本発明の水性樹脂組成物は、下記一般式(1)で示される2つ以上の重合性不飽和基を有するアルキレンジオール(a1−1)または下記一般式(2)で示される2つ以上の重合性不飽和基を有するオキシアルキレンジオール(a1−2)を含有するポリオール(a1)と、ポリイソシアネート(a2)とを反応させて得られる重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(A)、架橋剤(B)及び水性媒体(C)を含有するものであることを特徴とする。
前記ウレタン樹脂(A)としては、重合性不飽和基を有するウレタン樹脂のうち、下記一般式(1)で示される2つ以上の重合性不飽和基を有するアルキレンジオール(a1−1)または下記一般式(2)で示される2つ以上の重合性不飽和基を有するオキシアルキレンジオール(a1−2)を含有するポリオール(a1)と、ポリイソシアネート(a2)とを反応させて得られるものを使用する。
(一般式(1)中のR1は、炭素原子数1〜9の直鎖アルキレン基の側鎖に重合性不飽和基を含む原子団を2つ以上有する構造を表す。)
(一般式(2)中のR1及びR3はエチレン基の側鎖に重合性不飽和基を含む原子団を合計2つ以上有する構造を表す。R2は、炭素原子数1〜5のアルキレン基を表す。)
前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用するポリオール(a1)としては、ウレタン結合が主として存在する、ウレタン樹脂(A)の主鎖に対し、その側鎖に2つ以上の重合性不飽和基を導入することを目的として、前記一般式(1)で示される2つ以上の重合性不飽和基を有するアルキレンジオール(a1−1)または前記一般式(2)で示される2つ以上の重合性不飽和基を有するオキシアルキレンジオール(a1−2)を含有するものを使用する。前記アルキレンジオール(a1−1)及び前記オキシアルキレンジオール(a1−2)由来の重合性不飽和基は、塗膜等を形成する際にラジカル重合する。これにより、優れた塗膜硬度及び耐溶剤性を有する塗膜を形成することができる。
前記アルキレンジオール(a1−1)としては、前記一般式(1)で示される構造を有するものを使用することができる。前記一般式(1)中のR1は、炭素原子数1〜9の直鎖アルキレン基の側鎖に重合性不飽和基を含む原子団を2つ以上有する構造を表す。例えば、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートは、一般式(1)中のR1は、炭素原子数3のプロピレン基の側鎖に重合性不飽和基を含む原子団を2つ有する構造である。
前記アルキレンジオール(a1−1)としては、2つ以上5つ以下の重合性不飽和基を有するものを使用することが好ましく、2つ以上3つ以下の重合性不飽和基を有するものを使用することが、優れた塗膜硬度及び耐溶剤性を有する塗膜を形成可能な水性樹脂組成物を得られることから、より好ましい。
前記アルキレンジオール(a1−1)としては、例えば、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート〔ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート〕、ジメチロールメタンジ(メタ)アクリレート(一般式(1)中のR1は、炭素原子数3のもので、重合性不飽和基を有する原子団を2つ有するものである。)、ジエチロールメタンジ(メタ)アクリレート、ジエチロールプロパンジ(メタ)アクリレート(一般式(1)中のR1は、炭素原子数5のもので、重合性不飽和基を有する原子団を2つ有するものである。)、ジプロパノールメタンジ(メタ)アクリレート、ジプロパノールプロパンジ(メタ)アクリレート(一般式(1)中のR1は、炭素原子数7のもので、重合性不飽和基を有する原子団を2つ有するものである。)、ジブタノールメタンジ(メタ)アクリレート、ジブタノールプロパンジ(メタ)アクリレート(一般式(1)中のR1は、炭素原子数9のもので、重合性不飽和基を有する原子団を2つ有するものである。)等が挙げられる。なかでも、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールメタンジ(メタ)アクリレートを使用することが、優れた塗膜硬度及び耐溶剤性を有する塗膜を形成可能な水性樹脂組成物を得られることから、より好ましい。これらのアルキレンジオール(a1−1)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートのいずれか一方または両方をいう。
また、前記オキシアルキレンジオール(a1−2)としては、前記一般式(2)で示される構造を有するものを使用することができる。前記一般式(2)中のR1及びR3は、エチレン基の側鎖に重合性不飽和基を含む原子団を有する構造である。前記一般式(2)中に、前記エチレン基の側鎖に重合性不飽和基を含む原子団を有する構造を合計2つ以上有し、好ましくは2つ以上5つ以下の範囲で有し、より好ましくは2つ以上3つ以下の範囲で有する。
また、前記一般式(2)中のR2は、炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチル基が挙げられる。
前記オキシアルキレンジオール(a1−2)としては、例えば、ビス(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)メタン(一般式(2)中のR1及びR3は炭素原子数2のもので、重合性不飽和基を有する原子団を1つ有するものであり、R2は炭素原子数1のものである。)、1,2−ビス(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン(一般式(2)中のR1及びR3は炭素原子数2のもので、重合性不飽和基を有する原子団を1つ有するものであり、R2は炭素原子数2のものである。)、1,3−ビス(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)プロパン(一般式(2)中のR1及びR3は炭素原子数2のもので、重合性不飽和基を有する原子団を1つ有するものであり、R2は炭素原子数3のものである。)、1,4−ビス(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン(一般式(2)中のR1及びR3は炭素原子数2のもので、重合性不飽和基を有する原子団を1つ有するものであり、R2は炭素原子数4のものである。)、1,5−ビス(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ペンタン(一般式(2)中のR1及びR3は炭素原子数2のもので、重合性不飽和基を有する原子団を1つ有するものであり、R2は炭素原子数5のものである。)等が挙げられる。なかでも、ビス(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)メタンを使用することが、優れた塗膜硬度及び耐溶剤性を有する塗膜を形成可能な水性樹脂組成物を得られることから、より好ましい。また、これらのオキシアルキレンジオール(a1−2)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記アルキレンジオール(a1−1)及び前記オキシアルキレンジオール(a1−2)は、前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用する原料の全量中に、合計0.1〜49質量%の範囲で使用することが、優れた塗膜硬度及び耐溶剤性を有する塗膜を形成可能な水性樹脂組成物を得られることから、より好ましく、1〜15質量%の範囲であることがより好ましい。なお、前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用する原料の全量とは、ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)と、鎖伸長剤を使用した場合にはそれを含む合計質量を指す。
前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用可能なポリオール(a1)としては、前記アルキレンジオール(a1−1)及び前記オキシアルキレンジオール(a1−2)とともに、必要に応じてその他のポリオールを組み合わせ使用することができる。
前記その他のポリオールとしては、例えば、ウレタン樹脂(A)に優れた水分散安定性を付与することを目的として、親水性基を有するポリオールが挙げられる。
前記親水性基を有するポリオールとしては、例えば、アニオン性基を有するポリオール、カチオン性基を有するポリオール、ノニオン性基を有するポリオールが挙げられる。なかでも、アニオン性基を有するポリオールが好ましい。
前記アニオン性基を有するポリオールとしては、例えば、カルボキシル基を有するポリオール、スルホン酸基を有するポリオールが挙げられる。
前記カルボキシル基を有するポリオールとしては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸等が挙げられ、なかでも、2,2−ジメチロールプロピオン酸が好ましい。また、前記カルボキシル基を有するポリオールと各種ポリカルボン酸とを反応させて得られるカルボキシル基を有するポリエステルポリオールを使用することもできる。
前記スルホン酸基を有するポリオールとしては、例えば、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸等のジカルボン酸またそれらの塩;前記ジカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の低分子ポリオールとを反応させて得られるポリエステルポリオール、さらに前記ポリエステルポリオールと、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
前記アニオン性基は、それらの一部または全部が塩基性化合物等によって中和されていることが、良好な水分散性を発現するうえで好ましい。
前記アニオン性基を中和する際に使用可能な塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の沸点が200℃以上の有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を含む金属水酸化物などが挙げられる。前記塩基性化合物は、得られる水性樹脂組成物の水分散安定性を向上させる観点から、〔塩基性化合物/(カルボキシル基等の酸基の合計量)〕=0.5〜3(モル比)となる範囲で使用することが好ましく、0.7〜1.5(モル比)となる範囲で使用することがより好ましい。
また、前記カチオン性基を有するポリオールとしては、例えば、3級アミノ基を有するポリオールが挙げられる。具体的には、N−メチル−ジエタノールアミン、エポキシを2つ有する化合物と2級アミンとを反応させて得られるポリオール等が挙げられる。
前記カチオン性基は、その一部または全部が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酒石酸、アジピン酸、リン酸等の酸性化合物で中和されていることが好ましい。
また、前記カチオン性基としての3級アミノ基は、その一部または全部が4級化されていることが好ましい。前記4級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、メチルクロライド、エチルクロライド等が挙げられ、ジメチル硫酸が好ましい。
また、前記ノニオン性基を有するポリオールとしては、例えば、エチレンオキサイド由来の構造単位を有するポリアルキレングリコール等が挙げられる。
前記親水性基を有するポリオールは、前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用する原料の全量中に、1〜20質量%の範囲で使用することが好ましく、さらに、優れた塗膜硬度及び耐溶剤性を有する塗膜を形成可能な水性樹脂組成物を得られることから、1〜10質量%の範囲で使用することがより好ましい。
また、前記その他のポリオールとしては、優れた塗膜硬度及び耐溶剤性を有する塗膜を形成できることから、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましい。
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量のポリオールと、ポリカルボン酸とを反応して得られるポリエステルポリオール;ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルポリオール;これらを共重合して得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
前記低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール等の分子量が50〜300程度である脂肪族ポリオール;シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族環式構造を有するポリオール;ビスフェノールA及びビスフェノールF等の芳香族構造を有するポリオールが挙げられる。なかでも、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールが好ましい。
前記ポリエステルポリオールの製造に使用可能な前記ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;それらの無水物またはエステル化物等が挙げられる。
また、前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のジオールと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の炭酸エステル、ホスゲン等とを反応させて得られたものが挙げられる。
前記ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオールは、前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用する原料の全量中に、1〜70質量%の範囲で使用することが好ましく、15〜45質量%の範囲で使用することが、優れた塗膜硬度及び耐溶剤性を有する塗膜を形成できることから、より好ましい。
また、前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用するポリイソシアネート(a2)としては、例えば、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族環式構造を有するポリイソシアネート;4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。なかでも、前記ポリイソシアネート(a2)としては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートが、優れた塗膜硬度及び耐溶剤性を有する塗膜を形成できることから、より好ましい。また、これらのポリイソシアネート(a2)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記ポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)とを反応させウレタン樹脂(A)を製造する方法としては、例えば、無溶剤下または有機溶剤の存在下で、前記ポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)とを混合し、反応温度50℃〜150℃程度の範囲で反応させる方法が挙げられる。
前記ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)との反応は、例えば、前記ポリオール(a1)の水酸基に対する、前記ポリイソシアネート(a2)のイソシアネート基の当量割合が、0.8〜2.5の範囲で行うことが好ましく、0.9〜1.5の範囲で行うことがより好ましい。
また、前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、優れた塗膜硬度及び耐溶剤性を有する塗膜を形成できることから、前記ポリオール(a1)及び前記ポリイソシアネート(a2)の他に、必要に応じて鎖伸長剤を使用することができる。
前記ウレタン樹脂(A)を製造する際に使用できる鎖伸長剤としては、ポリアミン、ヒドラジン化合物、その他活性水素原子含有化合物等を使用することができる。
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。また、これらのポリアミンは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記ヒドラジン化合物としては、例えば、ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド等が挙げられる。また、これらのヒドラジン化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記その他活性水素含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール、及び水等が挙げられ、本発明の水性樹脂組成物の保存安定性が低下しない範囲内で単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記ウレタン樹脂(A)としては、前記架橋剤(B)の有する官能基(b)と架橋反応しうる官能基(a)を有するものを用いる。
前記官能基(a)としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。なかでも、カルボキシル基であることが好ましい。
前記官能基(a)としてカルボキシル基を用いる場合、前記ウレタン樹脂(A)としては、2〜60の酸価を有するものであることが好ましく、10〜40の酸価を有するものであることが優れた硬度を有する塗膜を形成できることから、より好ましい。
前記ウレタン樹脂(A)を製造する際に使用可能な有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
また、前記有機溶剤は、安全性や環境に対する負荷低減を図るため、前記ウレタン樹脂(A)の製造途中または製造後に、例えば、減圧留去することによって前記有機溶剤の一部または全部を除去してもよい。
前記方法で得たウレタン樹脂(A)は、優れた塗膜硬度及び耐溶剤性を有する塗膜を形成できることから、10,000〜500,000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、20,000〜200,000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することがより好ましく、40,000〜100,000の範囲の重量平均分子量を使用することがさらに好ましい。
また、前記ウレタン樹脂(A)としては、優れた塗膜硬度及び耐溶剤性を有する塗膜を形成できることから、ウレア結合を有するものを使用することが好ましい。
前記ウレタン樹脂(A)としては、500〜50,000の範囲のウレア結合当量を有するものを使用することが、優れた塗膜硬度及び耐溶剤性を有する塗膜を形成できることから好ましい。
前記ウレタン樹脂(A)は、前記水性樹脂組成物の全量中に、前記ウレタン樹脂(A)を5〜85質量%の範囲で含有するものであることが好ましく、15〜50質量%の範囲で含有するものであることが好ましい。
前記ウレタン樹脂(A)を水性媒体中に分散する際には、必要に応じて乳化剤等を使用してもよい。
前記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン系乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン系乳化剤などが挙げられる。
前記ウレタン樹脂(A)を水分散させて得られたウレタン樹脂(A)水分散体は、前記ウレタン樹脂(A)が有する重合性不飽和基のラジカル重合を進行させるうえで、重合開始剤を使用することが好ましい。
前記重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーケトン、チオキサントン、アントラキノン、ベンゾイン、ジアルコキシアセトフェノン、アシルオキシムエステル、ベンジルケタール、ヒドロキシアルキルフェノン、ハロゲノケトン等を使用することができる。前記光重合開始剤は、必要に応じてメチルアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリブチルアミン等の第三アミンと組み合わせ使用してもよい。
また、重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、4,4‘−アゾビス(4−シアノ)吉草酸、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物などの熱重合開始剤を使用することもできる。
前記重合開始剤は、ウレタン樹脂(A)の固形分100質量部に対して0.5〜5質量部の範囲で使用することが好ましい。
前記ウレタン樹脂(A)水分散体は、必要に応じて添加剤を含有してもよく、前記添加剤としては、例えば、重合性不飽和基を有する化合物、成膜助剤、充填材、チキソトロピー付与剤、粘着性付与剤、顔料や抗菌剤等を、本発明の目的を阻害しない範囲で使用することができる。
前記重合性不飽和基を有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。これらを使用することによって、より一層高硬度な塗膜を形成可能なウレタン樹脂組成物を得ることができる。
前記成膜助剤としては、例えば、アニオン界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ塩等)、疎水性ノニオン界面活性剤(ソルビタンモノオレエート等)、シリコーンオイル等が挙げられる。
前記チキソトロピー付与剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、パラフィン、樹脂酸、界面活性剤、ポリアクリル酸等で表面処理された前記充填材、ポリ塩化ビニルパウダー、水添ヒマシ油、微粉末シリカ、有機ベントナイト、セピオライト等が挙げられる。
前記顔料としては、公知慣用の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、アンチモンレッド、ベンガラ、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等を使用することができる。
前記有機顔料としては、例えば、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、フタロシアニン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンツイミダゾロン顔料、アゾ顔料等の有機顔料を使用することができる。これらの顔料は2種類以上のものを併用することができる。また、これらの顔料が表面処理されており、水性媒体に対して自己分散能を有しているものであっても良い。
前記抗菌剤としては、例えば、塩化銀、トリフルアニド、ジクロルフルアニド、フルオロフォルペット、ジンクピリチオン、2−ベンゾイミダゾールカルバン酸メチル、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール等を使用することができる。
その他の添加剤としては、例えば、反応促進剤(金属系反応促進剤、金属塩系反応促進剤、アミン系反応促進剤等)、安定剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤等)、水分除去剤(4−パラトルエンスルフォニルイソシアネート等)、吸着剤(生石灰、消石灰、ゼオライト、モレキュラーシーブ等)、接着性付与剤、消泡剤、レベリング剤等の種々の添加剤が挙げられる。
前記架橋剤(B)としては、分散性良好な水性樹脂組成物を得られることから、水性架橋剤を使用することが好ましい。なお、本発明において、水性架橋剤とは、水性媒体に一部または全部が溶解する架橋剤、もしくは必要に応じて乳化剤等を用いて水性媒体に一部または全部を分散させることができる架橋剤を指す。
前記水性架橋剤としては、例えば、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤等が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記カルボジイミド系架橋剤としては、カルボジイミド基を2つ以上有するものが好ましく、このようなものとしては、例えば、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニルカルボジイミド)等の芳香族ポリカルボジイミド;ポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等の脂環族ポリカルボジイミド、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミドなどが挙げられる。また、前記カルボジイミド系架橋剤として用いることのできる市販品としては、日清紡ケミカル株式会社製の「カルボジライトSV−02」、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」等が挙げられる。これらのカルボジイミド系架橋剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記カルボジイミド系架橋剤が有する官能基と反応する前記ウレタン樹脂(A)の官能基(a)としては、例えば、カルボキシル基が挙げられる。
前記メラミン系架橋剤としては、例えば、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるアミノ基含有メチロールメラミン、イミノ基含有メチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロールメラミン誘導体、メチロール化メラミン誘導体にメチルアルコールやブチルアルコール等の低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した部分または完全アルキル化メチロールメラミン、イミノ基含有部分または完全アルキル化メチロールメラミン等のアルキル化メチロールメラミンなどが挙げられる。これらのメラミン系架橋剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記メラミン系架橋剤が有する官能基と反応する前記ウレタン樹脂(A)の官能基(a)としては、例えば、水酸基が挙げられる。
前記オキサゾリン系架橋剤としては、例えば、2,2'−ビス(2−オキサゾリン)、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)エタン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ブタン、1,8−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ブタン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)シクロヘキサン、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,3−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン等の脂肪族あるいは芳香族を含むビスオキサゾリン化合物、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンの1種または2種以上の重合物などが挙げられる。これらのオキサゾリン系架橋剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記オキサゾリン系架橋剤が有する官能基と反応する前記ウレタン樹脂(A)の官能基(a)としては、例えば、カルボキシル基が挙げられる。
前記エポキシ系架橋剤としては、例えば、前記エポキシ系架橋剤としては、例えばビスフェノールAエピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサンや、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等の加水分解性シリル基含有エポキシ系架橋剤が挙げられる。これらのエポキシ系架橋剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記エポキシ系架橋剤が有する官能基と反応する前記ウレタン樹脂(A)の官能基(a)としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基が挙げられる。
なかでも、前記加水分解性シリル基含有エポキシ系架橋剤を使用することが、熱や水(湿気)等の加水分解・縮合による架橋により、塗膜硬度および耐溶剤性の向上、さらに各種基材に対する密着性を向上できることからより好ましく、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランからなる群より選ばれる1種以上を使用することがより好ましい。
前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式構造を有するイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。また、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業株式会社製「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業株式会社製「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業株式会社製「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合等で多官能化したポリイソシアネートなどが挙げられる。これらのイソシアネート系架橋剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記イソシアネート系架橋剤が有する官能基と反応する前記ウレタン樹脂(A)の官能基(a)としては、例えば、水酸基、アミノ基が挙げられる。
前記アジリジン系架橋剤としては、例えば、ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−(2−メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等が挙げられる。これらのアジリジン系架橋剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記アジリジン系架橋剤が有する官能基と反応する前記ウレタン樹脂(A)の官能基(a)としては、例えば、カルボキシル基が挙げられる。
前記架橋剤(B)の使用量は、前記架橋剤(B)が有する官能基(b)と架橋反応しうる前記ウレタン樹脂(A)が有する官能基(a)の10〜100モル%と反応する量であることが好ましく、80〜100モル%と反応する量であることがより好ましい。
前記水性媒体(C)としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール及びイソプロパノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル;N−メチル−2−ピロリドン等のラクタムなどが挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。
また、前記水性媒体(C)としては、安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、または、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
前記水性媒体(C)の割合は、前記水性樹脂組成物の全量中に10〜90質量%の範囲が好ましく、30〜70質量%の範囲がより好ましい。
本発明の水性樹脂組成物は、前記水性媒体(C)中に、前記ウレタン樹脂(A)及び前記架橋剤(B)を分散または溶解したものである。
本発明の水性樹脂組成物は、例えば、各種基材の表面保護や意匠性を付与しうるコーティング剤に好適に使用することができる。
前記コーティング剤を塗布し塗膜を形成可能な基材としては、例えば、ガラス基材、金属基材、プラスチック基材、紙、木材基材、繊維質基材等が挙げられる。また、ウレタンフォーム等の多孔体構造の基材も使用することもできる。
プラスチック基材としては、例えば、ポリカーボネート基材、ポリエステル基材、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン基材、ポリアクリル基材、ポリスチレン基材、ポリウレタン基材、エポキシ樹脂基材、ポリ塩化ビニル基材及びポリアミド基材を使用することができる。
前記金属基材としては、例えば、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛合金鋼板等のめっき鋼板や、鉄板、アルミ板、アルミ合金板、電磁鋼板、銅板、ステンレス鋼板等を使用することができる。
前記基材は前記材質からなる平面状のものであっても曲部を有するものであってもよく、また、不織布のような繊維からなる基材であってもよい。
本発明のコーティング剤は、例えば、それを前記基材表面に直接、または、予めプライマー層等が設けられた基材の表面に、塗布し、次いで乾燥した後、前記ウレタン樹脂(A)が有する重合性不飽和二重基のラジカル重合を進行させることによって、塗膜を形成することができる。
また、離型紙上に前記コーティング剤を塗布し、次いで乾燥、硬化させることによって離型紙の表面に塗膜を形成し、さらに前記塗膜上に接着剤もしくは粘着剤を塗布したものを、不織布のような繊維からなる基材に貼り合わせ、離型紙を剥離することによって、所望の基材の表面に、前記コーティング剤を用いて形成される塗膜を積層することができる。
前記コーティング剤を前記基材上に塗布する方法としては、例えば、スプレー法、カーテンコーター法、フローコーター法、ロールコーター法、刷毛塗り法、浸漬法等が挙げられる。
また、前記コーティング剤を硬化する方法としては、加熱する方法、紫外線等の活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。
前記加熱する方法としては、使用するラジカル重合開始剤の種類によって異なるが、例えば、100℃〜150℃程度の温度で10分〜30分程度行うことで、前記ラジカル重合を進行させ硬化させることができる。
また、前記活性エネルギー線を照射する方法としては、例えば、紫外線であればキセノンランプ、キセノン−水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、LEDランプ等の公知のランプを使用する方法が挙げられる。
前記活性エネルギー線の照射量は、0.05〜5J/cm2の範囲であることが好ましく、0.1〜3J/cm2の範囲であることがより好ましく、0.1〜1J/cm2の範囲であることが特に好ましい。なお、上記の紫外線照射量は、UVチェッカーUVR−N1(日本電池株式会社製)を用いて300〜390nmの波長域において測定した値に基づく。
本発明のコーティング剤を用いて形成可能な塗膜の厚さは、基材の使用される用途等に応じて適宜調整可能であるが、通常0.1〜100μm程度であることが好ましい。
以上のように、前記基材上に前記コーティング剤を用いて形成された塗膜を設けた物品は、液晶ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ等の光学部材、携帯電話、家電製品をはじめとする各種プラスチック製品、自動車外装、建材等の金属製品として使用することが可能である。
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
(合成例1:ウレタン樹脂(1)の合成)
加熱装置、攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた2リットル4つ口フラスコに、メチルエチルケトン49.9質量部、ポリカーボネートポリオール(1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタンジオールとジエチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、数平均分子量2000)50質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸6.8質量部、1,6−ヘキサンジオール6.6質量部、ペンタエリスリトールジアクリレート(一般式(1)中のR1は、炭素原子数3のもので、重合性不飽和基を有する原子団を2つ有するものである。)11.2質量部、メチルヒドロキノン0.0022質量部、及び、2,6−tert−ブチル−p−クレゾール0.022質量部を仕込み、撹拌しながら50℃に調整した。
次に、前記4つ口フラスコにジシクロヘキシルメタンジイソシアネート53.9質量部を供給し、80℃で約5時間反応させた後、メチルエチルケトン35.7質量部を供給し、50℃に冷却した。冷却後、トリエチルアミン5.1質量部を供給し、イオン交換水318.1質量部を滴下した。
次に、前記4つ口フラスコに、鎖伸長剤として10質量%のピペラジン水溶液16質量部を供給し反応させた後、減圧下で脱溶剤することによって、不揮発分33質量%のウレタン樹脂(1)水分散体を得た。
(合成例2:ウレタン樹脂(2)の合成)
加熱装置、攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた2リットル4つ口フラスコに、1,4−ビス(3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロキシ)ブタン(一般式(2)中のR1及びR3は炭素原子数2のもので、重合性不飽和基を有する原子団を1つ有するものであり、R2は炭素原子数4のものである。)35.6質量部、メチルヒドロキノン0.007質量部、及び、2,6−tert−ブチル−p−クレゾール0.07質量部を仕込み、攪拌しながら50℃で調整した。
次に前記4つ口フラスコにジシクロヘキシルメタンジイソシアネート107.8質量部を供給し、80℃で約3時間反応させた後、メチルエチルケトン103.9質量部、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得れるポリエステルポリオール(数平均分子量2,000)100質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸13.6質量部、及び、1,6−ヘキサンジオール10.2質量部を供給し、80℃で約3時間反応させた。
次に、前記4つ口フラスコにメチルエチルケトン74.1質量部を供給し、50℃に冷却した。撹拌しながら50℃に調整した。冷却後、トリエチルアミン10.2質量部を供給し、イオン交換水663質量部を滴下した。
次に、前記4つ口フラスコに、鎖伸長剤として10質量%のピペラジン水溶液31.9質量部を供給し反応させて後、減圧下で脱溶剤することによって、不揮発分33質量%のウレタン樹脂(2)水分散体を得た。
(合成例3:ウレタン樹脂(3)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール(数平均分子量2,000)100質量部と、1,6−ヘキサンジオール10.6質量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸13.4質量部と、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート106.3質量部とを、メチルエチルケトン98質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
次に、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液と、アクリル酸2−ヒドロキシエチル21.9質量部、メチルヒドロキノン0.003質量部、及び、2,6−tert−ブチル−p−クレゾール0.03質量部とを混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、側鎖に重合性不飽和結合を有し、主鎖の末端にイソシアネート基を有するウレタン樹脂の有機溶剤溶液を得た。
次に、前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液と、ジメチルエタノールアミン10質量部とを混合した後、イオン交換水624.6質量部を加え十分に攪拌し、10質量%のピペラジン水溶液を31.5質量部加え鎖伸長反応させ、減圧蒸留することによって、不揮発分33質量%のウレタン樹脂(3)水分散体を得た。
(合成例4:ウレタン樹脂(4)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール(数平均分子量2,000)100質量部と、1,6−ヘキサンジオール21.2質量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸13.9質量部と、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート106.3質量部とを、メチルエチルケトン93.8質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
次に、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液と、ペンタエリスリトールトリアクリレート17.5質量部、メチルヒドロキノン0.003質量部、及び、2,6−tert−ブチル−p−クレゾール0.03質量部とを混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、側鎖に重合性不飽和結合を有し、主鎖の末端にイソシアネート基を有するウレタン樹脂の有機溶剤溶液を得た。
次に、前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液と、ジメチルエタノールアミン10質量部とを混合した後、イオン交換水641.4質量部を加え十分に攪拌し、10質量%のピペラジン水溶液を31.5質量部加え鎖伸長反応させ、減圧蒸留することによって、不揮発分33質量%のウレタン樹脂(4)水分散体を得た。
(実施例1:水性樹脂組成物(1)の調製)
合成例1の不揮発分33質量%ウレタン樹脂(1)水分散体303質量部(ウレタン樹脂(1)として100質量部)、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトSV−02」)4.61質量部、及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア 500」;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとベンゾフェノンの混合物)4.0質量部を混合することによって水性樹脂組成物(1)を得た。
(実施例2:水性樹脂組成物(2)の調製)
合成例1の不揮発分33質量%ウレタン樹脂(1)水分散体303質量部(ウレタン樹脂(1)として100質量部)、メラミン架橋剤(DIC株式会社製「ベッカミンM−3」)9.94質量部、及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア 500」)4.0質量部を混合することによって水性樹脂組成物(2)を得た。
(実施例3:水性樹脂組成物(3)の調製)
合成例1の不揮発分33質量%ウレタン樹脂(1)水分散体303質量部(ウレタン樹脂(1)として100質量部)、オキサゾリン架橋剤(株式会社日本触媒製「エポクロスWS−700」)9.94質量部、及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア 500」)4.0質量部を混合することによって水性樹脂組成物(3)を得た。
(実施例4:水性樹脂組成物(4)の調製)
合成例1の不揮発分33質量%ウレタン樹脂(1)水分散体303質量部(ウレタン樹脂(1)として100質量部)、エポキシ架橋剤(DIC株式会社製「CR−5L」)4.1質量部、及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア 500」)4.0質量部を混合することによって水性樹脂組成物(4)を得た。
(実施例5:水性樹脂組成物(5)の調製)
合成例2の不揮発分33質量%ウレタン樹脂(2)水分散体303質量部(ウレタン樹脂(2)として100質量部)、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトSV−02」)4.61質量部、及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア 500」)4.0質量部を混合することによって水性樹脂組成物(5)を得た。
(実施例6:水性樹脂組成物(6)の調製)
合成例2の不揮発分33質量%ウレタン樹脂(2)水分散体303質量部(ウレタン樹脂(2)として100質量部)、メラミン架橋剤(DIC株式会社製「ベッカミンM−3」)9.94質量部、及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア 500」)4.0質量部を混合することによって水性樹脂組成物(6)を得た。
(実施例7:水性樹脂組成物(7)の調製)
合成例2の不揮発分33質量%ウレタン樹脂(2)水分散体303質量部(ウレタン樹脂(2)として100質量部)、オキサゾリン架橋剤(株式会社日本触媒製「エポクロスWS−700」)9.09質量部、及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア 500」)4.0質量部を混合することによって水性樹脂組成物(7)を得た。
(実施例8:水性樹脂組成物(8)の調製)
合成例2の不揮発分33質量%ウレタン樹脂(2)水分散体303質量部(ウレタン樹脂(2)として100質量部)、エポキシ架橋剤(DIC株式会社製「CR−5L」)12.4質量部、及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア 500」)4.0質量部を混合することによって水性樹脂組成物(8)を得た。
(比較例1:水性樹脂組成物(C1)の調製)
合成例3の不揮発分33質量%ウレタン樹脂(3)水分散体303質量部(ウレタン樹脂(3)として100質量部)、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトSV−02」)4.61質量部、及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア 500」)4.0質量部を混合することによって水性樹脂組成物(C1)を得た。
(比較例2:水性樹脂組成物(C2)の調製)
合成例4の不揮発分33質量%ウレタン樹脂(4)水分散体303質量部(ウレタン樹脂(4)として100質量部)、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトSV−02」)4.61質量部、及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア 500」)4.0質量部を混合することによって水性樹脂組成物(C2)を得た。
[塗膜の硬度の評価方法]
実施例及び比較例で得た各複合樹脂を、塗膜の膜厚が15μmとなるように、それぞれガラス基材の表面に塗布した。前記塗布物を140℃で5分間乾燥した後、高圧水銀灯(株式会社GSユアサ製)を用いて、0.5J/cm2の紫外線を1パス照射することによって、前記ガラス基材の表面に塗膜が積層した物品を得た。
前記物品を構成する塗膜の硬度は、JIS試験方法(JIS K−5600−5−4:1999)引っかき硬度(鉛筆法)に準拠した方法にて測定した。
[塗膜の耐溶剤性の評価方法]
メチルエチルケトンおよびエタノールを浸み込ませたフェルトで、硬化塗膜上を往復20回ラビングした。ラビング前とラビング後の塗膜の状態を、指触及び目視により判定した。評価基準は下記の通りである。
○:軟化及び光沢低下が認められない。
△:若干の軟化又は光沢低下が認められる。
×:著しい軟化又は光沢低下が認められる。
実施例1〜8で得られた水性樹脂組成物(1)〜(8)及び比較例1、2で得られた水性樹脂組成物(C1)、(C2)の組成、ならびに、上記の評価結果を表1に示す。なお、表1中の組成(配合量)は、不揮発分量で表す。
表1に示した実施例1〜8の評価結果から、本発明の水性樹脂組成物を用いて得られた塗膜は、優れた塗膜硬度を有し、また、耐溶剤性にも優れることが確認できた。
一方、比較例1及び2は、ウレタン樹脂の原料であるポリオールとして、本発明で規定しているポリオール以外のポリオールを用いたウレタン樹脂の例である。比較例1及び2の水性樹脂組成物を用いて得られた塗膜は、塗膜硬度、耐溶剤性ともに不十分であることが確認できた。