JP2015134873A - アニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥固形物の製造方法 - Google Patents
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水に分散している状態(湿潤状態)のアニオン性CNFを乾燥させて固形物は、微細なセルロース繊維間に水素結合が形成されるため、この乾燥固形物に水を加えても、乾燥前(湿潤状態)の溶解性、分散性、沈降度、及び粘度などの諸特性が復元しない。このため、アニオン変性CNFは水に分散している状態(湿潤状態)で製造され、乾燥させずに湿潤状態のままで各種用途に使用されることが通常行われている。
しかしながら、この湿潤状態のアニオン性CNFを安定させるためには、アニオン性CNFに対して数倍〜数百倍の重量の水が必要であり、保存スペースの確保、保存及び輸送コストの増大等、種々の問題点がある。
[1] アニオン変性セルロースナノファイバーの水性懸濁液のpHを9〜11に調整した後に、脱水・乾燥させることを特徴とするアニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥固形物の製造方法。
[2] 前記アニオン変性セルロースナノファイバーが、アニオン変性セルロースナノファイバーの絶乾重量に対して、カルボキシル基の量が0.6mmol/g〜2.0mmol/gである酸化セルロースナノファイバーであることを特徴とする請求項1に記載のアニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥固形物の製造方法。
[3] 前記アニオン変性セルロースナノファイバーが、アニオン変性セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01〜0.50であるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーであることを特徴とする請求項1に記載のアニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥固形物の製造方法。
[4] [1]〜[3]のいずれか一項に記載の方法により製造されるアニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥固形物。
本発明において、アニオン変性セルロースナノファイバーの水性懸濁液のpHを9〜11に調整するために用いる薬品は特に限定されるものではなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、アンモニア、水酸化銅、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウムから選ばれた塩基性無機化合物、あるいはアルギニン、リジン、ヒスチジン及びオルニチンから選ばれた塩基性有機化合物などを例示することができる。
本発明において、アニオン変性セルロースナノファイバー(アニオン変性CNF)は、繊維幅が4〜500nm程度、アスペクト比が100以上の微細繊維であり、カルボキシル化したセルロース、カルボキシメチル化したセルロースなどを解繊することですることによって得ることができる。
本発明において、セルロース原料としては、植物(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等を起源とするものが知られており、本発明ではそのいずれも使用できる。好ましくは植物又は微生物由来のセルロース繊維であり、より好ましくは植物由来のセルロース繊維である。
本発明において、セルロース原料のカルボキシメチル化は公知の方法を用いて行うことができ、特に限定されるものではないが、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度が0.01〜0.50となるように調整することが好ましい。その一例として次のような製造方法を挙げることができるが、従来公知の方法で合成してもよく、市販品を使用してもよい。セルロースを発底原料にし、溶媒に3〜20重量倍の水及び/又は低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の単独、又は2種以上の混合媒体を使用する。なお、低級アルコールの混合割合は、60〜95重量%である。マーセル化剤としては、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5〜20倍モルの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用する。発底原料と溶媒、マーセル化剤を混合し、反応温度0〜70℃、好ましくは10〜60℃、かつ反応時間15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間、マーセル化処理を行う。その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05〜10.0倍モル添加し、反応温度30〜90℃、好ましくは40〜80℃、かつ反応時間30分〜10時間、好ましくは1時間〜4時間、エーテル化反応を行う。
本発明において、セルロース原料のカルボキシル化(酸化)は公知の方法を用いて行うことができ、特に限定されるものではないが、アニオン変性セルロースナノファイバーの絶乾重量に対して、カルボキシル基の量が0.6mmol/g〜2.0mmol/gになるように調整することが好ましい。
本発明において、解繊する装置は特に限定されないが、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの装置を用いて前記水分散体に強力なせん断力を印加することが好ましい。特に、効率よく解繊するには、前記水分散体に50MPa以上の圧力を印加し、かつ強力なせん断力を印加できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザを用いることが好ましい。前記圧力は、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。また、高圧ホモジナイザでの解繊・分散処理に先立って、必要に応じて、高速せん断ミキサーなどの公知の混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて、上記のアニオン変性CNFに予備処理を施すことも可能である。
本発明方法において、脱水・乾燥方法としては、従来公知のものであれば良く、例えば、スプレイドライ、圧搾、風乾、熱風乾燥、及び真空乾燥を挙げることができる。本発明方法で具体的に用いる乾燥装置の例としては、以下のようなものである。すなわち、連続式のトンネル乾燥装置、バンド乾燥装置、縦型乾燥装置、垂直ターボ乾燥装置、多重段円板乾燥装置、通気乾燥装置、回転乾燥装置、気流乾燥装置、スプレードライヤ乾燥装置、噴霧乾燥装置、円筒乾燥装置、ドラム乾燥装置、スクリューコンベア乾燥装置、加熱管付回転乾燥装置、振動輸送乾燥装置等、回分式の箱型乾燥装置、通気乾燥装置、真空箱型乾燥装置、及び撹拌乾燥装置等の乾燥装置を単独で又は2つ以上組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、ドラム乾燥装置を用いることが、均一に被乾燥物に熱エネルギーを直接供給するためエネルギー効率の点から好ましい。また、ドラム乾燥装置は必要以上に熱を加えずに、直ちに乾燥物を回収できる点からも好ましい。
<カルボキシル化(TEMPO酸化)CNFの製造>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)780mgと臭化ナトリウム75.5gを溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反
応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。
上記の工程で得られた酸化パルプを水で1.0%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、アニオン変性セルロースナノファイバー分散液を得た。得られた繊維は、平均繊維径が40nm、アスペクト比が150であった。
酸化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出する:
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース又はセルロースナノファイバー〕=a〔ml〕×0.05/酸化セルロース質量〔g〕。
パルプを混ぜることが出来る撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で111g加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分攪拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算)添加した。30分撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシルメチル化したパルプを得た。その後、カルボキシメチル化したパルプを水で固形分1%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、150MPaの圧力で5回処理することにより解繊し、カルボキシメチル化セルロース繊維とした。得られた繊維は、平均繊維径が50nm、アスペクト比が120であった。
カルボキシメチル化セルロース繊維(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(CM化セルロース)を水素型CM化セルロースにした。水素型CM化セルロース(絶乾)を1.5〜2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。80%メタノール15mLで水素型CM化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうした。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定した。カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出した:
A=[(100×F’−(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型CM化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:水素型CM化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F’:0.1NのH2SO4のファクター
F:0.1NのNaOHのファクター
カルボキシメチル化セルロース繊維の平均繊維径および平均繊維長は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、ランダムに選んだ200本の繊維について解析した。なおアスペクト比は下記の式により算出した:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
上記アニオン変性CNF(カルボキシル基量:1.6mmol/g、平均繊維径:40nm、アスペクト比:150)の0.7重量%水性懸濁液をTKホモミキサー(12,000rpm)で60分間攪拌した。この水性懸濁液に、水酸化ナトリウム水溶液0.5%を加え、pHを9に調整した後、蒸気圧力0.5MPa.G、ドラム回転数2rpmのドラム乾燥機D0405(カツラギ工業)で乾燥し、水分量5重量%のアニオン変性CNFの乾燥固形物を得た。
アニオン変性CNF(固形分0.7%、25℃)のB型粘度を測定した。なおB型粘度の測定条件は、回転数30rpm、3分とした。
(透明度の測定)
アニオン変性CNF分散液(固形分0.1%)の透明度(660nm 光の透過率)をUV分光光度計 U−3000(日立ハイテク)を用いて測定した。
B型粘度、透明度の復元率は以下の式で算出した。
復元率(%)=(乾燥前の粘度あるいは透明度)/(再分散後の粘度あるいは透明度)×100
上記アニオン変性CNFをCM化CNF(カルボキシメチル置換度:0.25、平均繊維径:50nm、アスペクト比:120)を用いた以外は比較例1と同様に行った。
pH調整を行わなかった以外は実施例1と同様にして行ったが、水性懸濁液にアニオン変性CNFの凝集物の沈降物が著しく発生したため、評価することができなかった。
pH調整を行わなかった以外は実施例2と同様にして行った。
Claims (4)
- アニオン変性セルロースナノファイバーの水性懸濁液のpHを9〜11に調整した後に、脱水・乾燥させることを特徴とするアニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥固形物の製造方法。
- 前記アニオン変性セルロースナノファイバーが、アニオン変性セルロースナノファイバーの絶乾重量に対して、カルボキシル基の量が0.6mmol/g〜2.0mmol/gである酸化セルロースナノファイバーであることを特徴とする請求項1に記載のアニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥固形物の製造方法。
- 前記アニオン変性セルロースナノファイバーが、アニオン変性セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01〜0.50であるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーであることを特徴とする請求項1に記載のアニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥固形物の製造方法。
- 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の方法により製造されるアニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥固形物。
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