JP7020137B2 - セラミックス-金属接合体の製造方法、製造装置及びセラミックス-金属接合体 - Google Patents
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Description
この場合、金属層として銅又は銅合金が用いられ、ろう材としてCu-P系ろう材が用いられると、ろう材のエッチングレートが、銅又は銅合金からなる金属層のエッチングレートより低いため、ろう材のエッチング速度が遅く、金属層がエッチングされて個々に分離されたとしても、ろう材のみがエッチングされない状態でろう溜まり空間に残り易い。このろう溜まり空間に残ったろう材がスクライブラインの真上に配置された状態であると、セラミックス基板をスクライブラインで分割することが難しくなる。
[セラミックス-金属接合体の構成]
図1は、個片化されることによりパワーモジュール用基板100(図5参照)となるセラミックス-金属接合体10を示す断面図である。
セラミックス-金属接合体10は、略矩形のセラミックス母材20の表面に略矩形の金属板30がろう付けされてなり、角部(位置決め角部)11を形成する2辺に沿って、端面11a,11bから表面(セラミックス母材20との接合面とは反対側の面)にろう染み43が形成されるとともに、反対側の角部12の端面12a,12bにはろうこぶ(図示省略)が形成されている。また、これら表面に位置するろう染み43のそれぞれは、後述するセラミックス母材20に形成されているスクライブライン22の真上には、形成されていない。
ここで、ろう染みとは、ろう材40が溶融した後固化したものであり、厚さが0.1mm以下であって、凹凸の小さい薄膜状の付着物を呼ぶ。また、ろうこぶとは、部分的に突出する厚さ1mm以上のこぶ状の付着物を呼ぶ。
このセラミックス母材20の表面には、スクライブライン22が形成されており、このスクライブライン22は、例えば、レーザ光を照射することにより、セラミックス母材20の表面を線状に除去して形成される。このスクライブライン22は、セラミックス母材20に形成される溝部であり、セラミックス母材20の分割の起点となる部位である。このスクライブライン22は、セラミックス母材20の表面に、図1の破線及び図3の実線で示すように、端面11aに沿う方向に延びる4本のスクライブラインと、端面11bに沿う方向に延びる3本のスクライブラインとからなる。
セラミックス母材20と金属板30とを接合するろう材40(図3参照)は、略矩形箔状であり、本実施形態ではCu-P系合金により形成されている。なお、このろう材40は、例えばCu及びPの他、AgやSnを含んでいてもよい。
一方、位置決め角部11とは対角上の角部12を形成する2辺に沿う端面12a,12bは位置決めに利用されないことから、たとえこれら端面12a,12bにろうこぶが形成されていても、除去する必要はない。
図2は、セラミックス-金属接合体10の接合工程を行う製造装置70を示す図である。
この製造装置70は、セラミックス母材20の両面にろう材40を介して金属板30を積層した積層体50を、積層方向に挟んで加熱しながら加圧する複数の加圧板60と、この加圧板60及び積層体50を保持する4本の断面L字状の支柱71a,71b,71c,71dとを有する。加圧板60は、位置決め角部61を支柱71aに当接させることにより位置決めされている。具体的には、加圧板60は、位置決め角部61を形成する2つの端面61a,61bのうち、端面61aを略L字状の支柱71a,71bの内側の面に当接させるとともに、端面61bを略L字状の支柱71a,71dの内側の面に当接させることにより位置決めされている。
つまり、各積層体50において、各端面21a,31a,41aが加圧板60の端面61aに重なるとともに、各端面21b,31b,41bが加圧板60の端面61bに重なるように、各部材が積層される。
また、加圧板60の面積は、積層体50(セラミックス母材20、金属板30、ろう材40)の面積よりも大きく設定されている。したがって、積層体50において、位置決めに用いられていない各端面は、加圧板60の各端面よりも内側に位置している。
また、各逃がし面63は、セラミックス-金属接合体10のダミー部10Bの幅より若干小さい幅で、例えば、加圧板60の板厚の5~20%の深さの凹部を形成する段付加工により設けられる。この積層体50と加圧板60とが積層されることにより、この逃がし面63と積層体50のダミー部10Bの表面との間に、ろう溜まり空間52が形成される。
例えば、本実施形態では、金属板30の厚さは0.6mm、セラミックス母材20の厚さは0.635mm、加圧板60の厚さは1mmに設定され、加圧板60の逃がし面63は、幅L2が2mm以上4mm以下、深さL3が0.05mm以上2.0mm以下、の大きさで設けられる。また、所定間隔L4は、1mm以上2mm以下に設定される。
この製造装置70を用いて、セラミックス母材20、金属板30、及びろう材40を積層してなる積層体50を一対の加圧板60間で加熱することにより、セラミックス母材20の表面に金属板30を接合する接合工程を行う。このとき、溶融してセラミックス母材20と金属板30とを接合したろう材40の余剰分は、図4に矢印Aで示すように、セラミックス母材20と金属板30との間から押し出されて、各端面21b,31bを通じてろう溜まり空間52へと流れ込む。これにより、ろう溜まり空間52には、余剰ろうの量に応じて厚さの小さいろう染み43が形成される。このように、ろう溜まり空間52が余剰ろうを引き込むことにより、各端面21a,21b,31a,31bにはろうこぶが形成されることがない。また、セラミックス-金属接合体10のスクライブライン22の真上にろう溜まり空間52が形成されていないので、このスクライブライン22の真上には、ろう染み43が形成されることがない。
これに対し、本実施形態では、ろう染み43がスクライブライン22の真上に形成されていないので、スクライブライン22に沿ってセラミックス-金属接合体10を確実に個々に分離できる。これにより、図5に示すような所望の回路パターンP等が正確な位置に形成されたパワーモジュール用基板100を製造することができる。
図5は、パワーモジュール用基板100が用いられたパワーモジュール110を示す断面図である。
このパワーモジュール用基板100に対して、冷却器113の接合、電子部品111のはんだ付け、ワイヤボンディング等が行われることにより、パワーモジュール110が形成される。パワーモジュール110は、パワーモジュール用基板100と、このパワーモジュール用基板100の表面に搭載された半導体チップ等の電子部品111と、パワーモジュール用基板100の裏面に接合された冷却器113とから構成される。この冷却器113とパワーモジュール用基板100との間は、ろう付け、はんだ付け、ボルト等によって接合される。
なお、本発明は前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、加圧板60の両面に逃がし面63が形成されることとしたが、これに限らず、例えば、加圧板60の片面に加圧面にのみ逃がし面63が形成されることとしてもよい。この場合、加圧板60により挟持された積層体50を1組として、各組を重ねて接合工程がなされることとなる。
一方、比較例1においては、セラミックス母材の周囲を囲むように逃がし面を形成した。すなわち、比較例1においては、逃がし面は連続しており、実施例1~8のように分割されていない。
表1に示す各条件下において製造された10個のセラミックス-金属接合体を観察し、セラミックス母材に形成されたスクライブラインの真上にろうが固化している箇所が認められる場合を「不良」、ろうが固化されている箇所が認められない場合を「良好」と判断した。この際、10個全てのセラミックス-金属接合体において「良好」と判断された場合を「〇」と判定し、「不良」と判定された数が5個以下で、かつ固化したろうの厚みが分割に影響がない厚み(例えば、0.1mm)以下の場合を「△」と判定し、10個すべてのセラミックス-金属接合体において「不良」と判断された場合を「×」と判定した。
ここで、逃がし面の幅L2及び逃がし面の高さL3は、余剰ろう材を溜めるろう溜まり空間の体積に影響し、ともに値が大きい方がスクライブライン上へのろう材の侵入を防止できる。つまり、実施例1,3~5は、これら上記L2及びL3の値が大きく、ろうだまり空間の体積が大きいため、評価が「O」であった。なお、実施例2は、実施例1,3~5に比べて上記L2及びL3の値が小さいが、ろう材箔の厚さL1が他の実施例の半分であることから、評価が「〇」であった。
また、実施例7及び8は、上記L2又はL3が小さく、ろう溜まり空間の体積が小さいため、溶融したろうがスクライブライン上に拡散し、一部のスクライブラインの真上で固化していたので、評価が「△」であった。
なお、逃がし面間の幅L4が小さいと、溶融したろうがスクライブライン上に拡散し易い。つまり、実施例6は、上記L2及びL3の値が大きいものの、逃がし面間の幅L4が小さいため、溶融したろうがスクライブライン上に拡散し、一部のスクライブラインの真上で固化していたので、評価が「△」であった。
一方、比較例1は、逃がし面が分割されていない、すなわち、逃がし面がスクライブラインの真上に形成されているため、評価が「×」であり、全てのセラミックス-金属接合体においてスクライブラインの真上にろうが固化している箇所が認められた。
10A 製品部
10B ダミー部
11 角部(位置決め角部)
11a,11b 端面
20 セラミックス母材
21 位置決め角部
21a,21b 端面
30 金属板
31 位置決め角部
31a,31b 端面
40 ろう材
41 位置決め角部
41a,41b 端面
43 ろう染み
50 積層体
52 ろう溜まり空間
60 加圧板
61 位置決め角部
61a,61b 端面
63 逃がし面
70 製造装置
71a,71b,71c,71d 支柱
100 パワーモジュール用基板
110 パワーモジュール
111 電子部品
112 はんだ材
113 冷却器
113a 流路
P 回路パターン
Claims (3)
- 複数のセラミックス基板に分割するためのスクライブラインを有するセラミックス母材の表面に銅又は銅合金からなる金属板がCu-P系ろう材を介して積層された積層体を一対の加圧板により挟持して加熱することにより、前記セラミックス母材の表面に前記金属板を接合して金属層を形成する接合工程と、
前記積層体を前記スクライブラインに沿ってエッチングして前記金属層を前記スクライブラインにより囲まれた領域ごとに分離するエッチング工程と、を有し、
前記加圧板の加圧面に、前記積層体の表面から離間する所定幅の逃がし面が前記加圧板の1つの角部を形成する2辺に沿って、かつ前記積層体を挟持したときに前記スクライブラインの真上を1mm以上2mm以下の幅で避ける位置に複数設けられており、前記接合工程において、前記積層体の表面と複数の前記逃がし面との間にろう溜まり空間を形成することを特徴とするセラミックス-金属接合体の製造方法。 - 複数のセラミックス基板を分割するためのスクライブラインが形成されたセラミックス母材の表面に銅又は銅合金からなる金属板がCu-P系ろう材によりろう付けされてなるセラミックス-金属接合体を製造するための装置であって、
前記セラミックス母材の表面に前記Cu-P系ろう材を介して前記金属板を積層した積層体を積層方向に挟持する一対の加圧板を有し、
前記加圧板の加圧面には、前記積層体を挟持したときに、前記積層体の表面から離間する所定幅の逃がし面が前記加圧板の1つの角部を形成する2辺に沿って、かつ前記スクライブラインの真上を避ける位置に複数設けられており、前記積層体の表面と複数の前記逃がし面との間にろう溜まり空間が形成されることを特徴とするセラミックス-金属接合体の製造装置。 - 複数のセラミックス基板に分割するためのスクライブラインを有するセラミックス母材と、
前記セラミックス母材の表面にCu-P系ろう材により接合され、銅又は銅合金からなる金属層と、を備え、
前記金属層における前記セラミックス母材との接合面と反対側の面には、1つの角部を形成する2辺に沿い、かつ、前記スクライブラインの真上を避けた位置のみに前記Cu-P系ろう材が溶融後に固化したろうが付着していることを特徴とするセラミックス-金属接合体。
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