JP2011098539A - 熱転写インク受容体および熱転写記録用粘着シート - Google Patents

熱転写インク受容体および熱転写記録用粘着シート Download PDF

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Abstract

【課題】溶剤(オイルを含む)に耐性のある熱転写インク受容体および当該受容体を用いてなる熱転写記録用粘着シートを提供する。
【解決手段】基材上に熱転写インク受容層が設けられてなる熱転写インク受容体であって、前記基材の受容層との接触面が、硫酸、塩酸、硝酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸およびフッ化水素からなる群より選択される少なくとも1種の酸を用いてケミカルエッチング処理された、熱転写インク受容体および当該受容体を用いてなる熱転写記録用粘着シート。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱転写インク受容体および当該受容体を用いてなる熱転写記録用粘着シートに関する。特に、本発明は、溶剤(オイルを含む)に耐性のある、熱転写インク受容体および当該受容体を用いてなる熱転写記録用粘着シートに関するものである。
自動車部品や電子部品には、バーコードが印字された粘着ラベルが貼付されるが、粘着ラベルに溶剤やオイルに対して耐性が無いため、ラベル上に記載した印字が消える、ラベルが部品から剥がれる、といった問題があった。この問題を解決するために、印字の上に保護フィルムを貼り合わせるオーバーラミネート法が使用されたが、この方法は、コストが高く、工程数も増えるため、耐溶剤性の高いラベルが求められてきた。
このような要望に答えるべく、耐溶剤性に優れた熱転写記録用受容体が開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、支持体上にアンダー層及び受容層が積層されている熱転写記録用受容体において、アンダー層及び前記受容層がエチレン−メタクリル酸共重合体の塩及び架橋剤を含有することを特徴とする熱転写記録用受容体が開示されている。このような熱転写記録用受容体は、イソプロピルアルコールに対する耐溶剤性が良好であるため、ラベルに転写された画像がイソプロピルアルコールによって消去しないことが記載されている。
特開2006−76138号公報
しかしながら、特許文献1に記載の熱転写記録用受容体において、基材と印字受容層との密着が不十分で、印字が脱落するといった問題があった。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、溶剤(オイルを含む)に耐性のある熱転写インク受容体および当該受容体を用いてなる熱転写記録用粘着シートを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、基材の受容層との接触面を特定の酸で処理することによって、基材と印字受容層との密着性を向上できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、上記目的は、基材上に熱転写インク受容層が設けられてなる熱転写インク受容体であって、前記基材の受容層との接触面が、硫酸、塩酸、硝酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸およびフッ化水素からなる群より選択される少なくとも1種の酸を用いてケミカルエッチング処理された、熱転写インク受容体によって達成される。
本発明によれば、溶剤やオイルに浸漬した後も、熱転写インクを保持する熱転写記録用粘着シートを提供することができる。
本発明は、基材上に熱転写インク受容層(以下、単に「受容層」とも称する)が設けられてなる熱転写インク受容体であって、前記基材の受容層との接触面が、硫酸、塩酸、硝酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸およびフッ化水素からなる群より選択される少なくとも1種の酸(以下、単に「酸処理剤」とも称する)を用いてケミカルエッチング処理された、熱転写インク受容体(以下、単に「受容体」とも称する)を提供する。本発明は、受容層を形成する前に、基材の受容層との接触面を特定の酸でケミカルエッチング処理することを特徴とする。従来は、基材と受容層との間にアンダーコート層を形成していたが、このような方法の場合には、溶剤やオイルに浸漬すると、基材とアンダーコート層との間またはアンダーコート層と受容層との間に溶剤やオイルが浸入して、基材から受容層が剥離したりした。これに対して、本願によるように、基材表面を酸によるケミカルエッチング処理を行なうことにより、基材の処理面と受容層との密着性を向上できる。酸によるケミカルエッチング処理により基材の処理面と受容層との密着性が向上するメカニズムは不明であるが、以下のように推測できる。なお、本発明は、下記推測に限定されるものではない。すなわち、基材表面を酸によるケミカルエッチング処理を行なうと、基材の処理表面の反応性が促進するとともに、基材表面が粗くなり受容層との接触面積が大きくなるため、このような処理後に、基材上に受容層を形成すると、受容層中の樹脂と当該基材の処理面とが強固に結合するため、当該受容層との密着性を向上できる。このため、本発明の受容体を有する熱転写記録用粘着シートは、溶剤やオイルに浸漬した後であっても、受容層が基材から剥がれたりせず、溶剤やオイルが基材と受容層との間への浸入を抑制・防止して、密着性を保持できる。また、本発明の受容体を有する熱転写記録用粘着シートは、耐溶剤性に優れ、溶剤やオイルと接触した後であっても、バーコードを十分読み取ることができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の受容体は、基材、および当該基材の片面側に形成された受容層(本明細書中では、受容層を「コート層」とも称する)を有する。ここで、基材(酸処理剤でケミカルエッチング処理される前の基材)の材質としては、特に制限されず、通常受容体やラベルに使用される公知の基材が同様にして使用される。具体的には、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ビニロン等のプラスチックフィルムなどが挙げられる。これらのうち、ポリエステルやポリプロピレン、特に内部に空洞や白色顔料を有するポリエステルやポリプロピレンが好ましい。
また、基材の厚さは、特に制限されず、受容体に一般的に使用される基材と同様の厚みが使用できる。具体的には、基材の厚さは、10〜250μmであることが好ましく、20〜200μmであることがより好ましい。このような厚さの基材であれば、受容体として十分な強度が得られ、また、粘着シートやラベルとして使用される際に、被着体からの脱落を十分抑制・防止できる。
本発明では、受容層を配置する側の基材面を、特定の酸(酸処理剤)を用いてケミカルエッチング処理する。このような特定の酸で基材面をケミカルエッチング処理することによって、基材表面の反応性を促進できる。このため、このような処理後に、基材上に受容層を形成すると、当該基材と受容層との密着性を向上できる。なお、本発明では、基材面のうち、受容層を配置する側の基材面に少なくとも酸を用いてケミカルエッチング処理を施せばよいが、基材の他方の面についても同様の酸を用いてケミカルエッチング処理を施してもよい。ここで、酸(酸処理剤)としては、硫酸、塩酸、硝酸、トリクロロ酢酸(TCA)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ジクロロ酢酸およびフッ化水素がある。この際、上記酸処理剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。上記酸のうち、基材表面の反応性の促進(ゆえに、受容層との密着性)を考慮すると、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸が好ましい。
受容層を配置する側の基材面の酸処理剤でのケミカルエッチング処理方法は、所望の基材面が受容層と十分密着できる程度にまで、基材面をケミカルエッチング処理できる方法であれば特に制限されない。具体的には、受容層を配置する側の所望の基材面に、上記酸または上記酸を適当な溶剤に溶解した酸処理溶液を塗布して、当該基材面をケミカルエッチング処理した後、処理を終了させることによって、行なわれる。ここで、上記基材面は、酸処理剤が液状である場合には、そのままの形態で使用されてもよいが、操作の簡便性や安全性などを考慮すると、上記酸処理剤を適当な溶剤に溶解して、酸処理溶液を調製し、この酸処理溶液を上記基材に塗布することが好ましい。ここで、後者の場合に使用される溶剤は、酸処理剤を溶解できるものであれば特に制限されず、使用される酸処理剤の種類によって適宜選択される。具体的には、水、エタノール、エーテル類などが挙げられる。上記溶剤は、単独で使用されても、あるいは2種以上の混合液の状態で使用されてもよい。また、酸処理溶液を使用する場合の、酸処理剤の溶液中の濃度は、特に制限されず、下記に示されるような酸処理剤の塗布量に応じて適宜選択できる。具体的には、酸(酸処理剤)の上記溶液中の濃度は、好ましくは20〜100質量%、より好ましくは40〜90質量%である。
上記したように、受容層を配置する側の基材面は、酸または酸処理溶液を塗布することによりケミカルエッチング処理される。ここで、酸または酸処理溶液は、基材の全面に塗布されてもあるいは基材の一部に塗布されてもよいが、基材の全面に塗布されることが好ましい。また、酸または酸処理溶液の塗布方法は、特に制限されず、当該分野における通常の塗布方法がそのままあるいは適宜修飾して適用できる。具体的には、ドクターブレードコーティング、マイヤーバーコーティング、ロールコーティング、スクリーンコーティング、スピナーコーティング、インクジェットコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティングなどが挙げられる。これらのうち、塗布操作のしやすさ、塗布量の調節のしやすさ、塗布面の平滑性などを考慮すると、グラビアコーティング、マイヤーバーコーティングが好ましい。また、基材への酸(酸処理剤)の塗布量(処理量)は、所望の基材面が受容層と十分密着できる程度にまで、基材面をケミカルエッチング処理できる量であれば特に制限されない。好ましくは、酸(酸処理剤)が、基材面に、0.03〜2.0g/m、より好ましくは0.05〜0.5g/mの量、塗布されることが好ましい。このような量であれば、基材面全面に酸がいきわたり、十分ケミカルエッチング処理できる。
または、酸処理剤の塗布量(処理量)は、酸処理剤によるケミカルエッチング処理後の基材面(基材の受容層との接触面)における、C、O、Cl、F、SおよびN原子の合計量に対するCl、F、SまたはN原子の量の割合X(%)によって、規定されてもよい。ここで、塩素原子(Cl)の量の割合X(%)は、酸処理剤のうち、塩酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸の塗布量(処理量)を規定し;フッ素原子(F)の量の割合X(%)は、トリフルオロ酢酸、フッ化水素の塗布量(処理量)を規定し;硫黄原子(S)の量の割合X(%)は、硫酸の塗布量(処理量)を規定し;窒素原子(N)の量の割合X(%)は、硝酸の塗布量(処理量)を規定する。詳細には、基材の受容層との接触面における、測定元素(C、O、Cl、F、S、N)としてX線光電子分光法(XPS)により測定した場合の、下記式:
Figure 2011098539
で算出されるC、O、Cl、F、SおよびN原子の合計量に対するCl、F、SまたはN原子の量の割合X(%)は、0.05〜2.0%であることが好ましく、0.1〜1.0%であることがより好ましい。このような範囲であれば、得られる受容体は、耐溶剤性に優れ、溶剤やオイルに浸漬した後であっても、密着性が保持されて基材から受容層の剥がれを有効に抑制・防止できる。ゆえに、当該受容体を有するラベルは、溶剤やオイルと接触した後であっても、バーコードを十分読み取ることができる。なお、本明細書において、「XPSによる測定元素(C、O、Cl、F、S、N)の量」は、後述する実施例に記載の方法により測定された値である。
また、受容層を配置する側の基材面の酸でのケミカルエッチング処理条件は、所望の基材面が受容層と十分密着できる程度にまで、基材面をケミカルエッチング処理できる条件であれば特に制限されない。具体的には、ケミカルエッチング処理温度は、5〜45℃が好ましく、15〜35℃がより好ましい。本発明では、酸処理剤が基材面に接触(塗布)されると、速やかにケミカルエッチング処理が進行する。このため、ケミカルエッチング処理時間は、特に制限されず、塗布後は、速やかに下記工程にて、ケミカルエッチング処理が終了されてもよい。ケミカルエッチング処理時間は、通常、2〜120秒間、好ましくは10〜60秒間程度で十分である。
上記したような所望のケミカルエッチング処理を行なった後は、当該ケミカルエッチング処理を終了する。この際、当該処理の終了方法は、特に制限されず、公知の方法が同様にして適用できる。例えば、基材の酸塗布面を加熱/乾燥する方法、エアーナイフによって酸を除去する方法などが挙げられる。好ましくは、基材の酸塗布面を加熱/乾燥することによって、ケミカルエッチング処理を終了する。この際、ケミカルエッチング処理終了条件(加熱/乾燥条件)は、ケミカルエッチング処理を終了できる条件であれば特に制限されない。具体的には、ケミカルエッチング処理した基材を、50〜160℃で1〜5分間、加熱/乾燥することが好ましく、ケミカルエッチング処理した基材を、90〜140℃で1〜5分間、加熱/乾燥することがより好ましい。このようにしてケミカルエッチング処理された基材面は、非晶性で、高い反応性を有する。
上記酸処理剤によるケミカルエッチング処理した基材面上に、受容層を形成する。本発明は、受容層を形成する側の基材面を特定の酸でケミカルエッチング処理することを特徴とする。このため、受容層は、特に制限されず、特開2004−268571号公報や特開2006−76138公報などの公知の受容層が使用できる。
受容層は、樹脂を含むが、ここで、樹脂は、特に制限されず、受容層として使用される公知の樹脂が使用できる。耐溶剤性を考慮すると、受容層では、樹脂と架橋剤とが架橋反応して、受容層が架橋構造を有することが好ましい。このように受容層が架橋構造を有する場合には、受容体を溶剤やオイルに浸漬した後の受容層の溶解を抑制・防止できる。このため、架橋構造を有する受容層を備えた受容体は、耐溶剤性に優れる。架橋剤との反応を考慮すると、受容層の樹脂として水酸基、カルボキシル基、エポキシ基及びアセトアセチル基等の適当な官能基を有する樹脂と、これらの官能基と反応する架橋剤と、を組み合わせることが好ましい。
このような樹脂としては、公知の樹脂が使用できる。例えば、以下に制限されないが、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシル基、カルボン酸Na基、スルホン酸Na基、アセトアセチル基、カチオン基などで変性されたポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、澱粉及びその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、ウレタン変性ポリエチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン−塩化ビニル共重合体、ポリエステル、ならびにメチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、プロピレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソプロピレン−(メタ)アクリル酸共重合体等の炭素原子数1〜8、好ましくは1〜3のオレフィン−(メタ)アクリル酸共重合体およびその塩(例えば、金属塩)などが使用される。これらのうち、炭素原子数1〜8、好ましくは1〜3のオレフィン−(メタ)アクリル酸共重合体およびその塩(例えば、金属塩)などが好ましく、エチレン−アクリル酸共重合体およびその塩(例えば、金属塩)、エチレン−メタクリル酸共重合体およびその塩(例えば、金属塩)がより好ましい。これらの樹脂は、熱転写インクとの密着性に優れる。この際、上記樹脂は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、上記樹脂は、そのままの形態で使用されてもよいが、適当な溶剤における溶液、エマルション、懸濁液もしくは分散体などの形態で使用されてもよい。後者の場合の適当な溶剤としては、特に制限されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、エーテルなどが挙げられ、水、メタノールが好ましく、水がより好ましい。このため、エチレン−メタクリル酸共重合体およびその塩(例えば、金属塩)の水溶液、水エマルションや水分散体が好ましく、エチレン−メタクリル酸共重合体またはその金属塩の水分散体が好ましい。エチレン−メタクリル酸共重合体またはその金属塩の水分散体は、合成されてもよい。この際、エチレン−メタクリル酸共重合体またはその金属塩の水分散体の製造方法は、特に制限されず、公知の方法が使用できる。オレフィン系樹脂の水性分散液を製造する方法、例えば、エチレン―酢酸ビニル共重合体水性分散液に代表されるような懸濁重合若しくは乳化重合による方法、及びポリエチレンワツクス水性分散液に代表されるような、重合によって生成した重合体を重合後に水中に分散させる後分散法などが適用できる。これらの方法のうち、後分散法が好ましく使用される。後分散法は、重合反応で得られた重合体を重合反応後に界面活性剤を用いずに機械的に水中に分散せしめる方法であるため、界面活性剤のブリードアウトによる密着性の低下がないためである。このため、後分散法によりエチレン−メタクリル酸共重合体またはその金属塩を機械的に強制分散させた水分散体が特に好ましく使用される。または、樹脂は市販されたものを使用してもよく、例えば、エチレン−メタクリル酸共重合体の水分散体の市販品としては、中央理化工業社製のアクアテックスAC−3100などが挙げられ、エチレン−メタクリル酸共重合体の金属塩の水分散体の市販品としては、三井化学社製のケミパールSシリーズ(例えば、S−650、S−659)などが挙げられる。
なお、上記エチレン−メタクリル酸共重合体の塩又は金属塩におけるメタクリル酸の構成単位の少なくとも一つは、カルボキシラート基(−COO)を有するが、他のメタクリル酸の構成単位は、カルボキシル基(−COOH)を有してもよい。また、エチレン−メタクリル酸共重合体の塩としては、特に制限されず、共重合体中の少なくとも一以上のカルボキシル基がカルボン酸塩に変換されているエチレン−メタクリル酸共重合体であればよい。ここで、エチレン−メタクリル酸共重合体の塩としては、エチレン−メタクリル酸共重合体のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;亜鉛塩等の金属塩などが挙げられ、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。
また、架橋剤としては、公知の架橋剤が使用できる。例えば、以下に制限されないが、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ポリアミドエピクロロヒドリン系架橋剤、グリオキザール系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、多価金属塩などが挙げられる。これらのうち、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤およびカルボジイミド系架橋剤が好ましい。ここで、上記架橋剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
ゆえに、本発明に係る受容層は、エチレン・メタクリル酸共重合体またはその金属塩、ならびにエポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤およびカルボジイミド系架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤を含むことが好ましい。
受容層中の架橋剤の含有量は、特に制限されない。好ましくは、受容層中の架橋剤の含有量は、樹脂 100質量部に対して、0.5〜20質量部であり、樹脂 100質量部に対して、1〜10質量部であることがより好ましい。このような範囲であれば、樹脂を架橋剤で十分架橋して、十分な架橋構造を受容層に形成でき、ゆえに受容体は十分な耐溶剤性を発揮できる。
上記に加えて、受容層は、無機顔料を含んでもよい。ここで、無機顔料としては、特に制限されず、受容層として使用できる公知の無機顔料を同様にして使用できる。例えば、無機顔料としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、タルク等を用いることができる。また、無機顔料を使用する場合には、無機顔料の粒径は、特に制限されないが、1〜5μm程度が好ましい。このような範囲であれば、受容層表面の凹凸を適度に調節して、転写した画像を十分保護でき、また、画像転写時のかすれや白ぬけの発生を有効に抑制・防止できる。
無機顔料を使用する場合の、受容層中の無機顔料の含有量は、特に制限されない。好ましくは、受容層中の無機顔料の含有量は、樹脂 100質量部に対して、30〜70質量部であり、樹脂 100質量部に対して、40〜60質量部であることがより好ましい。このような範囲であれば、受容層表面の凹凸を適度に調節して、転写した画像を十分保護でき、また、画像転写時のかすれや白ぬけの発生を有効に抑制・防止できる。
また、受容層は、他の添加剤を含んでもよい、ここで、他の添加剤としては、特に制限されず、受容層として使用できる公知の添加剤を同様にして使用できる。例えば、他の添加剤としては、ステアリン酸アミド、パルチミン酸アミド等の脂肪酸アミド類、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、パルチミン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、モンタンワックス等のワックスや界面活性剤などが挙げられる。
他の添加剤を使用する場合の、受容層中の他の添加剤の含有量は、上記樹脂の架橋剤による反応を阻害しない限り、特に制限されない。好ましくは、受容層中の他の添加剤の含有量は、樹脂 100質量部に対して、1〜10質量部であり、樹脂 100質量部に対して、3〜7質量部であることがより好ましい。このような範囲であれば、受容層表面の凹凸を適度に調節して、転写した画像を十分保護でき、また、画像転写時のかすれや白ぬけの発生を有効に抑制・防止できる。
また、上記ケミカルエッチング処理された基材面上に受容層を形成する方法は、特に制限されず、当該分野における通常の方法がそのままあるいは適宜修飾して適用できる。具体的には、樹脂、架橋剤、適当な溶媒、ならびに必要であれば無機顔料や他の添加剤を混合して、受容層形成用コート液を調製し、当該コート液を上記ケミカルエッチング処理された基材面上に塗布する方法が好ましく使用できる。この際、適当な溶媒としては、特に制限されず、使用される樹脂や架橋剤の種類に応じて適宜選択できる。具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エーテル類などが挙げられる。上記溶媒は、単独で使用されても、あるいは2種以上の混合液の状態で使用されてもよい。また、溶媒の添加量は、特に制限されない。具体的には、コート液中の固形分濃度が、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
また、上記受容層形成用コート液の塗布方法は、特に制限されず、当該分野における通常の塗布方法がそのままあるいは適宜修飾して適用できる。具体的には、ドクターブレードコーティング、マイヤーバーコーティング、ロールコーティング、スクリーンコーティング、スピナーコーティング、インクジェットコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティングなどが挙げられる。これらのうち、塗布操作のしやすさ、塗布量の調節のしやすさ、塗布面の平滑性などを考慮すると、グラビアコーティング、マイヤーバーコーティングが好ましい。また、基材へのコート液の塗布量は、特に制限されず、受容層の厚みによって適宜調整される。好ましくは、乾燥後の受容層の厚みが下記好ましい範囲になるような量の受容層形成用コート液を、基材の処理面に塗布することが好ましい。
特に好ましい実施形態によると、基材の少なくとも一方の面を、硫酸、塩酸、硝酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸およびフッ化水素からなる群より選択される少なくとも1種の酸を用いてケミカルエッチング処理し、当該基材のケミカルエッチング処理面上に受容層を形成する。ここで、受容層は、エチレン・メタクリル酸共重合体またはその金属塩を、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤およびカルボジイミド系架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤と混合して、混合物を得た後、前記基材のケミカルエッチング処理面上に前記混合物を塗布し、塗膜を乾燥することによって形成されることが好ましい。
このようにしてケミカルエッチング処理された基材面上に受容層が形成されるが、この際の受容層の厚みは、特に制限されないが、受容層の厚み(乾燥後の厚み)は、好ましくは0.03〜3.0μmであり、より好ましくは0.05〜2.0μmである。
このようにして酸を用いたケミカルエッチング処理された基材面上に受容層が形成されて、本発明の受容体が製造できる。このように受容層側の基材表面を酸処理によるケミカルエッチングを行なうことにより、基材表面の反応性を促進し、このような状態で基材上に受容層を形成すると、基材と受容層との密着性を向上できる。このため、本発明の受容体を有する熱転写記録用粘着シートは、耐溶剤性に優れ、溶剤やオイルに浸漬した後であっても、密着性が保持されて、溶剤やオイルと接触した後であっても、バーコードを十分読み取ることができる。
上述したように、本発明の受容体は、溶剤やオイルと接触した後であっても基材と受容層との密着性に優れる。より具体的には、本発明の受容体は、レギュラーガソリンに1時間浸漬後、100℃2分乾燥した後、JIS K5600−5−6(1999)に準じてクロスカット法により測定される、前記基材と受容層との密着性が、好ましくは0〜3であり、より好ましくは0〜2である。本明細書において、「基材と受容層との密着性」は、熱転写記録用粘着シートにした場合の耐溶剤性の指標であり、後述する実施例に記載の方法により測定された値である。
本発明においては、受容体の受容層を設けた面とは反対側の面に粘着剤層、および必要であれば剥離紙を順次積層することにより、受容体を被着体に粘着可能な粘着シートの形態に加工することもできる。したがって、本発明は、本発明の熱転写インク受容体に粘着剤を塗布し、乾燥してなる、熱転写記録用粘着シートをも提供する。また、本発明の熱転写記録用粘着シートは、当該シートの熱転写インク受容層に、熱転写インクが転写されて、耐溶剤性粘着ラベルの形態で使用されてもよい。したがって、本発明は、本発明の熱転写記録用粘着シートの熱転写インク受容層に、熱転写インクが転写されてなる耐溶剤性粘着ラベルをも提供する。
本発明の熱転写記録用粘着シートにおいて、粘着層の厚みは、特に制限されないが、5〜50μm、より好ましくは10〜30μmであるのが好ましい。
粘着剤層は、基材の受容層が設けられた面と反対側の面に形成される。ここで、粘着剤層を配置する側の基材面を、上記したのと同様にして、酸を用いたケミカルエッチング処理を行ってもよい。なお、このような処理を施す場合の、酸を用いたケミカルエッチング処理方法は、上記と同様であるが、受容層形成面側と必ずしも同じ方法・条件である必要はない。
粘着剤層を有する受容体及び熱転写記録媒体から粘着剤層を有する受容体に画像が転写された、例えばラベルのような、記録体は、粘着剤層の粘着性によって、所望の場所に接着させることができる。ここで、粘着剤層に含まれる粘着剤としては、例えば、天然ゴム系、スチレン−ブタジエン共重合体系、ブチルゴム系、ポリイソブチレン系、アクリル系、ビニルエーテルポリマー系、シリコーン系等の粘着剤を挙げることができる。これらのうち、アクリル系粘着剤が好ましく、粘着剤として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、これと共重合可能なカルボキシル基含有モノマーまたは水酸基含有モノマーとの共重合体とを架橋して得られるアクリル系粘着剤を使用することがより好ましい。ここで、架橋後のゲル分率は、特に制限されないが、30〜100%であることが好ましく、50〜100%がより好ましく、80〜100%が特に好ましい。このような粘着剤は、耐溶剤性に優れる。なお、本明細書において、「ゲル分率」は、後述する実施例に記載の方法により測定された値である。
上記粘着剤において、主モノマーとなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル(本明細書では、「アクリル酸エステル」とも称する)としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜12のもの、すなわち、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ノルマルヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノルマルオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、上記アクリル酸エステルと共重合可能な水酸基またはカルボキシル基含有モノマー(本明細書では、「水酸基/カルボキシル基含有共重合性モノマー」とも称する)としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、水酸基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの水酸基/カルボキシル基含有共重合性モノマーは、極性付与、凝集力向上成分としての働きの他に共重合体の架橋点となりうる。
上記アクリル酸エステルと水酸基/カルボキシル基含有共重合性モノマーを用いてアクリル共重合体を製造するには、両成分を前記の特性比で混合し、これを共重合させれば良い。この重合反応は、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイドのような有機過酸化物、あるいはアゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系重合開始剤を用いたラジカル重合が良く、しかも塗工性、耐水性の点から溶液重合を用いるのが好ましい。この際、重合条件は、上記モノマー成分が適宜重合できる条件であれば特に制限されない。好ましくは、所望のアクリル酸エステル、水酸基/カルボキシル基含有共重合性モノマー及び重合開始剤を混合した後、この混合物を、80〜90℃で5〜12時間、重合する。
このようにして得られたアクリル共重合体の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは10万〜180万であり、より好ましくは30万〜120万である。このような範囲であれば、耐溶剤性(耐ガソリン性)に優れる。なお、本明細書において、「重量平均分子量」は、後述する実施例に記載の方法により測定された値である。
次に、このようにして得られたアクリル共重合体は、架橋され、本発明の耐溶剤性粘着剤が得られる。この粘着剤は、架橋後のゲル分率が30〜100%であることが好ましい。
本明細書において、「ゲル分率」は、架橋度の目安となるものであり、以下の方法にて測定、算出される値である。すなわち、架橋した粘着剤(アクリル共重合体)をJIS K2202(2007)に規定する自動車ガソリン2号に23℃で72時間浸漬し、ガソリンに不溶解(ろ紙でのろ過残分)のアクリル共重合体の質量百分率をゲル分率とする。本明細書において、「ゲル分率」は、後述する実施例に記載の方法により測定された値である。
アクリル共重合体の架橋剤としては、特に制限されないが、ポリイソシアネート化合物(イソシアネート系架橋剤)、エポキシ化合物(エポキシ系架橋剤)、金属キレートなどが挙げられる。これらの架橋剤は、単独で使用されても、あるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。これらのうち、イソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂肪族、もしくは脂環式イソシアネート化合物またはこれらとトリメチロールプロパンなどの水酸基を有する化合物との付加物などが挙げられる。また、エポキシ化合物としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、アルコール型エポキシ樹脂、ポリグリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられ、また、金属キレート化合物としては、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、チタン、亜鉛、コバルト、マンガン、ジルコニウム等の金属のアセチルアセトネート錯体等が挙げられる。なお、架橋剤として、市販品を使用してもよい。架橋剤の添加量は、アクリル共重合体を所望の程度にまで架橋できる量であれば特に制限されないが、好ましくは、共重合体 100質量部に対して、0.5〜10質量部である。
また、このような粘着剤層を有する熱転写記録用粘着シートは、粘着剤層に隣接する剥離紙をさらに有してもよい。受容体に粘着剤層及び剥離紙が配置されてなる熱転写記録用粘着シートは、剥離紙を適宜取り除くことによって、受容体を、粘着剤層を介して所望の場所(被着体)に接着させることができる。このように粘着剤層及び剥離紙を有する受容体に熱転写リボン(熱転写記録媒体)から転写した画像を形成した、例えばラベルのような、記録体は、様々な分野及び用途で利用することができる。また、例えばラベルのような、記録体は、溶剤に対して記録体の画像及び印字の劣化及び消去が低減されるため、溶剤に富む環境においても有効に利用することができる。例えば、本発明のラベルは、製造業界における銘板、ロット番号表示などの部品管理、及び注意書き、化学薬品や材料などの内容表示、並びに医療機関における標本管理などの様々な用途に使用することができる。
本発明の熱転写記録用粘着シートは、溶剤やオイルに浸漬した後の基材と受容層との密着性に優れる上、溶剤やオイルに浸漬された後であっても、優れた粘着力を発揮できる。より具体的には、本発明の熱転写記録用粘着シートは、レギュラーガソリンに24時間浸漬後直ちに、JIS Z0237(2000)に準じて測定される、180°ひきはがし粘着力が、1N/25mm以上であることが好ましく、4N/25mm以上であることがより好ましい。上記粘着力の上限は、高いほど好ましいため、特に制限されないが、通常、30N/25mm以下であり、好ましくは25N/25mm以下である。本明細書において、「粘着力」は、熱転写記録用粘着シートにおける粘着剤層の粘着力(粘着性)の指標であり、後述する実施例に記載の方法により測定された値である。
上記したように、本発明の熱転写インク受容体または熱転写記録用粘着シートに用いられる熱転写リボンとしては、特に制限されず、特開2004−268571号公報などに記載されるものと同様のものが使用できる。ここで、熱転写リボンは、支持体上に樹脂とワックスとを含有する剥離層と着色剤を含有するインク層とが順次積層されてなる構造を有し、該インク層がエチレン−メタクリル酸共重合体の金属塩を含み、該エチレン−メタクリル酸共重合体の金属塩が、引張強度(ASTM D 1708)240〜300kg/cm、破断点伸び(ASTM D 1708)410%〜560%であり、かつNa及び/又はK塩であることが好ましい。
また、熱転写記録方法は、特に制限されず、特開2004−268571号公報などに記載されるものと同様の方法が使用できる。例えば、サーマルヘッドで熱転写リボンを加熱することにより、熱転写リボンの支持体から剥離層及びインク層の少なくとも一部が剥離され、受容体の受容層上へ転写される。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記において、特記しない限り、「部」は「質量部」を意味する。
各実施例および各比較例の評価を下記の方法により行った。
[XPSによる測定元素(C、O、Cl、F、S、N)の量の割合Xの測定]
ケミカルエッチング処理した基材面を、測定元素(C,O,Cl,F,S,N)として、X線光電子分光法(XPS)により測定し、C、O、Cl、F、SおよびN原子の合計量に対するCl、F、SまたはN原子の量の割合X(%)を、下記式より計算した。なお、X線光電子分光法(XPS)の測定条件は、下記のとおりである。測定装置:アルバックファイ社製 Quantera;SXM X線:AlKα(1486.6eV);取出し角度:45°。
Figure 2011098539
[基材と受容(コート)層との密着性試験]
各熱転写記録用粘着シートをJIS K2202(2007)に規定する自動車ガソリン2号に1時間浸漬し、その後100℃で2分間乾燥させた。その後、JIS K5600−5−6(1999)に準じてクロスカット法により密着性の評価を行った。なお、評価結果は、以下のようにして分類した。
Figure 2011098539
[ガソリン浸漬粘着力試験]
各熱転写記録用粘着シートを巾25mmに裁断し、SUS 304鋼板に各粘着シートを貼付した後、JIS K2202(2007)に規定する自動車ガソリン2号に24時間浸漬した後、JIS Z0237(2000)に準じて、速度300m/minで、各熱転写記録用粘着シートとSUS 304鋼板との180°引きはがし粘着力(N/25mm)を測定した。
[摩擦試験後のバーコード読み取り評価]
バーコード読み取り評価は、JIS L0849(2004)に準じて行なった。詳細には、まず、熱転写プリンター(ゼブラテクノロジー社製、商品名「140XiIII」)と熱転写リボン(リコー社製、商品名「B110CU」)とを用いて、各熱転写記録用粘着シートにバーコードを印字した。
次に、JIS L0849(2004)に準じて、摩擦試験機II形(学振形)を用い、JIS K2202(2007)に規定する自動車ガソリン2号を染み込ませたJIS L0803に規定する摩擦用白綿布(日本規格協会製)を、熱転写記録用粘着シートのバーコード面に対して荷重2Nで15往復させ、摩擦試験を行なった。
その後、バーコード読み取り検証機(RJS社製、商品名「INSPECTOR3000」)を用いて、ANSI(American National Standards Institute)X3.182(1990)規格 Bar Code Quality Guidelineに従って、バーコード読み取り評価をした。なお、評価結果は、以下のようにしてデコーダビリティ(decordability)値に従って分類した。なお、等級(グレード)は、バーコードシンボルをスキャンした場合に、各エレメントの太り、細り加減(各エレメント設計値との誤差)によって適正な太細比(レシオ)が、とれずそれが原因で読み取り率の低下を招く場合があり、この被読み取り能力をグレード別けしたものである。「デコーダビリティ(decordability)」は、複号容易度を意味し、各キャラクター毎に計算され、それぞれの結果の最小値を最終的にシンボル全体のデコーダビリティとしている。また、「デコーダビリティグレード」は、シンボル内で最も大きく規格から外れたエレメント幅のエラーの値を表わす。
Figure 2011098539
[重量平均分子量の測定]
重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定した。なお、Mwの測定は、GPC測定装置(HLC−8220GPC、東ソー社製)を使用して以下に示す条件にて行なった。
Figure 2011098539
[ゲル分率の測定]
ゲル分率(質量%)は、下記方法によって測定した。各例におけるアクリル系共重合体と架橋剤の混合物を、アプリケーターにて剥離フィルム[リンテック(株)製「SP−PET381031」]の剥離処理面に塗布したのち、100℃で約2分間加熱処理して粘着剤層(厚さ約30μm)を作製した。これに、剥離フィルム[リンテック(株)製「SP−PET38GS」]をラミネートし、ゲル分率測定用シートサンプルを得た。
次に、このシートサンプルを、23℃、相対湿度50%の条件下で1週間放置して粘着剤層を架橋させた後、剥離フィルムから粘着剤層を剥ぎ取り、JIS K2202(2007)に規定する自動車ガソリン2号に、23℃で約72時間、浸漬させた。未溶解成分を風乾後、100℃で10時間乾燥させ、23℃相対湿度50%の条件下に3時間放置した後、その質量を測定して、以下の式によりゲル分率を計算した。
Figure 2011098539
実施例1
1.ケミカルエッチング処理
基材として、厚さ50μmの白色ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーE−20」)を使用した。上記基材に、室温(23℃)で、50質量%濃度のトリクロロ酢酸水溶液を水溶液として1.0g/mが塗布されるように塗布した後、135℃で2分間、乾燥させることにより、基材のケミカルエッチング処理を行った。
2.受容(コート)層、熱転写インク受容体の作製
エチレン・メタクリル酸共重合体の水分散体(中央理化工業社製、商品名「アクアテックスAC−3100」、固形分 45質量%)100質量部に、水70質量部、エポキシ系架橋剤(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX−313」)8質量部を添加し、メタノール溶媒にて固形分濃度10質量%に希釈して、希釈液を調製した。この希釈液を、上記1.でケミカルエッチング処理した基材面に、乾燥後の塗布厚が0.3μmとなるように塗布し、100℃で2分間、乾燥させて、基材上に受容(コート)層を形成して、熱転写インク受容体を得た。
3.粘着剤層、熱転写記録用粘着シートの作製
アクリル酸ブチル88質量部、アクリル酸12質量部を反応器に入れ、さらに酢酸エチル100質量部にアゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を溶解させた重合触媒液を逐次添加しながら、80℃で7時間かけて重合させた。重合反応終了後に、希釈溶媒(トルエンと酢酸エチルとの1:1(質量比)の混合溶媒)を追加することにより、アクリル系共重合体(重量平均分子量 100万)の40質量%溶液を製造した。
このようにして得られたアクリル系共重合体溶液100質量部(固形分として40質量部)に、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」、固形分 75質量%)を1部配合し、粘着剤組成物溶液を調製した。なお、このようにして得られた粘着剤の架橋後のゲル分率は、98%であった。
このようにして作製した粘着剤組成物溶液を、乾燥後の膜厚が30μmとなるように、上記2.で得られた熱転写インク受容体の受容(コート)層が形成された面とは逆面に、アプリケータを用いて塗布し、100℃2分間乾燥させた後、粘着剤層と接するように剥離紙を貼合して、熱転写記録用粘着シート(1)を得た。
実施例2
実施例1 1.において、トリクロロ酢酸水溶液の代わりに、トリフルオロ酢酸を使用した以外は、実施例1と同様に実施して熱転写記録用粘着シート(2)を得た。なお、本実施例で得られた粘着剤の架橋後のゲル分率は、98%であった。
実施例3
1.ケミカルエッチング処理
実施例1 1.と同様にして、基材のケミカルエッチング処理を行った。
2.受容(コート)層、熱転写インク受容体の作製
実施例1 2.において、エポキシ系架橋剤 8質量部の代わりに、イソシアネート系架橋剤(三井化学社製、商品名「タケネート WD−725」)4質量部を使用した以外は、実施例1 2.と同様にして、熱転写インク受容体を得た。
3.粘着剤層、熱転写記録用粘着シートの作製
アクリル酸ブチル91質量部、メタクリル酸メチル8質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル1質量部を反応器に入れ、さらに酢酸エチル100質量部にアゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を溶解させた重合触媒液を逐次添加しながら、80℃で7時間かけて重合させた。重合反応終了後に、希釈溶剤(トルエンと酢酸エチルとの1:1(質量比)の混合溶媒)を追加することにより、アクリル系共重合体(重量平均分子量 80万)の40質量%溶液を製造した。
このようにして得られたアクリル系共重合体溶液100質量部(固形分として40質量部)に、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」、固形分 75質量%)を1部配合し、粘着剤組成物溶液を調製した。なお、本実施例で得られた粘着剤の架橋後のゲル分率は、36%であった。
このようにして作製した粘着剤組成物溶液を、乾燥後の膜厚が30μmとなるように、上記2.で得られた熱転写インク受容体の受容(コート)層が形成された面とは逆面に、アプリケータを用いて塗布し、100℃2分間。乾燥させた後、粘着剤層と接するように剥離紙を貼合して、熱転写記録用粘着シート(3)を得た。
比較例1
実施例1において、1.ケミカルエッチング処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較熱転写記録用粘着シート(1)を得た。なお、本比較例で得られた粘着剤の架橋後のゲル分率は、98%であった。
上記実施例1〜3で得られた熱転写記録用粘着シート(1)〜(3)および上記比較例1で得られた比較熱転写記録用粘着シート(1)について、量の割合X(%)、基材と受容(コート)層との密着性、ガソリン浸漬粘着力(N/25mm)、および摩擦試験後のバーコード読み取りを評価し、その結果を下記表3に示す。
Figure 2011098539
上記表3から、本発明の熱転写インク受容体を用いて作製した熱転写記録用粘着シート(1)〜(3)は、耐溶剤性が高く、溶剤擦過および溶剤浸漬後でも、バーコードの読み取りが可能で被着体から剥がれることなく優れたものであることが分かった。これに対して、比較例1で得られた比較熱転写記録用粘着シート(1)は、本発明の熱転写記録用粘着シートに比して、満足する結果が得られなかった。

Claims (9)

  1. 基材上に熱転写インク受容層が設けられてなる熱転写インク受容体であって、前記基材の受容層との接触面が、硫酸、塩酸、硝酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸およびフッ化水素からなる群より選択される少なくとも1種の酸を用いてケミカルエッチング処理された、熱転写インク受容体。
  2. 前記基材の受容層との接触面における、測定元素(C、O、Cl、F、S、N)としてX線光電子分光法(XPS)により測定した場合の、下記式:
    Figure 2011098539
    で算出されるC、O、Cl、F、SおよびN原子の合計量に対するCl、F、SまたはN原子の量の割合X(%)が、0.05〜2.0%である、請求項1に記載の熱転写インク受容体。
  3. 前記受容層は、エチレン・メタクリル酸共重合体またはその塩、ならびにエポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤およびカルボジイミド系架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤を含む、請求項1または2に記載の熱転写インク受容体。
  4. レギュラーガソリンに1時間浸漬後、100℃2分乾燥した後、JIS K5600−5−6(1999)に準じてクロスカット法により測定される、前記基材と受容層との密着性が、0〜2である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱転写インク受容体。
  5. 基材の少なくとも一方の面を、硫酸、塩酸、硝酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸およびフッ化水素からなる群より選択される少なくとも1種の酸を用いてケミカルエッチング処理し、当該基材のケミカルエッチング処理面上に受容層を形成することを有する、熱転写インク受容体の製造方法。
  6. 前記受容層は、エチレン・メタクリル酸共重合体またはその塩を、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤およびカルボジイミド系架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤と混合して、混合物を得た後、前記基材のケミカルエッチング処理面上に前記混合物を塗布し、塗膜を乾燥することによって形成される、請求項5に記載の熱転写インク受容体の製造方法。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱転写インク受容体または請求項5もしくは6に記載の方法によって製造される熱転写インク受容体に粘着剤を塗布し、乾燥してなる、熱転写記録用粘着シート。
  8. SUS304鋼板に貼付し、レギュラーガソリンに24時間浸漬後直ちに、JIS Z0237(2000)に準じて測定される、180°ひきはがし粘着力が、1N/25mm以上である、請求項7に記載の熱転写記録用粘着シート。
  9. 請求項7または8に記載の熱転写記録用粘着シートの熱転写インク受容層に、熱転写インクが転写されてなる耐溶剤性粘着ラベル。
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