JP2015128776A - 連続鋳造用鋳型 - Google Patents
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Abstract
Description
この鋳造した鋳片は更に、鋳造方向下流へと搬送され切断されてスラブとなり、このスラブを圧延機によって圧延している。
そこで、例えば、特許文献1に記載の連続鋳造用鋳型(インゴットモールド)が提案されている。具体的には、鋳型壁の各内側角部に、直角三角形の斜辺により形成される突出部(ベベル)を設け、鋳造する鋳片の各角部を鋳造段階で面取り(チャンファー)する鋳型である。
前記鋳型空間部を形成する鋳型壁の四隅の領域の前記短辺に、前記鋳型空間部側へ向けて膨出するチャンファー形成部を形成し、前記鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する前記短辺に、前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる短辺側傾斜部を形成した。
また、鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する短辺に、鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる短辺側傾斜部を形成するので、鋳片と短辺との接触状態を良好にでき、短辺側からの鋳片角部の冷却効率が高められ、鋳片角部に健全な鋳片シェルを形成できる。これにより、ブレークアウトの発生を抑制、更には防止でき、例えば、鋳造作業の中断や長時間の休止、更には設備損傷のような事故等も抑制、更には防止できる。
従って、良好な品質の鋳片を歩留りよく、しかも作業性よく安定に製造できる。
図1(A)、(B)、図2(A)、(B)、図3に示すように、本発明の一実施の形態に係る連続鋳造用鋳型(以下、単に鋳型ともいう)10は、間隔を有して対向配置される一対の短辺11、12と、この短辺11、12を幅方向の両側から挟む一対の長辺13、14とによって囲繞される鋳型空間部15に溶鋼を注入して冷却し鋳片として引き抜くものであり、良好な品質の鋳片を歩留りよく、しかも作業性よく安定に製造可能な鋳型である。以下、詳しく説明する。
また、長辺13、14はそれぞれ、例えば、厚みが5mm以上100mm以下程度、対向配置される一対の短辺11、12の間隔(鋳片と接触する幅)を200mm以上3500mm以下の範囲で変更可能とすることのできる幅を有し、鋳造方向の長さは短辺11、12と同程度である。
短辺11、12の裏面側(バックプレート側)には、多数の導水溝17が鋳造方向(鋳片の引き抜き方向)に設けられている。この多数の導水溝17は、例えば、5mm以上200mm以下程度の範囲内の所定ピッチで、短辺11、12の幅方向に形成されている。
なお、長辺13、14の裏面側にも上記した多数の導水溝が、長辺13、14の幅方向に所定ピッチで、鋳造方向に設けられている。
図1(A)、図3に示すように、鋳型壁18の四隅の領域Rの短辺11、12には、鋳型空間部15側へ向けて膨出するチャンファー形成部19、20が形成されている。
チャンファー形成部19、20はそれぞれ、平断面視して三角形となっており、その斜辺部21、22が、鋳型空間部15に供給される溶鋼(鋳片シェル)との接触面となっている。即ち、チャンファー形成部19、20は、短辺11、12の幅方向端位置へ向けて、その幅が徐々に広がっている。
なお、チャンファー形成部は、鋳型壁の四隅の領域に設ければよいため、長辺に形成することも考えられるが、この場合、一対の短辺の間隔が調整できなくなる。
このように、短辺方向の幅Xを長辺方向の幅Yよりも長くすることで、例えば、短辺の製造時は、チャンファー形成部の加工が容易となり、短辺の搬送時や設置時は、チャンファー形成部の損傷(折れ曲がりや割れ)等を防止でき、短辺の使用時(連続鋳造時)は、短辺に形成した導水溝によるチャンファー形成部の冷却効率の低下を抑制し、その変形や損傷を抑制、更には防止できる。なお、チャンファー形成部が変形したり損傷すると、鋳片角部に目的とする形状の面取り(チャンファー)ができなくなる。
なお、短辺11、12の表面23と、チャンファー形成部19、20の斜辺部21、22との接続部分は、なだらかな曲面(例えば、曲率半径5〜20mm程度)とすることが好ましいが、これに限定されるものではない。
また、チャンファー形成部19、20の斜辺部21、22は、平断面視して直線状としているが、例えば、表面側(溶鋼接触面側)が凹んだ曲線状とすることも可能である。
傾斜部の表面形状は、その幅方向に渡って同一形状となっており、メニスカス位置からの距離の増加に伴って、テーパ率の増加率が小さくなる形状、即ち、マルチテーパとなっている。このマルチテーパとは、鋳型内(メニスカス位置(湯面)から鋳型出口まで)での鋳片の凝固収縮プロフィールを、曲線(複数の関数で規定)及び複数の直線のいずれか一方又は双方を使用して近似し、それを傾斜部の表面形状に適用したものである。
マルチテーパは、下記に示す条件を考慮したり、また実際に測定した結果を基にして、3次元の鋳片の凝固収縮及び鋳型の熱変形を考慮したFEM解析(有限要素法を用いた解析、以下同様)により求めている。具体的には、鋳片の形状、鋳片のサイズ、鋳込み条件(例えば、鋳込み温度、引抜き速度、鋳型冷却条件等)、鋳込み鋼種の成分に由来する物理量(例えば、液相温度、固相温度、変態温度、線膨張率、剛性値等)、鋳型と鋳片との間の接触熱移動量(鋳片の収縮量は、この量に大きく影響される)等を用いる。
なお、上記した接触熱移動量は、例えば、鋳造時に使用する潤滑材の種類や鋳片の表面形状(鋼種、オシレーション条件、潤滑材種類に依存)の違いに大きく影響される。従って、各鋳込み条件ごとの実績の接触熱移動量をできるだけ正確に把握することが、マルチテーパの決定には必要とされる。
対向する短辺11、12の内側断面形状、即ち短辺側傾斜部24の表面23の形状は、その幅方向に渡って同一形状となっており、メニスカス位置からの距離の増加に伴って、テーパ率の増加率が小さくなる形状、即ち、マルチテーパとなっている。
なお、短辺側傾斜部24の表面23の形状は、例えば、上記した特許第4659706号公報に記載の方法で決定できるため、説明を省略する。
なお、マルチテーパとする場合、対向する長辺の内側断面形状、即ち長辺側傾斜部の表面形状を、その幅方向に渡って同一形状とし、メニスカス位置からの距離の増加に伴って、テーパ率の増加率が小さくなる形状とする。なお、長辺側傾斜部の表面形状は、上記した特許第4659706号公報に記載の方法で決定できる。
一方の通水穴25はチャンファー形成部19の裏面側に形成され、他方の通水穴26はチャンファー形成部20の裏面側に形成されている。なお、各通水穴25、26は、短辺11、12の鋳造方向一方側(ここでは、下側)から穴を形成し、その開口部に栓27をすることで形成できる。
通水穴25(通水穴26も同様)の鋳造方向両端部には、短辺11、12の幅方向端部に形成された導水溝17に連通する通水流路28、29が形成され、これにより、導水溝17を流れる冷却水を、通水穴25に連続的に流すことができる。
・通水溝の深さ方向底部が、チャンファー形成部の裏面側に位置するように、短辺の幅方向端部に形成された導水溝から分岐させる(断面V字状)。
・短辺の幅方向両端部に形成された導水溝の深さ方向底部が、チャンファー形成部の裏面側に位置するように、導水溝を斜めに形成し、この導水溝を通水溝とする。
これにより、例えば、幅が200mm以上3500mm以下程度、厚みが50mm以上500mm以下程度で、角部が面取りされた鋳片を製造できる。
ここでは、チャンファー形成部が鋳片の凝固形態に及ぼす影響について、図4、図5(A)、(B)を参照しながら説明する。
図4に、FEM解析に用いた鋳型の構成(1/4形状)と、この構成の鋳型を用いて溶鋼の凝固シミュレーションを行った結果を示す。また、図5(A)に、凝固シミュレーションに用いた短辺の表面プロフィールを示すグラフを、(B)に、凝固シミュレーションに用いた長辺の表面プロフィールを示すグラフを、それぞれ示す。
この実施例の鋳型には、鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する短辺に前記した短辺側傾斜部が、鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する長辺に前記した長辺側傾斜部が、それぞれ形成されている。具体的には、図5(A)、(B)に示す表面プロフィールが形成されている。
一方、比較例の鋳型は、短辺側傾斜部と長辺側傾斜部が形成されていない短辺と長辺を用いている。具体的には、短辺が図5(A)に示す傾斜角度1.3(%/m)のシングルテーパ、長辺が図5(B)に示す傾斜角度0.89(%/m)のシングルテーパである。
・溶鋼:炭素量0.04質量%の特殊鋼
・鋳片の幅:850mm
・鋳造速度:1.5(m/分)
・鋳型の冷却水量:長辺4000(L/分/面)、短辺500(L/分/面)
・冷却水の入出の温度差:長辺6.5℃、短辺7.2℃
一方、実施例では、短辺側傾斜部と長辺側傾斜部が形成された鋳型を用いたため、チャンファー形成部による鋳片角部の冷却効率の低下を防止でき、鋳片角部の凝固シェルの厚みを、他の部分と同程度にできた。このため、上記したブレークアウトの発生を抑制、更には防止できる。
また、上記した凝固シミュレーションは、長辺に長辺側傾斜部を形成した場合について行ったが、長辺側傾斜部が形成されていない場合でも、比較例より良好な結果が得られた。
更に、溶鋼の種類を変更(例えば、炭素量0.01〜1.25質量%の範囲)して凝固シミュレーションを行っても、上記と略同様の結果が得られた。
従って、本発明の連続鋳造用鋳型を使用することで、良好な品質の鋳片を歩留りよく、しかも作業性よく安定に製造できることを確認できた。
また、前記実施の形態に示した連続鋳造用鋳型は、従来使用されている垂直曲げ型の連続鋳造機や湾曲型の連続鋳造機に使用できる。
更に、前記実施の形態においては、短辺に冷却水用通水穴(冷却水用通水溝)を形成した場合について説明したが、冷却水用通水穴は必要に応じて(チャンファー形成部の冷却状態に応じて)形成しなくてもよい。
Claims (4)
- 間隔を有して対向配置される一対の短辺と、該短辺を幅方向の両側から挟む一対の長辺とによって囲繞される鋳型空間部に溶鋼を注入して冷却し鋳片として引き抜く連続鋳造用鋳型において、
前記鋳型空間部を形成する鋳型壁の四隅の領域の前記短辺に、前記鋳型空間部側へ向けて膨出するチャンファー形成部を形成し、前記鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する前記短辺に、前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる短辺側傾斜部を形成したことを特徴とする連続鋳造用鋳型。 - 請求項1記載の連続鋳造用鋳型において、対向する前記短辺に形成した前記チャンファー形成部には、前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる傾斜部が形成されていることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
- 請求項1又は2記載の連続鋳造用鋳型において、前記鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する前記長辺には、前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる長辺側傾斜部が形成されていることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型において、前記短辺には、前記チャンファー形成部を冷却する冷却水用通水穴又は冷却水用通水溝が設けられていることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
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