JP2015174405A - 加熱転写用転写箔シート及びその製造方法、並びに化粧部材及びその製造方法 - Google Patents

加熱転写用転写箔シート及びその製造方法、並びに化粧部材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】意匠性を損なうことなく、かつ初期密着性及び耐久密着性を良好とした加熱転写用転写箔シートを提供する。
【解決手段】基材11上に、表面保護層12及びヒートシール層13をこの順に有してなる転写箔シート10であって、前記表面保護層は電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含有してなり、前記ヒートシール層は、非架橋性アクリル樹脂、非架橋性ポリウレタン樹脂及びブロックイソシアネートAを含有してなり、かつ前記非架橋性アクリル樹脂と前記非架橋性ポリウレタン樹脂との質量比が10:90〜50:50である加熱転写用転写箔シート。
【選択図】図1

Description

本発明は、加熱転写用転写箔シート及びその製造方法、並びに化粧部材及びその製造方法に関する。
建材分野等において、使用する部材を加飾したい場合には、化粧シートが一般的に用いられている。化粧シートは、複雑な形状を加飾することを考慮したとき、薄膜である方が加工性の観点では優位である。また環境面において、建材分野等では、木質基材や樹脂基材等の部材をリサイクルするという概念は一般的であり、リサイクル性を損なわないためにも、化粧シートは極力薄膜であることが好ましい。
化粧シートとしては、非転写タイプと転写タイプとに大別されるが、薄膜化という観点からは、転写タイプが好ましい。転写タイプの化粧シートの基本構成は、離型性基材上に表面保護層を有するものである。
例えば特許文献1には、支持体シート上に、剥離可能な転写層として、電離放射線硬化性樹脂の架橋硬化物から形成された表面保護層、プライマー層、装飾層及び接着剤層を有する転写シートが開示されている。
特開2001−180190号公報
転写箔シートの表面保護層は、耐擦傷性を付与するために、特許文献1のように、電離放射線硬化性樹脂組成物から形成される場合が多い。このような電離放射線硬化性樹脂組成物から形成された表面保護層は、プライマー層、装飾層及び接着剤層等の他の層との密着性が悪いという問題がある。
特許文献1では、平均分子量2万以下のポリメチルメタクリレートからプライマー層を形成することで、プライマー層を介して、電離放射線硬化性樹脂組成物から形成される表面保護層と、装飾層との密着性向上を図っている。また、ガラス転移温度の低い樹脂は比較的密着性に優れるため、プライマー層等をガラス転移温度の低い樹脂から形成することにより、電離放射線硬化性樹脂組成物から形成される表面保護層と、他の層との密着性を向上する手段も考えられる。
しかし、上記のように分子量やガラス転移温度を調整する手段の場合、初期密着性を良好にできたとしても、紫外線等の環境因子を考慮した際の経時的な密着性(以下、「耐久密着性」と称する場合がある。)を良好にすることができない。
また、プライマー層等を、密着性に優れる樹脂と、耐久性に優れる樹脂との混合により構成することも考えられるが、初期密着性及び耐久密着性をともに良好にすることは困難であり、さらに、樹脂が相溶せず白化して意匠性の低下を招く場合がある。
一方、密着性を向上する手段として、プライマー層等を、架橋性樹脂及び硬化剤(例えば、ポリオール系樹脂及びイソシアネート系硬化剤)を含む樹脂組成物から形成することも行われている。しかし、該組成物から形成したプライマー層等でも初期密着性及び耐久密着性をともに良好にすることは困難であり、さらに、層中の架橋度合いによって、密着性や転写性等の品質にブレを生じるという問題がある。また、架橋性樹脂及び硬化剤に、さらに上述したような密着性が良好な樹脂を混合する場合、樹脂が相溶せず白化して意匠性の低下を招く場合がある。
また、転写箔シートは、転写作業の効率性を考慮すると、表面保護層上に接着剤層を有する構成が好適である。しかし、上述のように、表面保護層と接着剤層との密着性を良好にするためにはプライマー層が必須の状況であり、前記の課題に加え、転写箔シートの総厚みが増加し、被転写部材への追従性が低下したり、被転写部材の質感が低下するという問題があった。
本発明は、意匠性を損なうことなく、かつプライマー層の有無に関わらず、初期密着性及び耐久密着性を良好とした加熱転写用転写箔シート及びその製造方法、並びに該転写箔シートを用いた化粧部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、以下の[1]〜[12]の加熱転写用転写箔シート及びその製造方法、並びに化粧部材及びその製造方法を提供する。
[1]基材上に、表面保護層及びヒートシール層をこの順に有してなる転写箔シートであって、前記表面保護層は電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含有してなり、前記ヒートシール層は、非架橋性アクリル樹脂、非架橋性ポリウレタン樹脂及びブロックイソシアネートAを含有してなり、かつ前記非架橋性アクリル樹脂と前記非架橋性ポリウレタン樹脂との質量比が10:90〜50:50である加熱転写用転写箔シート。
[2]前記表面保護層中にブロックイソシアネートBを含有してなる上記[1]に記載の加熱転写用転写箔シート。
[3]前記表面保護層とヒートシール層との間にプライマー層を有してなる上記[1]又は[2]に記載の加熱転写用転写箔シート。
[4]以下の(1)、(2)の工程を順に行う加熱転写用転写箔シートの製造方法。
(1)基材上に、電離放射線硬化性樹脂組成物を含有してなる表面保護層用インキから表面保護層を形成する工程
(2)前記表面保護層上に直接又は他の層を介して、非架橋性アクリル樹脂、非架橋性ポリウレタン樹脂及びブロックイソシアネートAを含有してなり、かつ前記非架橋性アクリル樹脂と前記非架橋性ポリウレタン樹脂との質量比が10:90〜50:50であるヒートシール層用インキを塗布し、ブロックイソシアネートAのマスク剤の解離温度未満の温度で乾燥して、ヒートシール層を形成する工程
[5]被転写部材と、上記[1]〜[3]の何れかに記載の加熱転写用転写箔シートとを、前記加熱転写用転写箔シートのヒートシール層側の面が前記被転写部材に対向する向きで一体化してなる基材付き化粧部材。
[6]前記被転写部材と前記ヒートシール層との間に意匠シートを介在してなる上記[5]に記載の基材付き化粧部材。
[7]上記[5]又は[6]に記載の基材付き化粧部材の表面の基材を剥離してなる化粧部材。
[8]以下の(a)、(b)の工程を有する基材付き化粧部材の製造方法。
(a)被転写部材と、請求項1〜3の何れかに記載の加熱転写用転写箔シートとを、前記加熱転写用転写箔シートのヒートシール層側の面が前記被転写部材に対向する向きで一体化する工程
(b)前記加熱転写用転写箔シートを、ヒートシール層中のブロックイソシアネートAのマスク剤の解離温度以上の温度で熱処理する工程
[9]被転写部材と、上記[1]〜[3]の何れかに記載の加熱転写用転写箔シートのヒートシール層側の面とを接触させて熱処理することにより、前記(a)及び(b)の工程を同時に行う上記[8]に記載の基材付き化粧部材の製造方法。
[10]前記被転写部材と意匠シートとを接着してなる意匠シート付き被転写部材を予め作製し、該意匠シート付き被転写部材の意匠シート側の面と、上記[1]〜[3]の何れかに記載の加熱転写用転写箔シートのヒートシール層側の面とを接触させて熱処理することにより、前記(a)及び(b)の工程を同時に行う上記[8]に記載の基材付き化粧部材の製造方法。
[11]上記[1]〜[3]の何れかに記載の加熱転写用転写箔シートのヒートシール層側の面と、意匠シートとを接触させて熱処理し、該転写箔シートと該意匠シートとを積層した積層シートを作製することにより、前記(b)の工程を行い、該積層シートの意匠シート側の面と前記被転写部材とを接着して一体化することにより、前記(a)の工程を行う上記[8]に記載の基材付き化粧部材の製造方法。
[12]上記[8]〜[11]の何れかに記載の基材付き化粧部材を製造した後、基材付き化粧部材の表面の基材を剥離する化粧部材の製造方法。
本発明の加熱転写用転写箔シート及び化粧部材は、意匠性を損なうことなく、初期密着性及び耐久密着性を良好にすることができる。しかも、本発明の加熱転写用転写箔シート及び化粧部材は、プライマー層の有無に関わらず前記効果を発揮することができる。
また、本発明の転写箔シート及び化粧部材の製造方法は、該性能を有する転写箔シート及び化粧部材を効率よく製造することができる。
本発明の加熱転写用転写箔シートの一実施形態を示す断面図である。 本発明の基材付き化粧部材の一実施形態を示す断面図である。 本発明の基材付き化粧部材の他の実施形態を示す断面図である。 本発明の基材付き化粧部材の製造方法の一実施形態の工程の一部を示す図である。 本発明の基材付き化粧部材の製造方法の他の実施形態の工程の一部を示す図である。 本発明の基材付き化粧部材の製造方法の他の実施形態の工程の一部を示す図である。
[加熱転写用転写箔シート]
本発明の加熱転写用転写箔シートは、基材上に、表面保護層及びヒートシール層をこの順に有してなる転写箔シートであって、前記表面保護層は電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含有してなり、前記ヒートシール層は、非架橋性アクリル樹脂、非架橋性ポリウレタン樹脂及びブロックイソシアネートAを含有してなり、かつ前記非架橋性アクリル樹脂と前記非架橋性ポリウレタン樹脂との質量比が10:90〜50:50であるものである。
図1は、本発明の加熱転写用転写箔シート10の一実施形態を示す断面図である。図1の加熱転写用転写箔シート10は、基材11上に、表面保護層12及びヒートシール層13を有してなるものである。
図1の加熱転写用転写箔シート10は、ヒートシール層13側の面を図示しない被転写部材に接着させ、接着後に基材11のみを剥離することにより、ヒートシール層13及び表面保護層12を被転写部材に転写して、化粧部材を作製することができる。
(基材)
基材としては、各種紙類やプラスチックフィルム等の支持体として機能するものであれば特に制限されることなく使用することができるが、被転写部材の被転写面が平面でない場合の被転写部材への追従性の観点から、プラスチックフィルムが好適である。
プラスチックフィルムとしては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリアリレート樹脂、又はポリイミド樹脂等が挙げられる。
これらプラスチックフィルムの中では、寸法安定性や強度の観点からは、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好適であり、必要に応じて延伸加工されていても良い。
基材の厚みは特に限定されないが、転写の際の作業性の観点から、20〜100μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。
基材上に設けられる表面保護層、ヒートシール層及び必要に応じて設けられるその他の層は、被転写部材に接着された後、基材のみが剥離され、基材以外の転写箔シートの構成層が転写される。したがって、基材と表面保護層との間は剥離可能に構成する必要がある。基材と表面保護層とを剥離可能にするためには、例えば、表面保護層を設ける側の基材表面をシリコーン系離型剤等の離型剤で離型処理を施して接着力を弱めたり、接着力が適切になるように、基材の材料と、表面保護層の材料との組み合わせを選択する手段が挙げられる。また、基材と表面保護層との適切な接着力を確保するために、基材上に、ケミカルコーティングやサンドブラスト処理で凹凸を付与したり、接着力を向上する樹脂等からなる易接着層を形成したり、コロナ放電処理を施すことは差し支えない。
(表面保護層)
表面保護層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含有してなるものであり、被転写部材に転写された後に最表面に位置する。
電離放射線硬化性樹脂組成物は少なくとも電離放射線硬化性樹脂を含有してなるものである。
電離放射線硬化性樹脂としては、従来電離放射線硬化性の樹脂として慣用されている樹脂を用いることができ、例えば、電離放射線硬化性官能基である(メタ)アクリロイル基を有してなる(メタ)アクリレート系樹脂を用いることができる。なお、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
(メタ)アクリレート系樹脂としては、ウレタン(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレート等のモノマー、オリゴマー及びプレポリマーが挙げられる。
これら(メタ)アクリレート系樹脂の中でも、ヒートシール層等との密着性及び塗膜強度のバランスの観点からは、ウレタンアクリレート、アクリルアクリレート、ポリエステルアクリレート及びエポキシアクリレート等のアクリロイル基を有するアクリレート系樹脂が好適であり、その中でもウレタン(メタ)アクリレートが好適である。
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。本発明では、電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線で硬化する電子線硬化性樹脂が好適である。電子線硬化性樹脂は、表面保護層中に紫外線吸収剤を添加しても硬化が阻害されず、また、無用剤化もしやすい点で優れている。
電離放射線硬化性樹脂組成物が紫外線硬化性である場合には、電離放射線硬化性組成物は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
表面保護層中には、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を、表面保護層の全固形分中の70質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上含有することがさらに好ましい。
表面保護層中には、ブロックイソシアネートBを含有することが好ましい。表面保護層中にブロックイソシアネートBを含有することにより、被転写部材への熱転写時にブロックイソシアネートBのマスク剤を解離させることで、イソシアネートが表面保護層中で反応するとともに、表面保護層とヒートシール層等との界面で反応し、耐久密着性をより良好にすることができる。ブロックイソシアネートBは、後述するブロックイソシアネートAと同様のものを用いることができる。
ブロックイソシアネートBの含有量は、表面保護層の全固形分中の1〜20質量%であることが好ましく、2〜15質量%であることがより好ましく、3〜10質量%であることがさらに好ましい。
表面保護層の厚みは、表面保護層の耐擦傷性等の観点から、1〜15μmであることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましい。
表面保護層は、電離放射線硬化性樹脂組成物を含む表面保護層用インキから形成することができる。表面保護層用インキには、ブロックイソシアネートBを含有してもよく、さらに本発明の効果を阻害しない範囲で、基材剥離調整剤、希釈溶剤、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含有してもよい。
基材剥離調整剤は、基材と表面保護層の剥離強度(転写強度)が弱い場合に電離放射線硬化性樹脂組成物中に添加する。基材剥離調整剤は基材を構成する樹脂と同系統の樹脂が選択され、その含有量は塗膜性能及びインキ分散性の観点より、表面保護層の全樹脂成分中の0.1〜3.0質量%程度が好ましい。このことより、基材と表面保護層との分子間力が上がることで剥離強度が向上し、剥離強度調整が可能となる。
(ヒートシール層)
本発明では接着剤層として熱転写可能なヒートシール層を用いる。ヒートシール層は、非架橋性アクリル樹脂、非架橋性ポリウレタン樹脂及びブロックイソシアネートAを含有してなり、かつ非架橋性アクリル樹脂と非架橋性ポリウレタン樹脂との質量比が10:90〜50:50であるものである。
ヒートシール層を上記構成とすることにより、意匠性を損なうことなく、さらに、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含有する表面保護層等と、ヒートシール層との初期密着性及び耐久密着性を、プライマー層の有無に関わらず良好にすることができる。一方、ヒートシール層が上記構成を1つでも有さない場合、上記効果は発揮できない。
非架橋性アクリル樹脂又はブロックイソシアネートAを含有しない場合、耐久密着性を良好にすることができず、非架橋性ポリウレタン樹脂を含有しない場合、初期密着性及び耐久密着性を良好にすることができない。
また、非架橋性アクリル樹脂、非架橋性ポリウレタン樹脂及びブロックイソシアネートAの3成分を全て含有していても、非架橋性ポリウレタン樹脂に対して非架橋性アクリル樹脂が少なすぎる場合は耐久密着性を良好にすることができず、非架橋性ポリウレタン樹脂に対して非架橋性アクリル樹脂が多すぎる場合は、初期密着性及び耐久密着性を良好にすることができないとともに、樹脂の相溶性が低下して表面保護層が白化し、意匠性の低下を招く。
なお、非架橋性アクリル樹脂及び非架橋性ポリウレタン樹脂の一方又は両方を、架橋性のアクリル樹脂及び架橋性のポリウレタンに変更した場合、初期密着性及び耐久密着性を良好にすることができないとともに、樹脂の相溶性が低下して表面保護層が白化し、意匠性の低下を招く。
本発明のヒートシール層は、表面保護層との密着性のみならず、後述する他の層、遺書シート、被着材との密着性にも優れる点で好適である。
非架橋性アクリル樹脂と非架橋性ポリウレタン樹脂との質量比は、上述の効果をより発揮しやすくするために、20:80〜45:55であることが好ましい。
非架橋性アクリル樹脂及び非架橋性ポリウレタン樹脂は、これら樹脂自体が3次元架橋した網目状の立体的分子構造を有しておらず、線状の分子構造を有するものである。さらに、非架橋性アクリル樹脂及び非架橋性ポリウレタン樹脂は、自己架橋やマスク剤を解離させた後のブロックイソシアネートAとの反応により3次元架橋を形成しないものであることが好ましい。
このため、非架橋性アクリル樹脂及び非架橋性ポリウレタン樹脂は、水酸基価が20mgKOH/g以下であることが好ましく、10mgKOH/g以下であることがより好ましく、2mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
水酸基価は、試料1g中に含まれるOH基をアセチル化するために要する水酸化カリウムのmg数をいい、無水酢酸を用いたアセチル化法によって測定することができる。
非架橋性アクリル樹脂としては、上記条件を満たすものであれば、特に制限されることなく、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルを主成分とする汎用のアクリル樹脂を用いることができる。
非架橋性アクリル樹脂は、重量平均分子量は通常2,000〜100,000程度であり、ガラス転移温度(Tg)は通常−20〜90℃程度である。
非架橋性ウレタン樹脂としては、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等のポリオールと、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート等の脂肪族ないしは脂環式イソシアネート等のイソシアネートとを反応させてなるウレタン樹脂が挙げられる。
非架橋性ウレタン樹脂の原料となるポリオール1分子中の水酸基数及びイソシアネート1分子中のイソシアネート基は、通常平均2程度である。また、非架橋性ウレタン樹脂は、重量平均分子量は通常10,000〜100,000程度であり、ガラス転移温度(Tg)は通常−50〜0℃程度である。
ブロックイソシアネートAは、イソシアネート系化合物をマスク剤でマスク化したものであり、常温では全く反応することはなく、マスク剤が解離する温度以上に加熱すると活性なイソシアネート基が再生されて反応を起こすものである。
ヒートシール層中にブロックイソシアネートAを含有することにより、被転写部材への熱転写時にブロックイソシアネートAのマスク剤を解離させることで、イソシアネートがヒートシール層中で反応するとともに、ヒートシール層と表面保護層等との界面で反応し、耐久密着性をより良好にすることができる。
ブロックイソシアネートを構成するイソシアネート系化合物は、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートであればよく、例えば、キシリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネート等が挙げられる。これらの中でも黄変を抑止する観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート等の非黄変性のものが好適である。
マスク剤は特に制限されることなく使用することができ、例えば、フェノール系、アルコール系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、ラクタム系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系、ヒドラジン化合物等が挙げられる。具体的には、フェノール、クレゾール、2−ヒドロキシピリジン、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、エタノール、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、ブチルメルカプタン、アセトアニリド、酢酸アミド、コハク酸イミド、ε−カプロラクタム、イミダゾール、尿素、チオ尿素、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、シクロヘキサンオキシム、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、エチレンイミン、ジメチルヒドラジン等が挙げられる。
マスク剤の解離温度は、転写箔シートを被転写材に転写する際の加熱温度以下であり、かつ、ブロックイソシアネートを含有する層及び該層の後に形成する層の乾燥温度よりも高ければ特に制限されることはないが、作業性や基材の耐熱性の観点から、90〜140℃が好ましい。
非架橋性アクリル樹脂、非架橋性ポリウレタン樹脂及びブロックイソシアネートAを合計した含有量は、本発明の効果を発揮しやすくするため、ヒートシール層の全固形分の80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
また、非架橋性アクリル樹脂及び非架橋性ポリウレタン樹脂の合計100質量部に対するブロックイソシアネートAの含有量は、1〜20質量部含有であることが好ましく、2〜15質量部であることがより好ましく、3〜10質量部であることがさらに好ましい。
ヒートシール層は、非架橋性アクリル樹脂、非架橋性ポリウレタン樹脂及びブロックイソシアネートAを含むヒートシール層用インキから形成することができる。ヒートシール層用インキは希釈溶剤で希釈することが好ましく、また、本発明の効果を阻害しない範囲で、熱硬化性樹脂、他の熱可塑性樹脂、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含有してもよい。
ヒートシール層の厚みは、被転写部材への密着性の観点、ヒートシール層と接する層(主として表面保護層)との密着性(初期密着性及び耐久密着性)の観点、及び表面保護層の耐擦傷性の観点から、0.1〜30μmとすることが好ましい。
(他の層)
本発明の加熱転写用転写箔シートは、表面保護層とヒートシール層との間に他の層を有していてもよい。
他の層としては、プライマー層、意匠層、隠蔽層及び帯電防止層等が挙げられる。上述したヒートシール層は、表面保護層に限らず他の層との密着性にも優れることから、表面保護層とヒートシール層との間に他の層を有していても、本発明の効果を発揮することができる。なお、薄膜化や製造効率の観点からは、本発明の加熱転写用転写箔シートは、表面保護層とヒートシール層との間に他の層を介在させず、表面保護層とヒートシール層とが接する構成が好適である。
プライマー層は、例えば、ポリオール系樹脂及びイソシアネート系化合物を含むプライマー層用インキから形成することができる。ポリオール系樹脂としては、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂及びポリカーボネートポリオール樹脂等が挙げられる。ポリオール樹脂の水酸基価は30〜130mgKOH/g程度である。
意匠層としては、金属箔、金属蒸着膜等の金属層、着色層及び絵柄層等が挙げられる。
隠蔽層は、被転写部材の模様や色を隠蔽して意匠性を良好にするために、必要に応じて意匠層上に設けられる。
本発明の加熱転写用転写箔シートは、被転写部材の劣化を防止するため、基材を除いた構成層のUVA(波長315〜400nmの光)の透過率が3%以下であることが好ましく、さらに1%以下であることがより好ましい。
以上のような本発明の加熱転写用転写箔シートは、壁、天井、床等の建築物の内装材または外装材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具、キッチン、家具、家電、OA機器、車両の内装材または外装材等を被転写部材として、これらの加飾に用いることができる。
本発明の加熱転写用転写箔シートは、薄膜で追従性に優れることから、被転写部材が凹凸形状を有するもの、曲面を有するもの、角を有するもの等の非平面状のものであっても用いることができる。また、本発明の加熱転写用転写箔シートは、薄膜でリサイクル性に優れることから、リサイクルの概念が一般化している建具に好適に用いることができる。さらに、本発明の加熱転写用転写箔シートは、初期密着性のみならず耐久密着性に優れることから、建築物の外装、車両の外装等の屋外用にも好適に用いることができる。
[転写箔シートの製造方法]
本発明の転写箔シートの製造方法は、以下の(1)、(2)の工程を順に行うものである。
以下の(1)、(2)の工程を順に行う加熱転写用転写箔シートの製造方法。
(1)基材上に、電離放射線硬化性樹脂組成物を含有してなる表面保護層用インキから表面保護層を形成する工程
(2)前記表面保護層上に直接又は他の層を介して、非架橋性アクリル樹脂、非架橋性ポリウレタン樹脂及びブロックイソシアネートAを含有してなり、かつ前記非架橋性アクリル樹脂と前記非架橋性ポリウレタン樹脂との質量比が10:90〜50:50であるヒートシール層用インキを塗布し、ブロックイソシアネートAのマスク剤の解離温度未満の温度で乾燥して、ヒートシール層を形成する工程
工程(1)では、基材上に、電離放射線硬化性樹脂組成物を含有してなる表面保護層用インキから表面保護層を形成する。
表面保護層用インキは、電離放射線硬化性樹脂組成物を含有するものであるが、ブロックイソシアネートBを含有してもよい。また、表面保護層用インキは、さらに本発明の効果を阻害しない範囲で、基材剥離調整剤、希釈溶剤、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含有してもよい。
工程(1)をより具体的に説明すると、まず、基材上に表面保護層用インキを塗布する。
表面保護層用インキを塗布する手段は、ディップコート、ロールコート、バーコート、ダイコート、グラビアコート、ブレードコート、エアナイフコート等の公知のコーティング手段が挙げられる。
表面保護層用インキが希釈溶剤を含有する場合、塗布後に乾燥を行う。表面保護層の乾燥条件は、40〜80℃で5〜60秒程度である。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線の照射により、表面保護層中で電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を形成する。
電離放射線を照射するタイミングとしては、工程(1)の段階、工程(1)と工程(2)との間の段階、工程(2)の段階、工程(2)の後の段階が挙げられる。
通常、電離放射線硬化性樹脂組成物から形成される層に対して、次工程の塗工物の密着性を良好にするためには、電離放射線を照射するタイミングを、電離放射線硬化性樹脂組成物層を形成する段階ではなく、次工程の段階あるいは次工程以降とする。しかし、電離放射線硬化型樹脂組成物がタックフリーではない場合、次工程の塗工性を良好にするためには、電離放射線硬化性樹脂組成物層を形成する段階で電離放射線を照射する必要がある。本発明では、電離放射線硬化型樹脂組成物がタックフリーであるか否かに関わらず、次工程の塗工物(ヒートシール層インキ)の密着性を良好にできるため、電離放射線硬化性樹脂の選択の幅を広げられるとともに、電離放射線の照射のタイミングも選択した樹脂に応じて決定できる点で好適である。
工程(2)では、表面保護層上に直接又は他の層を介して、非架橋性アクリル樹脂、非架橋性ポリウレタン樹脂及びブロックイソシアネートAを含有してなり、かつ前記非架橋性アクリル樹脂と前記非架橋性ポリウレタン樹脂との質量比が10:90〜50:50であるヒートシール層用インキを塗布し、ブロックイソシアネートAのマスク剤の解離温度未満の温度で乾燥して、ヒートシール層を形成する。
ヒートシール層用インキは、非架橋性アクリル樹脂、非架橋性ポリウレタン樹脂及びブロックイソシアネートAを含むものである。ヒートシール層用インキは希釈溶剤で希釈することが好ましく、また、本発明の効果を阻害しない範囲で、熱硬化性樹脂、他の熱可塑性樹脂、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含有してもよい。
ヒートシール層用インキは、表面保護層上に他の層を有さない場合、表面保護層上に直接塗布する。表面保護層上に他の層を有する場合、ヒートシール層用インキは、該他の層上に塗布する。他の層としては、プライマー層、意匠層、隠蔽層及び帯電防止層等が挙げられる。
ヒートシール層用インキを塗布する手段は、ディップコート、ロールコート、バーコート、ダイコート、グラビアコート、ブレードコート、エアナイフコート等の公知のコーティング手段が挙げられる。
ヒートシール層の乾燥温度は、ブロックイソシアネートAのマスク剤の解離温度未満の温度とする。表面保護層中にブロックイソシアネートBを含有する場合には、さらにブロックイソシアネートBのマスク剤の解離温度未満の温度とすることが好ましい。ヒートシール層の乾燥条件は、通常40〜80℃で5〜60秒程度である。
[基材付き化粧部材、化粧部材]
本発明の基材付き化粧部材は、被転写部材と、上述した本発明の加熱転写用転写箔シートとを、前記加熱転写用転写箔シートのヒートシール層側の面が前記被転写部材に対向する向きで一体化してなるものである。本発明の基材付き化粧部材は、ヒートシール層中のブロックイソシアネートAは、一体化する際の加熱処理によりマスク剤が解離した状態である。
被転写部材の材質は特に問わず、プラスチック、金属、木材、窯業系素材等が挙げられる。また、被転写部材の形状も、平面状のものであっても良いし、凹凸形状を有するもの、曲面を有するもの、角を有するもの等の非平面状のものであってもよい。
本発明の基材付き化粧部材40の基本的な実施形態は、図2に示すように、被転写部材20と、上述した本発明の加熱転写用転写箔シート10のヒートシール層13側の面とが接着され、一体化されてなるものである。
また、本発明の基材付き化粧部材40は、図3に示すように、被転写部材20と、加熱転写用転写箔シート10のヒートシール層13との間に意匠シート30を有する形態も挙げられる。このタイプの基材付き化粧部材は、表面保護層とヒートシール層との密着性を維持したまま意匠性を良好にできる点で好適である。
図3のタイプの基材付き化粧部材40は、後述の基材付き化粧部材の製造方法の実施形態B又はCにより製造することができる。
意匠シートとしては、支持体上に意匠層を有する構成のものが挙げられる。支持体は、加熱により他の部材との接着性を付与する観点から、熱可塑性樹脂を主成分とするものであることが好ましい。意匠層としては、金属箔、金属蒸着膜等の金属層、着色層及び絵柄層等が挙げられる。また、支持体と意匠層との間に隠蔽層を有する構成であってもよい。
意匠シートが支持体上に意匠層を有する構成の場合、意匠シートは、支持体側の面を被転写部材側に向け、意匠層側の面をヒートシール層側に向けることが好ましい。
以上のような基材付き化粧部材は、被転写部材に転写箔シートを接着した後に輸送等の作業を行う場合、転写された層を保護できる点で好ましい。また、本発明の基材付き化粧部材は、意匠性を損なうことなく、かつプライマー層の有無に関わらず、初期密着性及び耐久密着性を良好にすることができる。
本発明の化粧部材は、上述した本発明の基材付き化粧部材の表面の基材のみを剥離してなるものである。
[基材付き化粧部材の製造方法、化粧部材の製造方法]
本発明の基材付き化粧部材の製造方法は、以下の(a)、(b)の工程を有するものである。
(a)被転写部材と、上述した本発明の加熱転写用転写箔シートとを、前記加熱転写用転写箔シートのヒートシール層側の面が前記被転写部材に対向する向きで一体化する工程
(b)前記加熱転写用転写箔シートを、ヒートシール層中のブロックイソシアネートAのマスク剤の解離温度以上の温度で熱処理する工程
以下、本発明の基材付き化粧部材の製造方法のより具体的な実施形態A〜Cを示す。
(実施形態A)
被転写部材20と、上述した本発明の加熱転写用転写箔シート10のヒートシール層13側の面とを接触させて熱処理することにより、上記(a)及び(b)の工程を同時に行う製造方法(図4参照)。
(実施形態B)
被転写部材20と意匠シート30とを接着してなる意匠シート付き被転写部材を予め作製し、該意匠シート付き被転写部材の意匠シート30側の面と、上述した本発明の加熱転写用転写箔シート10のヒートシール層13側の面とを接触させて熱処理することにより、前記(a)及び(b)の工程を同時に行う製造方法(図5参照)。
被転写部材と意匠シートとを接着する手段は、接着剤を用いても良いし、意匠シートが熱可塑性樹脂の支持体を有する場合には、加熱処理により意匠シートの支持体に生じる接着力を用いても良い。
(実施形態C)
上述した本発明の加熱転写用転写箔シート10のヒートシール層13側の面と、意匠シート30とを接触させて熱処理し、該転写箔シート10と該意匠シート30とを積層した積層シート(以下、「化粧シート」と称する場合がある。)を作製することにより、前記(b)の工程を行い、該積層シート(化粧シート)の意匠シート30側の面と前記被転写部材20とを接着して一体化することにより、前記(a)の工程を行う製造方法(図6参照)。
上記積層シート(化粧シート)と被転写部材とを接着する手段は、接着剤を用いても良いし、意匠シートが熱可塑性樹脂の支持体を有する場合には、加熱処理により意匠シートの支持体に生じる接着力を用いても良い。
実施形態B及びCにおいて、意匠シートが支持体上に意匠層を有する構成の場合、意匠シートは、支持体側の面を被転写部材側に向け、意匠層側の面をヒートシール層側に向けることが好ましい。
本発明の化粧部材の製造方法は、上述した本発明の基材付き化粧部材を製造した後、基材付き化粧部材の表面の基材を剥離するものである。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。なお、比較例2及び4の加熱転写用転写箔シートは、初期密着性が著しく劣るものであったため、耐久密着性の評価は行わなかった。
(評価方法)
各実施例及び比較例で得られた加熱転写用転写箔シート、及び該転写箔シートから作製した化粧シートについて、以下の方法で評価した。
(1)初期密着性
化粧シートを作製した直後の表面保護層とヒートシール層、ヒートシールと意匠層の密着性を以下の手法により評価した。
(2)耐久密着性
UVランプ(商品名「M04−L21WB/SUV」、岩崎電気社製)、ランプジャケット(商品名「WJ50−SUV」、岩崎電気社製)及び照度計(商品名「UVD−365PD」、岩崎電機社製)を備えた超促進耐候性試験装置(商品名「アイ スーパー UVテスター SUV−W131」、岩崎電気社製)を使用した。化粧部材に対し、ブラックパネル温度63℃、照度60mW/cm2の条件で20時間照射を行った後、4時間結露を行うサイクルを繰り返し、50時間後の表面保護層とヒートシール層との密着性を以下の手法により評価した。
[密着性の評価手法]
化粧シートの表面保護層に、室温下でセロファンテープ(ニチバン社製のセロファン粘着テープ、「セロテープ(登録商標)」25mm幅)を強く貼着させ、化粧部材の表面と45度の方向に、該セロファンテープを強制的に剥離した。化粧部材の表面の状態について評価した。
A:同じ場所で5回以上セロファンテープの剥離を行ったが、表面保護層の剥離がみられないもの。
B:1回目は表面保護層の剥離が見られなかったが、2回目以降はセロファンテープ密着部分の一部に剥離がみられたもの。
C:1回目よりセロファンテープ密着部分の一部に剥離がみられたもの。
-:1回目よりセロファンテープ密着部分の全面に剥離がみられたもの。
(2)意匠性
化粧シートの外観意匠性を目視にて観察した。
A:ヒートシール層に起因する白濁による外観の不具合は見られなかった。
B:ヒートシール層に起因する軽微白濁は見られたが、外観上問題ないレベルであった。
C:ヒートシール層に起因する白濁が見られた。
[実施例1]
厚さ24μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製)の離型処理面上に、電子線硬化性樹脂(ウレタンアクリレート)を含有してなる表面保護層用インキを、乾燥後の厚みが3μmとなるようにグラビア印刷法により塗布、乾燥し、次いで、酸素濃度200ppmの環境下において、加速電圧125KeV、5Mradの条件で電子線を照射して電子線硬化性樹脂を硬化させ、表面保護層を形成した。
次いで、非架橋性アクリル樹脂(水酸基価1.0mgKOH/g以下、重量平均分子量40,000、ガラス転移温度30℃)を10質量部、非架橋性ポリウレタン樹脂(水酸基価0.5mgKOH/g以下、重量平均分子量80,000、ガラス転移温度−20℃)を90質量部、ブロックイソシアネートA(旭化成ケミカルズ社製、デュラネートTPA−B80X、マスク剤の解離温度130℃)を8質量部含有してなるヒートシール層用インキを、乾燥後の厚みが2μmとなるように塗布し、60℃で30秒乾燥して、ヒートシール層を形成し、加熱転写用転写箔シートを作製した。
[実施例2〜4]、[比較例1〜4]
ヒートシール層の非架橋性アクリル樹脂と、非架橋性ポリウレタン樹脂との質量比率を表1の割合に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、加熱転写用転写箔シートを作製した。
[実施例5]
電子線硬化性樹脂(ウレタンアクリレート)100質量部に対し、ブロックイソシアネートB(マスク剤の解離温度130℃)を8重量部添加したものを表面保護層用インキとして用いた以外は、実施例1と同様の手法で加熱転写用転写箔シートを作製した。
[比較例5]
ヒートシール層用インキから非架橋性アクリル樹脂及び非架橋性ポリウレタン樹脂を除き、アクリルポリオール(水酸基価100mgKOH/g)を20部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を80部添加した以外は、実施例1と同様の手法により、加熱転写用転写箔シートを作製した。
[比較例6]
ヒートシール層の非架橋性アクリル樹脂と、非架橋性ポリウレタン樹脂との質量比率を表1の割合に変更し、ブロックイソシアネートAをヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、加熱転写用転写箔シートを作製した。
[比較例7]
ヒートシール層の非架橋性アクリル樹脂をアクリルポリオール(水酸基価100mgKOH/g)に変更し、該アクリルポリオールと、非架橋性ポリウレタン樹脂との質量比率を表1の割合に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、加熱転写用転写箔シートを作製した。
(化粧シートの作製)
厚み100μmからなるポリ塩化ビニル製の着色基材シート上に、アクリル樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂の混合体からなる印刷インキで意匠層(絵柄層)を形成し、意匠シートを作製した。
実施例1〜5及び比較例1〜7で作製した加熱転写用転写箔シートを40℃環境下で3日養生した。養生後の転写箔シートのヒートシール側と、意匠シートの絵柄層とが接するようにし、160℃に加温したロールラミネーター機で貼り合わせた。次いで、転写箔シートのポリエステルフィルムを剥離し、意匠シートに表面保護層及びヒートシール層が転写された化粧シートを得た。表1の評価は、化粧シート作製後に、さらに40℃環境下で3日養生した後に行ったものである。
Figure 2015174405
表1の結果から明らかなように、実施例1〜5の加熱転写用転写箔シートは、意匠性を損なうことなく、かつプライマー層を有さないにも関わらず、初期密着性及び耐久密着性が良好なものであった。
本発明の転写箔シートは、壁、天井、床等の建築物の内装材または外装材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具、キッチン、家具、家電、OA機器、車両の内装材または外装材等を被転写部材として、これらの加飾に用いることができる。本発明の転写箔シートは、追従性に優れることから、被転写部材が凹凸形状を有するもの、曲面を有するもの、角を有するもの等の非平面状のものであっても用いることができる。また、本発明の転写箔シートは、薄膜でリサイクル性に優れることから、リサイクルの概念が一般化している建具に好適に用いることができる。さらに、本発明の加熱転写用転写箔シートは、初期密着性のみならず耐久密着性に優れることから、建築物の外装、車両の外装等の屋外用にも好適に用いることができる。
10:転写箔シート
11:基材
12:表面保護層
13:ヒートシール層
20:被転写部材
30:意匠シート
40:基材付き化粧部材

Claims (12)

  1. 基材上に、表面保護層及びヒートシール層をこの順に有してなる転写箔シートであって、前記表面保護層は電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含有してなり、前記ヒートシール層は、非架橋性アクリル樹脂、非架橋性ポリウレタン樹脂及びブロックイソシアネートAを含有してなり、かつ前記非架橋性アクリル樹脂と前記非架橋性ポリウレタン樹脂との質量比が10:90〜50:50である加熱転写用転写箔シート。
  2. 前記表面保護層中にブロックイソシアネートBを含有してなる請求項1に記載の加熱転写用転写箔シート。
  3. 前記表面保護層とヒートシール層との間にプライマー層を有してなる請求項1又は2に記載の加熱転写用転写箔シート。
  4. 以下の(1)、(2)の工程を順に行う加熱転写用転写箔シートの製造方法。
    (1)基材上に、電離放射線硬化性樹脂組成物を含有してなる表面保護層用インキから表面保護層を形成する工程
    (2)前記表面保護層上に直接又は他の層を介して、非架橋性アクリル樹脂、非架橋性ポリウレタン樹脂及びブロックイソシアネートAを含有してなり、かつ前記非架橋性アクリル樹脂と前記非架橋性ポリウレタン樹脂との質量比が10:90〜50:50であるヒートシール層用インキを塗布し、ブロックイソシアネートAのマスク剤の解離温度未満の温度で乾燥して、ヒートシール層を形成する工程
  5. 被転写部材と、請求項1〜3の何れかに記載の加熱転写用転写箔シートとを、前記加熱転写用転写箔シートのヒートシール層側の面が前記被転写部材に対向する向きで一体化してなる基材付き化粧部材。
  6. 前記被転写部材と前記ヒートシール層との間に意匠シートを介在してなる請求項5に記載の基材付き化粧部材。
  7. 請求項5又は6に記載の基材付き化粧部材の表面の基材を剥離してなる化粧部材。
  8. 以下の(a)、(b)の工程を有する基材付き化粧部材の製造方法。
    (a)被転写部材と、請求項1〜3の何れかに記載の加熱転写用転写箔シートとを、前記加熱転写用転写箔シートのヒートシール層側の面が前記被転写部材に対向する向きで一体化する工程
    (b)前記加熱転写用転写箔シートを、ヒートシール層中のブロックイソシアネートAのマスク剤の解離温度以上の温度で熱処理する工程
  9. 被転写部材と、請求項1〜3の何れかに記載の加熱転写用転写箔シートのヒートシール層側の面とを接触させて熱処理することにより、前記(a)及び(b)の工程を同時に行う請求項8に記載の基材付き化粧部材の製造方法。
  10. 前記被転写部材と意匠シートとを接着してなる意匠シート付き被転写部材を予め作製し、該意匠シート付き被転写部材の意匠シート側の面と、請求項1〜3の何れかに記載の加熱転写用転写箔シートのヒートシール層側の面とを接触させて熱処理することにより、前記(a)及び(b)の工程を同時に行う請求項8に記載の基材付き化粧部材の製造方法。
  11. 請求項1〜3の何れかに記載の加熱転写用転写箔シートのヒートシール層側の面と、意匠シートとを接触させて熱処理し、該転写箔シートと該意匠シートとを積層した積層シートを作製することにより、前記(b)の工程を行い、該積層シートの意匠シート側の面と前記被転写部材とを接着して一体化することにより、前記(a)の工程を行う請求項8に記載の基材付き化粧部材の製造方法。
  12. 請求項8〜11の何れかに記載の基材付き化粧部材を製造した後、基材付き化粧部材の表面の基材を剥離する化粧部材の製造方法。
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