JP2015137510A - 壁体構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】防食層の剥離、剥離によってその部分の腐食が進行することに起因する鋼材の減厚による断面性能の低下、鋼材どうしの接触による摩擦熱の防食層への影響を防止できるとともに、施工も容易な壁体構造を提供する。
【解決手段】互いに接することなく柱列状に配置された複数の鋼管1と、隣り合う鋼管1,1の隙間をシールするための土留め用部材2とを備え、鋼管1に、当該鋼管1の円周方向に亘る防食層3が鋼管の長手方向の少なくとも一部に設けられているので、防食層3の剥離、剥離によってその部分の腐食が進行することに起因する鋼材の減厚による断面性能の低下、鋼材どうしの接触による摩擦熱の防食層への影響を防止できるとともに、施工も容易となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、港湾等の腐食環境が比較的厳しく、防食対策を必要とする鋼製の土留め壁、遮水壁、護岸、岸壁などに適用される壁体構造に関する。
従来、港湾等の腐食環境が比較的厳しく、防食対策を必要とする鋼製の土留め壁等としては、防食層を有する鋼管矢板が用いられてきた。防食層は、飛沫帯部、干満帯部等の腐食環境の特に厳しい部分に施される。例えば飛沫帯に対して防食層を施した場合、鋼矢板、鋼管矢板等では、一部に無防食層が存在する。鋼材に無防食部分や傷があると、その部分で鋼材に錆が発生し、被覆部の端面に錆が侵入する恐れがある。錆は失われた鉄分に比べて体積が大きくなるため、錆の発生により被覆層の端部が浮き上がり、剥がれが生じ易くなる。このため、鋼材の腐食が進行し、防食層の剥離や鋼材の減厚による断面性能の低下が懸念され、さらに防食層は鋼材との密着力が低下し、漂流物等の衝突に対しても剥離し易い。
また、鋼矢板や鋼管矢板は継手を連結させることにより壁体構造を構築するが、継手部では施工時に隣り合う鋼材どうしが接触し、その接触によって防食層に傷が付く可能性がある。防食層に傷が付いてしまうとその部分は端面となってしまい、そこから剥離が進行するおそれがある。さらに、継手部の鋼材どうしの接触による摩擦熱の防食層への影響も懸念される。
特許文献1には、鋼管杭と継手部材とのそれぞれに重防食被覆を施した後、ボルトで接合して重防食鋼管矢板とする方法が開示されている。この方法は、鋼管杭にその長手方向に所定の間隔でボルト穴を加工する工程と、前記鋼管杭の表面に防食被覆材料を被覆して重防食鋼管杭を製作する工程と、前記重防食鋼管杭の防食被覆層を穿孔して前記ボルト穴を貫通する工程と、予め前記鋼管杭のボルト穴と同じ間隔で穿孔されたボルト穴を有する継手部材の前記ボルト穴と前記重防食鋼管杭のボルト穴とをボルトで接合する工程とからなるものである。
また、特許文献2には、重防食鋼管矢板の連結部分に装着する連結部のカバーが開示されている。この連結部カバーは、連結打設されている重防食被覆鋼矢板または鋼管矢板の連結部に装着される長尺板状体であってその両側縁が重防食被覆部を抑え、連結側縁からの重防食被覆の剥離の進行を阻止するものであり、連結部カバー上部に止水材注入孔を設け、連結部カバー装着後に該注入孔より止水材を注入するようになっている。
特開平3−33311号公報 特開平11−280058号公報
ところが、前記特許文献1に記載の技術では、鋼管杭と継手部材とを別々に塗装する必要があるとともに、ボルト部分が継手内部で突起となるため隣り合う鋼管矢板を嵌合させる際に抵抗になる可能性があり、施工に手間がかかるという問題がある。また、鋼管に設けたボルト孔により鋼管杭部分の塗装に端面ができ、この端面から剥離が進行し易いという問題もある。
また、前記特許文献2に記載の技術では、鋼管矢板を打設後に現場にて連結部のカバーを施工する必要があり、施工手間が増えるという問題がある。
さらに、防食層を有する鋼管矢板であっても、上述したように、一部に無防食層が存在することに起因する剥離、また、剥離によってその部分の腐食が進行することに起因する鋼材の減厚による断面性能の低下、継手部において隣り合う鋼材どうしの接触による傷に起因する剥離、加えて、継手部の鋼材どうしの接触による摩擦熱の防食層への影響等が懸念される。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、防食層の剥離、剥離によってその部分の腐食が進行することに起因する鋼材の減厚による断面性能の低下、鋼材どうしの接触による摩擦熱の防食層への影響を防止できるとともに、施工も容易な壁体構造を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の壁体構造は、互いに接することなく柱列状に配置された複数の鋼管と、隣り合う前記鋼管の隙間をシールするための土留め用部材とを備えた壁体構造であって、
前記鋼管に、当該鋼管の円周方向に亘る防食層が前記鋼管の長手方向の少なくとも一部に設けられていることを特徴とする。
ここで、前記防食層は、鋼管の外周面に工場等で予めポリエチレン、ポリウレタン系等の樹脂を被覆(重防食被覆)することによって設けてもよいし、現地にて鋼管の外周面に当該鋼管より錆難い金属製のカバーや、FRP製のカバーを巻くことによって設けてもよい。
本発明においては、互いに接することなく柱列状に配置された複数の鋼管に、その円周方向に亘る防食層が前記鋼管の長手方向の少なくとも一部に設けられているので、いわゆる塗装端面を無くすことがきる。したがって、この塗装端面からの防食層の剥離や、漂流物の衝突あるいは無防食部分の腐食による防食層の剥離を防止できるとともに鋼材の減厚による断面性能の低下を回避できる。
また、鋼管は継手構造をもたず、互いに接することなく配置されているので、施工時に鋼材どうしの接触により防食層に傷が付く可能性を低減することができ、継手部分の鋼材どうしの接触による摩擦熱が防食層へ影響することも無くなる。
また、鋼管は継手構造を持たないが、隣り合う鋼管の隙間は土留め用部材によってシールされているので、前記隙間からの土砂の吸い出しを防止できる。
さらに、従来と異なり継手構造を持たないので、当該継手構造への防食層が不要となるとともに、従来のような連結部カバーも必要ないので、施工が従来に比して容易となる。
本発明の前記構成において、前記土留め用部材が前記鋼管の配置方向に連続する鋼製連続壁またはコンクリート製の連続壁であってもよい。この場合、これらの連続壁は、鋼管と接するように配置してもよいし、鋼管と所定の間隔をもって配置してもよい。
このような構成によれば、鋼製連続壁またはコンクリート製の連続壁によって、当該連続壁の背面側(鋼管がある側と反対側)を確実に土留めすることができ、鋼管間の隙間からの土砂の吸い出しを確実に防止できる。
また、鋼製連続壁またはコンクリート製の連続壁に作用する土圧を地盤に打設された鋼管によって受けることができるので、鋼製連続壁またはコンクリート製の連続壁が土圧によって倒れたり、変形するのを防止できる。
また、本発明の前記構成において、前記鋼製連続壁に防食層が設けられていてもよい。
このような構成によれば、鋼製連続壁に防食層が設けられているので、鋼材の減厚による断面性能の低下を回避でき、土留め用部材としての鋼製連続壁に構造性能を期待することができる。
また、本発明の前記構成において、前記土留め用部材が前記鋼管の配置方向に連続する面状の吸出し防止部材であってもよい。
面状の吸出し防止部材としては、例えば、吸い出し防止用のシートや金網などを使用することができる。この場合、吸出し防止部材は面状であり、可撓性を有しているので、鋼管に接するようにして配置し、当該面状の吸出し防止部材の所定箇所を鋼管に固定するのが好ましい。また、吸出し防止用のシートは、廃棄物処分場等のように止水性が要求される場合は、遮水性のシートを使用し、水の流れを止めてはいけない場合は透水性のシートを用いる。
このような構成によれば、土留め用部材が面状の吸出し防止部材であるので、鋼製連続壁やコンクリート製の連続壁に比して、施工が容易であるとともにコストを軽減できる。
また、本発明の前記構成において、前記土留め用部材が、隣り合う鋼管間に設けられた単独部材であってもよい。
この場合、単独部材は鋼管の長手方向に沿う長尺な部材とし、隣り合う鋼管に接するか、僅かな隙間を持って配置するのが好ましい。
このような構成によれば、土留め用部材が、隣り合う鋼管間に設けられた単独部材であるので、鋼製連続壁やコンクリート製の連続壁に比して、施工が容易であるとともにコストを軽減できる。
また、本発明の前記構成において、前記土留め用部材としての単独部材が鋼製またはコンクリート製であってもよい。
鋼製の単独部材としては、例えば、L形鋼やH形鋼等の形鋼を使用できる。また、コンクリート製の単独部材としては、例えば、コンクリート杭を使用できる。
このような構成によれば、土留め用部材としての単独部材が鋼製またはコンクリート製であるので、当該単独部材によって、隣り合う鋼管の隙間からの土砂の吸い出しを防止できるとともに、土圧にも十分耐え得るものとなる。
また、本発明の前記構成において、前記土留め用部材としての鋼製の単独部材に防食層が設けられていてもよい。
このような構成によれば、鋼製の単独部材に防食層が設けられているので、鋼材の減厚による断面性能の低下を回避でき、土留め用部材としての単独部材に構造性能を期待することができる。
本発明によれば、防食層の剥離、剥離によってその部分の腐食が進行することに起因する鋼材の減厚による断面性能の低下、鋼材どうしの接触による摩擦熱の防食層への影響を防止できるとともに、施工も容易となる。したがって、供用期間中の維持管理費用の削減、構造物の長寿命化に効果がある。
本発明に係る壁体構造の第1の実施の形態を示すもので、当該壁体構造の平断面図である。 同、壁体構想の側断面図である。 同、他の壁体構造の側断面図である。 本発明に係る壁体構造の第2の実施の形態を示す平断面図である。 本発明に係る壁体構造の第3の実施の形態を示す平断面図である。 本発明に係る壁体構造の第4の実施の形態を示す平断面図である。 本発明に係る壁体構造の第5の実施の形態を示す平断面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1および図2は、本発明の第1の実施の形態を示す図であり、図1は壁体構造の平断面図、図2は壁体構造の側断面図である。
図1において符号1は鋼管、符号2は土留め用部材を示す。本実施の形態の壁体構造は、互いに接することなく所定間隔で柱列状に配置された複数の鋼管1…と、隣り合う鋼管1,1の隙間をシールするための土留め用部材2とを備えている。
鋼管1は、円筒状の鋼管杭であり、当該鋼管1には、図2に示すように、その円周方向に亘る防食層3が鋼管1の長手方向の一部、つまり鋼管1の上端部に設けられている。
ここで、本実施の形態では、鋼管1は、港湾等の腐食環境が比較的厳しい場所にほぼ鉛直に打設されている。このような港湾等の海洋環境は鋼材の腐食傾向から、海上大気中部、飛沫帯部、干満帯部、海水中部、海底土中部、背面土中部の6種類に分類される。そして、鋼材の腐食速度は、飛沫帯部が最大で、次いで干満帯部、海水中部、海底土中部の順となっている。
このため、本実施の形態では、腐食速度が速い飛沫帯部および干満帯部に対応する部位、すなわち、鋼管1の上端部に防食層3が設けられている。このように、本実施の形態では鋼管1の上端部のみに防食層3を設けたが、海水中部、海底土中部に対応する部位にも防食層3を設けてもよい。つまり、鋼管1の全長に亘って防食層3を設けてもよい。
前記防食層3を鋼管2の外周面に設ける方法としては、大きく分けて、工場等で予め防食層3を被覆する方法と、現地にて防食層3を被覆する方法の二通りがある。この二通りの方法を表1に示す。
Figure 2015137510
表1において、(1)塗装は、工場設備により各種塗料を鋼管外周面に塗装するもの、(2)ポリエチレン被覆は、工場設備によりポリエチレン樹脂を鋼管外周面に塗覆したもの、(3)ウレタンエラストマー被覆は、工場設備によりウレタンエラストマー(ポリウレタン樹脂)を鋼管外周面に塗覆したもの、(4)超厚膜エポキシ樹脂系被覆は、工場設備により、二液混合硬化型のエポキシ樹脂被覆材を鋼管外周面に1〜3mm程度の膜厚に塗覆したものである。
また、(5)ペトロラタム被覆および(6)モルタル被覆は、現地でペトロラタムやモルタルを金属カバーやFRPカバーで被覆する構造である。つまり、鋼管の打設前に、当該鋼管の外周面にペトロラタムやモルタルを巻き付けるようにして設け、当該ペトロラタムやモルタルを、両端部にフランジ付きの金属カバーやFRPカバーで巻くようにして被覆するとともに、当該カバーの両端部をスタッドやボルトによって結合することによって、予め防食層を鋼管に設けることも可能である。鋼管の打設後でも、埋土前で鋼管が海上で自立していて、離散的に配置されている状況であれば、鋼管にスタッド等を取り付けることなくカバーを鋼管の外周面に設けることが可能になる。
このようにして上端部に防食層3が設けられた鋼管1は、互いに接することなく柱列状に配置されており、これら鋼管1…の背面側(陸側)に土留め用部材2が設けられている。
この土留め用部材2は、鋼管1の配置方向(図1において左右方向)に連続する鋼製連続壁2である。この鋼製連続壁2は、複数のハット形の鋼矢板4を接続することによって構成されている。鋼矢板4は、ウェブ4aと、ウェブ4aの両側縁からそれぞれ互いに広がるように斜めに延出する一対のフランジ4bと、左右のフランジ4bの先端からウェブ4aと平行に左右に延出する一対のアーム4cと、アーム4cの先端に設けられた継手4dとを備えている。
そして、複数の鋼矢板4は、その継手4dどうしを連結して一列に並べられるとともに、地盤にほぼ鉛直に打設されることによって、鋼製連続壁2を構築した状態になっている。
また、本実施の形態では、図2に示すように、鋼管1の長さより鋼製連続壁2の上下の長さが短くなっている。すなわち、鋼管1が構造部材であるため、土留め部材2である鋼製連続壁2は、壁面からの土砂の漏れ出し防止、底面からの土砂の吸出し防止、底面の安定(ボイリング・ヒービングなど)に必要な根入れ長等のことを考慮した上で最低限の根入れ長さ(深さ)となっており、鋼管1の下端より上方に位置している。また、鋼製連続壁2は根入れすることなく、海底面に着底させるだけでもよい。
また、生物などの生態環境のため、水の流れを止めてはいけない場合には土留め部材2である鋼製連続壁2の上下の長さを短くして当該鋼製連続壁2の下端より下方の部分から水の流れを確保している。
なお、鋼管1の上端と鋼製連続壁2の上端とは、コーピングコンクリート5によって連結されている。
また、本実施の形態では、図3に示すように、鋼管1の長さより鋼製連続壁2の上下の長さが長くなっていてもよい。つまり、止水のために、例えば遮水層まで鋼製連続壁2を根入れすることが必要な場合には、鋼管1と鋼製連続壁2の両方を長くする必要はなく、土留め用部材2としての鋼製連続壁2のみを長くして遮水層まで根入れさせればよい。
このように、構造上は鋼製連続壁2の根入れが必要なくても、廃棄物処分場などで止水性が必要な場合や底面の安定(ボイリング・ヒービングなど)対策などで、土留め部材2としての鋼製連続壁2の上下の長さを長くし、その下端部を鋼管1の下端より下方に突出されている。この場合、鋼管1の下端より突出している鋼製連続壁2の下端部が止水のために必要な範囲となる。
本実施の形態によれば、互いに接することなく柱列状に配置された複数の鋼管1に、その円周方向に亘る防食層3が鋼管1の上端部、すなわち腐食速度が速い飛沫帯部および干満帯部に対応する部位に設けられているので、この部位においていわゆる塗装端面を無くすることがきる。したがって、この塗装端面からの防食層3の剥離や、漂流物の衝突あるいは無防食部分の腐食による防食層3の剥離を防止できるとともに鋼材の減厚による断面性能の低下を回避できる。
また、鋼管1は継手構造をもたず、互いに接することなく配置されているので、施工時に鋼材どうしの接触により防食層3に傷が付く可能性を低減することができ、継手部分の鋼材どうしの接触による摩擦熱が防食層3へ影響することも無くなる。
また、鋼管1は継手構造を持たないが、隣り合う鋼管1,1の隙間は土留め用部材2である鋼製連続壁2によってシールされているので、前記隙間からの土砂の吸い出しを防止できる。
また、鋼製連続壁2に作用する土圧を地盤に打設された鋼管1によって受けることができるので、鋼製連続壁1が土圧によって倒れたり、変形するのを防止できる。
さらに、従来と異なり継手構造を持たないので、当該継手構造への防食層が不要となるとともに、従来のような連結部カバーも必要ないので、施工が従来に比して容易となる。
なお、本実施の形態では、鋼管1のみに防食層3を設けたが、これに加えて、鋼製連続壁2に防食層を設けてもよい。この場合、鋼製連続壁3に防食層が設けられているので、鋼材の減厚を回避し、腐食により部材に孔が空くなどの、土留め機能を果たせなくなる可能性を低減でき、土留め部材の耐用年数を増加させることが可能になる。
なお、防食層は、鋼製連続壁2の鋼管1側を向く表面、つまり海側の表面に設ける。
また、本実施の形態では、土留め用部材2が鋼製連続壁2であったが、これに代えてコンクリート製の連続壁であってもよい。コンクリート製の連続壁であれば、その表面に防食層を設ける必要がない。
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態を示す平断面図である。本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、土留め用部材が第1の実施の形態では鋼製連続壁2であったのに対し、本実施の形態では土留め用部材が面状の吸出し防止部材12である点である。
その他の構成は第1の実施の形態と同様であるので、共通部分には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
図4に示すように、本実施の形態では土留め用部材が、鋼管1の配置方向(図4において左右方向)に連続する面状の吸出し防止部材12となっている。
面状の吸出し防止部材12としては、例えば、吸い出し防止用のシートや金網、さらには遮水シートなどを使用することができる。
吸出し防止用のシートとしては、例えば、ポリエステル繊維をニードルパンチおよびバインダー加工した土木工事用短繊維不織布を使用することができる。このシートは、吸出し防止・洗掘防止材などとして好適である。
このような吸出し防止部材12は面状でありかつ可撓性を有しているので、鋼管1に接するようにして配置し、当該面状の吸出し防止部材12の所定箇所が鋼管1に固定されている。
吸出し防止部材12を鋼管1に固定する場合、当該吸出し防止部材12が鋼管1に接触する部分で鋼管1に適宜の固定手段を用いて固定すればよいが、全ての鋼管1に固定しなくてもよく、所定の鋼管1だけに固定してもよい。
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる他、土留め用部材が面状の吸出し防止部材12であるので、鋼製連続壁2やコンクリート製の連続壁に比して、施工が容易であるとともにコストを軽減できるという利点がある。
(第3の実施の形態)
図5は、本発明の第3の実施の形態を示す平断面図である。本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、土留め用部材が第1の実施の形態では鋼製連続壁2であったのに対し、本実施の形態では土留め用部材が隣り合う鋼管1,1間に設けられた鋼製の単独部材15である点である。
その他の構成は第1の実施の形態と同様であるので、共通部分には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
図5に示すように、単独部材15はL形鋼によって構成されており、この単独部材15は隣り合う鋼管1,1間に配置されている。また、単独部材15は鋼管1とほぼ平行に配置され、ほぼ鉛直に地盤に打設されている。L形の単独部材15の一方の片は一方の鋼管1に接しており、他方の片は他方の鋼管1に接している。なお、単独部材15は、隣り合う鋼管1,1に僅かな隙間を持って配置されていてもよい。
また、単独部材15は、第1の実施の形態の鋼製連続壁2と同様に、鋼管1の長さより上下の長さが短くなっていてもよい。
第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる他、土留め用部材が、隣り合う鋼管1,1間に設けられたL形の単独部材15であるので、鋼製連続壁2やコンクリート製の連続壁に比して、施工が容易であるとともにコストを軽減できる。
また、単独部材15が鋼製であるので、当該単独部材15によって、隣り合う鋼管1,1の隙間からの土砂の吸い出しを防止できるとともに、土圧にも十分耐え得るものとなる。
(第4の実施の形態)
図6(a),(b)は、本発明の第4の実施の形態を示す平断面図である。本実施の形態が第3の実施の形態と異なる点は、土留め用部材としての単独部材15が第3の実施の形態ではL形鋼で構成されていたのに対し、本実施の形態ではH形鋼で構成さている点である。
その他の構成は第3の実施の形態と同様であるので、共通部分には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
図6(a),(b)に示すように、単独部材15はL形鋼によって構成されており、この単独部材15は隣り合う鋼管1,1間に配置されている。また、単独部材15は鋼管1とほぼ平行に配置され、ほぼ鉛直に地盤に打設されている。H形の単独部材15は、ウェブ15aと、このウェブ15aの両端部に設けられたフランジ15b,15bとを有している。
そして、当該単独部材15は、図6(a)に示すように、その一方のフランジ15bの一方の端部が一方の鋼管1に接しており、他方の端部が他方の鋼管1に接している場合と、図6(b)に示すように、一方のフランジ15bの一方の端部が一方の鋼管1に接しており、他方のフランジ15bの一方の端部が他方の鋼管1に接している場合とがある。
なお、単独部材15は、隣り合う鋼管1,1に僅かな隙間を持って配置されていてもよい。
また、単独部材15は、第1の実施の形態の鋼製連続壁2と同様に、鋼管1の長さより上下の長さが短くなっていてもよい。
第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる他、土留め用部材が、隣り合う鋼管1,1間に設けられたH形の単独部材15であるので、鋼製連続壁2やコンクリート製の連続壁に比して、施工が容易であるとともにコストを軽減できる。
また、単独部材15が鋼製であるので、当該単独部材15によって、隣り合う鋼管1,1の隙間からの土砂の吸い出しを防止できるとともに、土圧にも十分耐え得るものとなる。
なお、第3および第4の実施の形態では、鋼管1のみに防食層3を設けたが、これに加えて、L形鋼やH形鋼によって構成された単独部材15に防食層を設けてもよい。この場合、単独部材15に防食層が設けられているので、鋼材の減厚による断面性能の低下を回避し、腐食により部材に孔が空くなどの、土留め機能を果たせなくなる可能性を低減でき、土留め部材としての単独部材15の耐用年数を増加させることが可能になる。
(第5の実施の形態)
図7は、本発明の第5の実施の形態を示す平断面図である。本実施の形態が第3および第4の実施の形態と異なる点は、土留め用部材としての単独部材15が第3の実施の形態ではL形鋼で構成され、第4の実施の形態ではH形鋼で構成されていたのに対し、本実施の形態では土留め用部材としての単独部材16がコンクリート杭で構成さている点である。
その他の構成は第3および第4の実施の形態と同様であるので、共通部分には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
図7に示すように、単独部材16は円筒状のコンクリート杭よって構成されており、この単独部材16は隣り合う鋼管1,1間に配置されている。また、単独部材16は鋼管1とほぼ平行に配置され、ほぼ鉛直に地盤に打設されている。円筒状の単独部材16の外周面はそれぞれ隣り合う鋼管1,1に接している。なお、単独部材16は、隣り合う鋼管1,1に僅かな隙間を持って配置されていてもよい。
また、単独部材16は、第1の実施の形態の鋼製連続壁2と同様に、鋼管1の長さより上下の長さが短くなっていてもよい。
第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる他、土留め用部材が、隣り合う鋼管1,1間に設けられたコンクリート製の単独部材16であるので、鋼製連続壁2やコンクリート製の連続壁に比して、施工が容易であるとともにコストを軽減できる。
また、単独部材16によって、隣り合う鋼管1,1の隙間からの土砂の吸い出しを防止できるとともに、土圧にも十分耐え得るものとなる。
なお、単独部材16はコンクリート杭であるので、単独部材15が鋼製である場合と異なり、当該単独部材16には防食層を設ける必要がない。
なお、第3〜第5の実施の形態では、鋼管1,1間に鋼製の単独部材15やコンクリート製の単独部材16を土留め用部材として使用したが、埋土で護岸を構築する場合等には、土砂が鋼管1,1間の隙間から漏れ出さないように、土留め部材としての単独部材15,16の代わりに、当該隙間に砕石やその他の適宜の詰め物を充填すればよい。
1 鋼管
2 土留め用部材(鋼製連続壁)
3 防食層
4 鋼矢板
12 吸出し防止部材
15 鋼製の単独部材
16 コンクリート製の単独部材

Claims (7)

  1. 互いに接することなく柱列状に配置された複数の鋼管と、隣り合う前記鋼管の隙間をシールするための土留め用部材とを備えた壁体構造であって、
    前記鋼管に、当該鋼管の円周方向に亘る防食層が前記鋼管の長手方向の少なくとも一部に設けられていることを特徴とする壁体構造。
  2. 前記土留め用部材が前記鋼管の配置方向に連続する鋼製連続壁またはコンクリート製の連続壁であることを特徴とする請求項1に記載の壁体構造。
  3. 前記鋼製連続壁に防食層が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の壁体構造。
  4. 前記土留め用部材が前記鋼管の配置方向に連続する面状の吸出し防止部材であることを特徴とする請求項1に記載の壁体構造。
  5. 前記土留め用部材が、隣り合う鋼管間に設けられた単独部材であることを特徴とする請求項1に記載の壁体構造。
  6. 前記土留め用部材としての単独部材が、鋼製またはコンクリート製であることを特徴とする請求項5に記載の壁体構造。
  7. 前記土留め用部材としての鋼製の単独部材に防食層が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の壁体構造。
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