JP2004067803A - 接着剤組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)成分として、ガラス転移温度が−70〜−40℃の(メタ)アクリル系重合体、(B)成分として、ポリエステルポリオール骨格を有し、ガラス転移温度が−60〜−30℃で非晶質のポリウレタン、及び(C)成分として架橋剤を含有し、上記(A)成分と(B)成分との合計量に対して、上記(A)成分を20〜80重量%含有し、上記(A)成分と(B)成分との固形分合計量100重量部に対して、上記(C)成分を0.5〜25重量部含有させる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の大気汚染、作業環境改善、資源等の有効活用の観点から、有機溶剤型の接着剤等の代わりに水系の接着剤等が使用されてきている。
【0003】
しかし、有機溶剤型接着剤は、初期接着性が良好なのに対し、水系接着剤は初期接着性が十分でない場合がある。この場合、基材へ表装シートを貼付する場合に上記水系接着剤を用いると、表装シートの浮き上がり等の外観不良をもたらすことがある。
【0004】
また、接着剤を塗布して乾燥させた後、加熱等で接着力を回復させて相手材と接着させるドライ接着性については、溶媒型及び水系接着剤のいずれも、接着不良を起こす場合があった。
【0005】
これに対し、初期接着性及びドライ接着性に優れた水系接着剤として、特開平10−140126号公報に開示された接着剤が提案されている。
この水系接着剤は、所定のウレタン樹脂エマルジョン及び所定のエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンを含有する組成物である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の水系接着剤を用いた場合であっても、ドライ接着において、初期接着性を十分に発揮できない場合や、加熱時に、接着剤が流れ出し、すなわち、ドローダウンが生じ、耐熱クリープが低下する場合があった。
【0007】
これに対し、エチレン−酢酸ビニル共重合体のテトラヒドロフラン不溶分を所定範囲とすることにより、ドライ接着における加熱時にドローダウンが発生するのを防止でき、耐熱クリープを向上させた水系接着剤が検討されている。
【0008】
しかし、上記水系接着剤を基材に塗布、乾燥させた場合、この水系接着剤の接着能を発揮させるには、加熱を要する。この加熱の程度が弱い場合、十分な接着強度が発生せず、接着不良を起こすことがある。
【0009】
そこで、この発明は、加熱処理することなく、ドライ接着における初期接着性を発揮する水系接着剤を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、(A)成分として、ガラス転移温度が−70〜−40℃の(メタ)アクリル系重合体、(B)成分として、ポリエステルポリオール骨格を有し、ガラス転移温度が−60〜−30℃で非晶質のポリウレタン、及び(C)成分として架橋剤を含有し、上記(A)成分と(B)成分との合計量に対して、上記(A)成分を20〜80重量%含有し、上記(A)成分と(B)成分との固形分合計量100重量部に対して、上記(C)成分を0.5〜25重量部含有する接着剤組成物を用いることにより、上記の課題を解決したのである。
【0011】
所定の(メタ)アクリル系重合体、所定のポリウレタン及び架橋剤を含有する接着剤組成物を用いるので、加熱処理することなく、ドライ接着における初期接着性を発揮することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を説明する。
この発明にかかる接着剤組成物は、所定のガラス転移温度(以下、「Tg」と略する。)を有する(メタ)アクリル系重合体(以下、「(A)成分」と称する。)、所定のポリウレタン(以下、「(B)成分」と称する。)、及び架橋剤(以下、「(C)成分」と称する。)を含有する組成物である。
【0013】
上記(A)成分を構成する(メタ)アクリル系重合体とは、(メタ)アクリル系単量体を主成分とする単量体を単独重合又は共重合することにより得られる重合体をいい、得られる接着剤組成物の乾燥粘着性を付与し、加熱処理なく、ドライ接着における初期接着性を発揮させることのできる主成分である。上記(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等があげられる。また、共重合する場合においては、これらの単量体に加え、塩化ビニル、バーサチック酸ビニル、酢酸ビニル等の単量体を共重合させてもよい。なお、この発明において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタクリル」のいずれかを意味する。
【0014】
上記(メタ)アクリル系重合体のTgは、−70〜−40℃であり、−70〜−60℃が好ましい。−70℃より低いと、耐熱クリープ性が劣る場合がある。一方、−40℃より高いと、ドライ時の初期接着性が悪化する場合がある。
【0015】
上記の中でも、(メタ)アクリル酸ブチル及び/又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルを主成分とする単量体を単独重合又は共重合することによって得られる、(メタ)アクリル酸ブチル及び/又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル由来の構成成分を主成分とするアクリル系重合体を(A)成分として用いると、(共)重合性、ドライタック、耐熱クリープ性等の点でより好ましい。
【0016】
さらにまた、アクリル酸やメタクリル酸等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系単量体を有する単量体を単独重合又は共重合することによって得られる、カルボキシル基を有するアクリル系重合体を(A)成分として用いると、得られる接着剤の凝集力や機械的安定性等が向上すると共に、架橋剤との反応点の増加により架橋効率が向上するのでより好ましい。
【0017】
上記(A)成分は、上記(メタ)アクリル系単量体を主成分とする単量体を単独重合又は共重合することにより製造されるが、この重合形態としては、乳化重合が好ましい。乳化重合することにより、(A)成分の水系エマルジョンが得られ、これを用いることにより、この発明にかかる接着剤組成物を水系にすることが容易になる。
【0018】
上記(A)成分の乳化重合は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体やウレタン重合体等のシード種の存在下で行うことができる。このシード種の存在下で乳化重合を行うと、(A)成分の乾燥粘着性をより向上させることができる。このシード種の使用量は、上記(A)成分の原料である上記(メタ)アクリル系単量体を主成分とする単量体100重量部に対し、5〜70重量部が好ましく、10〜30重量部がより好ましい。
【0019】
ここで用いられるシード種としては、エチレン−酢酸ビニル系共重合体が好ましい。このエチレン−酢酸ビニル系共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体の他、エチレン−酢酸ビニル−長鎖アルキル基を有するビニルエステル共重合体等があげられる。
【0020】
上記エチレン−酢酸ビニル系共重合体を構成するエチレン含有量は、10〜30重量%がよく、15〜25重量%が好ましい。10重量%より少ないと、被着体への初期粘着力が不十分となることがある。一方、30重量%より多いと、凝集力が不足して、再剥離時の糊残りを生じる場合がある。
【0021】
また、上記エチレン−酢酸ビニル系共重合体を構成する酢酸ビニル含有量は、90〜20重量%がよく、85〜50重量%が好ましく、80〜70重量%がより好ましい。20重量%より少ないと、再剥離時に糊残りを生じることがある。一方、90重量%より多いと、初期の粘着力が不足しやすい。
【0022】
さらに、上記エチレン−酢酸ビニル系共重合体を構成する長鎖アルキル基を有するビニルエステルの含有量は、0〜80重量%がよく、30〜70重量%が好ましい。80重量%より多いと、粘着力が経時的に増大して、再剥離時の糊残りが生じることがある。
【0023】
上記長鎖アルキル基を有するビニルエステルとしては、炭素数5〜14の脂肪酸のビニルエステルがあげられ、具体例としては、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、カプロン酸ビニル等があげられる。
【0024】
上記エチレン−酢酸ビニル系共重合体は、エマルジョンとして用いるのが好ましく、このようなエマルジョンは、エチレン−酢酸ビニル系共重合体を構成する各単量体を乳化剤の下で、水又は水を主成分とし、これに水と相溶性のあるメタノール、エタノール等のアルコール等の溶媒を加えた混合溶液等の水系媒体中で乳化重合させて得ることができる。
【0025】
上記(B)成分は、ポリマー骨格中にポリエステル骨格及びポリエーテル骨格、すなわちポリエステルポリオール骨格を有するウレタン樹脂からなり、この発明で得られる接着剤組成物を塗布する基材への浸透性を図り、また、上記(C)成分による架橋を生じさせて耐熱性を向上させるものである。
【0026】
このようなポリウレタンは、例えば、分子内にイソシアネート基を2個以上有する化合物(a)、分子内に水酸基を2個以上有し、骨格としてポリエステル骨格を有する化合物(b1)、及び分子内に水酸基を2個以上有し、骨格としてポリエーテル骨格を有する化合物(b2)を反応させて得られる。このポリウレタンは、水中に分散させてエマルジョンとして使用される。
【0027】
上記分子内にイソシアネート基を2個以上有する化合物(a)としては、通常のウレタン樹脂の製造に使用される有機ポリイソシアネート化合物であって、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシル−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシル−2,6−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネート)メチルシクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;2,4−トルイレンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、1,5´−ナフテンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ジフェニルメチルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−ジベンジルジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;リジンエステルトリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−イソシアネート−4,4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチロールプロパンとトルイレンジイソシアネートとのアダクト体、トリメチロールプロパンと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとのアダクト体等のトリイソシアネート類などがあげられ、これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
上記分子内に水酸基を2個以上有し、骨格としてポリエステル骨格を有する化合物(b1)としては、通常のウレタン樹脂の製造に使用される、分子内に水酸基を2個以上有するポリエステルポリオールがあげられ、具体例としては、アジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等のジカルボン酸類と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等のポリオール化合物とから得られるポリエステルポリオール類;ポリカプロラクトンポリオール、ポリβ−メチル−δ−バレロラクトン等のポリラクトン系ポリエステルポリオールなどがあげられる。
【0029】
また、上記分子内に水酸基を2個以上有し、骨格としてポリエーテル骨格を有する化合物(b2)としては、通常のウレタン樹脂の製造に使用される、分子内に水酸基を2個以上有するポリエーテルポリオール化合物があげられ、具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール類などがあげられる。
【0030】
上記ポリウレタンは、ポリエステル骨格を有する化合物(b1)とポリエーテル骨格を有する化合物(b2)とを、重量比20:80〜60:40の割合で反応させることにより得られたものが好ましい。
【0031】
上記化合物(b1)の重量比が、20重量%未満では、化粧シート、特に塩化ビニル等のプラスチックシートに対する接着性が十分でなく、60重量%を超えると、凝集力が高くなり過ぎ、ドライ接着法によって接着剤を乾燥した後に貼り合わせたとき、食いつき性が不足し十分な初期接着力が得られにくい。
【0032】
上記ポリウレタンには、上記化合物(b1)及び(b2)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他のポリオール化合物、例えば、ポリブタジエンポリオール又はその水添物、ポリカーボネートポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリアクリル酸エステルポリオールが使用されてもよい。
また、上記ポリウレタンには、必要に応じて、分子内にイソシアネート基を2個以上有する多価イソシアネート化合物を含有させるのが好ましい。
【0033】
上記多価イソシアネート化合物としては、上記の分子内にイソシアネート基を2個以上有する化合物(a)として例示したものを、特に制限されることなく、使用することができる。
【0034】
上記ポリウレタンのTgは、−60〜−30℃のものを用い、−50〜−40℃のものが好ましい。Tgが−30℃より高いと、ドライ接着の加熱時にこのポリウレタンセグメントが軟化しにくくなって粘着性に寄与しなくなり、初期接着性を十分に発揮し得なくなる場合がある。一方、Tgが−60℃より低いと、上記(C)成分を用いても、十分な耐熱性や凝集力が得られない場合がある。
【0035】
上記ポリウレタンは、非晶質ものがよい。非晶質なものを用いることにより、低温時の粘着性が良好となる。なお、非晶質のポリウレタンとは、示差走査熱量(DSC)測定において、融点ピークを有さないポリウレタンをいう。
【0036】
上記(C)成分は、上記(A)成分同士、上記(B)成分同士、及び上記(A)成分と(B)成分とを架橋するためのものである。この(C)成分を用いると、凝集力及び耐熱性を向上できるので好ましい。
【0037】
上記(C)成分としては、イソシアネート系架橋剤、ポリオキサゾリン系架橋剤、ポリカルボジイミド系架橋剤等があげられる。
【0038】
上記イソシアネート系架橋剤としては、非水溶性でイソシアヌレート骨格を有する、ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート系ポリイソシアネート等があげられる。
【0039】
上記ポリオキサゾリン系架橋剤としては、オキサゾリニル基を有する共重合体があげられる。
上記ポリカルボジイミド系架橋剤としては、例えば、日本触媒(株)製のエポクロス K−2010E等があげられる。
【0040】
上記(A)成分又は(B)成分のいずれか又は両方にカルボキシル基が含まれる場合は、(C)成分として、上記のいずれの架橋剤を使用することができるが、(A)成分及び(B)成分のいずれにもカルボキシル基を含まない場合は、(C)成分として、イソシアネート系架橋剤を用いるのが好ましい。
【0041】
上記(A)成分と(B)成分の混合比は、(A)成分と(B)成分との合計量に対して、上記(A)成分を20〜80重量%含有するのがよく、40〜60重量%含有するのが好ましい。20重量%より少ないと、ドライタック性が不足する場合がある。一方、80重量%より多いと、耐熱性が低下する場合がある。
【0042】
また、上記(C)成分の含有量は、樹脂固形分、すなわち、(A)成分及び(B)成分の固形分の合計量100重量部あたり、0.5〜25重量部であり、2〜20重量部が好ましく、5〜10重量部がより好ましい。0.5重量部より少ないと、架橋が不十分となり、耐熱性が低下する場合がある。一方、25重量部より多いと、接着剤のポットライフ(使用可能時間)が短くなって、作業性が悪化する場合がある。
【0043】
上記接着剤組成物は、下記の方法で製造することができる。
まず、上記(A)成分は、水、エチレン−酢酸ビニル系共重合体を含有する水系エマルジョン又は上記ウレタン重合体を含有する水系エマルジョンに、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル系単量体を主成分とする単量体、乳化剤及び重合触媒を添加して加温し、乳化重合を行うことによりエマルジョン状態として得ることができる。このときの温度、圧力等の条件、重合触媒等は通常使用される条件や重合触媒を使用することができる。
【0044】
さらに、上記乳化剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤があげられ、これらは単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【0045】
また、上記界面活性剤に、反応性の二重結合を有する反応性界面活性剤や、ポリビニルアルコール、デンプン等の水溶性高分子を併用することもできる。
【0046】
上記の(B)成分は、上記の各モノマーを、アセトン、メチルエチルケトン等の親水性の揮発性溶剤の存在下で反応させてポリウレタン樹脂を合成し、次いで、アセトン法、プレポリマーミキシング法、ケチミン法、ホットメルトディスパージョン法等の公知の方法でウレタンエマルジョンに転化する。
【0047】
次いで、得られた(A)成分を含有するエマルジョンと(B)成分を含有するエマルジョンの両エマルジョンを所定割合で混合すると共に、(C)成分を所定量添加する。これにより、この発明にかかる接着剤組成物が製造される。
【0048】
この接着剤組成物中の固形分含有量は、55〜75重量%であり、60〜70重量%が好ましい。55重量%より少ないと、塗布後の乾燥に長時間を要する場合がある。一方、75重量%より大きいと、塗布工程中に乾燥が進んでしまい、均一な塗膜が得られにくくなる場合がある。
【0049】
この接着剤組成物の粘度は、2,000〜20,000mPa・sがよく、5,000〜15,000mPa・sが好ましい。2,000mPa・sより小さいと、塗布時に接着剤がたれて所定量の塗布が困難となる。一方、20,000mPa・sより大きいと、粘度が高く塗工性が悪化する。
【0050】
上記接着剤組成物の粘度が上記範囲より低い場合は、増粘剤を含有させることにより、粘度を上記の範囲内に調節することができる。これにより、粘度がより低い組成物の利用が可能となる。
【0051】
この増粘剤としては、ウレタン変性ポリエーテル、ウレタンプレポリマー、アクリル系コポリマー、セルロースエーテル、ポリエーテルポリカルボン酸塩等があげられる。
【0052】
この増粘剤の含有量は、上記接着剤組成物の粘度が上記範囲内に収まる量であれば、特に限定されないが、上記(A)成分と(B)成分との固形分合計量100重量部に対して、0.5〜10重量部がよく、0.5〜5重量部が好ましい。0.5重量部より少ないと、十分な増粘効果が得られない。一方、10重量部より多いと、増粘剤による接着性能の低下の恐れがある。
【0053】
この発明にかかる接着剤組成物は、ドライ接着において、初期は粘着力を発揮するので、加熱処理することなく接着効果を発揮する。そして、経時的に接着力が発現するので、接着効果を持続可能となる。このため、この発明にかかる接着剤組成物を建材用又はラッピング用の接着剤として使用すると、より効果的である。
【0054】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。まず、実施例及び比較例で行った試験及び評価方法について説明する。
【0055】
<基本性状>
[固形分]
JIS K 6828−1996に記載の方法に従って測定した。
[粘度]
JIS K 6828−1996に記載の方法に従って、BH型回転粘度計を用い、10rpmの条件で測定した。
[ガラス転移温度(Tg)]
共重合物のガラス転移温度は、単量体の単独重合体のガラス転移温度から、FOXの式により求めた。
【0056】
<接着性性能試験>
[試験体の作成]
基材として、中質繊維板(MDF)(ホクシン(株)製;EOタイプ)を用い、被着体としては、凸版印刷(株)製ポリオレフィンフィルム(接着面をプライマー処理)を用いた。
まず、実施例又は比較例で得られた接着剤を、上記被着体のポリオレフィンフィルムに、塗布厚0.1mmのアプリケーターで約100g/m2塗布し、80℃に設定された熱風循環乾燥機中で1分間乾燥させ、基材のMDFと貼り合わせた後で、ハンドゴムロールで2往復圧着し、加熱しないヒートロールへ3回通した。その後、23℃、50%RHで3日間養生した。なお、上記ヒートロールは、テスター産業(株)製;小型卓上テストラミネーター SA−1010(脱気ロール圧:0.4MPa、ロール速度:4m/分、ロールの種類:スチールロール/ゴムローム、ゴムロールの硬度:60、スチールロールの表面温度:室温と同じ。)を用いた。
そして、次に示す[ドライタック性試験]及び[セミドライ適性試験]以外の性能試験は、上記で作成した試験体を25mm幅に切断して試験片とした。
【0057】
[ドライタック性試験]
上記オレフィンフィルムに実施例又は比較例で得られた接着剤を、塗布厚0.1mmのアプリケーターで約100g/m2塗布し、80℃に設定された熱風循環乾燥機中で1分間乾燥後、直ちに指触により、乾燥直後(高温時:約50〜60℃)のドライタック性を下記の基準にしたがって評価した。続いて室温冷却後(約23℃)、指触により、下記の基準にしたがってドライタック性を評価した。なお、中間的な評価となったものは、「VS〜S」のように「〜」を用いて表示した。
VS:非常にタックが強い
S :タックが強い
M :タックがやや強い
W :タックが弱い。
【0058】
[セミドライ適性試験]
上記のドライタック性試験と同様にして得られた乾燥直後の被着体(ホット時の評価)又は室温冷却後の被着体(室温時の評価)をそれぞれ基材に貼り合せ、その後、上記被着体を剥離して下記の基準にしたがってセミドライ適性を評価した。
○:セミドライ適性良好(剥離したときに基材が材破。)
△:セミドライ適性やや良好(剥離したときに接着剤が、基材と試料との両方に付着。)
×:セミドライ適性なし(剥離したときに接着剤が基材のみに付着し、接着剤とオレフィンフィルムとの間で界面剥離を生じる。)
【0059】
[常態剥離試験]
上記試験体より作成した試験片を使用し、この試験片の剥離強度を測定した。すなわち、23℃、50%RHの雰囲気下で、上記被着体に張り合わせた試験片を用いて、上記被着体の180°角引っ張り接着力を、東洋ボードウィン引張試験機(テンシロン・レオメーター)を用いて、引張速度200mm/minで測定し、剥離強度を求めた。(単位:kN/m)
【0060】
[耐熱クリープ]
上記試験体より作成した試験片を使用した。この試験片を上記被着体に張り合わせた後、試験片の一部を上記被着体から剥離させ、その剥離面に90°角方向に4.9Nの静荷重をかけて、60℃に設定した熱風循環乾燥機中で1時間静置した。1時間経過後の上記被着体の剥離の長さを測定した。
【0061】
<使用した各成分の説明>
(A成分)
[A−1の製造]
撹拌機、温度計、還流冷却器、滴下ロートを備えた反応器中に、イオン交換水を15重量部、界面活性剤としてエマール10(アルキル硫酸ナトリウム:花王(株)製)を1重量部、シード種として、スミカフレックスS−950(エチレン−酢ビ−特殊ビニルエステル共重合樹脂、固形分:53%、住友化学工業(株)製)を10重量部仕込み、75℃まで昇温した。
次に、5%過硫酸カリウム水溶液を20重量部添加した後、2−エチルヘキシルアクリレート70重量部、ブチルアクリレート30重量部、水35重量部、およびエマール10 2重量部からなる混合物を、約3時間かけて滴下した。この間、容器内の液温を75℃に保った。滴下終了後、80℃に昇温し、3時間温度を保ち、熟成を行った。その後、40℃まで冷却し、25%アンモニア水を0.2重量部添加して(メタ)アクリル系重合体(以降、「A−1」と称する。)を製造した。得られたA−1は、粘度:15,000mPa・s(25℃、BH型:10rpm)、固形分:71.3%、Tg:−65℃であった。
【0062】
[A−2の製造]
上記のA−1の製造法と同様の反応容器に、イオン交換水を15重量部、界面活性剤としてエマール10を1重量部、シード種として、スミカフレックスS−950を10重量部仕込み、75℃まで昇温した。
次に、5%過硫酸カリウム水溶液を20重量部を添加した後、2−エチルヘキシルアクリレート70重量部、エチルアクリレート20重量部、メチルメタクリレート10重量部、水35重量部、およびエマール10 2重量部からなる混合物を、約3時間かけて滴下した。この間、容器内の液温を75℃に保った。滴下終了後、80℃に昇温し、3時間温度を保ち、熟成を行った。その後、40℃まで冷却し、25%アンモニア水を0.2重量部添加して(メタ)アクリル系重合体(以降、「A−2」と称する。)を製造した。得られたA−2は、粘度:28,000mPa・s(25℃、BH型:10rpm)、固形分:62.2%、Tg:−51℃であった。
【0063】
[A−3の製造]
シード種としてウレタンエマルジョン(スーパーフレックス750、固形分:40重量%、第一工業製薬(株)製)を用いた以外は、上記のA−1の製造法と同様にして、(メタ)アクリル系重合体(以降、「A−3」と称する。)を製造した。得られたA−3は、粘度:5,800mPa・s(25℃、BH型:10rpm)、固形分:58.0%、Tg:−65℃であった。
【0064】
[A−4の製造]
滴下するモノマー混合物として、2−エチルヘキシルアクリレート98重量部、アクリル酸2重量部、水35重量部、およびエマール10 2重量部からなる混合物を用いた以外は、上記のA−1の製造法と同様にして、(メタ)アクリル系重合体(以降、「A−4」と称する。)を製造した。得られたA−4は、粘度:8,900mPa・s(25℃、BH型:10rpm)、固形分:70.8%、Tg:−68℃であった。
【0065】
[A−5の製造]
滴下するモノマー混合物として、2−エチルヘキシルアクリレート25重量部、ブチルアクリレート45重量部、メチルメタクリレート30重量部、水35重量部、およびエマール10 2重量部からなる混合物を用いた以外は、上記のA−1の製造法と同様にして、(メタ)アクリル系重合体(以降、「A−5」と称する。)を製造した。得られたA−5は、粘度:28,000mPa・s(25℃、BH型:10rpm)、固形分:71.0%、Tg:−27℃であった。
【0066】
(B成分)
[B−1] 大日本インキ工業(株)製;ハイドラン HW−D05(ウレタンエマルジョン、不揮発分:52%、Tg:−50℃)
[B−2] 大日本インキ工業(株)製;ハイドラン HW−311(ウレタンエマルジョン、不揮発分:45%、Tg:−47℃)
[B−3] 三洋化成工業(株)製;サンプレン UXA−3005(結晶性ポリウレタン、不揮発分:40%、Tg:−52℃、融点:52℃)
【0067】
(C成分)
[C−1] 住友バイエルウレタン(株)製;スミジュールN3300(イソシアネート系架橋剤、不揮発分:100%)
[C−2] (株)日本触媒製;エポクロス K−2010E(ポリオキサゾリン系架橋剤、不揮発分:40%)
【0068】
(実施例1〜11、比較例1〜4)
表1に記載のA成分、B成分及びC成分を表1に記載の割合で添加混合し、エマルジョンを得た。このエマルジョンを用いて、上記の接着性能の試験を行った。その結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【発明の効果】
この発明にかかる接着剤組成物は、所定の(メタ)アクリル系重合体、所定のポリウレタン及び架橋剤を含有する接着剤組成物を用いるので、加熱処理することなく、ドライ接着における初期接着性を発揮することができる。
Claims (11)
- (A)成分として、ガラス転移温度が−70〜−40℃の(メタ)アクリル系重合体、(B)成分として、ポリエステルポリオール骨格を有し、ガラス転移温度が−60〜−30℃で非晶質のポリウレタン、及び(C)成分として架橋剤を含有し、上記(A)成分と(B)成分との合計量に対して、上記(A)成分を20〜80重量%含有し、上記(A)成分と(B)成分との固形分合計量100重量部に対して、上記(C)成分を0.5〜25重量部含有する接着剤組成物。
- 上記(C)成分の含有量が、樹脂固形分100重量部あたり2〜20重量部である請求項1に記載の接着剤組成物。
- 上記(C)成分がイソシアネート系架橋剤である請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
- 上記(A)成分が、エチレン−酢酸ビニル系共重合体の存在下で乳化重合して得られた重合体である請求項1乃至3のいずれかに記載の接着剤組成物。
- 上記エチレン−酢酸ビニル系共重合体が、エチレン−酢酸ビニル−長鎖アルキル基を有するビニルエステル共重合体である請求項4に記載の接着剤組成物。
- 上記(A)成分が、(メタ)アクリル酸ブチル及び/又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル由来の構成成分を主成分とする請求項1乃至5のいずれかに記載の接着剤組成物。
- 上記(A)成分が、カルボキシル基を有する請求項1乃至6のいずれかに記載の接着剤組成物。
- 上記(C)成分が、ポリオキサゾリン系架橋剤及びポリカルボジイミド系架橋剤から選ばれる架橋剤である請求項7に記載の接着剤組成物。
- 固形分が55〜75重量%である請求項1乃至8のいずれかに記載の接着剤組成物。
- 増粘剤を、上記(A)成分と(B)成分との固形分合計量100重量部に対して、0.5〜10重量部含有する請求項1乃至9のいずれかに記載の接着剤組成物。
- 建材用又はラッピング用として使用される請求項1乃至10のいずれかに記載の接着剤組成物。
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