JP5023489B2 - 水系接着剤組成物 - Google Patents
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特許文献1には、「ポリウレタン樹脂(A)の水分散体および水分散性ポリイソシアネート化合物(B)からなり、該(A)が、有機イソシアネート(a)、高分子ポリオール(b)、α,α−ジメチロールモノカルボン酸(c)および必要により低分子活性水素化合物(d)からのカルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマーと、該イソシアネート基に対して過剰当量のヒドラジンもしくはその誘導体(f)との反応物の塩基(e)による中和物からなり、分子末端にヒドラジン基(−HNNH2)を有し、かつヒドラジン基当量が500〜15000であることを特徴とするプラスチックフォーム用水性接着剤組成物。」が記載されている。
また、特許文献1および持許文献2に記載の水系ポリウレタン組成物は、両方の被着体に水系ポリウレタン組成物を塗布しなければ被着体を接着させることができず、かつ、その硬化物は耐温水接着性に劣ることを見出した。
(1) カルボキシ基とブロックイソシアネート基とを有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーと、前記カルボキシ基に対して反応性を有する架橋剤と、水とを含有し、前記ウレタンプレポリマーが水中でエマルジョンとなっている水系接着剤組成物。
(2) 前記架橋剤が、2個以上のオキサゾリン環を有する化合物、2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物、2個以上のアジリジン環を有する化合物および酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記(1)に記載の水系接着剤組成物。
(3) 前記2個以上のオキサゾリン環を有する化合物、前記2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物および前記2個以上のアジリジン環を有する化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が、水中でエマルジョンとなっている上記(2)に記載の水系接着剤組成物。
(4) 前記架橋剤の含有量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.5〜20質量部である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の水系接着剤組成物。
(5) さらに、充填剤を含有する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の水系接着剤組成物。
(6) 前記充填剤の平均粒子径が、1〜10μmである上記(5)に記載の水系接着剤組成物。
(7) 前記充填剤の含有量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1〜50質量部である上記(5)または(6)に記載の水系接着剤組成物。
本発明の水系接着剤組成物は、
カルボキシ基とブロックイソシアネート基とを有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーと、前記カルボキシ基に対して反応性を有する架橋剤と、水とを含有し、前記ウレタンプレポリマーが水中でエマルジョンとなっているものである。
本発明の水系接着剤組成物において、カルボキシ基とブロックイソシアネート基とを有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーは、カルボキシ基を有し、ウレタンプレポリマーに含まれる一部または全部のイソシアネート基がブロック化剤でブロックされている、ガラス転移温度が0℃以下のウレタンプレポリマーをいう。ブロックイソシアネート基は、熱等によりブロック化剤が解離してイソシアネート基となる。
ポリイソシアネートは、特に限定されない。例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、トリイソシアネートが挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)およびこれらの水素添加物が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1−メチル−2,4−ジイソシアネートシクロヘキサン、1−メチル−2,6−ジイソシアネートシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられる。
トリイソシアネートとしては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。
中でも、耐熱性に優れ、接着強度により優れるという観点から、芳香族ジイソシアネートが好ましい。
ポリイソシアネートは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリオールは、特に限定されない。例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、その他のポリオールおよびこれらの混合ポリオールが挙げられる。
中でも、分子設計の容易さの観点から、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
2個以上のヒドロキシ基を有するカルボキシ基含有化合物は、2個以上のヒドロキシ基と1個以上のカルボキシ基とを有する化合物であれば特に制限されない。例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸のようなヒドロキシアルカン酸が挙げられる。
ブロック化剤としては、例えば、アルコール類、フェノール類、オキシム類、ピラゾール類、トリアゾール類、カプロラクタム類が挙げられる。
中でも、貯蔵安定性に優れるという観点から、3,5−ジメチルピラゾール、オキシム類が好ましく、メチルエチルケトオキシムがより好ましい。
ブロック化剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、ポリイソシアネートをブロック化してブロックポリイソシアネートとし、ブロックポリイソシアネートとポリオールとを反応させる場合、ブロック化剤の使用量は、少なくとも一方の被着体に水系接着剤組成物を塗布することによる被着体同士の接着性、耐温水接着性により優れ、貯蔵安定性に優れるという観点から、ポリイソシアネートのイソシアネート基に対するブロック化剤の活性水素の当量比(活性水素/イソシアネート基)が、0.8〜1.1であるのが好ましい。
また、カルボキシ基とブロックイソシアネート基とを有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーは、取扱いの観点から室温で液状であるのが好ましい。
また、ポリオールとポリイソシアネートと2個以上のヒドロキシ基を有するカルボキシ基含有化合物との反応中に任意の段階でブロック化剤を投入してブロック化剤をウレタンプレポリマーに導入し、カルボキシ基とブロックイソシアネート基とを有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーとする方法が挙げられる。
このようなガラス転移温度を有するウレタンプレポリマーとしては、例えば、ポリオールとしてのポリオキシプロピレングリコールと、ポリイソシアネートとしてのジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と、2個以上のヒドロキシ基を有するカルボキシ基含有化合物としてのジメチロールプロピオン酸と、ブロック化剤としてのメチルエチルケトオキシムとを使用することにより得られうるものが挙げられる。また、このようなガラス転移温度を有するウレタンプレポリマーの分子量は、3000〜10000であるのが好ましい。
カルボキシ基とブロックイソシアネート基とを有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーを水中でエマルジョンとする方法としては、例えば、カルボキシ基とブロックイソシアネート基とを有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーと塩形成剤とを水中で反応させてカルボキシ基とブロックイソシアネート基とを有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーを乳化および/または分散させエマルジョンとする方法、カルボキシ基とブロックイソシアネート基とを有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーを水中で乳化剤を用いて乳化および/または分散させた後、ポリアミンまたは水との反応により高分子量化してエマルジョンとする方法が挙げられる。
乳化剤は、特に制限されない。例えば、アニオン系、カチオン系、非イオン系の活性剤が挙げられる。
ポリアミンとしては、例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ピペラジン、ジフェニルメタンジアミン、エチルトリレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが挙げられる。
ウレタンエマルジョンの平均粒子径は、特に制限されない。粘度の観点から、粒子径分布の中央値(d50)が、0.01〜0.1μmであるのが好ましく、0.01〜0.05μmであるのがより好ましい。
本発明の水系接着剤組成物は、カルボキシ基とブロックイソシアネート基とを有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーを含有することにより、接着強度が高く、耐温水接着性、被着体の少なくとも一方に水系接着剤組成物を塗布することによる被着体同士の接着性、粘着性に優れる接着剤となりうる。
ブロックイソシアネート基からブロック化剤を解離させる方法は、特に限定されない。例えば、ブロック化剤を熱によって解離させる熱反応型が挙げられる。
本発明の水系接着剤組成物に含有される架橋剤は、カルボキシ基とブロックイソシアネート基とを有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマー中のカルボキシ基に対して反応性を有するものであれば、特に制限されない。
2個以上のオキサゾリン環を有する化合物は、1分子中に2個以上のオキサゾリン環を有するものであれば特に限定されない。2個以上のオキサゾリン環を有する化合物は、低分子量のものまたはオキサゾリン環を含有する重合体(以下、「オキサゾリン環含有重合体」という。)が挙げられる。なかでも、耐温水接着性により優れるという観点から、オキサゾリン環含有重合体が好ましい。
付加重合性オキサゾリンは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
付加重合性オキサゾリンと共重合可能な単量体の組み合わせとしては、例えば、(メタ)アクリル系モノマーとα,β−不飽和芳香族炭化水素との組み合わせが挙げられる。
また、2個以上のオキサゾリン環を有する化合物は、水中でエマルジョンとなっているのが、耐温水接着性により優れ、少なくとも一方の被着体に塗布することにより被着体同士をより接着させやすくすることができるという観点から好ましい。
水と均一に混合する溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールのような低級アルコール;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールのようなグリコール;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトンが挙げられる。
水と均一に混合する溶剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。水に対する、水と均一に混合する溶剤の使用量は特に限定されない。
2個以上のオキサゾリン環を有する化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物は、1分子内に2個上のカルボジイミド結合(−N=C=N−)を有する化合物であれば、特に制限されない。
2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物は、その製造について、特に制限されず、例えば、2分子以上のポリイソシアネートとカルボジイミド化触媒とを用いて、2個のイソシアネート基を脱炭酸反応させて−N=C=N−を形成させる方法によって製造することができる。2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物の製造の際に使用されるポリイソシアネートおよびカルボジイミド化触媒は特に制限されない。ポリイソシアネートおよびカルボジイミド化触媒は、例えば、従来公知のものを使用することができる。
また、2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物は、水中でエマルジョンとなっているのが、耐温水接着性により優れ、少なくとも一方の被着体に塗布することにより被着体同士をより接着させやすくできるという観点から好ましい。
2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
2個以上のアジリジン環を有する化合物は、1分子内に2個上のアジリジン環を有する化合物であれば、特に制限されない。
2個以上のアジリジン環を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパン−トリ3−[(1−アジリジニル)プロピオネート]、ジフェニルメタン−ビス−4,4′−N,N′−ジエチレンウレア、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N′−トルエン−2,4−ビス−(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N′−ヘキサメチレン−1,6−ビス−(1−アジリジンカルボキシアミド)が挙げられる。
また、2個以上のアジリジン環を有する化合物は、水中でエマルジョンとなっているのが、耐温水接着性により優れ、少なくとも一方の被着体に塗布することにより被着体同士をより接着させやすくできるという観点から好ましい。
2個以上のアジリジン環を有する化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
酸化亜鉛は特に制限されない。例えば、従来公知のものを使用することができる。酸化亜鉛は、その平均粒子径が、0.1〜1μmであるのが分散性、反応性の観点から好ましい。
水の含有量は、特に制限されない。乾燥性の観点から、水の含有量は、水系接着剤組成物全量中、30〜50質量%であるのが好ましい。
充填剤としては、例えば、無機充填剤、有機充填剤が挙げられ、無機充填剤が好ましい態様の1つとして挙げられる。無機充填剤は、特に制限されない。例えば、炭酸カルシウム(例えば、重質炭酸カルシウム)、酸化チタン、酸化ケイ素(例えば、シリカ微粉末)、タルク、クレー、カーボンブラックが挙げられる。また、充填剤としては、表面処理剤によって表面処理されたものを使用することができる。表面処理剤としては、例えば、脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステルが挙げられる。なかでも、乾燥性の観点から、シリカ微粉末、非表面処理重質炭酸カルシウムが好ましい。
充填剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、充填剤の含有量は、乾燥性の観点から、本発明の水系接着剤組成物中の水100質量部に対して、5〜50質量部であるのが好ましく、10〜30質量部であるのがより好ましい。
さらに充填剤を含有させることにより、水系接着剤組成物を被着体に塗布した後、水系接着剤組成物中の水分は低温下で、短時間に水系接着剤組成物から除去され、水系接着剤組成物を効率的に乾燥させることができる。
1液型の場合は、上記のように水系接着剤組成物を調製して、これを容器に保存することができる。カルボキシ基とブロックイソシアネート基とを有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーは貯蔵安定性に優れるため、本発明の水系接着剤組成物を1液型とすることが可能である。
本発明の水系接着剤組成物の使用方法としては、例えば、少なくとも一方の被着体に本発明の水系接着剤組成物を塗布する工程(塗布工程)と、水系接着剤組成物を塗布した被着体ともう一方の被着体とをはり合わせる工程(はり合わせ工程)と、必要に応じて一旦はり合わせた被着体をはがしてはり直す工程(はり直し工程)と、被着体をはり合わせた後、被着体を加熱して被着体を接着させる工程(加熱接着工程)とを具備する方法が挙げられる。
水系接着剤組成物の塗布量は、特に制限されず、接着性、再接着性、乾燥性の観点から、80〜120g/m2であるのが好ましい。
本発明の水系接着剤組成物は、例えば、ローラ、ロールスプレッダ、刷毛、スプレーを用いて被着体に塗布することができる。
また、塗布工程においては、水系接着剤組成物を塗布した被着体を、水分除去のため、例えば、70〜150℃で加熱し乾燥させるのが好ましい。このときの加熱温度は、カルボキシ基とブロックイソシアネート基とを有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーのブロック化剤が解離する温度より低いのが好ましい。加熱時間は、特に制限されず、例えば、60〜120秒であればよい。乾燥方法は、特に制限されず、例えば、循環式オーブンを使用することができる。
本発明の水系接着剤組成物がさらに充填剤を含有する場合、乾燥温度を70〜130℃とすることができる。
これに対して、本発明の水系接着剤組成物は、塗布工程においてこれを少なくとも片方の被着体に塗布することによって、被着体を接着させることができる。
本発明の水系接着剤組成物のこのような優れた接着性は、本発明の水系接着剤組成物を塗布した被着体と本発明の水系接着剤組成物を塗布しない被着体とを接着させ、接着剤が硬化する前に被着体をはがした場合、接着剤を塗布しなかった被着体上に本発明の水系接着剤組成物が付着し残る性質(以下、これを「転写」という。)によるものと本発明者は推測する。このようなことから、本発明の水系接着剤組成物は、接着強度が高く、接着性、再接着性、作業性に優れる。
これに対して、本発明の水系接着剤組成物は、被着体の片方にこれを塗布することにより被着体同士を再接着させることが可能で、粘着性、接着強度に優れる。本発明の水系接着剤組成物のこのような優れた再接着性は、本発明の水系接着剤組成物が転写しやすいことおよび粘着性に優れることにより被着体との密着性に優れるためと本発明者は推測する。このようなことから、本発明の水系接着剤組成物は再接着性に優れ、はり直し工程において被着体をはり直すことが可能で作業性に優れる。
このような問題は、(1)従来の水系接着剤組成物では、エマルジョンの癒着によって接着層が形成されること、(2)従来のカルボキシ基を有するウレタンプレポリマーと架橋剤とを含有する水系組成物では、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基が水によって加水分解され失活してしまったり、イソシアネート基がカルボキシ基と反応してしまうこと、(3)カルボキシ基とブロックイソシアネート基とを有するウレタンプレポリマーと、ポリイソシアネートやエポキシ樹脂のような架橋剤とを含有する、従来の水系組成物の、カルボキシ基と架橋剤との反応によって形成される架橋構造、に原因があると本発明者は考えた。
これに対して、本発明者は、本発明の水系接着剤組成物を一方の被着体に塗布し、この被着体と水系接着剤組成物を塗布しない被着体とをはりあわせて、本発明の水系接着剤組成物が硬化する前に被着体同士をはがした場合、水系接着剤組成物を塗布しなかった被着体上に本発明の水系接着剤組成物が転写することを発見した。また、本発明の水系接着剤組成物の硬化物が耐温水接着性に優れることとを発見した。そして、これらの性質を用いて、本発明の水系接着剤組成物が木工用に限らず多種多様な被着体に対して使用できる接着剤となりうることを見出した。
このような架橋構造は、本発明の水系接着剤組成物に粘着性を付与し、かつ、被着体に対する濡れを優れたものとする。したがって、本発明の水系接着剤組成物は少なくとも一方の被着体に塗布することにより被着体同士を接着させることが可能で、耐温水接着性に優れる硬化物となることができると、本発明者は推察する。
従来、はり合わせる面の表面積が異なる被着体を用いて、これらの両方に接着剤組成物を塗布し、表面積の大きい被着体に表面積の小さい被着体を接着させる場合、両者を十分に接着させるためには、表面積の大きい被着体の上の、表面積の小さい被着体が接着する部分全体に接着剤組成物を塗布する必要があった。このため、製造工程上、表面積の大きい被着体の上の、表面積の小さい被着体が接着する部分の外にも接着剤組成物を塗布してしまうことが多い。ここに表面積の小さい被着体を接着させると、表面積の小さい被着体の被着面の端から接着剤組成物がはみ出して硬化するため、接着後の被着体の仕上がりの外観が非常に悪かった。また、製造工程上、短時間の間に表面積の小さい被着体の被着面の端から接着剤組成物がはみ出ないように被着体に接着剤組成物を塗布、接着させるのは、非常に困難であった。
これに対して、本発明の水系接着剤組成物は、上記のような表面積の大きい被着体に表面積の小さい被着体を接着させる場合、表面積の小さい被着体の被着面にのみ塗布すれば被着体同士を十分に接着させることができ、接着剤組成物が被着体の端部からはみ出すことが少なく、接着後の被着体の外観が良好である。
なお、このようなメカニズムはあくまでも本発明者の推定であり、仮に、メカニズムが別であっても本発明の範囲内である。
第1表に示す成分を、第1表に示す量(単位は質量部)で混合し、各水系接着剤組成物を調製した。
2.試験体の作製
(1)亜鉛鋼板の試験体
被着体として、長さ100mm、幅25mm、厚さ1.5mmの2枚の亜鉛鋼板を用いた。
上記のようにして得られた水系接着剤組成物を、水系接着剤組成物の塗布量100g/m2とし、1枚の亜鉛鋼板の片面に、くし目状に塗布した。次いで、水系接着剤組成物を塗布した亜鉛鋼板を循環式オーブンに入れて、120℃で60秒間乾燥してから取り出し、23℃、60%RHの条件下で30秒のオープンタイムを経た後、水系接着剤組成物を塗布していない亜鉛鋼板とはり合わせて手で圧着し、80℃で24時間養生させて試験体を作製した。
(2)ポリウレタンフィルム
得られた水系接着剤組成物をテフロン(登録商標)板上に乾燥状態で300μmとなるようにバーコーターで塗布し、20℃で24時間、次いで80℃で24時間硬化させて、ポリウレタンフィルムを形成した。
上記のようにして得られた試験体を用いて、初期接着性、耐温水接着性を下記のように評価した。また、上記のように得られたポリウレタンフィルムを用いて、耐温水安定性を評価した。結果を第1表に示す。
(1)初期接着性
上記のようにして得られた試験体を、JIS K 6850−1999に準拠して引張速度200mm/minの条件でせん断強度試験を実施し、初期接着のせん断強度を測定した。
また、破壊した試験体について、接着剤の破壊形態を目視で確認した。評価基準としては、接着剤塗布面の80%以上が凝集破壊している場合を○、40〜60%の場合を△、20%以下の場合を×とした。
(2)耐温水接着性
上記のようにして得た試験体を50℃の温水に7日間入れた後引き上げて、この温水浸漬後の試験体を用いてJIS K 6850−1999に準拠して引張速度200mm/minの条件でせん断強度試験を実施し、せん断強度を測定した。
また、破壊した試験体について、接着剤の破壊形態を目視で確認した。評価基準は上記と同様である。
(3)耐温水安定性
上記のようにして得られたポリウレタンフィルムを2cm×2cmに切り取り、これを50℃の温水に4日間入れ、温水から引き上げた直後のフィルムの状態を目視で確認した。評価基準としては、フィルムが、80%以上形状を保持している場合を○、40〜60%の形状を保持している場合を△、フィルムが溶解している場合を×とした。
・ウレタンエマルジョン1:第一工業製薬社製、F2844−E5(カルボキシ基含有ウレタンプレポリマー、ガラス転移温度−5℃)
・ウレタンエマルジョン2:第一工業製薬社製、F2837D−O2(カルボキシ基を含有しないウレタンプレポリマー、ガラス転移温度−15℃)
・ウレタンエマルジョン3:第一工業製薬社製、F2521−D1(カルボキシ基を含有しないウレタンプレポリマー、ガラス転移温度−20℃、粘着剤)
・架橋剤1:日本触媒社製、エポクロスK2020E(オキサゾリン環を含有するポリマーのエマルジョンタイプ)
・架橋剤2:日清紡社製、カルボジライトE−01(2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物のエマルジョンタイプ)
・シリカ微粉末:シベリコ社製、SIRON M500
これに対して、比較例1は、一方の被着体にしか組成物を塗布しておらず、架橋剤を含有しないため、初期接着におけるせん断強度が低く、耐温水接着性、耐温水安定性に劣る。また、比較例2は、一方の被着体にしか組成物を塗布しておらず、ウレタンプレポリマーがカルボキシ基を有さないため、初期接着におけるせん断強度が低く、耐温水接着性、耐温水安定性に劣る。
Claims (9)
- カルボキシ基とブロックイソシアネート基とを有しガラス転移温度が0℃以下であるウレタンプレポリマーと、前記カルボキシ基に対して反応性を有する架橋剤と、水とを含有し、前記ウレタンプレポリマーが水中でエマルジョンとなっており、前記架橋剤が、2個以上のオキサゾリン環を有する化合物、2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物及び2個以上のアジリジン環を有する化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、水系接着剤組成物。
- 前記2個以上のオキサゾリン環を有する化合物、前記2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物および前記2個以上のアジリジン環を有する化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が、水中でエマルジョンとなっている請求項1に記載の水系接着剤組成物。
- 前記架橋剤の含有量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.5〜20質量部である請求項1または2に記載の水系接着剤組成物。
- さらに、充填剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の水系接着剤組成物。
- 前記充填剤の平均粒子径が、1〜10μmである請求項4に記載の水系接着剤組成物。
- 前記充填剤の含有量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1〜50質量部である請求項4または5に記載の水系接着剤組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の水系接着剤組成物を少なくとも一方の被着体に塗布する塗布工程と、
前記水系接着剤組成物を塗布した被着体ともう一方の被着体とをはり合わせるはり合わせ工程と、
前記被着体をはり合わせた後、前記被着体を加熱して前記被着体を接着させる加熱接着工程とを具備する、水系接着剤組成物の使用方法。 - 前記加熱接着工程における加熱温度が70〜150℃である請求項7に記載の水系接着剤組成物の使用方法。
- 前記はり合わせ工程と加熱接着工程との間に、はり合わせた被着体をはがしてはり直すはり直し工程を具備する請求項7または8に記載の水系接着剤組成物の使用方法。
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