JP2015165017A - 熱可塑性樹脂フィルム、延伸フィルム、偏光子保護フィルムおよび偏光板 - Google Patents

熱可塑性樹脂フィルム、延伸フィルム、偏光子保護フィルムおよび偏光板 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた透明性を有し、優れた強靭性を有する熱可塑性樹脂フィルムの提供。【解決手段】アクリル系樹脂が50〜95重量%、ポリカーボネート系樹脂が5〜50重量%の割合で含有する樹脂組成物からなり、前記アクリル系樹脂が、メタクリル酸メチル50〜95重量%と、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステル5〜50重量%と、これら以外の単官能単量体0.1〜20重量%を含む単量体成分を重合させた共重合体を含む樹脂であり、せん断速度60sec−1における樹脂組成物のせん断粘度が2500Pa・sとなる温度T2500(℃)が特定の関係式を満足する熱可塑性樹脂フィルム。(R1はH又はメチル基;R2はシクロアルキル基、ナフチル基又はフェニル基で置換されたアルキル基、無置換又はアルキル基で置換されたシクロアルキル基、ナフチル基又はフェニル基、ジシクロペンタニル基又はジシクロペンテニル基)【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂フィルム、およびこの熱可塑性樹脂フィルムを延伸してなる延伸フィルムに関する。また、本発明は、この熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルムからなる偏光子保護フィルム、およびこの偏光子保護フィルムと偏光子とを含む偏光板に関する。
ポリカーボネート系樹脂は、一般的に、優れた耐熱性、寸法安定性、耐衝撃性、剛性、透明性などを有する。しかし、耐スクラッチ性および長期UV耐性が不十分で、応力複屈折の発生という欠点も有している。一方、ポリメチルメタクリレートなどのメタクリル樹脂は、優れた透明性、表面硬度、UV耐性、耐候性、化学耐性などを有することが知られている。しかし、寸法安定性、耐衝撃性、耐熱性などが不十分である。
したがって、ポリカーボネート系樹脂とメタクリル樹脂とのブレンド物は、それぞれの成分が個々に有する欠点を補い、各種用途に使用可能な物質をもたらすことが期待される。しかし、通常のポリカーボネート系樹脂とメタクリル樹脂とのブレンド物は不透明であり、透明性が要求される用途には使用できないという問題がある。
そこで、ポリカーボネート系樹脂とメタクリル樹脂との透明なブレンド物として、特許文献1では、芳香族ポリカーボネート樹脂と、メタクリル酸メチル単量体単位5〜95重量%、エステル基に炭素環状基を有するメタクリル酸エステル単量体単位5〜95重量%およびα,β−不飽和単量体単位0〜40重量%を重合して得られるメタクリル樹脂とを含有する樹脂組成物が記載されている。
特開平1−1749号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている樹脂組成物から熱可塑性樹脂フィルムを溶融押出成形すると、得られる熱可塑性樹脂フィルムは白濁し透明性が低下していることがあり、かかる熱可塑性樹脂フィルムについて、透明性に改善の余地がある。
また、熱可塑性樹脂フィルムや、熱可塑性樹脂フィルムを延伸してなる延伸フィルムは、特定の機能を付与するために、フィルム表面にハードコート層などの表面処理層が付与されることがある。しかしながら、表面処理層を備える熱可塑性樹脂フィルムや延伸フィルムは、通常、搬送や他部材との貼り合せ等の工程において、手や固定具で掴んだときに破断しやすい。そこで、熱可塑性樹脂フィルムや延伸フィルムについて、表面処理層を備えるときに手や固定具で掴んでも破断しにくい、優れた強靭性を有することが望まれる。
本発明の課題は、優れた透明性を有し、かつ、優れた強靭性を有する熱可塑性樹脂フィルム、およびこの熱可塑性樹脂フィルムを延伸してなる延伸フィルムを提供し、さらに、この熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルムからなる偏光子保護フィルム、およびこの偏光子保護フィルムと偏光子とを含む偏光板を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明は、以下の発明を提供する。
<1>アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂とを、これらの合計100重量%に対して、アクリル系樹脂が50〜95重量%、ポリカーボネート系樹脂が5〜50重量%の割合で含有する樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂フィルムであって、
前記アクリル系樹脂が、単量体成分の合計100重量%に対して、メタクリル酸メチル50〜95重量%と、下記式(I)
Figure 2015165017
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rはシクロアルキル基で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、アルキル基で置換されたシクロアルキル基、ナフチル基で置換されたアルキル基、ナフチル基、アルキル基で置換されたナフチル基、フェニル基で置換されたアルキル基、フェニル基、アルキル基で置換されたフェニル基、ジシクロペンタニル基またはジシクロペンテニル基を表す。)
で示される(メタ)アクリル酸エステル5〜50重量%と、これら以外の単官能単量体0.1〜20重量%とからなる単量体成分を重合させて得られる共重合体を含む樹脂であり、
せん断速度60sec−1における樹脂組成物のせん断粘度が2500Pa・sとなる温度T2500(℃)が下記式(a)
2500<(1.5×MVRPC×W×W)/(W×W)+245 (a)(式中、MVRPCは300℃におけるポリカーボネート系樹脂のメルトボリュームレートを表し、Wは前記単量体成分中における式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルの重量%を表し、Wは前記樹脂組成物中におけるポリカーボネート系樹脂の重量%を表す。)
を満足する、熱可塑性樹脂フィルム。
<2>アクリル系樹脂の重量平均分子量が50000〜200000である前記<1>に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
<3>式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルが、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチル、メタクリル酸ジシクロペンタニルおよびメタクリル酸ジシクロペンテニルからなる群より選ばれる少なくとも1種である前記<1>または<2>に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
<4>単官能単量体が、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、およびアクリル酸2−エチルヘキシルからなる群より選ばれる少なくとも1種である前記<1>〜<3>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
<5>溶融共押出成形により作製されてなるものである前記<1>〜<4>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
<6>少なくとも一方の面に表面処理層を備える前記<1>〜<5>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
<7>前記<1>〜<5>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムを延伸して得られる延伸フィルム。
<8>少なくとも一方の面に表面処理層を備える前記<7>に記載の延伸フィルム。
<9>前記<1>〜<6>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムからなる偏光子保護フィルム。
<10>前記<7>または<8>に記載の延伸フィルムからなる偏光子保護フィルム。
<11>偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の面に配置される前記<9>または<10>に記載の偏光子保護用フィルムとを含む偏光板。
本発明によれば、優れた透明性を有し、かつ、優れた強靭性を有する熱可塑性樹脂フィルム、およびこれを延伸してなる延伸フィルムが得られる。本発明の熱可塑性樹脂フィルム、および熱可塑性樹脂フィルムを延伸してなる延伸フィルムは、偏光子保護フィルムとして好適に用いられる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、特定のアクリル系樹脂および特定のポリカーボネート系樹脂を、所定の割合で含有する樹脂組成物からなる。
<アクリル系樹脂>
本発明に用いられるアクリル系樹脂は、メタクリル酸メチル50〜95重量%と、下記式(I)
Figure 2015165017
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rはシクロアルキル基で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、アルキル基で置換されたシクロアルキル基、ナフチル基で置換されたアルキル基、ナフチル基、アルキル基で置換されたナフチル基、フェニル基で置換されたアルキル基、フェニル基、アルキル基で置換されたフェニル基、ジシクロペンタニル基またはジシクロペンテニル基を表す。)
で示される(メタ)アクリル酸エステル5〜50重量%と、これら以外の単官能単量体0.1〜20重量%とからなる単量体成分を重合させて得られる共重合体を含む樹脂である。
なお、本明細書において、用語「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
メタクリル酸メチルは、市販品をそのまま使用してもよいし、従来公知の方法に従って別途に合成したものを使用してもよい。
メタクリル酸メチルは、アクリル系樹脂の透明性および耐候性が良好となる点から、アクリル系樹脂に含まれる共重合対を構成する単量体成分の合計100重量%に対して、50〜95重量%の割合で含まれ、好ましくは60〜90重量%の割合で含まれる。
上式(I)において、Rは、水素原子またはメチル基を表し、好ましくはメチル基である。
式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステル(以下、(メタ)アクリル酸エステルということがある。)は、少なくとも1つの脂環式炭化水素基または芳香族炭化水素基を有するものであり、市販品をそのまま使用してもよいし、従来公知の方法に従って別途に合成したものを使用してもよい。
式(I)において、Rは、「シクロアルキル基で置換されたアルキル基」、「シクロアルキル基」、「アルキル基で置換されたシクロアルキル基」、「フェニル基で置換されたアルキル基」、「フェニル基」、「アルキル基で置換されたフェニル基」、「ナフチル基で置換されたアルキル基」、「ナフチル基」、「アルキル基で置換されたナフチル基」、「ジシクロペンタニル基」または「ジシクロペンテニル基」を表す。
で示される「シクロアルキル基で置換されたアルキル基」の「アルキル基」としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられ、その置換基である「シクロアルキル基」としては、炭素数5〜12のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基などが挙げられる。なお置換基である「シクロアルキル基」の数およびアルキル基における置換位置に特に制限はない。Rで示される「シクロアルキル基で置換されたアルキル基」としては、例えば、少なくとも1つの水素原子(H)が上記の炭素数5〜12のシクロアルキル基で置換されたメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
で示される「シクロアルキル基」としては、炭素数5〜12のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基などが挙げられる。また、必要に応じて、水酸基、アミノ基、スルホン基などの置換基でさらに置換されていてもよい。
で示される「アルキル基で置換されたシクロアルキル基」の「シクロアルキル基」としては、炭素数5〜12のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基などが挙げられ、その置換基である「アルキル基」としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。なお置換基である「アルキル基」の数およびシクロアルキル基における置換位置に特に制限はない。Rで示される「アルキル基で置換されたシクロアルキル基」としては、例えば、少なくとも1つの水素原子(H)が上記の炭素数1〜4のアルキル基で置換されたシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基などが挙げられる。
で示される「フェニル基で置換されたアルキル基」の「アルキル基」としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。なお、置換基である「フェニル基」の数およびアルキル基における置換位置に特に制限はない。R1で示される「フェニル基で置換されたアルキル基」としては、例えば、少なくとも1つの水素原子(H)がフェニル基で置換されたメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)。
で示される「フェニル基」に特に制限はなく、水酸基、アミノ基、スルホン基などの置換基でさらに置換されていてもよい。
で示される「アルキル基で置換されたフェニル基」のフェニル基の置換基である「アルキル基」としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。なお、置換基である「アルキル基」の数およびフェニル基における置換位置に特に制限はない。R1で示される「アルキル基で置換されたフェニル基」としては、例えば、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基などが挙げられる。
で示される「ナフチル基で置換されたアルキル基」の「アルキル基」としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。なお、置換基である「ナフチル基」の数およびアルキル基における置換位置に特に制限はない。Rで示される「ナフチル基で置換されたアルキル基」としては、例えば、少なくとも1つの水素原子(H)がナフチル基で置換されたメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる(例えば、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基等)。
で示される「ナフチル基」に特に制限はなく、水酸基、アミノ基、スルホン基などの置換基でさらに置換されていてもよい。
で示される「アルキル基で置換されたナフチル基」のナフチル基の置換基である「アルキル基」としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。なお、置換基である「アルキル基」の数およびナフチル基における置換位置に特に制限はない。Rで示される「アルキル基で置換されたナフチル基」としては、例えば、メチルナフチル基、エチルナフチル基などが挙げられる。
また、Rで示される「ジシクロペンタニル基」および「ジシクロペンテニル基」は、それぞれ、アルキル基、水酸基、アミノ基、スルホン基などの置換基でさらに置換されていてもよい。上記のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
は、好ましくはシクロアルキル基(好ましくはシクロヘキシル基)、フェニル基、ナフチル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基であり、より好ましくはシクロヘキシル基およびフェニル基である。
本発明において、(メタ)アクリル酸エステルとしては、好ましくは、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンテニルであり、より好ましくは、メタクリル酸シクロヘキシルおよびメタクリル酸フェニルである。
なお、(メタ)アクリル酸エステルは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル系樹脂に含まれる共重合対を構成する単量体成分の合計100重量%に対して、5〜50重量%の割合で含まれ、好ましくは10〜40重量%の割合で含まれる。(メタ)アクリル酸エステルの含有量が5重量%未満の場合、アクリル系樹脂のポリカーボネート系樹脂に対する相溶性が低下し、熱可塑性樹脂フィルムの透明性が低下する。一方、(メタ)アクリル酸エステルの含有量が50重量%を超える場合、相溶性(透明性)の低下に加え、熱可塑性樹脂フィルムの耐候性も低下する。
メタクリル酸メチルおよび式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステル以外の単官能単量体(以下、単官能単量体ということがある。)は、市販品をそのまま使用してもよいし、従来公知の方法に従って別途に合成したものを使用してもよい。
単官能単量体としては、メタクリル酸メチルおよび/または(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なものであれば特に制限はないが、例えば、メタクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エステル以外の(メタ)アクリル酸アルキル、アルケニルシアン化合物(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど)、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などが挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキルが好ましく、特にアクリル酸アルキルが好ましい。
メタクリル酸アルキルとしては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。これらの中でも、炭素数2〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルが好ましい。アクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル(アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソブチル)、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
本発明において、単官能単量体としては、好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルである。
なお、単官能単量体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
単官能単量体は、アクリル系樹脂に含まれる共重合対を構成する単量体成分の合計100重量%に対して、0.1〜20重量%の割合で含まれ、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.3〜5重量%の割合で含まれる。単官能単量体の含有量が0.1重量%未満の場合、アクリル系樹脂の熱分解が起こりやすくなる場合がある。一方、単官能単量体の含有量が20重量%を超えると、熱可塑性樹脂フィルムの透明性および耐熱性が低下する場合がある。
また、アクリル系樹脂を構成する単量体成分として、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記のメタクリル酸メチル、式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルおよび単官能単量体以外の他の単量体が含まれていてもよい。
単量体成分を重合する際の重合方法については、特に制限はなく、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの公知の重合法を採用することができる。重合には通常ラジカル重合開始剤が用いられ、好ましくはラジカル重合開始剤及び連鎖移動剤が用いられる。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ラウロイルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンの如き有機過酸化物等のラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。なお、重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の量は、単量体の種類やその割合等に応じて、適宜決定すればよい。
連鎖移動剤としては、例えばn−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート等のメルカプタン類等が好ましく用いられる。なお、連鎖移動剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の量は、単量体の種類やその割合等に応じて、適宜決定すればよい。
前記単量体成分を重合する際の重合温度、重合時間などは、単量体の種類、単量体の割合などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
アクリル系樹脂は、重量平均分子量が好ましくは50000〜200000であり、より好ましくは80000〜200000である。アクリル系樹脂がこのような範囲の重量平均分子量を有すると、流動性に優れるものとなり、樹脂組成物を製造する際に溶融混練しやすく加工性が向上する。また、樹脂組成物から得られる熱可塑性樹脂フィルムの機械的強度が向上する。
また、アクリル系樹脂は、3.8kg荷重で測定した230℃におけるメルトマスフローレート(MFR)が、好ましくは0.1〜50g/10分であり、より好ましくは0.2〜30g/10分である。アクリル系樹脂がこのような範囲のMFRを有すると、流動性に優れるものとなり、樹脂組成物を製造する際に溶融混練しやすくなる。また、樹脂組成物から得られる熱可塑性樹脂フィルムの機械的強度が向上する。
アクリル系樹脂には、前記単量体成分を重合して得られる共重合体の他に、離型剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、重合抑制剤、酸化防止剤、難燃化剤、補強材等の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有させてもよいが、アクリル系樹脂の総量100重量部に対する前記共重合体の含有量は、95〜99.995重量部が好ましい。
<ポリカーボネート系樹脂>
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、二価フェノールとカルボニル化剤とを界面重縮合法や溶融エステル交換法などで反応させることにより得られるもの;カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法などで重合させることにより得られるもの;環状カーボネート化合物を開環重合法で重合させることにより得られるものなどが挙げられる。
二価フェノールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエステルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの二価フェノールの中でも、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンが好ましい。特に、ビスフェノールAの単独使用や、ビスフェノールAと、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選択される少なくとも1種との併用が好ましい。
カルボニル化剤としては、例えばカルボニルハライド(ホスゲンなど)、カーボネートエステル(ジフェニルカーボネートなど)、ハロホルメート(二価フェノールのジハロホルメートなど)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いられるポリカーボネート系樹脂は、重量平均分子量が好ましくは20000〜60000であり、より好ましくは22000〜40000である。ポリカーボネート系樹脂がこのような範囲の重量平均分子量を有すると、流動性に優れるものとなり、樹脂組成物を製造する際に溶融混練しやすく加工性が向上する。また、樹脂組成物から得られる熱可塑性樹脂フィルムの耐衝撃性および耐熱性が向上する。
ポリカーボネート系樹脂は、1.2kg荷重で測定した300℃におけるメルトボリュームレート(MVR)が、好ましくは8〜100cm/10分であり、より好ましくは10〜85cm/10分である。ポリカーボネート系樹脂がこのような範囲のMVRを有すると、流動性に優れるものとなり、樹脂組成物を製造する際に溶融混練しやすくなる。また、樹脂組成物から得られる熱可塑性樹脂フィルムの機械的強度が向上する。
ポリカーボネート系樹脂には、離型剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、重合抑制剤、酸化防止剤、難燃化剤、補強材等の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有させてもよい。
<樹脂組成物>
樹脂組成物は、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂とを、これらの合計100重量%に対して、アクリル系樹脂が50〜95重量%、ポリカーボネート系樹脂が5〜50重量%の割合で含有する。ポリカーボネート系樹脂の含有量が5重量%未満の場合、樹脂組成物から得られる熱可塑性樹脂フィルムの機械的強度が不十分となる。一方、ポリカーボネート系樹脂の含有量が50重量%を超える場合、樹脂組成物および熱可塑性樹脂フィルムの透明性が低下する。アクリル系樹脂は、好ましくは50〜80重量%の割合で含有され、ポリカーボネート系樹脂は、好ましくは20〜50重量%の割合で含有される。
本発明の樹脂組成物には、アクリル系樹脂およびポリカーボネート系樹脂以外に、本発明の効果を損なわない限りにおいて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、相溶化剤、安定剤、着色剤、発泡剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤などの慣用の添加剤を配合してもよい。また、少量の他の熱可塑性樹脂等を添加してもよい。これらの添加剤は、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂とを含有する樹脂混合物の溶融混練時に加えてもよく、溶融混練の前または後に加えてもよい。添加剤を添加する場合、樹脂組成物の総量100重量部に対するアクリル系樹脂およびポリカーボネート系樹脂の合計含有量は、70〜99.995重量部が好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる
ベンゾフェノン系UV吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノンなどが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2′−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、(2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、(2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
ベンゾエート系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2,6−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートおよびn−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、2′−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3−(3′,4′−メチレンジオキシフェニル)−アクリレート等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤として、ケミプロ化成株式会社製の「Kemisorb102」、株式会社ADEKA製の「アデカスタブLAF70」、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、株式会社ADEKA製の「アデカスタブLA31」などの市販品も挙げられる。
紫外線吸収剤は、重量平均分子量が、好ましくは500〜1000であり、より好ましくは550〜700である。重量平均分子量があまり小さいと、成形中に揮発しやすく、分子量があまり大きいと、アクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂との相溶性が低下しやすくなる。
紫外線吸収剤は、吸収極大の波長におけるモル吸光係数が、好ましくは10L/mol・cm以上であり、より好ましくは15L/mol・cm以上である。紫外線吸収剤のモル吸光係数が、上記所定の範囲であることで、紫外線吸収能がより優れるものとなり、また、紫外線吸収剤の含有量を少なくすることができる。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、チバガイギー株式会社製の「Irganox1010」、「Irganox1035」、「Irganox1076」、「Irganox1222」、住友化学株式会社製の「Antigene P」、「Antigene 3C」、「Antigene FR」、「スミライザーS」、「スミライザーGA80」、株式会社ADEKA製の「アデカスタブAO70」、「アデカスタブAO80」、「アデカスタブAO503」などの市販品が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン、ジフェニルトリデシルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、2,2−メ
チレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイトなどが挙げられる。これらの中でも、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが好ましい。
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジ−n−プロピルジスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジ−sec−ブチルジスルフィド、ジ−tert−ブチルジスルフィド、ジ−tert−アミルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、ジ−tert−オクチルジスルフィド、ジ−n−ドデシルジスルフィド、ジ−tert−ドデシルジスルフィドなどが挙げられる。これらの中でも、ジ-tert−アルキルジスルフィドが好ましく、さらに好ましくはジ−tert−ドデシルジスルフィドである。
樹脂組成物は、例えば、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂を含有する樹脂混合物を溶融混練することで得られる。
これらの樹脂を均一に溶融混練するために、溶融混練は、通常180〜320℃、好ましくは200〜300℃の温度条件下、通常10〜200sec-1のせん断速度、好ましくは30〜150sec-1のせん断速度で行われる。
溶融混練に用いる機器としては、通常の混合機、混練機などを用いることができる。具体的には、一軸混練押出機、二軸混練押出機、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラーなどが挙げられる。これらの中でも、二軸混練押出機が好ましい。また、溶融混練は、必要に応じて、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことができる。
このようにして、透明性が優れる樹脂組成物を得ることができる。樹脂組成物からは、後述するように、熱可塑性樹脂フィルムが得られるが、これに限定されず、所望の形状に加工され、成形体が得られる。かかる成形体もまた、透明性に優れる。
成形加工は、例えば、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂とを溶融混練して得た樹脂組成物をそのまま使用してもよいし、樹脂組成物をペレット状などの所定の形状にした後、この所定形状の樹脂組成物を使用してもよい。成形加工方法としては、特に制限されず、例えば、射出成形法、プレス成形法および溶融押出成形法などが挙げられる。
成形体は、例えば、電子光学材料(レンズ、光ディスク基板、導光板などの材料)、カバー材料(ディスプレイ等のカバーなどの材料)、樹脂グレージング材料などとして有用である。
<熱可塑性樹脂フィルム>
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、せん断速度60sec−1における樹脂組成物のせん断粘度が2500Pa・sとなる温度T2500(℃)が下記式(a)を満足する必要がある。
2500<(1.5×MVRPC×W×W)/(W×W)+245 (a)
式中、MVRPCは300℃におけるポリカーボネート系樹脂のメルトボリュームレートを表し、Wは前記単量体成分中における式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルの重量%を表し、Wは前記樹脂組成物中におけるポリカーボネート系樹脂の重量%を表す。
式(a)を満足することで、白濁の発生が抑制され、優れた透明性を有する熱可塑性樹脂フィルムが得られる。式(a)を満足しない場合、白濁しやすく、優れた透明性を有する熱可塑性樹脂フィルムを得ることができない。
樹脂組成物から熱可塑性樹脂フィルムを得る方法としては、後述するように、溶融押出成形法が好ましい。溶融押出成形法では、樹脂組成物を押出機により溶融混練し、そして、ダイから連続的に溶融樹脂をフィルム状に押出すことでフィルムの成形が行われる。溶融樹脂がダイから押出されるまでの間において、溶融樹脂には、通常、せん断速度60sec−1のせん断応力が付与される。このせん断応力が付与されるとき、溶融樹脂の粘度(すなわち、せん断粘度)は、通常、溶融樹脂を押出しやすいように、2500Pa・s以下とすることが望まれる。せん断粘度は、せん断応力が付与されるときの溶融樹脂の温度を調節することで所望の値とすることができ、せん断粘度をより小さくするときは溶融樹脂の温度を高くすればよく、せん断粘度をより大きくするときは溶融樹脂の温度を低くすればよい。
本発明者らは、樹脂組成物と、得られる熱可塑性樹脂フィルムにおける白濁の発生との関係について検討したところ、せん断応力が付与されるときの溶融樹脂の温度を高くしていくと、熱可塑性樹脂フィルムに白濁が発生しやすくなることを見出し、さらに検討した結果、熱可塑性樹脂フィルムの原料となる樹脂組成物が、せん断速度60sec−1における当該樹脂組成物のせん断粘度が2500Pa・sとなる温度T2500が所定値よりも低いとき、つまりは上記式(a)を満足するものであるとき、優れた透明性を有する熱可塑性樹脂フィルムが得られることを見出した。
樹脂組成物が上記式(a)を満足することで、優れた透明性を有する熱可塑性樹脂フィルムが得られる理由としては、以下の理由が考えられる。
まず、本発明者らは、樹脂組成物は曇点を有し、この曇点が上記式(a)の右辺から算出される値と略等しいことを見出している。さらに、本発明者らは、せん断応力が付与されるときの溶融樹脂の温度が樹脂組成物の曇点以上であると、熱可塑性樹脂フィルムに白濁が発生しやすくなることを見出している。以上のことから、せん断応力が付与されるときの溶融樹脂の温度、すなわち、せん断速度60sec−1における樹脂組成物のせん断粘度が2500Pa・sとなる温度T2500が、上記式(a)の右辺から算出される値よりも低ければ、樹脂組成物の曇点よりも低い温度で溶融押出成形できることになり、白濁の発生が抑制され、優れた透明性を有する熱可塑性樹脂フィルムが得られると考えられる。
本明細書において、樹脂組成物の曇点とは、溶融押出成形法によりダイの設定温度を上昇させながら熱可塑性樹脂フィルムを作製し、得られた熱可塑性樹脂フィルムについて順次JIS K7361−1に準拠して全光線透過率を測定していったとき、この全光線透過率が85%以下となった熱可塑性樹脂フィルムを溶融押出成形したときの、ダイの設定温度のことをいう。
熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、10〜1000μmが好ましく、20〜500μmがより好ましく、20〜300μmがさらに好ましい。
樹脂組成物から熱可塑性樹脂フィルムを得る方法としては、例えば、まず、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂とを含有する樹脂組成物を得、次いで、該樹脂組成物を、溶融押出成形法、溶液流延製膜法、熱プレス法などにより成形する方法が挙げられる。中でも、溶融押出成形法が好ましい。
溶融押出成形法としては、例えば、まず、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂とを混合して、必要に応じて、さらに上述の他の成分も混合して、樹脂組成物を得、次いで、得られた樹脂組成物を一軸もしくは二軸の押出機により溶融混練し、そして、Tダイから連続的に溶融樹脂をフィルム状に押出し、さらに、Tダイから連続的に押出されたフィルム状の溶融樹脂を、一対の表面が平滑な金属製のロールの間に挟み込んで成形・冷却することで、偏光子保護フィルムが得られる。なお、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、必要に応じてさらに他の成分の混合の方法は、特に限定されず、任意の公知の方法を用いればよく、スーパーミキサーやバンバリーミキサーを用いてもよいし、一軸もしくは二軸押出機で溶融混練してもよいし、これらを組み合わせてもよい。
熱可塑性樹脂フィルムは、単層構成のフィルムであることが好ましいが、本発明の効果を損なわない限りにおいて、2層以上の多層構成のフィルムであってもよい。熱可塑性樹脂フィルムが多層構成のフィルムであるとき、各層は同じ組成の樹脂組成物から形成されていてもよいし、異なる組成の樹脂組成物から形成されていてもよい。異なる組成の樹脂組成物とは、含有される樹脂の種類が異なるもの、樹脂の種類は同じであるが各樹脂の含有量が異なるもの、樹脂の種類や含有量は同じであるが添加物が異なるものなど、いずれの場合をも含むものである。
熱可塑性樹脂フィルムは、偏光子保護フィルムとして好適に用いることができる。熱可塑性樹脂フィルムは、偏光子保護フィルム以外にも、例えば、窓やカーポート屋根材等の建築用採光部材、窓等の車輌用採光部材、温室等の農業用採光部材、照明部材、前面フィルター等のディスプレイ部材等に積層して用いることができる。
<延伸フィルム>
延伸フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムを延伸してなるものである。延伸フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムを延伸してなるものであることから、熱可塑性樹脂フィルムと同様に、白濁の発生が抑制され、透明性に優れる。また、延伸フィルムは、延伸されていることから、機械的性質が優れる。
延伸としては、一軸延伸、二軸延伸などが挙げられる。中でも、二軸延伸が好ましい。
二軸延伸としては、逐次延伸、同時二軸延伸などが挙げられる。延伸方向としては、未延伸フィルム(すなわち熱可塑性樹脂フィルム)の機械流れ方向、機械流れ方向に直交する方向、機械流れ方向に斜交する方向などが挙げられる。延伸倍率は、1.1〜3.0倍であることが好ましい。ここで、本明細書において、機械流れ方向を縦方向、この縦方向の延伸を縦延伸と定義し、機械流れ方向に直交する方向を横方向、この横方向の延伸を横延伸と定義する。
延伸フィルムは、偏光子保護フィルムとして好適に用いることができる。延伸フィルムは、偏光子保護フィルム以外にも、例えば、窓やカーポート屋根材等の建築用採光部材、窓等の車輌用採光部材、温室等の農業用採光部材、照明部材、前面フィルター等のディスプレイ部材等に積層して用いることができる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムや延伸フィルムは、当該フィルムの少なくとも一方の面に、好ましくは一方の面に表面処理層を備えることができる。熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルムに表面処理層を付与することで、表面処理層の種類に応じた特定の機能を付与することができる。表面処理層の例を挙げれば、例えば
〔a〕表面の擦り傷防止のためのハードコート層、
〔b〕帯電防止層、
〔c〕反射防止層、
〔d〕防汚層、
〔e〕視認性向上、外光の映り込み防止、プリズムシートとカラーフィルターの干渉によるモアレ低減等を担う防眩層、
である。
本発明の少なくとも一方の面に表面処理層を備える熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルムは、白濁の発生が抑制されて、透明性に優れ、かつ、手や固定具で掴んでも破断しにくく強靭性に優れる。
熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルムの両方の面に表面処理層を備える場合には、両方の面の表面処理層の種類や表面処理層を構成する組成は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
(ハードコート層)
ハードコート層は、熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルムの表面硬度を高める機能を有し、表面の擦り傷防止等の目的で設けられる。ハードコート層は、JIS K 5600−5−4:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に規定される鉛筆硬度試験(ハードコート層を有する光学フィルムをガラス板の上に置いて測定する)でH又はそれより硬い値を示すことが好ましい。
ハードコート層は、熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルムの少なくとも一方の面に硬化性塗料を塗布して、硬化性の塗膜を形成し、次いでこの塗膜を硬化させる方法、等によって形成することができる。
ハードコート層を形成する材料は、一般に、熱や光によって硬化するものである。例えば、有機シリコーン系、メラミン系、エポキシ系、アクリル系、ウレタンアクリレート系のような有機ハードコート材料、二酸化ケイ素のような無機ハードコート材料を挙げることができる。これらの中でも、熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルムに対する接着力が良好であり、生産性に優れることから、ウレタンアクリレート系又は多官能アクリレート系ハードコート材料が好ましく用いられる。
ハードコート層は、所望により、屈折率の調整、曲げ弾性率の向上、体積収縮率の安定化、さらには耐熱性、帯電防止性、防眩性等の向上を図る目的で、各種フィラーを含有することができる。またハードコート層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤のような添加剤を含有することもできる。
(帯電防止層)
帯電防止層は、熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルムの表面に導電性を付与し、静電気による影響を抑制する等の目的で設けられる。帯電防止層の形成には、例えば、導電性物質(帯電防止剤)を含有する樹脂組成物を熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルム上に塗布する方法が採用できる。例えば、上述したハードコート層の形成に用いるハードコート材料に帯電防止剤を共存させておくことにより、帯電防止性のハードコート層を形成することができる。
(反射防止層)
反射防止層は、外光の反射を防止するための層であり、熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルムの表面に直接、又はハードコート層等の他の層を介して設けられる。反射防止層を有する熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルムは、波長430〜700nmの光に対する入射角5°での反射率が2%以下であることが好ましく、波長550nmの光に対する同じ入射角での反射率が1%以下であることがより好ましい。
反射防止層の厚みは、0.01〜1μm程度とすることができるが、好ましくは0.02〜0.5μmである。反射防止層は、それが設けられる層〔熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルム、あるいはハードコート層等〕の屈折率よりも小さい屈折率、具体的には1.30〜1.45の屈折率を有する低屈折率層からなるもの、無機化合物からなる薄膜の低屈折率層と無機化合物からなる薄膜の高屈折率層とを交互に複数積層したもの等であることができる。
上記の低屈折率層を形成する材料は、屈折率の小さいものであれば特に制限されない。
例えば、紫外線硬化性アクリル樹脂のような樹脂材料;樹脂中にコロイダルシリカのような無機微粒子を分散させたハイブリッド材料;アルコキシシランを含むゾル−ゲル材料等を挙げることができる。このような低屈折率層は、重合済みのポリマーを塗布することによって形成してもよいし、前駆体であるモノマー又はオリゴマーの状態で塗布し、その後重合硬化させることによって形成してもよい。また、それぞれの材料は、防汚性を付与するために、分子内にフッ素原子を有する化合物を含むことが好ましい。
低屈折率層を形成するためのゾル−ゲル材料としては、分子内にフッ素原子を有するものが好適に用いられる。分子内にフッ素原子を有するゾル−ゲル材料の典型的な例を挙げると、ポリフルオロアルキルアルコキシシランがある。ポリフルオロアルキルアルコキシシランは、例えば、下記式:
CF(CFCHCHSi(OR)
で示される化合物であることができ、ここで、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表し、nは0〜12の整数を表す。中でも、上記式中のnが2〜6である化合物が好ましい。
ポリフルオロアルキルアルコキシシランの具体例として、次のような化合物を挙げることができる。
3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、
3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン等。
低屈折率層は、熱硬化性含フッ素化合物又は活性エネルギー線硬化性含フッ素化合物の硬化物で構成することもできる。この硬化物は、その動摩擦係数が0.03〜0.15の範囲内にあることが好ましく、水に対する接触角が90〜120°の範囲内にあることが好ましい。硬化性含フッ素化合物として、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば、上記した3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン等)のほか、架橋性官能基を有する含フッ素重合体を挙げることができる。
架橋性官能基を有する含フッ素重合体は、1)フッ素含有モノマーと架橋性官能基を有するモノマーとを共重合させる方法、又は、2)フッ素含有モノマーと官能基を有するモノマーとを共重合させ、次いで重合体中の上記官能基に架橋性官能基を有する化合物を付加させる方法、によって製造することができる。
上記フッ素含有モノマーとしては、例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールのようなフルオロオレフィン類;(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類;(メタ)アクリル酸の完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類が挙げられる。
上記架橋性官能基を有するモノマー又は架橋性官能基を有する化合物としては、例えば、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのようなグリシジル基を有するモノマー;アクリル酸やメタクリル酸のようなカルボキシル基を有するモノマー;ヒドロキシアルキルアクリレートやヒドロキシアルキルメタクリレートのような水酸基を有するモノマー;アリルアクリレートやアリルメタクリレートのようなアルケニル基を有するモノマー;アミノ基を有するモノマー;スルホン酸基を有するモノマーを挙げることができる。
低屈折率層を形成するための材料は、耐擦傷性を向上させ得ることから、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、フッ化マグネシウム等の無機化合物微粒子がアルコール溶媒に分散しているゾルが含まれるもので構成することもできる。このために用いる無機化合物微粒子は、反射防止性の観点から屈折率の小さいものほど好ましい。この無機化合物微粒子は、空隙を有するものであってもよく、特にシリカの中空微粒子が好ましい。中空微粒子の平均粒径は、5〜2000nmの範囲内にあることが好ましく、とりわけ20〜100nmの範囲内にあることがより好ましい。ここでいう平均粒径は、透過型電子顕微鏡観察によって求められる数平均粒径である。
(防汚層)
防汚層は、撥水性、撥油性、耐汗性、防汚性等を付与するために設けられる。防汚層を形成するための好適な材料は、フッ素含有有機化合物である。フッ素含有有機化合物としては、フルオロカーボン、パーフルオロシラン、これらの高分子化合物等を挙げることができる。防汚層の形成方法は、形成する材料に応じて、蒸着やスパッタリングを代表例とする物理的気相成長法、化学的気相成長法、湿式コーティング法等を用いることができる。防汚層の平均厚みは、通常1〜50nm程度、好ましくは3〜35nmである。
(防眩層)
防眩層は、表面に微細な凹凸形状を有する層であり、好ましくは、上述したハードコート材料を用いて形成される。
表面に微細な凹凸形状を有する防眩層は、1)熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルム上に微粒子を含有する塗膜を形成し、その微粒子に基づく凹凸を設ける方法、2)微粒子を含有するか、又は含有しない塗膜を熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルム上に形成した後、表面に凹凸形状が付与された金型(ロール等)に押し当てて凹凸形状を転写する方法(エンボス法とも呼ばれる)、等によって形成することができる。
上記1)の方法においては、硬化性透明樹脂と微粒子とを含む硬化性樹脂組成物を熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルム上に塗布し、紫外線等の光照射又は加熱によって塗布層を硬化させることにより防眩層を形成することができる。硬化性透明樹脂は、高硬度(ハードコート)となる材料から選定されることが好ましい。かかる硬化性透明樹脂としては、紫外線硬化性樹脂のような光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等を用いることができるが、生産性や得られる防眩層の硬度等の観点から、光硬化性樹脂が好ましく使用され、より好ましくは紫外線硬化性樹脂である。光硬化性樹脂を使用する場合、硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤をさらに含む。
光硬化性樹脂としては、一般に多官能アクリレートが用いられる。その具体例は、トリメチロールプロパンのジ−又はトリ−アクリレート;ペンタエリスリトールのトリ−又はテトラ−アクリレート;分子内に水酸基を少なくとも1個有するアクリレートとジイソシアネートとの反応生成物である多官能ウレタンアクリレートを含む。これらの多官能アクリレートは、それぞれ単独で、又は必要に応じて2種以上組み合わせて用いることができる。
また、多官能ウレタンアクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、及び水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーの混合物を光硬化性樹脂とすることもできる。この光硬化性樹脂を構成する多官能ウレタンアクリレートは、例えば、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステル、ポリオール、並びにジイソシアネートを用いて製造される。具体的には、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルとポリオールから、分子内に水酸基を少なくとも1個有するヒドロキシ(メタ)アクリレートを調製し、これをジイソシアネートと反応させることにより、多官能ウレタンアクリレートを製造することができる。このようにして製造される多官能ウレタンアクリレートは、先に掲げた光硬化性樹脂自体ともなるものである。その製造にあたっては、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、ポリオール及びジイソシアネートも同様に、それぞれ1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能ウレタンアクリレートの一つの原料となる(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸の鎖状又は環状アルキルエステルであることができる。その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキシル(メタ)アクリレートのようなシクロアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
多官能ウレタンアクリレートのもう一つの原料となるポリオールは、分子内に水酸基を少なくとも2個有する化合物である。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸のネオペンチルグリコールエステル、シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジオール、スピログリコール、トリシクロデカンジメチロール、水添ビスフェノールA、エチレンオキサイド付加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グルコース類等を挙げることができる。
多官能ウレタンアクリレートのさらにもう一つの原料となるジイソシアネートは、分子内に2個のイソシアナト基(−NCO)を有する化合物であり、芳香族、脂肪族又は脂環式の各種ジイソシアネートを用いることができる。具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、及びこれらのうち芳香環を有するジイソシアネートの核水添物等を挙げることができる。
多官能ウレタンアクリレートとともに上記した光硬化性樹脂を構成するポリオール(メタ)アクリレートは、分子内に少なくとも2個の水酸基を有する化合物(すなわち、ポリオール)の(メタ)アクリレートである。その具体例としては、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ポリオール(メタ)アクリレートは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリオール(メタ)アクリレートは、好ましくは、ペンタエリスリトールトリアクリレート及び/又はペンタエリスリトールテトラアクリレートを含む。
さらに、これらの多官能ウレタンアクリレート及びポリオール(メタ)アクリレートとともに光硬化性樹脂を構成する、水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーは、一つの構成単位中に水酸基を2個以上含むアルキル基を有するものである。例えば、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを構成単位として含むポリマーや、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとともに、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを構成単位として含むポリマー等が挙げられる。
以上、例示したような(メタ)アクリル系の光硬化性樹脂を用いることにより、熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルムとの密着性が向上するとともに、機械的強度が向上し、表面の傷付きを効果的に防止できる防眩フィルムを得ることができる。
上記微粒子としては、平均粒径が0.5〜5μmで、硬化後の硬化性透明樹脂との屈折率差が0.02〜0.2であるものを用いることが好ましい。平均粒径及び屈折率差がこの範囲内にある微粒子を用いることにより、効果的にヘイズを発現させることができる。
この微粒子の平均粒径は、動的光散乱法等によって求めることができる。この場合の平均粒径は、重量平均粒径となる。
微粒子は有機微粒子又は無機微粒子であることができる。有機微粒子としては、一般に樹脂粒子が用いられ、例えば、架橋ポリアクリル酸粒子、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリメチルメタクリレート粒子、シリコーン樹脂粒子、ポリイミド粒子等が挙げられる。また、無機微粒子としては、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、アルミノシリケート、アルミナ−シリカ複合酸化物、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等を用いることができる。
上記光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンゾインエーテル系、アミン系、ホスフィンオキサイド系等、各種のものを用いることができる。アセトフェノン系光重合開始剤に分類される化合物の例は、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(別名ベンジルジメチルケタール)、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル フェニル ケトン、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オンを含む。ベンゾフェノン系光重合開始剤に分類される化合物の例は、ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノンを含む。ベンゾインエーテル系光重合開始剤に分類される化合物の例は、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテルを含む。アミン系光重合開始剤に分類される化合物の例は、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(別名ミヒラーズケトン)を含む。ホスフィンオキサイド系光重合開始剤の例は、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドを含む。ほかに、キサントン系化合物やチオキサント系化合物等も、光重合開始剤として用いることができる。
これらの光重合開始剤は市販されている。代表的な市販品の例を商品名で挙げると、ドイツのBASF社から販売されている「イルガキュア 907」、「イルガキュア 184」、「ルシリン TPO」等がある。
硬化性樹脂組成物は、必要に応じて溶剤を含むことができる。溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルのような、硬化性樹脂組成物を構成する各成分を溶解し得る任意の有機溶剤を用いることができる。2種以上の有機溶剤を混合して用いることもできる。
また硬化性樹脂組成物は、レベリング剤を含有してもよく、例えば、フッ素系又はシリコーン系のレベリング剤を用いることができる。シリコーン系のレベリング剤には、反応性シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン等がある。シリコーン系レベリング剤の中でも好ましいものは、反応性シリコーン及びシロキサン系のレベリング剤である。反応性シリコーンからなるレベリング剤を用いれば、防眩層表面に滑り性が付与され、優れた耐擦傷性を長期間持続させることができる。また、シロキサン系のレベリング剤を用いれば、膜成形性を向上させることができる。
一方、上記2)の方法(エンボス法)により微細表面凹凸形状を有する防眩層を形成する場合には、微細凹凸形状が形成された金型を用いて、金型の形状を熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルム上に形成された樹脂層に転写すればよい。エンボス法により微細表面凹凸形状を形成する場合、凹凸形状が転写される樹脂層は、微粒子を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。上記樹脂層を構成する樹脂は、好ましくは、上記1)の方法において例示したような光硬化性樹脂であり、より好ましくは紫外線硬化性樹脂である。ただし、紫外線硬化性樹脂の代わりに、光重合開始剤を適宜選択することにより、紫外線より波長の長い可視光で硬化が可能な可視光硬化性樹脂を用いることもできる。
エンボス法では、紫外線硬化性樹脂等の光硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物を(メタ)アクリル系樹脂フィルム上に塗布し、その塗布層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面が塗布層に転写される。より具体的には、硬化性樹脂組成物を(メタ)アクリル系樹脂フィルム上に塗布し、塗布層を金型の凹凸面に密着させた状態で、(メタ)アクリル系樹脂フィルム側から紫外線等の光を照射して塗布層を硬化させ、次に、硬化後の塗布層(防眩層)を有する(メタ)アクリル系樹脂フィルムを金型から剥離することにより、金型の凹凸形状を防眩層に転写する。
防眩層の厚みは特に限定されないが、一般には2〜30μmであり、好ましくは3μm以上、また好ましくは20μm以下である。防眩層が薄すぎると、十分な硬度が得られず、表面が傷付きやすくなる傾向にあり、一方で厚すぎると、割れやすくなったり、防眩層の硬化収縮によりフィルムがカールして生産性が低下したりする傾向にある。
防眩層を有する熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルムのヘイズ値は、5〜50%の範囲にあることが好ましい。ヘイズ値が小さすぎると、十分な防眩性能が得られず、防眩層付き熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルムを備える偏光板を画像表示装置に適用したときに画面に外光の映り込みが生じやすくなる。一方、そのヘイズ値が大きすぎると、外光の映り込みは低減できるものの、黒表示の画面のしまりが低下してしまう。ヘイズ値は、全光線透過率に対する拡散透過率の割合であり、JIS K 7136:2000「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に準じて測定される。
<偏光板>
偏光子の少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂フィルムまたは延伸フィルムを偏光子保護フィルムとして配置して偏光板とすることができる。かかる偏光板は、偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の面に配置される偏光子保護用フィルムとを含む。偏光子保護フィルムと偏光子は、貼合されていることが好ましい。
偏光子は、公知の方法に従って、ポリビニルアルコール系熱可塑性樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系熱可塑性樹脂フィルムを二色性色素で染色することによりその二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系熱可塑性樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造されるものであることができる。こうして得られる偏光子は、前記の一軸延伸された方向に吸収軸を有するものとなる。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体などが挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、85〜100モル%であることが好ましく、98モル%以上であることがより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂は、変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども用いることができる。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、1000〜10000であることが好ましく、1500〜5000であることがより好ましい。
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光子の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されず、公知の方法が採用される。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、10〜150μmであることが好ましい。
ポリビニルアルコール系熱可塑性樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色前、染色と同時、または染色の後で行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前またはホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うこともできる。
一軸延伸は、周速度の異なる離間したロール間を通すことにより行ってもよいし、熱ロールで挟むことにより行ってもよい。また、この一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、水や有機溶剤などの溶剤を用いてポリビニルアルコール系熱可塑性樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、3〜8倍であることが好ましい。
ポリビニルアルコール系熱可塑性樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液にポリビニルアルコール系熱可塑性樹脂フィルムを浸漬する方法によって行うことができる。二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系熱可塑性樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系熱可塑性樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、0.01〜1重量部であることが好ましく、ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、0.5〜20重量部であることが好ましい。染色に用いる水溶液の温度は、20〜40℃であることが好ましい。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、20〜1800秒であることが好ましい。
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系熱可塑性樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり、0.0001〜10重量部であることが好ましく、0.001〜1重量部であることがより好ましい。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有してもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、20〜80℃であることが好ましい。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、10〜1800秒であることが好ましい。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系熱可塑性樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬する方法により行うことができる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、水100重量部あたり、2〜15重量部であることが好ましく、5〜12重量部であることがより好ましい。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100重量部あたり、0.1〜15重量部であることが好ましく、5〜12重量部であることがより好ましい。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、60〜1200秒であることが好ましく、150〜600秒であることがより好ましく、200〜400秒であることがさらに好ましい。ホウ酸含有水溶液の温度は、50℃以上であることが好ましく、50〜85℃であることがより好ましく、60〜80℃であることがさらに好ましい。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系熱可塑性樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系熱可塑性樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗処理における水の温度は、5〜40℃であることが好ましい。また浸漬時間は、1〜120秒であることが好ましい。
水洗後は乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、30〜100℃であることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。乾燥処理の時間は、60〜600秒であることが好ましく、120〜600秒であることがより好ましい。
乾燥処理により、偏光子の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、5〜20重量%であることが好ましく、8〜15重量%であることがより好ましい。水分率が5重量%を下回ると、偏光子の可撓性が失われ、偏光子がその乾燥後に損傷したり、破断したりすることがある。一方、水分率が20重量%を超えると、偏光子の熱安定性が不足することがある。
こうして得られるポリビニルアルコール系熱可塑性樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向してなる偏光子の厚みは、5〜40μmであることが好ましい。
偏光子の一方の面に偏光子保護フィルムを配置する場合、他方の面には、透明熱可塑性樹脂フィルムを配置してもよい。透明熱可塑性樹脂フィルムと偏光子は、偏光子保護フィルムと偏光子の場合と同様に、貼合されていることが好ましい。透明熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリル系熱可塑性樹脂フィルム、アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂との積層フィルム、オレフィン系熱可塑性樹脂フィルムなどが挙げられる。
偏光子保護フィルムと偏光子との貼合、および偏光子と透明熱可塑性樹脂フィルムとの貼合には、接着剤を用いることが好ましい。接着剤を用いることで、偏光子保護フィルムと偏光子、および偏光子と透明熱可塑性樹脂フィルムは、接着剤層を介して貼合される。
また、貼合に先立って、貼合面のうち、少なくとも一方には、コロナ放電処理、プラズマ照射処理、電子線照射処理、その他の表面活性化処理を施しておくことが好ましい。
接着剤層を形成するための接着剤は、それぞれの部材に対して接着力を発現するものから、任意に選択して用いることができる。典型的には、水系接着剤、すなわち、接着剤成分を水に溶解または接着剤成分を水に分散させたものや、活性エネルギー線の照射により硬化する成分を含む活性エネルギー線硬化性接着剤を挙げることができる。中でも、生産性の観点から、活性エネルギー線硬化性接着剤が好ましい。
水系接着剤としては、例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂やウレタン樹脂を用いた組成物が、好ましい接着剤として挙げられる。
水系接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコールや完全ケン化ポリビニルアルコールのほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールのような、変性されたポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。接着剤成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、その接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液として調製されることが多い。接着剤水溶液におけるポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、水100重量部に対して、1〜10重量部であることが好ましく、1〜5重量部であることがより好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水系接着剤には、接着性を向上させるために、グリオキザールや水溶性エポキシ樹脂などの硬化性成分または架橋剤を添加することが好ましい。水溶性エポキシ樹脂としては、例えば、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンのようなポリアルキレンポリアミンとアジピン酸のようなジカルボン酸との反応で得られるポリアミドポリアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂などが挙げられる。ポリアミドポリアミンエポキシ樹脂としては、市販品を使用してもよく、例えば、住化ケムテックス株式会社製の「スミレーズレジン650」および「スミレーズレジン675」、日本PMC株式会社製の「WS−525」などが挙げられる。これら硬化性成分または架橋剤の添加量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、1〜100重量部であることが好ましく、1〜50重量部であることがより好ましい。その添加量が少ないと、接着性向上効果が小さくなり、一方でその添加量が多いと、接着剤層が脆くなることがある。
水系接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合は、適当な接着剤組成物の例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物が挙げられる。ここでいうポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。アイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の接着剤として好ましい。
活性化エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合、それを構成する活性エネルギー線の照射により硬化する成分(以下、単に「硬化性成分」ということがある)としては、エポキシ化合物、オキタセン化合物、アクリル系化合物などが挙げられる。エポキシ化合物やオキタセン化合物のようなカチオン重合性の化合物を用いる場合には、カチオン重合開始剤が配合される。また、アクリル系化合物のようなラジカル重合性化合物を用いる場合にはラジカル重合開始剤が配合される。中でも、エポキシ化合物を硬化性成分の一つとする接着剤が好ましく、飽和炭素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物を硬化性成分の一つとする接着剤がより好ましい。また、それにオキセタン化合物を併用してもよい。
エポキシ化合物としては、市販品を使用してもよく例えば、ジャパンエポキシレジン株式会社製の「エピコート」シリーズ、DIC株式会社製の「エピクロン」シリーズ、東都化成株式会社製の「エポトート」シリーズ、株式会社ADEKA製の「アデカレジン」シリーズ、ナガセケムテックス株式会社製の「デナコール」シリーズ、ダウケミカル社製の「ダウエポキシ」シリーズ、日産化学工業株式会社製の「テピック」などが挙げられる。
飽和炭素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物としては、市販品を使用してもよく、例えば、ダイセル化学工業株式会社製の「セロキサイド」シリーズおよび「サイクロマー」シリーズ、ダウケミカル社製の「サイラキュア」リーズなどが挙げられる。
オキセタン化合物としては、市販品を使用してもよく、例えば、東亞合成株式会社製の「アロンオキセタン」シリーズ、宇部興産株式会社製の「ETERNACOLL」シリーズなどが挙げられる。
カチオン重合開始剤としては、市販品を使用してもよく、例えば、日本化薬株式会社製の「カヤラッド」シリーズ、ユニオンカーバイド社製の「サイラキュア」シリーズ、サンアプロ株式会社製の光酸発生剤である「CPI」シリーズ、ミドリ化学株式会社製の光酸発生剤である「TAZ」、「BBI」および「DTS」、株式会社ADEKA製の「アデカオプトマー」シリーズ、ローディア社製の「RHODORSIL」シリーズなどが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、必要に応じて光増感剤を含有することができる。光増感剤を用いることで、反応性が向上し、硬化物層の機械強度や接着強度をさらに向上させることができる。光増感剤としては、例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾおよびジアゾ化合物、アントラセン系化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性接着剤には、その接着性を損なわない範囲で各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤などが挙げられる。さらに、その接着性を損なわない範囲で、カチオン重合とは別の反応機構で硬化する硬化性成分を配合することもできる。
以上説明した活性エネルギー線硬化性接着剤は、同じ組成であっても、異なる組成であってもよいが、両者を硬化させるための活性エネルギー線の照射は、同時に行うことが好ましい。
活性エネルギー線としては、例えば、X線、紫外線、可視光線などが挙げられる。中でも、利用の容易さ、並びに活性エネルギー線硬化性接着剤の調製の容易さ、安定性および硬化性能の観点から、紫外線が好ましい。紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて得られる接着剤層の厚さは、1〜50μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。
偏光板は、液晶セルに貼り合わせて、液晶表示装置に用いられる液晶パネルとすることができる。偏光板と液晶セルは、粘着剤を用い、粘着剤層を介して貼合されることが好ましい。この粘着剤層は、アクリル酸エステルを主成分とし、官能基含有アクリル系単量体が共重合されたアクリル樹脂を粘着剤成分とするアクリル系粘着剤によって形成するのが一般的である。液晶セルに粘着剤層を介して偏光板を貼合してなる液晶パネルは、液晶表示装置に使用することができる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、得られた樹脂組成物の各種物性は、下記の方法によって測定および評価した。
<ガラス転移温度(Tg)>
JIS K7121:1987に従い、示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分として測定した補外ガラス転移中間温度を、ガラス転移温度(Tg)とした。
<せん断粘度が2500Pa・sとなる温度(T2500)>
キャピログラフ(株式会社東洋精機製作所製、バレル半径:9.55mmφ、キャピラリーのL/D:10)を用い、せん断速度を60sec−1に固定して、各温度でのせん断粘度を測定し、せん断粘度と温度との関係式を求め、この関係式から、せん断速度60sec−1における樹脂組成物のせん断粘度が2500Pa・sとなる温度T2500を算出した。なお、関係式は測定結果を指数関数で近似した式であり、式の算出には最小自乗法を適用した。
(合成例1:アクリル系樹脂の合成)
表1に示すように、79.0重量%のメタクリル酸メチル(MMA)、20.0重量%のシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、1.0重量%のアクリル酸メチル(MA)を混合して単量体成分を得た。この単量体成分に、重合開始剤としてラウリルパーオキサイドを単量体成分100重量部に対して0.2重量部と、連鎖移動剤として1−ドデシルメルカプタンを単量体成分100重量部に対して0.50重量部とを添加し、これらを溶解させて単量体混合物を得た。他方、イオン交換水に、懸濁安定剤としてポリアクリル酸ナトリウムをイオン交換水100重量部に対して0.05重量部と、無水第一リン酸ナトリウムをイオン交換水100重量部に対して0.24重量部と、第二リン酸ナトリウム7水和物をイオン交換水100重量部に対して0.28重量部とを添加し、これらを溶解させて懸濁重合水相を得た。次いで、単量体混合物に、懸濁重合水相を単量体成分100重量部に対して150重量部添加し、懸濁重合を行った。得られたスラリー状の反応液を脱水機により脱水、洗浄した後、乾燥してビーズ状のアクリル系樹脂を得た。得られたアクリル系樹脂について、GPC測定を行い、ポリメチルメタクリレート換算で求めた重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
(合成例2〜3:アクリル系樹脂の合成)
表1に記載の成分を表1に記載の割合で用いたこと以外は、合成例1と同様の手順で、ペレット状のアクリル系樹脂を得た。得られたアクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
Figure 2015165017
表2に、使用したポリカーボネート系樹脂(PC)の重量平均分子量(Mw)およびMVRを示す。これらは、全て住化スタイロンポリカーボネート(株)製のポリカーボネートである。以下、表2にも記載のように、カリバー301−40であればPC−40のように、略して記載する場合がある。得られたポリカーボネート系樹脂について、GPC測定を行い、ポリスチレン換算で求めた重量平均分子量(Mw)を表2に示す。
Figure 2015165017
(実施例1:樹脂組成物の調製)
表3に示すように、合成例1にて得られたアクリル系樹脂70重量部と、ポリカーボネート系樹脂(PC−15)30重量部を混合し、二軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX−30SS、スクリューの長さ(L)とスクリュー径(D)との比(L/D)は41)を用いて、シリンダー温度250℃および回転数100rpmで溶融混練した。溶融物をストランド状に押出し、冷却後にストランドカッターで切断し、ペレット状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、TgおよびT2500を求めた。また、得られた樹脂組成物について、「(1.5×MVRPC×W×W)/(W×W)+245」の値を算出した。結果を表3に示す。
(実施例2〜5および比較例1:樹脂組成物の調製)
表3に記載の成分を表3に記載の割合で用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で、それぞれペレット状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、TgおよびT2500を求めた。また、得られた樹脂組成物について、「(1.5×MVRPC×W×W)/(W×W)+245」の値を算出した。結果を表3に示す。
Figure 2015165017
(実施例1〜5および比較例1:熱可塑性樹脂フィルムの作製)
得られた各樹脂組成物を、スクリュー径65mmのベント付き単軸押出機で溶融混練して、溶融樹脂をTダイに供給した。Tダイの温度は、表4に記載のTダイ温度とし、表3に記載の樹脂組成物の算出結果の値を超えない温度とした(ただし、比較例1を除く)。
次いで、供給された溶融樹脂をTダイから連続的にフィルム状に押出し、さらに、Tダイから連続的に押出されたフィルム状の溶融樹脂を、一対の表面が平滑な金属製のロールの間に挟み込んで成形・冷却して、厚み120μmの熱可塑性樹脂フィルムを得た。得られた熱可塑性樹脂フィルムについて、下記の方法によって、全光線透過率(Tt)を測定した。結果を表4に示す。
<全光線透過率(Tt)>
透過率計(HR−100、(株)村上色彩技術研究所製)を用い、JIS K7361−1に準拠して、全光線透過率(Tt)を測定した。
(実施例1〜5および比較例1:2軸延伸フィルムの作製)
得られた各熱可塑性樹脂フィルムについて、2軸延伸を行った。まず、各熱可塑性樹脂フィルムを、熱風循環式の炉の前後に備えらえた2組のニップロール対の間を通して縦延伸を行った。炉は1m間隔の4つのゾーンに分けて温度設定をすることができ、入り口側の第1ゾーンを室温、その次の第2ゾーンを各樹脂組成物のTgと同じ温度、その次の第3ゾーンと、出口側の第4ゾーンをTgより10℃高い温度に設定した。入り口側のニップロールを通過するフィルムの速度を2mm/minとし、出口側のニップロールを通過するフィルムの速度を4.4mm/minとすることで、縦方向の延伸倍率が2.2倍の長尺の縦延伸フィルムを作製した。
次に、作製した縦延伸フィルムを縦方向の長さが1mとなるように裁断して、縦方向の長さが1mである縦延伸フィルムを得、この縦方向の長さが1mである縦延伸フィルムをテンター横延伸機に導入して横延伸を行った。横延伸は長さ4mの熱風循環式の炉内で行い、炉内温度はTgより10℃高い温度に設定した。炉内を通る速度は1mm/minとし、延伸倍率は2倍とした。以上のようにして、縦方向の延伸倍率が2.2倍、横方向の延伸倍率が2倍であり、厚みが40μmの2軸延伸フィルムを得た。得られた2軸延伸フィルムについて、下記の方法によって、高温引張弾性率を測定した。結果を表4に示す。
<高温引張弾性率>
80℃での引張り試験を各2軸延伸フィルムについて実施し、高温引張弾性率を測定した。2軸延伸フィルムを縦延伸方向を長辺として、縦方向120mm、横方向25mmの長方形に切り出し、チャック間距離を90mmとして縦方向に引張速度5mm/minで引張試験を行った。引張強度が3MPaから6MPaとなる領域での応力−歪み曲線の傾きから、高温引張弾性率を算出した。この高温引張弾性率が高いほど高温環境において収縮し難い。
(硬化性塗料の調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔新中村化学工業株式会社製の「NKエステル A−DPH」〕25部、光重合開始剤〔チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製の「IRGACURE 184」〕2部、5酸化アンチモン微粒子ゾル〔触媒化成工業株式会社製の「ELCOM V−4514」;固形分濃度20%〕10部、1−メトキシ−2−プロパノール24部、イソブチルアルコール24部、及びジアセトンアルコール15部を混合して硬化性塗料を調製した。
(実施例1〜5および比較例1:ハードコートフィルムの作製)
得られた各2軸延伸フィルムを300mm×200mmの大きさに切断し、バーコート法にて一方の面に硬化性塗料の塗膜を形成した。次いで、室温で1分間乾燥し、さらに50℃の熱風オーブン内で3分間乾燥して溶媒を揮発させた後、この塗膜に、120Wの高圧水銀ランプを用いて、0.5J/cm2の紫外線を照射して硬化させて、一方の面に厚さが3.5μmのハードコート層を備える熱可塑性樹脂フィルムであるハードコートフィルムを得た。得られたハードコートフィルムについて、下記の方法によって、強靭性を評価した。結果を表4に示す。
<耐折割れ性>
ハードコートフィルムの強靭性を評価するために、耐折割れ性試験を実施した。得られたハードコートフィルムを、硬化被膜が形成された面を外側にして指で折りたたみ、ハードコートフィルムが破断しなかった場合を○、ハードコートフィルムが破断した場合を×として判定した。
Figure 2015165017

Claims (11)

  1. アクリル系樹脂とポリカーボネート系樹脂とを、これらの合計100重量%に対して、アクリル系樹脂が50〜95重量%、ポリカーボネート系樹脂が5〜50重量%の割合で含有する樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂フィルムであって、
    前記アクリル系樹脂が、単量体成分の合計100重量%に対して、メタクリル酸メチル50〜95重量%と、下記式(I)
    Figure 2015165017
    (式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rはシクロアルキル基で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、アルキル基で置換されたシクロアルキル基、ナフチル基で置換されたアルキル基、ナフチル基、アルキル基で置換されたナフチル基、フェニル基で置換されたアルキル基、フェニル基、アルキル基で置換されたフェニル基、ジシクロペンタニル基またはジシクロペンテニル基を表す。)
    で示される(メタ)アクリル酸エステル5〜50重量%と、これら以外の単官能単量体0.1〜20重量%とからなる単量体成分を重合させて得られる共重合体を含む樹脂であり、
    せん断速度60sec−1における樹脂組成物のせん断粘度が2500Pa・sとなる温度T2500(℃)が下記式(a)
    2500<(1.5×MVRPC×W×W)/(W×W)+245 (a)(式中、MVRPCは300℃におけるポリカーボネート系樹脂のメルトボリュームレートを表し、Wは前記単量体成分中における式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルの重量%を表し、Wは前記樹脂組成物中におけるポリカーボネート系樹脂の重量%を表す。)
    を満足する、熱可塑性樹脂フィルム。
  2. アクリル系樹脂の重量平均分子量が50000〜200000である請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  3. 式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルが、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチル、メタクリル酸ジシクロペンタニルおよびメタクリル酸ジシクロペンテニルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  4. 単官能単量体が、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、およびアクリル酸2−エチルヘキシルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  5. 溶融共押出成形により作製されてなるものである請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  6. 少なくとも一方の面に表面処理層を備える請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムを延伸して得られる延伸フィルム。
  8. 少なくとも一方の面に表面処理層を備える請求項7に記載の延伸フィルム。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムからなる偏光子保護フィルム。
  10. 請求項7または8に記載の延伸フィルムからなる偏光子保護フィルム。
  11. 偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の面に配置される請求項9または10に記載の偏光子保護用フィルムとを含む偏光板。
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