JP2003311377A - チューブ方式連続鋳造用鋳型 - Google Patents
チューブ方式連続鋳造用鋳型Info
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Abstract
ーパ(熱変形)を簡易な手段で効果的に防止し、高速鋳
造を可能とする連続鋳造用鋳型を提供する。 【解決手段】 主断面が矩形のモールドチューブ1と、
このモールドチューブ1の外壁面を取り囲むウォータジ
ャケット2とを備えた連続鋳造用鋳型において、モール
ドチューブ1のコーナ部を除く四辺部の外壁面であっ
て、モールドチューブ1の上端から下方へ向かう10〜
400mm、好ましくは35〜250mmの範囲内(部
位U)に縦溝4を設ける。さらに、ウォータジャケット
2の内壁面のうち部位Uにのみライナプレート5を取り
付け、部位Uにおける冷却水通路3の水平断面積を、縦
溝4を設けていない部位Lにおける冷却水通路3の水平
断面積と比較して同等または小さくする。
Description
いるチューブ方式鋳型に関する。
つつ、鋳片を鋳型から連続的に引抜くことにより鋳造を
行う連続鋳造機において、鋳型は通常、銅または銅合金
製の断面が矩形のモールドチューブ(以下、単に「チュ
ーブ」ともいう。)と、このチューブの外壁面を取り囲
むウォータジャケットとを備え、チューブとウォータジ
ャケットとの間に形成された間隙(冷却水通路)に冷却
水を流通させて用いる。鋳型内に注入された溶湯は、チ
ューブ内壁面と接して冷却され、先ず薄い凝固シェルが
形成される。この凝固シェルは当初はチューブ内壁面と
密着しているが、やがて凝固シェルの温度降下とともに
収縮してチューブ内壁面から離れ、チューブ内壁面と鋳
片表面との間に隙間ができる。この隙間が生じると、チ
ューブ内壁面側の伝熱抵抗が急激に増大し、冷却不良に
よる凝固組織の粗大化などにより健全な凝固シェルが形
成できなくなる。特に、小形断面のビレット連続鋳造機
では鋳片のコーナ部に隙間が生じやすく、コーナ部の凝
固遅れが顕著に現れる。コーナ部の凝固遅れは、鋳片の
菱形変形を引き起こし、この変形がひどくなると内部割
れ、表面割れ等の鋳片品質の劣化やブレークアウトを伴
うことにもなる。
生じやすいストレート鋳型や単一テーパ鋳型に代わり、
前記隙間が生じにくい多段テーパ鋳型やパラボリックテ
ーパ(曲線テーパ)鋳型が実用化され、近年の連続鋳造
の高速化や安定操業に寄与している。すなわち、鋳型内
の凝固シェルは温度低下とともに収縮するが、理論的あ
るいは実験的に求めた凝固シェルの収縮量に合致したチ
ューブ内壁面形状とすることにより前記隙間を小さくで
きるものである。しかし、多段テーパ鋳型やパラボリッ
クテーパ鋳型を用いても、鋳造中に初期のチューブ内壁
面形状を維持することは以下の理由により困難である。
域(溶湯表面であるメニスカスより上方の領域)と、
鋳片と接する領域(メニスカスより下方の領域)とに分
けられる。領域のチューブ温度は、鋳片と接触してい
ないため低く冷却水温度に近い。一方、領域のチュー
ブ温度は、鋳片と直接接触するため高温になり、メニス
カス直下近傍では300℃を超える場合がある。したが
って、領域のチューブ部分はほぼ常温における寸法そ
のままであるが、領域のチューブ部分は熱膨張により
外側に膨らんだ形状となる。領域との境目では急激
な熱勾配が生じるため、常温における適正な下すぼまり
のテーパ形状が維持できず、常温時の適正なテーパ形状
とは逆の下広がりのテーパ形状(いわゆる「負のテー
パ」)となる。鋳造速度を高めると鋳片からチューブへ
の入熱が増大するため、領域のチューブ温度がさらに
上昇し、領域との境目の熱勾配はより大きくなり、
負のテーパ量はますます増大する。負のテーパ量の増大
によるチューブと鋳片との隙間が拡大することと、領域
のチューブ温度の上昇によりチューブ材質である銅ま
たは銅合金が軟化するおそれがあることが、さらなる高
速鋳造を実現できない一つの要因となっている。
する分を上乗せしたチューブ内壁面形状としておき、鋳
造時に丁度負のテーパ量がキャンセルされて適正なテー
パ形状が得られるようにすることが可能とも考えられる
が、鋳造条件(鋼種、鋳造速度、溶湯温度、メニスカス
レベル等)が変化するとチューブの温度分布も都度変化
するため現実的な方策ではない。また、仮に現実的な方
策であるとしてもチューブ内壁面形状が複雑になり、製
作が困難である。
熱変形)を軽減する現実的な方策としては、(1)冷却水
の流速を高めることや、冷却水と接触するチューブ外壁
面側の面積を大きく すること等により冷却水側の熱
伝達率を高めチューブ温度の上昇を緩和すること、(2)
チューブ厚みを増大し、チューブの変形量を減少させる
こと、等が効果的であることが知られている(例えば、
J.K.Brimacombe, et al:I&SM, November 1993, p
35-47参照)。
ば、大断面のスラブ連続鋳造機やブルーム連続鋳造機で
は、鋳型として図6に示す構造のものが採用されること
が多い。図6(a)に示す銅板11の厚みは45mm程
度と厚く(ビレット連続鋳造機のチューブ厚みは6〜1
0mm程度)、反鋳片側に冷却水通路となるスリット1
3が設けられている。図示されていないが、銅板11は
バックアッププレート12と多数のボルトで締結されて
いる。図6(b)は、スリット13内にスペーサ15を
設けてメニスカス近傍の冷却水の流速を上げ、冷却能を
向上させた例を示すものである。銅板11に十分な肉厚
を持たせて剛性を高くし、かつ強靭なバックアッププレ
ート12と機械的に締結する構造を採用するため、鋳造
中における銅板11の変形は小さい。しかし、この構造
を小断面であるビレット連続鋳造機に適用すると、鋳型
は複雑で大きなものになり、設備コスト、ランニングコ
スト、保守コストが著しく高くなる。また、もともとス
トランド間隔が小さい現存のビレット連続鋳造機には、
寸法的にこの構造を適用することは困難である。また、
ビレット連続鋳造機の鋳型にはバックアッププレート1
2がなく、図6(b)に示したようなスペーサ15を設
置することが構造上困難である。
るために、高圧水を用いる例が提案されている。すなわ
ち、冷却水の流速を高めると冷却水の圧力損失が増大す
るため、通常の供給圧力では冷却水の流速を高められな
いからであり、冷却水を高圧化することにより、沸騰の
危険性を低下させる効果もある。しかし、高圧水を用い
るためには、既存設備(鋳型、給水設備、配管等)を流
用することができないため、改造コストが著しく高くな
る。また、矩形チューブのシールの構造上、高耐圧仕様
とすることが困難であることから鋳造中における漏水の
危険性が高まり、水が溶湯に混入すると爆発事故を誘発
することにもなる。さらに、冷却水圧力によりチューブ
が鋳片側に変形し、チューブ内壁面形状が崩れてしまう
可能性も高い。この変形を回避するためチューブ肉厚を
厚くすると、本来の目的である冷却能力の向上効果が減
少してしまう。
を高めるため冷却水と接触するチューブ外壁面側にチュ
ーブ長手方向に直交する溝(横溝)を多数本加工して冷
却水との接触面積を増大させる例が提案されている。確
かに、冷却水との接触面積は増大するものの、溝の方向
が冷却水の流れ方向と直交するため、冷却水との接触面
近傍の流速が低下してしまう。特に溝底部では冷却水の
澱みを生じ冷却効果が損なわれる。また、冷却水通路の
抵抗が大きく圧力損失が大きくなるため、冷却水の供給
圧力を高める必要があり、ランニングコスト(ポンプ用
電力)が増大する。さらに、鋳型や冷却水の供給配管の
耐圧力も高める必要があり、設備コストが上昇する。ま
た、冷却水の圧力を高めると鋳型からの漏水の危険性が
高まる。
93号公報および特開平9―239496号公報には、
冷却水側の熱伝達率を高めるため冷却水と接触するチュ
ーブ外壁面側にチューブ長手方向と平行に溝(縦溝)を
多数本加工して冷却水との接触面積を増大させる例が提
案されている。すなわち、特開平9―225593号公
報では、チューブ外壁面コーナ部を除く四辺部外壁面
に、チューブの上端または上端から一定距離下方の位置
から下端まで縦溝を設けた連続鋳造用鋳型が開示されて
いる。また、特開平9―239496号公報では、チュ
ーブの上端側においては、チューブコーナ部内壁面に縦
溝を設けるとともに、チューブの下端側においては、チ
ューブ四辺部外壁面に縦溝を設けた連続鋳造用鋳型が開
示されている。これらの提案は、コーナ部と辺部との鋳
型温度を均一化して初期凝固シェルの厚み差を小さく
し、鋳片コーナ部の表面割れを防止するとともに、チュ
ーブ全体としての抜熱量を増加させることによって鋳片
冷却を促進し、高速鋳造を可能とするというものであ
る。これらの提案によれば、縦溝を用いることから、上
記従来技術3のように冷却水の圧力損失増大による問題
は生じないが、溝を形成したことにより冷却水流路の水
平断面積が増加し、冷却水流速が低下するため、冷却水
との接触面積の増大の効果が減殺されてしまう。さら
に、前者の提案では上端部または上端部から一定距離下
方の位置からチューブ下端まで縦溝を加工する必要があ
ることから加工コストが高い問題がある。また、後者の
提案ではチューブの上端側においてチューブ内壁面に溝
を設けていないことから、チューブ上端に近いメニスカ
ス近傍で生じる負のテーパを防止する効果がない。
は、鋳造時におけるモールドチューブの負のテーパ(熱
変形)を簡易な手段で効果的に防止し、高速鋳造を可能
とする連続鋳造用鋳型を提供することにある。
のできる本発明の要旨は以下の通りである。第1の発明
は、主断面が矩形のモールドチューブと、このモールド
チューブの外壁面を取り囲むウォータジャケットとを備
えた連続鋳造用鋳型において、前記モールドチューブの
コーナ部を除く四辺部の外壁面であって、前記モールド
チューブの上端から下方へ向かう10〜400mmの範
囲内に縦溝を設け、かつ、前記縦溝が設けられた部位に
おける前記モールドチューブの外壁面と前記ウォータジ
ャケットの内壁面との面間距離が、前記縦溝が設けられ
ていない部位における前記モールドチューブの外壁面と
前記ウォータジャケットの内壁面との面間距離より短い
ことを特徴とするチューブ方式連続鋳造用鋳型である。
なお、上記において、「前記縦溝が設けられた部位にお
ける前記モールドチューブの外壁面」とは、前記縦溝が
設けられた部位における、前記縦溝が設けられる前の前
記モールドチューブの元々の外壁面のことをいう。
ューブと、このモールドチューブの外壁面を取り囲むウ
ォータジャケットとを備えた連続鋳造用鋳型において、
前記モールドチューブのコーナ部を除く四辺部の外壁面
であって、前記モールドチューブの上端から下方へ向か
う10〜400mmの範囲内に縦溝を設け、かつ、前記
縦溝が設けられた部位における前記モールドチューブと
前記ウォータジャケットとの間に形成された冷却水通路
の水平断面積が、前記縦溝が設けられていない部位にお
ける前記冷却水通路の水平断面積と比較して同等ないし
小さいことを特徴とするチューブ方式連続鋳造用鋳型で
ある。
ューブと、このモールドチューブの外壁面を取り囲むウ
ォータジャケットとを備えた連続鋳造用鋳型において、
前記モールドチューブのコーナ部を除く四辺部の外壁面
であって、前記モールドチューブの上端から下方へ向か
う10〜400mmの範囲内に、前記モールドチューブ
の長手方向に複数に分割した縦溝を設けたことを特徴と
するチューブ方式連続鋳造用鋳型である。
における前記モールドチューブと前記ウォータジャケッ
トとの間に形成された冷却水通路の水平断面積が、前記
縦溝が設けられていない部位における前記冷却水通路の
水平断面積と比較して同等ないし小さい請求項3に記載
のチューブ方式連続鋳造用鋳型である。
向で変化する請求項1〜4のいずれか1項に記載のチュ
ーブ方式連続鋳造用鋳型である。
て、図面を参照しながら詳細に説明する。
するのに用いられる、曲げ形ビレット連続鋳造機用のチ
ューブ方式鋳型の全体を示す。鋳型は、主断面(水平断
面)が矩形のモールドチューブ1と、このチューブ1の
外壁面を取り囲むウォータジャケット2とを備えてお
り、チューブ1の外壁面とウォータジャケット2の内壁
面との間に形成された空間部である冷却水通路3内を冷
却水が下から上方向に流れている。
ォータジャケット2の組み合わせ部分のみ、図3は、モ
ールドチューブ1のみ、図4は、ウォータジャケット2
のみをそれぞれ示すものである。
の外壁面には、コーナ部(四分円部)1cを除く四辺部
1aそれぞれに複数本の縦溝4を設けている。コーナ部
1cを除いたのは、コーナ部1cは元々冷却されやすい
部位であるため縦溝4を設けると冷却過剰となるからで
ある。縦溝4は、チューブ1上端から下方へ向かう10
〜400mm、好ましくは35〜250mmの範囲内
(図2および図3の部位U)に設ける。これにより、メ
ニスカスレベルが操業条件により変化・変動しても、メ
ニスカス近傍のチューブ1の外壁面には、常に縦溝4が
存在するので、チューブ1外壁面と冷却水との接触面積
を常に大きく維持できる。縦溝4を設ける範囲をチュー
ブ1上端から下方へ向かう10〜400mm、好ましく
は35〜250mmの範囲に限定したのは、通常の鋳造
時においてメニスカスレベルが変化しうる範囲を包含し
つつ、不必要な部分にまで溝加工を施すことをできるだ
け回避するためである。また、縦溝4が設けられた部位
(部位U)におけるチューブ1の外壁面1s(縦溝4の
存在しない平坦な部分;図2(c)、図3(b)参照)
とウォータジャケット2の内壁面との面間距離GUが、
縦溝4が設けられていない部位(図2および図3の部位
L)におけるチューブ1の外壁面とウォータジャケット
2の内壁面との面間距離GLより短くなるようにするこ
とが好ましい。これにより、縦溝4を設けた部位(部位
U)の冷却水の流速が、縦溝4を設けない部位(部位
L)の冷却水流速に比べ、従来技術4ほど大きく低下し
ない。面間距離GUをさらに短くして、縦溝4が設けら
れた部位(部位U)における冷却水通路3の水平断面積
が、縦溝4が設けられていない部位(図2および図3の
部位L)における冷却水通路3の水平断面積と比較して
同等または小さくなるようにすることが特に好ましい。
これにより、縦溝4を設けた部位(部位U)の冷却水の
流速を、縦溝4を設けない部位(部位L)の冷却水流速
と比較し同等ないし高くできる。このため、例えば図2
および図4に示すように、ウォータジャケット2の内壁
面のうち部位Uにのみ所定の厚みのライナプレート5を
取り付ければよい。さらに、溝4は冷却水の流れ方向に
添う縦溝としているので、溝底部での冷却水の澱みが生
じることがなく、冷却水の圧力損失も小さい。したがっ
て、メニスカス近傍のチューブ1外壁面での伝熱効率が
改善されてチューブ1は十分冷却され、チューブ温度は
従来ほど高くならない。したがって、負のテーパが効果
的に防止される。また、冷却水の供給圧力をあまり高め
る必要がないため、ランニングコスト(ポンプ用電力)
の上昇は問題とならず、鋳型や冷却水配管の高耐圧化は
不要で設備コストの上昇も問題とならない。
効果がなく、広すぎるとチューブ1の強度が低下するの
で、チューブ1厚みの0.4〜1.0倍程度の範囲とす
ることが好ましい。縦溝4の深さは、浅すぎると接触面
積増大の効果がなく、深すぎるとチューブ1の強度が低
下するので、チューブ1厚みの0.3〜0.6倍程度の
範囲とすることが好ましい。縦溝4のピッチは、大きす
ぎると(すなわち縦溝の本数が少なすぎると)接触面積
増大の効果がなく、小さすぎると(すなわち縦溝の本数
が多すぎると)チューブ1の強度が低下するので、溝4
の幅の1.5〜2.5倍程度の範囲とすることが好まし
い。なお、本例では縦溝4の深さは高さ方向(長手方
向)で一定としているが、高さ位置に応じて伝熱量と強
度とを考慮して連続的または段階的に変化させてもよ
い。
ーブ1外壁面に溝加工して形成することができる。溝底
形状(水平断面形状)は応力集中を防止するため、図2
および図4に示すように、円弧状にすることが推奨され
るが、矩形状、台形状、三角形状などであってもよい。
本例は、曲げ形チューブへの適用例であり、図2および
図3に示すように、溝加工をチューブ1の曲率に沿って
行っているが、直線または折れ線状に近似して行っても
よい。
ャケット2の四辺部2aの内壁面のうち、チューブ1外
壁面に設けた縦溝4を覆う範囲に所定の厚みのライナプ
レート5をボルト6留めするように構成することが推奨
される。これにより、部位Uと部位Lの冷却水通路3の
水平断面積の比率を厚みの異なるライナプレート5に取
り替えることによって容易に調整することができる。本
例ではコーナ部2cにはライナプレート5を取り付け
ず、この部分での冷却水流速を遅くして鋳片のコーナ部
の冷え過ぎを防止しているが、コーナ部2cにも四辺部
2aと同様、ライナプレート5を取り付けて鋳片のコー
ナ部の冷却速度を調整するようにしてもよい。また、図
4に示すように、ライナプレート5の下端部5bは面取
りして水流を乱さないようにすることが好ましい。な
お、ライナプレート5をボルト6で取り付ける代わり
に、ウォータジャケット2とライナプレート5とを一体
構造としてもよい。
ピッチ(溝本数)、およびライナプレート5の厚みを適
宜選択して組み合わせることにより、操業条件に対応し
た最適な鋳型を提供できる。
態と同様、縦溝4をチューブ1上端から下方へ向かう1
0〜400mm、好ましくは35〜250mmの範囲内
(図5の部位U)に設けるものであるが、縦溝4をチュ
ーブ1長手方向に複数に分割して設けたものである。チ
ューブ1の主断面(水平断面)の四辺部1a(図3参
照)は、チューブ1背面(外壁面側)からの冷却水圧力
の作用により鋳片側(内壁面側)に張り出すように変形
しやすい。また、チューブ1は、鋳片側の温度が高く、
冷却水側の温度が高いため、四辺部1aはバイメタル効
果によっても鋳片側に変形しやすい。しかし、縦溝4を
チューブ1長手方向に複数に分割して設置したことによ
り(すなわち、部位U中に溝4を形成しない溝なし部分
4aを残すことにより)、四辺部1aの剛性の低下を緩
和して鋳片側への変形を防止することができる。一方、
部位U中に溝なし部分4aを残すと、この溝なし部分4
aの冷却能力の低下が懸念されるが、溝なし部分4aの
範囲を極端に大きくしなければ、図5(a)に示すよう
に、却ってフィン効果により冷却能力が上昇する。ま
た、上述したバイメタル効果は、チューブ厚み方向の直
線状熱勾配により生じるものである。しかし、溝なし部
分4aの厚み方向温度分布は、フィン効果により大部分
が温度が低く、鋳片側の一部分のみが温度が高くなり、
直線状勾配にならない。したがって、バイメタル効果に
よる鋳片側への熱変形も小さい。以上のように、縦溝4
をチューブ長手方向に複数に分割して設けることにより
四辺部1aの鋳片側への熱変形を効果的に防止できる。
また、上記実施例1と同様の理由により、縦溝4が設け
られた部位(部位U)における冷却水通路3の水平断面
積が、縦溝4が設けられていない部位(図2および図3
の部位L)における冷却水通路3の水平断面積と比較し
て同等または小さくなるようにすることが好ましい。な
お本例において、上記実施例1で説明したように、ウォ
ータジャケット2に平面状のライナプレート5を取り付
けると、溝なし部分4aにおける冷却水流路が極端に狭
くなり、冷却水の圧力損失が増大する。これを回避する
ため、例えば図5(a)に示すように、ウォータジャケ
ット2の、溝なし部分4aに対峙する部位に窪み7を設
けて冷却水通路3の水平断面積を確保するようにするこ
とが好ましい。また、縦溝4の分割数は、図5では3分
割としているが、これに限定されるものではない。ただ
し、分割数が多すぎると、上記熱変形防止の効果が飽和
するとともに、溝加工の手間が増大するので、2〜10
分割程度の範囲内で適宜調整するのが好ましい。また、
分割した縦溝4のチューブ1外壁面上への配列は、図5
に示すように、水平方向に整列させて、全体を正方配列
としてもよいが、水平方向で互いに隣り合う縦溝4を高
さ方向にずらして、全体を千鳥配列としてもよい。な
お、溝深さは、第1実施形態で述べたように、高さ位置
によらず一定としてもよいが、高さ位置に応じて伝熱量
と強度とを考慮して連続的または段階的に変更してもよ
い。
型の材質として銅または銅合金のみ、鋳造される材料と
して鋼のみについて説明したが、本発明はこれらに限ら
れるものではなく、目的に応じて各種金属を適宜選択で
きるものである。
有する鋳型において、モールドチューブ1に形成する縦
溝4の幅、深さ、本数と、ウォータジャケット2に取り
付けるライナプレート5の厚みを種々変更した場合にお
ける冷却水通路3水平断面積および冷却水通路3水平断
面平均の冷却水流速(以下、単に「冷却水流速」とい
う。)を計算した。ここに、チューブ1の外壁面にライ
ナプレート5を取り付けない部位の冷却水通路3の幅
(チューブ1とウォータジャケット2の隙間;面間距離
GL)は3.9mm(一定)とし、冷却水流量を1.7
m3/min(一定)とした。また、縦溝4加工範囲A
をチューブ1上端から35〜250mmの範囲(一定)
とした(図2、3参照)。計算結果を表1に示す。N
o.1は溝4を形成せず、ライナプレート5を取り付け
ない従来例であり、部位UおよびBにおける冷却水流速
はともに11.8m/sである。一方、No.9は縦溝
4のみを形成し、ライナプレート5を取り付けない比較
例であり、縦溝4を形成した部位Uにおける冷却水流速
は、縦溝4を形成しない部位Lにおける冷却水流速より
大きく低下しており、メニスカスレベル近傍を含む部位
Uにおいて十分な冷却能力が得られない。これに対し、
No.2〜8は、縦溝4を形成するとともにライナプレ
ート5を取り付けた本発明例である。No.2、3で
は、ライナプレート5を取り付けることにより、部位U
における面間距離GUは部位Lにおける面間距離GLより
短くなっている。その結果、部位Uにおける冷却水流速
は、部位Lにおける冷却水流速より依然として少し低い
ものの、No.9(比較例)ほど大きく低下しないた
め、縦溝4形成による冷却水との接触面積の増大効果に
よりメニスカスレベル近傍を含む部位Uにおいて十分な
冷却効果が得られる。また、No.4〜8の計算結果か
ら明らかなように、溝幅、溝深さ、溝本数の組み合わせ
を適宜調整することにより、縦溝4を形成しかつライナ
プレート5を取り付けた部位Uの冷却水通路3の水平断
面積を、溝4を形成せずライナプレート5を取り付けな
い部位Lの冷却水通路3の水平断面積に比較して、容易
に同等または小さくできる。その結果、部位Uの冷却水
流速を部位Lの冷却水流速と比較して同等または大きく
でき、縦溝4形成による冷却水との接触面積の増大とあ
いまって、メニスカスレベル近傍を含む部位Uにおいて
さらに高い冷却能力が得られる。なお、No.5、8に
おいて、部位Uの冷却水流速は部位Lの冷却水流速の約
1.4倍と高く、冷却水の圧力損失は流速の二乗に比例
して増大するため、この部位Uにおける冷却水の圧力損
失は従来例(No.1)に対して約1.9倍となるが、
部位Uの範囲をチューブ1全長の一部に限定しているた
め、全体の圧力損失はさほど上昇せず問題とならない。
連続鋳造におけるモールドチューブの負のテーパ(熱変
形)を簡易な手段で効果的に防止することができる。こ
れにより、鋳型と鋳片との密着性が向上し、高速鋳造時
においても鋳型内で健全な凝固が促進され、菱形変形や
ブレークアウトを発生させることなく、安定操業が達成
できる。
機用のチューブ方式鋳型の全体を示す垂直断面図であ
る。
ォータジャケットの組み合わせ部分のみを示す図であ
り、(a)は垂直断面図、(b)はB―B線部分断面
図、(c)はA−A線断面図である。
を示す図であり、(a)は垂直断面図、(b)はA−A
線断面図である。
みを示す図であり、(a)は垂直断面図、(b)はA−
A線断面図である。
ャケットの組み合わせ部分の一部を示す図であり、
(a)は垂直部分断面図、(b)はA−A線矢視図であ
る。
鋳造機)用鋳型の垂直部分断面図であり、(a)はスリ
ット内にスペーサを設けない例、(b)はスリット内に
スペーサを設けた例である。
Claims (5)
- 【請求項1】 主断面が矩形のモールドチューブと、こ
のモールドチューブの外壁面を取り囲むウォータジャケ
ットとを備えた連続鋳造用鋳型において、前記モールド
チューブのコーナ部を除く四辺部の外壁面であって、前
記モールドチューブの上端から下方へ向かう10〜40
0mmの範囲内に縦溝を設け、かつ、前記縦溝が設けら
れた部位における前記モールドチューブの外壁面と前記
ウォータジャケットの内壁面との面間距離が、前記縦溝
が設けられていない部位における前記モールドチューブ
の外壁面と前記ウォータジャケットの内壁面との面間距
離より短いことを特徴とするチューブ方式連続鋳造用鋳
型。 - 【請求項2】 主断面が矩形のモールドチューブと、こ
のモールドチューブの外壁面を取り囲むウォータジャケ
ットとを備えた連続鋳造用鋳型において、前記モールド
チューブのコーナ部を除く四辺部の外壁面であって、前
記モールドチューブの上端から下方へ向かう10〜40
0mmの範囲内に縦溝を設け、かつ、前記縦溝が設けら
れた部位における前記モールドチューブと前記ウォータ
ジャケットとの間に形成された冷却水通路の水平断面積
が、前記縦溝が設けられていない部位における前記冷却
水通路の水平断面積と比較して同等ないし小さいことを
特徴とするチューブ方式連続鋳造用鋳型。 - 【請求項3】 主断面が矩形のモールドチューブと、こ
のモールドチューブの外壁面を取り囲むウォータジャケ
ットとを備えた連続鋳造用鋳型において、前記モールド
チューブのコーナ部を除く四辺部の外壁面であって、前
記モールドチューブの上端から下方へ向かう10〜40
0mmの範囲内に、前記モールドチューブの長手方向に
複数に分割した縦溝を設けたことを特徴とするチューブ
方式連続鋳造用鋳型。 - 【請求項4】 前記縦溝が設けられた部位における前記
モールドチューブと前記ウォータジャケットとの間に形
成された冷却水通路の水平断面積が、前記縦溝が設けら
れていない部位における前記冷却水通路の水平断面積と
比較して同等ないし小さい請求項3に記載のチューブ方
式連続鋳造用鋳型。 - 【請求項5】 前記縦溝の深さが、長手方向で変化する
請求項1〜4のいずれか1項に記載のチューブ方式連続
鋳造用鋳型。
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