JP7326064B2 - 感熱転写媒体 - Google Patents
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Description
パッケージの一例としては、ラミネートフィルムからなる袋体などが挙げられる。
ラミネートフィルムとしては、たとえば、食品と接する内側にポリプロピレンフィルム、外側にナイロンフィルムやPETフィルム、さらに必要に応じて中間にアルミニウム箔を積層した積層体等が用いられる。
熱転写印刷法では、基材と、当該基材の表面に熱転写可能に設けられた熱転写層とを含む感熱転写媒体が用いられる。
そうすると熱転写層が、加熱されたパターンに応じて選択的に溶融または軟化して基材から剥離し、パッケージの表面に熱接着されて、当該表面に文字などが印刷される。
またレトルト殺菌処理では、食品を充てんして密封したパッケージ(レトルトパウチ)が、たとえば、加圧下で100℃を超える高温に加熱された水や水蒸気によって加熱処理される。
いずれにしろ、ボイル殺菌処理をも含むこれらの殺菌処理時には、パッケージが高温に晒されることになる。
そのため、熱転写印刷法によってパッケージ等の表面に印刷された文字などには、かかる高温に加熱されたり、高温の水中でかく拌されたり、高温の水蒸気流に晒されたりした後にペーパーウエスなどでこすっても剥離したりしない、高い熱処理耐性が求められる。
かかる感熱転写媒体によれば、転写性着色層に含まれるフェノール樹脂が、パッケージ等の表面への印刷時の熱によってイソシアネート硬化剤と硬化反応する。
したがって、特許文献1の構成によれば、文字などの熱処理耐性を、ある程度は向上することができる。
発明者の検討によると、特許文献1に記載の感熱転写媒体では、熱処理耐性を向上する効果に限界がある。
また、殺菌処理後のパッケージの文字などには、たとえば、エタノールを染み込ませた綿棒などでこすっても溶けたり滲んだりしない、高い耐アルコール性を有していることも求められる。
特許文献1の感熱転写媒体を用いてパッケージ等の表面に印刷した文字などの熱処理耐性や耐アルコール性が不足する原因は、熱転写層を熱転写して文字などを印刷した時点で、フェノール樹脂とイソシアネート硬化剤との硬化反応がほぼ終了していることにある。
しかし、かかる硬化物は、その後の殺菌処理の工程で高温に晒されたり、高温の水や水蒸気と接触したりすることで徐々に劣化して、強度、およびパッケージ等の表面に対する接着力が低下する傾向がある。
また、レトルト殺菌処理後の耐アルコール性も低下して、エタノールを染み込ませた綿棒などでこすった際に文字などが溶けたり滲んだりしやすくなる。
そして硬化反応の進行によって、印刷前に、パッケージ等の表面に対する転写性着色層の熱接着性が大きく低下して、実際の印刷時に熱転写層が熱転写されない印刷不良を生じる場合がある。
本発明の目的は、ラミネートフィルムからなるパッケージ等の表面に、高い熱処理耐性、および耐アルコール性を有する文字などを印刷でき、しかも常温以下の温度範囲では実質的にポットライフを有しない感熱転写媒体を提供することにある。
上記本発明の感熱転写媒体において、熱転写層の最表層に含まれるブロック化イソシアネート硬化剤は、イソシアネート硬化剤の官能基であるイソシアネート基を、任意のブロック化剤によってマスクした化合物である。
しかし、熱転写層を熱転写させて、パッケージ等の表面に文字などを印刷した後、当該パッケージを所定時間に亘って殺菌処理する際の熱によってブロック化剤が解離し、イソシアネート基が露出して、イソシアネート硬化性樹脂との硬化反応が開始される。
したがって、ラミネートフィルムからなるパッケージ等の表面に、高強度で高い熱処理耐性を有し、高温のレトルト殺菌処理等をした後にペーパーウエスなどでこすっても剥離したりしない文字などを印刷することができる。
しかもブロック化イソシアネート硬化剤は、とくに常温以下の温度範囲では、上述したブロック化剤の作用によって、同じ最表層に含まれるイソシアネート硬化性樹脂とは殆ど硬化反応しない。
したがって、本発明の感熱転写媒体によれば、常温以下の温度範囲での保管時に経時的に硬化反応が進行して熱接着性が低下したり、印刷不良を生じたりするのを抑制することができる。
しかし、その場合には、両層中に別個に含まれるイソシアネート硬化性樹脂とイソシアネート硬化剤とを、殺菌処理時の加熱だけでは良好に硬化反応させることができない。
このことは、後述する実施例、参考例および比較例の結果からも明らかである。
〈イソシアネート硬化性樹脂〉
最表層を形成するイソシアネート硬化性樹脂としては、たとえば、パッケージ等の表面に対する熱接着性を有し、かつ殺菌処理時の熱によってブロック化剤が解離して生じたイソシアネート基と硬化反応しうる種々の樹脂を用いることができる。
とくに文字などを印刷する対象が、前述したパッケージ等の、ナイロンフィルムやPETフィルムからなる表面である場合には、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂が好ましい。
そのため、イソシアネート硬化性樹脂としてカルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂を用いれば、当該熱転写層の熱転写によってこれらの表面に印刷される文字などの熱処理耐性や耐アルコール性を、より一層高めることができる。
カルボキシル基は、かかる水溶液ないし水分散液中で、ポリオレフィン樹脂に付加された水溶性基、もしくはポリオレフィン樹脂の乳化剤としても機能する。
そのため、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂の水溶液ないし水分散液は安定であって、当該水溶液ないし水分散液を含む塗材を調製する際や、当該塗材を塗布して、熱転写層の最表層を形成する際の取り扱い性を向上することもできる。
アルカリ中和に用いる中和剤としては、たとえば、アンモニア、アルカノールアミン、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
中でも、中和剤としてはアンモニアが好ましい。
アンモニアを用いて調製されるカルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂は、ナイロンフィルムやPETフィルムからなる表面に印刷された文字などの熱処理耐性を向上する効果にとくに優れている。
住友精化(株)製のザイクセン(登録商標)シリーズのうちA-GH〔自己乳化型水溶液、固形分濃度:24%、中和剤:アンモニア、pH:8~10〕、AC〔半透明水溶液ないしは乳濁液、固形分濃度:29~30%、中和剤:アンモニア、pH:8~10〕、A〔半透明水溶液ないしは乳濁液、固形分濃度:24~25%、中和剤:アンモニア、pH:8~10〕、AC-HW-10〔乳濁液、固形分濃度:29~30%、中和剤:アンモニア、pH:8~10〕、L〔半透明水溶液ないしは乳濁液、固形分濃度:27~29%、中和剤:ジメチルエタノールアミン、pH:8~10〕、NC〔半透明水溶液、固形分濃度:27~29%、中和剤:水酸化ナトリウム、pH:8.5~10.5〕、N〔半透明水溶液、固形分濃度:24~25%、中和剤:水酸化ナトリウム、pH:8~10〕。
エチレン-アクリル酸共重合体の具体例としては、これに限定されないが、たとえば、SK総合化学社製のプリマコール(登録商標)シリーズのうちP-5990L〔水分散液、固形分濃度:20%〕、ハネウェルパフォーマンスアディティブ社製のA-C 540〔顆粒状〕等が挙げられる。
プロピレン-無水マレイン酸共重合体の具体例としては、これに限定されないが、たとえば、ハネウェルパフォーマンスアディティブ社製のA-C 596、AC 597等が挙げられる。
DIC(株)製のTD-4304〔エマルジョン、ノニオン型、固形分濃度:39~41%〕、PE-602〔エマルジョン、カチオン型、固形分濃度:41~43%〕、IG-1002〔水溶液、ストレートタイプ、固形分濃度:46~50%〕、GA-1364〔水溶液、ストレートタイプ、固形分濃度:74~78%〕、GG-1402〔水溶液、ストレートタイプ、固形分濃度:67~71%〕、GG-1448〔水溶液、ストレートタイプ、固形分濃度:64~68%〕、TD-2250〔水溶液、ストレートタイプ、固形分濃度:63~67%〕、GG-1410〔水溶液、ストレートタイプ、固形分濃度:70~74%〕、GG-3093〔水溶液、ストレートタイプ、固形分濃度:74~78%〕、TD-617〔水溶液、ストレートタイプ、固形分濃度:73~77%〕。
〈ブロック化イソシアネート硬化剤〉
ブロック化イソシアネート硬化剤としては、前述したように、イソシアネート硬化剤として機能するイソシアネート化合物のイソシアネート基を任意のブロック化剤によってブロックした、種々の化合物を用いることができる。
ブロック化イソシアネート硬化剤のもとになるイソシアネート化合物としては、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネート、芳香脂肪族イソシアネート、ポリイソシアネート単量体(有機トリイソシアネート、有機テトライソシアネートその他)等がいずれも使用可能である。
上記のうち脂肪族イソシアネートとしては、たとえば、下記の各種化合物等が挙げられる。
シクロペンチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI、イソホロンジイソシアネート)、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン。
フェニルイソシアネート、4-エチルフェニルイソシアネート、4-ブチルフェニルイソシアネート、4-エトキシフェニルイソシアネート、フェネチルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、メチルベンジルイソシアネート、2-メトキシフェニルイソシアネート、3-メトキシフェニルイソシアネート、4-メトキシフェニルイソシアネート、2-メチルフェニルイソシアネート、3-メチルフェニルイソシアネート、4-メチルフェニルイソシアネート、3,5-ジメチルフェニルイソシアネート、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート、2-クロロフェニルイソシアネート、3-クロロフェニルイソシアネート、4-クロロフェニルイソシアネート、2,3-ジクロロフェニルイソシアネート、2,4-ジクロロフェニルイソシアネート、2,5-ジクロロフェニルイソシアネート、2,6- ジクロロフェニルイソシアネート、3,4-ジクロロフェニルイソシアネート、3,5-ジクロロフェニルイソシアネート、2,4,6-トリクロロイソシアネート、2-ブロモフェニルイソシアネート、3-ブロモフェニルイソシアネート、4-ブロモフェニルイソシアネート、2-フルオロフェニルイソシアネート、3-フルオロフェニルイソシアネート、4-フルオロフェニルイソシアネート、2-(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート、3-(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート、4-(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート、1-イソシアナト-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、2-ニトロフェニルイソシアネート、3-ニトロフェニルイソシアネート、4-ニトロフェニルイソシアネート、1-(1-ナフチル)エチルイソシアネート、1-ナフチルイソシアネート、2-ビフェニルイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネート、もしくはその混合物)、4,4′-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート。
1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネート、もしくはその混合物、ω,ω′-ジイソシアネート1,4-ジエチルベンゼン、1,3-または1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、もしくはその混合物。
有機トリイソシアネートとしては、たとえば、トリフェニルメタン-4,4′,4″-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナートベンゼン、2,4,6-トリイソシアナートトルエン等が挙げられる。
これらのイソシアネート化合物等の、1種または2種以上を用いることができる。
(ブロック化剤)
上記イソシアネート化合物のイソシアネート基をブロックするためのブロック化剤としては、分子中に活性水素を1つ有する化合物が好ましい。
このうちアルコールとしては、たとえば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-エチルヘキシルアルコール等の脂肪族アルコール類などが挙げられる。
かかるアルキルフェノール類としては、たとえば、n-プロピルフェノール、i-プロピルフェノール、n-ブチルフェノール、sec-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類、ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、ジ-sec-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類が挙げられる。
活性メチレン系化合物としては、たとえば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジt-ブチル、マロン酸メチルt-ブチルエステル、マロン酸ジn-ヘキシル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ジベンジル等が挙げられる。
酸アミドとしては、たとえば、アセトアニリド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等が挙げられ、酸イミドとしては、たとえば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等が挙げられる。
オキシムとしては、たとえば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。
またアセト酢酸エチル、重亜硫酸ナトリウムなども、ブロック化剤として使用可能である。
(ブロック化イソシアネート硬化剤)
ブロック化イソシアネート硬化剤は、たとえば、水分散液、有機溶剤溶液、あるいは粉体等の固形物などとして供給される。
また水分散液は、ブロック化イソシアネート硬化剤を水中に分散させるための界面活性剤の種類に応じて、カチオン性、ノニオン性、またはアニオン性に分類される。
明成化学工業(株)製のDM-6400〔MDIブロック化体、水系分散液、固形分濃度:43%〕、SU-268A〔HDIブロック化体、水系乳化液、固形分濃度:30%、アニオン性〕、NBP-873D〔HDIブロック化体、水系乳化液〕、NBP-211〔HDIブロック化体、水系乳化液〕、商品名メイカネートシリーズのうちDM-3031CONC〔MDIブロック化体、水系分散液〕、DM-350Z〔MDIブロック化体、水系分散液〕、TP-10〔TDIブロック化体、水系乳化液、固形分濃度:44%、ノニオン性〕、CX〔HDIブロック化体、水系乳化液、カチオン性〕。
三井化学(株)製のタケネート(登録商標)シリーズのうちB-830〔TDIブロック化体〕、B-815N〔4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)ブロック化体〕、B-842N〔1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンブロック化体〕、B-846N〔1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンブロック化体〕、B-874N〔IPDIブロック化体〕、B-882N〔HDIブロック化体〕。
第一工業製薬(株)製のF2462D1〔MDIブロック化体、ノニオン性〕、エラストロン(登録商標)シリーズのうちBN-11〔HDIブロック化体、水系乳化液、ノニオン性〕、BN-P17〔MDIブッロク化体、粉体〕、BN-77〔MDIブロック化体、水系乳化液、アニオン性〕、BN-04、BN-08、BN-44、BN-45〔以上、ウレタン変性多価イソシアネートブッロク化体1分子あたり3~5官能〕。
〈両成分の組み合わせについて〉
イソシアネート硬化性樹脂が、水溶液ないし水分散液として供給される場合、ブロック化イソシアネート硬化剤としては、水分散液、水溶性有機溶剤溶液、もしくは水または水溶性有機溶剤に可溶の固形物などとして供給されるものを組み合わせるのが好ましい。
たとえば、イソシアネート硬化性樹脂の水溶液ないし水分散液が、pHが7を超えるアルカリ性である場合、ブロック化イソシアネート硬化剤としては、アニオン性もしくはノニオン性の界面活性剤を用いた水分散液を組み合わせるのが好ましい。
上記のように組み合わせを選択することにより、ブロック化イソシアネート硬化剤から生成したイソシアネート基による、イソシアネート硬化性樹脂との硬化反応を、よりスムースに進行させることができる。
両成分の配合割合は、以上で説明したように、硬化反応によって熱処理耐性や耐アルコール性にすぐれた文字など形成し得る、任意の範囲に設定することができる。
より具体的には、ブロック化イソシアネート硬化剤が内在するイソシアネート基の官能基当量と、当該イソシアネート基と硬化反応するイソシアネート硬化性樹脂の官能基当量とに応じて、両成分の配合割合を、最適な範囲に設定すればよい。
感熱転写媒体は、前述したように基材と、当該基材上に、熱転写可能に設けられた熱転写層とを含み、当該熱転写層の少なくとも最表層は、ブロック化イソシアネート硬化剤、およびイソシアネート硬化性樹脂を含むことを特徴とする。
その他の具体的な構成はとくに限定されないが、熱転写層は、基材上に順に積層された、熱溶融着色層、および熱接着層を含み、当該熱接着層が上記最表層であるのが好ましい。
熱溶融着色層は、サーマルヘッドによって基材の背面側から局部的に加えられる熱に応じて部分的に溶融または軟化して基材から剥離する、いわゆる熱感度を有する着色層であり、かかる積層構造によれば、それぞれの層の機能を、個別に向上することができる。
また、熱溶融着色層は印刷後の表面側に位置するため、文字などの色濃度や発色性を向上することもできる。
一方、熱接着層は、熱溶融着色層用の成分を含まない分、ブロック化イソシアネート硬化剤とイソシアネート硬化性樹脂とを高濃度で含有させることができるため、熱転写層の全体での、パッケージ等の表面への熱接着性や、熱接着後の接着力を向上できる。
〈基材〉
基材としては、従来同様に、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエステル、トリアセテート等の樹脂のフィルムや、コンデンサー紙、グラシン紙等の薄葉紙、あるいはセロファン等が挙げられる。
基材の厚みは、たとえば、熱転写プリンタの仕様等に応じて任意に設定できるものの、1μm以上、とくに2μm以上であるのが好ましく、10μm以下、とくに8μm以下であるのが好ましい。
そして、たとえば、基材の表面に熱転写層のもとになる塗材を連続的に塗布したり、塗材を塗布した基材を所定の幅のリボン状にスリットしたりして感熱転写媒体を製造する際や、製造した感熱転写媒体をロール状に巻き取る際等に、基材が破断しやすくなる。
一方、基材の厚みが上記の範囲を超える場合には、サーマルヘッドによって背面側から加えられる熱を、当該基材を通して熱転写層に効率よく伝達することができず、印刷時の熱感度が低下して、文字などが掠れたりしやすくなる場合がある。
そのため、掠れを生じにくくして、鮮明な印刷をすることができる。
〈背面層〉
基材の、熱転写層を形成する表面とは反対面(背面)には、サーマルヘッドと接触する当該背面の耐熱性、滑り性、耐擦過性等を向上するため、従来同様に背面層を形成してもよい。
また背面層には、必要に応じて滑剤を含有させても良い。
背面層は、上記樹脂等を溶剤に溶解または分散させた塗材を、基材の背面に塗布したのち乾燥させて形成することができる。
背面層の厚みは、やはり熱転写プリンタの仕様等に応じて任意に設定できるものの、単位面積あたりの固形分量で表して0.05g/m2以上、とくに0.1g/m2以上であるのが好ましく、0.5g/m2以下、とくに0.4g/m2以下であるのが好ましい。
一方、背面層の厚みが上記の範囲を超える場合には、サーマルヘッドによって基材の背面側から加えられる熱を、当該背面層と基材とを通して熱転写層に効率よく伝達することができず、印刷時の熱感度が低下して、文字などが掠れたりしやすくなる場合がある。
また、サーマルヘッドによって基材の背面側から加えられる熱を、背面層と基材とを通して熱転写層にできるだけ効率よく伝達して、印刷時の熱感度を向上することができ、掠れを生じにくくして、鮮明な印刷をすることもできる。
基材と熱転写層との間には、剥離層を設けてもよい。
剥離層としては、熱転写層を熱転写するまでの間、当該熱転写層を基材の表面に固定し続けるとともに、サーマルヘッドによる加熱によって溶融または軟化して、上記熱転写層を基材から剥離させる機能を有する、種々の材料からなる層が挙げられる。
またワックスとしては、たとえば、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等が挙げられる。
これらのワックスなどの、1種または2種以上を用いることができる。
剥離層は、上述した機能を良好に発現させることを考慮すると、融点が50℃以上、とくに60℃以上であるのが好ましく、150℃以下、とくに120℃以下であるのが好ましい。
あるいは2種以上のワックスを併用して、融点が上記の範囲に入るように調整してもよい。
剥離層は、そのもとになるワックス等を溶剤に溶解または分散させた塗材を、基材の表面に塗布したのち乾燥させて形成することができる。
剥離層の厚みは、単位面積あたりの固形分量で表して0.1g/m2以上、とくに0.2g/m2以上であるのが好ましく、1.4g/m2以下、とくに1.2g/m2以下であるのが好ましい。
また剥離層の厚みを上記の範囲以下とすることで、サーマルヘッドによって基材の背面側から加えられる熱を、当該剥離層を通して熱転写層にできるだけ効率よく伝達して、感熱転写媒体の熱感度を向上できる。
〈熱転写層〉
熱転写層は、前述したように、基材上に順に積層された熱溶融着色層、および熱接着層を含む。
(熱溶融着色層)
熱溶融着色層は、前述したようにサーマルヘッドによって基材の背面側から局部的に加えられる熱に応じて部分的に溶融または軟化して基材から剥離する熱感度を有する、任意の樹脂によって形成することができる。
このうち樹脂としては、たとえば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
ただし、印刷した文字などの最表層に位置する熱溶融着色層を形成する樹脂としては、ポリエステル樹脂が好ましい。
ポリエステル樹脂は、エタノール等のアルコールに溶解しにくいため、ラミネートフィルムからなるパッケージ等の表面に印刷された文字などの耐アルコール性をさらに高めることができる。
ポリエステル樹脂の具体例としては、これに限定されないが、たとえば、下記の各種製品等が挙げられる。
三菱ケミカル(株)製のダイヤクロン(登録商標)シリーズの高分子飽和共重合型ポリエステル樹脂のうちER-1002〔ガラス転移温度Tg:60℃、溶融開始温度:120℃、数平均分子量Mn:13500、水酸基価:5~10mgKOH/g〕、ER-1003〔ガラス転移温度Tg:50℃、溶融開始温度:125℃、数平均分子量Mn:19000、水酸基価:5~10mgKOH/g〕、ER-1004〔ガラス転移温度Tg:58℃、溶融開始温度:124℃、数平均分子量Mn:14000、水酸基価:5~10mgKOH/g〕、ER-2001〔ガラス転移温度Tg:15℃、溶融開始温度:83℃、数平均分子量Mn:20000、水酸基価:5~10mgKOH/g〕。
なおポリエステル樹脂としては、上記の中でもとくにガラス転移温度Tgが20℃以上、70℃以下であるポリエステル樹脂が好ましい。
ガラス転移温度Tgがこの範囲未満であるポリエステル樹脂は、軟化温度ないし溶融開始温度が低い、具体的には約100℃未満程度であるため、たとえ熱接着層が硬化反応によって高強度化しても、文字などの熱処理耐性を、十分に向上できない場合がある。
そして、文字などを印刷する際に、熱転写する文字などの領域に隣接する、当該文字などの周りの領域まで熱転写層が基材から剥離してしまう、いわゆる余剥離を生じやすくなる場合がある。
またポリエステル樹脂としては、数平均分子量Mnが10000以上、33000以下であるポリエステル樹脂が好ましい。
そのため、たとえ熱接着層が硬化反応によって高強度化されても、文字などの耐アルコール性を、十分に向上できない場合がある。
一方、数平均分子量Mnが上記の範囲を超えるポリエステル樹脂は、溶剤に対する溶解性が低いため、任意の溶剤に溶解して熱溶融着色層のもとになる塗材を調製するのが容易でない場合がある。
さらにポリエステル樹脂としては、水酸基価が20mgKOH/g以下であるポリエステル樹脂が好ましい。
これに対し、水酸基価が上記の範囲であるポリエステル樹脂を選択して用いることにより、ラミネートフィルムからなるパッケージ等の表面に印刷された文字などの耐アルコール性を、さらに向上することができる。
とくに、パッケージ等の表面に印刷した文字などの耐候性を向上すること等を考慮すると、着色剤としては顔料が好ましい。
たとえば、黒色の顔料としてはカーボンブラックが好ましく、カーボンブラックの具体例としては、これに限定されないが、たとえば、下記の各種カーボンブラックが挙げられる。
ビルラ・カーボン(Birla Carbon)社製のCONDUCTEX(コンダクテックス、登録商標)シリーズのうち975(ファーネス法、170cm3/100g)、SC(ファーネス法、115cm3/100g)。
ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製のKETJENBLACK(ケッチェンブラック、登録商標)シリーズのうちEC300J(ガス化法、DBP吸収量:360cm3/100g)、EC600DJ(ガス化法、DBP吸収量:495cm3/100g)。
なおカーボンブラックとしては、上記の中でもファーネス法やアセチレン法、ガス法等によって製造された、DBP吸収量が100cm3/100g以上であるカーボンブラックが好ましい。
かかるカーボンブラックは、一般に導電性カーボンブラックと呼ばれ、ストラクチャー鎖が長く吸油性が高いため、樹脂等に対する分散性が低いとされる。
そして、できるだけ多くの導電性カーボンブラックを、熱溶融着色層に均一に分散させて、パッケージ等の表面に印刷された文字などを、より色濃度の高い黒色に着色することができる。
とくに、上記の特性を満足するポリエステル樹脂が、電子写真法用のトナーとして適したものであって、適度の帯電性を有していることや、高分子量であって、カーボンブラックのストラクチャー鎖の長さとの間に何らかの関係があること等が推測される。
そのため導電性カーボンブラックとしては、DBP吸収量が300cm3/100g以下であるものがとくに好ましい。
カーボンブラックの割合は、ポリエステル樹脂100質量部あたり50質量部以上、中でも65質量部以上、とくに80質量部以上であるのが好ましく、120質量部以下、中でも105質量部以下、とくに90質量部以下であるのが好ましい。
一方、カーボンブラックの割合が上記の範囲を超える場合には、熱溶融着色層の強度が低下して、パッケージ等の表面に印刷された文字などの熱処理耐性や耐アルコール性が不十分になる場合がある。
熱溶融着色層は、任意の溶剤にポリエステル樹脂を溶解または分散し、かつカーボンブラックを分散して調製した塗材を基材上に塗布したのち、乾燥させて形成することができる。
上記塗材には、カーボンブラックの分散性を高めるために、分散剤を配合してもよい。
溶剤がMEK等の有機溶剤である塗材に配合できる分散剤の具体例としては、これに限定されないが、たとえば、下記の各種製品等が挙げられる。
ビックケミー(BYK CHEMIE)社製のAnti-Terra(アンチ・テーラ、登録商標)シリーズのうちU、203、Disperbyk(ディスパーバイク、登録商標)シリーズのうち101、107、110、130、161、BYK(ビイク、登録商標)シリーズのうちP104、P104S、240S、9077、Bykumen(バイクメン、登録商標)、Lactimon(ラクチモン、登録商標)。
熱溶融着色層の厚みは、これに限定されないが、たとえば、単位面積あたりの固形分量で表して0.5g/m2以上であるのが好ましく、2.0g/m2以下であるのが好ましい。
熱溶融着色層の厚みがこの範囲未満では、パッケージ等の表面に印刷された文字などを、色濃度の高い黒色に着色できない場合がある。
一方、熱溶融着色層の厚みが上記の範囲を超える場合には、サーマルヘッドによって基材の背面側から加えられる熱を、当該熱溶融着色層を通して熱接着層に効率よく伝達することができず、印刷時の熱感度が低下する場合がある。
そして、文字などが掠れたりしやすくなる。
また、サーマルヘッドによって基材の背面側から加えられる熱を、熱溶融着色層を通して熱接着層にできるだけ効率よく伝達して、印刷時の熱感度を向上することができ、掠れを生じにくくして、鮮明な印刷をすることもできる。
熱溶融着色層の上に積層される熱接着層は、前述したように、ブロック化イソシアネート硬化剤、およびイソシアネート硬化性樹脂を含む。
かかる熱接着層は、ブロック化イソシアネート硬化剤、およびイソシアネート硬化性樹脂を含む塗材を、先に形成した熱溶融着色層の上に塗布したのち、乾燥させて形成することができる。
水溶性有機溶剤としては、たとえば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコールの1種または2種以上を用いることができ、とくにメタノールが好ましい。
厚みがこの範囲未満では、熱接着層の熱接着性や、熱接着後の接着力が低下して、パッケージ等の表面に印刷された文字などの熱処理耐性や耐アルコール性が不足する場合がある。
そして、熱転写層を熱転写して文字などを印刷する際に、熱転写する文字などの領域に隣接する、当該文字などの周りの領域まで熱転写層が基材から剥離してしまう、いわゆる余剥離を生じやすくなる場合がある。
これに対し、熱接着層の厚みを上記の範囲とすることで、余剥離の発生を抑制しながら、熱接着層の熱接着性や熱接着後の接着力を向上して、パッケージ等の表面に印刷された文字などの熱処理耐性や耐アルコール性をさらに向上することができる。
熱転写層は、熱溶融着色層と熱接着層の機能を兼ねる単層構造とすることもできる。
かかる単層構造の熱転写層は、熱溶融着色層を構成するポリエステル樹脂、およびカーボンブラックなどの着色剤と、熱接着層を構成するブロック化イソシアネート硬化剤、およびイソシアネート硬化性樹脂とを含んでいるのが好ましい。
この場合、ポリエステル樹脂としては、水分散液として供給されるポリエステル樹脂を用いればよい。
東洋紡(株)製のバイロナール(登録商標)シリーズのうちMD-1100〔ガラス転移温度Tg:40℃、数平均分子量Mn:20000、水酸基価:5mgKOH/g、水分散液、固形分濃度:30%〕、MD-1200〔ガラス転移温度Tg:67℃、数平均分子量Mn:15000、水酸基価:6mgKOH/g、水分散液、固形分濃度:34%〕、MD-1245〔ガラス転移温度Tg:61℃、数平均分子量Mn:20000、水酸基価:5mgKOH/g、水分散液、固形分濃度:30%〕、MD-1335〔ガラス転移温度Tg:4℃、数平均分子量Mn:8000、水酸基価:13mgKOH/g、水分散液、固形分濃度:30%〕、MD-1480〔ガラス転移温度Tg:20℃、数平均分子量Mn:15000、水酸基価:6mgKOH/g、水分散液、固形分濃度:25%〕、MD-1500〔ガラス転移温度Tg:77℃、数平均分子量Mn:8000、水酸基価:14mgKOH/g、水分散液、固形分濃度:30%〕、MD-1930〔ガラス転移温度Tg:-10℃、数平均分子量Mn:20000、水酸基価:5mgKOH/g、水分散液、固形分濃度:31%〕、MD-1985〔ガラス転移温度Tg:-20℃、数平均分子量Mn:25000、水酸基価:4mgKOH/g、水分散液、固形分濃度:27%〕、MD-2000〔ガラス転移温度Tg:67℃、数平均分子量Mn:18000、水酸基価:6mgKOH/g、水分散液、固形分濃度:40%〕。
なおポリエステル樹脂としては、上記の中でもとくにガラス転移温度Tgが20℃以上、70℃以下であるポリエステル樹脂が好ましい。
またポリエステル樹脂としては、数平均分子量Mnが10000以上、33000以下であるポリエステル樹脂が好ましい。
これらの理由は、先に説明したとおりである。
各成分の割合は任意に設定できるが、ブロック化イソシアネート硬化剤とイソシアネート硬化性樹脂の割合は、やはり硬化反応によって熱処理耐性や耐アルコール性にすぐれた文字など形成し得る、任意の範囲に設定することができる。
また塗材には、カーボンブラックの分散性を高めるために、分散剤を配合してもよい。
水系の塗材に配合できる分散剤の具体例としては、これに限定されないが、たとえば、花王(株)製のデモール(登録商標)シリーズのうちEP、EPパウダー、MS、N、NL、P、RN、RN-L、SC-30、SN-B、SS-L、T、T-45等の1種または2種以上を用いることができる。
厚みがこの範囲未満では、熱転写層の熱接着性や、熱接着後の接着力が低下して、パッケージ等の表面に印刷された文字などの熱処理耐性や耐アルコール性が不足する場合がある。
一方、熱転写層の厚みが上記の範囲を超える場合には、熱転写層が膜切れしにくくなって、熱転写層を熱転写して文字などを印刷する際に、余剥離を生じやすくなる場合がある。
これに対し、熱転写層の厚みを上記の範囲とすることで、パッケージ等の表面に印刷された文字などの熱処理耐性や耐アルコール性の低下を抑制し、かつ余剥離の発生を抑制しながら、当該文字などを、濃度の高い黒色に着色することができる。
本発明の感熱転写媒体の構成は、以上で説明した例のものには限定されない。
たとえば、背面層は省略してもよし、熱転写層は、3層以上の多層構造であってもよい。
基材の表面を離型処理するためには、たとえば、当該表面にフッ素化、塩素化等の処理をしたり、あるいはシリコーン樹脂、フッ素樹脂等を含む離型層を形成したりすればよい。
その他、本発明の要旨を変更しない範囲で、種々の変更を施すことができる。
カルナバワックス40質量部、パラフィンワックス(融点:65℃)40質量部、およびEVA〔東ソー(株)製のウルトラセン(登録商標)685、溶融温度:77℃〕20質量部を、トルエンとメチルエチルケトンの質量比2/1の混合溶剤に溶解して、固形分濃度20質量%の塗材を調製した。
(熱溶融着色層)
下記の各成分を、溶剤としてのMEKに配合して、熱溶融着色層用の塗材を調製した。
ポリエステル樹脂:三菱ケミカル(株)製のダイヤクロンER-1002〔高分子飽和共重合型、ガラス転移温度Tg:60℃、溶融開始温度:120℃、数平均分子量Mn:13500、水酸基価:5~10mgKOH/g〕
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製の#3400B〔ファーネス法、DBP吸収量:175cm3/100g〕
分散剤:ルーブリゾール社製のソルスパース20000
そして調製した塗材を、先に形成した剥離層の上に塗布したのち乾燥させて、単位面積あたりの固形分量が1g/m2である熱溶融着色層を形成した。
(熱接着層)
下記の各成分を、溶剤としてのメタノールに配合して、熱接着層用の塗材を調製した。
ブロック化イソシアネート硬化剤:明成化学工業(株)製のSU-268A〔HDIブロック化体、水系乳化液、固形分濃度:30%、アニオン性〕
イソシアネート硬化性樹脂:カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂、住友精化(株)製のザイクセンA-GH〔自己乳化型水溶液、固形分濃度:24%、中和剤:アンモニア、pH:8~10〕
そして調製した塗材を、先に形成した熱溶融着色層上に塗布したのち乾燥させて、単位面積あたりの固形分量が0.5g/m2である熱接着層を形成し、感熱転写媒体を作製した。
〈実施例2〉
ブロック化イソシアネート硬化剤として、明成化学工業(株)製のメイカネートTP-10〔TDIブロック化体、水系乳化液、固形分濃度:44%、ノニオン性〕を1.00質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして熱接着層用の塗材を調製し、熱接着層を形成して、感熱転写媒体を作製した。
また熱接着層における、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂〔自己乳化型水溶液中に含まれていた固形分(有効成分)〕100質量部あたりの、ブロック化イソシアネート硬化剤〔水系乳化液中に含まれていた固形分(有効成分)〕の割合は20.4質量部であった。
ブロック化イソシアネート硬化剤として、明成化学工業(株)製のDM-6400〔MDIブロック化体、水系分散液、固形分濃度:43%〕を1.02質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして熱接着層用の塗材を調製し、熱接着層を形成して、感熱転写媒体を作製した。
また熱接着層における、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂〔自己乳化型水溶液中に含まれていた固形分(有効成分)〕100質量部あたりの、ブロック化イソシアネート硬化剤〔水系分散液中に含まれていた固形分(有効成分)〕の割合は20.3質量部であった。
ブロック化イソシアネート硬化剤に代えて、ブロック化されていないイソシアネート硬化剤〔ポリイソシアネート、東ソー(株)製のアクアネート(登録商標)105、固形分濃度:100%〕を0.44質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして熱接着層用の塗材を調製し、熱接着層を形成して、感熱転写媒体を作製した。
また熱接着層における、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂〔自己乳化型水溶液中に含まれていた固形分(有効成分)〕100質量部あたりの、イソシアネート硬化剤の割合は20.4質量部であった。
イソシアネート硬化性樹脂として、エチレン-アクリル酸共重合体〔SK総合化学社製のプリマコールP-5990L、水分散液、固形分濃度:20%〕を10.8質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして熱接着層用の塗材を調製し、熱接着層を形成して、感熱転写媒体を作製した。
また熱接着層における、エチレン-アクリル酸共重合体〔水分散液中に含まれていた固形分(有効成分)〕100質量部あたりの、ブロック化イソシアネート硬化剤〔水系分散液中に含まれていた固形分(有効成分)〕の割合は20.4質量部であった。
イソシアネート硬化性樹脂として、フェノール樹脂〔DIC(株)製のTD-4304、エマルジョン、ノニオン型、固形分濃度:39~41%〕を5.4質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして熱接着層用の塗材を調製し、熱接着層を形成して、感熱転写媒体を作製した。
また熱接着層における、フェノール樹脂〔エマルジョン中に含まれていた固形分(有効成分)〕100質量部あたりの、ブロック化イソシアネート硬化剤〔水系分散液中に含まれていた固形分(有効成分)〕の割合は20.4質量部であった。
カーボンブラックとして、デンカ(株)製のデンカブラックFX-35〔アセチレン法、DBP吸収量:220cm3/100g〕を21.7質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして熱溶融着色層用の塗材を調製し、熱溶融着色層を形成して、感熱転写媒体を作製した。
また熱接着層における、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂〔自己乳化型水溶液中に含まれていた固形分(有効成分)〕100質量部あたりの、ブロック化イソシアネート硬化剤〔水系乳化液中に含まれていた固形分(有効成分)〕の割合は20.4質量部であった。
カーボンブラックとして、三菱ケミカル(株)製のMA100粒状〔LFF、DBP吸収量:95cm3/100g〕を21.7質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして熱溶融着色層用の塗材を調製し、熱溶融着色層を形成して、感熱転写媒体を作製した。
熱溶融着色層における、ポリエステル樹脂100質量部あたりのカーボンブラックの割合は82.5質量部であった。
〈実施例6〉
カーボンブラックとして、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製のKETJENBLACK EC300J〔ガス化法、DBP吸収量:360cm3/100g〕を10.9質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして熱溶融着色層用の塗材を調製し、熱溶融着色層を形成して、感熱転写媒体を作製した。
なおカーボンブラックとしてのKETJENBLACK EC300Jの割合が少ないのは、前述したようにDBP吸収量が300cm3/100gを超える当該カーボンブラックの比表面積が大きすぎて、樹脂中に分散できる量が限られたためである。
〈実施例7〉
ポリエステル樹脂として、東洋紡(株)製のバイロンGK-830〔ガラス転移温度Tg:25℃、数平均分子量Mn:32000、水酸基価:7mgKOH/g〕を26.3質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして熱溶融着色層用の塗材を調製し、熱溶融着色層を形成して、感熱転写媒体を作製した。
また熱接着層における、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂〔自己乳化型水溶液中に含まれていた固形分(有効成分)〕100質量部あたりの、ブロック化イソシアネート硬化剤〔水系乳化液中に含まれていた固形分(有効成分)〕の割合は20.4質量部であった。
ポリエステル樹脂として、三菱ケミカル(株)製のダイヤクロンER-2001〔ガラス転移温度Tg:15℃、溶融開始温度:83℃、数平均分子量Mn:20000、水酸基価:5~10mgKOH/g〕を26.3質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして熱溶融着色層用の塗材を調製し、熱溶融着色層を形成して、感熱転写媒体を作製した。
また熱接着層における、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂〔自己乳化型水溶液中に含まれていた固形分(有効成分)〕100質量部あたりの、ブロック化イソシアネート硬化剤〔水系乳化液中に含まれていた固形分(有効成分)〕の割合は20.4質量部であった。
ポリエステル樹脂として、東洋紡(株)製のバイロンGK-880〔ガラス転移温度Tg:84℃、数平均分子量Mn:18000、水酸基価:5mgKOH/g〕を26.3質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして熱溶融着色層用の塗材を調製し、熱溶融着色層を形成して、感熱転写媒体を作製した。
また熱接着層における、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂〔自己乳化型水溶液中に含まれていた固形分(有効成分)〕100質量部あたりの、ブロック化イソシアネート硬化剤〔水系乳化液中に含まれていた固形分(有効成分)〕の割合は20.4質量部であった。
ポリエステル樹脂として、東洋紡(株)製のバイロン220〔ガラス転移温度Tg:53℃、数平均分子量Mn:3000、水酸基価:50mgKOH/g〕を26.3質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして熱溶融着色層用の塗材を調製し、熱溶融着色層を形成して、感熱転写媒体を作製した。
また熱接着層における、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂〔自己乳化型水溶液中に含まれていた固形分(有効成分)〕100質量部あたりの、ブロック化イソシアネート硬化剤〔水系乳化液中に含まれていた固形分(有効成分)〕の割合は20.4質量部であった。
ポリエステル樹脂に代えて、アクリル樹脂〔三菱ケミカル(株)製のダイヤナール(登録商標)BR-106〕を26.3質量部配合したこと以外は実施例1と同様にして熱溶融着色層用の塗材を調製し、熱溶融着色層を形成して、感熱転写媒体を作製した。
熱溶融着色層における、アクリル樹脂100質量部あたりのカーボンブラックの割合は82.5質量部であった。
〈実施例12〉
(単層の熱転写層)
下記の各成分を、溶剤としてのメタノールに配合して、単層の熱転写層用の塗材を調製した。
ポリエステル樹脂:東洋紡(株)製のバイロナールMD-1500〔ガラス転移温度Tg:77℃、数平均分子量Mn:8000、水酸基価:14mgKOH/g、水分散液、固形分濃度:30%〕
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製の#3400B〔ファーネス法、DBP吸収量:175cm3/100g〕
ブロック化イソシアネート硬化剤:明成化学工業(株)製のSU-268A〔HDIブロック化体、水系乳化液、固形分濃度:30%、アニオン性〕
イソシアネート硬化性樹脂:カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂、住友精化(株)製のザイクセンA-GH〔自己乳化型水溶液、固形分濃度:24%、中和剤:アンモニア、pH:8~10〕
分散剤:花王(株)製のデモールN
そして調製した塗材を、先に形成した剥離層の上に塗布したのち乾燥させて、単位面積あたりの固形分量が1g/m2である単層の熱転写層を形成したこと以外は実施例1と同様にして感熱転写媒体を作製した。
またカルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂〔自己乳化型水溶液中に含まれていた固形分(有効成分)〕100質量部あたりの、ブロック化イソシアネート硬化剤〔水系乳化液中に含まれていた固形分(有効成分)〕の割合は20.4質量部であった。
熱転写層を、イソシアネート硬化性樹脂を含む層と、ブロック化していないイソシアネート硬化剤を含む層とに機能分離させた感熱転写媒体を、下記の手順で再現した。
(熱転写層)
下記の各成分を、溶剤としてのメタノールに配合して、熱転写層用の塗材を調製した。
イソシアネート硬化性樹脂:カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂、住友精化(株)製のザイクセンA-GH〔自己乳化型水溶液、固形分濃度:24%、中和剤:アンモニア、pH:8~10〕
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製のMA100粒状〔LFF、DBP吸収量:95cm3/100g〕
分散剤:花王(株)製のデモールN
そして調製した塗材を、実施例1と同様にして基材上に形成した剥離層の上に塗布したのち乾燥させて、単位面積あたりの固形分量が1g/m2である熱転写層を形成した。
なお、カーボンブラックとしてLFFを用いているのは、組み合わせる樹脂がポリエステル樹脂ではなく、イソシアネート硬化性樹脂であるためである。
ブロック化していないイソシアネート基を含み、イソシアネート硬化剤として機能するイソシアネート樹脂〔大日本精化工業(株)製のクロスネートD-70、固形分濃度:50%〕を、溶剤としてのMEKに配合して、硬化剤層用の塗材を調製した。
そして調製した塗材を、先に形成した熱接着層上に塗布したのち乾燥させて、単位面積あたりの固形分量が0.5g/m2である硬化剤層を形成して、熱転写層を、イソシアネート硬化性樹脂を含む層と、イソシアネート硬化剤を含む層とに機能分離させた感熱転写媒体を作製した。
各実施例、参考例および比較例で作製した感熱転写媒体を所定の幅のリボン状にスリットし、ロール状に巻き取って、熱転写プリンタ〔東芝テック(株)製のラベルプリンタB-SX4T、解像度:300dpi〕にセットした。
また、食品用のパッケージのモデルとして、2軸延伸ナイロンフィルム(ONY)と直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)のラミネートフィルムを用意した。
そしてラミネートフィルムの、文字パターンを印刷した表面をペーパーウエスで20往復こすった後に文字パターンの状態を確認して、下記の基準で熱処理耐性を評価した。
△:文字パターンに僅かに、抜けている部分と剥離が見られたが、文字の判読は可能であった。
×:文字パターンに、文字の判読が不能な抜けや剥離が見られた。
〈耐アルコール性評価〉
各実施例、参考例および比較例で作製した感熱転写媒体を、所定の幅のリボン状にスリットし、ロール状に巻き取って、熱処理耐性評価で使用したのと同じ熱転写プリンタにセットした。
そしてラミネートフィルムの、バーコードを印刷した表面に、エタノールを染み込ませた綿棒を90gf(=0.8826N)の荷重をかけて接触させた状態で50往復させたのち、バーコードの状態を観察した。
○:バーコードは溶けて滲んだり掠れたり流れたりしておらず、バーコードリーダーで正しく読み取ることもできた。
△:バーコードが僅かに溶けて滲んだり掠れたり流れたりしていたものの、バーコードリーダーで正しく読み取ることはできた。
〈印刷時の熱感度評価〉
各実施例、参考例および比較例で作製した感熱転写媒体を、所定の幅のリボン状にスリットし、ロール状に巻き取って、熱処理耐性評価で使用したのと同じ熱転写プリンタにセットした。
○:細線を、全長に亘って線幅1ドットで問題なく印刷することができた。
△:線幅が部分的に細くなったが、細線を全長に亘って途切れることなく印刷することができた。
〈ポットライフ評価〉
各実施例、参考例および比較例で作製した感熱転写媒体を、所定の幅のリボン状にスリットし、ロール状に巻き取って、40℃で1週間保管したのち、熱処理耐性評価で使用したのと同じ熱転写プリンタにセットした。
○:細線を、全長に亘って途切れることなく印刷することができた。ポットライフなし。
×:途中で細線の途切れが多発した。ポットライフあり。
各実施例、参考例および比較例で作製した感熱転写媒体を、所定の幅のリボン状にスリットし、ロール状に巻き取って、熱処理耐性評価で使用したのと同じ熱転写プリンタにセットした。
そして、熱処理耐性評価で使用したのと同じラミネートフィルムのONY側の表面に、上記熱転写プリンタを用いてベタ印刷をして、色濃度を、濃度測定器(マクベス濃度計RD-918)を用いて測定して、下記の基準で色濃度を評価した。
△:色濃度は1.0以上、1.5未満であった。
×:色濃度は1.0未満であった。
以上の結果を、表5~表8に示す。
なお各表中、熱転写層の層構造の欄の記載は下記のとおり。
II:単層の熱転写層。
III:熱転写層と硬化剤層の2層に機能分離。
表中、各成分の質量部は、いずれも有効成分としての固形分の質量部を示し、カーボンブラックは、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、またはカルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂100質量部あたりの質量部を示す。
イソシアネート硬化性樹脂の種類の欄の記載は、下記のとおり。
CP:カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂
EA:エチレン-アクリル酸共重合体
PH:フェノール樹脂
さらに、イソシアネート硬化剤のブロック化の欄の記載は
○:ブロック化あり
×:ブロック化なし
を示し、種類の欄の記載は、もとになるイソシアネート硬化剤の種類を示す。
TDI:トリレンジイソシアネート
MDI:4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート
ポリ:ポリイソシアネート
樹脂:イソシアネート樹脂
実施例1~3の結果より、ブロック化イソシアネート硬化剤としては、TDIまたはHDIをブロック化剤でブロック化した化合物を用いるのが好ましいことが判った。
また実施例1、2の結果より、水溶液ないし水分散液のpHが7を超えるアルカリ性、またはpHが7前後の中性であるカルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂と組み合わせるブロック化イソシアネート硬化剤としては、アニオン性もしくはノニオン性の界面活性剤を用いた水分散液が好ましいことが判った。
また実施例1、7~10の結果より、ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度Tgが20℃以上、70℃以下、数平均分子量Mnが10000以上、33000以下、もしくは、水酸基価が20mgKOH/g以下であるのが好ましいことが判った。
Claims (7)
- 基材と、前記基材上に、熱転写可能に設けられた熱転写層とを含み、前記熱転写層の少なくとも最表層は、ブロック化イソシアネート硬化剤、およびイソシアネート硬化性樹脂を含み、
前記イソシアネート硬化性樹脂は、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂である感熱転写媒体。 - 前記ブロック化イソシアネート硬化剤は、トリレンジイソシアネート、またはヘキサメチレンジイソシアネートをブロック化剤でブロックした化合物である請求項1に記載の感熱転写媒体。
- 前記熱転写層は、前記基材上に順に積層された熱溶融着色層、および熱接着層を含み、前記熱接着層が、前記ブロック化イソシアネート硬化剤、および前記イソシアネート硬化性樹脂を含む前記最表層である請求項1または2に記載の感熱転写媒体。
- 前記熱溶融着色層は、ガラス転移温度Tgが20℃以上、70℃以下のポリエステル樹脂を含む請求項3に記載の感熱転写媒体。
- 前記熱溶融着色層は、数平均分子量Mnが10000以上、33000以下のポリエステル樹脂を含む請求項3または4に記載の感熱転写媒体。
- 前記熱溶融着色層は、水酸基価が20mgKOH/g以下のポリエステル樹脂を含む請求項3ないし5のいずれか1項に記載の感熱転写媒体。
- 前記熱溶融着色層は、DBP吸収量が100cm3/100g以上、300cm3/100g以下のカーボンブラックを含む請求項3ないし6のいずれか1項に記載の感熱転写媒体。
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