JP2007154168A - 水系接着剤組成物 - Google Patents

水系接着剤組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2007154168A
JP2007154168A JP2006299160A JP2006299160A JP2007154168A JP 2007154168 A JP2007154168 A JP 2007154168A JP 2006299160 A JP2006299160 A JP 2006299160A JP 2006299160 A JP2006299160 A JP 2006299160A JP 2007154168 A JP2007154168 A JP 2007154168A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
adhesive composition
urethane prepolymer
adherend
aqueous adhesive
glass transition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2006299160A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5109337B2 (ja
Inventor
Tomozo Nagasawa
智三 長澤
Kazutoshi Kimura
和資 木村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Yokohama Rubber Co Ltd
Original Assignee
Yokohama Rubber Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Yokohama Rubber Co Ltd filed Critical Yokohama Rubber Co Ltd
Priority to JP2006299160A priority Critical patent/JP5109337B2/ja
Publication of JP2007154168A publication Critical patent/JP2007154168A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5109337B2 publication Critical patent/JP5109337B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Adhesives Or Adhesive Processes (AREA)

Abstract

【課題】少なくとも一方の被着体に塗布することにより被着体を接着させることができ、接着強度が高く、再接着性に優れる水系接着剤組成物の提供。
【解決手段】ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーと、ガラス転移温度が0℃以下であるアクリル樹脂と、水とを含有し、前記ウレタンプレポリマーと前記アクリル樹脂とが水中でエマルジョンとなっている水系接着剤組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、水系接着剤組成物に関する。
溶剤系クロロプレン接着剤は、ラミネート用、自動車内装用、ハウスパネル用等として幅広く使用されている。溶剤系クロロプレン接着剤はトルエン等の有機溶剤を含有し、このような有機溶剤は、人体に対する毒性、爆発の危険性、環境への汚染性等の問題が指摘されている。このため、クロロプレンラテックスを用いた水系接着剤が開発され、木工用に使用されている。
しかしながら、本発明者は、溶剤系クロロプレン接着剤や水系のクロロプレン接着剤を使用する場合は両方の被着体にこれらの接着剤を塗布しなければ被着体を接着させることができないことを見出した。また、一方の被着体のみに接着剤を塗布して被着体をはり合わせる場合、両方の被着体に接着剤を塗布してはり合わせる場合と比較して、接着強度が低いことを見出した。
さらに、製造現場では、被着体をはり合わせた後、被着体のズレを直すために、被着体をはがしてはり直さなければならない場合がある。このような場合、接着剤として溶剤系クロロプレン接着剤や水系のクロロプレン接着剤を使用していると、再接着後の接着強度が低いことを本発明者は見出した。
従って、本発明は、少なくとも一方の被着体に塗布することにより被着体を接着させることができ、接着強度が高く、再接着性に優れる水系接着剤組成物の提供を目的とする。
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、特定のウレタンプレポリマーと特定のアクリル樹脂と水とを含有し、前記ウレタンプレポリマーと前記アクリル樹脂とが水中でエマルジョンとなっている水系接着剤組成物が、これを少なくとも一方の被着体に塗布することにより被着体を接着させることができ、接着強度が高く、再接着性に優れることを知見し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(4)を提供する。
(1)ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーと、ガラス転移温度が0℃以下であるアクリル樹脂と、水とを含有し、前記ウレタンプレポリマーと前記アクリル樹脂とが水中でエマルジョンとなっている水系接着剤組成物。
(2)前記アクリル樹脂の量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1〜60質量部である上記(1)に記載の水系接着剤組成物。
(3)さらに、充填剤を含有する上記(1)または(2)に記載の水系接着剤組成物。
(4)前記充填剤の量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1〜50質量部である上記(3)に記載の水系接着剤組成物。
本発明の水系接着剤組成物は、これを少なくとも一方の被着体に塗布することにより被着体を接着させることができ、接着強度が高く、再接着性に優れる。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の水系接着剤組成物は、
ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーと、ガラス転移温度が0℃以下であるアクリル樹脂と、水とを含有し、前記ウレタンプレポリマーと前記アクリル樹脂とが水中でエマルジョンとなっている水系接着剤組成物である。
ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーについて以下に説明する。
本発明の水系接着剤組成物において使用されるブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーは、ウレタンプレポリマーに含有される一部または全部のイソシアネート基がブロック化剤でブロックされており、かつ、そのガラス転移温度が0℃以下であるものをいう。ブロックイソシアネート基は、熱等によりブロックイソシアネート基からブロック化剤が解離して、イソシアネート基となる。
ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーとしては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られうるウレタンプレポリマーに、ブロック化剤を反応させることにより得られうるものが挙げられる。
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイシアネートについて以下に説明する。
ポリイシアネートは、特に限定されない。例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、トリイソシアネートが挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)およびこれらの水素添加物;脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI);脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1−メチル−2,4−ジイソシアネートシクロヘキサン、1−メチル−2,6−ジイソシアネートシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;トリイソシアネートとしては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。ポリイシアネートは、それぞれ単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、耐熱性に優れ、接着強度により優れるという観点から、芳香族ジイソシアネートが好ましい。
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリオールについて以下に説明する。
ポリオールは、特に限定されない。例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、その他のポリオール、および、これらの混合ポリオールが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4′−ジヒドロキシフェニルメタン、ペンタエリスリトールのような多価アルコールの1種または2種以上に、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドのようなアルキレンオキシドの1種または2種以上を付加して得られるポリエーテルポリオール;テトラヒドロフラン等の開環重合によって得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール、テトラヒドロフランの開環重合によって得られるポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパンのような低分子ポリオールの1種または2種以上と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸のような低分子カルボン酸やオリゴマー酸の1種または2種以上との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトン、カプロラクトンのようなラクトンの開環重合体が挙げられる。
アクリルポリオールとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、β−ヒドロキシエチルメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種から得られうるアクリルポリオールが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのようなジオール類の1種または2種以上と、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネートおよびホスゲンのうちの少なくとも1種とを反応させることにより得られうるものが挙げられる。
その他のポリオールとしては、例えば、ポリマーポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールのような低分子ポリオールが挙げられる。
ポリオールはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
中でも、ウレタンプレポリマーに用いられるポリオールは、分子設計の容易さの観点から、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
ポリオールは、硬化後の物性が優れることから、数平均分子量1500〜15000のポリエーテルポリオールが好ましく、2000〜10000のポリエーテルポリオールがより好ましい。
ウレタンプレポリマーは、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。具体的には、例えば、触媒の存在下で、または、触媒を使用せず、反応温度10〜100℃程度、常圧下で、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させる方法が挙げられる。触媒としては、例えば、有機スズ化合物、有機ビスマス化合物が挙げられる。
ウレタンプレポリマーを製造する際のポリオールとポリイシアネートの量比は、例えば、ポリオール中のヒドロキシ基に対するポリイシアネート中のイソシアネート基の当量比(NCO基/OH基)が、1.6〜2.0であるのが好ましい。
ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるブロック化剤について以下に説明する。
ブロック化剤は、ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基の一部または全部と反応してブロックイソシアネート基となる。
ブロック化剤としては、例えば、アルコール類、フェノール類、オキシム類、ピラゾール類、トリアゾール類、カプロラクタム類が挙げられる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、ラウリルアルコール、t−ブタノール、シクロヘキサノールが挙げられる。フェノール類としては、例えば、キシレノール、ナフトール、4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノールが挙げられる。オキシム類としては、例えば、2,6−ジメチル−4−ヘプタノンオキシム、メチルエチルケトオキシム、2−ヘプタノンオキシムが挙げられる。ピラゾール類としては、例えば、3,5−ジメチルピラゾールが挙げられる。トリアゾール類としては、例えば、1,2,4−トリアゾールが挙げられる。中でも、3,5−ジメチルピラゾール、メチルエチルケトオキシムが好ましい。ブロック化剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
中でも、貯蔵安定性に優れるという観点から、オキシム類が好ましく、メチルエチルケトオキシムがより好ましい。
ウレタンプレポリマーとブロック化剤とのブロック化反応は、特に制限されない。例えば、ウレタンプレポリマーとブロック化剤との混合物を、反応温度60〜90℃、常圧で、1〜3時間反応させる方法、ウレタンプレポリマーの製造中に任意の段階でブロック化剤を投入してブロック化剤をウレタンプレポリマーに導入する方法が挙げられる。ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に対するブロック化剤の活性水素の当量比(活性水素/イソシアネート基)は、0.8〜1.1であるのが好ましい。
ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーとしては、例えば、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基の全部がブロックイソシアネート基であるもの、イソシアネート基の一部がブロックイソシアネート基であるものを挙げることができる。ブロック化剤によるウレタンプレポリマーのイソシアネート基のブロック化率は、貯蔵安定性に優れ、接着強度により優れるという観点から、100モル%であるのが好ましい。
ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーは、その製造について、特に制限されない。上記のように、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られうるウレタンプレポリマーにブロック化剤を反応させる方法のほか、例えば、従来公知の方法を用いることができる。
ブロックイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、そのガラス転移温度が、0℃以下である。このような範囲の場合、ブロックイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、接着強度が高く接着性、粘着性に優れる。また、接着性、粘着性により優れるという観点から、ブロックイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのガラス転移温度は、−10℃以下であるのがより好ましく、−30〜−10℃であるのがさらに好ましい。
ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーの製造の際に使用される、ポリオール、ポリイソシアネート、および、ブロック化剤の組合せは特に制限されない。例えば、ポリオールとしてのポリオキシプロピレングリコールと、ポリイソシアネートとしてのトリレンジイソシアネートと、ブロック化剤としてのメチルエチルケトオキシムとを使用することにより得られうるものが、接着強度がより高く接着性により優れるという観点から好ましい。
また、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーは、取扱いの観点から室温で液状であるのが好ましい。
ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーは、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基のほかに、例えば、ヒドロキシ基、酸無水物基、アミノ基、潜在性アミノ基、メルカプト基、および、カルボキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに分子内に有することができる。これらの基はイソシアネート基と反応しうるので、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーがこれらの基を含有する場合、本発明の水系接着剤組成物が硬化して得られうる硬化物の架橋密度を高くし、その物性を優れたものとすることができる。
また、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーを水に分散させる前に、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーに以下のような処理を行うことができる。処理としては、例えば、(1)ウレタンプレポリマーの調製段階で、あらかじめ分子内にカルボキシ基を含有するポリオール(例えば、ジメチロールプロピオン酸)を添加して、ウレタンプレポリマーにカルボキシ基を導入し、次いで、カルボキシ基を塩基性化合物(例えば、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジエタノールモノエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)で中和してカルボキシ基の塩類とする方法、(2)ウレタンプレポリマーの調製後、HLB値6〜18の非イオン活性剤を50℃以下で添加し、混合する方法、(3)ウレタンプレポリマーの調製後、これに、例えば、アミノエタンスルホン酸やアミノ酢酸のナトリウム塩またはカリウム塩の水溶液を添加し、イソシアネート基の一部と反応させる方法、(4)ウレタンプレポリマーの調製段階で、第三級窒素原子を有するポリオール(例えば、N−メチル−ジエタノール−アミン)を添加して、あらかじめウレタンプレポリマーに第三級窒素原子を導入し、次いで、第三級窒素原子を例えば、ジエチル硫酸、ジメチル硫酸、ベンジルクロリド、クロロメタンで第四級アンモニウム塩とする方法が挙げられる。
このような処理を行うことによって、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーに親水性基が導入され、親水性基を導入されたウレタンプレポリマーは自己乳化型のエマルジョンとなりうる。
ブロックイソシアネート基からブロック化剤が解離する方法は、特に限定されない。ブロック化剤が熱によって解離する場合、加熱温度は、ブロック化剤が解離しうる温度以上であれば特に制限されない。
本発明の水系接着剤組成物おいて、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーは、水中でエマルジョンとなっている。
以下、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーの水系エマルジョンを、「ウレタンエマルジョン」ということがある。
ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーをエマルジョン化する方法は、特に制限されない。例えば、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーを合成した後、これに水(必要に応じてさらに例えば乳化剤、鎖延長剤)を加えて、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザーのような乳化分散装置を用いて分散させる方法が挙げられる。
乳化剤は、特に制限されない。例えば、アニオン系、カチオン系、非イオン系の活性剤が挙げられる。鎖延長剤は、特に制限されない。例えば、従来公知のものを使用することができる。鎖延長剤は、エマルジョン化の後に添加することができる。
ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマー(固形分質量)の量は、乾燥性の観点から、ウレタンエマルジョン中、40〜70質量%であるのが好ましく、50〜60質量%であるのがより好ましい。
ウレタンエマルジョンにおいて、ウレタンプレポリマーのブロックイソシアネート基は、ウレタンエマルジョンの内側および/または外表面に存在しうる。また、ブロックイソシアネート基とイソシアネート基とを有するウレタンプレポリマーをウレタンエマルジョンとした場合、イソシアネート基は、耐久性、貯蔵安定性の観点から、ウレタンエマルジョンの内側に存在するのが好ましい。
ウレタンエマルジョンの平均粒子径は、特に制限されない。粘度、貯蔵安定性の観点から、粒子径分布の中央値(d50)が、0.01〜0.1μmであるのが好ましく、0.01〜0.05μmであるのがより好ましい。
ウレタンエマルジョンは、市販品を使用することができる。例えば、第一工業製薬社製のF2837D−O2が挙げられる。
本発明の水系接着剤組成物は、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーを含有することにより、接着強度が高く、粘着性、貯蔵安定性、耐久性に優れる接着剤となりうる。
アクリル樹脂について以下に説明する。
本発明の水性接着剤組成物に使用されるアクリル樹脂は、ガラス転移温度が0℃以下のものである。アクリル樹脂は、そのガラス転移温度が0℃以下のものであれば、特に限定されない。
アクリル樹脂の製造の際に使用しうる重合性不飽和単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルのようなメタクリル酸エステル;アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシルのようなアクリル酸エステル;p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、ビニルトルエンのようなビニル基含有芳香族炭化水素;アクリロニトリル、メタクリルニトリルのような不飽和ニトリル化合物;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンのような共役ジエン化合物;ジビニルベンゼン、(ジ)エチレングリコールジアクリレート、(ジ)エチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのような多官能ビニル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、n−メチロールメタクリルアミドのようなアミド系単量体;β−ヒドロキシエチルアクリレート、β一ヒドロキシメタクリレートのようなヒドロキシ基含有単量体;β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシメタクリレートのカプロラクトン付加単量体;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレートのようなアミノ基含有単量体;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジグリシジルのようなグリシジル基含有単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、ビニル安息香酸のような酸系単量体;酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、メタクリル酸アリルのようなモノビニル単量体;アクリルアルデヒド、p−ホルミルスチレンのようなアルデヒド系単量体;アセトアセトキシエチルメタクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルブチルケトン、ビニルアセトフェノン、ビニルベンゾフェノン、アセトニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテートのようなケトン系単量体が挙げられる。
重合性不飽和単量体は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、片面塗布による接着性、再接着性により優れ、接着強度がより高いという観点から、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸等が好ましい。
アクリル樹脂は、そのガラス転移温度が、0℃以下である。このような範囲の場合、接着強度が高く接着性に優れ、粘着性、再接着性に優れる。また、接着性、粘着性、再接着性により優れるという観点から、アクリル樹脂のガラス転移温度は、−10℃以下であるのが好ましく、−30〜−10℃であるのがより好ましい。
−10℃以下のガラス転移温度を有するアクリル樹脂は、片面塗布による接着性、再接着性により優れ、接着強度がより高いという観点から、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和単量体から得られるものであるのが好ましい。
本発明に使用されるアクリル樹脂は、水中でエマルジョンとなっている。
以下、アクリル樹脂の水系エマルジョンを、「アクリルエマルジョン」ということがある。
アクリルエマルジョンは、その製造について、特に制限されない。例えば、従来公知の乳化重合により製造することができる。
乳化重合に使用されうる重合開始剤としては、例えば、ラジカル開始剤が挙げられる。具体的には、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩;過酸化水素;上記の加硫酸塩、過酸化水素と、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムのような還元剤との組み合わせからなるレドックス開始剤が挙げられる。さらに、これらに、例えば、少量の鉄、第一鉄塩硫酸銀のような無機系開始剤;ジコハク酸パーオキサイド、ジグルタル酸パーオキサイド等の二塩基過酸化物、アゾイソブチルアミジン等の塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリルのような有機系開始剤を添加することができる。重合開始剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩、過酸化水素、これらと亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムとの水溶性レドックス開始剤が好ましい。
アクリルエマルジョンの製造には、必要に応じて乳化剤を使用することができる。乳化剤としては、例えば、アルキルフェノールエチレンオキシド付加物、高級アルコールエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーのようなノニオン系乳化剤;アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、リン酸エステルのようなアニオン系乳化剤が挙げられる。乳化剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、自己乳化型不飽和単量体を使用することができる。
反応温度は、0〜100℃が好ましく、10〜90℃がより好ましい。
アクリルエマルジョン中のアクリル樹脂(固形分質量)は、乾燥性の観点から、30〜70質量%であるのが好ましく、50〜70質量%であるのがより好ましい。
アクリルエマルジョンの平均粒子径は、特に制限されない。粘度、貯蔵安定性の観点から、粒子径分布の中央値(d50)が、0.1〜2μmであるのが好ましく、0.1〜1μmであるのがより好ましい。
アクリルエマルジョンは、市販品を使用することができる。このような市販品としては、例えば、BASF社製のJY3031D、JY3032Dが挙げられる。
本発明の水系接着剤組成物は、アクリル樹脂を含有することにより、接着強度が高く、片面塗布による接着性、再接着性、密着性、低温における接着性、再接着性に優れる接着剤となりうる。
本発明の水系接着剤組成物において、アクリル樹脂の量(固形分質量)は、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマー(固形分質量)100質量部に対して、1〜60質量部であるのが好ましく、20〜60質量部であるのがより好ましい。このような範囲の場合、粘着性に優れ、片面塗布による接着性、再接着性により優れ、接着強度がより高い。
本発明の水系接着剤組成物は、水を含有する。
水の含有量は、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーおよびアクリル樹脂をエマルジョンとしうる量であれば、特に制限されない。乾燥性の観点から、水の量は、水系接着剤組成物中、30〜50質量%であるのが好ましい。
本発明の水系接着剤組成物は、乾燥性の観点から、さらに、充填剤を含有するのが好ましい。
充填剤としては、例えば、無機充填剤、有機充填剤が挙げられ、無機充填剤が好ましい態様の1つとして挙げられる。無機充填剤は、特に制限されない。例えば、炭酸カルシウム(例えば、重質炭酸カルシウム)、酸化チタン、酸化ケイ素(例えば、シリカ微粉末)、タルク、クレー、カーボンブラックが挙げられる。また、充填剤としては、表面処理剤によって表面処理されたものを使用することができる。表面処理剤としては、例えば、脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステルが挙げられる。
充填剤は、それぞれ単独で、または、2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、乾燥性の観点から、シリカ微粉末、非表面処理重質炭酸カルシウムが好ましい。
充填剤の平均粒子径は、1〜10μmであるのが好ましく、1〜5μmであるのがより好ましい。このような範囲の場合、乾燥性、分散性に優れる。
充填剤の含有量は、乾燥性、分散性の観点から、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマー100質量部に対して、1〜50質量部であるのが好ましく、10〜30質量部であるのがより好ましい。
また、充填剤の含有量は、乾燥性の観点から、本発明の水系接着剤組成物中の水100質量部に対して、30〜90質量部であるのが好ましく、60〜90質量部であるのがより好ましい。
さらに充填剤を含有することにより、水系接着剤組成物の乾燥を低温、短時間で行うことができ、乾燥性に優れる。
本発明の水系接着剤組成物は、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーと、ガラス転移温度が0℃以下であるアクリル樹脂と、水と、必要に応じて含有しうる充填剤との他に、添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、顔料、ブロッキング防止剤、分散安定剤、揺変剤、粘度調節剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、触媒、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、硬化剤、有機溶剤が挙げられる。
硬化剤は、イソシアネート基と反応可能な官能基を有する化合物であれば特に制限されず、例えば、分子内にアミノ基を2つ以上有するポリアミン化合物、分子内にヒドロキシ基を2つ以上有するポリオールが挙げられる。
ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノルボルナンジアミン(NBDA)、メタキシリレンジアミン(MXDA)、4,4′−メチレンビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2−クロロアニリン)(MOCA)、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、2,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、3,4′−ジアミノジフェニルメタン、2,2′−ジアミノビフェニルが挙げられる。
分子内にヒドロキシ基を2つ以上有するポリオールとしては、例えば、上記のウレタンプレポリマーに使用されるポリオールと同様のものが挙げられる。
また、本発明の水系接着剤組成物は、上記のウレタンエマルジョンおよびアクリルエマルジョン以外のエマルジョンを含有することができる。このようなエマルジョンとしては、例えば、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃超であるウレタンプレポリマーの水系エマルジョン、ガラス転移温度が0℃超であるアクリル樹脂の水系エマルジョン、ポリエステルエマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、エポキシ樹脂系エマルジョンのような樹脂系エマルジョン;ニトリルゴム系エマルジョン、クロロプレンゴム系エマルジョンのようなゴム系エマルジョン;ガムロジン、トール油ロジンのようなロジン系エマルジョン;テルペン樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂のような粘着性付与樹脂のエマルジョンが挙げられる。
本発明の水系接着剤組成物は、その製造について、特に制限されない。例えば、ウレタンエマルジョンとアクリルエマルジョンと、必要に応じて添加されうる、充填剤と、添加剤と、ウレタンエマルジョンおよびアクリルエマルジョン以外のエマルジョンとを混合して調製する方法、アクリルエマルジョンにブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーを添加し、ここに必要に応じて添加されうる、充填剤と、添加剤と、ウレタンエマルジョンおよびアクリルエマルジョン以外のエマルジョンとを混合して調製する方法が挙げられる。
本発明の水系接着剤組成物の製造において、混合は、例えば、ボールミル、サンドグラインドミルを用いて行うことができる。
本発明の水系接着剤組成物は、1液型または2液型の水系接着剤組成物として使用することができる。
1液型の場合は、上記のように水系接着剤組成物を調製して、これを容器に保存することができる。ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーは貯蔵安定性が優れるため、本発明の水系接着剤組成物を1液型とすることが可能である。
本発明の水系接着剤組成物を2液型とする場合、例えば、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーとアクリル樹脂とのエマルジョンを含む第1液と、硬化剤を含む第2液とを別々に調製して、保存し、使用する際に、第1液と第2液とを同時に添加し混合して使用することができる。ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーおよびアクリル樹脂以外のエマルジョン、充填剤、添加剤は、第1液および/または第2液に添加することができる。
本発明の水系接着剤組成物に対して用いられうる被着体としては、例えば、ガラス;アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、鉄、亜鉛鋼板、銅、ステンレスのような各種金属;モルタルや石材のような多孔質部材;フッ素電着、アクリル電着やフッ素塗装、ウレタン塗装、アクリルウレタン塗装された部材;シリコーン系、変成シリコーン系、ウレタン系、ポリサルファイド系、ポリイソブチレン系のようなシーリング材の硬化物;塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂;NBR、EPDMのようなゴム類が挙げられる。
得られた水系接着剤組成物は、例えば、ローラ、ロールスプレッダ、刷毛、スプレーを用いて被着体に塗布することができる。
次に、本発明の水系接着剤組成物の使用方法について説明する。
本発明の水系接着剤組成物の使用方法としては、例えば、少なくとも片方の被着体に本発明の水系接着剤組成物を塗布する工程(塗布工程)と、水系接着剤組成物を塗布した被着体ともう一方の被着体とをはり合わせる工程(はり合わせ工程)と、必要に応じて一旦はり合わせた被着体をはがしてはり直す工程(はり直し工程)と、被着体をはり合わせた後、被着体を加熱して被着体を接着させる工程(加熱接着工程)とを具備する方法が挙げられる。
塗布工程においては、少なくとも片方の被着体に本発明の水系接着剤組成物を塗布する。なお、両方の被着体に本発明の水系接着剤組成物を塗布することができる。
水系接着剤組成物の塗布量は、特に制限されず、接着性、再接着性、乾燥性の観点から、80〜150g/m2であるのが好ましく、100〜120g/m2であるのがより好ましい。
また、塗布工程においては、水系接着剤組成物を塗布した被着体を、水分除去のため、例えば、70〜150℃で加熱し乾燥させるのが好ましい。また、このときの加熱温度は、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーのブロック化剤が解離する温度より低い温度とすることができる。加熱時間は、特に制限されず、例えば、60〜80秒であればよい。乾燥方法は、特に制限されず、例えば、循環式オーブンを使用することができる。
従来の水系接着剤組成物は、両方の被着体に水系接着剤組成物を塗布しなければ、被着体を接着させることができなかった。
これに対して、本発明の水系接着剤組成物は、塗布工程においてこれを少なくとも片方の被着体に塗布することによって、被着体を接着させることができる。
本発明の水系接着剤組成物のこのような優れた接着性は、本発明の水系接着剤組成物を塗布した被着体と本発明の水系接着剤組成物を塗布しない被着体とを接着させ、接着剤が硬化する前に被着体をはがした場合、接着剤を塗布しなかった被着体上に本発明の水系接着剤組成物が付着し残る性質(以下、これを「転写」という。)によるものと本発明者は推測する。このようなことから、本発明の水系接着剤組成物は、接着強度が高く、接着性、再接着性、作業性に優れる。
次に、はり合わせ工程において、水系接着剤組成物を塗布した被着体ともう一方の被着体とをはり合わせる。被着体をはり合わせるタイミングとしては、例えば、(1)水系接着剤組成物を塗布した直後、(2)水系接着剤組成物を塗布してオープンタイムを取った後、(3)水系接着剤組成物を塗布した被着体を加熱乾燥させた後が挙げられる。水系接着剤組成物を塗布した後被着体をはり合わせるまでの時間は特に制限されない。
本発明の水系接着剤組成物の使用方法は、必要に応じて、はり直し工程を具備することができる。はり直し工程は、例えば、はり合わせた被着体がずれていた場合に行うことができる。はり直しの回数は、再接着後の接着強度の観点から、1〜3回が好ましい。
従来の水系接着剤組成物を被着体の片方に塗布して被着体同士を再接着させると、粘着性、接着強度が低下し、結果的に被着体をはり直すことができなかった。
これに対して、本発明の水系接着剤組成物は、被着体の片方にこれを塗布することにより被着体同士を再接着させることが可能で、粘着性、接着強度に優れる。本発明の水系接着剤組成物のこのような優れた再接着性は、本発明の水系接着剤組成物が転写しやすいことおよび粘着性に優れることにより被着体との密着性に優れるためと本発明者は推測する。このようなことから、本発明の水系接着剤組成物は再接着性に優れ、はり直し工程において被着体をはり直すことが可能で作業性に優れる。
次に、加熱接着工程において、はり合わせた被着体を加熱し接着させる。加熱温度は、ブロック化剤が解離する温度以上であるのが好ましく、具体的には、120〜150℃であるのが好ましい。このような加熱温度範囲の場合、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーからブロック化剤を解離させてイソシアネート基を生成させ、水系接着剤組成物を硬化させて、被着体を十分に接着させることができる。加熱方法は、特に制限されず、例えば、循環式オーブンが挙げられる。加熱後、放冷し、接着された被着体が得られうる。
従来の水系接着剤組成物を被着体に塗布し水系接着剤組成物から水分を除去して乾燥させるとエマルジョンが癒着して接着剤の層が形成された。エマルジョンの癒着により得られる接着層は、接着性、耐久性に劣る。また、従来のウレタンエマルジョンを含有する接着剤組成物は、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基が水によって加水分解され失活してしまうため、接着性、耐久性、耐水性に劣る。
これに対し、本発明の水系接着剤組成物を被着体に塗布し、得られた被着体を、加熱接着工程において加熱すると、水系接着剤組成物中の水分が除去され、かつ、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマー内のブロック化剤がブロックイソシアネート基から解離しうる。このようにブロックイソシアネート基からブロック化剤が解離してイソシアネート基が生成すると、生成したイソシアネート基とアクリル樹脂とが化学結合し、エマルジョンは強固な接着層となりうる。これにより、本発明の水系接着剤組成物から得られうる接着剤は、接着強度が高く、再接着性、耐久性に優れる。
本発明の水系接着剤組成物は、これを少なくとも一方の被着体に塗布することにより被着体を接着させうるので、従来の両面塗布の場合と比較して、接着後の仕上がりの外観がよい。
従来、はり合わせる面の表面積が異なる被着体を用いて、これらの両方に接着剤組成物を塗布し、表面積の大きい被着体に表面積の小さい被着体を接着させる場合、両者を十分に接着させるためには、表面積の大きい被着体の上の、表面積の小さい被着体が接着する部分全体に接着剤組成物を塗布する必要があった。このため、製造工程上、表面積の大きい被着体の上の、表面積の小さい被着体が接着する部分の外にも接着剤組成物を塗布してしまうことが多い。ここに表面積の小さい被着体を接着させると、表面積の小さい被着体の被着面の端から接着剤組成物がはみ出して硬化するため、接着後の被着体の仕上がりの外観が非常に悪かった。また、製造工程上、短時間の間に表面積の小さい被着体の被着面の端から接着剤組成物がはみ出ないように被着体に接着剤組成物を塗布、接着させるのは、非常に困難であった。
これに対して、本発明の水系接着剤組成物は、上記のような表面積の大きい被着体に表面積の小さい被着体を接着させる場合、表面積の小さい被着体の被着面にのみ塗布すれば被着体同士を十分に接着させることができ、接着剤組成物が被着体の端部からはみ出すことが少なく、接着後の被着体の外観が良好である。
なお、上述のメカニズムはあくまでも本発明者の推定であり、仮に、メカニズムが別であっても本発明の範囲内である。
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
1.水系接着剤組成物の調製
第1表に示す成分を、第1表に示す量(単位は質量部)で混合し、各水系接着剤組成物を調製した。
2.試験体の作製
被着体として、縦5cm、横2.5cm、厚さ1.5mmの2枚の亜鉛鋼板を用いた。
上記のようにして得られた水系接着剤組成物を、水系接着剤組成物の塗布量100g/m2とし、1枚の亜鉛鋼板の片面に、くし目状に塗布した。次いで、水系接着剤組成物を塗布した亜鉛鋼板を循環式オーブンに入れて、80℃で60秒間乾燥してから取り出し、23℃、60%RHの条件下で30秒のオープンタイムを経た後、もう1枚の亜鉛鋼板とはり合わせて手で圧着し、試験体を作製した(実施例1〜3、比較例1、3〜4)。
実施例4においては、乾燥温度を150℃とした以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
比較例2においては、水系接着剤組成物を2枚の亜鉛鋼板のそれぞれの片面に塗布し、水系接着剤組成物を塗布した2枚の亜鉛鋼板を循環式オーブンで乾燥してはり合わせる以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
なお、第1表の塗布方法において、1枚の亜鉛鋼板に水系接着剤組成物を塗布した場合を片面とし、2枚の亜鉛鋼板に塗布した場合を両面として記載した。
3.せん断強度試験
上記のように2枚の亜鉛鋼板をはり合わせて5分後に、引張速度200mm/minの条件でせん断強度試験を実施し、初期接着のせん断強度を測定した。結果を第1表に初期として示す。
初期接着のせん断強度試験後、2枚の亜鉛鋼板をはり直し、1分以内に初期接着の場合と同様にしてせん断強度を測定した。結果を第1表に再接着1回目として示す。
再接着のせん断強度試験後、もう一度2枚の亜鉛鋼板をはり直し、1分以内に初期接着の場合と同様にしてせん断強度を測定した。結果を第1表に再接着2回目として示す。
Figure 2007154168
第1表の各成分の詳細は以下のとおりである。
・ウレタンエマルジョン1:第一工業製薬社製、F2837D−O2(ガラス転移温度−15℃)
・ウレタンエマルジョン2:第一工業製薬社製、F2837D−O3(ガラス転移温度5℃)
・アクリルエマルジョン:BASF社製、JY3031D(ガラス転移温度−10℃)
・シリカ微粉末:シベリコ社製、SIRON M500
・非表面処理重質炭酸カルシウム:丸尾カルシウム社製、スーパーS
・溶剤系クロロプレン接着剤:横浜ゴム社製、A−862−B
第1表に示す結果から明らかなように、実施例1〜4の試験体のせん断強度は、いずれも、初期接着性が良好で接着強度が高く、接着性に優れる。また、2回再接着を行った後もせん断強度が高く、再接着性に優れる。
これに対して、比較例1は溶剤系プロロプレン接着剤を被着体の片方にしか塗布していないので初期接着性、再接着性に劣る。被着体の両方に溶剤系プロロプレン接着剤を塗布している比較例2は再接着性に劣る。
比較例3、4は、アクリルエマルジョンを含有しないため、再接着性が悪い。

Claims (4)

  1. ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーと、ガラス転移温度が0℃以下であるアクリル樹脂と、水とを含有し、前記ウレタンプレポリマーと前記アクリル樹脂とが水中でエマルジョンとなっている水系接着剤組成物。
  2. 前記アクリル樹脂の量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1〜60質量部である請求項1に記載の水系接着剤組成物。
  3. さらに、充填剤を含有する請求項1または2に記載の水系接着剤組成物。
  4. 前記充填剤の量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1〜50質量部である請求項3に記載の水系接着剤組成物。
JP2006299160A 2005-11-08 2006-11-02 水系接着剤組成物 Expired - Fee Related JP5109337B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006299160A JP5109337B2 (ja) 2005-11-08 2006-11-02 水系接着剤組成物

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005323200 2005-11-08
JP2005323200 2005-11-08
JP2006299160A JP5109337B2 (ja) 2005-11-08 2006-11-02 水系接着剤組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007154168A true JP2007154168A (ja) 2007-06-21
JP5109337B2 JP5109337B2 (ja) 2012-12-26

Family

ID=38238928

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006299160A Expired - Fee Related JP5109337B2 (ja) 2005-11-08 2006-11-02 水系接着剤組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5109337B2 (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011207146A (ja) * 2010-03-30 2011-10-20 Kyocera Mita Corp インクジェット用記録材料並びにそれを用いるインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
JP2015174405A (ja) * 2014-03-17 2015-10-05 大日本印刷株式会社 加熱転写用転写箔シート及びその製造方法、並びに化粧部材及びその製造方法
CN107406733A (zh) * 2015-03-05 2017-11-28 乐金华奥斯有限公司 真空热成型用粘结剂组合物及使用其的真空热成型用装饰薄片
CN114854358A (zh) * 2022-06-15 2022-08-05 福建合润包装涂料有限公司 一种气雾罐用的密封胶及其制备方法
JP2023506356A (ja) * 2019-10-31 2023-02-16 ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー 接着剤組成物

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101767028B1 (ko) * 2017-02-08 2017-08-11 주식회사 에프앤알 재박리형 수성 점착제 조성물 및 이를 이용한 장식용 점착 블럭

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS61185578A (ja) * 1985-02-12 1986-08-19 ボスティック インコーポレーテッド 接着剤組成物
JPH10330720A (ja) * 1997-05-29 1998-12-15 Sekisui Chem Co Ltd ウレタン系水性接着剤
JP2001011394A (ja) * 1999-06-28 2001-01-16 Nitto Denko Corp 水分散型感圧性接着剤組成物およびその製造方法ならびに表面保護用シ―ト
JP2003513771A (ja) * 1999-11-05 2003-04-15 ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト ポリウレタンの自己架橋性グラフトコポリマーを使用した、着色および/または効果を与える多層コーティングの製造方法ならびに新規の自己架橋性ポリウレタンおよびそのグラフトコポリマー
JP2004067803A (ja) * 2002-08-05 2004-03-04 Chuo Rika Kogyo Corp 接着剤組成物

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS61185578A (ja) * 1985-02-12 1986-08-19 ボスティック インコーポレーテッド 接着剤組成物
JPH10330720A (ja) * 1997-05-29 1998-12-15 Sekisui Chem Co Ltd ウレタン系水性接着剤
JP2001011394A (ja) * 1999-06-28 2001-01-16 Nitto Denko Corp 水分散型感圧性接着剤組成物およびその製造方法ならびに表面保護用シ―ト
JP2003513771A (ja) * 1999-11-05 2003-04-15 ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト ポリウレタンの自己架橋性グラフトコポリマーを使用した、着色および/または効果を与える多層コーティングの製造方法ならびに新規の自己架橋性ポリウレタンおよびそのグラフトコポリマー
JP2004067803A (ja) * 2002-08-05 2004-03-04 Chuo Rika Kogyo Corp 接着剤組成物

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011207146A (ja) * 2010-03-30 2011-10-20 Kyocera Mita Corp インクジェット用記録材料並びにそれを用いるインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
JP2015174405A (ja) * 2014-03-17 2015-10-05 大日本印刷株式会社 加熱転写用転写箔シート及びその製造方法、並びに化粧部材及びその製造方法
CN107406733A (zh) * 2015-03-05 2017-11-28 乐金华奥斯有限公司 真空热成型用粘结剂组合物及使用其的真空热成型用装饰薄片
JP2018512477A (ja) * 2015-03-05 2018-05-17 エルジー・ハウシス・リミテッドLg Hausys,Ltd. 真空熱成形用接着剤組成物及びこれを適用した真空熱成形用デコレーションシート
US10344193B2 (en) 2015-03-05 2019-07-09 Lg Hausys, Ltd. Adhesive composition for vacuum thermoforming and decoration sheet for vacuum thermoforming using the same
CN107406733B (zh) * 2015-03-05 2021-01-08 乐金华奥斯有限公司 真空热成型用粘结剂组合物及使用其的真空热成型用装饰薄片
JP2023506356A (ja) * 2019-10-31 2023-02-16 ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー 接着剤組成物
CN114854358A (zh) * 2022-06-15 2022-08-05 福建合润包装涂料有限公司 一种气雾罐用的密封胶及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP5109337B2 (ja) 2012-12-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5109337B2 (ja) 水系接着剤組成物
DE69228174T2 (de) Herstellung eines an beiden enden hydroxilierten polymers, dieses enthaltende zusammensetzung, ihre verwendung, daraus abgeleitetes polymer und seine verwendung
JP5458721B2 (ja) シーリング材用水系プライマー組成物、シーリング材組成物とシーリング材用水系プライマー組成物とのセット、およびこれを用いるシーリング材
EP2643375B1 (en) Use of aqueous dispersions as primers
US6248815B1 (en) Dry bond film laminate employing acrylic emulsion adhesives with improved crosslinker
JP2001011151A (ja) 熱硬化性水性塗料組成物およびこれを用いた塗膜形成方法、ならびに、複層塗膜形成方法
JP3885279B2 (ja) 水性硬化型樹脂組成物および塗料、接着剤
JP2010513628A (ja) カルボジイミド基を有する化合物を含有するマイクロカプセル
WO2019208569A1 (ja) 作業性に優れるポリマー微粒子含有硬化性樹脂組成物を用いる接着方法、及び、該接着方法を用いて得られる積層体
JP2003277636A (ja) 水性樹脂組成物
JP7179151B2 (ja) 接着剤組成物
JP5577830B2 (ja) シーリング材用水系プライマー組成物、シーリング材組成物とシーリング材用水系プライマー組成物とのセット、およびこれを用いるシーリング材
JP2011190286A (ja) ホットメルト接着剤組成物
JPH09316288A (ja) 水性樹脂水分散体及びその製造方法
JP2006255635A (ja) ポリウレタン系樹脂硬化塗膜の製造方法
JP2008266514A (ja) 末端反応性アクリル系ポリマーからなる粘着剤組成物およびその用途
JP2008179683A (ja) 水性粘着剤組成物および粘着シート
JP5023489B2 (ja) 水系接着剤組成物
JP4092600B2 (ja) 水性複合樹脂分散体およびその製造方法
JPH09165425A (ja) 水性ウレタン化合物の製造方法
JP2009001644A (ja) 1液型水系接着剤組成物およびそれを用いた合板
JP2003261763A (ja) 水性エマルジョン組成物及びこれを含有する水性接着剤組成物又は水性塗料用プライマー組成物
JP7442992B2 (ja) 積層体および積層体の製造方法
JP2003027031A (ja) ポリウレタン−ビニル重合体複合樹脂エマルジョン及び感熱性粘着剤ならびに感熱性粘着シート又はラベル
JPH09143211A (ja) 水性ウレタン化合物の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20091030

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120423

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120508

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120709

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120911

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120924

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151019

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151019

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees