JP2015185606A - パワーモジュール用基板の製造方法 - Google Patents
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Description
この場合、特許文献2では、フッ硝酸を用いてエッチング処理を施すことにより、ガラス化された熱変性層を除去することが提案されており、このように熱変性層を除去することにより、熱変性層に生じた微小なクラックを起点とするセラミックス基板の割れの発生を抑制できることが記載されている。
レーザ加工によりスクライブラインを形成するパワーモジュール用基板の製造方法では、特許文献2に記載されるように、レーザ光の熱によってガラス化された熱変性層が形成される。この点、特許文献2では、ガラス化された熱変性層がフッ硝酸によるエッチング処理により除去可能であることが記載されているが、セラミックス母材と金属層とのろう付け接合前にセラミックス母材をフッ硝酸によりエッチング処理をした場合は、セラミックス母材にフッ素が残存することで、パワーモジュールの冷熱サイクル負荷時にセラミックス基板と金属層との剥離を生じさせ、接合信頼性を低下させることがわかった。
一方で、セラミックス母材と金属層(回路層)とをろう付け接合した後にエッチング処理をした場合には、熱変性層が完全に除去しきれないことがわかった。この場合においてパワーモジュール用基板に無電解メッキ処理を行うと、残存する熱変性層にメッキが付着することがあり、その付着したメッキによって絶縁距離が短縮されることにより、放電が誘発され、耐電圧性を低下させていることがわかった。
したがって、本発明のパワーモジュール用基板の製造方法においては、以下の方法により問題を解決した。
したがって、パワーモジュール用基板に無電解メッキ処理を行った際に、セラミックス基板の端縁にメッキが付着することを回避することができるので、良好な絶縁性能を確保することができる。
なお、セラミックス母材と金属板とのろう付け接合後にセラミックス母材のスクライブラインに形成された熱変性層を除去しようとする場合には、熱変性層を完全に除去することが難しくなる。この場合、スクライブラインに形成された熱変性層の一部が、セラミックス母材と金属板とのろう付け接合の際に、高温に曝されることにより、より安定な酸化物へと変化し、処理液へ溶解しにくくなることが要因であると考えられる。
アルミニウム用エッチング液に、塩化鉄、塩化銅又は水酸化ナトリウムを主成分とする水溶液を用いることで、スクライブラインに形成された熱変性層を容易に除去することができる。
図2は、本発明のパワーモジュール用基板の製造方法により製造されるパワーモジュール用基板3を用いたパワーモジュール1を示している。
このパワーモジュール1は、パワーモジュール用基板3と、パワーモジュール用基板3の表面に搭載された半導体チップ等の電子部品4と、裏面に取り付けられたヒートシンク5とを備えている。
(レーザ加工工程)
まず、図3(a)に示すように、板状のセラミックス母材20の表面にスクライブライン21を形成する。この図3(a)に示すように、スクライブライン21は、レーザ光Lを照射することにより、セラミックス母材20の表面を切削加工して形成される。この際、スクライブライン21上には、レーザ光の熱によってガラス化された熱変性層22が形成される。この熱変性層22は、アモルファス状のアルミニウム酸化物やアルミニウムの遊離物等が混在して形成されたものであり、深さ1μm〜40μm程度に形成されている。
なお、レーザ加工工程では、例えばCO2レーザ、YAGレーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ等を使用してスクライブライン21の加工を行うことができる。
次に、図示は省略するが、スクライブライン21が形成されたセラミックス母材20を、アルミニウム用エッチング液に浸漬させることにより洗浄する。アルミニウム用エッチング液は、塩化鉄、塩化銅又は水酸化ナトリウムを主成分とする水溶液とされ、種々の添加剤が添加されるものを用いることもできる。なお、アルミニウム用エッチング液は、回路層6及び金属層7を純アルミニウム又はアルミニウム合金で形成する場合、後述するエッチング工程で用いられるエッチング液と同じものを用いることができる。
そして、セラミックス母材20をアルミニウム用エッチング液に浸漬させることで、図3(b)に示すように、セラミックス母材20のスクライブライン21上に形成された熱変性層22が除去される。この際のアルミニウム用エッチング液の温度や浸漬時間は、深さ1μm〜40μm程度の熱変性層22が除去される条件に設定される。
そして、図3(c)に示すように、洗浄工程後のセラミックス母材20に回路層6及び金属層7となる金属板60,70をろう付け接合する。具体的には、セラミックス母材20の両面に、それぞれろう材箔を介在させて金属板60,70を積層し、これらの積層体を加圧した状態のまま真空中で加熱することにより、セラミックス母材20と金属板60,70とをろう付け接合した接合体30を形成する。
次に、接合体30のセラミックス母材20に接合された金属板60,70をエッチングすることにより、回路層6及び金属層7のパターンを形成する。これにより、図3(d)に示すように、セラミックス母材20には、スクライブライン21により区画された各領域に回路層6及び金属層7が設けられる。
そして、ダイシング装置や基板分割装置等の切断手段により、セラミックス母材20をスクライブライン21に沿って分割することで、図3(e)に示すように、セラミックス母材20が個片化され、複数のパワーモジュール用基板3が製造される。
最後に、図示は省略するが、各パワーモジュール用基板3に金メッキ、銀メッキ、ニッケルメッキ等の無電解メッキ処理を施すことにより、回路層6及び金属層7に無電解メッキが形成されたパワーモジュール用基板3を製造することができる。
したがって、パワーモジュール用基板3に無電解メッキ処理を行った際に、セラミックス基板2の端縁(スクライブライン21であったところ)にメッキが付着することを回避することができ、良好な絶縁性能を確保することができる。
第1実施形態のパワーモジュール用基板の製造方法(図1参照)では、セラミックス母材20の分割工程の前に洗浄工程を設けることとしていたが、第2実施形態のパワーモジュール用基板の製造方法(図2参照)では、セラミックス母材20をスクライブライン21に沿って分割する分割工程の後に、洗浄工程や金属板60,70の接合工程を設けることとしている。なお、第2実施形態においては、第1実施形態のものと同様の構成については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
最後に、各パワーモジュール用基板3に無電解メッキを施すことにより、回路層6及び金属層7に無電解メッキが形成されたパワーモジュール用基板3を製造することができる。
本発明例及び比較例として、厚み0.635mmのAlNからなるセラミックス基板2に、厚み0.6mmの4N‐Alからなる回路層6と、厚み0.6mmの4N‐Alからなる金属層7とを、Al‐Si系のろう材により接合したパワーモジュール用基板3の試料を作製した。
本発明例及び比較例の試料は、波長10μmのCO2レーザを用いて深さ100μmのスクライブライン21(なお、熱変性層の厚さは30μmであった)を形成したセラミックス母材に、いずれも回路層6となる金属板60及び金属層7となる金属板70のろう付け接合前の段階で、表1に示す主成分の水溶液からなる洗浄液に浸漬させることにより洗浄を行った。各試料の洗浄条件を、表1に示す。
なお、比較例2の試料に関しては、セラミックス母材20の洗浄を行わなかったため、表1の「洗浄液」及び「洗浄条件」の欄を「−」で示した。
表1に結果を示す。
例えば、上記実施形態においては、パワーモジュール用基板として、図2に示すように、セラミックス基板2に回路層6及び金属層7が積層されたものについて説明を行ったが、これに限定されるものではない。本発明のパワーモジュール用基板の製造方法は、セラミックス基板と回路層からなるパワーモジュール用基板にも適用可能であるし、図6に示すように、回路層6Aが銅板61とアルミニウム板62とを接合した積層回路層6Aで形成されるパワーモジュール用基板3A等の種々の構成において適用可能である。
2 セラミックス基板
3,3A パワーモジュール用基板
4 電子部品
5 ヒートシンク
6,6A 回路層
7 金属層
20 セラミックス母材
21 スクライブライン
22 熱変性層
60,70 金属板
61 銅板
62 アルミニウム板
Claims (3)
- セラミックス母材に形成されたスクライブラインに沿って該セラミックス母材を複数のセラミックス基板に分割して、該セラミックス基板に金属層が積層されたパワーモジュール用基板を複数製造する方法であって、
前記セラミックス母材にレーザ光を照射して前記スクライブラインを形成するレーザ加工工程と、
前記スクライブラインが形成された前記セラミックス母材をアルミニウム用エッチング液で洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程後の前記セラミックス母材に前記金属層を形成する金属板をろう付け接合する接合工程と、
前記セラミックス母材に接合された金属板をエッチングすることによりパターンを形成するエッチング工程と、
前記エッチング工程後に前記セラミックス母材を前記スクライブラインに沿って分割する分割工程と、
前記分割工程後に前記金属層に無電解メッキを施すメッキ工程と
を備えることを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。 - セラミックス母材に形成されたスクライブラインに沿って該セラミックス母材を複数のセラミックス基板に分割して、該セラミックス基板に金属層が積層されたパワーモジュール用基板を複数製造する方法であって、
前記セラミックス母材にレーザ光を照射して前記スクライブラインを形成するレーザ加工工程と、
前記スクライブラインが形成された前記セラミックス母材を該スクライブラインに沿って分割して複数の前記セラミックス基板を形成する分割工程と、
分割された前記セラミックス基板をアルミニウム用エッチング液で洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程後の前記セラミックス基板に金属板をろう付け接合して金属層を形成する接合工程と、
前記接合工程後に前記金属層に無電解メッキを施すメッキ工程と
を備えることを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。 - 前記アルミニウム用エッチング液は、塩化鉄、塩化銅又は水酸化ナトリウムを主成分とする水溶液とされることを特徴とする請求項1又は2に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
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