JP2007331000A - 連続鋳造用鋳型 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溶鋼2を連続的に鋳造する角筒状の鋳型4であって、前記鋳型4の内側における全てのコーナー部12に水平方向の長さが2mm以上8mm以下となるテーパ状の角落とし部13を設けており、前記角落とし部13は、それぞれ同じ形状とされていると共に、鋳型4の上端から下端に亘って形成されている。
【選択図】図2
Description
連続鋳造設備における鋳型の形状は、鋳造された鋳片の形状によって決定されるのが一般的である。鋳型の内側コーナ部の形状については、次工程(圧延工程)における倒れ込み防止の観点からR形状や多角形状となる様々な形状が研究されてきている。
連続鋳造設備で鋳造された鋳片は圧延工程にてブルーミングされるが、ブルーミングの際に鋳造された鋳片のコーナ部が直角であると押圧によって当該コーナ部につの状の角が立ち、その角が倒れ込んでしまう問題を生じることから、倒れ込みを防止するために鋳型の内側コーナ部をR形状や多角形状することが検討されている。
鋳型の内側コーナ部付近の凝固シェルが急速に熱収縮すると、当該凝固シェルが鋳型の内側コーナ部から離れてしまい、当該鋳型の内側コーナ部付近にエアギャップが形成される。エアギャップによって鋳型の内側コーナ部付近での溶鋼が凝固し難くなり、溶鋼の凝固遅れの要因となることが知られている。
したがって、近年では、鋳片の倒れ込みを防止するだけでなく、溶鋼の凝固遅れ、即ち、内部欠陥を防止するために内側コーナ部の形状が様々検討されてきている(例えば、特許文献1,2)。
特許文献2では、鋳型のコーナ部に当該鋳型の内側に向かうテーパ面を形成し、このテーパ面によって凝固シェルが鋳型の内面からできるだけ離れないようにする(エアーギャップをできるだけ生成させない)ことで、凝固遅れを防止している。
そこで、本発明では、鋳型の内側コーナ部の形状によって、溶鋼の凝固遅れを防止し、凝固遅れによる内部欠陥がない鋳片を製造することができる連続鋳造用鋳型を提供することを目的とする。
即ち、溶鋼を連続的に鋳造する角筒状の鋳型であって、前記鋳型の内側における全てのコーナー部に、水平方向の長さが2mm以上8mm以下となるテーパ状の角落とし部を設けており、前記角落とし部は、それぞれ同じ形状とされていると共に鋳型の上端から下端に亘って形成されている点にある。
発明者は、溶鋼の凝固遅れを生ずるメカニズムや鋳型の内側コーナ部の形状について様々検討を行った。
図1は、本発明の連続鋳造用鋳型を具備した連続鋳造装置を示している。ただし、本発明の連続鋳造用鋳型は図1に示す連続鋳造装置に限定されない。
図1に示すように、連続鋳造装置1は、ブルーム連続鋳造装置又はビレット連続鋳造装置であって、溶鋼2を一時的に貯留するタンディッシュ3と、このタンディッシュ3からの溶鋼2が供給される鋳型4と、この鋳型4により成型された鋳片を引き出すと共に、鋳片をサポートする複数のサポートロール5とを有している。鋳型4の外側には鋳型4内の溶鋼2を電磁攪拌する電磁攪拌装置(M-EMS)6が配置されている。
電磁攪拌装置6は、従来から連続鋳造装置に用いられている一般的なもので、溶鋼2を右旋回(右回り)させたり、溶鋼2を左旋回(左回り)させたりすることができる。
連続鋳造装置1では、転炉や二次精錬設備等から出鋼された溶鋼2を取鍋によってタンディッシュ3まで搬送し、搬送された取鍋内の溶鋼2をタンディッシュ3へ注入後、スライドバルブ8を開くと共に、電磁攪拌装置6で鋳型4内の溶鋼2を一方向に攪拌することで、溶鋼2を連続的に鋳造することができるようになっている。この連続鋳造装置では、同じ鋼種の溶鋼2を連続的に数チャージ鋳造したり、鋼種の異なる溶鋼2を連続的に鋳造することができる。
図2に示すように、鋳型4は、銅を主成分とする材料から角筒状に形成されたもので、一対の第1板材10と、この第1板材10の長手方向両側に配置された一対の第2板材11とを有したものとなっている。
鋳型4の内側であって鋳型4のすべてのコーナー部12に角落とし部13(以降、チャンファーということがある)が形成されている。
詳しくは、第2板材11の長手方向両側の内壁(内側)にテーパ面が形成され、このテーパ面が前記角落とし部13となっている。
第2板材11に形成された角落とし部13はすべて同じ形状となっている。即ち、各角落とし部13の傾斜角度θ1,θ2、第1水平方向の長さa及び第2水平方向の長さb、垂直方向の長さe(図1参照)は互いに略同じとなっている。
角落とし部13におけるチャンファー量は様々な実験等により導き出されたものである。
以下、チャンファー量の導出過程について図3〜図4を用いて説明する。
図3,4の(a)は、溶鋼2の凝固初期における鋳型4内(溶鋼)の様子を示したものであり、図3,4の(b)は、凝固初期から10秒程度経過した凝固中期における鋳型4内(溶鋼)の様子を示したものである。
したがって、凝固初期の段階では、鋳型4のコーナ部12付近の凝固シェル14の厚みは、直線部16付近の凝固シェル14の厚みに比べて大きくなる。
そのため、接触部すなわちコーナ部12における凝固シェル14が鋳型4の内面から離れ、コーナ部12にエアーギャップ15(空気層)が形成されてしまう。
コーナ部12にエアーギャップ15が生じると、コーナ部12近傍の溶鋼2の熱が鋳型4へと伝わり難くなるので、コーナ部12における溶鋼2の冷却が遅くなる。
凝固中期からそれ以降においては、コーナ部12における凝固シェル14の厚みが直線部16よりも薄いため、鋳型4内周に沿った凝固シェル14の熱収縮量は、直線部16の凝固シェル14がコーナ部12の凝固シェル14よりも大きくなる。その結果、コーナ部12付近の凝固シェル14が図3(b)の矢印方向に引っ張られて溶鋼2と凝固シェル14との境界部分、例えば、図3(b)の位置Kにおいて内部割れが発生する。溶鋼2と凝固シェル14との境界部分における内部割れには偏析元素や非金属介在物などが侵入し、鋳片の内部欠陥となる。
しかしながら、コーナ部12における凝固シェル14の接触部に着目すると、当該接触部はチャンファー13によって急速に冷却されるため大きな熱収縮が発生し、接触部がチャンファー13から離れるため、どうしてもコーナ部12にエアーギャップ15が形成されてしまうこととなる。
特に、平面視において、鋳型4の外側コーナ部12から鋳型4の中心に向けて仮想的に直線Aを引き、その直線A(以降、直線A上の位置を真コーナ部12aということがある)が溶鋼2と接触する位置Pにおける溶鋼2に着目した場合、位置Pの溶鋼2は、エアーギャップ15に対向する鋳型4の内側(内壁)、チャンファー13ではなく、エアーギャップ15が生じていない鋳型4の直線部16の内壁によって冷却されることとなる。
よって、図4(b)に示したように、凝固中期では、コーナ部12における凝固シェル14の厚みが直線部16付近の凝固シェル14に比べて小さくなるという現象が発生し、チャンファー13を設けていない場合と同じように、溶鋼2と凝固シェル14との境界部分において内部割れが発生しやすい。
そこで、発明者はチャンファー量を様々変化させた鋳型4を複数台用意し、各鋳型4を用いて鋳造を行うという実験を行った。また、発明者は上記の実験に加えて、鋳型4のコーナ部12にテーパ状のチャンファー13の代わりに、R状のチャンファー13を形成した鋳型4を複数台用意し、各鋳型4を用いて鋳造を行った。
なお、図5に示すように、R状のチャンファー13はテーパ状のチャンファー13の代わりに鋳型4のコーナ部12を円弧状にしたものである。
電磁攪拌装置6における磁束密度を400gauss(鋳型4の中央側で測定)、電磁攪拌装置6での周波数は2Hzとした。浸漬ノズルの孔数は2個とし、鋳造速度を1.0m/mimとした。
鋳片の内部割れの判定は、凝固遅れ部(鋳片の表面から内部側へ20mm程度入った部分迄)に形成された割れの長さが0.5mm以上(L≧0.5mm)であると欠陥有りとした。割れの長さが0.5mm未満のものを「欠陥無し」とした。そして、「欠陥有り」とした数から検査を行った鋳片の総数を割ることで内部割れ発生率を求めた。
図6に示すように、テーパ状のチャンファー13では、チャンファー量が2〜8mmにおいて内部割れ発生率が0であって内部欠陥が全くなかった。また、テーパ状のチャンファー13では、チャンファー量が8mmを超えると内部割れの発生率が次第に増加した。
R状のチャンファー13では、チャンファー量が6mmにおいて内部割れ発生率が他のR状のチャンファー13に比べ最も低かったが、内部割れは多少見受けられた。
また、鋳型4の短辺の内側寸法Eを300mm,鋳型4の長辺の内側寸法Dを400mm,鋳型4の垂直方向長さ(高さ)を900mmとした。電磁攪拌装置6における磁束密度を400gauss(鋳型4の中央側で測定)、電磁攪拌装置6での周波数は2Hzとした。浸漬ノズルの孔数は2個とし、鋳造速度を1.0m/mimとした。
比較例1〜3では、テーパ状のチャンファー13において、第1水平方向の長さa及び第2水平方向の長さbは1.0mmである。この比較例1〜3では、第1水平方向及び第2水平方向のチャンファー量は2.0mm以下であり、溶鋼2の温度、即ち、溶鋼2の加熱度が高くなるとコーナ部12近傍に内部割れが発生した(表1の内部割れ判定「×」,表1の総合評価「×」)。
比較例7〜9では、テーパ状のチャンファー13において、第1水平方向の長さa及び第2水平方向の長さbを6.0mmとした。なお、比較例7〜9では、鋳型4の上端にはテーパ状のチャンファー13を設けず、鋳型4の上端から100mm下がった部分から鋳型4の下端までの範囲にテーパ状のチャンファー13を設けた。この比較例4〜6では、第1水平方向及び第2水平方向のチャンファー量は2.0mm〜8.0mm範囲であるが、チャンファー13が鋳型4の上端から下端に亘って設けられていないため、溶鋼2の温度にかかわらず、コーナ部12近傍に内部割れが発生した(表1の内部割れ判定「×」,表1の総合評価「×」)。
比較例13〜15では、テーパ状のチャンファー13において、第1水平方向の長さaは12.0mm及び第2水平方向の長さbは12.0mmである。この比較例13〜15では、第1水平方向及び第2水平方向のチャンファー量は2.0mm〜8.0mmの範囲外であり、溶鋼2の加熱度が高くなると真コーナ部12aに内部割れが発生した(表1の内部割れ判定「×」,表1の総合評価「×」)。
比較例22〜24では、R状のチャンファー13において、コーナRの大きさは2.0mmである。この比較例22〜24では、コーナ部12近傍に内部割れが発生した(表1の内部割れ判定「×」,表1の総合評価「×」)。
比較例28〜30では、R状のチャンファー13において、コーナRの大きさは12.0mmである。この比較例28〜30では、真コーナ部12aに内部割れが発生した(表1の内部割れ判定「×」,表1の総合評価「×」)。
以上、比較例22〜30においては、チャンファー13の形状がR形状であれば、コーナ部12近傍に内部割れが発生している。
以上、本発明の連続鋳造用鋳型4によれば、鋳型4の内側における全てのコーナー部12に水平の長さが2〜8mmとなるテーパ状のチャンファー13を設け、各チャンファー13を同じ形状とし、且つ、この各チャンファー13を鋳型4の上端から下端に亘って形成しているので、溶鋼2の凝固遅れを防止して凝固遅れによる内部欠陥がない鋳片を製造することができる。
2 溶鋼
3 タンディッシュ
4 鋳型
5 サポートロール
6 電磁攪拌装置
7 浸漬ノズル
10 第1板材
11 第2板材
12 コーナ部
13 角落とし部(チャンファー)
Claims (1)
- 溶鋼を連続的に鋳造する角筒状の鋳型であって、
前記鋳型の内側における全てのコーナー部に、水平方向の長さが2mm以上8mm以下となるテーパ状の角落とし部を設けており、前記角落とし部は、それぞれ同じ形状とされていると共に鋳型の上端から下端に亘って形成されていることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
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