸着量と高ECSA維持率とを両立することが困難であった。例えば、高CO吸着量(32 ml/g-Pt)を有する比較例1-1-6の白金担持電極触媒の場合、ECSA維持率は58%であった。一方、高ECSA維持率(78%)を有する比較例1-1-7の白金担持電極触媒の場合、CO吸着量は22 ml/g-Ptであった。同様に、高ECSA維持率(85%)を有する比較例1-1-9の白金担持電極触媒の場合、CO吸着量は23 ml/g-Ptであった。図中に、比較例1-1-6及び1-1-7の白金担持電極触媒のデータ点を結ぶ点線を示す。
これに対し、実施例1-1-1〜1-1-16の白金担持電極触媒は、いずれも前記点線の上方にCO吸着量及びECSA維持率のデータ点が存在した。前記の通り、実施例1-1-1〜1-1-16の白金担持電極触媒は、グラファイト構造部分が多く、且つ該グラファイト構造部分の結晶性が高いカーボン担体を有する。高結晶性のグラファイト構造部分が多いカーボン担体は、燃料電池の運転条件下におけるカーボン担体の耐酸化性が高い。それ故、前記実施例の白金担持電極触媒は、比較例1-1-6及び1-1-7の白金担持電極触媒と比較して、高CO吸着量と高ECSA維持率とを両立できたと考えられる。
[III-3. カソード用白金合金担持電極触媒]
図8〜11に示すように、実施例1-2-1〜1-2-14の白金合金担持電極触媒は、前記白金担持電極触媒の場合と同様に、170 m2/g以下(特に95〜170 m2/gの範囲)の比表面積、5.0 nm以上のLc、0.9未満(特に0.5以上且つ0.9未満の範囲)のD/G比、及び4.5 nm以下(特に3.2 nm以上且つ4.1 nm未満の範囲)の白金の(220)面の結晶子径を有した。この場合、実施例1-2-1〜1-2-14の白金合金担持電極触媒は、18 ml/g-Pt以上のCO吸着量を有した。
図12に示すように、実施例1-2-1〜1-2-14の白金合金担持電極触媒は、前記白金担持電極触媒の場合と同様に、比較例1-2-2及び1-2-3の白金合金担持電極触媒のデータ点を結ぶ点線の上方にCO吸着量及びECSA維持率のデータ点が存在した。それ故、前記実施例の白金合金担持電極触媒は、比較例1-2-2及び1-2-3の白金合金担持電極触媒と比較して、高CO吸着量と高ECSA維持率とを両立できたと考えられる。
[III-4. カーボン担体の細孔分布]
熱酸化処理前、600℃で熱酸化処理後、610℃で熱酸化処理後、620℃で熱酸化処理後、及び630℃で熱酸化処理後のカーボン担体の細孔分布を図13に、熱酸化処理温度と細孔容積との関係を図14にそれぞれ示す。
図13に示すように、600〜630℃の範囲の温度で熱酸化処理されたカーボン担体は、熱酸化処理前のカーボン担体と比較して、1.0〜2.5 nm(特に1.7〜1.9 nm)の範囲の細孔半径を有する細孔をさらに有することが示された。また、図14に示すように、600〜630℃の範囲の温度で熱酸化処理されたカーボン担体は、熱酸化処理前のカーボン担体と比較して、細孔容積が増加した。この細孔容積の増加は、熱酸化処理によって前記細孔半径を有する細孔がさらに形成されたことに起因すると考えられる。それ故、熱酸化処理によって形成される前記細孔半径を有する細孔が、触媒金属の担持サイトとして使用されると考えられる。
カーボン担体の熱酸化処理による細孔の形成は、カーボン担体のTEM画像からも確認された。図2に示すように、実施例1-1-7、1-1-8、1-2-2、1-2-5及び1-2-7と同一の条件で酸化剤処理による酸化工程実施後のカーボン担体の表面(図2A)、並びに実施例1-1-12、1-1-13、1-2-10及び1-2-11と同一の条件で熱酸化処理による酸化工程実施後のカーボン担体の表面(図2B)には、非処理のカーボン担体の表面(図1)と比較して、結晶構造の乱れが観察された。
[III-5. アノード用電極触媒]
表2に示すように、実施例2-1-1及び2-2-2のアノード用白金担持電極触媒は、カーボン担体が5.0 nm以上のLc及び95〜170 m2/gの範囲の比表面積を有した。この場合、触媒金属が4.5 nm以下の白金の(220)面の結晶子径を有し、42 ml/g-Pt以上のCO吸着量を有した。これに対し、比較例2-1-1及び2-2-2のアノード用白金担持電極触媒は、カーボン担体の比表面積が79 m2/gであり、34又は31 ml/g-PtのCO吸着量であった。
<IV. 電極触媒の調製>
[IV-1. カーボン担体の熱酸化処理温度]
空気中には酸素が存在するため、空気中(すなわち酸素存在下)でカーボン担体を熱酸化処理すると、カーボン担体中の炭素が燃焼し、比表面積が増加する。このため、高結晶性で且つ比表面積の低いカーボン担体を空気中で熱酸化処理することにより、比表面積を所望の範囲に制御し得る。しかしながら、空気中熱酸化処理温度を過度に高くすると、カーボン担体中の炭素の燃焼が急速に進行し、比表面積の制御が困難となる可能性がある。
実施例1-1-11の酸化工程の手順に基づき、カーボン担体(トーカブラック;#3855;東海カーボン製)を、空気中、室温〜1000℃の範囲の温度で熱酸化処理した。熱重量分析(TG)装置(TG8120;リガク製)を用いて、得られたカーボン担体の5%質量減少温度(℃)を決定した。カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と5%質量減少温度との関係を図15に示す。
図15に示すように、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度が500℃以上に上昇すると、5%質量減少温度が直線的に低下した。空気中熱酸化処理温度が630℃の場合、5%質量減少温度は約600℃まで低下した。それ故、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度が630℃を超える場合、結果として得られるカーボン担体の耐酸化性が急激に低下する可能性がある。
実施例1-1-11〜1-1-16及び比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と該電極触媒のCO吸着量及び白金の(220)面の結晶子径との関係を図16に、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体の比表面積との関係を図17に、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体に含有される酸素濃度との関係を図18に、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体のD/G比との関係を図19に、それぞれ示す。
図16に示すように、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度が580℃以上の場合、24 ml/g-Pt以上のCO吸着量で且つ4.1 nm以下の白金の(220)面の結晶子径を有する白金担持電極触媒が得られた。前記の結果は、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度が580℃以上の場合、空気中熱酸化処理温度の上昇に伴ってカーボン担体の比表面積が増加したことに起因すると考えられる(図17)。また、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度が580℃以上の場合、空気中熱酸化処理温度の上昇に伴ってカーボン担体に含有される酸素濃度が増加した(図18)。前記の結果は、カーボン担体の熱酸化処理により、カーボン担体の炭素が酸化され、触媒金属の担持サイトとして使用され得る細孔が形成されたことを示唆する(図13及び14)。さらに、図19に示すように、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度が上昇すると、カーボン担体のD/G比は増加した。前記の結果は、カーボン担体の熱酸化処理により、カーボン担体のグラファイト構造の部分が減少し、非グラファイト構造の部分が増加することを示唆する。
実施例1-1-1〜1-1-10及び比較例1-1-1の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比と該電極触媒のCO吸着量及び白金の(220)面の結晶子径との関係を図20に、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体の比表面積との関係を図21に、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体に含有される酸素濃度との関係を図22に、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体のD/G比との関係を図23に、それぞれ示す。
図20に示すように、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比が2.5 mol%以上の場合、24 ml/g-Pt以上のCO吸着量で且つ4.1 nm以下の白金の(220)面の結晶子径を有する白金担持電極触媒が得られた。前記の結果は、K/C比が2.5 mol%以上の場合、カーボン担体の酸化に伴ってカーボン担体の比表面積が増加したことに起因すると考えられる(図21)。また、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比が2.5 mol%以上の場合、空気中熱酸化処理温度の上昇に伴ってカーボン担体に含有される酸素濃度が増加した(図22)。前記の結果は、カーボン担体の熱酸化処理により、カーボン担体の炭素が酸化され、触媒金属の担持サイトとして使用され得る細孔が形成されたことを示唆する。さらに、図23に示すように、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比が増加すると、カーボン担体のD/G比は増加した。前記の結果は、カーボン担体の酸化剤処理により、カーボン担体のグラファイト構造の部分が減少し、非グラファイト構造の部分が増加したことを示唆する。
図1は、カーボン担体材料(トーカブラック#3855)の表面の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す図である。A:スケールバー:5 nm;B:スケールバー:10 nm。 図2は、本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法における酸化工程終了後の、カーボン担体材料の表面の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す図である。A:実施例1-1-7、1-1-8、1-2-2、1-2-5及び1-2-7と同一の条件で酸化剤処理による酸化工程実施後のカーボン担体のTEM画像;B:実施例1-1-12、1-1-13、1-2-10及び1-2-11と同一の条件で熱酸化処理による酸化工程実施後のカーボン担体のTEM画像。 図3は、実施例1-1-1〜1-1-16及び比較例1-1-1〜1-1-12の白金担持電極触媒における、カーボン担体の比表面積と該電極触媒のCO吸着量との関係を示す図である。 図4は、実施例1-1-1〜1-1-16及び比較例1-1-1〜1-1-12の白金担持電極触媒における、カーボン担体の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)と該電極触媒のCO吸着量との関係を示す図である。 図5は、実施例1-1-1〜1-1-16及び比較例1-1-1〜1-1-12の白金担持電極触媒における、カーボン担体のラマンスペクトルにおけるD-バンドピーク強度IDとG-バンドピーク強度IGとの強度比と該電極触媒のCO吸着量との関係を示す図である。 図6は、実施例1-1-1〜1-1-16及び比較例1-1-1〜1-1-12の白金担持電極触媒における、触媒金属の白金の(220)面の結晶子径と該電極触媒のCO吸着量との関係を示す図である。 図7は、実施例1-1-1〜1-1-16及び比較例1-1-1〜1-1-12の白金担持電極触媒における、CO吸着量とECSA維持率との関係を示す図である。 図8は、実施例1-2-1〜1-2-14及び比較例1-2-1〜1-2-5の白金合金担持電極触媒における、カーボン担体の比表面積と該電極触媒のCO吸着量との関係を示す図である。 図9は、実施例1-2-1〜1-2-14及び比較例1-2-1〜1-2-5の白金合金担持電極触媒における、カーボン担体の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)と該電極触媒のCO吸着量との関係を示す図である。 図10は、実施例1-2-1〜1-2-14及び比較例1-2-1〜1-2-5の白金合金担持電極触媒における、カーボン担体のラマンスペクトルにおけるD-バンドピーク強度IDとG-バンドピーク強度IGとの強度比と該電極触媒のCO吸着量との関係を示す図である。 図11は、実施例1-2-1〜1-2-14及び比較例1-2-1〜1-2-5の白金合金担持電極触媒における、触媒金属の白金の(220)面の結晶子径と該電極触媒のCO吸着量との関係を示す図である。 図12は、実施例1-2-1〜1-2-14及び比較例1-2-1〜1-2-5の白金合金担持電極触媒における、CO吸着量とECSA維持率との関係を示す図である。 図13は、熱酸化処理前、600℃で熱酸化処理後、610℃で熱酸化処理後、620℃で熱酸化処理後、及び630℃で熱酸化処理後のカーボン担体の細孔分布を示す図である。 図14は、カーボン担体材料の熱酸化処理温度と結果として得られたカーボン担体の細孔容積との関係を示す図である。 図15は、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と熱重量分析によって決定された5%質量減少温度との関係を示す図である。 図16は、実施例1-1-11〜1-1-16及び比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と該電極触媒のCO吸着量及び白金の(220)面の結晶子径との関係を示す図である。 図17は、実施例1-1-11〜1-1-16及び比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体の比表面積との関係を示す図である。 図18は、実施例1-1-11〜1-1-16及び比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体に含有される酸素濃度との関係を示す図である。 図19は、実施例1-1-11〜1-1-16及び比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の空気中熱酸化処理温度と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体のD/G比との関係を示す図である。 図20は、実施例1-1-1〜1-1-10及び比較例1-1-1の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比と該電極触媒のCO吸着量及び白金の(220)面の結晶子径との関係を示す図である。 図21は、実施例1-1-1〜1-1-10及び比較例1-1-1のカーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体の比表面積との関係を示す図である。 図22は、実施例1-1-11〜1-1-16及び比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体に含有される酸素濃度との関係を示す図である。 図23は、実施例1-1-11〜1-1-16及び比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒の調製における、カーボン担体の酸化剤(過マンガン酸カリウム)処理におけるK/C比と該電極触媒のCO吸着量及びカーボン担体のD/G比との関係を示す図である。
前記酸化剤は、カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して2.5〜14.5 mol%の範囲であることが好ましく、2.5〜7.5 mol%の範囲であることがより好ましく、4.0〜7.5 mol%の範囲であることが特に好ましい。前記酸化剤が14.5 mol%以下の濃度で使用される場合、結果として得られるカーボン担体のD/G比を前記で説明した範囲とすることができる。すなわち、カーボン担体のグラファイト構造の結晶性及び存在比を所望の範囲で維持することができる。また、前記酸化剤が2.5 mol%以上の濃度で使用される場合、カーボン担体材料の酸化反応を制御された態様で実施することができる。これにより、前記で説明した特徴を有するカーボン担体を得ることができる。
[実施例1-2-9]
実施例1-2-1において、酸化工程における硝酸ナトリウムの添加を廃止し、酸化工程における過マンガン酸カリウムの添加量を18 g(カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して6.8 mol%)に、30%過酸化水素水の添加量を10 mlに、アルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更し、且つ触媒金属担持工程におけるジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液の添加量を、最終生成物の総質量に対して20質量%のPt担持量となるPt仕込量(2.5 g)を含む量に、白金担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、コバルト担持後のアルゴンガス中熱処理温度を700℃に、それぞれ変更したこと以外は前記と同様の手順により、電極触媒を調製した。
図6に示すように、実施例1-1-1〜1-1-16の白金担持電極触媒は、4.5 nm以下の白金の(220)面の結晶子径及び24 ml/g-Pt以上のCO吸着量を有した。前記実施例の白金の(220)面の結晶子径は、3.2 nm以上且つ4.1 nm未満の範囲であった。これに対し、前記実施例と同一のカーボン担体材料を、酸化工程を実施することなくそのまま用いて、実施例1-1-1と同一の白金担持量(30質量%)となるように触媒金属担持工程を実施した比較例1-1-1、1-1-2及び1-1-3の白金担持電極触媒は、5.9 nmの白金の(220)面の結晶子径であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。また、実施例1-1-3と同一の白金担持量(20質量%)となるように触媒金属担持工程を実施した比較例1-1-8及び1-1-9の白金担持電極触媒は、4.6 nmの白金の(220)面の結晶子径であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。前記実施例と同一のカーボン担体材料を550〜570℃の範囲の温度で熱酸化処理する酸化工程を実施することによって調製された比較例1-1-10〜1-1-12の白金担持電極触媒は、4.2〜4.4 nmの範囲の白金の(220)面の結晶子径であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。さらに、市販のカーボン担体材料であるKetjenを、酸化工程を実施することなくそのまま用いて、実施例1-1-1と同一の白金担持量(30質量%)となるように触媒金属担持工程を実施した比較例1-1-7の白金担持電極触媒は、4.2 nmの白金の(220)面の結晶子径であり、24 ml/g-Pt未満のCO吸着量であった。

Claims (13)

  1. カーボン担体と、該カーボン担体に担持された白金及び白金合金から選択される触媒金属とを含み、該カーボン担体が5.0 nm以上の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)及び95〜170 m2/gの範囲の比表面積を有し、該触媒金属が4.5 nm以下の白金の(220)面の結晶子径を有する燃料電池用電極触媒。
  2. 前記カーボン担体のラマンスペクトルにおけるD-バンドピーク強度IDとG-バンドピーク強度IGとの強度比が0.9未満である、請求項1に記載の燃料電池用電極触媒。
  3. 前記カーボン担体が、1.0〜2.5 nmの平均半径の細孔を少なくとも有する、請求項1又は2に記載の燃料電池用電極触媒。
  4. 前記触媒金属が白金であり、且つ24 ml/g-Pt以上のCO吸着量を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用電極触媒。
  5. 前記触媒金属が白金合金であり、且つ18 ml/g-Pt以上のCO吸着量を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用電極触媒。
  6. 前記触媒金属の担持量が、電極触媒の総質量に対して15〜35質量%の範囲である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池用電極触媒。
  7. 前記触媒金属の担持量が、電極触媒の総質量に対して4.5質量%以上且つ15質量%未満の範囲である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池用電極触媒。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池用電極触媒を備えるカソード。
  9. 請求項1〜5及び7のいずれか1項に記載の燃料電池用電極触媒を備えるアノード。
  10. 請求項8に記載のカソード及び請求項9に記載のアノードの少なくともいずれかを備える燃料電池。
  11. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法であって、
    酸素存在下、580〜650℃の範囲の温度でカーボン担体材料を熱酸化処理するか、又はカーボン担体材料を酸化剤で処理することによってカーボン担体材料を酸化して、5.0 nm以上の炭素の(002)面の結晶子サイズ(Lc)及び95〜170 m2/gの範囲の比表面積を有するカーボン担体を得る酸化工程;
    前記酸化工程によって得られたカーボン担体と、白金及び白金合金から選択される触媒金属材料とを反応させて、該カーボン担体に触媒金属を担持させる触媒金属担持工程;
    を含む、前記方法。
  12. 前記酸化工程で使用される酸化剤が過マンガン酸カリウムを含む、請求項11に記載の方法。
  13. 前記酸化工程で使用される酸化剤が、カーボン担体材料の炭素原子の総モル数に対して2.5〜14.5 mol%の範囲の量である、請求項11又は12に記載の方法。
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