JP2007154168A - 水系接着剤組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーと、ガラス転移温度が0℃以下であるアクリル樹脂と、水とを含有し、前記ウレタンプレポリマーと前記アクリル樹脂とが水中でエマルジョンとなっている水系接着剤組成物。
【選択図】なし
Description
さらに、製造現場では、被着体をはり合わせた後、被着体のズレを直すために、被着体をはがしてはり直さなければならない場合がある。このような場合、接着剤として溶剤系クロロプレン接着剤や水系のクロロプレン接着剤を使用していると、再接着後の接着強度が低いことを本発明者は見出した。
(1)ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーと、ガラス転移温度が0℃以下であるアクリル樹脂と、水とを含有し、前記ウレタンプレポリマーと前記アクリル樹脂とが水中でエマルジョンとなっている水系接着剤組成物。
(2)前記アクリル樹脂の量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1〜60質量部である上記(1)に記載の水系接着剤組成物。
(3)さらに、充填剤を含有する上記(1)または(2)に記載の水系接着剤組成物。
(4)前記充填剤の量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1〜50質量部である上記(3)に記載の水系接着剤組成物。
本発明の水系接着剤組成物は、
ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーと、ガラス転移温度が0℃以下であるアクリル樹脂と、水とを含有し、前記ウレタンプレポリマーと前記アクリル樹脂とが水中でエマルジョンとなっている水系接着剤組成物である。
本発明の水系接着剤組成物において使用されるブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーは、ウレタンプレポリマーに含有される一部または全部のイソシアネート基がブロック化剤でブロックされており、かつ、そのガラス転移温度が0℃以下であるものをいう。ブロックイソシアネート基は、熱等によりブロックイソシアネート基からブロック化剤が解離して、イソシアネート基となる。
ポリイシアネートは、特に限定されない。例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、トリイソシアネートが挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)およびこれらの水素添加物;脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI);脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1−メチル−2,4−ジイソシアネートシクロヘキサン、1−メチル−2,6−ジイソシアネートシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;トリイソシアネートとしては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。ポリイシアネートは、それぞれ単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、耐熱性に優れ、接着強度により優れるという観点から、芳香族ジイソシアネートが好ましい。
ポリオールは、特に限定されない。例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、その他のポリオール、および、これらの混合ポリオールが挙げられる。
中でも、ウレタンプレポリマーに用いられるポリオールは、分子設計の容易さの観点から、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
ブロック化剤は、ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基の一部または全部と反応してブロックイソシアネート基となる。
ブロック化剤としては、例えば、アルコール類、フェノール類、オキシム類、ピラゾール類、トリアゾール類、カプロラクタム類が挙げられる。
中でも、貯蔵安定性に優れるという観点から、オキシム類が好ましく、メチルエチルケトオキシムがより好ましい。
また、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーは、取扱いの観点から室温で液状であるのが好ましい。
このような処理を行うことによって、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーに親水性基が導入され、親水性基を導入されたウレタンプレポリマーは自己乳化型のエマルジョンとなりうる。
以下、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーの水系エマルジョンを、「ウレタンエマルジョン」ということがある。
ウレタンエマルジョンの平均粒子径は、特に制限されない。粘度、貯蔵安定性の観点から、粒子径分布の中央値(d50)が、0.01〜0.1μmであるのが好ましく、0.01〜0.05μmであるのがより好ましい。
本発明の水系接着剤組成物は、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーを含有することにより、接着強度が高く、粘着性、貯蔵安定性、耐久性に優れる接着剤となりうる。
本発明の水性接着剤組成物に使用されるアクリル樹脂は、ガラス転移温度が0℃以下のものである。アクリル樹脂は、そのガラス転移温度が0℃以下のものであれば、特に限定されない。
重合性不飽和単量体は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、片面塗布による接着性、再接着性により優れ、接着強度がより高いという観点から、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸等が好ましい。
−10℃以下のガラス転移温度を有するアクリル樹脂は、片面塗布による接着性、再接着性により優れ、接着強度がより高いという観点から、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和単量体から得られるものであるのが好ましい。
以下、アクリル樹脂の水系エマルジョンを、「アクリルエマルジョン」ということがある。
アクリルエマルジョンは、その製造について、特に制限されない。例えば、従来公知の乳化重合により製造することができる。
乳化重合に使用されうる重合開始剤としては、例えば、ラジカル開始剤が挙げられる。具体的には、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩;過酸化水素;上記の加硫酸塩、過酸化水素と、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムのような還元剤との組み合わせからなるレドックス開始剤が挙げられる。さらに、これらに、例えば、少量の鉄、第一鉄塩硫酸銀のような無機系開始剤;ジコハク酸パーオキサイド、ジグルタル酸パーオキサイド等の二塩基過酸化物、アゾイソブチルアミジン等の塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリルのような有機系開始剤を添加することができる。重合開始剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩、過酸化水素、これらと亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムとの水溶性レドックス開始剤が好ましい。
反応温度は、0〜100℃が好ましく、10〜90℃がより好ましい。
アクリルエマルジョンは、市販品を使用することができる。このような市販品としては、例えば、BASF社製のJY3031D、JY3032Dが挙げられる。
本発明の水系接着剤組成物は、アクリル樹脂を含有することにより、接着強度が高く、片面塗布による接着性、再接着性、密着性、低温における接着性、再接着性に優れる接着剤となりうる。
水の含有量は、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーおよびアクリル樹脂をエマルジョンとしうる量であれば、特に制限されない。乾燥性の観点から、水の量は、水系接着剤組成物中、30〜50質量%であるのが好ましい。
充填剤としては、例えば、無機充填剤、有機充填剤が挙げられ、無機充填剤が好ましい態様の1つとして挙げられる。無機充填剤は、特に制限されない。例えば、炭酸カルシウム(例えば、重質炭酸カルシウム)、酸化チタン、酸化ケイ素(例えば、シリカ微粉末)、タルク、クレー、カーボンブラックが挙げられる。また、充填剤としては、表面処理剤によって表面処理されたものを使用することができる。表面処理剤としては、例えば、脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステルが挙げられる。
充填剤は、それぞれ単独で、または、2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、乾燥性の観点から、シリカ微粉末、非表面処理重質炭酸カルシウムが好ましい。
また、充填剤の含有量は、乾燥性の観点から、本発明の水系接着剤組成物中の水100質量部に対して、30〜90質量部であるのが好ましく、60〜90質量部であるのがより好ましい。
さらに充填剤を含有することにより、水系接着剤組成物の乾燥を低温、短時間で行うことができ、乾燥性に優れる。
1液型の場合は、上記のように水系接着剤組成物を調製して、これを容器に保存することができる。ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーは貯蔵安定性が優れるため、本発明の水系接着剤組成物を1液型とすることが可能である。
得られた水系接着剤組成物は、例えば、ローラ、ロールスプレッダ、刷毛、スプレーを用いて被着体に塗布することができる。
本発明の水系接着剤組成物の使用方法としては、例えば、少なくとも片方の被着体に本発明の水系接着剤組成物を塗布する工程(塗布工程)と、水系接着剤組成物を塗布した被着体ともう一方の被着体とをはり合わせる工程(はり合わせ工程)と、必要に応じて一旦はり合わせた被着体をはがしてはり直す工程(はり直し工程)と、被着体をはり合わせた後、被着体を加熱して被着体を接着させる工程(加熱接着工程)とを具備する方法が挙げられる。
水系接着剤組成物の塗布量は、特に制限されず、接着性、再接着性、乾燥性の観点から、80〜150g/m2であるのが好ましく、100〜120g/m2であるのがより好ましい。
また、塗布工程においては、水系接着剤組成物を塗布した被着体を、水分除去のため、例えば、70〜150℃で加熱し乾燥させるのが好ましい。また、このときの加熱温度は、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーのブロック化剤が解離する温度より低い温度とすることができる。加熱時間は、特に制限されず、例えば、60〜80秒であればよい。乾燥方法は、特に制限されず、例えば、循環式オーブンを使用することができる。
これに対して、本発明の水系接着剤組成物は、塗布工程においてこれを少なくとも片方の被着体に塗布することによって、被着体を接着させることができる。
本発明の水系接着剤組成物のこのような優れた接着性は、本発明の水系接着剤組成物を塗布した被着体と本発明の水系接着剤組成物を塗布しない被着体とを接着させ、接着剤が硬化する前に被着体をはがした場合、接着剤を塗布しなかった被着体上に本発明の水系接着剤組成物が付着し残る性質(以下、これを「転写」という。)によるものと本発明者は推測する。このようなことから、本発明の水系接着剤組成物は、接着強度が高く、接着性、再接着性、作業性に優れる。
これに対して、本発明の水系接着剤組成物は、被着体の片方にこれを塗布することにより被着体同士を再接着させることが可能で、粘着性、接着強度に優れる。本発明の水系接着剤組成物のこのような優れた再接着性は、本発明の水系接着剤組成物が転写しやすいことおよび粘着性に優れることにより被着体との密着性に優れるためと本発明者は推測する。このようなことから、本発明の水系接着剤組成物は再接着性に優れ、はり直し工程において被着体をはり直すことが可能で作業性に優れる。
これに対し、本発明の水系接着剤組成物を被着体に塗布し、得られた被着体を、加熱接着工程において加熱すると、水系接着剤組成物中の水分が除去され、かつ、ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマー内のブロック化剤がブロックイソシアネート基から解離しうる。このようにブロックイソシアネート基からブロック化剤が解離してイソシアネート基が生成すると、生成したイソシアネート基とアクリル樹脂とが化学結合し、エマルジョンは強固な接着層となりうる。これにより、本発明の水系接着剤組成物から得られうる接着剤は、接着強度が高く、再接着性、耐久性に優れる。
従来、はり合わせる面の表面積が異なる被着体を用いて、これらの両方に接着剤組成物を塗布し、表面積の大きい被着体に表面積の小さい被着体を接着させる場合、両者を十分に接着させるためには、表面積の大きい被着体の上の、表面積の小さい被着体が接着する部分全体に接着剤組成物を塗布する必要があった。このため、製造工程上、表面積の大きい被着体の上の、表面積の小さい被着体が接着する部分の外にも接着剤組成物を塗布してしまうことが多い。ここに表面積の小さい被着体を接着させると、表面積の小さい被着体の被着面の端から接着剤組成物がはみ出して硬化するため、接着後の被着体の仕上がりの外観が非常に悪かった。また、製造工程上、短時間の間に表面積の小さい被着体の被着面の端から接着剤組成物がはみ出ないように被着体に接着剤組成物を塗布、接着させるのは、非常に困難であった。
これに対して、本発明の水系接着剤組成物は、上記のような表面積の大きい被着体に表面積の小さい被着体を接着させる場合、表面積の小さい被着体の被着面にのみ塗布すれば被着体同士を十分に接着させることができ、接着剤組成物が被着体の端部からはみ出すことが少なく、接着後の被着体の外観が良好である。
なお、上述のメカニズムはあくまでも本発明者の推定であり、仮に、メカニズムが別であっても本発明の範囲内である。
第1表に示す成分を、第1表に示す量(単位は質量部)で混合し、各水系接着剤組成物を調製した。
2.試験体の作製
被着体として、縦5cm、横2.5cm、厚さ1.5mmの2枚の亜鉛鋼板を用いた。
上記のようにして得られた水系接着剤組成物を、水系接着剤組成物の塗布量100g/m2とし、1枚の亜鉛鋼板の片面に、くし目状に塗布した。次いで、水系接着剤組成物を塗布した亜鉛鋼板を循環式オーブンに入れて、80℃で60秒間乾燥してから取り出し、23℃、60%RHの条件下で30秒のオープンタイムを経た後、もう1枚の亜鉛鋼板とはり合わせて手で圧着し、試験体を作製した(実施例1〜3、比較例1、3〜4)。
比較例2においては、水系接着剤組成物を2枚の亜鉛鋼板のそれぞれの片面に塗布し、水系接着剤組成物を塗布した2枚の亜鉛鋼板を循環式オーブンで乾燥してはり合わせる以外は、実施例1と同様にして試験体を作製した。
なお、第1表の塗布方法において、1枚の亜鉛鋼板に水系接着剤組成物を塗布した場合を片面とし、2枚の亜鉛鋼板に塗布した場合を両面として記載した。
上記のように2枚の亜鉛鋼板をはり合わせて5分後に、引張速度200mm/minの条件でせん断強度試験を実施し、初期接着のせん断強度を測定した。結果を第1表に初期として示す。
初期接着のせん断強度試験後、2枚の亜鉛鋼板をはり直し、1分以内に初期接着の場合と同様にしてせん断強度を測定した。結果を第1表に再接着1回目として示す。
再接着のせん断強度試験後、もう一度2枚の亜鉛鋼板をはり直し、1分以内に初期接着の場合と同様にしてせん断強度を測定した。結果を第1表に再接着2回目として示す。
・ウレタンエマルジョン1:第一工業製薬社製、F2837D−O2(ガラス転移温度−15℃)
・ウレタンエマルジョン2:第一工業製薬社製、F2837D−O3(ガラス転移温度5℃)
・アクリルエマルジョン:BASF社製、JY3031D(ガラス転移温度−10℃)
・シリカ微粉末:シベリコ社製、SIRON M500
・非表面処理重質炭酸カルシウム:丸尾カルシウム社製、スーパーS
・溶剤系クロロプレン接着剤:横浜ゴム社製、A−862−B
これに対して、比較例1は溶剤系プロロプレン接着剤を被着体の片方にしか塗布していないので初期接着性、再接着性に劣る。被着体の両方に溶剤系プロロプレン接着剤を塗布している比較例2は再接着性に劣る。
比較例3、4は、アクリルエマルジョンを含有しないため、再接着性が悪い。
Claims (4)
- ブロックイソシアネート基を有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーと、ガラス転移温度が0℃以下であるアクリル樹脂と、水とを含有し、前記ウレタンプレポリマーと前記アクリル樹脂とが水中でエマルジョンとなっている水系接着剤組成物。
- 前記アクリル樹脂の量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1〜60質量部である請求項1に記載の水系接着剤組成物。
- さらに、充填剤を含有する請求項1または2に記載の水系接着剤組成物。
- 前記充填剤の量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1〜50質量部である請求項3に記載の水系接着剤組成物。
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