JP5653868B2 - 構造物目地の止水構造および止水方法 - Google Patents

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本発明は、鉄筋コンクリートあるいは鋼製のプレキャスト品を据付ける重力式の岸壁や護岸の構造物もしくはその他の構造物の目地の止水構造および止水方法に関するものである。
例えば、岸壁や護岸の構造物は水中に設置する必要があることから、現地でコンクリートを打設して製作することが難しいため、鉄筋コンクリートあるいは鋼製のプレキャスト品を揚重機で据付けることが多い。
重力式護岸は、図4、図5に示すように、海2の岸部分に、基礎捨石マウンド3を設け、この基礎捨石マウンド3上にケーソン1、1を並べて形成し、基礎捨石マウンド3の海側の上面は、アスファルトマットによる被覆材4で覆って先掘防止を行い、ケーソン1、1の陸側には、割石等の裏込材5を充填し、さらにその上が裏埋め土6を施す。
また、図示は省略するが、ケーソン1、1内には詰め砂が充填され、ケーソン1、1上には、エプロン舗装7が施される。
このような重力式護岸では、ケーソン1、1同士は据付精度の問題から10cm程度の隙間(目地)をあけて据付けられ、この目地部分に間隙が生じるとこの間隙から海水が陸側に流入するとともに、陸側から海側に土砂が吸い出されるように漏出する場合があり、土砂が大量に漏出した場合には、陸側に陥没aが生じる危険もある。
そこで、従来ケーソン1、1同士の間の目地部分に、目地材8を配置して上記目地部分を閉塞するとともに、ケーソン1、1の陸側側面及び上面を防砂板9で覆い、さらに、ケーソン1、1の陸側の裏込材5の上を吸出し防止シート10で覆うようにしていた。
ところが設置後数十年が経過すると、構造物の沈下や吸出し防止シート10の劣化などによってシートに開口が発生し土砂が吸い出されて地表面が沈下するなどして、補修を余儀なくされることが多い。
また、背面側から吸出し防止シート10を貼りかえるためには、構造物下部までの水中掘削と土留を伴い、設置も水中になるなど技術的な課題が多い。
一方、地上から薬液注入で補修する方法は、深さによる問題は少ない。しかし、注入材が目地から水中に漏洩する恐れがあり目地の構造物前面側から止水措置を講じなければならない。
下記特許文献は重量式構造物同士の間隙(目地)が重量式構造物同士の不等沈下等によりさらに拡がった場合に、拡径目地部材が追従して拡がり、目地部分が拡がっても目地部分を閉塞した状態に保つことができ、従って、補修後、さらに目地部分の幅が拡がっても再補修をする必要がないものとして提案されたものである。
特開平10−311015号公報
この特許文献1は、図6に示すように、目地材(重力式護岸補修用目地材)20として、耐候性ゴム製の管体21をケーソン1同士の間の目地部分に上下方向に沿って挿入する。次いで、ボルト22aとナット22bとからなる拡径部材により、管体21をケーソン1の並び方向に略直交する方向から締め付ける。
これによって、管体21が弾性変形し、管体21の上記並び方向に沿った径が拡がり、ケーソン1の間の目地部分を閉塞できる。また、管体21を十分に締め付ければ、補修後、ケーソン1の間隔がさらに拡がっても、管体21がそれに追従して拡がるので、再補修することなく対応することができる。
前記特許文献1では、耐候性ゴム製の管体21はケーソン1同士の間の目地部分に上下方向に沿って挿入されるが、その挿入方法については何ら考慮されていない。
また、構造物目地の隙間からの注入材や汚濁水の漏えいを防止するためにはわずかな隙間までふさぐ必要があるが、管体21の弾性変形が偏るとそれができないおそれがある。
さらに、構造物前面には波浪による波の力が発生するため、取り付けた部材が確実に固定される必要があるが、それがなされていない。
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、構造物前面側目地からの止水で注入材や汚濁水などを漏洩させないため、構造物同士の間の目地部分にボルトの締め付けで機械的に楕円状に変形させることができる弾性部材からなる管体を目地材として挿入するのに、密着性が優れているため止水効果が高く、脱落や剥離の恐れもない構造物目地の止水構造および止水方法を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明は、構造物目地の止水構造として、ボルトを貫通してワッシャー、ナット等を取り付けた弾性部材からなる管体を目地材とし、この目地材を構造物の目地前を横切るように構造物同士に架け渡して止める固定用バー状部材に前記ボルトを挿入しナットで固定して取り付け、管体の前記ボルトの直角方向に貫通孔をあけ、この貫通孔を通して管体を細長く変形させることができる紐もしくはバンドを貫通して縛ることができるようにしたこと、および、固定用バー状部材は固定用アングルであり、固定用アングルに形成するボルト孔はこれを長孔としてアンカーボルトを通し構造物に固定すること、さらに、紐もしくはバンドには、樹脂製インシュロック(結束バンド:ヘラマンタイトン株式会社の登録商標)を使用することを要旨とするものである。
また、構造物目地の止水方法としては、目地材となる弾性部材からなる管体に貫通孔をあけ、ボルトを通してワッシャー、ナット等を取り付け、ボルト直角方向にも貫通孔をあけ、この穴を通して表側に向かって紐またはバンドで縛ってパイプを細長く変形させ、ボルトを固定用バー状部材の穴に挿入しナットで固定し、管体の長方向に適宜間隔でこの固定用バー状部材を取り付け、管体を構造物の目地前面側から差し込み、固定用バー状部材をアンカーボルトで構造物に固定し、前面側で結んでいた紐またはバンドの縛りを解除し、管体を貫通させていたボルトのナットを締め付けることで管体を目地壁面に押つける方向に変形させることを要旨とするものである。
発明によれば、弾性部材からなる管体に貫通孔をあけ、ボルトを締めることで機械的に管体を楕円状に変形させ、壁面との隙間をなくし密着性を向上させ、止水効果が高く保つことができる。
さらに、弾性部材からなる管体に固定された固定用バー状部材を構造物に取り付けることで目地材料を固定することができる。
性部材からなる管体のボルト直角方向にも貫通孔をあけ、この貫通孔を通して表側に向かって紐もしくはバンドを縛って弾性部材からなる管体を細長く変形させることで、構造物の目地に挿入し易いものとすることができる。
以上述べたように本発明の構造物目地の止水構造および止水方法は、構造物前面側目地からの止水で注入材や汚濁水などを水中に漏洩させないため、構造物同士の間の目地部分にボルトの締め付けで機械的に楕円状に変形させることができる弾性部材からなる管体を目地材として挿入するので、目地に対してわずかな隙間までふさぐことができ、密着性が優れているため止水効果が高く、さらに、構造物に固定して取り付けるので、脱落や剥離の恐れがないものである。
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の構造物目地の止水構造で、構造物としては岸壁・護岸コンクリート構造物の場合のナット締め付け前の平面図、図2は同上正面図、図3は同上ナット締め付け後の平面図で、図中11はケーソン等の構造物、12は構造物11、11間の目地で、目地12に挿入する目地材として、弾性部材からなる管体であるゴムパイプ13を使用する。ゴムパイプ13は一例としてウオーターホースであり、ワイヤー補強を施した耐候性ゴムからなり、弾性変形可能なものであるとともに、十分な強度と耐久性を有するものである。
ゴムパイプ13に横向きの貫通孔をあけ、ゴムパイプ13の長さ方向にフラットバー23を沿わせ、ボルト14を通してワッシャー15、ナット16を取り付ける。前面側はワッシャー15のみとする。フラットバー23は前後でゴムパイプ13を挟み込むように介在される。また、後面側はワッシャー15を省略し、ナット16をフラットバー23に溶接して、供回りを防止するようにしてもよい。
ボルト14の直角方向にもゴムパイプ13に貫通孔をあけ、この貫通孔を通して前側(表側)に向かって紐17もしくはバンドを巻回し、この紐17もしくはバンドで縛ってゴムパイプ13を細長く変形させることができるようにする。なお、紐17もしくはバンドは前側(表側)のフラットバー23の下側を通す。
この紐17もしくはバンドには、樹脂製インシュロック(結束バンド:ヘラマンタイトン株式会社の登録商標)などの使用が好適である。使用される材質は66ナイロン(PA66)が一般的ですが、46ナイロン(PA46)、ふっ素樹脂(ETFE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアセタール(POM)等の樹脂でも成形されている。
ボルト14を固定用バー状部材としての固定用アングル18のボルト穴に挿入し、ナット16で固定し、固定用アングル18をゴムパイプ13に横向きに直交するように取り付ける。その際、塩ビパイプ19によるスペーサーをフラットバー23の上側に介在させた。
前記固定用アングル18はゴムパイプ13に延長方向25〜50cm間隔で取り付けてゆく。また、固定用アングル18に形成するボルト孔25は、これを長孔としてアンカーボルト24を通し、構造物11、11の沈下等に対応できるようにする。
次に、このようなゴムパイプ13を加工した目地材の使用方法を説明する。目地材を構造物11の目地12の前面側から差し込んでゆく。その際、ゴムパイプ13は前側(表側)半分を紐17もしくはバンドで縛って細長く変形させてあり、目地12にスムーズに差し込むことができる。
固定用アングル18は構造物11の目地12の前側を横切るように構造物11、11同士に架け渡されるが、該固定用アングル18をアンカーボルト24(カットアンカー)で構造物11、11に固定する。
このようにして、ゴムパイプ13は固定用アングル18で構造物11に固定され、また、塩ビパイプ19により固定用アングル18から少し離され、目地12の奥位置に収まる。
前側(表側)半分を紐17もしくはバンドをカッターナイフ等で切断する。
この紐17もしくはバンドの切断撤去後、前側のナット16を回動して、ゴムパイプ13を貫通させていたボルト14を締め付けることでゴムパイプ13を目地壁面に押つける方向に変形させる。このように、固定用アングル18で固定しておかないと、ボルト14の締め付けで、うまくゴムパイプ13を拡径させることができない。
以上のようにして、ゴムパイプ13は横方向に膨らみ、止水が行われる。
なお、取外しは逆の手順で行う。
以上実施形態としては、構造物としては岸壁・護岸コンクリート構造物の場合について説明したが、岸壁・護岸以外のコンクリート構造物もしくは鋼製等のコンクリート以外の構造物の目地にも本発明は適用可能なものである。
本発明の岸壁・護岸コンクリート構造物目地の止水構造でナット締め付け前の平面図である。 本発明の岸壁・護岸コンクリート構造物目地の止水構造でナット締め付け前の正面図である。 本発明の岸壁・護岸コンクリート構造物目地の止水構造でナット締め付け後の平面図である。 ケーソンによる重力式護岸の縦断側面図である。 ケーソンによる重力式護岸の斜視図である。 従来例を示す縦断側面図である。
1…ケーソン 2…海
3…基礎捨石マウンド 4…被覆材
5…裏込材 6…裏埋め土
7…エプロン舗装 8…目地材
9…防砂板 10…吸出し防止シート
11…構造物 12…目地
13…ゴムパイプ 14…ボルト
15…ワッシャー 16…ナット
17…紐 18…固定用アングル
19…塩ビパイプ 20…目地材(重力式護岸補修用目地材)
21…管体 22a…ボルト
22b…ナット 23…フラットバー
24…アンカーボルト 25…ボルト孔

Claims (4)

  1. ボルトを貫通してワッシャー、ナット等を取り付けた弾性部材からなる管体を目地材とし、この目地材を構造物の目地前を横切るように構造物同士に架け渡して止める固定用バー状部材に前記ボルトを挿入しナットで固定して取り付け、管体の前記ボルトの直角方向に貫通孔をあけ、この貫通孔を通して管体を細長く変形させることができる紐もしくはバンドを前記ボルトの直角方向に貫通して縛ることができるようにしたことを特徴とする構造物目地の止水構造。
  2. 固定用バー状部材は固定用アングルであり、固定用アングルに形成するボルト孔はこれを長孔としてアンカーボルトを通し構造物に固定する請求項1記載の構造物目地の止水構造。
  3. 紐もしくはバンドには、樹脂製インシュロック(結束バンド:ヘラマンタイトン株式会社の登録商標)を使用する請求項1または請求項2記載の構造物目地の止水構造。
  4. 目地材となる弾性部材からなる管体に貫通孔をあけ、ボルトを通してワッシャー、ナット等を取り付け、ボルト直角方向にも貫通孔をあけ、この穴を通して前記ボルトの直角方向に貫通して表側に向かって紐またはバンドで縛ってパイプを細長く変形させ、ボルトを固定用バー状部材の穴に挿入しナットで固定し、管体の長方向に適宜間隔でこの固定用バー状部材を取り付け、管体を構造物の目地前面側から差し込み、固定用バー状部材をアンカーボルトで構造物に固定し、前面側で結んでいた紐またはバンドの縛りを解除し、管体を貫通させていたボルトのナットを締め付けることで管体を目地壁面に押つける方向に変形させることを特徴とした構造物目地の止水方法。
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